説明

アプリケータ装置

【課題】塗布液の粘度によらず、塗布液を良好に攪拌して被塗布物に塗布することのできるアプリケータ装置を提供する。
【解決手段】アプリケータ装置100は、塗布液を入れる中空の容器本体10と、容器本体10に収容された攪拌翼20と、攪拌翼20を容器本体10に対して回動駆動する駆動部40と、容器本体10内部と連通して設けられて塗布具52が装着される吐出口50と、を有している。容器本体10内部には、容器本体10に対する回動が固定された固定翼30が設けられており、ピストン部42が第一位置にあるときは駆動部40による攪拌翼20の回動駆動が規制され、ピストン部42が第二位置にあるときは駆動部40による攪拌翼20の回動駆動が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗布物に塗布液を塗布するためのアプリケータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布液の一例である染毛剤を頭髪に塗布するための種々の器具が知られている。例えば、特許文献1には染毛剤の第1剤および第2剤がそれぞれ充填された2つのチューブ容器と、それぞれの剤を混合する染毛用トレイが記載されている。また、特許文献2には2連缶容器を用いたエアゾール容器が記載されている。
このほか、1つの容器に2剤を充填して、使用者が容器を振ることにより2剤を混合させる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−023671号公報
【特許文献2】特開2003−205983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の器具の場合、チューブ容器に充填できる染毛剤の粘度は高粘度(例えば数万mPa・s程度)に限定される。また、平坦なトレイ上で剤を手作業で混練する必要があることから、2剤を均一に攪拌することは容易ではない。
特許文献2に記載の器具の場合は、エアゾールとして噴射するためには剤の粘度が低粘度(例えば数百mPa・s程度)に限定されるという不都合がある。
また、容器を振って2剤を混合するタイプの場合、2剤の粘度差が大きいと、人の手で容器を振っても混合不足となる場合がある。
【0005】
このように、一種または二種以上の塗布液を攪拌して、これを頭髪などの被塗布物に塗布するにあたり、従来の器具は塗布液の粘度の影響を大きく受けるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアプリケータ装置は、塗布液を入れる中空の容器本体と、前記容器本体に収容された攪拌翼と、前記攪拌翼を前記容器本体に対して回動駆動する駆動部と、前記容器本体内部と連通して設けられ、塗布具が装着される吐出口と、を有する。
【0007】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。具体的には、攪拌翼が複数の部材から形成されることや、攪拌翼と駆動部とが一個の部材として形成されることを許容する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアプリケータ装置によれば、容器本体の内部において攪拌翼が回動して塗布液を攪拌し、攪拌された塗布液を吐出口から吐出することができる。このため、塗布液の粘度によらず攪拌翼によって良好に攪拌された塗布液を、塗布具によって被塗布物に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第一実施形態にかかるアプリケータ装置を示す斜視図である。
【図2】アプリケータ装置の分解斜視図である。
【図3】(a)は攪拌翼を回動軸方向からみた平面図、(b)は上方斜視図、(c)は正面図である。
【図4】(a)はピストン部を進退方向からみた平面図、(b)は上方斜視図、(c)は下方斜視図である。
【図5】(a)は攪拌翼と収容溝との軸心および向きを一致させた状態を示す下方斜視図、(b)は攪拌翼の一部を収容溝に収容した状態を示す下方斜視図である。
【図6】容器本体に塗布液が導入されてピストン部が押し上げられた状態を示す斜視図である。
【図7】第二実施形態にかかるアプリケータ装置を示す斜視図である。
【図8】アプリケータ装置の分解斜視図である。
【図9】6枚の攪拌翼を含む攪拌翼ユニットの正面図である。
【図10】攪拌翼ユニットと固定翼ユニットとを同軸に組み合わせた状態を示す正面図である。
【図11】攪拌翼および固定翼をピストン部に収容した状態(第一状態)を示す上方斜視図である。
【図12】(a)は第一状態を示す下方斜視図であり、(b)は正面図である。
【図13】攪拌翼をピストン部に収容し、固定翼を露出させた状態(第二状態)を示す上方斜視図である。
【図14】(a)は第二状態を示す下方斜視図であり、(b)は正面図である。
【図15】アプリケータ装置の第一状態の斜視図である。
【図16】アプリケータ装置の第二状態の斜視図である。
【図17】(a)は第二実施形態の固定翼ユニットの第一変形例の上部斜視図であり、(b)はその正面図である。
【図18】(a)は第二実施形態の第二変形例にかかる容器本体に攪拌翼が回動可能に軸着された状態を示す平面図であり、(b)は正面断面図である。
【図19】(a)は第二変形例の駆動部の正面図であり、(b)は下面図、(c)は正面断面図である。
【図20】(a)はピストン部の前進状態を示す正面断面図であり、(b)はピストン部の後退状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
なお、本実施の形態では、図示するように上下の方向を規定して説明する場合がある。しかしながら、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものであって、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではなく、また重力方向の上下と必ずしも一致しない。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態にかかるアプリケータ装置100を示す斜視図である。
