説明

アド/ドロップ型の光増幅デバイス

光通信システムのファイバー中継区間(2,3)の間に配置され、第1の入力増幅器(4)、チャンネル・アド/ドロップ・デバイス(7)及び出力増幅器(8)が直列に配置されて構成されたアド/ドロップ型の光増幅デバイス(1)であって、入力増幅器(4)が実質的に定パワー出力動作をするように構成され、ファイバー中継区間の破損時には増幅自然放出(ASE)雑音の出力パワーが信号パワーの損失を補償し、アド/ドロップ・デバイスで合波されたチャンネルの存続を保障する。本発明によれば別の入力増幅器(9)が設けられ、第1の入力増幅器の故障時には、それを補償するためのASE雑音を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波長分割多重(WDM)光ファイバー通信システムにおいて用いられるアド/ドロップ(合波/分波)型の光増幅デバイスおよび、このようなアド/ドロップ型の光増幅デバイスにおいて合波する光チャンネルの存続を保障するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、アド/ドロップ型の光増幅デバイス(ノード)はWDM光通信システムにおけるファイバー中継区間の接続点に設置されて、光チャンネルを光ファイバー中継区間に合波または分波することを可能にし、次の区間へとWDM光チャンネル(スルーチャンネル)を伝送できるよう、光パワーを増幅して回復させる。光チャンネルは、光アド/ドロップ型の合/分波器(OADM)デバイスを用いている装置で合波/分波される。
【0003】
通常、そのような増幅デバイスは、一定パワーモードに設定された出力光増幅器(またはブースター)を含んでいるので、入力パワー変化がどのように起こっても出力パワーに変化がないようになっている。一定パワーモードは、光増幅器の出力パワーを、例えば、フォトダイオードでモニターして、出力パワーの変動を光増幅器の光ポンプに対する誤差信号として用いるようなフィードバックループにより実現できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相互接続に到るファイバー中継区間(このデバイスの上流)における破損がおこった時には、対策を施さないと問題が発生する。というのは、この時、出力増幅器に到着するチャンネルはこのデバイスにて新たに合波された光チャンネルだけとなり、一定パワーの出力を維持しようとしてこのチャンネル信号を過度に増幅してしまう。そして今度は、このデバイスの下流に位置する次段の接続点(すなわちトラフィックカード型の受信機)の光増幅器に過負荷を与えてしまうため、伝送パワーの増大による伝送中の非線形歪を引き起こすことになる。
【0005】
この問題を避けるためにとられる手段の一例は、国際特許公開公報WO02080409号に開示されている。これによると、アド/ドロップ増幅デバイスが入力光増幅器(すなわち前置増幅器)を備えており、これもまた一定パワーモードで動作する。OADMデバイスの前段に置かれるこの入力増幅器は、ファイバー中継区間の破損により失われたチャンネルのパワーを補償するために、増幅自然放出(ASE)雑音を増幅する。これにより、出力増幅器の入力側で一定パワーが得られる。
【0006】
しかしながら、この補償方法は、入力増幅器自身が故障したときには効果がない。本発明は公知の光増幅器デバイスにおけるこのような限界を、少なくとも部分的に克服するために行われた努力の過程で考案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば光通信システム内のファイバー中継区間と中継区間の間に配置されるアド/ドロップ型の光増幅デバイスが提供される。本デバイスは、第1の入力増幅器と、第1の入力増幅器に接続したチャンネル・アド/ドロップ・デバイスと、チャンネル・アド/ドロップ・デバイスに接続した出力増幅器を備える。また、ファイバー中継区間の破損時に増幅自然放出(ASE)雑音の出力パワーが信号パワーの損失を補償し、チャンネル・アド/ドロップ・デバイスで合波されたチャンネルの存続を保障するために、この入力増幅器が実質的に定パワー出力を発生するように調整されている。この第1の入力増幅器が故障したときに補償のための増幅自然放出雑音を供給するために配置された別の入力増幅器を備える。本発明はファイバー中継区間の破損時や第1の入力増幅器の故障時にも合波したチャンネルの存続を保障するものである。
【0008】
別の入力増幅器が第1の入力増幅器に接続され、第1の入力増幅器の故障に応じて動作するように構成されていることが有利である。この別の入力増幅器は第1の入力増幅器からの光パワーを検出できなくなった時にスイッチが入るように構成されているのが好適である。第1の入力増幅器がモニター出力を含んでいる場合、この別の入力増幅器のフォトダイオードが第1の入力増幅器のモニター出力からの光を検知するように構成されるのが有利である。
【0009】
この別の入力増幅器の出力パワーは、スイッチ・オンとなった時に、第1の入力増幅器によって故障前に発生していて、実質的に定パワー出力となっていたのと同じ出力パワーを発生するように設定されるのが有利である。
【0010】
