アミロイド関連疾患診断用組成物
【課題】 アミロイドβ蛋白に対する高い結合特異性、高い血液脳関門の透過性、脳内老人斑以外の部位からの速やかな消失性を併せ持つ化合物を提供する。
【解決手段】 一般式(II)
【化1】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は水素原子などを示し、R7はアリール基などを示す。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【解決手段】 一般式(II)
【化1】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は水素原子などを示し、R7はアリール基などを示す。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病などのアミロイド関連疾患の診断のために用いられる組成物、前記組成物を利用したアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法、前記組成物を利用したアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の急速な高齢化に伴い、アルツハイマー病(AD)をはじめとする痴呆性疾患の増加が大きな社会問題のひとつになっている。現在、ADの臨床診断法には、長谷川式、ADAS、MMSEがあり、いずれもADが疑われる個体の認知機能の低下を定量的に評価する方法が一般的に用いられる。この他画像診断法(MRI, CT等)が補助的に用いられるが、これらの診断法ではADを確定診断するには不十分であり、確定診断には生前における脳の生検、死後脳の病理組織学的検査において、老人斑と神経原繊維の出現を確認することが必要である。したがって、現在の診断方法では、広範な脳障害が生じる前の早期段階でADを診断するのは困難である。これまでにADの生物学的診断マーカーとしていくつかの報告があるが、臨床上実用的なものはいまだ開発されていない。このような状況下、ADの早期診断に対する社会的要求は高く、その早急な開発が強く望まれている。
【0003】
老人斑はADの最も特徴的な脳病変であり、その主構成成分はβシート構造をとったアミロイドβ蛋白である。体外からの老人斑の画像化はADの有効な診断法の確立につながると考えられるが、画像化には、アミロイドβ蛋白と特異的に結合するプローブ化合物が必要である。これまでに、プローブ化合物としてコンゴーレッドおよびチオフラビンTを母体構造とする誘導体が、いくつか報告されているが(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)、アミロイドβ蛋白に対する結合特異性が低いこと、血液脳関門の透過性が低いこと、脳内での非特異的結合によりクリアランスが遅いことなど問題が少なくない。それゆえ、報告されたこれらの化合物は未だアミロイドが蓄積する疾患の診断において実用化されていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2004-250407号公報
【特許文献2】特開2004-250411号公報
【非特許文献1】W.E.Klunk et al., Annals of Neurology Vol55 No.3 March 2004 306-319
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような技術的背景のもとになされたものであり、アミロイドβ蛋白に対する高い結合特異性、高い血液脳関門の透過性、脳内老人斑以外の部位からの速やかな消失性を併せ持つ化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、コンゴーレッドやチオフラビンTとは全く構造が異なるフラボンの誘導体、カルコンの誘導体、スチリルクロモンの誘導体、及びクマリンの誘導体が、アミロイドβ蛋白を画像化するためのプローブ化合物としてきわめて優れた性質を持つことを見出し、この知見から本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(20)を提供するものである。
【0007】
(1)一般式(I)
【化1】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基を示し、R5は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基、又は式:-CH=CH−R6で表される基(式中、R6は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基を示す。)を示し、置換基群Aは、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群である。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0008】
(2)一般式(I)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ハロゲン原子である(1)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(3)一般式(I)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ヨウ素原子である(1)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(4)一般式(I)におけるR5が、置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基である(1)乃至(3)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(5)一般式(I)におけるR5が、4−ジメチルアミノフェニル基、4−メチルアミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、又は4−ヒドロキシフェニル基である(1)乃至(3)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0009】
(6)一般式(I)におけるR5が、式:-CH=CH−R6で表される基(式中、R6は置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を示す。)である(1)乃至(3)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(7)一般式(I)におけるR5が、4−アミノスチリル基、4−メチルアミノスチリル基、又は4−ジメチルアミノスチリル基である(1)乃至(3)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0010】
(8)一般式(II)
【化2】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基を示し、R7は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、又は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基を示し、置換基群Aは、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基からなる群である。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0011】
(9)一般式(II)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ハロゲン原子である(8)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(10)一般式(II)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ヨウ素原子である(8)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(11)一般式(II)におけるR7が、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル基、又は4−ジメチルアミノフェニル基である(8)乃至(10)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(12)一般式(III)
【化3】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基を示し、R8は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、又は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基を示し、置換基群Aは、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群である。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0012】
(13)一般式(III)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ハロゲン原子である(12)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0013】
(14)一般式(III)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ヨウ素原子である(12)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(15)一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される化合物が、放射性核種で標識されている化合物である(1)乃至(14)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(16)放射性核種が、陽電子放出核種である(15)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0014】
(17)放射性核種が、γ線放出核種である(15)記載記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(18)アミロイド関連疾患が、アルツハイマー病である(1)乃至(17)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(19)アミロイド関連疾患のモデル動物に被験物質を投与する工程、前記モデル動物に(1)乃至(18)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法。
【0015】
(20)アミロイド関連疾患のモデル動物に前記疾患の治療薬又は予防薬を投与する工程、前記モデル動物に(1)乃至(18)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬の評価方法。
【発明の効果】
【0016】
一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物(以下、「一般式(I)等で表される化合物」という)は、アミロイドβ蛋白に対し高い結合特異性を持ち、また、血液脳関門の透過性も高く、更に、脳内老人斑以外の部位からの速やかに消失する性質を持つので、アルツハイマー病の診断に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、「ハロゲン原子」とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0018】
本発明において、「炭素数1〜4のアルキル基」とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基である。
本発明において、「炭素数1〜4のアルコキシ基」とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基である。
【0019】
本発明において、「アリール基」とは、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などである。
本発明において、「芳香族複素環基」とは、例えば、チオフェン−2−イル基、チオフェン−3−イル基、フラン−2−イル基、フラン−3−イル基、ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−5−イル基などである。
【0020】
本発明において、「置換基群Aから選ばれた置換基によって置換されていてもよいアリール基」とは、例えば、2−ジメチルアミノフェニル基、2−メチルアミノフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ジメチルアミノフェニル基、3−メチルアミノフェニル基、3−メトキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−メチルアミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル基、3−ヒドロキシ−4−メチルアミノフェニル基、3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル基、3,5−ジヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル基、3,5−ジヒドロキシ−4−メチルアミノフェニル基、3,5−ジヒドロキシ−4−メトキシフェニル基などである。
【0021】
本発明において、「置換基群Aから選ばれた置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基」とは、例えば、5−ジメチルアミノピリジン−2−イル基、5−メチルアミノピリジン−2−イル基、5−メトキシピリジン−2−イル基、6−ジメチルアミノピリジン−3−イル基、6−メチルアミノピリジン−3−イル基、6−メトキシピリジン−3−イル基などである。
【0022】
一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)において、R1、R2、R3、R4は、好適には、いずれかがハロゲン原子であり、より好適には、いずれかがヨウ素原子である。
【0023】
一般式(I)において、R5は、好適には、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基、又は式:-CH=CH−R6で表される基(式中、R6はハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を示す。)であり、より好適には、4−ジメチルアミノフェニル基、4−メチルアミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノスチリル基、4−メチルアミノスチリル基、又は4−ジメチルアミノスチリル基である。なお、R5のクロモン上の位置は2位、3位のいずれであってもよい。
【0024】
一般式(II)において、R7は、好適には、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基であり、より好適には、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル基、又は4−ジメチルアミノフェニル基である。
【0025】
一般式(III)において、R8は、好適には、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基であり、より好適には、4−メチルアミノフェニル基、又は4−ジメチルアミノフェニル基である。
【0026】
一般式(I)で表される化合物のうち代表的なものを表1〜表9に示す。
なお、以下の表において、「Me」はメチル基を、「Phe」はフェニル基を、「X1」は2−フルオロエトキシ基を、「X2」は3−フルオロプロポキシ基、「X3」は4−フルオロブトキシ基、「X4」は5−フルオロペントキシ基を表す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
【表8】
【0035】
【表9】
上記化合物のうちで、好ましいものとしては、I-1の化合物(化合物11)、I-2の化合物(化合物10)、I-3の化合物(化合物19)、I-28(化合物47)、I-29(化合物48)、I-46(化合物20)、I-59(化合物46)を挙げることができる。
一般式(II)で表される化合物のうち代表的なものを表10〜表20に示す。
【0036】
【表10】
【0037】
【表11】
【0038】
【表12】
【0039】
【表13】
【0040】
【表14】
【0041】
【表15】
【0042】
【表16】
【0043】
【表17】
【0044】
【表18】
【0045】
【表19】
【0046】
【表20】
上記化合物のうちで、好ましいものとしては、II-7の化合物(化合物31)、II-2の化合物(化合物36)を挙げることができる。
一般式(III)で表される化合物のうち代表的なものを表21〜表28に示す。
【0047】
【表21】
【0048】
【表22】
【0049】
【表23】
【0050】
【表24】
【0051】
【表25】
【0052】
【表26】
【0053】
【表27】
【0054】
【表28】
上記化合物のうちで、好ましいものとしては、III-1の化合物(化合物65)、III-2の化合物(化合物66)、III-3の化合物(化合物67)を挙げることができる。
【0055】
一般式(I)等で表される化合物は、後述する実施例の記載、及びMarder M et al, Biochemical and Biophysical Research Communications, 223, 384-389, 1996, Marder M et al, Bioorganic &Medicinal Chemistry Letters, 7, 2003-2008, 1997などの記載に従って合成することができる。
【0056】
一般式(I)等で表される化合物は、標識物質によって標識されていることが好ましい。標識物質としては、蛍光物質、アフィニティー物質などを使用してもよいが、放射性核種を使用するのが好ましい。標識に用いる放射性核種の種類は特に限定されず、使用の態様によって適宜決めることができる。例えば、一般式(I)等で表される化合物をコンピューター断層撮影法(SPECT)による診断に使用する場合、放射性核種は99mTc、111In、67Ga、201Tl、123I、133Xe(好適には、99mTc、123I)などのγ線放出核種を使用することができる。また、陽電子断層撮影法(PET)による診断に使用する場合には、11C、13N、15O、18F、62Cu、68Ga、76Br(好適には、11C、13N、15O、18F)などの陽電子放出核種を使用することができる。また、一般式(I)等で表される化合物をヒト以外の動物に投与する場合には、より半減期の長い放射性核種、例えば、125Iなどを使用してもよい。放射性核種は、一般式(I)等で表される化合物の分子中に含まれる形でもよく、また、一般式(I)等で表される化合物に結合する形であってもよい。
【0057】
一般式(I)等で表される化合物の代わりに、医薬上許容される塩を使用することも可能である。医薬上許容される塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩)、硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩などを例示できる。
【0058】
本発明の組成物はアミロイド関連疾患の診断に用いられる。ここで、「アミロイド関連疾患」とは、アミロイドβ蛋白の蓄積によって起きる疾患をいい、主にアルツハイマー病を意味するが、ダウン症候群、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血症(hereditary cerebral hemorrhage with amyloidosis─Dutch type: HCHWA-D)などの疾患も含まれる。また、一般には「疾患」と認識されない疾患の前駆症状も、本発明における「アミロイド関連疾患」に含まれる。このような疾患の前駆症状としては、アルツハイマー病の発症前にみられる軽度認知障害(MCI)などを例示できる。
【0059】
本発明の組成物によるアミロイド関連疾患の診断は、通常、本発明の組成物を診断対象者又は実験動物などに投与し、その後、脳の画像を撮影し、画像における一般式(I)等で表される化合物の状態(量、分布等)に基づいて行う。本発明の組成物の投与方法は特に限定されず、化合物の種類、標識物質の種類などに応じて適宜決めることができるが、通常は、皮内、腹腔内、静脈、動脈、又は脊髄液への注射又は点滴等によって投与する。本発明の組成物の投与量は特に限定されず、化合物の種類、標識物質の種類などに応じて適宜決めることができるが、成人の場合、一般式(I)等で表される化合物を1日当たり10-10〜10-3mg投与するのが好ましく、10-8〜10-5 mg投与するのが更に好ましい。
【0060】
上記のように本発明の組成物は、通常、注射又は点滴によって投与するので、注射液や点滴液に通常含まれる成分を含んでいてもよい。このような成分としては、液体担体(例えば、リン酸カリウム緩衝液、生理食塩水、リンゲル液、蒸留水、ポリエチレングリコール、植物性油脂、エタノール、グリセリン、ジメチルスルホキサイド、プロピレングリコールなど)、抗菌剤、局所麻酔剤(例えば、塩酸プロカイン、塩酸ジブカインなど)、緩衝液(例えば、トリス−塩酸緩衝液、ヘペス緩衝液など)、浸透圧調節剤(例えば、グルコース、ソルビトール、塩化ナトリウムなど)を例示できる。
【0061】
本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物は、アミロイド関連疾患の治療薬や予防薬のスクリーニングにも利用できる。例えば、アルツハイマー病などの「疾患」のモデル動物に被験物質を投与した後、前記モデル動物に本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与し、その後、前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)等で表される化合物の分布又は量を調べ、その結果、コントロール(被験物質を投与していないモデル動物)との間に有意な差異(例えば、分布部位の縮小、量の減少など)が検出されれば、被験物質はアミロイド関連疾患の治療薬の候補となり得る。また、軽度認知障害などの「疾患の前駆症状」のモデル動物に被験物質を投与した後、前記モデル動物に本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与し、その後、前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)等で表される化合物の分布又は量を調べ、その結果、コントロールとの間に有意な差異(例えば、分布部位の縮小又は拡大の鈍化、量の減少又は増大の鈍化など)が検出されれば、被験物質はアミロイド関連疾患の予防薬の候補となり得る。
【0062】
また、本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物は、既に効果が確認されているアミロイド関連疾患の治療薬や予防薬の評価にも利用できる。即ち、アミロイド関連疾患のモデル動物に前記疾患の治療薬又は予防薬を投与した後、前記モデル動物に本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与し、その後、前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)等で表される化合物の分布又は量を調べ、これにより、前記治療薬や予防薬の評価(具体的には、有効な投与量、有効な投与方法など)を行う。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実験方法〕
試薬・機器
放射性ヨウ素-125 (125I) はアマシャムバイオサイエンス株式会社製IODINE-125 (74 MBq)を用いた。逆相HPLCはナカライテスク社製Cosmosil 5C18-ARカラム(4.6 x 150 mm)を用いて、超純水 (A)とアセトニトリル(B)をA:B = 40:60を溶出溶媒とし、流速1.0 mL/minで分析した。1H-NMRは、Varian Gemini 300を用い、テトラメチルシランを内部標準物質として測定した。質量分析は、JEOL IMS-DX300を用いて測定した。Amyloid βProtein (Human, 1-40) [HCl form]及びAmyloid βProtein (Human, 1-42) [TFA form]はペプチド研究所より購入し、その他の試薬は特級試薬を用いた。
【0064】
(1)フラボン誘導体の合成
4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステルの合成
氷浴中、4-塩化ニトロベンゾイル(1.00 g, 4.65 mmol)のピリジン溶液(20 mL)に5’-ブロモ-2’-ヒドロキシアセトフェノン(化合物1)(863 mg, 4.65 mmol)を加えた。室温で30分間反応させた後、氷冷下1 N塩酸へ注ぎ、激しく攪拌させた。析出した沈澱を濾取し、精製水で洗浄後、目的物である4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステル(化合物2)を得た。収量1.57 g(収率:92.7%)1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.37 (s, 4H), 8.00 (s, 1H), 7.76-7.72 (m, 1H), 7.16 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 2.55 (s, 3H). MS m/z 365 (MH+).
【0065】
1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオンの合成
化合物2(2.31 g, 6.34 mmol)をピリジン(40 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(530 mg, 9.45 mmol)を加え、15分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈澱を濾取し、目的物である1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオン(化合物3)を得た。収量2.01 g(収率:87.1%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ11.85 (s, 1H), 8.36 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 8.13 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.88 (s, 1H), 7.57 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.83 (s, 2H). MS m/z 365 (MH+).
