説明

アプリケーション実行制御システムおよびデモンストレーション用携帯端末装置

【課題】 会場内に配置された音源から流される音楽によって来場者が携帯する端末装置で所定のアプリケーションを起動実行させる。
【解決手段】 来場者が携行するモバイル装置10では,音源Aから出力される音楽Aの範囲35に入ると,音楽Aを検出し,対応するアプリAを起動する。音楽Aの範囲35から外れると,実行中のアプリAを終了する。次に,音楽Bの可聴範囲36に入って音楽Bを検出すると,音楽Bに対応するアプリBが新たに起動される。音楽Bの範囲36から音楽Cの範囲37に移動すると,アプリBを終了し,新たに検出された音楽Cに対応するアプリCを起動する。また,音楽Bの範囲36にいる間にイベント切替が発生し,音源C33からの出力が音楽Cから音楽Eに変わると,アプリCを終了し,音楽Eに対応するアプリEを起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,イベントや展示が行われる会場において,来場者に提示するアプリケーション・ソフトウェアを制御する技術に関するものである。さらに詳しくは,会場で来場者に貸与され携帯される端末装置において実行されるアプリケーションの制御を,会場で流される音を用いて行うアプリケーション実行制御システム,前記システムで用いるデモンストレーション用携帯端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば,アプリケーション・ソフトウェア(以下,「アプリ」という)の新製品展示会場などでは,新製品のアプリケーションを来場者に体験させるために,デモンストレーションが行われる。このデモンストレーションにおいて,体験用のデモンストレーション・アプリケーション(以下,「デモ用アプリ」)が実行されることがある。新製品の紹介のためのデモンストレーションなどで実行されるデモ用アプリは,予め定められたスケジュールで起動されるか,もしくは,ある程度の来場者が集まったところを見計らって担当者の判断で起動されている。
【0003】
そのため,来場者は,デモ用アプリが開始される時刻まで待たなければならなかった。または,すでにデモ用アプリが開始されていれば,そのデモ用アプリによるデモンストレーションに途中から参加するか,もしくは,次のデモンストレーションの開始時刻まで待たなければならなかった。
【0004】
特に,ブースと呼ばれる複数のエリアに区分けされて,それぞれが独立して異なるデモンストレーションを提示しているような会場では,ブースごとに同様の方法でデモンストレーションが行われることになる。そのため,いくつものブースを回遊したい来場者は,立ち寄った各ブースで,デモンストレーションの開始時間まで待つか,デモンストレーションの途中から参加することを余儀なくされている。
【0005】
そこで,ブースに立ち寄った来場者に対するデモ用アプリの実行を制御するための技術に関連する技術として,所定のアプリケーションの実行をユーザの位置にもとづいて制御する手法がある(例えば,特許文献1参照)。特許文献1の手法では,GPS(全地球位置システム)を利用して,ユーザが携帯する携帯端末装置の位置を検出し,所定の目的位置に近づいたときに所定のアプリケーションを実行するように制御する。
【特許文献1】再公表01/077621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1の手法を適用することで,来場者の位置を検出し,来場者が所定のブースの範囲に近づいたときにブース各々に対応するデモ用アプリを携帯端末装置において開始・実行させることも可能なように考えられる。
【0007】
しかし,特許文献1では,携帯端末装置の位置情報(緯度経度)の検出で数メートルから十数メートル程度の計測誤差が含まれるため,小規模のブースに区分けされているような会場では,携帯端末装置がどのブース内に位置しているのかを正確に検出することは困難であるため,実際には位置を特定することはできない。
【0008】
また,ブースにおいて特別なイベントを行い,その間は通常のデモンストレーションとは別のデモンストレーションを提供したい場合がある。デモンストレーションのプログラムにもとづいて特別イベントの開始時刻が予め決まっていれば,携帯端末装置側に位置情報と起動するアプリケーションとの対応関係を設定して,自動的に特別なイベントのデモ用アプリに切り替えることも可能である。
【0009】
しかし,状況を判断して不定期に特別イベントを提供する場合には,一つの位置情報に対して複数のデモ用アプリを対応させ,それらを切り替えるように設定することは困難である。
【0010】
