説明

アニリンの製造方法

【課題】ニトロベンゼンの接触水素化によって製造されたアニリンの精製のための簡単かつ経済的に有用な方法であって、費用のかかる蒸留法を排除することができ、かつ同時に排出液流の量を低減することができる方法を提供する。
【解決手段】粗製アニリンを、アルカリ金属水酸化物水溶液で抽出するにあたり、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度と抽出を実施する温度とを、水相が下相となるように選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗製アニリンをアルカリ金属水酸化物水溶液(苛性アルカリ溶液)で抽出するにあたり、使用される苛性アルカリ溶液の濃度と温度を調節して、水相を相分離の間に下相とすることで抽出することによってアニリンを製造及び精製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アニリンは、例えばメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を製造するために重要な中間体であり、かつ一般にニトロベンゼンの接触水素化によって工業的規模で製造される(例えばDE−OS2201528号、DE−OS3414714号、US3136818号、EP0696573号及びEP0696574号を参照のこと)。前記反応において、目的の生成物であるアニリンの他に、フェノール又はアミノフェノールのような副生成物も形成し、これらはアニリンを更に使用する前に蒸留によって除去する必要がある。特に、フェノールとアニリンとの分離は、それらの沸点が非常に近いため、蒸留工学に大きな課題を提起するものである。この困難性は、多数の分離段階と高い還流比とを有する長い蒸留塔を使用することに反映し、相応して高い設備投資及びエネルギー費用を伴う。
【0003】
出願JP−A−08−295654号は、フェノール性化合物とアニリンとの分離の代替として、苛性ソーダ(又は苛性カリ)の希水溶液で抽出するにあたり、大部分のフェノールをナトリウムフェノレートとして水相に移して抽出することを記載している。このナトリウムフェノレートは、引き続きの相分離によって上相として分離される。苛性ソーダ溶液の濃度を0.7質量%未満に調整することは、転相を避けるため、従って相分離の間の問題を回避するために必要であると明記されている。NaOH:フェノールのモル比が3〜100:1の範囲であることが、フェノール含量の効果的な低下のために必要とされる。
【0004】
前記の開示された方法の欠点は、相分離の問題と転相とを避けるために、0.7質量%未満の極めて薄い苛性アルカリ金属水酸化物水溶液に限定されているということである。このことは、アルカリ:フェノールの所定の所要モル比のために、アルカリ金属フェノレート含有排出液の量が比較的多量になりうることを意味するからである。かかる多量の排出液は、環境的かつ経済的な欠点である。
【特許文献1】DE−OS2201528号
【特許文献2】DE−OS3414714号
【特許文献3】US3136818号
【特許文献4】EP0696573号
【特許文献5】EP0696574号
【特許文献6】JP−A−08−295654号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ニトロベンゼンの接触水素化によって製造されたアニリンの精製のための簡単かつ経済的に有用な方法であって、費用のかかる蒸留法を排除することができ、かつ同時に排出液流の量を低減することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、粗製アニリンを、アルカリ金属水酸化物水溶液で抽出することによって解決される。アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度と、抽出を実施する温度とは、水相が下相となるように選択される。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、触媒の存在下にニトロベンゼンを水素化して、粗製アニリンを製造することによってアニリンを製造する方法に関連するものである。粗製アニリンは、アルカリ金属水酸化物水溶液で抽出される。形成された水相と有機相とは、互いに分離される。使用されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度と抽出工程の間の温度とは、水相と有機相との分離の間に水相が下相となるように調整される。
【0008】
