説明

アミン中和スルホン化ブロックコポリマーおよびこの製造方法

アミン中和スルホン化ブロックコポリマーおよびスルホン化ブロックコポリマーを中和するための方法であって、この方法は有機溶媒およびミセル形態にある非中和ブロックコポリマーを含む溶液を提供し、ならびに少なくとも1種類のアミンを溶液に添加することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアミン中和スルホン化ブロックコポリマーおよび中和スルホン化ブロックコポリマーの調製方法に関する。特には、本開示は、スルホン酸またはスルホネート官能基をほとんど含まない少なくとも2つのポリマー終端ブロックを有する少なくとも1つの内部ブロックおよび有効量のスルホン酸またはスルホネート官能基を含む少なくとも1つのポリマー内部ブロックを有し、これらのスルホン酸またはスルホネートエステル基がアミンによって中和されているスルホン化ブロックコポリマーに関する。本開示は、さらに、これらの中和スルホン化ブロックコポリマーの様々な最終用途に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレンブロックコポリマーの調製は当分野において周知である。一般には、スチレンブロックコポリマー(「SBC」)は、化学的に異なるモノマータイプを含み、これにより特定の望ましい特性をもたらす、内部ポリマーブロックおよび末端終端ポリマーブロックを含むことができる。一例として、より一般的な形態において、SBCは共役ジエンの内部ブロックおよび芳香族アルケニルアレンを有する外部ブロックを有することができる。ポリマーブロックの異なる特性の相互作用は異なるポリマーの特徴を得ることを可能にする。例えば、内部共役ジエンブロックのエラストマー特性は、「より硬い」芳香族アルケニルアレン外部ブロックと共に、極めて多様な用途に有用であるポリマーを共に形成する。このようなSBCは連続重合および/またはカップリング反応によって調製することができる。
【0003】
これらの特徴をさらに改変するため、SBCを官能化できることも公知である。これの一例はポリマー主鎖へのスルホン酸またはスルホネート官能基の付加である。最初のこのようなスルホン化ブロックコポリマーのうちの1つは、例えば、WinklerのUS3,577,357に開示される。得られるブロックコポリマーは一般配置A−B−(B−A)1−5を有するものと特徴付けられ、式中、各々のAは非弾性スルホン化モノビニルアレンポリマーブロックであり、各々のBは実質的に飽和した弾性アルファ−オレフィンポリマーブロックであり、該ブロックコポリマーは全ポリマー内で少なくとも1重量%のイオウをもたらし、および各々のモノビニルアレン単位に1つまでのスルホン化構成要素をもたらすのに十分な程度までスルホン化される。これらのスルホン化ポリマーはこれらの酸、アルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩のような形態として、またはこのような形態で用いることができる。Winklerによると、ポリスチレン−水素化ポリイソプレン−ポリスチレントリブロックコポリマーを1,2−ジクロロエタン中で三酸化イオウ/トリエチルホスフェートを含むスルホン化剤で処理した。これらの生成物は吸水特性を有するものとして記述され、この特性は水精製膜等において有用であり得る。
【0004】
より最近では、WillisらのUS2007/0021569がスルホン化ポリマーの調製を開示し、とりわけ、少なくとも2つのポリマー終端ブロックおよび少なくとも1つの飽和ポリマー内部ブロックを含み、各々の終端ブロックはスルホン化に抵抗するポリマーブロックであり、各々の内部ブロックはスルホン化に感受性の飽和ポリマーブロックであり、ならびに内部ブロックは10から100モルパーセントの程度までスルホン化される、水中で固体であるスルホン化ブロックコポリマーを説明していた。これらのスルホン化ブロックコポリマーは、水の存在下における良好な寸法安定性および強度を有しながら高い水蒸気輸送速度を有し、従って、多くの最終使用用途、特には、良好な湿潤強度、良好な水およびプロトン輸送特性、良好なメタノール耐性、安易なフィルムもしくはメンブラン形成、障壁特性、柔軟性および弾性の制御、調整可能な硬度ならびに熱/酸化安定性の組み合わせが重要であるものに有用であるものと記述される。
【0005】
加えて、DadoらのWO2008/089332は、例えば、少なくとも1つの終端ブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン化に抵抗するポリマーブロックであり、各々のBブロックはスルホン化に感受性であるポリマーブロックであり、ならびに該AおよびBブロックはオレフィン不飽和を実質的に含まない前駆体ブロックコポリマーを提供し;ならびに少なくとも1種類の非ハロゲン化脂肪族溶媒をさらに含む反応混合物中で前駆体ブロックコポリマーを硫酸アシルと反応させてスルホン化ブロックポリマーを形成することを含む方法を説明する、スルホン化ブロックコポリマーの調製方法を開示する。この方法において得られる生成物はスルホン化ポリマーミセルおよび/または、ポリマーミセル構造の特徴であるような、定義可能なサイズおよび分布の他のポリマー凝集を含むものとして記述される。
【0006】
スルホン化ポリマーを様々な化合物で中和できることも報告されている。例えば、PottickらのUS5,239,010およびBalasらのUS5,516,831は、スルホン化ブロックポリマーをイオン化可能な金属化合物と反応させて金属塩を得ることによってスルホン酸官能基を有するスチレンブロックを中和できることを示す。
【0007】
加えて、WillisらのUS2007/0021569は、例えばイオン化可能な金属化合物に加えて様々なアミンを含む、様々な塩基物質でのスルホン化ブロックコポリマーの少なくとも部分的な中和を示した。さらに、スルホン化ブロックコポリマーの酸中心を中和するのに十分な強さではないものの水素結合相互作用によるブロックコポリマーへの有意の吸引を達成するには十分な強さである、塩基物質との水素結合相互作用によってスルホン化ブロックコポリマーを修飾できることを提示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,577,357号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0021569号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/089332号
【特許文献4】米国特許第5,239,010号明細書
【特許文献5】米国特許第5,516,831号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの終端ブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン酸またはスルホネート官能基を本質的に含まず、および各々のBブロックはBブロックのモノマー単位の数を基準にして約10から約100モルパーセントの中和されていないスルホン酸またはスルホネート官能基を含むポリマーブロックであるスルホン化ブロックコポリマーの中和方法は、
有機溶媒およびミセル形態にある非中和ブロックコポリマーを含む溶液を提供し、ならびに
少なくとも1種類のアミンを溶液に添加する、
ことを含む。
【0010】
さらなる態様においては、80%以上のスルホン酸またはスルホネート官能基が中和される。さらなる実施形態においては、非中和ブロックコポリマーのスルホン酸またはスルホネート官能基1当量あたりアミン塩基約0.8から約10当量の量でアミンを添加する。加えて、他の態様においては、有機溶媒が非ハロゲン化脂肪族溶媒である。
【0011】
幾つかの実施形態において、有機溶媒は少なくとも第1および第2脂肪族溶媒を含むことができ、ここでBブロックは第1溶媒に実質的に可溶であり、ならびにAブロックは第2溶媒に実質的に可溶である。
【0012】
加えて、アミンは多官能性アミン、一官能性アミンおよびこれらの混合物からなる群より選択することができ、各々の場合におけるアミン基は1、2または3の脂肪族および/または芳香族置換基を有する一級、二級または三級アミンであり、一級、二級および三級アミン基の置換基は直鎖、分岐鎖もしくは環状脂肪族もしくは芳香族部分またはこのような置換基の混合であり得る。
【0013】
さらなる実施形態において、アミンは2から4の窒素官能基を有する多官能性アミンである。
【0014】
代わりの実施形態においては、少なくとも2つのポリマー終端ブロックAおよび少なくとも1つのポリマー内部ブロックBを含む、水中で固体である中和スルホン化ブロックコポリマーであって、
各々のAブロックはスルホン酸またはスルホネート官能基を本質的に含まず、および各々のBブロックはBブロックのモノマー単位の数を基準にして約10から約100モルパーセントのスルホン酸またはスルホネート官能基を含むポリマーブロックであり;
スルホン化Bブロックは2から4の窒素官能基を有する多官能性アミンで中和され、Bブロック内のスルホン酸またはスルホネート官能基の95%から100%が中和される、
中和スルホン化ブロックコポリマーがここに開示される。
【0015】
さらなる実施形態において、多官能性アミンは2または3の窒素官能基を有する。加えて、多官能性アミンは、C−C直鎖、分岐鎖または環状脂肪族架橋性部分を介して互いに連結する、少なくとも2つの窒素官能基を含むことができる。
【0016】
幾つかの実施形態において、多官能性アミンは下記式:
−NH−A−NR−R
(式中、
Aは2から6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキレン部分であり;
は水素またはC−C−アルキルであり、
は水素またはC−C−アルキルであり、
はC−C−アルキルであり;
またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と共に、4から6個の炭素原子および、場合により、1または2個のさらなる窒素環員で生成される5から7員環を形成し、これらのさらなる窒素環員は互いに独立に水素、C−C−アルキルまたはアミノ置換C−C−アルキルによって置換される。)
を有する。
【0017】
さらなる実施形態において、多官能性アミンはN,N−ジメチルエチレンジアミン,N,N’−ジメチルエチレンジアミン(N,N’−dimethylethylennediamine)および1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンまたはこれらの混合物からなる群より選択される。
【0018】
さらなる実施形態において、ブロックコポリマーは以下の条件のうちの1つまたは両者を満たす:
中和ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値(water uptake value)以下である吸水値を有し;および/または
中和ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの、ASTM D412に従って測定される、乾燥引張係数以下である乾燥引張係数を有する。
【0019】
さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーは水和形態である。さらなる実施形態において、水和中和ブロックコポリマーは以下の条件の両者を満たす:
a.水和中和ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの水和形態の水輸送速度の少なくとも約50%の水輸送速度を有し;