本発明は,展示会場などで不特定多数の来場者に携帯端末装置を貸与し,その会場内のエリアや状況に対応して流す音や音楽を用いて,来場者が携帯する携帯端末装置の所定のアプリを,来場者のペースで動き回る動きに合わせて,自動的に実行させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は,上記の課題を解決するため,デモンストレーションを実行する場所において,来場者に携帯させる携帯端末装置に,テンプレート波形パターンごとにデモ用アプリを対応付けた情報を格納しておき,ある音や音楽を検出したら,検出された音の波形パターンがテンプレート波形パターンのいずれか一つのパターンの一部として含まれているときに,そのテンプレート波形パターンに対応付けられているデモ用アプリを起動することを特徴とする。
【0012】
具体的に,本発明は,音楽配信システムと携帯端末装置を備え,前記音楽配信システムで出力される音楽によって所定のアプリケーションを起動実行させるアプリケーション実行制御システムであって,音楽配信システムと携帯端末装置とは以下の処理手段を備える。
【0013】
前記音楽配信システムは,音楽を記憶する音楽記憶手段と,前記音楽を出力する音源とを備える。
【0014】
前記携帯端末装置は,前記音楽配信システムで出力される音楽とアプリケーションとの対応情報を記憶する対応情報記憶手段と,前記音楽配信システムで出力される音楽を識別するテンプレート波形データを記憶する音波テンプレート記憶手段と,前記アプリケーションのプログラムファイルを記憶するアプリ記憶手段と,所定の間隔で音を検出しサンプリングする音検出手段と,前記検出された音を波形データに変換し,検出音波形データとする変換手段と,前記検出音波形データと前記テンプレート波形データとを比較し,前記検出音波形データが前記テンプレート波形データの部分または全部と一致する場合に,前記検出された音を,前記テンプレート波形データで識別される音楽と特定する波形比較手段と,前記対応情報をもとに,前記特定された音楽に対応するアプリケーションプログラムを前記アプリ記憶手段から取得し起動させるアプリ制御手段とを備える。
【0015】
また,前記音楽配信システムは,前記音楽を出力する音源を複数備える場合に,前記音楽記憶手段は,前記各音源で出力される複数の音楽を記憶するとともに,前記音楽と,前記音楽を出力する音源との対応関係が設定された音源対応情報を記憶する音源対応情報記憶手段と,前記音源対応情報をもとに,前記各音源に対応する音楽をそれぞれ出力させる音出力制御部とを備える。
【0016】
本発明は,以下のように動作する。
【0017】
本発明の音楽配信システムは,デモンストレーションを実行する会場のブースごとに設置された音源から所定の音楽を出力する。
【0018】
会場の来場者は,本発明の携帯端末装置を携帯してブースを回遊すると,携帯端末装置の音検出手段は,音源から出力される音を検出し所定の間隔でサンプリングする。変換手段は,検出された音を波形データに変換し,検出音波形データとする。そして,波形比較手段は,検出音波形データと,音波テンプレート記憶手段に記憶されているテンプレート波形データとを比較し,検出音波形データがテンプレート波形データの部分または全部と一致する場合に,この検出された音を,テンプレート波形データで識別される音楽と特定する。アプリ制御手段は,対応情報記憶手段に記憶された対応情報をもとに,特定された音楽に対応するアプリケーションプログラムをアプリ記憶手段から取得し起動させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,ブースと呼ばれるエリアごとにデモンストレーションを実行する会場において,音の波形パターンとデモ用アプリとの対応情報と,デモ用アプリのプログラムファイルとを記憶する携帯端末装置を来場者に貸与する。来場者がその携帯端末装置を携帯して会場の各ブースを回遊し,それぞれのブースで特定の音や音楽を検出するだけで,所定のデモ用アプリを自動的に起動・実行させることが可能となる。
【0020】
また,各ブースで流す音や音楽を変えるだけで,来場者が持つ携帯端末装置で実行するデモ用アプリを簡単に切り替えることができる。これによって,デモンストレーションの実演側からみると,同一場所で複数のデモ用アプリを実演できるという,大きな効果を期待できる。
【0021】
本発明で使用する音や音楽として,具体的には,短いメロディのパターン(チャンツ),トーンパルスパターンなどを使用することができる。
【0022】
ブース各々で異なるチャンツやメロディのように構成されたトーンパルスパターンなどをBGMのように流すだけでよく,来場者は,各ブースで異なるチャンツなどが聞こえてくることに違和感をあまり感じることがないと考えられ,デモ用アプリの実行の切り替えが自然に受け入れられることが期待できる。
