説明

アミノ酸変性オルガノポリシロキサン及びその製造方法

【課題】安全性の高い原料から、簡便な方法で、高い収率にてアミノ酸変性オルガノポリシロキサンを製造する方法を提供する。
【解決手段】主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに、一般式(1)で表されるアミド結合を介してアミノ酸誘導体が結合してなるアミノ酸変性オルガノポリシロキサン。


(X及びYは炭素数1〜10の2価の炭化水素基、mは0〜4の整数、Raは水素原子、炭素数1〜4の1価の炭化水素基、又は一般式(2)から選択される基、Zは一般式(2)で表される有機基。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミノ酸変性オルガノポリシロキサン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸又はペプチド変性シリコーン及びその製造方法としては、様々な化合物、製造法が検討されている。
例えば、下記式に示されるアミノ酸誘導体変性シリコーンが知られているが、このアミノ酸誘導体変性シリコーンはアミノ酸のアミノ基、カルボキシ基が保護された構造となっている。更に、イソシアネートやジシクロへキシルカルボジイミドなど、毒性の化合物を使用しており、安全性の面から好ましくない。また、このような複雑な構造の化合物は簡便に製造することはできない(特許文献1:特開2004−182680号公報)。
【化1】

【0003】
下記に示されるアミノ酸誘導体変性シリコーンも、同様に、簡便に合成することができない保護型アミノ酸誘導体を用いていることが問題である(特許文献2:特開2004−269459号公報)。
【化2】

【0004】
更に、下記式に示されるペプチド−シリコーン−コポリマーは、アスパラギン酸がポリスクシンイミドを生成することを利用した方法であるが、反応には160℃以上の高温が必要であり、危険である。また、副反応により不要な成分生成で、濾過や洗浄の工程が必要となり、収率も悪い(特許文献3:特開2000−143797号公報)。
【化3】

【0005】
更に、特許文献4(特開平3−223207号公報)には、片末端エポキシ変性シリコーンとペプチドのアミノ基を反応させる方法が記載されているが、反応剤として用いるエポキシ変性シリコーンは毒性があり、好ましくない。
【0006】
また、特許文献5(特開平11−286550号公報)では、ペプチド含有シランとアルコキシシラン等を加水分解共重合させる方法が示されているが、この方法ではペプチド含有シラン由来のアミノ基やカルボキシル基が加水分解に対して弱い−Si−NH−や−Si−OOC−を生成してしまうため、保存安定性に問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−182680号公報
【特許文献2】特開2004−269459号公報
【特許文献3】特開2000−143797号公報
【特許文献4】特開平3−223207号公報
【特許文献5】特開平11−286550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規アミノ酸変性オルガノポリシロキサンを提供すること、及び安全性の高い原料から、簡便な方法で、高い収率にて該アミノ酸変性オルガノポリシロキサンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、安全性の高いアミノ変性オルガノポリシロキサンとピログルタミン酸誘導体を反応させることにより、簡便かつ高い収率で新規アミノ酸変性オルガノポリシロキサンを製造し得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記アミノ酸変性オルガノポリシロキサン及び該アミノ酸変性オルガノポリシロキサンの製造方法を提供する。
請求項1:
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに、下記一般式(1)で表されるアミド結合を介してアミノ酸誘導体が結合してなるアミノ酸変性オルガノポリシロキサン。
【化4】


(一般式(1)中、X及びYはそれぞれ独立に、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、mは0〜4の整数であり、Raは水素原子、炭素数1〜4の1価の炭化水素基、又は下記一般式(2)から選択される基であり、Zは下記一般式(2)で表される有機基を示す。)
【化5】


(一般式(2)中、Rbは水素原子、炭素数1〜7の1価の炭化水素基、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属であり、Rcは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1〜10の酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子を含有してもよい1価の炭化水素基である。)
請求項2:
下記平均組成式(3)で表される化合物である請求項1に記載のアミノ酸変性オルガノポリシロキサン。
【化6】


〔式(3)中、Rは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフロロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基であり、R10は請求項1に記載の一般式(1)で表される有機基であり、R11はR10又はRから選択される有機基であり、Aは下記一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサンセグメントであり、
【化7】