はじめに、本実施形態のアプリケータ装置100の概要について説明する。
【0012】
アプリケータ装置100は、塗布液を入れる中空の容器本体10と、容器本体10に収容された攪拌翼20と、攪拌翼20を容器本体10に対して回動駆動する駆動部40と、容器本体10内部と連通して設けられて塗布具52が装着される吐出口50と、を有している。
【0013】
本実施形態の塗布液は、液体のほかゾルまたはゲルでもよく、これらに粉体などの固体が混合されていてもよい。塗布液の種類は特に限定されないが、染料、塗料、接着剤などを例示することができる。より具体的には、高粘度の染毛剤と低粘度の酸化剤とをアプリケータ装置100で混合して頭髪に塗布する、二剤混合式のヘアカラー剤を例示することができる。
より具体的には、二剤混合式のヘアカラー剤の場合、染毛剤として数万mPa・sの粘度のクリーム状のアルカリカラー剤(酸化染毛剤)を用い、酸化剤として過酸化水素水(H)含有液(粘度:数百mPa・s)を用いることができる。
また、本実施形態の塗布液としてヘアカラー剤を用いる場合において、互いに異なる色の複数種類の染毛剤をアプリケータ装置100で混合して塗布してもよい。
【0014】
アプリケータ装置100は、塗布液を被塗布物に対して塗布する塗布器である。塗布液をヘアカラー剤とする場合、アプリケータ装置100は染毛具として用いられる。
【0015】
以下、アプリケータ装置100について詳細に説明する。
図2は、アプリケータ装置100の分解斜視図である。
図3(a)は攪拌翼20を回動軸方向からみた平面図である。同図(b)は攪拌翼20の上方斜視図、同図(c)は正面図である。
図4(a)はピストン部42を進退方向からみた平面図である。同図(b)はピストン部42の上方斜視図、同図(c)は同じく下方斜視図である。
【0016】
容器本体10は樹脂または金属からなり、中空かつ有底の筒状をなしている。容器本体10の内部が塗布液の攪拌空間V(図6を参照)となる。容器本体10の内部には攪拌翼20が収容されている。
容器本体10の下部には、攪拌空間と連通した吐出口50が開口形成されている。より具体的には、容器本体10には、底部16の近傍高さにノズル部14が設けられている。ノズル部14には吐出口50が穿設されている。
【0017】
ノズル部14にはストッパー板51がスライド可能に装着されている。ストッパー板51をスライドすることにより、吐出口50の開閉が切り替えられる。
吐出口50には塗布具52が装着され、ストッパー板51の切り替えによって塗布具52に塗布液が供給される。
【0018】
塗布具52は、コーム56とブラシ53とコネクタ55とを組み合わせてなる。
コーム56は、アーム57と摘み部58が筒状部59より突出して形成されてなる。アーム57と摘み部58を把持することにより、ブラシ53を筆のごとく用いて塗布液を塗布することができる。
ブラシ53は、コネクタ55に連結される筒形の基部54の先端に毛束が植設されている。基部54には通孔が設けられ、毛束はコネクタ55および筒状部59と連通している。
塗布具52はノズル部14に対して着脱可能に取り付けられている。被塗布部の形状や塗布液の種類に応じて、ブラシ53の形状や毛先長さの異なる複数種類の塗布具52に付け替えてもよい。
【0019】
図2に示すように、ノズル部14とストッパー板51、吐出口50とコーム56、コーム56とコネクタ55の間には、塗布液の漏出を防止するOリング73〜75がそれぞれ介装される。
【0020】
攪拌翼20は、容器本体10に対して回動または回転して塗布液の少なくとも一部に流速を与える部材である。攪拌翼20が塗布液に対して軸方向に揚力を生じるか否かは任意である。
ここで回動とは、正方向または逆方向の少なくとも一方に円運動することを意味し、その回転角は問わない。また、回転とは、360度以上の回転角で正方向または逆方向の少なくとも一方に円運動することを意味する。以下、特に断り無き場合、回動と回転とを区別しない。
【0021】
また、塗布液を攪拌するとは、一種の剤からなる塗布液をかき混ぜることのほか、二種以上の剤を互いに混合することを含む。より具体的には、それぞれ液体、ゾルまたはゲルのいずれかである二種類以上の塗布液を互いに混合する場合のほか、液体、ゾルまたはゲルに対して粉体などの固体を分散させる場合も、攪拌に含む。
【0022】
本実施形態の攪拌翼20は、シャフト部26の周囲に上部翼22と下部翼24とが突出して形成されてなる。上部翼22と下部翼24は、それぞれシャフト部26の両側に二枚の翼板が突出して形成されている。また、上部翼22と下部翼24とは突出方向が互いに略直交している。
上部翼22と下部翼24とは、ともにシャフト部26に固定されており、ポール12を中心として同時に回動する。
【0023】
図3(a)、(b)に示すように、下部翼24は、シャフト部26から径方向に突出した翼板の先端が周方向に屈曲している。これにより、当該周方向に攪拌翼20を回動させた場合に、容器本体10(図1を参照)に入れられた塗布液が良好に攪拌される。
また、図3(c)に示すように、上部翼22の外周側の下端には下垂部23が形成されている。ただし、下垂部23と下部翼24とは非接触である。下垂部23は下部翼24に向かって軸方向の下方に突出して伸び、下垂部23の下端は下部翼24の上端よりも下方にある。すなわち、上部翼22は下垂部23において、下部翼24と軸方向に重複している。これにより、下垂部23の形成位置においては、シャフト部26の周囲に4枚の翼板が回動することとなり、塗布液の攪拌性が良好となる。
【0024】