【0023】
また,本発明によれば,デモンストレーションを行う会場において所定の音や音楽を所望の位置に配置した対応するスピーカから出力できるようにするだけでよく,簡単かつ安価なコストによって,来場者に負荷をかけないデモンストレーションの提供が可能となる。
【0024】
なお,検出する音波は,人間が感知できる音波として説明するが,人間が感知できない超音波を用いることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は,本実施の形態の概要を説明する図である。
【0026】
本形態では,興行会場,展示会場など,デモ用アプリが実行される会場30で行われる展示イベントにおいて,モバイル装置10を来場者に貸与し,各ブースのデモンストレーションを,来場者が携帯しているモバイル装置10において実行させるアプリケーション実行制御システムの例を説明する。
【0027】
本発明が実施される会場30は,デモ用アプリを用いて来場者にプレゼンテーションを行う複数のブースに区分けされている。各ブースには,それぞれ音源が配置され,各音源から異なる音楽が流されている。ここで,音楽として,チャンツと呼ばれる短いメロディを使用する。
【0028】
会場30では,各ブースに配置されている音源A31から音楽Aが,音源B32から音楽Bが,音源C33から音楽Cが,音源D34から音楽Dがそれぞれ流されているものとする。音源の範囲とは,モバイル装置10が一定の音量以上で音楽を検出できる範囲とする。音源の範囲は,ブースの範囲に相当すると仮定する。
【0029】
会場30への来場者には,各自に一台のモバイル装置10が貸与される。モバイル装置10は,会場30のあるブースの音源A〜Dから流される音楽A〜Eそれぞれの波形パターンと,そのブースのデモンストレーションで用いられるデモ用アプリA〜Eとを対応付けた対応情報と,デモ用アプリA〜Eのプログラムファイルとが格納されている。モバイル装置10は,会場30の各音源から流されている音楽を検出すると,検出された音楽に対応するデモ用アプリを起動して実行する。
【0030】
まず,モバイル装置10の音検出手段(マイクロフォン)は,所定の間隔で起動して周囲の音を検出し,一定の時間サンプリングする。モバイル装置10を携帯する来場者が音源Aの範囲35に入ると,モバイル装置10は,音源A31から流されている音楽Aを検出しサンプリングする。さらに,検出された音楽Aから波形パターンを生成し,生成した波形パターンと,予め格納されていた対応情報の音楽A〜Eの波形パターンとを比較する。検出した音楽の波形パターンが,対応情報の音楽Aの波形パターンの一部と一致した場合に,検出した音楽は音楽Aであると判定し,対応するデモ用アプリAを起動する。
【0031】
その後,モバイル装置10を携帯する来場者が音源Aの範囲35から出ると,モバイル装置10は,音源A31から流されている音楽Aを検出しなくなるので,音楽Aに対応するデモ用アプリAを終了する。
【0032】
次に,モバイル装置10を携帯する来場者が音源Bの範囲36に入ると,モバイル装置10は,音源B32から流されている音楽Bを検出しサンプリングする。音源Aの範囲35での処理と同様に,検出された音楽が音楽Bであると判定すると,音楽Bに対応するデモ用アプリBを起動する。
【0033】
さらに,モバイル装置10を携帯する来場者が音源Bの範囲36から,音源Cの範囲37に移動すると,モバイル装置10は,音源C33から流されている音楽Cを検出しサンプリングする。検出した音楽が音楽Cであると判定すると,デモ用アプリBを終了し,検出された音楽Cに対応するデモ用アプリCを起動する。
【0034】
音源Bの範囲36と音源Cの範囲37とが重なっている範囲では,音楽Bと音楽Cとが混在する音楽が検出されサンプリングされる。この場合に,検出された音楽から生成される波形パターンは,対応情報として設定されている音楽A〜Eのいずれの波形パターンの一部にも該当しない可能性がある。このように,一致する波形パターンを特定できなかった場合には,音源Cの範囲37で新たに音楽Cが検出されるまで,現在実行中のデモ用アプリBを優先してそのまま実行していてもよい。または,現在実行中のデモ用アプリBを中止してもよい。
【0035】
また,来場者が音源Cの範囲37にいる間に,特別なイベントが行われて,音源C33から流されている音楽が音楽Cから音楽Eに変わると,モバイル装置10は,検出した音の波形パターンから音楽Eを検出し,音楽Cに対応するデモ用アプリCを終了し,検出された音楽Eに対応するデモ用アプリEを起動する。
【0036】
また,来場者は,音源Dの範囲38に立ち入らなかったので,モバイル装置10は,音源D34から流されている音楽Dを検出することはなく,音楽Dに対応するデモ用アプリDは実行されない。