b.水和中和ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値の80%未満の吸水値を有する。
【0020】
さらなる実施形態において、各々のAブロックは、重合した(i)パラ置換スチレン モノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18個の炭素原子のアルファオレフィン;(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化前に35モルパーセント未満のビニル含有率を有する共役ジエンのモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルおよび(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントを含むことができる。
【0021】
各々のBブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)アルファ−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーのセグメントを含むことができる。
【0022】
各々のDブロックは、(i)20から80モルパーセントの水素化前のビニル含有率を有するイソプレン、1,3−ブタジエンから選択される重合または共重合共役ジエン、(ii)重合アクリレートモノマー、(iii)シリコンポリマー、(iv)重合イソブチレンおよび(v)これらの混合物からなる群より選択することができ、重合1,3−ブタジエンまたはイソプレンを含む全てのセグメントが続いて水素化される。
【0023】
さらなる実施形態において、スルホン化ブロックコポリマーは一般配置A−B−A、A−B−A−B−A、(A−B−A)X、(A−B)X、A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)X、(A−B−D)Xまたはこれらの混合物を有することができ、式中、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残滓であり、各々のDブロックはスルホン化に抵抗するポリマーブロックであり、ならびに複数のAブロック、BブロックまたはDブロックは同じであるか、または異なる。
【0024】
本発明の実施形態の詳細な説明をここに開示する。しかしながら、開示される実施形態は単に本発明の代表例であり、本発明を開示される実施形態の様々な代替形態で具現できることは理解されるべきである。従って、ここに開示される実施形態において扱われている具体的な構造的および機能的詳細は限定するものと解釈されるべきではなく、単に請求範囲の根拠および本発明が様々に用いられるように当業者に教示するための代表的基盤と解釈されるべきである。
【0025】
他に具体的に述べられない限り、ここで用いられる全ての技術用語は当業者が一般に理解する通りの意味を有する。
【0026】
さらに、他に具体的に述べられない限り、ここで用いられる以下の表現は以下の意味を有するものと理解される。
【0027】
ここで用いられる「非中和スルホン化ブロックコポリマー」および「前駆体スルホン化ブロックコポリマー」という表現は、本質的にアミン、金属または他の極性化合物によって中和されておらず、ならびにスルホン酸および/またはスルホネートエステル官能基を含むスルホン化ブロックコポリマーを指す。
【0028】
ここで用いられる「中和ブロックコポリマー」という表現は少なくとも部分的に中和されているスルホン化ブロックコポリマーを指す。
【0029】
ここで用いられる「エンジニアリング熱可塑性樹脂」という表現は様々なポリマー、例えば、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アリールエーテル)およびポリ(アリールスルホン)、ポリカーボネート、アセタール樹脂、ポリアミド、ハロゲン化熱可塑性物質、ニトリルバリア樹脂、ポリ(メチルメタクリレート)ならびに環状オレフィンコポリマーを包含し、US4,107,131(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)においてさらに定義される。
【0030】
吸水の文脈においてここで用いられる「平衡」という表現は、ブロックコポリマーによる吸水の速度がブロックコポリマーによる水損失の速度と釣り合いがとれている状態を指す。平衡の状態は、一般には、スルホン化ブロックコポリマーまたは中和ブロックコポリマーを水中に24時間(1日)浸漬することによって到達することができる。平衡状態は他の湿潤環境においても到達することができるが、平衡に到達する時間は異なるものであり得る。
【0031】
ここで用いられる「水和」ブロックコポリマーという表現は相当量の水を吸収しているブロックコポリマーを指す。
【0032】
ここで用いられる「湿潤状態」という表現は、ブロックコポリマーが平衡に到達しているか、または水中に24時間浸漬されている状態を指す。
【0033】
ここで用いられる「乾燥状態」という表現は、本質的に水を吸収していないか、またはほんの僅かな量の水を吸収しているブロックコポリマーの状態を指す。例えば、単に雰囲気と接触しているスルホン化または中和ブロックコポリマーは一般に乾燥状態のままである。
【0034】
ここで挙げられる全ての刊行物、特許出願および特許は参照によりこれらの全体が組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が採用される。
【0035】
ここに開示される全ての範囲に関して、このような範囲は、たとえ特定の組み合わせが具体的に列挙されていないとしても、挙げられる上限および下限のあらゆる組み合わせを含むことが意図される。
【0036】
本開示の幾つかの実施形態によると、驚くべきことに、スルホン化ブロックコポリマーのミセル溶液をアミンと直接接触させることによって中和スルホン化ポリマーを得ることができることが見出されている。この方法により、様々なアミンをスルホン化ブロックコポリマーの中和ならびにこれに続くこの中和ブロックコポリマーからのメンブランおよび物品の形成に用いることができる。さらに、幾つかの実施形態による方法は、アミン中和剤の密接な接触および予想外に優れた特性のバランスを有するメンブランの形成を可能にする。これらの特性には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる:
1.並外れて高い水蒸気輸送速度;
2.低吸水値および低膨潤によって立証される、湿潤条件下での寸法安定性;
3.対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーと比較して減少した乾燥引張係数。
【0037】
湿潤および乾燥の両状態において一貫した引張り強さ。
【0038】
従って、ここで提示されるアミン中和スルホン化ブロックコポリマーは様々な最終用途に広範に適し、特には、水を含むか、または湿潤環境において行われる用途に有用である。
【0039】
幾つかの実施形態においては、本開示の実施形態に従って中和することができる前駆体スルホン化ブロックコポリマーにWillisらのUS2007/0021569(この説明は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)に記載される非中和スルホン化ブロックコポリマーが含まれる。さらに、US2007/0021569に記載される非中和スルホン化ブロックコポリマーを含む前駆体スルホン化ブロックコポリマーはDadoらのWO2008/089332(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)の方法に従って調製することができる。
【0040】
本発明の非中和スルホン化ブロックコポリマーの調製に必要なブロックコポリマーは幾つかの異なる方法によって製造することができ、この方法にはアニオン重合、減速アニオン重合(moderated anionic polymerization)、カチオン重合、チーグラー・ナッタ重合およびリビング鎖または安定フリーラジカル(radical)重合が含まれる。アニオン重合は以下により詳細に記述され、参照される特許においても記述される。スチレンブロックコポリマーを製造するための減速アニオン重合法は、例えば、US6,391,981、US6,455,651およびUS6,492,469に記述され、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。ブロックコポリマーを調製するためのカチオン重合法は、例えば、US6,515,083およびUS4,946,899に記述され、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
ブロックコポリマーの製造に用いることができるリビング・チーグラー・ナッタ重合法は、近年、G.W.Coates、P.D.HustadおよびS.ReinartzによりAngew.Chem.Int.Ed.,41,2236−2257(2002)において再考察された;H.ZhangおよびK.Nomuraによる次の刊行物(J.Am.Chem.Soc.Commun.,2005)は、特には、スチレンブロックコポリマーの製造へのリビング・チーグラー・ナッタ技術の使用を記述する。窒素酸化物介在リビング・ラジカル重合化学の分野における大規模な研究が再考察されている;C.J.Hawker,A.W.Bosman,and E.Harth,Chem.Rev.,101(12),3661−3688(2001)を参照。この再考察に概述されるように、リビングまたは安定フリーラジカル技術を用いてスチレンブロックコポリマーが合成された。本発明のポリマーに対しては、窒素酸化物介在重合法が好ましいリビング鎖または安定フリーラジカル重合法である。
【0042】
1.ポリマー構造
ここに記述されるスルホン化ブロックコポリマーの一態様は中和スルホン化ブロックコポリマーのポリマー構造に関する。一実施形態において、中和ブロックコポリマーは少なくとも2つのポリマー終端または外部ブロックAおよび少なくとも1つの飽和ポリマー内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン化に抵抗するポリマーブロックであり、各々のBブロックはスルホン化に感受性のポリマーブロックである。
【0043】
好ましい構造は一般配置A−B−A、(A−B)(A)、(A−B−A)、(A−B−A)X、(A−B)X、A−B−D−B−A、A−D−B−D−A、(A−D−B)(A)、(A−B−D)(A)、(A−B−D)X、(A−D−B)Xまたはこれらの混合物を有し、式中、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残滓であり、ならびにA、BおよびDは以下で定義される通りである。
【0044】
最も好ましい構造は直鎖構造、例えば、A−B−A、(A−B)X、A−B−D−B−A、(A−B−D)X、A−D−B−D−Aおよび(A−D−B)Xならびに放射構造、例えば、(A−B)Xおよび(A−D−B)X(式中、nは3から6である。)である。このようなブロックコポリマーは、典型的には、アニオン重合、安定フリーラジカル重合、カチオン重合またはチーグラー・ナッタ重合によって製造される。好ましくは、ブロックコポリマーはアニオン重合によって製造される。当業者は、あらゆる重合において、ポリマー混合物が特定量のA−Bジブロックコポリマーをあらゆる直鎖および/または放射状ポリマーに加えて含むことを理解するであろう。本発明の実施に不利益であるそれぞれの量は見出されていない。