(一般式(4)において、R及びR10は上記の通りであり、Qは酸素原子、又は炭素数1〜3の2価の炭化水素基である。)
式(3)及び一般式(4)において、a、b及びcは互いに独立に0〜3の整数であり、eは0〜500の整数であり、fは0〜50,000の整数であり、gは0又は1の整数であり、hは0又は1の整数であり、iは0〜500の整数であり、jは0〜10,000の整数であり、但し、R11がR10である場合、1≦a+b+c+e+g+iであり、R11がRである場合、1≦a+b+c+e+iである。〕
請求項3:
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに、下記一般式(5)で表されるアミノ基が結合してなるアミノ変性オルガノポリシロキサンと下記一般式(6)で表される化合物とを反応させることを特徴とする請求項1又は2に記載のアミノ酸変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【化8】


(一般式(5)中、X、Y、及びmは請求項1で定義したものと同じ意味を示し、Rdは水素原子又は炭素数1〜4の1価の炭化水素基である。)
【化9】


(一般式(6)中、Rb、Rcは請求項1で定義したものと同じ意味を示す。)
請求項4:
アミノ変性オルガノポリシロキサンが、下記平均組成式(7)で示されるものであることを特徴とする請求項3に記載のアミノ酸変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【化10】


〔式(7)中、Rは請求項2で定義したものと同じ意味を示し、R12は請求項3に記載の一般式(5)で表される有機基であり、R13はR12又はRから選択される有機基であり、A1は下記一般式(8)で表されるオルガノポリシロキサンセグメントであり、
【化11】


(一般式(8)において、R及びR12は上記の通りである。)
式(7)及び一般式(8)において、a1、b1及びc1は互いに独立に0〜3の整数であり、e1は0〜500の整数であり、fは0〜50,000の整数であり、g1は0又は1の整数であり、h1は0又は1の整数であり、i1は0〜500の整数であり、jは0〜10,000の整数であり、但し、R13がR12である場合、1≦a1+b1+c1+e1+g1+i1であり、R13がRである場合、1≦a1+b1+c1+e1+i1である。)
請求項5:
50℃以上160℃以下の温度条件で反応させることを特徴とする請求項3又は4に記載の製造方法。
請求項6:
一般式(6)で表される化合物がピログルタミン酸であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、新規アミノ酸変性オルガノポリシロキサンを提供する。このアミノ酸変性オルガノポリシロキサンは、親水基としてカルボキシル基とアミノ基を有しているため、化粧料、粉体表面処理、繊維処理、塗料、樹脂改質等に有用である。また、本発明の製造方法によれば、安全性の高い原料から、簡便な方法で、副生成物もなく、精製も必要なく、高い収率にて該アミノ酸変性オルガノポリシロキサンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに、一般式(1)で表されるアミド結合を介してアミノ酸誘導体が結合してなるアミノ酸変性オルガノポリシロキサンである。主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントは特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状でも良いが、好ましくは直鎖状である。
【0013】
【化12】


(一般式(1)中、X及びYはそれぞれ独立に、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、mは0〜4の整数であり、Raは水素原子、炭素数1〜4の1価の炭化水素基、又は下記一般式(2)から選択される基であり、Zは下記一般式(2)で表される有機基を示す。)
【0014】
【化13】


(一般式(2)中、Rbは水素原子、炭素数1〜7の1価の炭化水素基、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属であり、Rcは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1〜10の酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子を含有してもよい1価の炭化水素基である。)
【0015】
一般式(1)において、X及びYで示される炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の2価脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10、更に2〜6のアルキレン基又はフェニレン基がより好ましく、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、又はフェニレン基が更に好ましい。mは0〜4の整数を示すが、0〜3が好ましい。Raは水素原子、炭素数1〜4の1価の炭化水素基、又は一般式(2)から選択される基であるが、好ましくは、水素原子、炭素数1〜4の1価の飽和脂肪族炭化水素基、又は一般式(2)から選択される基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、一般式(2)で表される有機基である。Zは一般式(2)で表される基を示し、一般式(2)中のRbは水素原子又は炭素数1〜7の1価の炭化水素基、アルカリ金属、アルカリ土類金属を示すが、炭素数1〜7の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜7の1価飽和炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等が挙げられる。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはベリリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。Rbとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンジル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムがより好ましく、水素原子が更に好ましい。Rcは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1〜10の酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子を含有してもよい1価の炭化水素基である。炭素数1〜10の酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子を含有してもよい1価の炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の1価脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の1価芳香族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子を含有する炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の1価脂肪族飽和炭化水素基又は酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子を含有する炭素数6〜10の1価芳香族炭化水素基であり、好ましくは水素原子、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基である。
【0016】
本発明のアミノ酸変性オルガノポリシロキサンとしては、平均組成式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化14】