【0037】
このように,音楽が一定の音量以上で検出できる範囲内にいる間は,検出される音楽に関連するデモ用アプリが自動的に起動・実行され,その範囲外に出て音楽が検出できなくなると,実行していたデモ用アプリが自動的に終了する。したがって,会場の各ブースを回遊する来場者個々人の行動に合わせて,各ブースで定められたデモ用アプリの実行を制御することができる。
【0038】
また,ブースに設置された音源から流す音楽を変更するだけで,モバイル装置10で起動・実行させるデモ用アプリを変更することができるので,同一の場所に対応付けられた複数のデモ用アプリの実行を制御することが可能である。
【0039】
本発明では,音源から出力される音や音楽として,短いフレーズで構成されるチャンツなどのフレーズ以外にも,波形パターンとしてとらえることが可能なものであればどのような音でも使用することが可能である。
【0040】
音楽は,例えば,周波数ピッチが違う音の連なりで構成されるトーンパルスのパターンなどでもよい。具体的には,時報のように,440Hz(ラ音)と880Hz(1オクターブ上のラ音)などを用いて構成されたトーンパルスのパターンなどでもよい。音源A,B,Cからそれぞれ異なるパターンA,B,Cを出力することによって,モバイル装置10では,そのトーンパルスパターンを検出し,生成した波形パターンを比較して,対応付けられたデモ用アプリを特定し,実行することができる。
【0041】
なお,チャンツのフレーズまたはトーンパルスのパターンに,有音部分に挟まれた無音部分を含んでいてもよく,トーンパルスのパターンは,同一の周波数ピッチの有音部と無音部との連なりで構成されていてもよい。
【0042】
また,音は,例えば,動物の鳴き声などの音声を用いてもよい。会場30で,動物に関するデモンストレーションを行う場合に,各動物に割り当てられたブースで,その動物の鳴き声を流すことによって,検出された動物の鳴き声に対応する動物の解説などのデモ用アプリを実行する場合などに有用である。
【0043】
また,音は,人間の可聴域外の音として検出され,波形パターンとして扱うことができるもの,例えば超音波音,低周波音で構成されるパターンであってもよい。会場30が,美術館などの静かな場所である場合に有用である。
【0044】
なお,会場30は,例えば,イベント会場,展示会場,博物館,動物園など,デモンストレーションや説明,体験などのアプリケーションが実行される場所であればどのような場所であってもよい。また,モバイル装置10は,例えば,ノートPC,PDA,携帯電話,携帯ゲーム機など,音を検出する機能およびプログラムを記憶し実行する機能を備えている携帯可能な機器であればどのようなものでもよい。
【0045】
図2は,本実施の形態によるアプリケーション実行制御システムの構成例を示す図である。
【0046】
アプリケーション実行制御システムは,来場者が携帯する端末装置であるモバイル装置10と,会場内のブースに配置される各音源から音楽を流す音楽配信システム20から構成される。
【0047】
モバイル装置10は,割り込み制御部11,波形比較部12,アプリ制御部13,音波テンプレート記憶部14,音波アプリ対応テーブル15,アプリ記憶部16,音検出部17,表示出力部18を備える。
【0048】
音楽配信システム20は,音出力制御部21,音源対応テーブル22,音楽記憶部23,スピーカ24を備える。
【0049】
音楽配信システム20の音出力制御部21は,音源対応テーブル22を参照し,音楽記憶部23から音楽を取り出し,各スピーカ24A,24B,24Cから,それぞれに対応する音楽を出力する手段である。
【0050】
音源対応テーブル22は,音源であるスピーカ24A,24B,24Cと出力する音楽との対応情報を記憶する手段である。図3は,音源対応テーブル22の例を示す図である。図3の音源対応テーブル22には,音源(スピーカ24A,24B,24C)と音楽との対応情報が記録される。音出力制御部21は,音源対応テーブル22を参照して,各スピーカ24A,24B,24Cから,それぞれに対応付けられた音楽を出力する。
【0051】
音楽記憶部23は,複数の種類の音楽データを記憶する手段である。音楽記憶部23に記憶される音楽はデジタル形式のデータであっても,アナログ形式のデータであってもよい。
【0052】
また,スピーカ24A,24B,24Cは,音の進行方向の指向性が高いものであってもよい。
【0053】
モバイル装置10の割り込み制御部11は,音検出処理またはアプリ実行時のフラグチェック処理を実行する間隔を設定し,制御する処理手段である。
【0054】