本発明の第2の側面によれば、光通信システム内のファイバー中継区間と中継区間の間に配置されるアド/ドロップ型の光増幅デバイスにて合波されたチャンネルの存続を保障する方法が提供される。本方法は、アド/ドロップ・デバイスにて合波されたチャンネルの存続を保障する目的で増幅デバイスの入力増幅器において発生する増幅自然放出(ASE)雑音をファイバー中継区間の破損時における信号パワーの損失を補償するために用いて、この入力増幅器の故障時には別の入力増幅器内でこの補償する雑音を発生することを特徴とする方。本方法はファイバー中継区間の破損時及び入力増幅器の故障時にも合波されたチャンネルの存続を保障するものである。
【0011】
本方法は入力増幅器のモニター出力からの光を検知する別の入力増幅器を更に備えることが有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によって構築されるアド/ドロップ型の光増幅デバイスを、添付図面を参照して、例示目的で、詳しく記述する。
【0013】
図1を参照すると、アド/ドロップ型の光増幅デバイス(または光アド・ドロップ・ノード)が参照番号1により示されている。アド/ドロップ型の光増幅デバイス1は、WDM光ファイバー通信ネットワークにおける2つの光ファイバー中継区間2,3を接続するものであり、図中の破線の矩形で囲まれている。通信ネットワークは、例えば、リング型のネットワークを有し、その中でアド/ドロップ型の光増幅デバイス1が直列に接続され、閉じたリングまたは他のネットワーク構造の一部を構成している。アド/ドロップ型の光増幅デバイス1はデバイスの入力と出力の間に直列に接続されていて、入力光増幅器(または前置増幅器)4、光減衰器5(これはオプションであり、固定または可変減衰器である。)、分散補償モジュール6(これは伝送ファイバーに沿って蓄積された波長分散を補償するために用いるものであり、これもオプションである。)、光アド/ドロップ・合/分波器(OADM)デバイス7、および出力光増幅器(またはブースター)8を備えている。
【0014】
入力側及び出力側の光増幅器は、例えば、エルビウム・ドープト・ファイバー増幅器(EDFA)からなり、それぞれ、増幅器のポンプパワーを制御するフィードバックループ(制御ループは当業者にとっては容易なことであるので図示されていない。)を用い、一定パワーモードで動作する。ここまでに記述したデバイスは、われわれの過去の国際特許公開公報WO02080409号に記述したシステムと機能的に同じである。
【0015】
国際特許公開公報に示された一例においては、アド/ドロップ型の増幅デバイス1に入力される信号には40チャンネルが含まれており、そのうちのいくつかはOADM7で分波され、また1チャンネルがそこで合波される。ファイバー中継区間2で破損事故が発生した場合、フィードバック機構が動作し、39チャンネル分の損失パワーを入力光増幅器4によって発生したASE雑音と置き換える。これにより、OADM7の出力端で一定のパワー出力が維持される。このように、出力増幅器8の出力端における合波したチャンネルのパワーは、破損後も破損前と同一に維持され、出力増幅器8は通常の動作点で動作を続ける。ASEのパワーは失われたスルーチャンネルのパワーと等価であるので、出力増幅器8の出力端ではなんらのパワー変動も現れないと仮定することができる。
【0016】
引用した国際特許公開公報に記載されているトラフィック存続について解決法は、入力増幅器4自身の故障のときは当てはまらない。そのような場合、この増幅器からASE雑音が出力されず、補正の効果は失われてしまうからである。
【0017】
本発明によれば、別の(またはスタンバイしている)入力光増幅器(または前置増幅器)9を設けることで、それによって、第1の(動作中の)入力増幅器4をその故障の時に保護する。スタンバイ入力増幅器の出力は、OADM7の上流にある主光路に光カプラー10によって結合される。図示したように、カプラーはDCM6の出力部とOADM7の入力部との間に配置されるのが好適である。カプラーの分岐率は、2つの分枝間における損失の差を考慮して決定される。
【0018】
スタンバイ入力増幅器9は、第1の入力増幅器4が故障したとき自動的にスイッチがオンにされて動作を開始するように構成されている。第1の入力増幅器の動作中は、常に、スタンバイ増幅器はスイッチ・オフのままである。スタンバイ入力増幅器の自動スイッチ・オンは、第1の入力増幅器4のモニター出力ポート12をスタンバイ入力増幅器9の入力部に対して、光パッチコードで接続することによって簡便に達成される。
【0019】