【0017】
式(3)中、Rは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフロロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基であり、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフロロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、トリフロロプロピル基、ヘプタデカフロロデシル基等のフロロアルキル基を挙げることができる。これらのうち、炭素原子数1〜15のアルキル基及びフェニル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。R10は一般式(1)で表される有機基であり、R11はR10又はRから選択される有機基である。Aは下記一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサンセグメントであり、
【化15】


(一般式(4)において、R及びR10は上記の通りであり、Qは酸素原子、又は炭素数1〜3の2価の炭化水素基であり、好ましくは酸素原子である。)
また、式(3)及び一般式(4)において、a、b及びcは互いに独立に0〜3の整数である。eは0〜500、好ましくは1〜100の整数であり、fは0〜50,000、好ましくは1〜4,000の整数であり、gは0又は1の整数であり、hは0又は1の整数であり、iは0〜500、好ましくは0〜100の整数であり、jは0〜10,000、好ましくは0〜3,000の整数であり、但し、R11がR10である場合、1≦a+b+c+e+g+iであり、R11がRである場合、1≦a+b+c+e+iである。
【0018】
本発明は、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに、下記一般式(5)で表されるアミノ基が結合してなるアミノ変性オルガノポリシロキサンと下記一般式(6)で表される化合物とを反応させる、アミノ酸変性オルガノポリシロキサンの製造方法であり、一般式(5)に示されるX、Y、及びmは上記で示した通りである。Rdは水素原子又は炭素数1〜4の1価の炭化水素基であり、好ましくは直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜4の脂肪族飽和炭化水素であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。
【0019】
【化16】

【0020】
一般式(6)中のRb、Rcも上記で示した通りであり、より好ましくはピログルタミン酸、ピログルタミン酸ナトリウムである。一般式(6)の化合物は不斉炭素を持っており、特に限定されないが、光学活性体、ラセミ体のいずれのものも使用し得る。
【0021】
本発明のアミノ変性オルガノポリシロキサンは、平均組成式(7)で示されるものである。
【化17】


〔式(7)中、Rは式(3)と同じものを意味し、R12は一般式(5)で表される有機基であり、R13はR12又はRから選択される有機基であり、A1は下記一般式(8)で表されるオルガノポリシロキサンセグメントであり、
【化18】


(一般式(8)において、R及びR12、Qは上記の通りである。)
また、式(7)及び一般式(8)において、a1、b1及びc1は互いに独立に0〜3の整数である。e1は0〜500、好ましくは1〜100の整数であり、fは0〜50,000、好ましくは1〜4,000の整数であり、g1は0又は1の整数であり、h1は0又は1の整数であり、i1は0〜500、好ましくは0〜100の整数であり、jは0〜10,000、好ましくは0〜3,000の整数であり、但し、R13がR12である場合、1≦a1+b1+c1+e1+g1+i1であり、R13がRである場合、1≦a1+b1+c1+e1+i1である。〕
【0022】
本発明の主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに、一般式(5)で表されるアミノ基が結合してなるアミノ変性オルガノポリシロキサンと一般式(6)で表される化合物は特に触媒は必要なく、定量的に反応するが、使用割合は、オルガノポリシロキサン中のアミノ基1当量に対して一般式(6)で表される化合物を0.3〜1.5当量であり、好ましくは0.8〜1.1当量であり、より好ましくは1.0当量である。一般式(5)のポリシロキサン中のアミノ基含有量はアミン当量を測定することによって確認できる。
【0023】
本発明のアミノ酸変性オルガノポリシロキサン製造の反応工程の反応温度としては50〜160℃が好ましい。高温で反応させた場合、副生物の生成により着色することがあるため、より好ましくは70〜100℃である。反応時間は特に限定されないが、2〜10時間が好ましく、より好ましくは3〜5時間である。
【0024】
本発明のアミノ酸変性オルガノポリシロキサン製造の反応工程は、無溶剤でも反応は進行するが、有機溶剤中で反応させてもよい。有機溶剤としては、特に限定されず、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤が挙げられる。反応温度が100℃以下であり、溶剤の取り除き易さ、安全性の観点から、特にメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノールが好ましい。本発明の製造方法では、副生成物がないため、溶剤を取り除く以外の精製は特に必要ない。
【0025】
上記本発明の新規アミノ酸変性オルガノポリシロキサンは、例えば化粧料、粉体表面処理、繊維処理、塗料、樹脂改質等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0027】
実施例1
反応器に下記平均組成式(i)
【化19】