図4は,制御タイムチャートの例を示す図である。図4の制御タイムチャート例では,タイマ1は,音検出処理の実行時間を制御する時間情報,タイマ2は,デモ用アプリの実行中にフラグ領域をチェックする処理のタイミングを制御する時間情報を示す。それぞれのタイマは所定の時間が予め設定されており,運用中に設定変更も可能である。
【0055】
波形比較部12は,音検出部17によって検出された音楽を特定し,特定した音楽に対応するデモ用アプリを示すフラグをフラグ領域に設定する処理手段である。
【0056】
具体的には,波形比較部12は,音検出部17によって検出された音楽から波形データ(検出音波形データ)を生成し,この検出音波形データと,音波テンプレート記憶部14に格納されている各音楽を示すテンプレート波形データとを比較する。検出音波形データがテンプレート波形データの部分と一致する場合に,音波アプリ対応テーブル15を参照して一致したテンプレート波形データに対応するデモ用アプリのフラグを所定のフラグ領域に設定する。また,波形比較部12は,音検出部17によって音を検出できなかった場合,または,検出音波形データに一致する部分をテンプレート波形データから特定できなかった場合に,フラグ領域に設定されたフラグをクリアする。
【0057】
アプリ制御部13は,音波アプリ対応テーブル15を参照し,波形比較部12によって設定されたフラグに対応するデモ用アプリを実行し,フラグがクリアされた場合に,実行中のデモ用アプリを終了する制御手段である。
【0058】
音波アプリ対応テーブル15は,テンプレート波形パターンで示された音楽とデモ用アプリとの対応関係を設定した対応情報を記憶するデータテーブルである。
【0059】
図5は,音波アプリ対応テーブル15の例を示す図である。図5の音波アプリ対応テーブル15には,音楽とデモ用アプリとの対応関係,デモ用アプリを示すフラグの対応関係を示す対応情報が記録される。
【0060】
アプリ記憶部16は,各フラグで示されるデモ用アプリのプログラムファイルを記憶する手段である。
【0061】
音検出部17は,例えばマイクロフォンなど,周囲の音楽や音を検出しサンプリングする処理手段である。
【0062】
音波テンプレート記憶部14は,音検出部17で検出した音の波形パターンを識別するためのテンプレート波形データを格納する記憶手段である。
【0063】
表示出力部18は,例えばディスプレイなど,実行中のデモ用アプリによるデモンストレーション画面などを出力する手段である。
【0064】
図6は,音検出からデモ用アプリ実行までの処理を説明するための図である。
【0065】
まず,モバイル装置10の音検出部17が音(音楽)を検出しサンプリングする。波形比較部12は,検出された音楽から波形パターンを生成して検出音波形データとする。さらに,この検出音波形データと音波テンプレート記憶部14の各テンプレート波形データと比較する。検出音波形データが,格納されたテンプレート波形データの部分と一致するときは,検出した音楽を,部分的に一致したテンプレート波形データの音楽と特定する。例えば,検出音波形データが,音楽Aのテンプレート波形データの部分と一致した場合に,検出した音楽は音楽Aであると特定する。そして,音波アプリ対応テーブル15を参照し,音楽Aに対応するフラグAを所定のフラグ領域に設定する。
【0066】
そして,アプリ制御部13は,フラグ領域にフラグAが設定されている場合に,音波アプリ対応テーブル15を参照して,フラグAに対応するデモ用アプリ(アプリA)のプログラムファイル(実行ファイル)をアプリ記憶部16から取得し,アプリAの実行ファイルを起動する。アプリ制御部13によって起動されたアプリAでは,所定のデモンストレーションなどの処理を行い,表示出力部18に,デモンストレーション画面などを表示する。
【0067】
図7および図8に,本実施の形態における処理フローチャートを示す。
【0068】
本形態では,音検出処理は,割り込み制御部11によって設定されたタイマ1にもとづいて起動・終了され,アプリ制御処理は,モバイル装置10のマルチタスクOSによって起動・終了が制御されているとする。アプリ実行中のフラグチェック処理は,タイマ2によって制御される。
【0069】
図7は,本実施の形態による音検出処理フローチャートである。
【0070】
音検出処理が起動されると,まず,音検出部17は,設定されたタイマ1をリードして(ステップS10),音(音楽)を検出しサンプリングする(ステップS11)。
【0071】
タイマ1−nの時間が経過したら(ステップS12のYES),音が検出されたか否かを判定する(ステップS13)。なお,nは,数マイクロ秒であり,ステップS13〜S110の処理の実行時間などによって任意に定めた数でよい。
【0072】
音楽が検出されなかった場合(ステップS13のNO)には,フラグをクリアし(ステップS14),処理を終了する。