本実施形態の攪拌翼20は、筒状の中空のシャフト部26の内部にポール12が軸通されている。ポール12は、筒状の容器本体10の底部16に下端が螺合固定され、容器本体10の軸方向(図1、図2に示す上下方向)に沿って立設される。
攪拌翼20のシャフト部26はポール12に対して回動可能である。攪拌翼20の軸方向の移動は、ポール12の上端の鍔部によって規制されている。
すなわち、攪拌翼20は、容器本体10に対して回動可能、かつ軸方向に進退不可に取り付けられている。
なお、容器本体10に対する攪拌翼20の回動角度は特に限定されず、360度以上に回動(回転)可能であってもよく、または360度未満の回動角度にて往復回動してもよい。
【0025】
駆動部40は、攪拌翼20を回動する部材である。本実施形態の駆動部40は、容器本体10に進退可能に収容されて容器本体10の内容積を可変とするピストン部42を含む。
本実施形態の駆動部40は、ピストン部42と把持部45とが一体に成形されてなる。
容器本体10および駆動部40の材料は、耐酸、耐アルカリ性の樹脂材料が好ましい。具体的には、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンが好ましい。また、透明性や耐衝撃性が求められる場合には、ポリカーボネートを用いるとよい。容器本体10と駆動部40とは、それぞれ射出成形によって作製することができる。
【0026】
把持部45はピストン部42の上端にフランジ状に拡径して形成され、ユーザの掌がフィットするよう上面に凹部が設けられている。
なお、図2では、説明のため把持部45とピストン部42とを分離して図示し、図4各図では把持部45を図示せずにピストン部42のみを図示している。
ピストン部42は、円筒状をなし、容器本体10の開口部より気密に挿入される。
以下、容器本体10に対してピストン部42が深く収容される方向を前進方向、同じく浅く収容される方向を後退方向という。
【0027】
図4に示すように、ピストン部42は、円筒部43と、攪拌翼20を進退方向に出没可能に形成された収容溝44を有している。収容溝44は円筒部43の内部に形成されている。円筒部43の下端は、収容溝44を除いて下端面48で閉止されている。
円筒部43の下部周縁には溝部46が周回状に設けられている。
図2に示すように、溝部46にはOリング71が装着されて、容器本体10の内周面と円筒部43とは気密に摺動する。
収容溝44は、図3に示す攪拌翼20の上部翼22が収容される直線溝部44aと、下部翼24が収容される屈曲溝部44bと、シャフト部26が収容される円管部44cとが一体に形成されている。
【0028】
図5(a)は、攪拌翼20と収容溝44との軸心および向きを一致させた状態を示す下方斜視図である。同図(b)は、攪拌翼20の一部を収容溝44に収容した状態を示す下方斜視図である。
直線溝部44aと上部翼22、屈曲溝部44bと下部翼24、および円管部44cとシャフト部26とは、それぞれ嵌め合いに構成され、収容溝44は攪拌翼20の下端まで収容することが可能である。
このため、容器本体10の底部16(図1、図2を参照)に攪拌翼20を立設した状態でピストン部42が容器本体10の内部を前進すると、攪拌翼20が収容溝44に収容されて、ピストン部42の下端面48は容器本体10の底部16まで至る。
これにより、図1に示すように、攪拌翼20が収容された容器本体10の内部をピストン部42によって空気抜きすることができる。このとき、ストッパー板51を開位置に移動させて吐出口50を開放しておくとよい。
【0029】
図6は、容器本体10に塗布液(染毛剤HD、酸化剤OX)が導入されてピストン部42が下方から上方に片側矢印のように押し上げられた状態を示す斜視図である。
【0030】
図1、図2に示すように、容器本体10には、塗布液(染毛剤HDおよび酸化剤OX)を内部に導入するための導入口18と、導入口18に設けられて塗布液の流出を防止する逆止弁82と、を備えている。逆止弁82は、容器本体10の外部から内部(下方から上方)への塗布液の流動を許容し、容器本体10の内部から外部への塗布液の流出を規制する。
また、図2に示すように、逆止弁82は導入口18の下方よりOリング72を介装して取り付けられる。逆止弁82は、底部ナット84によって容器本体10の底部16の下面に固定される。
【0031】
染毛剤HDは、高圧のボトル容器(図示せず)内に高圧に充填された状態で一般に提供されている。また、過酸化水素を含有する本実施形態の酸化剤OXは、ポンプ式容器に充填された状態で一般に提供されている。酸化剤OXに含まれる過酸化水素から発生する酸素ガスにより、ポンプ式容器の内圧は大気圧よりも高圧になっている。このため、本実施形態では、ボトル容器やポンプ式容器の開口を逆止弁82に接続することで、塗布液(染毛剤HDと酸化剤OX)は個別に容器本体10に供給される。
【0032】
アプリケータ装置100は、初期状態において図1に示すように容器本体10がピストン部42で空気抜きされている。この状態で、ストッパー板51を操作して吐出口50を閉止し、ボトル容器から高圧の染毛剤HDと酸化剤OXを順番に容器本体10に導入すると、図6に示すようにピストン部42は押し上げられる。これにより、容器本体10の内部には攪拌空間Vが形成される。また、ピストン部42が塗布液の供給圧で押し上げられると、攪拌翼20は収容溝44から攪拌空間Vに露出する。
【0033】
ピストン部42には、容器本体10に供給された塗布液の体積を示す表示部49が設けられている。本実施形態の場合、ピストン部42の外周面上に、軸方向に伸びる目盛線が付されている。容器本体10の上端などに設けられた基準目印と目盛線との位置関係を目視することにより、染毛剤HDと酸化剤OXの個別計量が可能である。
染毛剤HDと酸化剤OXを任意の順で所定ずつ容器本体10に導入し、表示部49が所定の目盛を示したところで塗布液の供給を停止する。このとき、攪拌翼20と収容溝44との位置関係は、図5(b)に示すように、攪拌翼20(上部翼22、下部翼24)の一部が収容溝44より露出し、他の一部が収容溝44に収容された状態にある。より好ましくは、下部翼24が収容溝44から露出し、かつ上部翼22の一部長さが収容溝44に収容された状態にあるとよい。