で表されるアミン当量が410g/molのオルガノポリシロキサン180質量部、メタノール100質量部、DL−ピログルタミン酸56質量部を80℃にて4時間撹拌した。
得られた反応混合物を減圧下、90℃でストリップすることにより、溶剤を取り除き、224質量部の白色ワックス状固体を95%収率で得た。下記表1に示す13C−NMRの結果と、IRスペクトル測定により、1687cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことから、この生成物が、式(i)両末端の
【化20】

がそれぞれ下記式(ii)
【化21】


に変換されたアミノ酸変性オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例2
反応器に下記平均組成式(iii)
【化22】


で表されるアミン当量が1,910g/molのオルガノポリシロキサン200質量部、エタノール150質量部、L−ピログルタミン酸7質量部を80℃にて5時間撹拌した。
得られた反応混合物を減圧下、90℃でストリップすることにより、溶剤を取り除き、194質量部の高粘度の無色透明液体を94%収率で得た。下記表2に示す13C−NMRの結果と、IRスペクトル測定により、1687cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことから、この生成物が、式(iii)中の
【化23】


が下記式(iv)
【化24】


にそれぞれ変換されたアミノ酸変性オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0030】
【表2】

【0031】
実施例3
反応器に下記平均組成式(v)
【化25】


で表されるアミン当量が1,490g/molのオルガノポリシロキサン250質量部、DL−ピログルタミン酸エチル26質量部を120℃にて5時間撹拌したところ、生成物を267質量部、94%収率で得た。
得られた生成物は淡黄色透明液体であり、アミン当量は1,630g/molであった。下記表3に示す13C−NMRの結果と、IRスペクトル測定により、1687cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことから、この生成物が、式(v)の両末端の
【化26】


がそれぞれ下記式(vi)
【化27】


に変換されたアミノ酸変性オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0032】
【表3】

【0033】
実施例4
反応器に下記平均組成式(vii)
【化28】


で表されるアミン当量が7,250g/molのオルガノポリシロキサン300質量部、2−プロパノール120質量部、DL−ピログルタミン酸ナトリウム6質量部を95℃にて5時間撹拌した。
得られた反応混合物を減圧下、100℃でストリップすることにより、溶剤を取り除き、293質量部の高粘調な無色透明液体を95%収率で得た。下記表4に示す13C−NMRの結果と、IRスペクトル測定により、1685cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことから、この生成物が、式(vii)の
【化29】


がそれぞれ下記式(viii)
【化30】


に変換されたアミノ酸変性オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0034】
【表4】

【0035】
実施例5
反応器に下記平均組成式(ix)
【化31】


で表されるアミン当量が3,230g/molのオルガノポリシロキサン350質量部、n−ブタノール200質量部、DL−ピログルタミン酸14質量部を95℃にて5時間撹拌した。
得られた反応混合物を減圧下、120℃でストリップすることにより、溶剤を取り除き、345質量部の非常に高粘調な無色透明液体を95%収率で得た。下記表5に示す13C−NMRの結果と、IR測定により、1685cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことから、この生成物が、式(ix)の
【化32】