【0045】
Aブロックは重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18個の炭素原子のアルファオレフィン;(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化前に35モルパーセント未満のビニル含有率を有する共役ジエンのモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルおよび(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントである。Aセグメントが1,3−シクロジエンまたは共役ジエンのポリマーである場合、ブロックコポリマーの重合の後でおよびブロックコポリマーのスルホン化の前にこれらのセグメントを水素化する。
【0046】
パラ置換スチレンモノマーはパラ−メチルスチレン、パラ−エチルスチレン、パラ−n−プロピルスチレン、パラ−イソ−プロピルスチレン、パラ−n−ブチルスチレン、パラ−sec−ブチルスチレン、パラ−イソ−ブチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン、パラ−デシルスチレンの異性体、パラ−ドデシルスチレンの異性体および上記モノマーの混合物から選択される。好ましいパラ置換スチレンモノマーはパラ−t−ブチルスチレンおよびパラ−メチルスチレンであり、パラ−t−ブチルスチレンが最も好ましい。モノマーは、特定の源に依存して、モノマーの混合物であってもよい。パラ置換スチレンモノマーの全体の純度は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%さらにより好ましくは少なくとも98重量%の望ましいパラ置換スチレンモノマーであることが望ましい。
【0047】
Aブロックがエチレンのポリマーであるとき、上で引用されるG.W.Coatesらによる再考察論文内の参考文献(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)において教示されるように、チーグラー・ナッタ法によってエチレンを重合させることが有用であり得る。US3,450,795(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。)において教示されるアニオン重合技術を用いてエチレンブロックを製造することが好ましい。このようなエチレンブロックのブロック分子量は、典型的には、約1,000から約60,000の間である。
【0048】
Aブロックが3から18個の炭素原子のアルファオレフィンのポリマーであるとき、このようなポリマーは、上で引用されるG.W.Coatesらによる再考察論文内の参考文献(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)において教示されるように、チーグラー・ナッタ法によって調製する。好ましくは、アルファオレフィンはプロピレン、ブチレン、ヘキサンまたはオクタンであり、プロピレンが最も好ましい。このようなアルファオレフィンブロックのブロック分子量は、典型的には、約1,000から約60,000の間である。
【0049】
Aブロックが1,3−シクロジエンモノマーの水素化ポリマーであるとき、このようなモノマーは1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエンおよび1,3−シクロオクタジエンからなる群より選択される。好ましくは、シクロジエンモノマーは1,3−シクロヘキサジエンである。このようなシクロジエンモノマーの重合はUS6,699,941(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)に開示される。シクロジエンモノマーを用いるときは、非水素化重合シクロジエンブロックはスルホン化に感受性であるため、Aブロックを水素化することが必要である。従って、1,3−シクロジエンモノマーでAブロックを合成した後、このブロックコポリマーを水素化する。
【0050】
Aブロックが水素化前に35モルパーセント未満のビニル含有率を有する共役非環式ジエンの水素化ポリマーであるとき、共役ジエンは1,3−ブタジエンであることが好ましい。水素化前のポリマーのビニル含有率は35モルパーセント未満、好ましくは、30モルパーセント未満であることが必要である。特定の実施形態において、水素化前のポリマーのビニル含有率は25モルパーセント未満、さらにより好ましくは20モルパーセント未満で、15モルパーセント未満でさえあり、より有利な水素化前のポリマーのビニル含有率の1つは10モルパーセント未満である。このようにして、Aブロックはポリエチレンに類似する結晶構造を有する。このようなAブロック構造はUS3,670,054およびUS4,107,236に開示され、これらの開示の各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
Aブロックはアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのポリマーであってもよい。このようなポリマーブロックはUS6,767,976(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)に開示される方法に従って製造することができる。メタクリル酸エステルの具体例には、一級アルコールおよびメタクリル酸のエステル、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリフルオロメチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート;二級アルコールおよびメタクリル酸のエステル、例えば、イソプロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートおよびイソボルニルメタクリレート;ならびに三級アルコールおよびメタクリル酸のエステル、例えば、tert−ブチルメタクリレートが含まれる。アクリル酸エステルの具体例には、一級アルコールおよびアクリル酸のエステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリフルオロメチルアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート;二級アルコールおよびアクリル酸のエステル、例えば、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートおよびイソボルニルアクリレート;ならびに三級アルコールおよびアクリル酸のエステル、例えば、tert−ブチルアクリレートが含まれる。必要であれば、原料(1種類以上)として、1以上の他のアニオン重合性モノマーを本発明において(メタ)アクリル酸エステルと共に用いることができる。場合により用いることができるアニオン重合性モノマーの例には、メタクリルまたはアクリルモノマー、例えば、トリメチルシリルメタクリレート、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジイソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−メチルエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−tert−ブチルメタクリルアミド、トリメチルシリルアクリレート、N,N,ジメチルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N,N−メチルエチルアクリルアミドおよびN,N−ジ−tert−ブチルアクリルアミドが含まれる。さらに、これらの分子中に2以上のメタクリルまたはアクリル構造、例えば、メタクリル酸エステル構造またはアクリル酸エステル構造を有する多官能性アニオン重合性モノマー(例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレート)を用いることができる。
【0052】
アクリルまたはメタクリル酸エステルポリマーブロックを製造するのに用いられる重合法においては、ただ1種類のモノマー、例えば、(メト)アクリル酸エステルを用いることもでき、またはこれらの2種類以上を組み合わせて用いることもできる。2種類以上のモノマーを組み合わせて用いるとき、モノマーの組み合わせおよび重合系にモノマーを添加するタイミング(例えば、2以上のモノマーの同時添加または所定の時間の間隔での別々の添加)のような条件を選択することにより、ランダム、ブロック、テーパードブロック(tapered block)等の共重合形態から選択されるあらゆる共重合形態を達成することができる。
【0053】
Aブロックは15モルパーセントまでのBブロックで挙げられるビニル芳香族モノマーを含むこともできる。幾つかの実施形態において、Aブロックは10モルパーセントまでの、好ましくは僅かに5モルパーセントまでの、特に好ましくは僅かに2モルパーセントまでのBブロックにおいて挙げられるビニル芳香族モノマーを含むことができる。しかしながら、最も好ましい実施形態においては、AブロックはBブロックにおいて挙げられるビニルモノマーを含まない。従って、Aブロックにおけるスルホン化のレベルはAブロック内の全モノマーの0から15モルパーセントまでであり得る。当業者は、特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0054】
各々のBブロックは、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、アルファ−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマー、1,2−ジフェニルエチレンモノマーおよびこれらの混合物から選択される1以上の重合ビニル芳香族モノマーのセグメントを含む。直前に注記されるモノマーおよびポリマーに加えて、Bブロックは、20から80モルパーセントの間のビニル含有率を有する、このようなモノマー(1種類以上)と1,3−ブタジエン、イソプレンおよびこれらの混合物から選択される共役ジエンとの水素化コポリマーを含むこともできる。これらの水素化ジエンとのコポリマーはランダムコポリマー、テーパードコポリマー、ブロックコポリマーまたは制御分布コポリマーであり得る。好ましい実施形態の1つにおいて、Bブロックは水素化され、この段落において注記される共役ジエンおよびビニル芳香族モノマーのコポリマーを含む。別の好ましい実施形態において、Bブロックは、モノマーの性質のために飽和であり、水素化の追加処理工程を必要としない、非置換スチレンモノマーブロックである。制御分布構造を有するBブロックはUS2003/0176582に開示され、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。US2003/0176582も、本発明において特許請求されるブロックコポリマー構造ではないものの、スルホン化ブロックコポリマーの調製を開示する。スチレンブロックを含むBブロックがここに記述される。好ましい実施形態の1つにおいて、ポリマーが別の水素化工程を必要としないことから、飽和Bブロックは非置換スチレンブロックである。
【0055】