【0066】
6-ブロモ-4’-ニトロフラボンの合成
化合物3(2.00 g, 5.49 mmol)、濃硫酸(0.5 mL)、酢酸(40 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を濾取し、目的物である6-ブロモ-4’-ニトロフラボン(化合物4)を得た。収量1.79 g(収率:94.2%)MS m/z 347 (MH+).
【0067】
6-ブロモ-4’-アミノフラボンの合成
化合物4(100 mg, 0.289 mmol)のエタノール(7 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(275 mg, 1.45 mmol)をゆっくり加え、1時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(50 mL)を加え、酢酸エチル 50 mL (25 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-ブロモ-4’-アミノフラボン(化合物5)を黄色結晶として得た。収量 77 mg(収率:84.3%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.36 (s, 1H), 7.72-7.76 (m, 3H), 7.44 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.70 (s, 1H), 4.15 (s, 2H). MS m/z 317 (MH+).
【0068】
6-ブロモ-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物5(300 mg, 0.949 mmol)とパラホルムアルデヒド(154 mg, 5.13 mmol)のメタノール溶液(15 mL)に撹拌しながらナトリウムメチラートメタノール溶液(0.27 mL)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(180 mg, 4.75 mmol)を固体のまま少しずつ加えて、さらに2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 3 / 5 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ブロモ-4’-メチルアミノフラボン(化合物6)を得た。収量 121 mg(収率:38.6%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.31 (s, 1H), 7.69-7.75 (m, 3H), 7.39 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.62-6.66 (m, 3H), 4.18 (s, 1H). 2.91 (s, 3H).
【0069】
6-ブロモ-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物5(75 mg, 0.237 mmol)とパラホルムアルデヒド(71.1 mg, 2.37 mmol)の酢酸溶液(10 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(74.5 mg, 1.19 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で 3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mL (25 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-ブロモ-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物7)を黄色結晶として得た。収量 70 mg(収率:85.7%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.34 (s, 1H), 7.72-7.82 (m, 3H), 7.43 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.70-6.77 (m, 3H), 3.08 (s, 6H). MS m/z 345 (M+).
【0070】
6-(トリブチルスタニル)-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物6(286 mg, 0.866 mmol)のジオキサン溶液(21 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.55 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(41 mg, 0.035mmol)、トリエチルアミン(7 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 4 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(トリブチルスタニル)-4’-メチルアミノフラボン(化合物8)を得た。収量 174 mg(収率:37.2%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.30 (s, 1H), 7.65-7.78 (m, 3H), 7.46 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 4.14(s, 1H), 2.92 (s, 3H), 0.86-1.35 (m, 27H). MS m/z 541 (MH+).
【0071】
6-(トリブチルスタニル)-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物7(200 mg, 0.58 mmol)のジオキサン溶液(20 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.5 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(45 mg)、トリエチルアミン(6 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(トリブチルスタニル)-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物9)を得た。収量54 mg(収率:16.8%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.30 (s, 1H), 7.82 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.71-7.75 (m, 1H), 7.49 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.72-6.77 (m, 3H), 0.86-1.56 (m, 27H). MS m/z 555 (MH+).
【0072】
6-ヨード-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物8(100 mg, 0.185 mmol)のクロロホルム溶液(20 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(1.5 mL, 1 M)を室温で加えた。室温で10分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 2 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヨード-4’-メチルアミノフラボン(化合物10)を得た。収量20 mg(収率:28.7%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.53 (s, 1H), 7.90 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.75 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.28 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 6.64-6.69 (m, 3H), 4.15 (s, 1H), 2.93 (s, 3H). MS m/z 377 (M+).
【0073】
6-ヨード-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物9(30 mg, 0.054 mmol)のクロロホルム溶液(5 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(1 mL, 1 M)を室温で加えた。室温で30分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(5 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1 / 9)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヨード-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物11)を得た。収量 10 mg(収率:47.3%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.54 (s, 1H), 7.92 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.71-6.80 (m, 3H), 3.09 (s, 6H). MS m/z 392 (MH+).
【0074】
4-メトキシ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステルの合成
氷浴中、4-塩化メトキシベンゾイル(2.01 g, 9.35 mmol)のピリジン溶液(40 mL)に5’-ブロモ-2’-ヒドロキシアセトフェノン(化合物12)(1.80 g, 10.6 mmol)を加えた。室温で 30分間反応させた後、氷冷下1 N塩酸へ注ぎ、激しく攪拌させた。析出した沈澱を濾取し、精製水で洗浄後、目的物である4-メトキシ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステル(化合物13)を得た。収量3.15 g(収率:96.5%)1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.72 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 8.86 (s, 1H), 10.13 (s, 1H).
【0075】
1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオンの合成
化合物13(1.63 g, 4.67 mmol)をピリジン(50 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(524 mg, 9.33 mmol)を加え、15分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈澱を濾取し、目的物である1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン(化合物14)を得た。収量 1.42 g(収率:85.2%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ12.01 (s, 1H), 7.94 (d, J = 9.3 Hz, 2H), 7.83 (s, 1H), 7.53 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 9.3 Hz, 2H), 6.90 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.68 (s, 2H). 3.90 (s, 3H).
【0076】
6-ブロモ-4’-メトキシフラボンの合成
化合物14(2.67 g, 7.65 mmol)、濃硫酸(0.78 mL)、酢酸(40 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を濾取し、目的物である6-ブロモ-4’-メトキシフラボン(化合物15)を得た。収量2.01 g(収率:79.4%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.35 (s, 1H), 7.87 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.03 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.75 (s, 1H), 3.90 (s, 3H).
【0077】
6-ブロモ-4’-ヒドロキシフラボンの合成
化合物15(400 mg, 1.21 mmol)のジクロロメタン(215 mL)溶液に、氷冷下、撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(12 mL)をゆっくり加え、時間反応を行った。反応終了後、反応溶液に精製水(100 mL)を加え、ジクロロメタン層を抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 2 / 5 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ブロモ-4’-ヒドロキシフラボン(化合物16)を得た。収量 50 mg(収率:13.1%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ10.38 (s, 1H), 8.09 (s, 1H), 7.97-8.00 (m, 3H), 7.76 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.93-6.96 (m, 3H).
【0078】
6-(トリブチルスタニル)-4’-メトキシフラボンの合成
化合物15(500 mg, 1.51 mmol)のジオキサン溶液(36 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.95 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(72 mg, 0.0623 mmol)、トリエチルアミン(12 mL)を加え、90℃で10時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 10 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(トリブチル)-4’-メトキシフラボン(化合物17)を得た。収量 562 mg(収率:68.8%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.31 (s, 1H), 7.88-7.92 (m, 2H), 7.68-7.75 (m, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.02-7.05 (m, 2H), 6.77 (s, 1H), 3.90 (s, 3H), 0.86-1.57 (m, 27H). MS m/z 542 (MH+).
【0079】
6-(トリブチルスタニル)-4’-ヒドロキシフラボンの合成
化合物16(50 mg, 0.158 mmol)のジオキサン溶液(4.5 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.1 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(7.5 mg)、トリエチルアミン(1.5 mL)を加え、90℃で17時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 5 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(トリブチルスタニル)-4’-ヒドロキシフラボン(化合物18)を得た。収量 36 mg(収率:43.3%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.31 (s, 1H), 7.85 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.50-7.55 (m, 1H), 7.00 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.77 (s, 1H), 6.31 (s, 1H), 0.86-1.59 (m, 27H). MS m/z 527 (M+).
【0080】
6-ヨード-4’-メトキシフラボンの合成
化合物17(450 mg, 0.831 mmol)のクロロホルム溶液(87 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(5 mL, 1 M)を室温で加えた。室温で30分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 7 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヨード-4’-メトキシフラボン(化合物19)を得た。収量 227 mg(収率:72.2%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.55 (s, 1H), 7.86-7.93 (m, 3H), 7.32 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.03 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.75 (s, 1H), 3.90 (s, 3H). MS m/z 378 (M+).
【0081】
6-ヨード-4’-ヒドロキシフラボンの合成
化合物19(185 mg, 0.489 mmol)のジクロロメタン(85 mL)溶液に、氷冷下、撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(4.9 mL)をゆっくり加え、30時間反応を行った。反応終了後、反応溶液に精製水(80 mL)を加え、ジクロロメタン層を抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 4 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヨード-4’-ヒドロキシフラボン(化合物20)を得た。収量 79 mg(収率:44.3%)1H NMR(300 MHz, DMSO6)δ10.37 (s, 1H), 8.27 (s, 1H), 8.28-8.30 (m, 1H), 7.98 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.61 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.93-6.95 (m, 3H). MS m/z 364 (M+).
【0082】
4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-メトキシフェニルエステルの合成
氷浴中、4-塩化ニトロベンゾイル(1.72 g, 9.26 mmol)のピリジン溶液(20 mL)に5’-メトキシ-2’-ヒドロキシアセトフェノン (1.5 g, 9.03 mmol)を加えた。室温で30分間反応させた後、氷冷下1 N塩酸へ注ぎ、激しく攪拌させた。析出した沈澱を濾取し、精製水で洗浄後、目的物である4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-メトキシフェニルエステル(化合物21)を得た。収量2.49 g(収率:87.4%)
【0083】
1-(5-メトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオンの合成
化合物21(3.01 g, 9.55 mmol)をピリジン(50 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(2.53 g, 45.1 mmol)を加え、15分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈澱を濾取し、目的物である1-(5-メトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオン(化合物22)を得た。収量2.93 g(収率:97.4%)
【0084】
6-メトキシ-4’-ニトロフラボンの合成
化合物22(2.92 g, 9.26 mmol)、濃硫酸(1 mL)、酢酸(50 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を濾取し、目的物である6-メトキシ-4’-ニトロフラボン(化合物23)を得た。収量2.31 g(収率:84.1%)
【0085】
6-メトキシ-4’-アミノフラボンの合成
化合物23(520 mg, 1.75 mmol)のエタノール(30 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(3.32 g, 17.5 mmol)をゆっくり加え、1時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(150 mL)を加え、酢酸エチル 50 mL (150 mL)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-メトキシ-4’-アミノフラボン(化合物24)を黄色結晶として得た。収量 360 mg(収率:74.8%)1H NMR(300 MHz, DMSO-d6)δ7.91 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.69-7.70 (m, 1H), 7.38-7.42 (m, 2H), 6.93 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.82 (s, 1H), 3.86 (s, 2H).
【0086】
6-メトキシ-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物24(630 mg, 2.36 mmol)とパラホルムアルデヒド(707 mg, 23.6 mmol)の酢酸溶液(30 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(891 mg, 14.1 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で 3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mL (25 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-メトキシ-4’-メチルアミノフラボン(化合物25)を黄色結晶として得た。収量 450 mg(収率:64.6%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.31 (s, 1H), 7.69-7.75 (m, 3H), 7.39 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.62-6.66 (m, 3H), 4.18 (s, 1H). 2.91 (s, 3H).
【0087】
6-メトキシ-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物24(270 mg, 1.01 mmol)とパラホルムアルデヒド(152 mg, 5.05 mmol)のメタノール溶液(15 mL)に撹拌しながらナトリウムメチラートメタノール溶液(0.27 mL)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(306 mg, 8.08 mmol)を固体のまま少しずつ加えて、さらに2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1/ 1 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ブロモ-4’-メチルアミノフラボン(化合物26)を得た。収量 120 mg(収率:42.2%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ7.78 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.59 (m, 1H), 7.47 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.22-7.26 (m, 1H), 6.65-6.69 (m, 3H), 3.91 (s, 3H), 2.93 (s, 3H).
【0088】
6-ヒドロキシ-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物25(200 mg, 0.68 mmol)のジクロロメタン(50 mL)溶液に、氷冷下、撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(5 mL)をゆっくり加え、時間反応を行った。反応終了後、反応溶液に精製水(100 mL)を加え、ジクロロメタン層を抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルム/メタノール( 20 / 1 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヒドロキシ-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物27)を得た。収量 25 mg(収率:13.1%)1H NMR(300 MHz, DMSO-d6)δ 9.94 (s, 1H), 7.90 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.30 (m, 1H), 7.19-7.22 (m, 1H), 6.82 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.73 (s, 1H), 3.03 (s, 6H).
【0089】
6-ヒドロキシ-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物26(270 mg, 0.96 mmol)のジクロロメタン(20 mL)溶液に、氷冷下、撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(5 mL)をゆっくり加え、時間反応を行った。反応終了後、反応溶液に精製水(100 mL)を加え、ジクロロメタン層を抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルム/メタノール( 20 / 1 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヒドロキシ-4’-メチルアミノフラボン(化合物28)を得た。収量 15 mg(収率:5.8%)1H NMR(300 MHz, DMSO-d6)δ9.92 (s, 1H),7.83 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.58 (d, J = 8.7Hz, 1H), 7.30 (m, 1H), 7.18-7.22 (m, 1H), 6.64-6.67 (m, 3H), 2.76 (s, 3H).
【0090】
(2)カルコン誘導体の合成
(E)-1-(3-ブロモフェニル)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
3-ブロモアセトフェノン1.99 g (10 mmol)をエタノール(10 mL)に溶解し、10%水酸化カリウム水溶液(30 mL)に氷冷下加えた。15分間撹拌後、o-バニリン1.52 g (10 mmol)を固体のまま加え、さらに氷冷下15分間撹拌した。室温に戻し、4時間撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過し、ろ液を減圧留去し、酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに付し、目的物である化合物29を得た。収量470 mg(収率14.1%)。1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.14 (s, 1H), 8.04 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.90-7.98 (m, 1H), 7.66-7.71 (m, 2H), 7.32-7.40 (m, 1H), 7.15-7.20 (m, 1H), 6.89-6.91 (m, 2H), 6.31 (s, 1H), 3.94 (s, 3H).
【0091】
(E)-1-(3-(トリブチルスタニル)フェニル)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物29(370 mg, 1.11 mmol)のジオキサン溶液(10 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (1 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(75 mg)、トリエチルアミン(5 mL)を加え、12時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 9)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である化合物30を得た。収量 161 mg(収率:26.7%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.10 (s, 1H), 8.03 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.90-7.95 (m, 1H), 7.73 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.62-7.68 (m, 1H), 7.41-7.49 (m, 1H), 7.15-7.20 (m, 1H), 6.87-6.89 (m, 2H), 6.24 (s, 1H), 3,94 (s, 3H), 0.86-1.65 (m, 27H).
【0092】
(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(3-ヨードフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物30(150 mg, 0.28 mmol)のクロロホルム溶液(15 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(2 mL, 1.1 mM溶液)を室温で加えた。室温で30分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 5 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である化合物31を得た。収量 47 mg(収率:44.8%)
【0093】
(E)-1-(4-ブロモフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
4-ブロモアセトフェノン1.99 g (10 mmol)をエタノール(10 mL)に溶解し、10%水酸化カリウム水溶液(30 mL)に氷冷下加えた。15分間撹拌後、4−ニトロベンズアルデヒド1.51 g (10 mmol)を固体のまま加え、さらに氷冷下15分間撹拌した。室温に戻し、4時間撹拌した後、酢酸エチル(50 mL)を加え、析出した結晶を吸引濾過し、酢酸エチルで十分洗い、目的物である化合物32を得た。収量1.27 g(収率38.2%)。
【0094】
(E)-3-(4-アミノフェニル)-1-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物32(1.0 g, 3.01 mmol)のエタノール(15 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(5.0 g, 26.4 mmol)をゆっくり加え、2時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(150 mL)を加え、酢酸エチル 50 mL (150 mL)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 3 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である化合物33を得た。収量 556 mg(収率:61.1%)
【0095】
(E)-1-(4-ブロモフェニル)-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物33(250 mg, 0.83 mmol)とパラホルムアルデヒド(400 mg, 13.4 mmol)の酢酸溶液(15 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(250 mg, 3.98 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で 3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mL (25 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 12 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である化合物34を得た。収量 236 mg(収率:86.1%)
【0096】
(E)-1-(4-(トリブチルスタニル)フェニル)-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物34(220 mg, 0.67 mmol)のジオキサン溶液(10 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (1 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(84 mg)、トリエチルアミン(5 mL)を加え、2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 18 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である化合物35を得た。収量 43 mg(収率:11.9%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ7.91 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.80 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.51-7.65 (m, 3H), 7.35 (d ,J = 15.9 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.05 (s, 6H), 0.88-1.59 (m, 27H).