この状態で、ユーザは把持部45と容器本体10とをそれぞれ把持して、駆動部40を容器本体10に対して軸回転させる。駆動部40は容器本体10に対して一方向に回転させてもよく、図6に両側矢印で示すように往復回動させてもよい。
そして、収容溝44に一部が収容されてピストン部42と係合した攪拌翼20は、駆動部40とともに容器本体10に対して回動する。これにより、攪拌空間Vに充填された塗布液(染毛剤HD、酸化剤OX)は上部翼22と下部翼24とによって攪拌される。
【0034】
なお、本実施形態に代えて、ピストン部42に基準目印を設け、容器本体10の一部または全部を透明として、基準目印を外部から視認可能としてもよい。そして、容器本体10に対して、視認される基準目印に対応する位置に表示部49の目盛線を設けるとよい。
【0035】
本実施形態のアプリケータ装置100の作用効果について説明する。
本実施形態では、駆動部40のピストン部42が容器本体10に進退可能に収容されて容器本体10の内容積を可変としている。これにより、塗布液の供給量に応じて攪拌空間Vの体積が可変となるため、所望の量の塗布液を攪拌して塗布することができる。
また、ピストン部42は、攪拌翼20を進退方向に出没可能に形成された収容溝44を有している。これにより、攪拌翼20が容器本体10の内部に設けられていても、ピストン部42を容器本体10に対して底部16まで前進させて容器本体10を空気抜きすることができる。このため、攪拌される塗布液に空気が混入することが防止される。
【0036】
なお本実施形態については種々の変形を許容する。
例えば、本実施形態の攪拌翼20は容器本体10の底部にポール12で軸固定されているが、本発明はこれに限られない。攪拌翼20と容器本体10とを非固定とし、攪拌翼20と駆動部40とを回動方向に固定してもよい。この場合、攪拌翼20を、駆動部40の収容溝44に対して軸方向に移動可能に連結するとよい。攪拌翼20を収容溝44から突出させる方向に付勢するバネなどの付勢部材を収容溝44の内部に装着してもよい。そして、収容溝44に格納されていた攪拌翼20を、容器本体10の内部に塗布液が供給されて攪拌空間Vが形成されたときに収容溝44から突出させる。
【0037】
また、容器本体10の内部でシャフト部26が遊星運動式に転回するよう、駆動部40とシャフト部26とを歯車によって連結してもよい。この場合、容器本体10の底面にそれぞれ立設された複数の攪拌翼20を駆動部40によって同時に回動駆動してもよい。
また、本実施形態の駆動部40は手動式であるが、これに代えて、モータ等の電気駆動式としてもよい。
【0038】
また、逆止弁82および導入口18を容器本体10に設けることなく、塗布液を容器本体10の上部開口より注ぎ込んで供給してもよい。すなわち、容器本体10の内部に予め所定量の塗布液を注いだ状態からピストン部42を容器本体10に挿入してもよい。この場合、攪拌翼20を収容溝44に挿通しつつ、ピストン部42の下端面48が塗布液の液面に至るまで駆動部40を前進(下降)させるとよい。かかる変形例の場合、塗布液の液面上部に予め存在していた空気を逃がすための流路を駆動部40に形成してもよい。具体的には、収容溝44と連通する小孔を円筒部43の上部側面または把持部45に穿設しておき、ピストン部42の前進に応じて当該空気を逃がすとよい。
【0039】
<第二実施形態>
図7は、本実施形態にかかるアプリケータ装置100を示す斜視図である。
図8は、アプリケータ装置100の分解斜視図である。
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
【0040】
本実施形態は、容器本体10に対する回動が固定された固定翼30が容器本体10の内部に設けられている点で第一実施形態と相違する。攪拌翼20は、固定翼30との間に隙間GP(図10を参照)をもって回動する。
以下、第一実施形態と共通の事項に関する重複の説明は省略する。
【0041】
本実施形態において固定翼30とは、容器本体10の内部に突出して固定されて、攪拌翼20との間に相対速度をもつ板状または棒状の部材をいう。固定翼30が塗布液に対して軸方向に揚力を生じるか否かは任意である。
【0042】
固定翼30と攪拌翼20との少なくとも一方は、攪拌翼20の回動軸方向に複数のブレード25、35が並んで設けられた櫛歯状をなしている。より具体的には、本実施形態のアプリケータ装置100は、固定翼30と攪拌翼20とがともに櫛歯状をなしている。そして、固定翼30のブレード35と攪拌翼20のブレード25とは互いに隙間GP(図10を参照)をもって噛合するように同軸に設けられている。
【0043】
固定翼30と攪拌翼20とは、回動方向の複数箇所に、好ましくは少なくとも三箇所にそれぞれ設けられている。
【0044】
固定翼30の数と攪拌翼20の数とは、同じでもよく、または異なってもよい。固定翼30と攪拌翼20は、攪拌翼20の軸にあたるポール12と、容器本体10との間に形成される攪拌空間V(図16を参照)の内部に設けられている。固定翼30と攪拌翼20とは回動方向に相対移動する。ここで、固定翼30と攪拌翼20を回動方向の少なくとも二箇所にそれぞれ設けることで、固定翼30と攪拌翼20との初期位置によらず、駆動部40を少なくとも180度回動させれば、固定翼30と攪拌翼20とが交錯して塗布液に剪断力が付与される。また、固定翼30と攪拌翼20とを回動方向の少なくとも三箇所に設けることで、駆動部40を180度回動させたときに、固定翼30と攪拌翼20との初期位置によらず、固定翼30が攪拌翼20を完全に横切って通過することとなる。
【0045】
このため、図6に示したようにユーザが駆動部40を往復揺動させた場合にも、固定翼30と攪拌翼20との初期位置によらず、塗布液に対して剪断力に基づく良好な攪拌力を得ることができる。