本発明の別の態様において、ブロックコポリマーは、20℃未満のガラス転移温度を有する、少なくとも1つの衝撃改質剤ブロックDを含む。一実施形態において、衝撃改質剤ブロックDは、20から80モルパーセントの間の水素化前のビニル含有率および1,000から50,000の間の数平均分子量を有する、イソプレン、1,3−ブタジエンおよびこれらの混合物から選択される共役ジエンの水素化ポリマーまたはコポリマーを含む。別の実施形態において、衝撃改質剤ブロックDは1,000から50,000の数平均分子量を有するアクリレートまたはシリコーンポリマーを含む。さらに別の実施形態において、Dブロックは1,000から50,000の数平均分子量を有するイソブチレンのポリマーブロックである。
【0056】
各々のAブロックは約1,000から約60,000の間の数平均分子量を独立に有し、各々のBブロックは約10,000から約300,000の間の数平均分子量を独立に有する。好ましくは、各々のAブロックは2,000から50,000の間、より好ましくは3,000から40,000の間、さらにより好ましくは3,000から30,000の間の数平均分子量を有する。好ましくは、各々のBブロックは15,000から250,000の間、より好ましくは20,000から200,000の間、さらにより好ましくは30,000から100,000の間の数平均分子量を有する。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定される数平均分子量のあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。これらの分子量は光散乱測定によって最も正確に決定され、数平均分子量として表される。好ましくは、スルホン化ポリマーは約8モルパーセントから約80モルパーセント、好ましくは約10から約60モルパーセントのAブロック、より好ましくは15モルパーセントを上回るAブロック、さらにより好ましくは約20から約50モルパーセントのAブロックを有する。
【0057】
スルホン化ブロックコポリマー中の非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、アルファ−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーであるビニル芳香族モノマーの相対量は、約5から約90モルパーセント、好ましくは、約5から約85モルパーセントである。代わりの実施形態において、この量は約10から約80モルパーセント、好ましくは約10から約75モルパーセント、より好ましくは約15から約75モルパーセントであり、最も好ましいのは約25から約70モルパーセントである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせがこれらの範囲に含まれることを理解するであろう。
【0058】
飽和Bブロックに関しては、好ましい実施形態の1つにおいて、各々のBブロック内の非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、アルファ−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントは、約10から約100モルパーセント、好ましくは約25から約100モルパーセント、より好ましくは約50から約100モルパーセント、さらにより好ましくは約75から約100モルパーセント,最も好ましくは100モルパーセントである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0059】
スルホン化の典型的なレベルは各々のBブロックが1以上のスルホン酸官能基を含む場合である。スルホン化の好ましいレベルは、各々のBブロック内の非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、アルファ−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントを基準にして、10から100モルパーセント、より好ましくは約20から95モルパーセント、さらにより好ましくは約30から90モルパーセントである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるモルパーセントのあらゆる組み合わせがスルホン化の適切な範囲に含まれることを理解するであろう。スルホン化のレベルは、アルコールおよび水混合溶媒中のNaOHの標準溶液を含むテトラヒドロフラン中に再溶解されている、乾燥ポリマーサンプルの滴定によって決定する。
【0060】
2.ポリマーを調製するための全アニオン過程
アニオン重合法はリチウム開始剤を用いて溶媒中で適切なモノマーを重合することを含む。重合ビヒクルとして用いられる溶媒は、形成されるポリマーのリビングアニオン鎖終端と反応せず、商用重合ユニット内での扱いが容易であり、および生成物ポリマーに適切な可溶性特性を付与するあらゆる炭化水素であり得る。例えば、一般にはイオン性水素原子を欠く、非極性脂肪族炭化水素が特に適切な溶媒を形成する。環状アルカン、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンが頻繁に用いられ、これらの全てが比較的非極性である。他の適切な溶媒は当業者に公知であって処理条件の所定の組において有効に実施されるように選択することができ、重合温度は考慮される主要要素の1つである。
【0061】
本発明のブロックコポリマーを調製するための出発物質には上述の初期モノマーが含まれる。アニオン共重合のための他の重要な出発物質には1以上の重合開始剤が含まれる。本発明において、このような出発物質には,例えば、アルキルリチウム化合物、例えば、s−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、アミルリチウム等および、複開始剤(di−initiators)例えば、m−ジイソプロペニルベンゼンのジ−sec−ブチルリチウム付加物を含む、他の有機リチウム化合物が含まれる。他のこのような複開始剤はUS6,492,469に開示され、これは参照により本明細書に組み込まれる。様々な重合開始剤のうち、s−ブチルリチウムが好ましい。開始剤は、重合混合物(モノマーおよび溶媒を含む。)中、所望のポリマー鎖あたり開始剤1分子に基づいて算出される量で用いることができる。リチウム開始剤の一連の過程は周知であって、例えば、US 4,039,593およびRe.27,145に記述され、これらの開示の各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
本発明のブロックコポリマーを調製するための重合条件は、典型的には、アニオン重合に一般に用いられるものに類似する。本発明において、重合は、好ましくは、約−30℃から約150℃、より好ましくは、約10℃から約100℃、最も好ましくは、産業上の限界の観点から、約30℃から約90℃の温度で行う。重合は不活性雰囲気、好ましくは、窒素中で行い、約0.5から約10barの範囲内の圧力下で達成することもできる。この重合は、一般には、約12時間未満を必要とし、温度、モノマー成分の濃度および望まれるポリマーの分子量に依存して、約5分から約5時間で達成することができる。2種類以上のモノマーを組み合わせて用いるとき、ランダム、ブロック、テーパードブロック、制御分布ブロック等の共重合形態から選択されるあらゆる共重合形態を用いることができる。
【0063】
当業者は、ルイス酸、例えば、アルミニウムアルキル、マグネシウムアルキル、亜鉛アルキルまたはこれらの組み合わせを添加することによってアニオン重合の過程を減速できることを理解するであろう。重合過程に対する添加されたルイス酸の効果は、
1)リビングポリマー溶液の粘度を低下させて、より高いポリマー濃度で稼動し、従って、用いられる溶媒が少ない過程を可能にすること、
2)リビングポリマー鎖終端の熱安定性を高めてより高い温度での重合を可能にし、および、ここでも、ポリマー溶液の粘度を低下させて溶媒の使用を少なくすることを可能にすること、ならびに
3)反応の速度を遅くし、標準アニオン重合法において用いられているものと同じ、反応の熱を除去するための技術を用いながら、より高い温度での重合を可能にすること、
である。
【0064】
アニオン重合技術を減速させるのにルイス酸を用いる処理上の利益はUS6,391,981、US6,455,651およびUS6,492,469に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。関連情報がUS6,444,767およびUS6,686,423に開示されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。このような減速アニオン重合法によって製造されるポリマーは通常のアニオン重合法を用いて調製されるものと同じ構造を有することができ、このようなものとして、この方法は本発明のポリマーの製造において有用であり得る。ルイス酸減速アニオン重合法では100℃から150℃の間の反応温度が好ましく、これは、これらの温度で、非常に高いポリマー濃度での反応の実施を利用できるためである。化学量論的過剰のルイス酸を用いることもできるが、ほとんどの場合、過剰のルイス酸の追加経費を正当化するのに十分な処理改善の利益は存在しない。減速アニオン重合技術での処理性能の改善を達成するにはリビングアニオン鎖終端のモルあたり約0.1から約1モルのルイス酸を用いることが好ましい。
【0065】
放射状(分岐)ポリマーの調製には「カップリング」と呼ばれる重合後工程が必要である。上記放射状式において、nは3から約30、好ましくは約3から約15、より好ましくは3から6の整数であり、Xはカップリング剤の残部または残滓である。様々なカップリング剤が当分野において公知であり、これらを本発明のカップリングしたブロックコポリマーの調製において用いることができる。これらカップリング剤には、例えば、ジハロアルカン、ハロゲン化ケイ素、シロキサン、多官能性エポキシド、シリカ化合物、一価アルコールのカルボン酸とのエステル(例えば、安息香酸メチルおよびアジピン酸ジメチル)およびエポキシ化油が含まれる。例えば、US3,985,830、US4,391,949およびUS4,444,953に開示されるように、ポリアルケニルカップリング剤で星状ポリマーが調製される;CA716,645に加えて、これらの開示の各々は参照により本明細書に組み込まれる。適切なポリアルケニルカップリング剤にはジビニルベンゼン、好ましくは、m−ジビニルベンゼンが含まれる。テトラ−アルコキシシラン、例えば、テトラ−メトキシシラン(TMOS)およびテトラ−エトキシシラン(TEOS)、トリ−アルコキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、脂肪族ジエステル、例えば、アジピン酸ジメチルおよびアジピン酸ジエチルならびにジグリシジル芳香族エポキシ化合物、例えば、ビス−フェノールAおよびエピクロロヒドリンの反応から誘導されるジグリシジルエーテルが好ましい。
【0066】
重合後「カップリング」工程によって直鎖ポリマーを調製することもできる。しかしながら、放射状ポリマーとは異なり、上記式中の「n」は整数2であり、カップリング剤の残部または残滓である。
【0067】
3.水素化ブロックコポリマーを調製するための方法
既述のように、幾つかの場合において、即ち、(1)B内部ブロック内にジエンが存在するとき、(2)Aブロックが1,3−シクロジエンのポリマーであるとき、(3)衝撃改質剤ブロックDが存在するとき、および(4)Aブロックが35モルパーセント未満のビニル含有率を有する共役ジエンのポリマーであるとき、スルホン化の前にブロックコポリマーを選択的に水素化してエチレン性不飽和を除去することが必要である。水素化は、一般には、熱安定性、紫外線安定性、酸化安定性および、従って、最終ポリマーの耐候性を改善し、AブロックまたはDブロックをスルホン化する危険性を低減する。