【0097】
(E)-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-1-(4-ヨードフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物35(4 mg, 0.07 mmol)のクロロホルム溶液(5 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(2 mL, 1.1 mM溶液)を室温で加えた。室温で30分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 9 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である化合物36を得た。収量 13 mg(収率:46.6%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ7.82-7.88 (m, 3H), 7.71-7.78 (m, 2H), 7.53 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.20-7.30 (m, 2H), 6.68 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.05 (s, 6H).
【0098】
(3)スチリルクロモン誘導体の合成
(E)-2-アセチル -4-ブロモフェニルl 3-(4-ニトロフェニル)アクリレイト の合成
4-ニトロケイ皮酸クロリド(545 mg, 2.58 mmol)のピリジン溶液(10 mL)に5-ブロモ-2-ヒドロキシアセトフェノン(500 mg, 2.58 mmol)を加えた。室温で60分反応させた後、氷冷下1 N塩酸に注ぎ、激しく撹拌させた。析出した沈殿を瀘取し、精製水で洗浄後、目的物である化合物37を得た。収量1.073 g (収率99.2%). 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.29(d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.77-7.62 (m, 4H), 7.10 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.80 (d, J = 16.2 Hz, 1H).
【0099】
1-(5-ブロモ-2ヒドロキシフェニル)-5-(4-ニトロフェニル)ペント-4-エン-1,3-ジオン の合成
化合物37(500 mg, 1.28 mmol)をピリジン(12 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(0.22 g, 3.84 mmol)を加え、30分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈殿を瀘取し、目的物38を得た。収量410 mg(収率82.0%).
【0100】
6-ブロモ-4’-ニトロスチリルクロモン の合成
化合物38(860 mg,2.20 mmol)、濃硫酸(1.2 mL)、酢酸(15 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を瀘取し、目的物39を得た。収量790 mg(収率 94.0%)
【0101】
6-ブロモ-4’-アミノスチリルクロモン の合成
化合物39(361 mg,0.97 mmol)のエタノール(30 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(1.287 g, 4.74 mmol)をゆっくり加え、2時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(100 mL)を加え、酢酸エチル100 mLで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物40を得た。収量210 mg (収率 63.3%) 1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 8.30 (d, J = 2.4 Hz), 7.71(dd, 1H), 7.47-7.38 (m, 4H), 6.68 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.55 (d, J = 15.9 Hz,1H), 6.25 (s,1H), 3.99(s, 2H).
【0102】
6-ブロモ-4’-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物40(710 mg, 2.07 mmol)とパラホルムアルデヒド(231 mg,7.70 mmol)のメタノール溶液(15 mL)に撹拌しながらナトリウムメチラートメタノール溶液(0.45 mL)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(270 mg, 7.13 mmol)を固体のまま少しずつ加えて、さらに2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物41を得た。収量690 mg (収率 96%) 1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.30 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.71 (dd, 1H), 7.45-7.29 (m, 4H), 6.61-6.56 (m, 3H), 6.25 (s, 1H), 4.18 (s, 1H), 2.89 (s, 3H). MS m/z 355.
【0103】
6-ブロモ-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物40(194 mg, 0.567 mmol)をとパラホルムアルデヒド(170 mg, 5.67 mmol)の酢酸溶液(10 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(214 mg, 3.40 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mLで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し化合物42を得た。収量0.15g (収率 71.5%) 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.31(d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.71(dd, 1H), 7.56-7.46 (m, 3H), 7.39 (d, J = 8.7Hz, 1H), 6.72 (d, J = 2.7 Hz, 2H), 6.57 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.24 (s, 1H), 3.04 (s, 6H). MS m/z 371.
【0104】
6-(トリブチルスタニル)-4’-アミノスチリルクロモン の合成
化合物40(242 mg, 0.707 mmol)のジオキサン溶液(12 mL)に、ビス(トリブチルスズ)(0.5 mL)、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム(40 mg, 0.034 mmol)、トリエチルアミン(8 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(2/3)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物43を得た。収量220 mg (収率56.3%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.28 (s, 1H), 7.74 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.54-7.48 (m, 3H), 7.42 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.68 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.57 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.27 (s, 1H), 4.07 (s, 2H), 0.86-1.54 (m, 27H). MS m/z 496.
【0105】
6-(トリブチルスタニル)-4’-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物41(300 mg,0.84 mmol)のジオキサン溶液(10 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.6 mL)、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム(41 mg, 0.035 mmol)、トリエチルアミン(7 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物44を得た。収量204 mg(収率42.8%) 1HNMR (300 MHz, CDCl3) δ8.28 (s, 1H), 7.74 (d, 1H), 7.54-7.43 (m,4H), 6.62-6.57 (m, 3H), 6.26 (s, 1H), 4.11 (s, 1H), 2.89 (s, 3H), 0.86-1.52 (m, 27H). MS m/z 567.
【0106】
6-(トリブチルスタニル)-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物42(150 mg, 0.405 mmol)のジオキサン溶液(10 mL)に、ビス(トリブチルスズ)(0.3 mL)、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム(20 mg, 0.017 mmol)、トリエチルアミン(5 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物45を得た。収量220 mg (収率37.4%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.23 (s, 1H), 7.74 (dd, 1H), 7.59-7.47 (m, 3H), 7.42 (d, 1H), 6.71 (d, J = 8.9Hz, 2H), 6.56 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.27 (s, 1H), 3.04 (s, 6H), 0.86-1.74 (m, 27H). MS m/z 580.
【0107】
6-ヨード-4’-アミノスチリルクロモン の合成
化合物43(220 mg, 0.398 mmol)をクロロホルム5 mLに溶解し、撹拌下ヨウ素のクロロホルム溶液(3 mL, 0.25 M)を室温で加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物46を得た。収量60 mg (収率38.8%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.50 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.89 (dd, 1H), 7.53-7.39 (m, 3H), 7.27 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.56 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 3.99 (s,2H). MS m/z 389.
【0108】
6-ヨード-4’-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物44(200 mg, 0.353 mmol)をクロロホルム7 mLに溶解し、撹拌下ヨウ素のクロロホルム溶液(4 mL, 0.25 M)を室温で加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/3)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物47を得た。収量32 mg (収率22.4%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.50 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.94 (dd, 1H), 7.59-7.42 (m, 3H), 7.28 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.61 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.54 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 6.25 (s, 1H), 4.21 (s, 1H), 2.94 (s, 3H). MS m/z 403.
【0109】
6-ヨード-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物45(35 mg, 0.06 mmol)をクロロホルム6 mLに溶解し、撹拌下ヨウ素のクロロホルム溶液(4 mL, 0.15 M)を室温で加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物48を得た。収量18 mg (収率71.8%) 1HNMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.45 (d, 1H), 7.94 (dd, 1H), 7.59-7.44 (m, 3H), 7.23 (d, 1H), 6.65 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.65 (d, 1H), 6.25 (s, 1H), 3.04 (s, 6H). MS m/z 417.
【0110】
(E)-2-アセチル-4-メトキシフェニル3-(4-ニトロフェニル)アクリレイト の合成
4-ニトロケイ皮酸クロリド(800 mg, 0.44 mmol)のピリジン溶液(10 mL)に5-メトキシ-2-ヒドロキシアセトフェノン(500 mg, 3.01 mmol)を加えた。室温で60分反応させた後、氷冷下1 N塩酸に注ぎ、激しく撹拌させた。析出した沈殿を瀘取し、精製水で洗浄後、目的物であるアセトフェノン49を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ8.28 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.88-7.76 (m, 4H), 7.30 (d, 2H), 6.79 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 2.56 (s, 3H).
【0111】
1-(5-メトキシ-2ヒドロキシフェニル)-5-(4-ニトロフェニル)ペント-4-エン-1,3-ジオン の合成
化合物49 (126 mg, 3.19 mmol)をピリジン(20 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(0.4 g, 1.11 mmol)を加え、30分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈殿を瀘取し、目的物50を得た。収量902 mg (収率72.0%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.27 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.72--7.69 (m, 4H), 7.14-7.12 (m, 3H), 6.97 (s, 1H), 6.77 (d, 1H), 3.83 (s, 3H).
【0112】
6-メトキシ-4-ニトロスチリルクロモン の合成
化合物50(900 mg, 2.64 mmol)、濃硫酸(1.0 mL)、酢酸(30 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を瀘取し、目的物51を得た。収量810 mg (収率90.0 %)
【0113】
6-メトキシ-4-アミノスチリルクロモン の合成
化合物51 (830 mg, 2.57 mmol)のエタノール(25 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II) (2.5 g, 1.32 mmol)をゆっくり加え、2時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(50 mL)を加え、クロロホルム50 mLで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物52を得た。収量510 mg (収率61.4 %) .
【0114】
6-メトキシ-4-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物52(500 mg,1.7 mmol)とパラホルムアルデヒド(262 mg, 8.72 mmol)のメタノール溶液(15 mL)に撹拌しながらナトリウムメチラートメタノール溶液(0.46 mL)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(310 mg, 8.18 mmol)を固体のまま少しずつ加えて、さらに2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物53を得た。収量179 mg (収率34.4 %)
【0115】
6-メトキシ-4-ジメチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物52(270 mg, 0.92 mmol)をパラホルムアルデヒド(300 mg, 9.99 mmol)の酢酸溶液(15 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(314 mg, 5.02 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mLで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し化合物54を得た。収量0.20 g (収率70.9 %) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.56 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.48-7.42 (m, 3H), 7.25 (d, 1H), 6.74 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.54 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.24 (s, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.02 (s, 6H).
【0116】
6-ヒドロキシ-4-アミノスチリルクロモン の合成
化合物52(270 mg, 0.92 mmol)をジクロロメタン40 mLに溶解させ、氷冷下三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液4.6 mLをゆっくり加えた。氷上で時間反応させた後、反応液を少量ずつ氷水に加え、ジクロロメタン層と水層で分液抽出し目的物55を得た。収量112 mg (収率40.9 %) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ9.29 (s, 1H), 7.55-7.42 (m, 3H), 7.39-7.28 (m, 3H), 6.78 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.68 (d, 1H), 6.24, (s,1H), 5.91 (s, 2H).
【0117】
6-ヒドロキシ-4-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物53(179 mg, 0.58 mmol)をジクロロメタン25 mLに溶解させ、氷冷下三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液2.9 mLをゆっくり加えた。氷上で時間反応させた後、反応液を少量ずつ氷水に加え、ジクロロメタン層と水層で分液抽出し目的物56を得た。収量12 mg (収率7.1 %) 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ9.92 (s,1H), 7.55-7.49 (m, 3H), 7.28 (d, 2H), 7.19 (dd, 1H), 6.81 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.25 (s, 1H), 3.23 (s, 1H), 2.52 (s, 3H).
【0118】
6-ヒドロキシ-4-ジメチルアミのスチリルクロモン の合成
化合物54 (160 mg, 0.522 mmol)をジクロロメタン25 mLに溶解させ、氷冷下三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液2.9 mLをゆっくり加えた。氷上で時間反応させた後、反応液を少量ずつ氷水に加え、ジクロロメタン層と水層で分液抽出し目的物57を得た。収量80 mg (収率52.4 %) 1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 7.56-7.52(m, 3H), 7.27-7.22 (m, 3H), 6.87 (d, J = 17.7 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.26 (s, 1H), 2.99 (s,6H).
【0119】
(4)クマリン誘導体の合成
6-ブロモ-3-(4-ニトロフェニル)クマリンの合成
5-ブロモサリチルアルデヒド(300 mg, 1.5 mmol)、p-ニトロフェニル酢酸(280 mg, 1.6 mmol)、2-塩化-1-メチルピリジニウムヨージド(770 mg, 3.0 mmol)をアセトニトリル(15 mL)に溶解させた。トリエチルアミン(0.5 mL)を加えた後、加熱還流を3時間行った。反応溶媒を減圧留去した後、半固体状の残渣に希塩酸を加えて吸引濾過、沈殿を濾取し、目的物58を得た。収量300 mg(収率57.8%).
【0120】
6-ブロモ-3-(4-アミノフェニル)クマリンの合成
化合物58(150 mg, 0.43 mmol)をエタノール(25 mL)に溶解させ、塩化スズ(II)(380 mg, 2 mmol)を加えて加熱還流を2時間行った。反応溶媒を減圧留去した後、0.1 N水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出を行った。酢酸エチル相を回収し、酢酸エチルを減圧留去して目的物59を得た。収量100 mg(収率74%)1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 7.63 (m, 2H), 7.55 (m, 3H), 7.25 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.74 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 3.88 (s, 2H).
【0121】
6-ブロモ-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物59(150 mg, 0.47 mmol)をメタノール(4.4 mL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(77 mg, 2.66 mmol)とナトリウムメチラートメタノール溶液(0.15 mL)を加え加熱還流を行った。0.5時間後、水素化ホウ素ナトリウム(95 mg, 2.5 mmol)を少しずつ加えて、さらに2時間還流を行った。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物60を得た。収量32 mg(収率21%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ 7.62 (s, 1H), 7.59 (d, J = 6.9Hz, 2H), 7.52 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 6.65 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.91 (s, 1H), 2.88 (s, 3H).
【0122】
6-ブロモ-3-(4-ジメチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物60(160 mg, 0.5 mmol)を酢酸(6.5 mL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(157 mg, 5.4 mmol)を加えて加熱還流を行った。0.5時間後、反応溶液を常温まで冷却し、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(190 mg, 3.0 mmol)を加え室温で4時間後撹拌した。反応溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物61を得た。収量100 mg(収率58%)1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 7.66 (s, 1H), 7.62 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 7.23 (d, J = 9.2Hz, 1H), 6.76 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.01 (s, 3H).
【0123】
6-(トリブチルスタニル)-3-(4-アミノフェニル)クマリンの合成
化合物59(150 mg, 0.47 mmol)を1,4-ジオキサン(15 mL)に溶解させ、ビス(トリブチルスズ)(0.5 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(30 mg, 0.026 mmol)、トリエチルアミン(7 mL)を加えて加熱還流を行った。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/1)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物62を得た。収量100 mg(収率40%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ 7.73 (s, 1H), 7.57 (m, 4H), 7.32 (d, 1H), 6.7 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.84 (s, 2H), 1.64 (m, 6H), 1.34 (m, 6H), 1.12 (m, 6H), 0.92 (m, 9H).
【0124】
6-(トリブチルスタニル)-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物60(230 mg, 0.43 mmol)を1,4-ジオキサン(23 mL)に溶解させ、ビス(トリブチルスズ)(0.7 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(46 mg)、トリエチルアミン(11 mL)を加えて加熱還流を行った。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物63を得た。収量50 mg(収率20%)1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 7.73 (s, 1H), 7.62 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.54 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 3.94 (s, 1H), 2.87 (s, 3H), 0.90-1.54 (m, 27H). MSm/z 541
【0125】
6-(トリブチルスタニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物61(150 mg, 0.44 mmol)を1,4-ジオキサン(15 mL)に溶解させ、ビス(トリブチルスズ)(0.5 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(30 mg)、トリエチルアミン(7 mL)を加えて加熱還流を行った。5時間後、反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/5)溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物64を得た。収量63 mg(収率26%)1H NMR(300 MHz, CDCl.)δ 7.73 (s, 1H), 7.67 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.55 (d, 2H), 7.28 (d, 1H), 6.77 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.01 (s, 6H), 0.90-1.60 (m, 27H) .MSm/z 555
【0126】
6-ヨード-3-(4-アミノフェニル)クマリンの合成
化合物62(50 mg, 0.095 mmol)をクロロホルム(5 mL)に溶解させ、ヨウ素のクロロホルム溶液(3 mL, 1 M)を加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)を加えて反応を終了させた。クロロホルム相を回収し、クロロホルムを減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/1)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物65を得た。収量30 mg(収率87%)
【0127】
6-ヨード-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物63(40 mg, 0.074 mmol)をクロロホルム(5 mL)に溶解させ、ヨウ素のクロロホルム溶液(3 mL, 1 M)を加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)を加えて反応を終了させた。クロロホルム相を回収し、クロロホルムを減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物66を得た。収量20 mg(収率72%). MSm/z 377
【0128】
6-ヨード-3-(4-ジメチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物64(30 mg, 0.054 mmol)をクロロホルム(5 mL)に溶解させ、ヨウ素のクロロホルム溶液(3 mL, 1 M)を加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)を加えて反応を終了させた。クロロホルム相を回収し、クロロホルムを減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物67を得た。収量20 mg(収率95%)MSm/z 391.