【0046】
以下、本実施形態の固定翼30と攪拌翼20についてより詳細に説明する。
【0047】
本実施形態の攪拌翼20は、図8に示すように、シャフト部(内管26)の周囲に対して、回動方向の6箇所に60度間隔で突出して形成されている。
攪拌翼20のシャフト部(内管26)は中空の直管形状であり、内部にポール12を遊挿可能である。
【0048】
図9は、6枚の攪拌翼20を含む攪拌翼ユニット21の正面図である。
6枚の攪拌翼20は、それぞれ複数本のブレード25が軸方向に間欠的に配列された櫛歯状をなしている。以下、本実施形態において軸方向とはポール12の延在方向をいう。本実施形態の軸方向は、駆動部40の回動軸方向と一致している。
各々の攪拌翼20は、軸方向(図8、図9の上下方向)に並ぶ8本のブレード25と、軸方向に延在してブレード25を互いに連結する縦桟27と、シャフト部(内管26)から径方向に突出して縦桟27と連結された横桟28とを含んで構成されている。
横桟28は内管26の上端近傍から放射状に突出して形成され、縦桟27の上端と連結している。一方、6本の縦桟27の下端は、環状部29によって互いに連結されている。
これにより、内管26と、その周囲に設けられた6枚の攪拌翼20とは、互いに一体化されて攪拌翼ユニット21を構成している。
各々の攪拌翼20において、ブレード25は縦桟27から内管26に向かって、径方向の外方から内向きに突出している。そして、ブレード25と内管26とは、径方向に所定のクリアランスCLをもって離間している。
かかるクリアランスCLは、固定翼30の回転軸である中空のシャフト部(外管36:図8を参照)の肉厚よりも大きい。
【0049】
図8に示すように、固定翼30は、シャフト部(外管36)の周囲に60度間隔で6箇所に突出して形成されている。6枚の固定翼30と外管36とは一体化されて固定翼ユニット31を構成している。
各々の固定翼30は、軸方向(図8の上下方向)に櫛歯状に並ぶ6本のブレード35によって構成されている。外管36の周囲に放射状に突出したブレード35を包絡する外径寸法は、攪拌翼ユニット21における環状部29の内径よりも小さい。
【0050】
外管36の内径は、攪拌翼ユニット21における内管26の外径よりも大きい。また、外管36の肉厚は、上記のように内管26とブレード25とのクリアランスCLよりも小さい。これにより、攪拌翼ユニット21の内管26は、固定翼ユニット31の外管36の中空内部に挿通可能である。
【0051】
図10は、攪拌翼ユニット21と固定翼ユニット31とを同軸に組み合わせた状態を示す正面図である。固定翼ユニット31のうち、図示されたブレード35は、紙面の斜め手前側に延在している。
本実施形態は、攪拌翼20と固定翼30の角度方向をずらした状態で内管26を外管36に対して上方より挿入することで、攪拌翼ユニット21を固定翼ユニット31の周囲に装着することができる。そして、ポール12(図8を参照)を軸心として、攪拌翼ユニット21と固定翼ユニット31を容器本体10に対して同軸で固定する。
【0052】
図10に示すように、固定翼ユニット31の下端には突起部34が複数箇所に設けられている。突起部34は、容器本体10の底部16に設けられた凹部(図示せず)に嵌合し、固定翼ユニット31は容器本体10に対して回動が固定される。
すなわち、本実施形態においては、攪拌翼ユニット21はポール12を回動軸として容器本体10に対して回動可能であり、固定翼ユニット31は容器本体10に対して回動不可能に構成されている。
このとき、固定翼ユニット31のブレード35と攪拌翼ユニット21のブレード25とは、軸方向に所定の隙間GPをもって交互に並んでいる。隙間GPは、一例として、0.1〜1mm程度が好ましい。
【0053】
ブレード35とブレード25との軸方向の隙間GPの寸法は、一本のブレード25の上と下とにおいて、および異なるブレード25におけるブレード35との隙間が、互いに同一でもよく、または相違してもよい。ここで、隙間GPの寸法を場所ごとに異ならせることにより、種々の粘度の塗布液に対して、少なくともいずれかの隙間GPを挟むブレード35とブレード25とが、適度な剪断力を与える。また、本実施形態のように複数の塗布液を攪拌して用いる場合、液同士の反応に起因して、攪拌とともに粘度が変化することがある。この場合も、いずれかの隙間GPを挟むブレード35とブレード25とが、塗布液に対して常に適度な剪断力を与える。このため、攪拌の初期から終期に至るまで、塗布液を良好に攪拌することができる。
【0054】
また、ブレード35の先端と縦桟27、およびブレード25の先端と外管36との間にもわずかなクリアランスが存在している。これにより、攪拌翼ユニット21は固定翼ユニット31と干渉することなく、内管26を中心に回動する。ここで、固定翼30と攪拌翼20とは回動方向にともに60度間隔で設けられているため、攪拌翼ユニット21の向きを調整することで、互いの角度を一致させることができる。
また、攪拌翼ユニット21および固定翼ユニット31が容器本体10に取り付けられた状態において、固定翼30の最上位のブレード35よりも、攪拌翼20の横桟28は上側に位置している。
【0055】
本実施形態の駆動部40は、第一実施形態と同様に、容器本体10に進退可能に収容されて容器本体10の内容積を可変とするピストン部42と、ピストン部42の上端に鍔状に一体形成された把持部45とからなる。なお、図8では説明のため把持部45と駆動部40とを分離して図示している。また、後述する図11〜図14では把持部45の図示を省略している。
【0056】
ピストン部42は、円筒部43と、攪拌翼20を進退方向に出没可能に形成された収容溝44を有している(図8を参照)。
【0057】
本実施形態のアプリケータ装置100の場合、攪拌翼20と固定翼30との角度を一致させておくことで、収容溝44は、攪拌翼20および固定翼30をともに進退方向に出没可能に収容することができる。