【0073】
音楽が検出された場合(ステップS13のYES)には,サンプリングした音から検出音波形データを生成し,この検出音波形データと一致するテンプレート波形データがあるか否かを判定する(ステップS15)。
【0074】
検出音波形データと部分的に一致するテンプレート波形データがない場合に(ステップS15のNO),フラグをクリアし(ステップS14),処理を終了する。
【0075】
一方,検出音波形データと部分的に一致するテンプレート波形データがある場合に(ステップS15のYES),さらに,フラグ領域にフラグが設定されているか否かをチェックする(ステップS16)。
【0076】
フラグ領域にフラグが設定されていなければ(ステップS16のNO),検出音波形データと部分的に一致したテンプレート波形データで特定される音楽に対応付けられたフラグを設定し(ステップS17),処理を終了する。
【0077】
フラグ領域にすでにフラグが設定されている場合に(ステップS16のYES),検出音波形データと部分的に一致したテンプレート波形データで特定される音楽に対応するフラグと既存のフラグとが一致するか否かを判定する(ステップS18)。
【0078】
特定した音楽に対応するフラグと既設定のフラグとが一致しなければ(ステップS18のNO),既存のフラグをクリアし(ステップS19),検出音波形データに一致したテンプレート波形データで特定される音楽に対応するフラグをフラグ領域に設定し(ステップS110),処理を終了する。
【0079】
特定した音楽に対応するフラグと既設定のフラグとが一致する場合には(ステップS18のYES),既存のフラグを残して(ステップS111),処理を終了する。
【0080】
図8は,本実施の形態によるアプリ制御処理フローチャートである。
【0081】
アプリ制御部13は,まず,設定されたタイマ2をリードする(ステップS20)。
【0082】
タイマ2にしたがってフラグ領域をチェックする(ステップS21)。フラグ領域にフラグが設定されていなければ(ステップS21のNO),実行中のデモ用アプリがある場合にはそのデモ用アプリを終了し(ステップS22),処理を終了する。
【0083】
フラグ領域にフラグが設定されていれば(ステップS21のYES),さらに,フラグ領域のフラグが変更されているか否かをチェックする(ステップS23)。フラグが変更されていれば(ステップS23のYES),それまで実行していたデモ用アプリを終了し(ステップS24),新しく設定されているフラグに対応する新しいデモ用アプリを起動する(ステップS25)。また,フラグが変更されていなければ(ステップS23のNO),そのままデモ用アプリを実行する(ステップS26)。
【0084】
その後,タイマ2の時間が経過したか否かをチェックし(ステップS27),タイマ2の時間が経過したら(ステップS27のYES),処理を終了する。
【0085】
図7および図8の処理は,図4で説明したように交互に繰り返して実行される。
【0086】
以上説明したように,本発明は,コンピュータとソフトウェアプログラムとによって実現することができ,そのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することも,ネットワークを通して提供することも可能である。また,本発明の実施の形態について説明したが,本発明はこれに限られるものではない
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施の形態の概要を説明するための図である。
【図2】本実施の形態によるアプリケーション実行制御システムの構成例を示す図である。
【図3】音源対応テーブルの例を示す図である。
【図4】制御タイムチャートの例を示す図である。
【図5】音波アプリ対応テーブルの例を示す図である。
【図6】音検出からデモ用アプリ実行までの処理を説明するための図である。
【図7】本実施の形態における音検出処理フローチャートである。
【図8】本実施の形態におけるアプリ制御処理フローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
10 モバイル装置
11 割り込み制御部
12 波形比較部
13 アプリ制御部
14 音波テンプレート記憶部
15 音波アプリ対応テーブル
16 アプリ記憶部
17 音検出部
18 表示出力部
20 音楽配信システム
21 音出力制御部
22 音源対応テーブル
23 音楽記憶部
24 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽配信システムと携帯端末装置を備え,前記音楽配信システムで出力される音楽によって所定のアプリケーションを起動実行させるアプリケーション実行制御システムであって,