【0068】
水素化は当分野において公知の幾つかの水素化または選択的水素化法のいずれによっても行うことができる。このような水素化は、例えば、US3,595,942、US3,634,549、US3,670,054、US3,700,633およびRe.27,145(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。)において教示されるもののような方法を用いて達成されている。これらの方法はエチレン性不飽和を含むポリマーを水素化するように機能し、適切な触媒の働きに基づく。このような触媒または触媒前駆体は、好ましくは、第8から10族金属、例えば、ニッケルまたはコバルトを含み、この金属は適切な還元剤、例えば、アルミニウムアルキルまたは元素周期律表の第1、2および13族から選択される金属、特には、リチウム、マグネシウムまたはアルミニウムの水素化物と結合している。この調製は、適切な溶媒または希釈剤中、約20℃から約80℃の温度で達成することができる。有用である他の触媒にはチタン系触媒系が含まれる。
【0069】
水素化は、共役ジエン二重結合の少なくとも約90パーセントが還元され、およびアレン二重結合の0から10パーセントが還元されるような条件下で行うことができる。好ましい範囲は共役ジエン二重結合の少なくとも約95パーセントが還元され、より好ましくは、共役ジエン二重結合の約98パーセント還元される。
【0070】
ひとたび水素化が完了したら、ポリマー溶液を比較的多量の水性酸(好ましくは、1から30重量パーセントの酸)と、約0.5部水性酸対1部ポリマー溶液の体積比で、共に撹拌することによって触媒を酸化および抽出することが好ましい。酸の性質は重要ではない。適切な酸には、リン酸、硫酸および有機酸が含まれる。この撹拌は、窒素中の酸素の混合物を散布しながら、約50℃で約30から約60分間継続する。この工程においては酸素および炭化水素の爆発性混合物が形成されることを回避するように注意を払わなければならない。
【0071】
4.スルホン化ポリマーの製造方法
ここに開示される複数の実施形態によると、上で調製したブロックコポリマーをスルホン化して溶液中でミセル形態にあるスルホン化ポリマー生成物を得る。このミセル形態において、メンブランのキャスティングに先立ってスルホン化ブロックコポリマーを中和することができ、同時に、溶液中で還元しながらスルホン化ブロックコポリマーのゲル化および/または沈殿の危険性を低減する。
【0072】
いかなる特定の理論によっても拘束されることなしに、スルホン化ブロックコポリマーのミセル構造は、有機非ハロゲン化脂肪族溶媒によって膨潤しているスルホン化抵抗性ブロックが取り囲む、相当量の消費されたスルホン化剤の残滓を有するスルホン化ブロックを含むコアを有すると記述できるとすることが現時点での信条である。以下により詳細にさらに記述されるように、スルホン化ブロックは、スルホン酸および/またはスルホネートエステル官能基の存在のため、非常に極性である。従って、このようなスルホン化ブロックは分子のコア内に隔離され、その一方で外部スルホン化抵抗性ポリマーブロックは非ハロゲン化脂肪族溶媒によって溶媒和するシェルを形成する。個別のミセルを形成することに加えて、ポリマー凝集も形成され得る。いかなる特定の理論によっても拘束されることなしに、ポリマー凝集はミセルに与えられた説明以外の方法でのポリマー鎖の会合および/または2以上の個別のミセルの緩やかに凝集した群から生じる離散的または非離散的構造と記述することができる。従って、ミセル形態にある溶媒和したスルホン化ブロックコポリマーには個別のミセルおよび/またはミセルの凝集体が含まれ、このような溶液はミセル構造以外の構造を有する凝集ポリマー鎖が場合により含まれる。
【0073】
ここに記述されるように、ミセルはスルホン化過程の結果として形成され得るものであり、または代わりに、スルホン化に先立ってブロックコポリマーをミセル構造に配置させることができる。
【0074】
幾つかの実施形態においては、ミセルを形成するため、WO2008/089332に記述されるスルホン化法を実施することができる。これらの方法はUS2007/021569に記述されるスルホン化スチレンブロックコポリマーの調製に有用である。
【0075】
重合後、スルホン化剤、例えば、少なくとも1種類の非ハロゲン化脂肪族溶媒中の硫酸アシルを用いてスルホン化することができる。幾つかの実施形態においては、前駆体ポリマーを、前駆体ポリマーの製造から生じる反応混合物からの単離、洗浄および乾燥の後、スルホン化することができる。幾つかの他の実施形態においては、前駆体ポリマーを、前駆体ポリマーの製造から生じる反応混合物から単離することなしに、スルホン化することができる。
【0076】
a)溶媒
有機溶媒は、好ましくは、非ハロゲン化脂肪族溶媒であり、コポリマーの1以上のスルホン化抵抗性ブロックまたは非スルホン化ブロックを溶媒和する役割を果たす第1非ハロゲン化脂肪族溶媒を含む。第1非ハロゲン化脂肪族溶媒には、約5から10個の炭素を有する置換または非置換環状脂肪族炭化水素が含まれ得る。非限定的な例には、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロオクタンおよびこれらの混合物が含まれる。最も好ましい溶媒はシクロヘキサン、シクロペンタンおよびメチルシクロヘキサンである。第1溶媒はポリマーブロックのアニオン重合に重合ビヒクルとして用いられるものと同じ溶媒であってもよい。
【0077】
幾つかの実施形態においては、第1溶媒のみを用いる場合でさえ、ブロックコポリマーはスルホン化の前にミセル形態であり得る。第1非ハロゲン化脂肪族溶媒中の前駆体ポリマーの溶液への第2非ハロゲン化脂肪族溶媒の添加はポリマーミセルおよび/または他のポリマー凝集体の「前形成」を生じるか、またはこれを支援し得る。他方、第2非ハロゲン化溶媒は、好ましくは、第1溶媒と混和性ではあるが、処理温度範囲内では前駆体ポリマーのスルホン化感受性ブロックに対する貧溶媒であり、スルホン化反応を妨げもしないように選択される。換言すると、好ましくは、前駆体ポリマーのスルホン化感受性ブロックは処理温度範囲内で第2非ハロゲン化溶媒に実質的に不溶である。前駆体ポリマーのスルホン化感受性ブロックがポリスチレンである場合、ポリスチレンに対する貧溶媒であって第2非ハロゲン化溶媒として用いることができる適切な溶媒には、約12個までの炭素の直鎖および分岐鎖脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−エチルヘキサン、イソオクタン、ノナン、デカン、パラフィン系油、混合パラフィン性溶媒等が含まれる。第2非ハロゲン化脂肪族溶媒の好ましい例の1つはn−ヘプタンである。
【0078】
前形成ポリマーミセルおよび/または他のポリマー凝集体は、相当高い濃度でのゲル化を無効化することなしに第2溶媒の添加なしで達成され得るものよりもポリマーのスルホン化を本質的に進行させることを可能にし得る。加えて、このアプローチは、ポリマースルホン化変換率および副生物の最少化の観点で、より極性の硫酸アシル、例えば、C3硫酸アシル(硫酸プロピオニル)の有用性を実質的に改善することができる。換言すると、このアプローチはより極性のスルホン化剤の有用性を改善することができる。このような硫酸アシルは以下にさらに記述される。
【0079】
b)ポリマー濃度
幾つかの実施形態によると、少なくともスルホン化の早期段階の間、前駆体ポリマー濃度を前駆体ポリマーの限界濃度未満に維持することにより、反応混合物、反応生成物またはこの両者におけるポリマー沈殿が実質的なく、およびゲル化の無効化がない方法で、高レベルのスチレンスルホン化を達成することができる。当業者は、ポリマー沈殿が実質的にない混合物中での処理の過程で、局所的溶媒蒸発の結果として少量のポリマーが表面上に堆積し得ることを理解するであろう。例えば、幾つかの実施形態によると、混合物中の沈殿しているポリマーが5%以下であるとき、混合物はポリマー沈殿が実質的にないものと見なされる。
【0080】
スルホン化を実施することができるポリマー濃度は出発ポリマーの組成に依存するが、これは、限界濃度を下回るとポリマーのゲル化が障害にならず、またはゲル化を無視できる限界濃度がポリマー組成に依存するためである。上述のように、限界濃度は他の要素、例えば、用いられる溶媒または溶媒混合液の素性および望ましいスルホン化の程度にも依存し得る。一般には、ポリマー濃度は、好ましくはハロゲン化溶媒を実質的に含まない反応混合物の総重量を基準にして、約1重量%から約30重量%、代わりに約1重量%から約20重量%、代わりに約1重量%から約15重量%、代わりに約1重量%から約12重量%、または代わりに約1重量%から約10重量%の範囲に入る。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0081】
ここで説明される技術の幾つかの実施形態によると、前駆体ポリマーまたは前駆体ポリマーの混合物の初期濃度は、前駆体ポリマーの限界濃度未満に、代わりに、反応混合物の総重量を基準にして、約0.1重量%から前駆体ポリマーの限界濃度未満である濃度まで、代わりに約0.5重量%から前駆体ポリマーの限界濃度未満である濃度まで、代わりに約1.0重量%から前駆体ポリマーの限界濃度を約0.1重量%下回る濃度まで、代わりに約2.0重量%から前駆体ポリマーの限界濃度を約0.1重量%下回る濃度まで、代わりに約3.0重量%から前駆体ポリマーの限界濃度を約0.1重量%下回る濃度まで、代わりに約5.0重量%から前駆体ポリマーの限界濃度を約0.1重量%下回る濃度までの範囲に維持するべきである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0082】
少なくとも幾つかの実施形態においては、ポリマー濃度を限界濃度未満に維持することで、ゲル化につながる高濃度条件に対して副生物カルボン酸の濃度が減少している反応混合物が生じ得る。
【0083】
しかしながら、当業者は、本技術の幾つかの実施形態、特には、半バッチまたは連続製造法におけるスルホン化ポリマーの製造の最中、反応混合物中のポリマーの全濃度が前駆体ポリマーの限界濃度を上回り得ることを理解するであろう。
【0084】
c)スルホン化剤
複数の実施形態によると、重合ブロックポリマーをスルホン化するのに硫酸アシルを用いることができる。アシル基は、好ましくは、CからC、代わりにCからC、代わりにCからCの、直鎖、分岐鎖もしくは環状のカルボン酸、無水物もしくは酸塩化物またはこれらの混合物から誘導される。好ましくは、これらの化合物は非芳香族炭素−炭素二重結合、ヒドロキシル基または硫酸アシルと反応性であるか、もしくはスルホン化反応条件下で容易に分解するあらゆる他の官能基を含まない。例えば、カルボニル官能基からアルファ位に脂肪族四級炭素を有するアシル基(例えば、無水トリメチル酢酸から誘導される硫酸アシル)はポリマースルホン化反応の最中に容易に分解するものと思われ、好ましくは、ここで説明される技術においては回避するべきである。芳香族カルボン酸、無水物および酸塩化物、例えば、無水安息香酸およびフタル酸から誘導されるものも本技術における硫酸アシルの生成に有用なアシル基の範囲に含まれる。より好ましくは、アシル基はアセチル、プロピオニル、n−ブチリルおよびイソブチリルの群より選択される。さらにより好ましくは、アシル基はイソブチリルである。硫酸イソブチリルは高いポリマースルホン化の程度および比較的僅かな副生物形成をもたらすことが見出されている。