【0129】
(5)ヨウ素標識実験
トリスズブチル前駆体 (1 mg/mL)のエタノール溶液50 μLと1 N 塩酸 50 μL、Na[125I]I (1-5 μCi)をガラスバイアルにいれ、最後に過酸化水素水50 μL (3% W/V)を加えた。10分間室温で放置した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液100 μLを加えることにより、反応を停止させた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、酢酸エチルで抽出した(1 mL x 2)。硫酸ナトリウムを入れたパスツールピペットに通して脱水し、窒素で酢酸エチルを蒸発させた後、残渣をエタノールに溶解し、逆相HPLC(水:アセトニトリル=40:60)で精製した。非放射性化合物を票品として、254 nmにおける吸光をHPLCで分析し、それと一致する目的物を分取し、アセトニトリルを留去した。放射能を測定し、125Iの比放射能 (2200 Ci/mmol)から、目的物の比放射能を計算した。
【0130】
(6)Aβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体を用いたフラボン誘導体のインビトロ結合実験
Aβ凝集体は、10 mM sodium phosphateと1 mM EDTAを含んだ緩衝液(pH 7.4)に0.5 mg/mLの濃度に溶解し、37 ℃で36-42時間インキュベートした。結合実験は12×75 mm borosilicate glass tubesを用いて行った。10%エタノール溶液 900 μL、Aβ(1-40)凝集体溶液50 μL (57 nM)、種々の濃度の[125I]化合物10、[125I]化合物11、[125I]化合物19、[125I]化合物20、[125I]化合物31、[125I]化合物36、[125I]化合物46、[125I]化合物47、[125I]化合物48の50 μLを混和し、室温で3時間放置した。また、非特異的結合は非放射性化合物11(1 μM)を用いて算出した。Aβ凝集体と結合したフラボン、カルコン、スチリルクロモン、クマリン誘導体と結合していないフラボン、カルコン、スチリルクロモン、クマリン誘導体とはWhatman GF/B filtersを用いてBrandel M-24R cell harvesterによって分離した。濾過したフィルターに残存した物質の放射能はγカウンタで計測し、[125I]化合物11に関しては、スキャッチャード解析よりKd値を算出した。また、[125I]化合物11を放射性リガンドとして、Aβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体を用いる阻害実験は以下の方法で行った。10%エタノール溶液 850 μL、Aβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体溶液50 μL (57 nM)、種々の濃度の化合物10、化合物11、化合物19、化合物20の50 μLを混和し、室温で3時間放置した。また、非特異的結合は非放射性化合物11(1 μM)を用いて算出した。50%阻害濃度はGraphPad Prism (GraphPad Software)を用いて算出し、阻害定数(Ki値)は、Cheng-Prusoffの式、Ki = IC50/(1 + [L]/Kd)より算出した。この式において、[L]は、実験に用いた[125I]化合物11の濃度、Kdは、[125I]化合物11のAβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体に対する解離定数を使用した。
【0131】
(7)マウス体内放射能分布実験
放射性ヨウ素標識体(化合物10、11、19、20、31、46、47、48)は5-10%エタノールを含む生理食塩水を用いて希釈した。1群3-5匹の5週齢ddY系雄性マウス(25-30 g)に、それぞれの標識体100 μL (0.5-1 μCi)を静脈内投与2, 10, 30, 60分後に、断頭、採血した後、臓器を摘出し、重量と放射能を測定した。
【0132】
(8)アルツハイマー病患者脳組織を用いた結合実験
アルツハイマー病の患者脳側頭葉部位の組織をホルマリン固定しパラフィン包埋した。同パラフィンブロックから5ミクロン厚の切片を作製し、通常のキシレン、エタノール処理により脱パラフィンを実施した(Lippa,C.F., Nee,L.E., Mori,H & George-Hyslop,P.(1998) The Lancet 352:1117-1118.)。最終的に燐酸緩衝液による中和を施した後に、化合物、10、11、19、20を100 nMの濃度条件で、室温で10分間反応させた。反応停止は、燐酸緩衝液、50%エタノールにて各3回の洗浄により実施した。その後、アルコール、キシレン処理により脱水処理をしてエンテランニュー包埋した。該化合物結合の確認は、蛍光顕微鏡(オリンパスBX50)に附属したCCDカメラ( M-3204C )により画像観察によって実施した。
【0133】
〔実験結果〕
(1)化合物の合成
図1、図2及び図3にフラボン誘導体の合成経路を示す。フラボン骨格の形成はBaker-Venkataraman反応により行った。この合成過程において、ヒドロキシアセトフェノンをベンゾイルエステル(化合物2、化合物13、化合物21)に変換し、さらにアルカリ処理を行うことによって、1,3-ジケトン(化合物3、化合物14、化合物22)に変換した。このジケトン体を酸で処理することにより、目的とするフラボン誘導体(化合物4、化合物15、化合物23)を得た。化合物4および化合物23のニトロ基の還元は、塩化スズ(II)を還元剤として行った。生成したアミノ基のジメチル化およびモノメチル化はいずれも常法に従い行った。また図2及び図3のフラボン誘導体(化合物15、化合物19、化合物25、化合物26)のメトキシ基の脱メチル化反応は三臭化ホウ素により行った。それぞれのブロモ化合物はパラジウムを触媒とするビス(トリブチルスズ)との反応により、トリブチルスズ体に変換した。これらトリブチルスズ体は、ヨウ素との反応により容易に化合物へと変換した。図4にカルコン誘導体の合成経路を示す。カルコン誘導体は、アセトフェノン体とアルデヒド体とのカリウム存在下での縮合反応により、カルコンの基本骨格を形成した。以降の還元、メチル化、トリブチルスズ化、トリブチルスズ-ヨウ素の交換反応はフラボン誘導体の合成方法と同様に行った。図5および6にスチリルクロモン誘導体の合成経路を示す。スチリルクロモン誘導体は、ニトロ桂皮酸クロリドとブロモヒドロキシベンゾフェノンを出発原料に用いて、フラボン誘導体と同様の方法を用いて合成を行った。図7にクマリン誘導体の合成経路を示す。クマリン誘導体の合成は、ブロモヒドロキシベンズアルデヒドとニトロベンゾ酢酸を出発原料に用いて行い、ニトロ基の還元、メチル化、トリブチルスズ化、ヨウ素化はフラボン誘導体と同様の方法に従い行った。
【0134】
(2)ヨウ素標識実験
図8に示すように、放射性ヨウ素標識は過酸化水素を酸化剤として用いて、スズ-ヨウ素交換反応により、目的とする放射性ヨウ素-125標識体を放射化学的収率50-80%で得た。標識反応後、逆相HPLCを用いて分離精製を行い、放射化学的収率98%以上で無担体の標識化合物を得た。
【0135】
(3)Aβ(1-40)凝集体及びAβ(1-42)凝集体を用いたインビトロ結合実験
図9には、種々濃度の[125I]化合物10、[125I]化合物11、[125I]化合物19をAβ凝集体の存在下、Aβ凝集体の非存在下、大過剰の非放射性化合物11の存在下で反応を行い、セルハーベスターで濾過後、濾紙に残存した放射能を測定した結果を示す。Aβ凝集体が存在しない場合および大過剰の非放射性化合物が存在する場合、いずれも濾紙に残存した放射能は低値を示したのに対して、Aβ凝集体の存在下で反応を行った場合、[125I]化合物10、[125I]化合物11、[125I]化合物19は顕著に高い値を示した。このことから、フラボン誘導体である、[125I]化合物10、[125I]化合物11、[125I]化合物19はいずれもAβ凝集体への高い結合性を示すことが明らかとなった。その結合性は、[125I]化合物11 > [125I]化合物10 > [125I]化合物19の順で高くなった。また、[125I]化合物31、[125I]化合物36、[125I]化合物46、[125I]化合物47、[125I]化合物48に関しても同様の実験を行った。その結果、フラボン誘導体と同様に、カルコン誘導体(化合物31及び化合物36)およびスチリルクロモン誘導体(化合物46、化合物47及び化合物48)はアミロイド凝集体への高い結合親和性を示した(図10及び図11)。さらに[125I]化合物11に関しては、Aβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体を用いて飽和実験から得られた値をスキャッチャード解析により分析を行った(図12)。その結果、直線性を示したことから、フラボン化合物とアミロイド凝集体との結合部位はひとつであることが明らかとなった。また解離平衡定数Kd値は、Aβ(1-40)凝集体に対して、12.3±2.3 nM、 Aβ(1-42)凝集体に対して、17.6±5.7 nMとなり、アミロイド凝集体への高い結合親和性を有することが示された。さらに、化合物10、11、19、20に関しては、[125I]化合物11を放射性リガンドとする阻害実験を行った(表29)。その結果、いずれの化合物もAβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体に対する高い結合性を示した。その結合性は、化合物11、10、19、20の順に高い値を示した。Aβ(1-40)凝集体(図12A)への結合性とAβ(1-42)凝集体(図12B)への結合性には大きな差異は確認されなかった。
【0136】
【表29】
(4)マウス体内放射能分布実験
表30、31、32にそれぞれフラボン誘導体、カルコン誘導体、スチリルクロモン誘導体を正常マウスに投与後の体内放射能分布の結果を示す。
【0137】
【表30】
【0138】
【表31】
【0139】
【表32】
表30に示すように、いずれのフラボン誘導体も、血液から速やかなクリアランスを示す一方で、投与初期から約4%ID/gと脳内アミロイド画像化を行うために十分高い脳への移行性を示した。脳への放射能動態は、3種類のフラボン誘導体により異なったが、いずれも速やかな脳からの洗い出しが観察された。その消失速度は、[125I]化合物19が最も早く、次に、[125I]化合物20、[125I]化合物10と[125I]化合物11はほぼ同等であった。体内放射能動態はいずれも主に肝臓から胆管、腸管への排泄経路をとることが示された。また、カルコン誘導体([125I]化合物31)は投与後、脳への移行性が確認され、その後の速やかに洗い出されることが示された(表31)。スチリルクロモン誘導体のマウスにおける体内放射能分布を表32に示した。化合物48では、血液中への高い放射能滞留が観察され、脳への移行性は低値を示したのに対して、化合物46及び化合物47は、血液から脳への高い移行性を示した(化合物では4.9%ID/g、化合物47では3.0%ID/g)。さらに、化合物46及び化合物47は、脳移行後に速やかな放射能消失を示した。
【0140】
(5)アルツハイマー病患者脳組織を用いた結合実験
アルツハイマー病の確定診断には、患者脳側頭葉部位において、老人斑の沈着と神経原線維変化という2大病変の確認が必要である。アルツハイマー病患者脳組織を用いた結合実験において、化合物11は、老人斑と特異的に結合していることが示された(図13)。また脳血管アンギオパチーは、老人斑同様にアルツハイマー病に見られる病変であるが、これも同じアミロイド蛋白が異常沈着していることが知られている。化合物11は、図14に見られるように、脳血管アミロイドにも特異的に結合していることが見られることから、アルツハイマー病脳組織にあるアミロイド沈着病変を特異的に認識結合していることが示された。さらに、図15-B, Hに示すように、化合物11は、神経変性突起を持つ老人斑、神経原線維変化にも結合性が確認された。また、他の置換基を有する化合物10、19,20を用いて、アルツハイマー病患者脳組織を用いた結合実験を行った場合も、化合物11と同様に、いずれの化合物もアミロイド斑、神経変性突起を持つ老人斑、脳血管アミロイド、神経原線維変化を認識、結合していることが確認された(図15)。従って、フラボン誘導体である化合物10、11、19、20はいずれもアミロイド画像化薬剤に有用な性質を持つことが示された。
【0141】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願(特願2004-341370号)の明細書および/または図面に記載されている内容を包含する。また、本発明で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】フラボン誘導体の合成法(1)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図2】フラボン誘導体の合成法(2)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図3】フラボン誘導体の合成法(3)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図4】カルコン誘導体の合成法を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図5】スチリルクロモン誘導体の合成法(1)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図6】スチリルクロモン誘導体の合成法(2)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図7】クマリン誘導体の合成法を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図8】フラボン、カルコン、スチリルクロモン、クマリン誘導体の放射性ヨウ素による標識法を示す図。
【図9】化合物10(A)、化合物11(B)、及び化合物19(C)のAβ凝集体との結合性を示す図(●:Aβ凝集体存在下、■:Aβ凝集体非存在下、▲:非特異的結合)。
【図10】化合物31(A)、及び化合物36(B)のAβ凝集体との結合性を示す図(●:Aβ凝集体存在下、■:Aβ凝集体非存在下)。
【図11】化合物46(A)、化合物47(B)、及び化合物48(C)のAβ凝集体との結合性を示す図(●:Aβ凝集体存在下、■:Aβ凝集体非存在下)。
【図12】化合物11のAβ凝集体との飽和実験により得られたスキャッチャードプロットを示す図。
【図13】アルツハイマー病脳組織における老人斑アミロイドへの化合物11の結合状態を示す写真(×40倍対物レンズ使用、Gフィルター使用)。アミロイド老人斑(中央部分)と脳血管アミロイド(左下)に化合物11(白く見える)が結合している。
【図14】アルツハイマー病脳組織における老人斑アミロイドへの化合物11の結合状態を示す写真(×20倍対物レンズ使用、Gフィルター使用)。脳血管アミロイド(中央付近の4箇所、左上の1箇所)に化合物11(白く見える)が結合している。
【図15】アルツハイマー病脳組織における病理学的変化への化合物10(A-D)、11(E-H)、19(I-L)、20(M-P)の結合状態を示す写真(×40倍対物レンズ使用、Gフィルター使用)。アミロイド斑(A, E, I, M)、神経変性突起をもつ老人斑(B, F, J, N)、脳血管アミロイド(C, G, K, O)、神経原線維変化(D, H, L, P)を写真中央に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病などのアミロイド関連疾患の診断のために用いられる組成物、前記組成物を利用したアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法、前記組成物を利用したアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の急速な高齢化に伴い、アルツハイマー病(AD)をはじめとする痴呆性疾患の増加が大きな社会問題のひとつになっている。現在、ADの臨床診断法には、長谷川式、ADAS、MMSEがあり、いずれもADが疑われる個体の認知機能の低下を定量的に評価する方法が一般的に用いられる。この他画像診断法(MRI, CT等)が補助的に用いられるが、これらの診断法ではADを確定診断するには不十分であり、確定診断には生前における脳の生検、死後脳の病理組織学的検査において、老人斑と神経原繊維の出現を確認することが必要である。したがって、現在の診断方法では、広範な脳障害が生じる前の早期段階でADを診断するのは困難である。これまでにADの生物学的診断マーカーとしていくつかの報告があるが、臨床上実用的なものはいまだ開発されていない。このような状況下、ADの早期診断に対する社会的要求は高く、その早急な開発が強く望まれている。
【0003】
老人斑はADの最も特徴的な脳病変であり、その主構成成分はβシート構造をとったアミロイドβ蛋白である。体外からの老人斑の画像化はADの有効な診断法の確立につながると考えられるが、画像化には、アミロイドβ蛋白と特異的に結合するプローブ化合物が必要である。これまでに、プローブ化合物としてコンゴーレッドおよびチオフラビンTを母体構造とする誘導体が、いくつか報告されているが(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)、アミロイドβ蛋白に対する結合特異性が低いこと、血液脳関門の透過性が低いこと、脳内での非特異的結合によりクリアランスが遅いことなど問題が少なくない。それゆえ、報告されたこれらの化合物は未だアミロイドが蓄積する疾患の診断において実用化されていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2004-250407号公報
【特許文献2】特開2004-250411号公報
【非特許文献1】W.E.Klunk et al., Annals of Neurology Vol55 No.3 March 2004 306-319
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような技術的背景のもとになされたものであり、アミロイドβ蛋白に対する高い結合特異性、高い血液脳関門の透過性、脳内老人斑以外の部位からの速やかな消失性を併せ持つ化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、コンゴーレッドやチオフラビンTとは全く構造が異なるフラボンの誘導体、カルコンの誘導体、スチリルクロモンの誘導体、及びクマリンの誘導体が、アミロイドβ蛋白を画像化するためのプローブ化合物としてきわめて優れた性質を持つことを見出し、この知見から本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(20)を提供するものである。
【0007】
(1)一般式(I)
【化1】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基を示し、R5は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基、又は式:-CH=CH−R6で表される基(式中、R6は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基を示す。)を示し、置換基群Aは、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群である。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0008】
(2)一般式(I)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ハロゲン原子である(1)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(3)一般式(I)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ヨウ素原子である(1)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(4)一般式(I)におけるR5が、置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基である(1)乃至(3)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(5)一般式(I)におけるR5が、4−ジメチルアミノフェニル基、4−メチルアミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、又は4−ヒドロキシフェニル基である(1)乃至(3)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0009】
(6)一般式(I)におけるR5が、式:-CH=CH−R6で表される基(式中、R6は置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を示す。)である(1)乃至(3)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(7)一般式(I)におけるR5が、4−アミノスチリル基、4−メチルアミノスチリル基、又は4−ジメチルアミノスチリル基である(1)乃至(3)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0010】
(8)一般式(II)
【化2】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基を示し、R7は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、又は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基を示し、置換基群Aは、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基からなる群である。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0011】
(9)一般式(II)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ハロゲン原子である(8)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(10)一般式(II)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ヨウ素原子である(8)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(11)一般式(II)におけるR7が、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル基、又は4−ジメチルアミノフェニル基である(8)乃至(10)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(12)一般式(III)
【化3】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基を示し、R8は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、又は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基を示し、置換基群Aは、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群である。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0012】