粗製アニリンは、ニトロベンゼンの水素化についての任意の慣用の工業法によって製造することができる。ニトロベンゼンの水素化は、気相中で固定された不均一系担持触媒(例えば酸化アルミニウム又はカーボン担持体上のPd)上で固定床反応器において、圧力2〜50バール及び温度250〜500℃の範囲で、断熱条件下に循環ガス法(すなわち未反応の水素を水素化反応から循環することで(EP−A−0696573号及びEP−A−0696574号を参照))を用いて実施することが好ましい。
【0009】
アルカリ金属水酸化物溶液は、水相と有機相とを分離する際に水相を下相とするために、アルカリ金属水酸化物溶液の質量に対して、0.7質量%より高いアルカリ金属水酸化物の濃度を有することが好ましい。しかしながら同時に、それらの相の配向は、対象となる温度の選択によって調整することができる。また、より高い温度の使用は、水相が下相として存在することが優勢なので、アルカリ金属水酸化物溶液の質量に対して0.7質量%未満のアルカリ金属水酸化物溶液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度さえも使用でき、これによって相の再びの再配向はもたらされない。
【0010】
また本発明の方法は、抽出方法に含まれる相分離法の間に、アルカリ金属水酸化物溶液の質量に対して0.7質量%より高い比較的高い濃度を有する好ましいアルカリ金属水酸化物溶液を使用する場合と、アルカリ金属水酸化物溶液の質量に対して0.7質量%未満又はそれと等しい低濃度を有するアルカリ金属水酸化物溶液を随時使用した場合においても相分離問題又は転相が生じないということも保証する。水相は、常に本発明の方法においては下相であり、例えば相分離槽中での分離の間に転相は起こりえない。
【0011】
水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液を、アルカリ金属水酸化物溶液として使用することが好ましい。水酸化ナトリウム溶液を使用することが最も好ましい。しかしながら原則的に、任意のアルカリ金属水酸化物溶液を使用することができる。アルカリ土類金属水酸化物又は他の水溶性の塩基性化合物、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩を使用することも原則的には可能である。
【0012】
使用されるアルカリ金属水酸化物に好ましい濃度範囲は、アルカリ金属水酸化物溶液の質量に対して、0.1〜50質量%のアルカリ金属水酸化物、より有利には0.71〜35質量%のアルカリ金属水酸化物、最も有利には0.75〜10質量%のアルカリ金属水酸化物である。
【0013】
抽出の温度は、アルカリ金属水酸化物濃度に依存して、有利には20℃〜140℃、より有利には30℃〜100℃、最も有利には50℃〜95℃の範囲にある。抽出工程の相分離の間の温度は、同じ範囲内であることが好ましい。
【0014】
アルカリ金属水酸化物溶液の濃度と抽出の間の温度の適切な組合せの選択は、相分離の間に水相が下相となることを達成する他に、特定のプロセス工学的基準及び経済的基準によって決定される。温度の最低下は、水中でのアニリンの溶解性を制限するために賢明なことがある。また、プロセス工学的観点から、粗製アニリンを反応後に高められた温度で凝縮して、次いで同じ温度で抽出することも好ましいことがある。更に、アルカリ金属水酸化物溶液の濃度が高すぎると、抽出効率の低下と相分離時間の延長とが、結果として有機物/水の比率が高すぎる場合に引き起こされる。アルカリ金属水酸化物溶液の濃度が低すぎると、前記の排出液の量が多量すぎるという欠点が引き起こされる。
【0015】
アルカリ金属水酸化物水溶液の製造に用いられる水を、ニトロベンゼンの水素化反応由来の反応水から完全に又は部分的に取ることにより、アニリン製造方法からの排出液の全量が更に減少する。しかしながら、任意の他の起源からの水を使用することもできる。抽出のために使用されるアルカリ金属水酸化物の希溶液は、一般に、濃縮されたアルカリ金属水酸化物溶液を原料水に、アルカリ金属水酸化物溶液が、アルカリ金属水酸化物、例えばNaOH又はKOHを、アルカリ金属水酸化物溶液の質量に対して、有利には2〜50質量%のアルカリ金属水酸化物の濃度で含有するまで添加することによって製造される。
【0016】
本発明で必要とされる抽出を実施するために、当業者に公知の任意の方法及び任意の装置、例えばミキサセトラ又は抽出塔を使用することができる。抽出は、一段階又は幾つかの段階において、並流又は向流において実施することができる。有利な一実施態様においては、二段階式の向流ミキサセトラ装置を、抽出のために使用する。必要な分離時間と滞留時間とを短縮するために、そのセトラに、編地(knitted fabrics)、プレート又は充填体のような併合措置(coalescence aids)を設けることもできる。
【0017】