【0085】
無水カルボン酸および硫酸からの硫酸アシルの形成は以下の反応によって表すことができる:
【0086】
【化1】

【0087】
硫酸アシルは、下記式のアルファ−スルホン化カルボン酸を形成するスルホン化反応の過程の最中、ゆっくりとした分解を受ける:
【0088】
【化2】

【0089】
ここで説明される技術の一実施形態において、硫酸アシル試薬は、無水カルボン酸および硫酸から、非ハロゲン化脂肪族溶媒中のポリマーの溶液への添加に先立って別の「予備生成」反応において実施される反応において得られる。予備生成反応は溶媒の有無に関わらず実施することができる。硫酸アシルの予備生成に溶媒を用いるとき、溶媒は、好ましくは、ハロゲン化されていない。代わりに、非ハロゲン化脂肪族溶媒中のポリマーの溶液内でのその場反応において硫酸アシル試薬を得ることもできる。本技術のこの実施形態によると、無水物の硫酸に対するモル比は約0.8から約2、好ましくは、約1.0から約1.4であり得る。この好ましい方法において用いられる硫酸は、好ましくは、約93重量%から約100重量%の濃度を有し、より好ましくは、約95重量%から約100重量%の濃度を有する。当業者は、発煙硫酸強度が反応混合物の意図しない炭化を回避または最少化するのに十分な低さであるならば、硫酸アシルを生成するその場反応において発煙硫酸を硫酸の代替物として使用できることを理解するであろう。
【0090】
本技術の別の実施形態においては、無水カルボン酸および発煙硫酸から、脂肪族溶媒中のポリマー溶液への添加に先立って別の「予備生成」において実施される反応であって、発煙硫酸強度が約1%から約60%遊離三酸化イオウ、代わりに約1%から約46%遊離三酸化イオウ、代わりに約10%から約46%遊離三酸化イオウの範囲にあり、無水物の発煙硫酸中に存在する硫酸に対するモル比が約0.9から約1.2である反応において硫酸アシル試薬を得ることができる。
【0091】
加えて、硫酸アシル試薬は、無水カルボン酸から硫酸、発煙硫酸または三酸化イオウのあらゆる組み合わせとの反応によって調製することもできる。さらに、硫酸アシル試薬は、カルボン酸からクロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化イオウまたはこれらのあらゆる組み合わせとの反応によって調製することができる。さらに、硫酸アシル試薬は、カルボン酸塩化物から硫酸との反応によって調製することもできる。代わりに、硫酸アシルは、カルボン酸、無水物および/または酸塩化物のあらゆる組み合わせから調製することができる。
【0092】
硫酸アシルでのポリマースチレン反復単位のスルホン化は以下の反応によって表すことができる:
【0093】
【化3】

【0094】
硫酸アシル試薬は、ポリマー溶液中に存在するスルホン化感受性モノマー反復単位のモルに対して、軽度にスルホン化されたポリマー生成物の非常に低いレベルから高度にスルホン化されたポリマー生成物の高レベルまでの範囲の量で用いることができる。硫酸アシルのモル量は所定の方法から生成することができる硫酸アシルの理論量と定義することができ、この量は反応における制限試薬(limiting reagent)によって規定される。本技術の幾つかの実施形態による硫酸アシルのスチレン反復単位(即ち、スルホン化感受性単位)に対するモル比は、約0.1から約2.0、代わりに約0.2から約1.3、代わりに約0.3から約1.0の範囲であり得る。
【0095】
ここで説明される技術の少なくとも幾つかの実施形態によると、ブロックポリマー中のスルホン化に感受性であるビニル芳香族モノマーのスルホン化の程度は、スルホン化ポリマーのグラムあたり約0.4ミリ当量(meq)スルホン酸(0.4meq/g)を上回り、代わりにスルホン化ポリマーのグラムあたり約0.6meqスルホン酸(0.6meq/g)を上回り、代わりにスルホン化ポリマーのグラムあたり約0.8meqスルホン酸(0.8meq/g)を上回り、代わりにスルホン化ポリマーのグラムあたり約1.0meqスルホン酸(1.0meq/g)を上回り、代わりにスルホン化ポリマーのグラムあたり約1.4meqスルホン酸(1.4meq/g)を上回る。例えば、上述の前駆体ポリマーがここで説明される技術の方法に従ってスルホン化された後、スルホン化の典型的なレベルは各々のBブロックが1以上のスルホン酸官能基を含むものである。スルホン化の好ましいレベルは、各々のBブロック内のスルホン化感受性ビニル芳香族モノマー(これは、例えば、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、アルファ−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマー、1,2−ジフェニルエチレンモノマー、これらの誘導体またはこれらの混合物であり得る。)のモルパーセントを基準にして、約10から約100モルパーセント、代わりに約20から95モルパーセント、代わりに約30から90モルパーセント、代わりに約40から約70モルパーセントである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせがスルホン化レベルの適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0096】
スルホン化ポリマーのスルホン化のレベルまたは程度は、当業者に公知のNMRおよび/もしくは滴定法、ならびに/または下記実施例において説明される2つの別々の滴定を用いる方法によって測定することができ、これらは当業者に明らかであり得る。例えば、本技術の方法から生じる溶液をH−NMRにより約60℃(±20℃)で分析することができる。スチレンスルホン化パーセントはH−NMRスペクトルにおける芳香族シグナルの積分から算出することができる。別の例については、反応生成物を2つの別々の滴定によって分析し(「2滴定法」)、スチレンポリマースルホン酸、スルホン酸および非ポリマー副生物スルホン酸(例えば、2−スルホ−アルキルカルボン酸)の濃度を決定した後、質量バランスに基づいてスチレンスルホン化の程度を算出することができる。代わりに、スルホン化のレベルは、アルコールおよび水の混合液中のNaOHの標準化溶液を含むテトラヒドロフランに再溶解されている、乾燥ポリマーサンプルの滴定によって決定することができる。後者の場合、副生物酸の厳密な除去が好ましく保証される。
【0097】
硫酸アシル試薬の文脈においてポリマーのスルホン化の実施形態を上に記したが、他のスルホン化試薬の有用性も考慮される、例えば、三酸化イオウとホスフェートエステル、例えば、トリエチルホスフェートとの錯化/反応から誘導されるスルホン化試薬の使用が本技術において示されている。このようなスルホン化試薬の化学は、かなりの程度のスルホン酸アルキルエステル組み込みを伴う芳香族スルホン化をもたらすことが当分野において公知である。このようなものとして、生じるスルホン化ポリマーはスルホン酸およびスルホン酸アルキルエステル基の両者を同様に含む。他の考慮されるスルホン化試薬には、これらに限定されるものではないが、三酸化イオウと五酸化リン、ポリリン酸、1,4−ジオキサン、トリエチルアミン等との反応または錯化から誘導されるものが含まれる。
【0098】
d)反応条件
硫酸アシルとスルホン化感受性ブロックコポリマー、例えば、芳香族含有ポリマー(例えば、スチレンブロックコポリマー)とのスルホン化反応は、約20℃から約150℃、代わりに約20℃から約100℃、代わりに約20℃から約80℃、代わりに約30℃から約70℃、代わりに約40℃から約60℃の範囲内の反応温度で(例えば、約50℃で)行うことができる。反応時間は、反応の温度に依存して、約1分未満から約24時間以上の範囲内であり得る。無水カルボン酸および硫酸のその場反応を利用する幾つかの好ましい硫酸アシル実施形態において、反応混合物の初期温度は目的とするスルホン化反応温度とほぼ同じであり得る。代わりに、初期温度は目的とする次のスルホン化反応温度より低くてもよい。好ましい実施形態においては、約20℃から約40℃で(例えば、約30℃で)、約0.5から約2時間、代わりに約1から約1.5時間、その場で硫酸アシルを生成させた後、反応混合物を約40℃から約60℃に加熱して反応の完了を促進することができる。
【0099】
必要ではないものの、反応停止剤(quenching agent)の添加により任意の反応停止工程を行うことができ、この反応停止剤は、例えば、水またはヒドロキシル含有化合物、例えば、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールであり得る。典型的には、このような工程において、少なくとも残留する未反応硫酸アシルと反応するのに十分な量の反応停止剤を添加することができる。
【0100】
ここで説明される技術の幾つかの実施形態において、非ハロゲン化脂肪族溶媒中の芳香族含有ポリマーのスルホン化は、芳香族含有ポリマーをスルホン化剤とバッチ反応で、または半バッチ反応で接触させることによって行うことができる。本技術の幾つかの他の実施形態においては、スルホン化は連続反応で行うことができ、これは、例えば、連続撹拌タンク反応器または一連の2以上の連続撹拌タンク反応器を用いることによって可能にすることができる。
【0101】
5.スルホン化ポリマーを中和する方法
複数の実施形態によると、ここに開示されるブロックポリマーのスルホン化およびミセルの形成の後、少なくとも1種類のアミンを添加してブロックコポリマーのスルホン化セグメントを「中和」することができる。
【0102】
上に開示されるスルホン化の結果として、ミセルコアは、ブロックコポリマーのスルホン化抵抗性ブロックを含む外部シェルによって取り囲まれる、スルホン酸および/またはスルホネート官能基を有するスルホン化感受性ブロックを含む。溶液中での(ミセル形成を引き起こす)この相分離の駆動力は、ブロックコポリマーのスルホン化セグメントとスルホン化ブロックコポリマーの非スルホン化ブロックとの極性の大きな相違によるものとされている。後者のセグメントは非ハロゲン化脂肪族溶媒、例えば、上に開示される第1溶媒によって自由に溶媒和する。他方、スルホン化ポリマー部分はミセルのコア内に濃縮される。従って、ミセルのコア内のスルホン酸またはスルホネート官能基の中和はこのセグメントの極性を低下させるものと期待される。極性の低下で、相分離の駆動力およびミセル形成が除去されることが期待される。しかしながら、驚くべきことに、アミン中和ブロックコポリマーは溶液中でミセル形態のままであることが見出されている。さらに、これもまた驚くべきことに、ミセル溶液のキャスティングの際、生じるメンブランに連続イオンチャンネルが形成された。これらの連続イオンチャンネルは高い水輸送速度によって立証される。
【0103】
驚くべきことに、選択されたアミンについて、アミン中和ブロックコポリマーのイオンチャンネルがスルホン酸官能基のみを有するもの(即ち、非中和スルホン化ブロックコポリマー)が行うのと同様に有効に水を輸送することが見出されている。さらに、アミン中和ブロックコポリマーは低レベルの膨潤および水取り込みによって立証されるように高い寸法安定性を有する。
【0104】
広範囲のアミンをこの方法に従って用いることができ、このアミンには多官能性アミンおよび一官能性アミンが含まれ、各々の場合におけるアミン基は1、2または3つの脂肪族および/または芳香族置換基を有する一級、二級または三級アミン基である。一級、二級および三級アミン基の置換基は直鎖、分岐鎖もしくは環状の脂肪族もしくは芳香族部分またはこのような置換基の混合であり得る。
【0105】