(13)一般式(III)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ハロゲン原子である(12)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0013】
(14)一般式(III)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ヨウ素原子である(12)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(15)一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される化合物が、放射性核種で標識されている化合物である(1)乃至(14)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(16)放射性核種が、陽電子放出核種である(15)記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【0014】
(17)放射性核種が、γ線放出核種である(15)記載記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(18)アミロイド関連疾患が、アルツハイマー病である(1)乃至(17)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
(19)アミロイド関連疾患のモデル動物に被験物質を投与する工程、前記モデル動物に(1)乃至(18)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法。
【0015】
(20)アミロイド関連疾患のモデル動物に前記疾患の治療薬又は予防薬を投与する工程、前記モデル動物に(1)乃至(18)のいずれか記載のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬の評価方法。
【発明の効果】
【0016】
一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物(以下、「一般式(I)等で表される化合物」という)は、アミロイドβ蛋白に対し高い結合特異性を持ち、また、血液脳関門の透過性も高く、更に、脳内老人斑以外の部位からの速やかに消失する性質を持つので、アルツハイマー病の診断に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、「ハロゲン原子」とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0018】
本発明において、「炭素数1〜4のアルキル基」とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基である。
本発明において、「炭素数1〜4のアルコキシ基」とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基である。
【0019】
本発明において、「アリール基」とは、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などである。
本発明において、「芳香族複素環基」とは、例えば、チオフェン−2−イル基、チオフェン−3−イル基、フラン−2−イル基、フラン−3−イル基、ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−5−イル基などである。
【0020】
本発明において、「置換基群Aから選ばれた置換基によって置換されていてもよいアリール基」とは、例えば、2−ジメチルアミノフェニル基、2−メチルアミノフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ジメチルアミノフェニル基、3−メチルアミノフェニル基、3−メトキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−メチルアミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル基、3−ヒドロキシ−4−メチルアミノフェニル基、3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル基、3,5−ジヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル基、3,5−ジヒドロキシ−4−メチルアミノフェニル基、3,5−ジヒドロキシ−4−メトキシフェニル基などである。
【0021】
本発明において、「置換基群Aから選ばれた置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基」とは、例えば、5−ジメチルアミノピリジン−2−イル基、5−メチルアミノピリジン−2−イル基、5−メトキシピリジン−2−イル基、6−ジメチルアミノピリジン−3−イル基、6−メチルアミノピリジン−3−イル基、6−メトキシピリジン−3−イル基などである。
【0022】
一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)において、R1、R2、R3、R4は、好適には、いずれかがハロゲン原子であり、より好適には、いずれかがヨウ素原子である。
【0023】
一般式(I)において、R5は、好適には、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基、又は式:-CH=CH−R6で表される基(式中、R6はハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を示す。)であり、より好適には、4−ジメチルアミノフェニル基、4−メチルアミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノスチリル基、4−メチルアミノスチリル基、又は4−ジメチルアミノスチリル基である。なお、R5のクロモン上の位置は2位、3位のいずれであってもよい。
【0024】
一般式(II)において、R7は、好適には、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基であり、より好適には、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル基、又は4−ジメチルアミノフェニル基である。
【0025】
一般式(III)において、R8は、好適には、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基であり、より好適には、4−メチルアミノフェニル基、又は4−ジメチルアミノフェニル基である。
【0026】
一般式(I)で表される化合物のうち代表的なものを表1〜表9に示す。
なお、以下の表において、「Me」はメチル基を、「Phe」はフェニル基を、「X1」は2−フルオロエトキシ基を、「X2」は3−フルオロプロポキシ基、「X3」は4−フルオロブトキシ基、「X4」は5−フルオロペントキシ基を表す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
【表8】
【0035】
【表9】
上記化合物のうちで、好ましいものとしては、I-1の化合物(化合物11)、I-2の化合物(化合物10)、I-3の化合物(化合物19)、I-28(化合物47)、I-29(化合物48)、I-46(化合物20)、I-59(化合物46)を挙げることができる。
一般式(II)で表される化合物のうち代表的なものを表10〜表20に示す。
【0036】
【表10】
【0037】
【表11】
【0038】
【表12】
【0039】
【表13】
【0040】
【表14】
【0041】
【表15】
【0042】
【表16】
【0043】
【表17】
【0044】
【表18】
【0045】
【表19】
【0046】
【表20】
上記化合物のうちで、好ましいものとしては、II-7の化合物(化合物31)、II-2の化合物(化合物36)を挙げることができる。
一般式(III)で表される化合物のうち代表的なものを表21〜表28に示す。
【0047】
【表21】
【0048】
【表22】
【0049】
【表23】
【0050】
【表24】
【0051】
【表25】
【0052】
【表26】
【0053】
【表27】
【0054】
【表28】
上記化合物のうちで、好ましいものとしては、III-1の化合物(化合物65)、III-2の化合物(化合物66)、III-3の化合物(化合物67)を挙げることができる。
【0055】
一般式(I)等で表される化合物は、後述する実施例の記載、及びMarder M et al, Biochemical and Biophysical Research Communications, 223, 384-389, 1996, Marder M et al, Bioorganic &Medicinal Chemistry Letters, 7, 2003-2008, 1997などの記載に従って合成することができる。
【0056】
一般式(I)等で表される化合物は、標識物質によって標識されていることが好ましい。標識物質としては、蛍光物質、アフィニティー物質などを使用してもよいが、放射性核種を使用するのが好ましい。標識に用いる放射性核種の種類は特に限定されず、使用の態様によって適宜決めることができる。例えば、一般式(I)等で表される化合物をコンピューター断層撮影法(SPECT)による診断に使用する場合、放射性核種は99mTc、111In、67Ga、201Tl、123I、133Xe(好適には、99mTc、123I)などのγ線放出核種を使用することができる。また、陽電子断層撮影法(PET)による診断に使用する場合には、11C、13N、15O、18F、62Cu、68Ga、76Br(好適には、11C、13N、15O、18F)などの陽電子放出核種を使用することができる。また、一般式(I)等で表される化合物をヒト以外の動物に投与する場合には、より半減期の長い放射性核種、例えば、125Iなどを使用してもよい。放射性核種は、一般式(I)等で表される化合物の分子中に含まれる形でもよく、また、一般式(I)等で表される化合物に結合する形であってもよい。
【0057】
一般式(I)等で表される化合物の代わりに、医薬上許容される塩を使用することも可能である。医薬上許容される塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩)、硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩などを例示できる。
【0058】
本発明の組成物はアミロイド関連疾患の診断に用いられる。ここで、「アミロイド関連疾患」とは、アミロイドβ蛋白の蓄積によって起きる疾患をいい、主にアルツハイマー病を意味するが、ダウン症候群、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血症(hereditary cerebral hemorrhage with amyloidosis─Dutch type: HCHWA-D)などの疾患も含まれる。また、一般には「疾患」と認識されない疾患の前駆症状も、本発明における「アミロイド関連疾患」に含まれる。このような疾患の前駆症状としては、アルツハイマー病の発症前にみられる軽度認知障害(MCI)などを例示できる。
【0059】
本発明の組成物によるアミロイド関連疾患の診断は、通常、本発明の組成物を診断対象者又は実験動物などに投与し、その後、脳の画像を撮影し、画像における一般式(I)等で表される化合物の状態(量、分布等)に基づいて行う。本発明の組成物の投与方法は特に限定されず、化合物の種類、標識物質の種類などに応じて適宜決めることができるが、通常は、皮内、腹腔内、静脈、動脈、又は脊髄液への注射又は点滴等によって投与する。本発明の組成物の投与量は特に限定されず、化合物の種類、標識物質の種類などに応じて適宜決めることができるが、成人の場合、一般式(I)等で表される化合物を1日当たり10-10〜10-3mg投与するのが好ましく、10-8〜10-5 mg投与するのが更に好ましい。
【0060】
上記のように本発明の組成物は、通常、注射又は点滴によって投与するので、注射液や点滴液に通常含まれる成分を含んでいてもよい。このような成分としては、液体担体(例えば、リン酸カリウム緩衝液、生理食塩水、リンゲル液、蒸留水、ポリエチレングリコール、植物性油脂、エタノール、グリセリン、ジメチルスルホキサイド、プロピレングリコールなど)、抗菌剤、局所麻酔剤(例えば、塩酸プロカイン、塩酸ジブカインなど)、緩衝液(例えば、トリス−塩酸緩衝液、ヘペス緩衝液など)、浸透圧調節剤(例えば、グルコース、ソルビトール、塩化ナトリウムなど)を例示できる。
【0061】
本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物は、アミロイド関連疾患の治療薬や予防薬のスクリーニングにも利用できる。例えば、アルツハイマー病などの「疾患」のモデル動物に被験物質を投与した後、前記モデル動物に本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与し、その後、前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)等で表される化合物の分布又は量を調べ、その結果、コントロール(被験物質を投与していないモデル動物)との間に有意な差異(例えば、分布部位の縮小、量の減少など)が検出されれば、被験物質はアミロイド関連疾患の治療薬の候補となり得る。また、軽度認知障害などの「疾患の前駆症状」のモデル動物に被験物質を投与した後、前記モデル動物に本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与し、その後、前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)等で表される化合物の分布又は量を調べ、その結果、コントロールとの間に有意な差異(例えば、分布部位の縮小又は拡大の鈍化、量の減少又は増大の鈍化など)が検出されれば、被験物質はアミロイド関連疾患の予防薬の候補となり得る。
【0062】
また、本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物は、既に効果が確認されているアミロイド関連疾患の治療薬や予防薬の評価にも利用できる。即ち、アミロイド関連疾患のモデル動物に前記疾患の治療薬又は予防薬を投与した後、前記モデル動物に本発明のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与し、その後、前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)等で表される化合物の分布又は量を調べ、これにより、前記治療薬や予防薬の評価(具体的には、有効な投与量、有効な投与方法など)を行う。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実験方法〕
試薬・機器
放射性ヨウ素-125 (125I) はアマシャムバイオサイエンス株式会社製IODINE-125 (74 MBq)を用いた。逆相HPLCはナカライテスク社製Cosmosil 5C18-ARカラム(4.6 x 150 mm)を用いて、超純水 (A)とアセトニトリル(B)をA:B = 40:60を溶出溶媒とし、流速1.0 mL/minで分析した。1H-NMRは、Varian Gemini 300を用い、テトラメチルシランを内部標準物質として測定した。質量分析は、JEOL IMS-DX300を用いて測定した。Amyloid βProtein (Human, 1-40) [HCl form]及びAmyloid βProtein (Human, 1-42) [TFA form]はペプチド研究所より購入し、その他の試薬は特級試薬を用いた。
【0064】
(1)フラボン誘導体の合成
4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステルの合成
氷浴中、4-塩化ニトロベンゾイル(1.00 g, 4.65 mmol)のピリジン溶液(20 mL)に5’-ブロモ-2’-ヒドロキシアセトフェノン(化合物1)(863 mg, 4.65 mmol)を加えた。室温で30分間反応させた後、氷冷下1 N塩酸へ注ぎ、激しく攪拌させた。析出した沈澱を濾取し、精製水で洗浄後、目的物である4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステル(化合物2)を得た。収量1.57 g(収率:92.7%)1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.37 (s, 4H), 8.00 (s, 1H), 7.76-7.72 (m, 1H), 7.16 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 2.55 (s, 3H). MS m/z 365 (MH+).
【0065】
1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオンの合成
化合物2(2.31 g, 6.34 mmol)をピリジン(40 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(530 mg, 9.45 mmol)を加え、15分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈澱を濾取し、目的物である1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオン(化合物3)を得た。収量2.01 g(収率:87.1%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ11.85 (s, 1H), 8.36 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 8.13 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.88 (s, 1H), 7.57 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.83 (s, 2H). MS m/z 365 (MH+).
【0066】
6-ブロモ-4’-ニトロフラボンの合成
化合物3(2.00 g, 5.49 mmol)、濃硫酸(0.5 mL)、酢酸(40 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を濾取し、目的物である6-ブロモ-4’-ニトロフラボン(化合物4)を得た。収量1.79 g(収率:94.2%)MS m/z 347 (MH+).
【0067】
6-ブロモ-4’-アミノフラボンの合成
化合物4(100 mg, 0.289 mmol)のエタノール(7 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(275 mg, 1.45 mmol)をゆっくり加え、1時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(50 mL)を加え、酢酸エチル 50 mL (25 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-ブロモ-4’-アミノフラボン(化合物5)を黄色結晶として得た。収量 77 mg(収率:84.3%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.36 (s, 1H), 7.72-7.76 (m, 3H), 7.44 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.70 (s, 1H), 4.15 (s, 2H). MS m/z 317 (MH+).
【0068】
6-ブロモ-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物5(300 mg, 0.949 mmol)とパラホルムアルデヒド(154 mg, 5.13 mmol)のメタノール溶液(15 mL)に撹拌しながらナトリウムメチラートメタノール溶液(0.27 mL)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(180 mg, 4.75 mmol)を固体のまま少しずつ加えて、さらに2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 3 / 5 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ブロモ-4’-メチルアミノフラボン(化合物6)を得た。収量 121 mg(収率:38.6%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.31 (s, 1H), 7.69-7.75 (m, 3H), 7.39 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.62-6.66 (m, 3H), 4.18 (s, 1H). 2.91 (s, 3H).
【0069】
6-ブロモ-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物5(75 mg, 0.237 mmol)とパラホルムアルデヒド(71.1 mg, 2.37 mmol)の酢酸溶液(10 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(74.5 mg, 1.19 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で 3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mL (25 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-ブロモ-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物7)を黄色結晶として得た。収量 70 mg(収率:85.7%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.34 (s, 1H), 7.72-7.82 (m, 3H), 7.43 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.70-6.77 (m, 3H), 3.08 (s, 6H). MS m/z 345 (M+).
【0070】
6-(トリブチルスタニル)-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物6(286 mg, 0.866 mmol)のジオキサン溶液(21 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.55 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(41 mg, 0.035mmol)、トリエチルアミン(7 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 4 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(トリブチルスタニル)-4’-メチルアミノフラボン(化合物8)を得た。収量 174 mg(収率:37.2%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.30 (s, 1H), 7.65-7.78 (m, 3H), 7.46 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 4.14(s, 1H), 2.92 (s, 3H), 0.86-1.35 (m, 27H). MS m/z 541 (MH+).