そして、図7に示すように、攪拌翼20および固定翼30を完全に収容溝44に収容することで、ピストン部42の下端は容器本体10の底部16に当接して容器本体10の内部は空気抜きされる。
【0058】
図11は、攪拌翼20および固定翼30をピストン部42に収容した状態(第一状態)を示す上方斜視図である。
図12(a)は同状態を示す下方斜視図であり、同図(b)は正面図である。図12では、説明のため、固定翼ユニット31にハッチングを付している。
第一状態では、横桟28を含む攪拌翼ユニット21の上部と、固定翼ユニット31における多段のブレード35の少なくとも一段とが、収容溝44に収容されている。第一状態には、攪拌翼ユニット21と固定翼ユニット31とが完全に収容溝44に収容された状態も含む。かかる状態におけるピストン部42の位置を、第一位置という。
【0059】
本実施形態の収容溝44は、横桟28、縦桟27およびブレード25、35を収容するための直線溝部44aと、内管26および外管36を収容するための円管部44cとを含む。六条の直線溝部44aは、円管部44cを中心として60度間隔で設けられている(図11を参照)。
【0060】
ピストン部42は、容器本体10に対して回動可能に設けられている。また、固定翼ユニット31(固定翼30)は、突起部34を介して容器本体10に固定されている。
図12に示すように、ピストン部42は、容器本体10に対して進退方向の第一位置にあるとき、固定翼30の少なくとも一部が収容溝44に係止されてピストン部42と容器本体10との回動が規制される。
このため、ピストン部42は固定翼30によって回動が規制され、結果として攪拌翼20(攪拌翼ユニット21)の回動も不可となる。
【0061】
図13は、攪拌翼20をピストン部42に収容し、固定翼30を露出させた状態(第二状態)を示す上方斜視図である。
図14(a)は同状態を示す下方斜視図であり、同図(b)は正面図である。図14では、説明のため、固定翼ユニット31にハッチングを付している。
第二状態では、横桟28を含む攪拌翼ユニット21の上部が収容溝44に収容され、固定翼ユニット31のブレード35は全段が収容溝44から露出している。かかる状態におけるピストン部42の位置を、第二位置という。
【0062】
ピストン部42が、第一位置よりも後退した第二位置にあるとき、固定翼30は収容溝44から露出してピストン部42と容器本体10とが回動可能となる。
【0063】
すなわち、ピストン部42が第一位置にあるとき、駆動部40による攪拌翼20の回動駆動は規制される。
そして、ピストン部42が第二位置にあるとき、攪拌翼20の少なくとも一部が収容溝44から露出するとともに、駆動部40による攪拌翼20の回動駆動が可能となる。
【0064】
ピストン部42が第二位置にあるとき、ピストン部42は容器本体10に対して液密に摺動する。駆動部40の円筒部43の外周面上には、円筒部43の軸方向に延在する軸方向リブ431と、周方向に延在する周方向リブ432とが突条により設けられている(図8を参照)。
周方向リブ432は、円筒部43の周面と容器本体10の内壁面とのギャップに塗布液が浸入することを防止する部位であり、周方向リブ432と容器本体10との間は液密である。ここで、液密とは、所定の粘性をもつ塗布液の浸入が完全にまたは部分的に規制されている状態をいう。
軸方向リブ431は、円筒部43が容器本体10の内部で回動する際に、容器本体10の内壁面と摺接する部位である。円筒部43に軸方向リブ431を形成したことで、円筒部43の撓み変形を防止し、また円筒部43の摺動摩擦を低減している。
【0065】
図15は、ピストン部42が第一位置にあるアプリケータ装置100の第一状態の斜視図である。
図16は、ピストン部42が第二位置にあるアプリケータ装置100の第二状態の斜視図である。図15、図16とも、説明のため容器本体10を透明に図示している。
【0066】
図7に示した初期状態(空気抜き状態)から、逆止弁82を介して加圧状態の塗布液(図示せず)が容器本体10に供給されると、ピストン部42の下端面48は塗布液に押し上げられて、図15に示す第一位置に至る。この状態では、固定翼30の少なくとも一部が収容溝44に収容されている。換言すると、固定翼30はピストン部42と係合(掛合)している。このため、ピストン部42は容器本体10に対する回動が規制されている。
【0067】
そして、容器本体10に対してさらに塗布液を供給して、ピストン部42の下端面48をより押し上げると、図16に示す第二位置に至る。この状態では、固定翼30は収容溝44から脱離して、すなわちピストン部42との係合が外れて、容器本体10の攪拌空間Vに完全に露出している。
一方、攪拌翼20の一部は収容溝44に収容されてピストン部42と係合している。
このため、駆動部40にトルクを与えることで、ピストン部42は容器本体10に対して回動可能となる一方、攪拌翼20を攪拌空間Vの内部で回動させることができる。
これにより、図16に示す第二状態のアプリケータ装置100では、攪拌翼20によって塗布液を攪拌することができる。
【0068】
塗布液を十分に攪拌したところで、ストッパー板51を操作して吐出口50を開放する(図8を参照)。この状態で駆動部40(ピストン部42)を容器本体10に対して前進(下降)させることにより、塗布液を吐出口50より吐出して塗布具52に供給することができる。
このとき、前進するピストン部42の収容溝44に固定翼ユニット31が収容されることで、ピストン部42は容器本体10の底部16に至るまで押し込まれ、塗布液の全量が吐出口50より吐出することができる。
【0069】
図16に示すように、本実施形態のアプリケータ装置100は、ピストン部42が第二位置にあることを示す表示部49をさらに備えている。