適切な非ポリマー性アミンには、置換基が直鎖、分岐鎖もしくは環状の脂肪族もしくは芳香族部分または様々なタイプの置換基の混合であり得る、一級、二級および三級アミンならびにこれらの混合物が含まれる。脂肪族アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン等が含まれる。適切な芳香族アミンには、ピリジン、ピロール、イミダゾール等が含まれる。類似のポリマー性アミンには、ポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリデン(polyvinylpyridene)等が含まれる。
【0106】
好ましい実施形態においては、多官能性アミンをスルホン化ブロックコポリマーの中和に用いる。
【0107】
多官能性アミンは2以上の窒素官能基を有し、このようなものとして、出発ポリマーのスルホン酸またはスルホネート官能基と反応するとき、イオン性架橋剤として作用することが可能であり得る。いかなる特定の理論にも固定されることを望むものではないが、一般には、多官能性アミンがイオン性架橋剤として機能し得るため、ミセル溶液のキャスティングの間、ミセルの球状イオンコアが保持され、メンブランに水輸送用のイオンチャンネルは存在していないことが期待されている。このような場合、メンブランのイオン相における連続性は存在していない。代わりに、分散したイオン球のみが形成されている。しかしながら、アミン中和ブロックコポリマーから形成されるメンブランは水を高速で輸送することができ、これはキャスティング過程の間に連続イオンチャンネルが実際に形成されていることを示唆する。これらのキャスティング条件下では、多官能性アミンがイオン性架橋剤として機能していないか、または架橋剤が不安定である(キャスティング過程の時間尺度で移動する。)。しかしながら、キャスティング過程の間にイオン相の再組織化が生じることものと仮定することができる。
【0108】
幾つかの実施形態において、多官能性アミンは2から4の窒素官能基を有することができ、C−C直鎖、分岐鎖または環状脂肪族架橋性部分によって互いに連結し得る。従って、多官能性アミンは2、3または4つの窒素官能基を有することができる。
【0109】
幾つかの実施形態において、多官能性アミンは一般式:
−NH−A−NR−R
を有し、式中、
Aは2から6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキレン部分であり;
は水素もしくはC−C−アルキルであり、
は水素もしくはC−C−アルキルであり、
はC−C−アルキルであり;
またはRおよびRは、これらが結合する窒素と共に、4から6個の炭素原子および、場合により、1もしくは2個のさらなる窒素環メンバーで作製される5から7員環を形成し、さらなる窒素環メンバーは互いに独立に水素、C−C−アルキルもしくはアミノ置換C−C−アルキルによって置換される。
【0110】
さらなる実施形態において、多官能性アミンはN,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミンおよび1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンまたはこれらの混合物からなる群より選択される。
【0111】
スルホン化ブロックがスチレンである、N,N−ジメチルエチレンジアミンによるアミン中和スルホン化ブロックコポリマーの形成の一例は以下の反応によって表すことができる:
【0112】
【化4】

【0113】
当業者は、上記が例示的なものであり、ここで論じられる他のアミンをスルホン酸および/またはスルホネートエステル基の中和に用いることができることを理解するであろう。
【0114】
スルホン化ブロックコポリマーの中和に用いられるアミンの量はスルホン化ブロックコポリマー中に存在するスルホン酸またはスルホネートエステル基のモルおよび望ましい中和のレベルに依存する。アミンの量がスルホン化ブロックコポリマー中に存在するスルホン酸またはスルホネートエステル基に関して化学量論的量の約80%未満であるとき、アミンは、通常、定量的に反応する。約80%を上回る中和のレベルでは、アミン化合物を過剰に用いることが有利であることが見出されている。通常、アミンの量は、スルホン化ブロックコポリマーのスルホン酸またはスルホネートエステル官能基に関して、化学量論的量の約50%から約2000%の範囲の量で用いことができる。
【0115】
幾つかの実施形態においては、アミンを、スルホン化ブロックコポリマー中に存在するスルホン酸またはスルホネートエステル基に関して、化学量論的量の少なくとも約60%、特には少なくとも約70%、とりわけ少なくとも約80%、または少なくとも約100%で添加することができる。さらに、アミンは、スルホン化ブロックコポリマー中に存在するスルホン酸またはスルホネートエステル基に関して、化学量論的量の多くとも約1500%、特には多くとも約750%、とりわけ多くとも約500%または多くとも約250%または多くとも約200%で添加することができる。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定された化学量論的量のあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0116】
スルホン化ブロックコポリマーの中和に用いられるアミンの量は、さらに、窒素官能基の数に依存する。いかなる特定の理論によっても束縛されることを望むことなしに、1つのスルホン酸またはスルホネートエステル基はアミン化合物中の1つの窒素官能基によって中和できるものと信じられる。従って、2つの窒素官能基を有するアミンは2つのスルホン酸またはスルホネートエステル基を中和することができ、3つの窒素官能基を有するアミンは3つのスルホン酸またはスルホネートエステル基を中和することができる、等。従って、上述のアミンの化学量論的量はアミン化合物中の窒素官能基の数に基づく。
【0117】
幾つかの実施形態において、アミン塩基は、一般には、スルホン酸またはスルホネートエステル基1当量あたりアミン塩基約0.75から約10当量の量でスルホネート基の中和に用いられる。他の実施形態においては、スルホン酸またはスルホネートエステル基1当量あたり0.8当量から約5当量のアミン塩基を添加することができる。さらなる実施形態においては、スルホン酸またはスルホネートエステル基1当量あたり0.9当量から約2当量のアミン塩基を添加することができる。さらなる実施形態においては、スルホン酸またはスルホネートエステル基1当量あたり0.95当量から約1当量のアミン塩基を添加することができる。さらなる実施形態においては、スルホン酸またはスルホネートエステル基1当量あたり約1当量のアミン塩基を添加することができる。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定された当量のあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0118】
中和のレベルは広範な範囲内で調整することができ、例えば、スルホン酸またはスルホネートエステル基の約70%から約100%がブロックコポリマー中のスルホン酸官能基の当量あたり1モルのアミンと等価である少なくとも1回の投入によって中和される。他の実施形態においては、中和のレベルは、ブロックコポリマー中のスルホン酸官能基の当量あたり1モルのアミンと等価以下である少なくとも1回の投入によって中和される、スルホン酸またはスルホネートエステル基の少なくとも約80%、特には少なくとも約85%、とりわけ少なくとも約90%である。幾つかの実施形態においては、スルホン酸またはスルホネートエステル基の多くとも約95%、好ましくは多くとも約98%、とりわけ100%がブロックコポリマー中のスルホン酸官能基の当量あたり1モルのアミンと等価以下である少なくとも1回の投入によって中和される。
【0119】
実施形態の幾つかにおいて、中和されていないブロックコポリマーのスルホン化の程度が低い場合、中和のレベルはより高いものであり得、例えば、中和されていないブロックコポリマーのスルホン化の程度が約10から約70mol%の範囲にある場合、中和のレベルは90から100%の範囲であり得る。他の実施形態において、中和されていないブロックコポリマーのスルホン化の程度が高い場合、中和のレベルはより低いものであり得、例えば、中和されていないブロックコポリマーのスルホン化の程度が約65から100mol%の範囲にある場合、中和のレベルは約75%から100%の範囲であり得る。驚くべきことに、高レベルの中和が、水性環境において用いたときに膨潤する中和スルホン化ブロックコポリマーの傾向を低減することが見出されている。
【0120】
中和反応は、通常、−40℃から溶媒または溶媒混合液の沸点までの範囲の温度で行うことができる。反応は発熱性であり得、即ち、アミンの性質、アミンを添加する時間あたりの量およびブロックコポリマーをスルホン化する程度に依存して、反応媒体の温度が約10から20℃上昇し得る。実施形態の幾つかにおいて、温度は約−40℃から約+100℃、または約20℃から約+60℃の範囲であり得る。
【0121】
この文脈における「反応時間」という表現は、全ての反応体が結合しているときに開始し、中和反応が完了に到達しているときに終了する時間の間隔であるものと理解される。一般には、反応時間はほぼ1分未満から約24時間以上までの範囲をとり得る。好ましくは、約1時間以内または30分以内に完了に到達する。
【0122】
中和スルホン化ブロックコポリマーは、場合により減圧で、および場合により高温で、反応溶媒を蒸発させることによって反応混合物から分離することができる。幾つかの実施形態においては、中和スルホン化ブロックコポリマーを含む反応混合物をさらに処理することなしにフィルムまたはメンブランのキャスティングに用いることができる。
【0123】
6.中和ブロックポリマーの特性
ここで説明されるアミン中和スルホン化ブロックコポリマーは予期せぬほど優れた特性を有する。スルホン化ブロックコポリマーの中和はブロックコポリマーに対する可塑化効果をもたらすことが見出された。換言すると、アミン中和ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーよりも低い乾燥状態での引張係数を示す。結果として、水中に浸漬するとき、アミン中和ブロックコポリマーは乾燥状態での係数と本質的に同じであるか、ほんの僅かに低い湿潤引張係数を示す。従って、幾つかの実施形態によると、湿潤および乾燥状態の両方において、中和ブロックコポリマーは同じであるか、または類似の係数を有する。これには、湿潤および乾燥状態の両方において同じ改質剤によって可塑化される中和ブロックコポリマーの利点がある。結果として、この材料は湿潤および乾燥状態の両方において同じであるか、または類似の引張係数を有する。このような材料は、環境の湿度とは無関係に、柔軟性およびドレープ性能を保持する。驚くべきことに、これらの特性に加えて、中和ブロックコポリマーは高い水蒸気輸送速度および非常に良好な寸法安定性をも示すことも見出された。
【0124】