【0071】
6-(トリブチルスタニル)-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物7(200 mg, 0.58 mmol)のジオキサン溶液(20 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.5 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(45 mg)、トリエチルアミン(6 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(トリブチルスタニル)-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物9)を得た。収量54 mg(収率:16.8%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.30 (s, 1H), 7.82 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.71-7.75 (m, 1H), 7.49 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.72-6.77 (m, 3H), 0.86-1.56 (m, 27H). MS m/z 555 (MH+).
【0072】
6-ヨード-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物8(100 mg, 0.185 mmol)のクロロホルム溶液(20 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(1.5 mL, 1 M)を室温で加えた。室温で10分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 2 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヨード-4’-メチルアミノフラボン(化合物10)を得た。収量20 mg(収率:28.7%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.53 (s, 1H), 7.90 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.75 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.28 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 6.64-6.69 (m, 3H), 4.15 (s, 1H), 2.93 (s, 3H). MS m/z 377 (M+).
【0073】
6-ヨード-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物9(30 mg, 0.054 mmol)のクロロホルム溶液(5 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(1 mL, 1 M)を室温で加えた。室温で30分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(5 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1 / 9)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヨード-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物11)を得た。収量 10 mg(収率:47.3%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.54 (s, 1H), 7.92 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.71-6.80 (m, 3H), 3.09 (s, 6H). MS m/z 392 (MH+).
【0074】
4-メトキシ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステルの合成
氷浴中、4-塩化メトキシベンゾイル(2.01 g, 9.35 mmol)のピリジン溶液(40 mL)に5’-ブロモ-2’-ヒドロキシアセトフェノン(化合物12)(1.80 g, 10.6 mmol)を加えた。室温で 30分間反応させた後、氷冷下1 N塩酸へ注ぎ、激しく攪拌させた。析出した沈澱を濾取し、精製水で洗浄後、目的物である4-メトキシ安息香酸 2-アセチル-4-ブロモフェニルエステル(化合物13)を得た。収量3.15 g(収率:96.5%)1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.72 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 8.86 (s, 1H), 10.13 (s, 1H).
【0075】
1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオンの合成
化合物13(1.63 g, 4.67 mmol)をピリジン(50 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(524 mg, 9.33 mmol)を加え、15分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈澱を濾取し、目的物である1-(5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン(化合物14)を得た。収量 1.42 g(収率:85.2%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ12.01 (s, 1H), 7.94 (d, J = 9.3 Hz, 2H), 7.83 (s, 1H), 7.53 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 9.3 Hz, 2H), 6.90 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.68 (s, 2H). 3.90 (s, 3H).
【0076】
6-ブロモ-4’-メトキシフラボンの合成
化合物14(2.67 g, 7.65 mmol)、濃硫酸(0.78 mL)、酢酸(40 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を濾取し、目的物である6-ブロモ-4’-メトキシフラボン(化合物15)を得た。収量2.01 g(収率:79.4%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.35 (s, 1H), 7.87 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.03 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.75 (s, 1H), 3.90 (s, 3H).
【0077】
6-ブロモ-4’-ヒドロキシフラボンの合成
化合物15(400 mg, 1.21 mmol)のジクロロメタン(215 mL)溶液に、氷冷下、撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(12 mL)をゆっくり加え、時間反応を行った。反応終了後、反応溶液に精製水(100 mL)を加え、ジクロロメタン層を抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 2 / 5 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ブロモ-4’-ヒドロキシフラボン(化合物16)を得た。収量 50 mg(収率:13.1%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ10.38 (s, 1H), 8.09 (s, 1H), 7.97-8.00 (m, 3H), 7.76 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.93-6.96 (m, 3H).
【0078】
6-(トリブチルスタニル)-4’-メトキシフラボンの合成
化合物15(500 mg, 1.51 mmol)のジオキサン溶液(36 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.95 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(72 mg, 0.0623 mmol)、トリエチルアミン(12 mL)を加え、90℃で10時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 10 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(トリブチル)-4’-メトキシフラボン(化合物17)を得た。収量 562 mg(収率:68.8%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.31 (s, 1H), 7.88-7.92 (m, 2H), 7.68-7.75 (m, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.02-7.05 (m, 2H), 6.77 (s, 1H), 3.90 (s, 3H), 0.86-1.57 (m, 27H). MS m/z 542 (MH+).
【0079】
6-(トリブチルスタニル)-4’-ヒドロキシフラボンの合成
化合物16(50 mg, 0.158 mmol)のジオキサン溶液(4.5 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.1 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(7.5 mg)、トリエチルアミン(1.5 mL)を加え、90℃で17時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 5 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-(トリブチルスタニル)-4’-ヒドロキシフラボン(化合物18)を得た。収量 36 mg(収率:43.3%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.31 (s, 1H), 7.85 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.50-7.55 (m, 1H), 7.00 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.77 (s, 1H), 6.31 (s, 1H), 0.86-1.59 (m, 27H). MS m/z 527 (M+).
【0080】
6-ヨード-4’-メトキシフラボンの合成
化合物17(450 mg, 0.831 mmol)のクロロホルム溶液(87 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(5 mL, 1 M)を室温で加えた。室温で30分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 7 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヨード-4’-メトキシフラボン(化合物19)を得た。収量 227 mg(収率:72.2%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.55 (s, 1H), 7.86-7.93 (m, 3H), 7.32 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.03 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.75 (s, 1H), 3.90 (s, 3H). MS m/z 378 (M+).
【0081】
6-ヨード-4’-ヒドロキシフラボンの合成
化合物19(185 mg, 0.489 mmol)のジクロロメタン(85 mL)溶液に、氷冷下、撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(4.9 mL)をゆっくり加え、30時間反応を行った。反応終了後、反応溶液に精製水(80 mL)を加え、ジクロロメタン層を抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 4 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヨード-4’-ヒドロキシフラボン(化合物20)を得た。収量 79 mg(収率:44.3%)1H NMR(300 MHz, DMSO6)δ10.37 (s, 1H), 8.27 (s, 1H), 8.28-8.30 (m, 1H), 7.98 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.61 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.93-6.95 (m, 3H). MS m/z 364 (M+).
【0082】
4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-メトキシフェニルエステルの合成
氷浴中、4-塩化ニトロベンゾイル(1.72 g, 9.26 mmol)のピリジン溶液(20 mL)に5’-メトキシ-2’-ヒドロキシアセトフェノン (1.5 g, 9.03 mmol)を加えた。室温で30分間反応させた後、氷冷下1 N塩酸へ注ぎ、激しく攪拌させた。析出した沈澱を濾取し、精製水で洗浄後、目的物である4-ニトロ安息香酸 2-アセチル-4-メトキシフェニルエステル(化合物21)を得た。収量2.49 g(収率:87.4%)
【0083】
1-(5-メトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオンの合成
化合物21(3.01 g, 9.55 mmol)をピリジン(50 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(2.53 g, 45.1 mmol)を加え、15分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈澱を濾取し、目的物である1-(5-メトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-1,3-ジオン(化合物22)を得た。収量2.93 g(収率:97.4%)
【0084】
6-メトキシ-4’-ニトロフラボンの合成
化合物22(2.92 g, 9.26 mmol)、濃硫酸(1 mL)、酢酸(50 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を濾取し、目的物である6-メトキシ-4’-ニトロフラボン(化合物23)を得た。収量2.31 g(収率:84.1%)
【0085】
6-メトキシ-4’-アミノフラボンの合成
化合物23(520 mg, 1.75 mmol)のエタノール(30 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(3.32 g, 17.5 mmol)をゆっくり加え、1時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(150 mL)を加え、酢酸エチル 50 mL (150 mL)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-メトキシ-4’-アミノフラボン(化合物24)を黄色結晶として得た。収量 360 mg(収率:74.8%)1H NMR(300 MHz, DMSO-d6)δ7.91 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.69-7.70 (m, 1H), 7.38-7.42 (m, 2H), 6.93 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.82 (s, 1H), 3.86 (s, 2H).
【0086】
6-メトキシ-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物24(630 mg, 2.36 mmol)とパラホルムアルデヒド(707 mg, 23.6 mmol)の酢酸溶液(30 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(891 mg, 14.1 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で 3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mL (25 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物である6-メトキシ-4’-メチルアミノフラボン(化合物25)を黄色結晶として得た。収量 450 mg(収率:64.6%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.31 (s, 1H), 7.69-7.75 (m, 3H), 7.39 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.62-6.66 (m, 3H), 4.18 (s, 1H). 2.91 (s, 3H).
【0087】
6-メトキシ-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物24(270 mg, 1.01 mmol)とパラホルムアルデヒド(152 mg, 5.05 mmol)のメタノール溶液(15 mL)に撹拌しながらナトリウムメチラートメタノール溶液(0.27 mL)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(306 mg, 8.08 mmol)を固体のまま少しずつ加えて、さらに2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1/ 1 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ブロモ-4’-メチルアミノフラボン(化合物26)を得た。収量 120 mg(収率:42.2%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ7.78 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.59 (m, 1H), 7.47 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.22-7.26 (m, 1H), 6.65-6.69 (m, 3H), 3.91 (s, 3H), 2.93 (s, 3H).
【0088】
6-ヒドロキシ-4’-ジメチルアミノフラボンの合成
化合物25(200 mg, 0.68 mmol)のジクロロメタン(50 mL)溶液に、氷冷下、撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(5 mL)をゆっくり加え、時間反応を行った。反応終了後、反応溶液に精製水(100 mL)を加え、ジクロロメタン層を抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルム/メタノール( 20 / 1 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヒドロキシ-4’-ジメチルアミノフラボン(化合物27)を得た。収量 25 mg(収率:13.1%)1H NMR(300 MHz, DMSO-d6)δ 9.94 (s, 1H), 7.90 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.30 (m, 1H), 7.19-7.22 (m, 1H), 6.82 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.73 (s, 1H), 3.03 (s, 6H).
【0089】
6-ヒドロキシ-4’-メチルアミノフラボンの合成
化合物26(270 mg, 0.96 mmol)のジクロロメタン(20 mL)溶液に、氷冷下、撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(5 mL)をゆっくり加え、時間反応を行った。反応終了後、反応溶液に精製水(100 mL)を加え、ジクロロメタン層を抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルム/メタノール( 20 / 1 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である6-ヒドロキシ-4’-メチルアミノフラボン(化合物28)を得た。収量 15 mg(収率:5.8%)1H NMR(300 MHz, DMSO-d6)δ9.92 (s, 1H),7.83 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.58 (d, J = 8.7Hz, 1H), 7.30 (m, 1H), 7.18-7.22 (m, 1H), 6.64-6.67 (m, 3H), 2.76 (s, 3H).
【0090】
(2)カルコン誘導体の合成
(E)-1-(3-ブロモフェニル)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
3-ブロモアセトフェノン1.99 g (10 mmol)をエタノール(10 mL)に溶解し、10%水酸化カリウム水溶液(30 mL)に氷冷下加えた。15分間撹拌後、o-バニリン1.52 g (10 mmol)を固体のまま加え、さらに氷冷下15分間撹拌した。室温に戻し、4時間撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過し、ろ液を減圧留去し、酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに付し、目的物である化合物29を得た。収量470 mg(収率14.1%)。1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.14 (s, 1H), 8.04 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.90-7.98 (m, 1H), 7.66-7.71 (m, 2H), 7.32-7.40 (m, 1H), 7.15-7.20 (m, 1H), 6.89-6.91 (m, 2H), 6.31 (s, 1H), 3.94 (s, 3H).
【0091】
(E)-1-(3-(トリブチルスタニル)フェニル)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物29(370 mg, 1.11 mmol)のジオキサン溶液(10 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (1 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(75 mg)、トリエチルアミン(5 mL)を加え、12時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 9)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である化合物30を得た。収量 161 mg(収率:26.7%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ8.10 (s, 1H), 8.03 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.90-7.95 (m, 1H), 7.73 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.62-7.68 (m, 1H), 7.41-7.49 (m, 1H), 7.15-7.20 (m, 1H), 6.87-6.89 (m, 2H), 6.24 (s, 1H), 3,94 (s, 3H), 0.86-1.65 (m, 27H).
【0092】
(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(3-ヨードフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物30(150 mg, 0.28 mmol)のクロロホルム溶液(15 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(2 mL, 1.1 mM溶液)を室温で加えた。室温で30分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 5 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である化合物31を得た。収量 47 mg(収率:44.8%)
【0093】
(E)-1-(4-ブロモフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
4-ブロモアセトフェノン1.99 g (10 mmol)をエタノール(10 mL)に溶解し、10%水酸化カリウム水溶液(30 mL)に氷冷下加えた。15分間撹拌後、4−ニトロベンズアルデヒド1.51 g (10 mmol)を固体のまま加え、さらに氷冷下15分間撹拌した。室温に戻し、4時間撹拌した後、酢酸エチル(50 mL)を加え、析出した結晶を吸引濾過し、酢酸エチルで十分洗い、目的物である化合物32を得た。収量1.27 g(収率38.2%)。
【0094】
(E)-3-(4-アミノフェニル)-1-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物32(1.0 g, 3.01 mmol)のエタノール(15 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(5.0 g, 26.4 mmol)をゆっくり加え、2時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(150 mL)を加え、酢酸エチル 50 mL (150 mL)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 3 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である化合物33を得た。収量 556 mg(収率:61.1%)
【0095】
(E)-1-(4-ブロモフェニル)-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物33(250 mg, 0.83 mmol)とパラホルムアルデヒド(400 mg, 13.4 mmol)の酢酸溶液(15 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(250 mg, 3.98 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で 3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mL (25 mL x 2)で抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 12 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である化合物34を得た。収量 236 mg(収率:86.1%)
【0096】
(E)-1-(4-(トリブチルスタニル)フェニル)-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物34(220 mg, 0.67 mmol)のジオキサン溶液(10 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (1 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(84 mg)、トリエチルアミン(5 mL)を加え、2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 18 )を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物である化合物35を得た。収量 43 mg(収率:11.9%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ7.91 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.80 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.51-7.65 (m, 3H), 7.35 (d ,J = 15.9 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.05 (s, 6H), 0.88-1.59 (m, 27H).
【0097】
(E)-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-1-(4-ヨードフェニル)プロパン-2-エン-1-オンの合成
化合物35(4 mg, 0.07 mmol)のクロロホルム溶液(5 mL)に、ヨウ素のクロロホルム溶液(2 mL, 1.1 mM溶液)を室温で加えた。室温で30分間反応した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン( 1 / 9 )を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物である化合物36を得た。収量 13 mg(収率:46.6%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ7.82-7.88 (m, 3H), 7.71-7.78 (m, 2H), 7.53 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.20-7.30 (m, 2H), 6.68 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.05 (s, 6H).
【0098】
(3)スチリルクロモン誘導体の合成
(E)-2-アセチル -4-ブロモフェニルl 3-(4-ニトロフェニル)アクリレイト の合成
4-ニトロケイ皮酸クロリド(545 mg, 2.58 mmol)のピリジン溶液(10 mL)に5-ブロモ-2-ヒドロキシアセトフェノン(500 mg, 2.58 mmol)を加えた。室温で60分反応させた後、氷冷下1 N塩酸に注ぎ、激しく撹拌させた。析出した沈殿を瀘取し、精製水で洗浄後、目的物である化合物37を得た。収量1.073 g (収率99.2%). 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.29(d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.77-7.62 (m, 4H), 7.10 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.80 (d, J = 16.2 Hz, 1H).
【0099】
1-(5-ブロモ-2ヒドロキシフェニル)-5-(4-ニトロフェニル)ペント-4-エン-1,3-ジオン の合成
化合物37(500 mg, 1.28 mmol)をピリジン(12 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(0.22 g, 3.84 mmol)を加え、30分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈殿を瀘取し、目的物38を得た。収量410 mg(収率82.0%).