本実施形態の表示部49は、ピストン部42の周面に目盛線として形成されている。表示部49(目盛線)は容器本体10に設けてもよい。また、かかる態様に代えて、表示部49は、ピストン部42の位置や攪拌空間Vの体積をセンサで測定してデジタル表示するセンサユニットでもよい。
表示部49を備えることにより、ユーザは、塗布液の供給時には供給量(攪拌空間Vの体積)を知ることができ、ピストン部42が第二位置に至って駆動部40が回動可能となっていることがわかる。また、塗布液の吐出時には、吐出口50から吐出された量を知ることができる。
【0070】
本実施形態のアプリケータ装置100の作用効果について説明する。
本実施形態の攪拌翼20は、固定翼30との間に隙間GPをもって回動する。これにより、隙間GPに位置する塗布液には剪断力が生じる。
ここで、塗布液として、互いに粘度が大きく異なる複数種類の液を混合して用いる場合にも良好な攪拌力を得ることができる。
【0071】
特に本実施形態のように固定翼30と攪拌翼20との少なくとも一方、より具体的には両方を櫛歯状としてブレード25、35を互い違いに噛合させることにより、各ブレード25、35の長さ方向に亘って隙間GPが形成される。このため、塗布液には、各ブレード25、35の合計長さに亘って剪断力が与えられる。このため、粘度のオーダーが異なる複数種類の剤を塗布液に用いた場合も、各剤が互いに分離して海島状に分散して回転してしまうことなく、良好に攪拌することができる。
【0072】
また、固定翼30と攪拌翼20とは、回動方向の複数箇所に、好ましくは少なくとも三箇所にそれぞれ設けられている。これにより、ユーザが駆動部40を360度未満の角度で往復回動させた場合も、固定翼30のブレード35と攪拌翼20のブレード25とが交錯して塗布液に剪断流が生じる。
特に、本実施形態のように60度間隔で6箇所に固定翼30と攪拌翼20を形成することにより、ユーザが60度程度、すなわち90度以下の角度で駆動部40を往復回動させた場合も塗布液に剪断流を生じることができる。
【0073】
また、本実施形態の収容溝44は攪拌翼20および固定翼30をともに進退方向に出没可能に収容する。このため、容器本体10の内部に固定翼30が突出して固定されていても、これにピストン部42が干渉してしまうことなく空気抜きが可能である。
【0074】
本実施形態のピストン部42は、第一位置においては固定翼30と係合して容器本体10との回動が規制され、第一位置よりも後退(上昇)した第二位置においては攪拌翼20との係合を維持しつつ固定翼30が外れて容器本体10と回動可能となる。これにより、塗布液の充填時にはピストン部42の回動は規制され、塗布液を乱さずにピストン部42は軸方向にまっすぐに押し上げられ、塗布液の供給孔にあたる導入口18(図8を参照)を不測に塞ぐこともない。一方、塗布液の充填完了時には、ピストン部42は自動的に回動可能となって攪拌翼20を回動駆動することができる。
【0075】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
図17(a)は、第二実施形態の固定翼ユニット31の第一変形例の上部斜視図であり、同図(b)はその正面図である。本変形例の固定翼ユニット31は、各々の固定翼30を構成するブレード35が三段である点で第二実施形態と相違する。
そして、ブレード35が六段である第二実施形態の固定翼ユニット31(図10を参照)を、本変形例の固定翼ユニット31に交換することにより、ピストン部42が固定翼30から外れる第二位置の高さを低くすることができる。
言い換えると、ブレード35の段数が異なる複数式の固定翼ユニット31を用意しておき、いずれかを選択して容器本体10に取り付けることにより、攪拌空間Vの体積を選択的に変えることができる。
このとき、固定翼ユニット31ごとにブレード35の幅(軸方向の寸法)を相違させておくことにより、攪拌翼ユニット21のブレード25との隙間GP(図10を参照)を変化させることができる。したがって、塗布液の粘度の高低に応じて適切な剪断力が得られるよう、使用する固定翼ユニット31を選択可能としてもよい。
なお、本変形例に代えて、攪拌翼20のブレード25の幅が互いに異なる複数式の攪拌翼ユニット21を用意しておき、塗布液の粘度に応じて攪拌翼ユニット21を適宜選択してもよい。
【0076】
図18(a)は、第二実施形態の第二変形例にかかる容器本体10に攪拌翼20が回動可能に軸着された状態を示す平面図であり、同図(b)は正面断面図である。
本変形例の固定翼30は、有底円筒状の容器本体10の内周面に設けられている。より具体的には、多段のブレード35が軸方向に並んで固定翼30を構成し、かかる固定翼30が回動方向の複数箇所に設けられている。
本変形例の場合、三段のブレード35からなる固定翼30が、容器本体10の内周面上に、180度間隔で対向して設けられている。
攪拌翼20は、シャフト部26を軸心として容器本体10に回動可能に取り付けられている。攪拌翼20は、シャフト部26の周囲に180度間隔で2箇所に設けられている。
容器本体10の開口した上端には、爪部19が径方向の内側に向けて突出して形成されている。
【0077】
図19(a)は、本変形例の駆動部40の正面図であり、同図(b)は下面図、同図(c)は正面断面図である。
駆動部40は、ピストン部42と把持部45とが一体形成されている。ピストン部42には下端面48から把持部45に向かって収容溝44が穿設されている。
収容溝44は、攪拌翼20のブレード25を収容する第一の直線溝部44aと、シャフト部26を挿通する円管部44cと、ブレード35を収容する第二の直線溝部44dとを含む。第一の直線溝部44aと第二の直線溝部44dとは互いに直交している。第二の直線溝部44dは、ピストン部42の外周にスリット状に形成されている。
また、ピストン部42の円筒部43の外周面には、爪部19が掛止する周回状の溝部46が軸方向に多段に設けられている。
【0078】