前記音楽配信システムは,
音楽を記憶する音楽記憶手段と,
前記音楽を出力する音源とを備え,
前記携帯端末装置は,
前記音楽配信システムで出力される音楽とアプリケーションとの対応情報を記憶する対応情報記憶手段と,
前記音楽配信システムで出力される音楽を識別するテンプレート波形データを記憶する音波テンプレート記憶手段と,
前記アプリケーションのプログラムファイルを記憶するアプリ記憶手段と,
所定の間隔で音を検出しサンプリングする音検出手段と,
前記検出された音を波形データに変換し,検出音波形データとする変換手段と,
前記検出音波形データと前記テンプレート波形データとを比較し,前記検出音波形データが前記テンプレート波形データの部分または全部と一致する場合に,前記検出された音を,前記テンプレート波形データで識別される音楽と特定する波形比較手段と,
前記対応情報をもとに,前記特定された音楽に対応するアプリケーションプログラムを前記アプリ記憶手段から取得し起動させるアプリ制御手段とを備える
ことを特徴とするアプリケーション実行制御システム。
【請求項2】
前記音楽配信システムは,前記音楽を出力する音源を複数備える場合に,
前記音楽記憶手段は,前記各音源で出力される複数の音楽を記憶するとともに,
前記音楽と,前記音楽を出力する音源との対応関係が設定された音源対応情報を記憶する音源対応情報記憶手段と,
前記音源対応情報をもとに,前記各音源に対応する音楽をそれぞれ出力させる音出力制御部とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のアプリケーション実行制御システム。
【請求項3】
前記各音源は,前記音楽を繰り返し出力する
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のアプリケーション実行制御システム。
【請求項4】
前記音楽は,周波数ピッチが違う音の連なりで構成されるトーンパターンである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアプリケーション実行制御システム。
【請求項5】
前記音楽は,人間の可聴域外の音のパターンである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアプリケーション実行制御システム。
【請求項6】
音楽配信システムで出力される音楽とアプリケーションとの対応情報を記憶する対応情報記憶手段と,
前記音楽配信システムで出力される音楽を識別するテンプレート波形データを記憶する音波テンプレート記憶手段と,
前記アプリケーションのプログラムファイルを記憶するアプリ記憶手段と,
所定の間隔で音を検出しサンプリングする音検出手段と,
前記検出された音を波形データに変換し,検出音波形データとする変換手段と,
前記検出音波形データと前記テンプレート波形データとを比較し,前記検出音波形データが前記テンプレート波形データの部分または全部と一致する場合に,前記検出された音を,前記テンプレート波形データで識別される音楽と特定する波形比較手段と,
前記対応情報をもとに,前記特定された音楽に対応するアプリケーションプログラムを前記アプリ記憶手段から取得し起動させるアプリ制御手段とを備える
ことを特徴とするデモンストレーション用携帯端末装置。
【請求項7】
前記音検出手段は,音楽配信システムで出力され,所定のアプリケーションを起動実行させるための所定の音楽または音を検出する
ことを特徴とする請求項6に記載のデモンストレーション用携帯端末装置。
【請求項8】
前記音検出手段が音を検出しなかった場合に,前記アプリ制御手段は,前記音検出手段の検出処理時点で実行されていたアプリケーションプログラムがあれば,当該アプリケーションプログラムを終了する
ことを特徴とする請求項6または請求項7のいずれか一項に記載のデモンストレーション用携帯端末装置。
【請求項9】
前記音検出手段によって検出された音によって特定された音楽が,前回の検出処理において検出された音によって特定された音楽と異なる場合に,前記アプリ制御手段は,現在実行中のアプリケーションプログラムを終了し,当該新たに検出された音楽に対応するアプリケーションプログラムを前記アプリ記憶手段から取得して起動させる
ことを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載のデモンストレーション用携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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