動作中に第1の(主の)入力増幅器4が故障した場合、スイッチ・オフ状態で主入力増幅器4の出力を、モニター・フォトダイオード11を用いてモニターしているスタンバイ入力増幅器9が動作を開始し、出力増幅器8の入力端にASE雑音を供給することで、OADMフィルター7における合波したチャンネルの存続を保障する。図4を参照すると、主入力増幅器4はその増幅器の出力光パワーのわずかな部分x%を出力するモニター出力端子12を持っている。これはスタンバイ増幅器9の入力端子に接続されており、この出力パワーを、フォトダイオード11を用いて検出し、この検出された出力パワーをスイッチとして用いる。スタンバイ増幅器9がもはや光入力パワーを検出しなくなるか、または光パワーが所定の閾値以下になると、スタンバイ増幅器はスイッチ・オンとなる。この光パワー制御モードは迅速なる応答を保障し、入力増幅器の電子回路に影響して両者間の信号のやり取りを妨害するような故障と同時に動作する。スタンバイ入力増幅器9はASE雑音を出力することだけが求められるので、その設計は主入力増幅器4と比べて遥かに簡単である。その電子回路も大変簡単である。さらに、非常に迅速なスイッチ・オンができ、また低価格である。スタンバイ入力増幅器9は出力パワー制御ループを備え、一定パワーモードで動作する(制御ループは。図4に示してはいないが、当業者には容易に導き出すことができる。)。その出力パワーは主入力増幅器の出力パワーと同一の値に設定されるので、スイッチ・オンになったときには主入力増幅器4が以前に出力していたのと同じ出力パワーを発生する。
【0020】
図1は(A)と(B)にそれぞれ第1の入力増幅器4とスタンバイ入力増幅器9の出力パワーを示している。また、主入力増幅器4の故障(A)とそれに引き続くスタンバイ入力増幅器9の迅速なスイッチ・オン(B)を示している。
【0021】
図3は主入力増幅器4の出力パワー(A)と比較して存続チャンネル受信パワー(C)を示す。見て判るように、パワー変化は短時間の過渡期間だけで起こり、この時間が過ぎると受信パワーは動作値に回復する。高速なスイッチング(<1ms)のために、中継器への破損のリスクは避けられ、トラフィックは危機的な状態が起こる前の状態に復帰する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】デバイスのブロック図である。
【図2】第1の入力増幅器と別の入力増幅器の出力を示すグラフである。
【図3】存続する合波チャンネルを示すグラフである。
【図4】図1に示したデバイスの部分をより詳細に示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信システムにおけるファイバー中継区間(2,3)の間に配置されるアド/ドロップ型の光増幅デバイス(1)であって、
実質的に一定パワーを出力するように構成された第1の入力増幅器(4)と、
前記第1の入力増幅器(4)に接続されたチャンネル・アド/ドロップ・デバイス(7)と、
前記チャンネル・アド/ドロップ・デバイス(7)に接続された出力増幅器(8)と
を含み、さらに、
前記ファイバー中継区間の破損時に、増幅自然放出(ASE)雑音の出力パワーによって信号パワーの損失を補償し、かつ、前記チャンネル・アド/ドロップ・デバイスで合波されたチャンネルの存続を保障するよう動作している前記第1の入力増幅器が故障したときに、前記信号パワーの損失を補償するためのASE雑音を発生する追加の入力増幅器(9)を含むことを特徴とするアド/ドロップ型の光増幅デバイス。
【請求項2】
前記追加の入力増幅器(9)は、前記第1の入力増幅器(4)に接続されており、前記第1の入力増幅器(4)の故障に応じて動作することを特徴とする請求項1に記載のアド/ドロップ型の光増幅デバイス。
【請求項3】
前記追加の入力増幅器(9)は、前記第1の入力増幅器(4)から出力される光パワーの検出に失敗するとスイッチオンに切り換えられることを特徴とする請求項2に記載のアド/ドロップ型の光増幅デバイス。
【請求項4】
前記追加の入力増幅器(9)が備えるフォトダイオード(11)は、前記第1の入力増幅器(4)のモニター出力からの光を検知することを特徴とする請求項3に記載のアド/ドロップ型の光増幅デバイス。
【請求項5】
前記追加の入力増幅器(9)の出力パワーは、該追加の入力増幅器(9)がスイッチオンに切り換えられると、前記第1の入力増幅器(4)によって出力されていた出力パワーと同一となるように設定されており、かつ、前記追加の入力増幅器(9)は、一定パワーの出力を発生することを特徴とする請求項1に記載のアド/ドロップ型の光増幅デバイス。
【請求項6】
光通信システムにおけるファイバー中継区間(2,3)の間に配置されるアド/ドロップ型の光増幅デバイス(1)において合波されたチャネルの存続を保証する方法であって、
前記ファイバー中継区間の破損時に、前記光増幅デバイス(1)に備えられる入力増幅器において生成された増幅自然放出(ASE)雑音を使用して、前記破損による信号パワーの損失を補償し、かつ、前記光増幅デバイスで合波されたチャンネルの存続を保障し、前記入力増幅器が故障したときに、追加の入力増幅器によって、前記信号パワーの損失を補償するためのASE雑音を発生することを特徴とする方法。
【請求項7】
前記入力増幅器のモニター出力からの光を、前記追加の入力増幅器によって、検知するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−526702(P2007−526702A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501294(P2007−501294)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050955
【国際公開番号】WO2005/091535
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(507002756)エリクソン エービー (26)
【Fターム(参考)】