図20各図は、容器本体10にピストン部42を収容して、下端面48と容器本体10とで囲まれた攪拌空間Vに塗布液が充填された状態を示す正面断面図である。
同図(a)はピストン部42を深く挿入した前進状態を示し、同図(b)はピストン部42の挿入を浅くした後退状態を示している。
【0079】
本変形例は、攪拌翼20が収容溝44に収容されることにより、これがピストン部42と係合して回動駆動される点で、第一および第二実施形態と共通している。そして、本変形例は、容器本体10の爪部19を掛止させる溝部46を任意で選択してピストン部42の進退位置を上下に変化させることにより、塗布液が充填される攪拌空間Vの体積が可変となることを特徴とする。
図20(a)の場合、上側の溝部46(図中(1))に対して爪部19が掛止している。同図(b)の場合、下側の溝部46(図中(2))に対して爪部19が掛止し、攪拌空間Vは同図(a)の場合よりも大きくなっている。
なお、本変形例の場合、溝部46と爪部19とが掛止した状態で、下端面48とブレード35の上面とは面一にある。これにより、下端面48に開口した第二の直線溝部44dを通じて塗布液が収容溝44に流入することが抑制されている。
【0080】
本変形例では、溝部46と爪部19との掛止位置を変えることで、攪拌空間Vの体積を選択的に変更することができる。
また、本変形例は、容器本体10と固定翼30とを一体成形しているため、少ない部品点数によって塗布液を攪拌することができる。そして、駆動部40を回動させた場合に固定翼30に負荷される荷重が、本変形例の場合は各ブレード35に分散して印加される。このため、かかる荷重が固定翼30に集中することがなく、容器本体10および固定翼30の耐久性が向上する。
【符号の説明】
【0081】
10 容器本体
12 ポール
14 ノズル部
16 底部
18 導入口
19 爪部
20 攪拌翼
21 攪拌翼ユニット
22 上部翼
23 下垂部
24 下部翼
25、35 ブレード
26 シャフト部(内管)
27 縦桟
28 横桟
29 環状部
30 固定翼
31 固定翼ユニット
34 突起部
36 外管
40 駆動部
42 ピストン部
43 円筒部
431 軸方向リブ
432 周方向リブ
44 収容溝
44a、44d 直線溝部
44b 屈曲溝部
44c 円管部
45 把持部
46 溝部
48 下端面
49 表示部
50 吐出口
51 ストッパー板
52 塗布具
53 ブラシ
54 基部
55 コネクタ
56 コーム
57 アーム
58 摘み部
59 筒状部
71〜75 Oリング
82 逆止弁
84 底部ナット
100 アプリケータ装置
CL クリアランス
GP 隙間
HD 染毛剤
OX 酸化剤
V 攪拌空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を入れる中空の容器本体と、前記容器本体に収容された攪拌翼と、前記攪拌翼を前記容器本体に対して回動駆動する駆動部と、前記容器本体内部と連通して設けられ塗布具が装着される吐出口と、を有するアプリケータ装置。
【請求項2】
前記容器本体に対する回動が固定された固定翼が前記容器本体の内部に設けられ、
前記攪拌翼が、前記固定翼との間に隙間をもって回動する請求項1に記載のアプリケータ装置。
【請求項3】
前記固定翼と前記攪拌翼との少なくとも一方が、前記攪拌翼の回動軸方向に複数のブレードが並んで設けられた櫛歯状をなしている請求項2に記載のアプリケータ装置。
【請求項4】
前記固定翼と前記攪拌翼とがともに前記櫛歯状をなし、前記固定翼の前記ブレードと前記攪拌翼の前記ブレードとが互いに隙間をもって噛合するように同軸に設けられている請求項3に記載のアプリケータ装置。
【請求項5】
前記固定翼と前記攪拌翼とが、回動方向の少なくとも三箇所にそれぞれ設けられている請求項2から4のいずれか一項に記載のアプリケータ装置。
【請求項6】
前記容器本体が筒状をなし、
前記駆動部が、前記容器本体に進退可能に収容されて前記容器本体の内容積を可変とするピストン部を含む請求項1から5のいずれか一項に記載のアプリケータ装置。
【請求項7】
前記ピストン部が、前記攪拌翼を進退方向に出没可能に形成された収容溝を有する請求項6に記載のアプリケータ装置。
【請求項8】
前記容器本体に対する回動が固定された固定翼が前記容器本体の内部に設けられた請求項7に記載のアプリケータ装置であって、
前記収容溝が、前記攪拌翼および前記固定翼をともに進退方向に出没可能に収容することを特徴とするアプリケータ装置。
【請求項9】
前記ピストン部が前記容器本体に対して回動可能に設けられ、かつ、
前記ピストン部が前記容器本体に対して進退方向の第一位置にあるとき、前記固定翼の少なくとも一部が前記収容溝に係止されて前記ピストン部と前記容器本体との回動が規制され、
前記ピストン部が前記第一位置よりも後退した第二位置にあるとき、前記固定翼が前記収容溝から露出して前記ピストン部と前記容器本体とが回動可能となることを特徴とする請求項8に記載のアプリケータ装置。
【請求項10】
前記ピストン部が前記第一位置にあるとき、前記駆動部による前記攪拌翼の回動駆動が規制され、
前記ピストン部が前記第二位置にあるとき、前記攪拌翼の少なくとも一部が前記収容溝から露出するとともに、前記駆動部による前記攪拌翼の回動駆動が可能となる請求項9に記載のアプリケータ装置。
【請求項11】
前記容器本体が、前記塗布液を内部に導入するための導入口と、前記導入口に設けられて前記塗布液の流出を防止する逆止弁と、を備える請求項1から10のいずれか一項に記載のアプリケータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−182931(P2011−182931A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51013(P2010−51013)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】