本発明による方法によって製造された精製アニリンは、有利には、アニリンの質量に対して、0.01質量%未満、より有利には0.005質量%未満のフェノール性化合物を全体で含有する。フェノール及びフェノレートの他に、フェノール性化合物という用語には、またOH官能の他に更なる官能基を有するベンゼン誘導体、例えばアミノフェノールも含まれる。
【0018】
更なる後処理工程、例えば蒸留工程又は洗浄工程は、アニリンについてのより高い純度を達成するために、アルカリ金属水酸化物溶液による抽出の上流及び/又は下流で実施できるが、必ずしも必要ではない。下流又は上流での洗浄工程及び/又は蒸留工程は、当業者によく知られた任意の別形で配置することができ、かつそれらの工程は、広い範囲の条件下で作業することができる。このように、蒸留は、例えば泡鐘トレイ又は充填体を有する1又は複数の塔において実施できるが、また分割壁蒸留塔(dividing wall distillation column)においても実施することができる。低沸点成分と高沸点成分との分離は異なる塔で実施できるが、まとめて1つの塔においてアニリンを側流として取り出すことで実施することもできる。
【0019】
フェノール性化合物の大部分を除去した粗製アニリンの蒸留による後処理は、様々な様式で、広い範囲の条件に調節することによって実施することができる。蒸留は、一段階又は幾つかの段階において、様々な型の塔において、有利には慣用の精留塔又は分割壁蒸留塔として明記された塔において、かつ様々な内部取付物、例えば多孔板、バルブトレイ又は泡鐘トレイ、疎充填体(loose packing)又は積層充填体(stacked packing)を用いて実施することができる。他の実施態様も可能である。作業パラメータ、塔頂圧及び還流比は、粗製アニリンの組成と、必要な精製アニリン(純粋アニリン)の規格/純度と、使用される分離段階とに応じて常に選択する必要がある。水、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキシルアミン、シクロヘキサノンのような低沸点成分と、フェノール、アルカリ金属フェノレート、アミノフェノール、アルカリ金属アミノフェノレート、フェニレンジアミン、ジフェニルアミンなどのような高沸点成分との分離は、異なる塔において別々に実施できるか、又は選択的に、有利な一実施態様においては、1つの塔でまとめて、低沸点成分を塔頂部で取り出し、高沸点成分を塔底部で取り出し、かつ純粋アニリンを側流で取り出して実施することもできる。フェノール性化合物の大部分が除去された粗製アニリンの蒸留による精製は、有利な一実施態様では側流塔(side−stream column)において、最も有利には分割壁蒸留塔において、低沸点成分を塔頂部で取り出し、高沸点成分を塔底部で取り出し、かつ純粋アニリンを側流で取り出して行われる。更に、高沸点成分の分離による塔底部生成物は、場合により、アニリンの損失を最小限にするために、残留物塔(residuals column)中で更に濃縮することができる。
【0020】
フェノール性化合物の大部分が除去された粗製アニリンは、蒸留塔へとその塔の任意の位置で供給できるが、導入は、蒸留塔中でのアニリンについての濃度プロフィールに応じて、塔の中間部又は塔の下半分で行うことが好ましい。塔は、ストリッピング区域及び/又は増幅区域(Strengthening section)を有してよい。塔への流入温度並びに、塔底部温度、塔頂圧及び還流比は、調節可能であり、かつ分離課題並びに質的要求、作業的要求及び経済的要求に適合させることができる。塔頂部の温度は、前記のパラメータの選択された予備調整と塔中の液相及び蒸気相の組成とに応じて設定される。蒸留塔のための作業パラメータに好ましい条件は、10〜1000ミリバール、最も有利には10〜500ミリバールの絶対圧力及び0.1〜3、最も有利には0.3〜0.8の還流比である。
【0021】
本発明の有利な一実施態様において、粗製アニリンを低沸点物塔(low−boiling column)に供給又は導入し、そこで水を含む低沸点成分が塔頂部を介して分離される。塔底部に生成するアニリンと高沸点成分を含有する混合物を、次いで更なる蒸留工程(高沸点成分の除去又は純粋な蒸留)に供する。場合により、高沸点成分の分離又は純粋な蒸留による塔底部混合物の濃縮を、次いで残留物塔において行う。残留物塔の塔頂部から回収されたアニリンは、高沸点成分の分離又は純粋な蒸留のための塔にか、又は低沸点物塔又は上流の相分離段階に再循環させることができる。
【0022】