【0100】
6-ブロモ-4’-ニトロスチリルクロモン の合成
化合物38(860 mg,2.20 mmol)、濃硫酸(1.2 mL)、酢酸(15 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を瀘取し、目的物39を得た。収量790 mg(収率 94.0%)
【0101】
6-ブロモ-4’-アミノスチリルクロモン の合成
化合物39(361 mg,0.97 mmol)のエタノール(30 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II)(1.287 g, 4.74 mmol)をゆっくり加え、2時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(100 mL)を加え、酢酸エチル100 mLで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物40を得た。収量210 mg (収率 63.3%) 1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 8.30 (d, J = 2.4 Hz), 7.71(dd, 1H), 7.47-7.38 (m, 4H), 6.68 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.55 (d, J = 15.9 Hz,1H), 6.25 (s,1H), 3.99(s, 2H).
【0102】
6-ブロモ-4’-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物40(710 mg, 2.07 mmol)とパラホルムアルデヒド(231 mg,7.70 mmol)のメタノール溶液(15 mL)に撹拌しながらナトリウムメチラートメタノール溶液(0.45 mL)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(270 mg, 7.13 mmol)を固体のまま少しずつ加えて、さらに2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物41を得た。収量690 mg (収率 96%) 1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.30 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.71 (dd, 1H), 7.45-7.29 (m, 4H), 6.61-6.56 (m, 3H), 6.25 (s, 1H), 4.18 (s, 1H), 2.89 (s, 3H). MS m/z 355.
【0103】
6-ブロモ-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物40(194 mg, 0.567 mmol)をとパラホルムアルデヒド(170 mg, 5.67 mmol)の酢酸溶液(10 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(214 mg, 3.40 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mLで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し化合物42を得た。収量0.15g (収率 71.5%) 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.31(d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.71(dd, 1H), 7.56-7.46 (m, 3H), 7.39 (d, J = 8.7Hz, 1H), 6.72 (d, J = 2.7 Hz, 2H), 6.57 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.24 (s, 1H), 3.04 (s, 6H). MS m/z 371.
【0104】
6-(トリブチルスタニル)-4’-アミノスチリルクロモン の合成
化合物40(242 mg, 0.707 mmol)のジオキサン溶液(12 mL)に、ビス(トリブチルスズ)(0.5 mL)、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム(40 mg, 0.034 mmol)、トリエチルアミン(8 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(2/3)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物43を得た。収量220 mg (収率56.3%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.28 (s, 1H), 7.74 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.54-7.48 (m, 3H), 7.42 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.68 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.57 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.27 (s, 1H), 4.07 (s, 2H), 0.86-1.54 (m, 27H). MS m/z 496.
【0105】
6-(トリブチルスタニル)-4’-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物41(300 mg,0.84 mmol)のジオキサン溶液(10 mL)に、ビス(トリブチルスズ) (0.6 mL)、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム(41 mg, 0.035 mmol)、トリエチルアミン(7 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物44を得た。収量204 mg(収率42.8%) 1HNMR (300 MHz, CDCl3) δ8.28 (s, 1H), 7.74 (d, 1H), 7.54-7.43 (m,4H), 6.62-6.57 (m, 3H), 6.26 (s, 1H), 4.11 (s, 1H), 2.89 (s, 3H), 0.86-1.52 (m, 27H). MS m/z 567.
【0106】
6-(トリブチルスタニル)-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物42(150 mg, 0.405 mmol)のジオキサン溶液(10 mL)に、ビス(トリブチルスズ)(0.3 mL)、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム(20 mg, 0.017 mmol)、トリエチルアミン(5 mL)を加え、90℃で6時間加熱した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物45を得た。収量220 mg (収率37.4%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.23 (s, 1H), 7.74 (dd, 1H), 7.59-7.47 (m, 3H), 7.42 (d, 1H), 6.71 (d, J = 8.9Hz, 2H), 6.56 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.27 (s, 1H), 3.04 (s, 6H), 0.86-1.74 (m, 27H). MS m/z 580.
【0107】
6-ヨード-4’-アミノスチリルクロモン の合成
化合物43(220 mg, 0.398 mmol)をクロロホルム5 mLに溶解し、撹拌下ヨウ素のクロロホルム溶液(3 mL, 0.25 M)を室温で加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物46を得た。収量60 mg (収率38.8%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.50 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.89 (dd, 1H), 7.53-7.39 (m, 3H), 7.27 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.56 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 3.99 (s,2H). MS m/z 389.
【0108】
6-ヨード-4’-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物44(200 mg, 0.353 mmol)をクロロホルム7 mLに溶解し、撹拌下ヨウ素のクロロホルム溶液(4 mL, 0.25 M)を室温で加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/3)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物47を得た。収量32 mg (収率22.4%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.50 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.94 (dd, 1H), 7.59-7.42 (m, 3H), 7.28 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.61 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.54 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 6.25 (s, 1H), 4.21 (s, 1H), 2.94 (s, 3H). MS m/z 403.
【0109】
6-ヨード-4’-ジメチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物45(35 mg, 0.06 mmol)をクロロホルム6 mLに溶解し、撹拌下ヨウ素のクロロホルム溶液(4 mL, 0.15 M)を室温で加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)を加え、反応を終了させた。クロロホルム層を分液し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物48を得た。収量18 mg (収率71.8%) 1HNMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.45 (d, 1H), 7.94 (dd, 1H), 7.59-7.44 (m, 3H), 7.23 (d, 1H), 6.65 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.65 (d, 1H), 6.25 (s, 1H), 3.04 (s, 6H). MS m/z 417.
【0110】
(E)-2-アセチル-4-メトキシフェニル3-(4-ニトロフェニル)アクリレイト の合成
4-ニトロケイ皮酸クロリド(800 mg, 0.44 mmol)のピリジン溶液(10 mL)に5-メトキシ-2-ヒドロキシアセトフェノン(500 mg, 3.01 mmol)を加えた。室温で60分反応させた後、氷冷下1 N塩酸に注ぎ、激しく撹拌させた。析出した沈殿を瀘取し、精製水で洗浄後、目的物であるアセトフェノン49を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ8.28 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.88-7.76 (m, 4H), 7.30 (d, 2H), 6.79 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 2.56 (s, 3H).
【0111】
1-(5-メトキシ-2ヒドロキシフェニル)-5-(4-ニトロフェニル)ペント-4-エン-1,3-ジオン の合成
化合物49 (126 mg, 3.19 mmol)をピリジン(20 mL)に溶解し、50℃まで加熱した。粉砕した水酸化カリウム(0.4 g, 1.11 mmol)を加え、30分間撹拌後、氷冷し、10%酢酸溶液を加えた。析出した淡黄色の沈殿を瀘取し、目的物50を得た。収量902 mg (収率72.0%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.27 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.72--7.69 (m, 4H), 7.14-7.12 (m, 3H), 6.97 (s, 1H), 6.77 (d, 1H), 3.83 (s, 3H).
【0112】
6-メトキシ-4-ニトロスチリルクロモン の合成
化合物50(900 mg, 2.64 mmol)、濃硫酸(1.0 mL)、酢酸(30 mL)の混液を1時間加熱還流した。室温に戻した後、氷片を反応溶液に加え、析出した結晶を瀘取し、目的物51を得た。収量810 mg (収率90.0 %)
【0113】
6-メトキシ-4-アミノスチリルクロモン の合成
化合物51 (830 mg, 2.57 mmol)のエタノール(25 mL)溶液に、撹拌しながら塩化スズ(II) (2.5 g, 1.32 mmol)をゆっくり加え、2時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液(50 mL)を加え、クロロホルム50 mLで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、目的物52を得た。収量510 mg (収率61.4 %) .
【0114】
6-メトキシ-4-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物52(500 mg,1.7 mmol)とパラホルムアルデヒド(262 mg, 8.72 mmol)のメタノール溶液(15 mL)に撹拌しながらナトリウムメチラートメタノール溶液(0.46 mL)をゆっくり滴下した。1時間加熱還流後、水素化ホウ素ナトリウム(310 mg, 8.18 mmol)を固体のまま少しずつ加えて、さらに2時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物53を得た。収量179 mg (収率34.4 %)
【0115】
6-メトキシ-4-ジメチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物52(270 mg, 0.92 mmol)をパラホルムアルデヒド(300 mg, 9.99 mmol)の酢酸溶液(15 mL)に水素化シアノホウ素ナトリウム(314 mg, 5.02 mmol)を撹拌しながらゆっくり加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に1 N水酸化ナトリウム水溶液50 mLを加え、クロロホルム50 mLで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し化合物54を得た。収量0.20 g (収率70.9 %) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.56 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.48-7.42 (m, 3H), 7.25 (d, 1H), 6.74 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.54 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.24 (s, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.02 (s, 6H).
【0116】
6-ヒドロキシ-4-アミノスチリルクロモン の合成
化合物52(270 mg, 0.92 mmol)をジクロロメタン40 mLに溶解させ、氷冷下三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液4.6 mLをゆっくり加えた。氷上で時間反応させた後、反応液を少量ずつ氷水に加え、ジクロロメタン層と水層で分液抽出し目的物55を得た。収量112 mg (収率40.9 %) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ9.29 (s, 1H), 7.55-7.42 (m, 3H), 7.39-7.28 (m, 3H), 6.78 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.68 (d, 1H), 6.24, (s,1H), 5.91 (s, 2H).
【0117】
6-ヒドロキシ-4-メチルアミノスチリルクロモン の合成
化合物53(179 mg, 0.58 mmol)をジクロロメタン25 mLに溶解させ、氷冷下三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液2.9 mLをゆっくり加えた。氷上で時間反応させた後、反応液を少量ずつ氷水に加え、ジクロロメタン層と水層で分液抽出し目的物56を得た。収量12 mg (収率7.1 %) 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ9.92 (s,1H), 7.55-7.49 (m, 3H), 7.28 (d, 2H), 7.19 (dd, 1H), 6.81 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.25 (s, 1H), 3.23 (s, 1H), 2.52 (s, 3H).
【0118】
6-ヒドロキシ-4-ジメチルアミのスチリルクロモン の合成
化合物54 (160 mg, 0.522 mmol)をジクロロメタン25 mLに溶解させ、氷冷下三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液2.9 mLをゆっくり加えた。氷上で時間反応させた後、反応液を少量ずつ氷水に加え、ジクロロメタン層と水層で分液抽出し目的物57を得た。収量80 mg (収率52.4 %) 1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 7.56-7.52(m, 3H), 7.27-7.22 (m, 3H), 6.87 (d, J = 17.7 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.26 (s, 1H), 2.99 (s,6H).
【0119】
(4)クマリン誘導体の合成
6-ブロモ-3-(4-ニトロフェニル)クマリンの合成
5-ブロモサリチルアルデヒド(300 mg, 1.5 mmol)、p-ニトロフェニル酢酸(280 mg, 1.6 mmol)、2-塩化-1-メチルピリジニウムヨージド(770 mg, 3.0 mmol)をアセトニトリル(15 mL)に溶解させた。トリエチルアミン(0.5 mL)を加えた後、加熱還流を3時間行った。反応溶媒を減圧留去した後、半固体状の残渣に希塩酸を加えて吸引濾過、沈殿を濾取し、目的物58を得た。収量300 mg(収率57.8%).
【0120】
6-ブロモ-3-(4-アミノフェニル)クマリンの合成
化合物58(150 mg, 0.43 mmol)をエタノール(25 mL)に溶解させ、塩化スズ(II)(380 mg, 2 mmol)を加えて加熱還流を2時間行った。反応溶媒を減圧留去した後、0.1 N水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出を行った。酢酸エチル相を回収し、酢酸エチルを減圧留去して目的物59を得た。収量100 mg(収率74%)1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 7.63 (m, 2H), 7.55 (m, 3H), 7.25 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.74 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 3.88 (s, 2H).
【0121】
6-ブロモ-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物59(150 mg, 0.47 mmol)をメタノール(4.4 mL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(77 mg, 2.66 mmol)とナトリウムメチラートメタノール溶液(0.15 mL)を加え加熱還流を行った。0.5時間後、水素化ホウ素ナトリウム(95 mg, 2.5 mmol)を少しずつ加えて、さらに2時間還流を行った。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物60を得た。収量32 mg(収率21%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ 7.62 (s, 1H), 7.59 (d, J = 6.9Hz, 2H), 7.52 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 6.65 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.91 (s, 1H), 2.88 (s, 3H).
【0122】
6-ブロモ-3-(4-ジメチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物60(160 mg, 0.5 mmol)を酢酸(6.5 mL)に溶解させ、パラホルムアルデヒド(157 mg, 5.4 mmol)を加えて加熱還流を行った。0.5時間後、反応溶液を常温まで冷却し、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(190 mg, 3.0 mmol)を加え室温で4時間後撹拌した。反応溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物61を得た。収量100 mg(収率58%)1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 7.66 (s, 1H), 7.62 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 7.23 (d, J = 9.2Hz, 1H), 6.76 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.01 (s, 3H).
【0123】
6-(トリブチルスタニル)-3-(4-アミノフェニル)クマリンの合成
化合物59(150 mg, 0.47 mmol)を1,4-ジオキサン(15 mL)に溶解させ、ビス(トリブチルスズ)(0.5 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(30 mg, 0.026 mmol)、トリエチルアミン(7 mL)を加えて加熱還流を行った。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/1)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物62を得た。収量100 mg(収率40%)1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ 7.73 (s, 1H), 7.57 (m, 4H), 7.32 (d, 1H), 6.7 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.84 (s, 2H), 1.64 (m, 6H), 1.34 (m, 6H), 1.12 (m, 6H), 0.92 (m, 9H).
【0124】
6-(トリブチルスタニル)-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物60(230 mg, 0.43 mmol)を1,4-ジオキサン(23 mL)に溶解させ、ビス(トリブチルスズ)(0.7 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(46 mg)、トリエチルアミン(11 mL)を加えて加熱還流を行った。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物63を得た。収量50 mg(収率20%)1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 7.73 (s, 1H), 7.62 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.54 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 3.94 (s, 1H), 2.87 (s, 3H), 0.90-1.54 (m, 27H). MSm/z 541
【0125】
6-(トリブチルスタニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物61(150 mg, 0.44 mmol)を1,4-ジオキサン(15 mL)に溶解させ、ビス(トリブチルスズ)(0.5 mL)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(30 mg)、トリエチルアミン(7 mL)を加えて加熱還流を行った。5時間後、反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/5)溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィに付し、目的物64を得た。収量63 mg(収率26%)1H NMR(300 MHz, CDCl.)δ 7.73 (s, 1H), 7.67 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.55 (d, 2H), 7.28 (d, 1H), 6.77 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.01 (s, 6H), 0.90-1.60 (m, 27H) .MSm/z 555
【0126】
6-ヨード-3-(4-アミノフェニル)クマリンの合成
化合物62(50 mg, 0.095 mmol)をクロロホルム(5 mL)に溶解させ、ヨウ素のクロロホルム溶液(3 mL, 1 M)を加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)を加えて反応を終了させた。クロロホルム相を回収し、クロロホルムを減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/1)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物65を得た。収量30 mg(収率87%)
【0127】
6-ヨード-3-(4-メチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物63(40 mg, 0.074 mmol)をクロロホルム(5 mL)に溶解させ、ヨウ素のクロロホルム溶液(3 mL, 1 M)を加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)を加えて反応を終了させた。クロロホルム相を回収し、クロロホルムを減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/2)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物66を得た。収量20 mg(収率72%). MSm/z 377
【0128】
6-ヨード-3-(4-ジメチルアミノフェニル)クマリンの合成
化合物64(30 mg, 0.054 mmol)をクロロホルム(5 mL)に溶解させ、ヨウ素のクロロホルム溶液(3 mL, 1 M)を加えた。室温で10分間反応させた後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)を加えて反応を終了させた。クロロホルム相を回収し、クロロホルムを減圧留去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的物67を得た。収量20 mg(収率95%)MSm/z 391.