がそれぞれ下記式(x)
【化33】


に変換されたアミノ酸変性オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0036】
【表5】

【0037】
実施例6
反応器に下記平均組成式(xi)
【化34】


で表されるアミン当量が600g/molのオルガノポリシロキサン80質量部、4,4−ジメチルピログルタミン酸18質量部、2−プロパノール15質量部を95℃にて5時間撹拌した。
得られた反応混合物を減圧下、100℃でストリップすることにより、溶剤を取り除き、94質量部の高粘調な無色透明液体を94%収率で得た。下記表6に示す13C−NMRの結果と、IRスペクトル測定により、1683cm-1(アミド結合由来)に吸収が見られたことから、この生成物が、式(xi)の両末端の
【化35】


がそれぞれ下記式(xii)
【化36】


に変換されたアミノ酸変性オルガノポリシロキサンであることを確認した。
【0038】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに、下記一般式(1)で表されるアミド結合を介してアミノ酸誘導体が結合してなるアミノ酸変性オルガノポリシロキサン。
【化1】


(一般式(1)中、X及びYはそれぞれ独立に、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、mは0〜4の整数であり、Raは水素原子、炭素数1〜4の1価の炭化水素基、又は下記一般式(2)から選択される基であり、Zは下記一般式(2)で表される有機基を示す。)
【化2】


(一般式(2)中、Rbは水素原子、炭素数1〜7の1価の炭化水素基、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属であり、Rcは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1〜10の酸素原子、硫黄原子、もしくは窒素原子を含有してもよい1価の炭化水素基である。)
【請求項2】
下記平均組成式(3)で表される化合物である請求項1に記載のアミノ酸変性オルガノポリシロキサン。
【化3】


〔式(3)中、Rは互いに独立に、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフロロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及び炭素数7〜30のアラルキル基から選択される基であり、R10は請求項1に記載の一般式(1)で表される有機基であり、R11はR10又はRから選択される有機基であり、Aは下記一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサンセグメントであり、
【化4】


(一般式(4)において、R及びR10は上記の通りであり、Qは酸素原子、又は炭素数1〜3の2価の炭化水素基である。)
式(3)及び一般式(4)において、a、b及びcは互いに独立に0〜3の整数であり、eは0〜500の整数であり、fは0〜50,000の整数であり、gは0又は1の整数であり、hは0又は1の整数であり、iは0〜500の整数であり、jは0〜10,000の整数であり、但し、R11がR10である場合、1≦a+b+c+e+g+iであり、R11がRである場合、1≦a+b+c+e+iである。〕
【請求項3】
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも一つに、下記一般式(5)で表されるアミノ基が結合してなるアミノ変性オルガノポリシロキサンと下記一般式(6)で表される化合物とを反応させることを特徴とする請求項1又は2に記載のアミノ酸変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【化5】


(一般式(5)中、X、Y、及びmは請求項1で定義したものと同じ意味を示し、Rdは水素原子又は炭素数1〜4の1価の炭化水素基である。)
【化6】


(一般式(6)中、Rb、Rcは請求項1で定義したものと同じ意味を示す。)
【請求項4】
アミノ変性オルガノポリシロキサンが、下記平均組成式(7)で示されるものであることを特徴とする請求項3に記載のアミノ酸変性オルガノポリシロキサンの製造方法。
【化7】


〔式(7)中、Rは請求項2で定義したものと同じ意味を示し、R12は請求項3に記載の一般式(5)で表される有機基であり、R13はR12又はRから選択される有機基であり、A1は下記一般式(8)で表されるオルガノポリシロキサンセグメントであり、
【化8】


(一般式(8)において、R及びR12は上記の通りである。)
式(7)及び一般式(8)において、a1、b1及びc1は互いに独立に0〜3の整数であり、e1は0〜500の整数であり、fは0〜50,000の整数であり、g1は0又は1の整数であり、h1は0又は1の整数であり、i1は0〜500の整数であり、jは0〜10,000の整数であり、但し、R13がR12である場合、1≦a1+b1+c1+e1+g1+i1であり、R13がRである場合、1≦a1+b1+c1+e1+i1である。)
【請求項5】
50℃以上160℃以下の温度条件で反応させることを特徴とする請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
一般式(6)で表される化合物がピログルタミン酸であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−122066(P2011−122066A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281114(P2009−281114)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】