もう一つの有利な実施態様では、フェノール性化合物の大部分が除去された粗製アニリンを、低沸点物塔と高沸点物塔とを組み合わせた塔(側流塔)に供給し、そこで低沸点成分を塔頂部を介して取り出し、高沸点成分を塔底部から取り出し、そして純粋アニリンを側流として取り出す。この側流塔は、慣用の塔として(すなわち分割隔壁を有さない)又は分割壁蒸留塔として構成されていてよい。側流塔又は分割隔壁塔を用いる前記の別形は、塔頂部で取り出される、主に共沸性の水/アニリンと低沸点成分とを含有する凝縮された蒸気の相分離を必要とする。水と水相中に溶解された低沸点成分とを取り出すことが好ましく、アニリンは塔へと再循環させることが好ましい。
【0023】
本発明の方法の前記の実施態様において側流塔の塔頂部で取り出された蒸気は、二段階凝縮法で凝縮させることが好ましい。第一の凝縮器が引き続き部分的に蒸気中の高沸点成分を凝縮することが好ましい。第二の下流の凝縮器において、第一段階を通過した低沸点成分を凝縮することが好ましく、こうして該成分を個別に分離することができる。第一の凝縮器からの部分凝縮物は、相分離法に供される。水と水相中に溶解された低沸点成分とを取り出すことが好ましく、アニリンは塔へと再循環させることが好ましい。
【0024】
側流で取り出された幾らかの純粋アニリンを、側流塔へと、その側流の取出位置より下方で還流として供給することが好ましい。取り出される側流は、全取り出し物又は部分取り出し物を意図することができる。両方の事例において、対象となる還流比の調整を達成することができる。
【0025】
抽出のために使用されるアルカリ金属水酸化物溶液は、抽出工程後に再循環させて、再び抽出の目的で、場合により追加的な精製及び/又は濃縮の後に使用することができる。選択的に、抽出のために、場合により追加的な精製の後に使用されるアルカリ金属水酸化物溶液は、排出液流に供することができ、それは例えば引き続いての処理後に、排出液処理プラントへと供することができる。
【0026】
次いで、本発明の方法によって製造されたアニリンを、酸触媒の存在下にホルムアルデヒドと反応させて、当業者に公知の任意の方法によってジフェニルメタン系のジアミン及びポリアミンを得ることができる。これらのジアミン及びポリアミンを次いで、ホスゲンと反応させて、当業者に公知の任意の方法によりジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネートを得ることができる。
【0027】
図1及び図2は、本発明の方法の有利な実施態様を図式化したものである。
【0028】
図1は、本発明の方法の有利な実施態様を概説するものである。粗製アニリンと反応水との混合物1を、粗製アニリンの製造用プラントの反応区域Aから、相分離器Bへと移す。水相を分離した後に、粗製アニリン2を、第一のミキサセトラ抽出工程Cに渡す。水3を、貯蔵容器Gから苛性ソーダ溶液4を添加することによって所望のNaOH濃度に調整し、そして第二のミキサセトラ抽出工程Dに渡す。一度抽出されたアニリン5を、第一の抽出工程Cから、第二の抽出工程Dへと渡す一方で、下相として分離された苛性ソーダ水溶液6を、向流において第二の抽出工程Dから第一の抽出工程Cへと移す。二度抽出されたアニリン7を、次いで蒸留処理工程Eに供し、下相として分離されたアルカリ水溶液8を、第一のミキサセトラ抽出工程Cから排出液処理工程Fに供する。
【0029】
図2は、本発明の方法の選択的な、また好ましい実施態様を示している。粗製アニリンと反応水との混合物1を、粗製アニリンの製造用プラントの反応区域Aから、相分離器Bへと移す。相分離器B中で水相を分離した後に、粗製アニリン2を、第一のミキサセトラ抽出工程Cに渡す。相分離器B中で分離された反応水3をまず洗浄工程Hに供し、そこでNaOH溶液により二度抽出されたアニリン7を洗浄してから、蒸留工程Eに供する。洗浄工程Hから分離された水9を、貯蔵容器Gからの苛性ソーダ溶液4で処理し、そして第二の抽出工程Dに移す。一度抽出されたアニリン5を、第一の抽出工程Cから、第二の抽出工程Dへと渡す一方で、下相として分離された苛性ソーダ水溶液6を、向流において第二の抽出工程Dから第一の抽出工程Cへと移す。二度抽出されたアニリン7を、流10として、洗浄工程Hの後に、蒸留処理工程Eに供給する。下相として分離されたアルカリ水溶液8を、第一のミキサセトラ抽出工程Cから排出液処理工程Fに渡す。
【0030】
前記の実施態様のもう一つの変法では、該アルカリ水溶液8を循環させ、そして場合により幾らかの流を分離しかつ新たなアルカリ溶液を補充しながら、再び抽出目的のために第二のミキサセトラ抽出工程Dに移してよい。
【0031】
選択的に、両者の作業様式における抽出工程は、一段階法としても又は2段階法より多段階の方法として明記することもできる。
【実施例】
【0032】
本発明の方法の実施のための例を以下に示す。以下の実施例におけるフェノール含量は、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって測定した。ナトリウム含量は、原子吸収分光(AAS)分析によって測定した。