【0129】
(5)ヨウ素標識実験
トリスズブチル前駆体 (1 mg/mL)のエタノール溶液50 μLと1 N 塩酸 50 μL、Na[125I]I (1-5 μCi)をガラスバイアルにいれ、最後に過酸化水素水50 μL (3% W/V)を加えた。10分間室温で放置した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液100 μLを加えることにより、反応を停止させた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、酢酸エチルで抽出した(1 mL x 2)。硫酸ナトリウムを入れたパスツールピペットに通して脱水し、窒素で酢酸エチルを蒸発させた後、残渣をエタノールに溶解し、逆相HPLC(水:アセトニトリル=40:60)で精製した。非放射性化合物を票品として、254 nmにおける吸光をHPLCで分析し、それと一致する目的物を分取し、アセトニトリルを留去した。放射能を測定し、125Iの比放射能 (2200 Ci/mmol)から、目的物の比放射能を計算した。
【0130】
(6)Aβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体を用いたフラボン誘導体のインビトロ結合実験
Aβ凝集体は、10 mM sodium phosphateと1 mM EDTAを含んだ緩衝液(pH 7.4)に0.5 mg/mLの濃度に溶解し、37 ℃で36-42時間インキュベートした。結合実験は12×75 mm borosilicate glass tubesを用いて行った。10%エタノール溶液 900 μL、Aβ(1-40)凝集体溶液50 μL (57 nM)、種々の濃度の[125I]化合物10、[125I]化合物11、[125I]化合物19、[125I]化合物20、[125I]化合物31、[125I]化合物36、[125I]化合物46、[125I]化合物47、[125I]化合物48の50 μLを混和し、室温で3時間放置した。また、非特異的結合は非放射性化合物11(1 μM)を用いて算出した。Aβ凝集体と結合したフラボン、カルコン、スチリルクロモン、クマリン誘導体と結合していないフラボン、カルコン、スチリルクロモン、クマリン誘導体とはWhatman GF/B filtersを用いてBrandel M-24R cell harvesterによって分離した。濾過したフィルターに残存した物質の放射能はγカウンタで計測し、[125I]化合物11に関しては、スキャッチャード解析よりKd値を算出した。また、[125I]化合物11を放射性リガンドとして、Aβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体を用いる阻害実験は以下の方法で行った。10%エタノール溶液 850 μL、Aβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体溶液50 μL (57 nM)、種々の濃度の化合物10、化合物11、化合物19、化合物20の50 μLを混和し、室温で3時間放置した。また、非特異的結合は非放射性化合物11(1 μM)を用いて算出した。50%阻害濃度はGraphPad Prism (GraphPad Software)を用いて算出し、阻害定数(Ki値)は、Cheng-Prusoffの式、Ki = IC50/(1 + [L]/Kd)より算出した。この式において、[L]は、実験に用いた[125I]化合物11の濃度、Kdは、[125I]化合物11のAβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体に対する解離定数を使用した。
【0131】
(7)マウス体内放射能分布実験
放射性ヨウ素標識体(化合物10、11、19、20、31、46、47、48)は5-10%エタノールを含む生理食塩水を用いて希釈した。1群3-5匹の5週齢ddY系雄性マウス(25-30 g)に、それぞれの標識体100 μL (0.5-1 μCi)を静脈内投与2, 10, 30, 60分後に、断頭、採血した後、臓器を摘出し、重量と放射能を測定した。
【0132】
(8)アルツハイマー病患者脳組織を用いた結合実験
アルツハイマー病の患者脳側頭葉部位の組織をホルマリン固定しパラフィン包埋した。同パラフィンブロックから5ミクロン厚の切片を作製し、通常のキシレン、エタノール処理により脱パラフィンを実施した(Lippa,C.F., Nee,L.E., Mori,H & George-Hyslop,P.(1998) The Lancet 352:1117-1118.)。最終的に燐酸緩衝液による中和を施した後に、化合物、10、11、19、20を100 nMの濃度条件で、室温で10分間反応させた。反応停止は、燐酸緩衝液、50%エタノールにて各3回の洗浄により実施した。その後、アルコール、キシレン処理により脱水処理をしてエンテランニュー包埋した。該化合物結合の確認は、蛍光顕微鏡(オリンパスBX50)に附属したCCDカメラ( M-3204C )により画像観察によって実施した。
【0133】
〔実験結果〕
(1)化合物の合成
図1、図2及び図3にフラボン誘導体の合成経路を示す。フラボン骨格の形成はBaker-Venkataraman反応により行った。この合成過程において、ヒドロキシアセトフェノンをベンゾイルエステル(化合物2、化合物13、化合物21)に変換し、さらにアルカリ処理を行うことによって、1,3-ジケトン(化合物3、化合物14、化合物22)に変換した。このジケトン体を酸で処理することにより、目的とするフラボン誘導体(化合物4、化合物15、化合物23)を得た。化合物4および化合物23のニトロ基の還元は、塩化スズ(II)を還元剤として行った。生成したアミノ基のジメチル化およびモノメチル化はいずれも常法に従い行った。また図2及び図3のフラボン誘導体(化合物15、化合物19、化合物25、化合物26)のメトキシ基の脱メチル化反応は三臭化ホウ素により行った。それぞれのブロモ化合物はパラジウムを触媒とするビス(トリブチルスズ)との反応により、トリブチルスズ体に変換した。これらトリブチルスズ体は、ヨウ素との反応により容易に化合物へと変換した。図4にカルコン誘導体の合成経路を示す。カルコン誘導体は、アセトフェノン体とアルデヒド体とのカリウム存在下での縮合反応により、カルコンの基本骨格を形成した。以降の還元、メチル化、トリブチルスズ化、トリブチルスズ-ヨウ素の交換反応はフラボン誘導体の合成方法と同様に行った。図5および6にスチリルクロモン誘導体の合成経路を示す。スチリルクロモン誘導体は、ニトロ桂皮酸クロリドとブロモヒドロキシベンゾフェノンを出発原料に用いて、フラボン誘導体と同様の方法を用いて合成を行った。図7にクマリン誘導体の合成経路を示す。クマリン誘導体の合成は、ブロモヒドロキシベンズアルデヒドとニトロベンゾ酢酸を出発原料に用いて行い、ニトロ基の還元、メチル化、トリブチルスズ化、ヨウ素化はフラボン誘導体と同様の方法に従い行った。
【0134】
(2)ヨウ素標識実験
図8に示すように、放射性ヨウ素標識は過酸化水素を酸化剤として用いて、スズ-ヨウ素交換反応により、目的とする放射性ヨウ素-125標識体を放射化学的収率50-80%で得た。標識反応後、逆相HPLCを用いて分離精製を行い、放射化学的収率98%以上で無担体の標識化合物を得た。
【0135】
(3)Aβ(1-40)凝集体及びAβ(1-42)凝集体を用いたインビトロ結合実験
図9には、種々濃度の[125I]化合物10、[125I]化合物11、[125I]化合物19をAβ凝集体の存在下、Aβ凝集体の非存在下、大過剰の非放射性化合物11の存在下で反応を行い、セルハーベスターで濾過後、濾紙に残存した放射能を測定した結果を示す。Aβ凝集体が存在しない場合および大過剰の非放射性化合物が存在する場合、いずれも濾紙に残存した放射能は低値を示したのに対して、Aβ凝集体の存在下で反応を行った場合、[125I]化合物10、[125I]化合物11、[125I]化合物19は顕著に高い値を示した。このことから、フラボン誘導体である、[125I]化合物10、[125I]化合物11、[125I]化合物19はいずれもAβ凝集体への高い結合性を示すことが明らかとなった。その結合性は、[125I]化合物11 > [125I]化合物10 > [125I]化合物19の順で高くなった。また、[125I]化合物31、[125I]化合物36、[125I]化合物46、[125I]化合物47、[125I]化合物48に関しても同様の実験を行った。その結果、フラボン誘導体と同様に、カルコン誘導体(化合物31及び化合物36)およびスチリルクロモン誘導体(化合物46、化合物47及び化合物48)はアミロイド凝集体への高い結合親和性を示した(図10及び図11)。さらに[125I]化合物11に関しては、Aβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体を用いて飽和実験から得られた値をスキャッチャード解析により分析を行った(図12)。その結果、直線性を示したことから、フラボン化合物とアミロイド凝集体との結合部位はひとつであることが明らかとなった。また解離平衡定数Kd値は、Aβ(1-40)凝集体に対して、12.3±2.3 nM、 Aβ(1-42)凝集体に対して、17.6±5.7 nMとなり、アミロイド凝集体への高い結合親和性を有することが示された。さらに、化合物10、11、19、20に関しては、[125I]化合物11を放射性リガンドとする阻害実験を行った(表29)。その結果、いずれの化合物もAβ(1-40)凝集体およびAβ(1-42)凝集体に対する高い結合性を示した。その結合性は、化合物11、10、19、20の順に高い値を示した。Aβ(1-40)凝集体(図12A)への結合性とAβ(1-42)凝集体(図12B)への結合性には大きな差異は確認されなかった。
【0136】
【表29】
(4)マウス体内放射能分布実験
表30、31、32にそれぞれフラボン誘導体、カルコン誘導体、スチリルクロモン誘導体を正常マウスに投与後の体内放射能分布の結果を示す。
【0137】
【表30】
【0138】
【表31】
【0139】
【表32】
表30に示すように、いずれのフラボン誘導体も、血液から速やかなクリアランスを示す一方で、投与初期から約4%ID/gと脳内アミロイド画像化を行うために十分高い脳への移行性を示した。脳への放射能動態は、3種類のフラボン誘導体により異なったが、いずれも速やかな脳からの洗い出しが観察された。その消失速度は、[125I]化合物19が最も早く、次に、[125I]化合物20、[125I]化合物10と[125I]化合物11はほぼ同等であった。体内放射能動態はいずれも主に肝臓から胆管、腸管への排泄経路をとることが示された。また、カルコン誘導体([125I]化合物31)は投与後、脳への移行性が確認され、その後の速やかに洗い出されることが示された(表31)。スチリルクロモン誘導体のマウスにおける体内放射能分布を表32に示した。化合物48では、血液中への高い放射能滞留が観察され、脳への移行性は低値を示したのに対して、化合物46及び化合物47は、血液から脳への高い移行性を示した(化合物では4.9%ID/g、化合物47では3.0%ID/g)。さらに、化合物46及び化合物47は、脳移行後に速やかな放射能消失を示した。
【0140】
(5)アルツハイマー病患者脳組織を用いた結合実験
アルツハイマー病の確定診断には、患者脳側頭葉部位において、老人斑の沈着と神経原線維変化という2大病変の確認が必要である。アルツハイマー病患者脳組織を用いた結合実験において、化合物11は、老人斑と特異的に結合していることが示された(図13)。また脳血管アンギオパチーは、老人斑同様にアルツハイマー病に見られる病変であるが、これも同じアミロイド蛋白が異常沈着していることが知られている。化合物11は、図14に見られるように、脳血管アミロイドにも特異的に結合していることが見られることから、アルツハイマー病脳組織にあるアミロイド沈着病変を特異的に認識結合していることが示された。さらに、図15-B, Hに示すように、化合物11は、神経変性突起を持つ老人斑、神経原線維変化にも結合性が確認された。また、他の置換基を有する化合物10、19,20を用いて、アルツハイマー病患者脳組織を用いた結合実験を行った場合も、化合物11と同様に、いずれの化合物もアミロイド斑、神経変性突起を持つ老人斑、脳血管アミロイド、神経原線維変化を認識、結合していることが確認された(図15)。従って、フラボン誘導体である化合物10、11、19、20はいずれもアミロイド画像化薬剤に有用な性質を持つことが示された。
【0141】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願(特願2004-341370号)の明細書および/または図面に記載されている内容を包含する。また、本発明で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】フラボン誘導体の合成法(1)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図2】フラボン誘導体の合成法(2)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図3】フラボン誘導体の合成法(3)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図4】カルコン誘導体の合成法を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図5】スチリルクロモン誘導体の合成法(1)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図6】スチリルクロモン誘導体の合成法(2)を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図7】クマリン誘導体の合成法を示す図(図中の番号は化合物の番号を示す)。
【図8】フラボン、カルコン、スチリルクロモン、クマリン誘導体の放射性ヨウ素による標識法を示す図。
【図9】化合物10(A)、化合物11(B)、及び化合物19(C)のAβ凝集体との結合性を示す図(●:Aβ凝集体存在下、■:Aβ凝集体非存在下、▲:非特異的結合)。
【図10】化合物31(A)、及び化合物36(B)のAβ凝集体との結合性を示す図(●:Aβ凝集体存在下、■:Aβ凝集体非存在下)。
【図11】化合物46(A)、化合物47(B)、及び化合物48(C)のAβ凝集体との結合性を示す図(●:Aβ凝集体存在下、■:Aβ凝集体非存在下)。
【図12】化合物11のAβ凝集体との飽和実験により得られたスキャッチャードプロットを示す図。
【図13】アルツハイマー病脳組織における老人斑アミロイドへの化合物11の結合状態を示す写真(×40倍対物レンズ使用、Gフィルター使用)。アミロイド老人斑(中央部分)と脳血管アミロイド(左下)に化合物11(白く見える)が結合している。
【図14】アルツハイマー病脳組織における老人斑アミロイドへの化合物11の結合状態を示す写真(×20倍対物レンズ使用、Gフィルター使用)。脳血管アミロイド(中央付近の4箇所、左上の1箇所)に化合物11(白く見える)が結合している。
【図15】アルツハイマー病脳組織における病理学的変化への化合物10(A-D)、11(E-H)、19(I-L)、20(M-P)の結合状態を示す写真(×40倍対物レンズ使用、Gフィルター使用)。アミロイド斑(A, E, I, M)、神経変性突起をもつ老人斑(B, F, J, N)、脳血管アミロイド(C, G, K, O)、神経原線維変化(D, H, L, P)を写真中央に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II)
【化1】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基を示し、R7は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、又は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基を示し、置換基群Aは、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、及び5−フルオロペントキシ基からなる群である。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項2】
一般式(II)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ハロゲン原子である請求項1記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項3】
一般式(II)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ヨウ素原子である請求項1記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項4】
一般式(II)におけるR7が、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル基、又は4−ジメチルアミノフェニル基である請求項1乃至3のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項5】
一般式(II)で表される化合物が、放射性核種で標識されている化合物である請求項1乃至4のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項6】
放射性核種が、陽電子放出核種である請求項5記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項7】
放射性核種が、γ線放出核種である請求項5記載記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項8】
アミロイド関連疾患が、アルツハイマー病である請求項1乃至7のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項9】
アミロイド関連疾患のモデル動物に被験物質を投与する工程、前記モデル動物に請求項1乃至8のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(II)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法。
【請求項10】
アミロイド関連疾患のモデル動物に前記疾患の治療薬又は予防薬を投与する工程、前記モデル動物に請求項1乃至8のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(II)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬の評価方法。
【請求項1】
一般式(II)
【化1】
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、又は5−フルオロペントキシ基を示し、R7は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基、又は下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよい芳香族複素環基を示し、置換基群Aは、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、2−フルオロエトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、4−フルオロブトキシ基、及び5−フルオロペントキシ基からなる群である。〕
で表される化合物又はその医薬上許容される塩を含有するアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項2】
一般式(II)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ハロゲン原子である請求項1記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項3】
一般式(II)におけるR1、R2、R3、R4のいずれかが、ヨウ素原子である請求項1記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項4】
一般式(II)におけるR7が、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル基、又は4−ジメチルアミノフェニル基である請求項1乃至3のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項5】
一般式(II)で表される化合物が、放射性核種で標識されている化合物である請求項1乃至4のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項6】
放射性核種が、陽電子放出核種である請求項5記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項7】
放射性核種が、γ線放出核種である請求項5記載記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項8】
アミロイド関連疾患が、アルツハイマー病である請求項1乃至7のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物。
【請求項9】
アミロイド関連疾患のモデル動物に被験物質を投与する工程、前記モデル動物に請求項1乃至8のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(II)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法。
【請求項10】
アミロイド関連疾患のモデル動物に前記疾患の治療薬又は予防薬を投与する工程、前記モデル動物に請求項1乃至8のいずれか一項記載のアミロイド関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(II)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド関連疾患の治療薬又は予防薬の評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−84525(P2007−84525A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174933(P2006−174933)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【分割の表示】特願2006−520584(P2006−520584)の分割
【原出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(501295811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【分割の表示】特願2006−520584(P2006−520584)の分割
【原出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(501295811)
【Fターム(参考)】
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