【0033】
実施例1
フェノールを含有する粗製アニリンを、本発明による方法によって精製し、そして精製されたアニリン(純粋アニリン)を得た。有機相と水相との既定の質量比4.9:1で、粗製アニリン中に存在するフェノールを、2.5質量%の苛性ソーダ溶液(NaOH溶液の質量に対して2.5質量%のNaOH)により、ミキサセトラ装置において二段階式の向流抽出法を用いて減少させた。水相は、相分離槽(セトラ)中で下相であった。作業パラメータを第1表に示す。フェノールは、939ppmから35ppmへと減少する(第1表)。
【0034】
第1表
【表1】

【0035】
(conc.=濃度、OP/AP=有機相/水相)
引き続いての側流塔における蒸留で、純粋アニリンを側流生成物として取り出した。作業パラメータとフェノール減少を第2表で報告する。
【0036】
第2表
【表2】

【0037】
実施例2
有機相と水相との既定の質量比3.87:1で、粗製アニリン中に存在するフェノール含量を、0.8質量%の苛性ソーダ溶液(NaOH溶液の質量に対して0.8質量%のNaOH)により、ミキサセトラ装置において二段階式の向流抽出法を用いて388ppmから26ppmへと減少させた。作業パラメータを第3表で報告する。水相は、相分離槽(セトラ)中で下相であった。
【0038】
第3表
【表3】

【0039】
引き続いての側流塔における蒸留で、純粋アニリンを側流生成物として取り出した。作業パラメータと、濃度と、達成されたフェノール減少を第4表で報告する。
【0040】
第4表
【表4】

【0041】
実施例3
50gのフェノール含有粗製アニリンを、二段階式の向流抽出において、分離漏斗中で90℃で、有機相と水相との比率5.0:1で、1.5質量%のNaOH溶液(NaOH溶液に対して1.5質量%のNaOH)を用いて抽出した。水相は、相分離槽(セトラ)中で下相であった。得られた精製アニリンを、水洗手順に供給して、残留Na含量を低減させた。粗製アニリン中のフェノール含量は、それにより494ppmから50ppmへと減少した。引き続きの水洗手順の結果として、フェノール含量は、50ppmから40ppmへと低下し、有機相中のNa含量は、27ppmから9ppmに下がった(第5表を参照)。作業パラメータを第5表で報告する。
【0042】
第5表
【表5】

【0043】
本発明を、説明を目的として前記において詳説したが、このような詳細は単にこの目的のためだけものであり、請求項により限定され得るものを除き、当業者によって本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく変法が作られることができると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の方法の有利な実施態様を概説するものである
【図2】図2は、本発明の方法の選択的な、また好ましい実施態様を示している
【符号の説明】
【0045】
1 粗製アニリンと反応水との混合物、 2 粗製アニリン、 3 水、 4 貯蔵容器Gからの苛性ソーダ溶液、 5 一度抽出されたアニリン、 6 下相として分離された苛性ソーダ水溶液、 7 二度抽出されたアニリン、 8 下相として分離されたアルカリ水溶液、 9 水、 10 流、 A 反応区域、 B 相分離器、 C 第一のミキサセトラ抽出工程、 D 第二のミキサセトラ抽出工程、 E 蒸留処理工程、 F 排出液処理工程、 G 貯蔵容器、 H 洗浄工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニリンの製造方法において:
a)ニトロベンゼンを触媒の存在下で水素化して、粗製アニリンを製造することと
b)粗製アニリンをアルカリ金属水酸化物水溶液で抽出して、水相と有機相を形成することと
c)水相と有機相とを互いに分離することとを含み、
アルカリ金属水酸化物溶液の濃度と抽出方法の間の温度とを調整して、水相を水相と有機相との分離の間に下相とするアニリンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−217417(P2007−217417A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38363(P2007−38363)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(504213548)バイエル マテリアルサイエンス アクチエンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】