従って、スルホン化ブロックコポリマーはここで説明されるアミンによって中和される際に可塑化されるため、幾つかの実施形態においては、乾燥引張係数が対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーと等しいか、またはこれを下回る。他の実施形態においては、乾燥引張係数が対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの引張係数の10%から99%の範囲まで減少する。他の実施形態においては、乾燥引張り係数が対応する非中和スルホン化ブロックコポリマー引張係数の50%から95%の範囲まで減少する。さらなる実施形態においては、乾燥引張係数が対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの引張係数の60%から90%の範囲まで減少する。さらなる実施形態においては、乾燥引張係数が対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの引張係数の65%から80%の範囲まで減少する。さらなる実施形態においては、乾燥引張係数が対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの引張係数の70%から75%の範囲まで減少する。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたパーセンテージのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0125】
さらに、アミン中和ブロックコポリマーの引張係数は湿潤および乾燥状態の両方において同じであるか、類似であり得る。従って、幾つかの実施形態において、ここで開示されるアミン中和ブロックコポリマーは乾燥引張係数の20%以上である湿潤引張係数を有する。他の実施形態においては、湿潤引張係数は乾燥引張係数の35%以上である。さらなる実施形態においては、湿潤引張係数は乾燥引張係数の50%以上である。他の実施形態においては、湿潤引張係数は乾燥引張係数の65%以上である。さらなる実施形態においては、湿潤引張係数は乾燥引張係数の75%以上である。さらなる実施形態においては、湿潤引張係数は乾燥引張係数の85%以上である。他の実施形態においては、湿潤引張係数は乾燥引張係数の90%以上である。他の実施形態においては、湿潤引張係数は乾燥引張係数の95%以上である。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたパーセンテージのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0126】
さらに、幾つかの実施形態において、中和ブロックコポリマーの湿潤破断点引張り強さは乾燥破断点引張り強さの少なくとも約50%である。他の実施形態において、中和ブロックコポリマーの湿潤破断点引張り強さは乾燥破断点引張り強さの少なくとも約75%である。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの湿潤破断点引張り強さは乾燥破断点引張り強さの少なくとも約90%である。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの湿潤破断点引張り強さは乾燥破断点引張り強さとほぼ同じである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたパーセンテージのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0127】
ここに開示されるアミン中和ブロックコポリマーが、非常に良好な寸法安定性を同時に有しながら、驚くべきことに高い水蒸気輸送速度を有することも見出されている。驚くべきことに、スルホン化ブロックコポリマーの水蒸気輸送速度(WVTR)が対応する非中和ブロックコポリマーのWVTRと同じであるか、または類似し、幾つかの実施形態においては、より高いWVTRを有し得ることが見出された。従って、幾つかの実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約50%である。他の実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約65%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約75%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約85%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約90%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約95%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約99%である。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたパーセンテージのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0128】
幾つかの実施形態において、WVTRは倒置カップ法(inverted cup method)を用いてg/m/日/ミルを単位として定量することもでき、この単位は、露出の当日に1mの露出面積および1ミルの厚みを有するメンブランを用いて、25Cでこのメンブランを通して50%相対湿度雰囲気に輸送される水のg数である。従って、幾つかの実施形態においては、少なくとも約15,000g/m/日/ミルのWVTR。他の実施形態においては、WVTRは少なくとも約18,000g/m/日/ミルである。さらなる実施形態においては、WVTRは少なくとも約20,000g/m/日/ミルである。さらなる実施形態においては、WVTRは少なくとも約22,000g/m/日/ミルである。さらなる実施形態においては、WVTRは少なくとも約23,000g/m/日/ミルである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定された速度のあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0129】
驚くべきことに、非常に良好な寸法安定性をも維持しながら、高いWVTRを得ることができることが見出されている。寸法安定性は中和ブロックコポリマーを含むメンブランまたは物品の全体物理形状を指し得る。従って、良好な寸法安定性を有するポリマーはこれらの形態をより維持しそうであり、水の存在下においてたわんだり形状を変化させたりしそうもない。湿潤および乾燥状態の両方においてメンブランの長さ、幅および厚みを測定することを含めて、ブロックコポリマーの寸法安定性を測定する幾つかの方法が存在するが、方法の1つはブロックコポリマーメンブランの吸水を測定することを含む。
【0130】
従って、ここで用いられる「吸水値」という表現は、乾燥ブロックコポリマーの元の重量と比較した平衡状態にあるブロックコポリマーによって吸収される水の重量を指し、パーセンテージとして算出される。低い吸水値は、吸収される水が少なく、従って、より良好な寸法安定性に相当することを示す。
【0131】
この驚くべき有利な寸法安定性は、水管理メンブラン、即ち、メンブランが搭載装置内に拘束され、メンブランの寸法の僅かな変化がバックリングおよびテアリングを生じ、これにより装置の性能の低下または故障さえも必然的に生じ得る用途において望ましい。この驚くべき有利な寸法安定性は、例えば、脱塩用途、湿度調節装置、バッテリ隔離板、燃料電池交換膜、医療用管材用途等にも望ましい。
【0132】
一実施形態において、吸水値は対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値以下である。他の実施形態において、吸水値は対応する非中和ブロックコポリマーの吸水値の80%未満である。さらなる実施形態において、吸水値は対応する非中和ブロックコポリマーの吸水値の50%未満である。さらなる実施形態において、吸水値は対応する非中和ブロックコポリマーの吸水値の25%未満である。
【0133】
さらに、幾つかの実施形態において、中和ブロックコポリマーの吸水値は乾燥ポリマーの5%から100%である。他の実施形態において、中和ブロックコポリマーの吸水値は乾燥ポリマーの20%から75%である。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの吸水値は乾燥ポリマーの20%から50%である。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの吸水値は乾燥ポリマーの20%から40%である。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの吸水値は乾燥ポリマーの20%から35%である。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたパーセンテージのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0134】
7.中和ブロックコポリマーの適用
中和スルホン化ブロックコポリマーはコポリマーの特性に悪影響を及ぼさない他の成分と混合することができる。中和ブロックコポリマーは、オレフィンポリマー、スチレンポリマー、親水性ポリマーおよびエンジニアリング熱可塑性樹脂を含む、様々な他のポリマー、ポリマー液および他の流体、例えば、イオン性液体、天然油、芳香剤、ならびに充填剤、例えば、ナノクレー(nanoclays)、カーボンナノチューブ、フラーレンおよび伝統的な充填剤、例えば、タルク、シリカ等と配合することができる。
【0135】
加えて、中和スルホン化ブロックコポリマーは従来のスチレン/ジエンおよび水素化スチレン/ジエンブロックコポリマー、例えば、Kraton Polymers LLCから入手可能なスチレンブロックコポリマーと配合することができる。例示的スチレンブロックコポリマーには、直鎖S−B−S、S−I−S、S−EB−S、S−EP−Sブロックコポリマーが含まれる。イソプレンおよび/またはブタジエンと共にスチレンをベースとする放射状ブロックコポリマーならびに選択的水素化放射状ブロックコポリマーも含まれる。ブロックコポリマー前駆体、スルホン化前のブロックコポリマーとの配合物が特に有用である。
【0136】
オレフィンポリマーには、例えば、エチレンホモポリマー、エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/アルファ−オレフィンコポリマー、高衝撃性ポリプロピレン、ブチレンホモポリマー、ブチレン/アルファオレフィンコポリマーおよび他のアルファオレフィンコポリマーまたはインターポリマーが含まれる。代表的なポリオレフィンには、例えば、これらに限定されるものではないが、実質的に直鎖のエチレンポリマー、均一分岐直鎖エチレンポリマー、不均一分岐直鎖エチレンポリマーが含まれ、不均一分岐直鎖エチレンポリマーには直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、極または超低密度ポリエチレン(ULDPEまたはVLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)および高圧低密度ポリエチレン(LDPE)が含まれる。以下に含まれる他のポリマーは、エチレン/アクリル酸(EEA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)イオノマー、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、エチレン/環状オレフィンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマーおよびコポリマー、プロピレン/スチレンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリブチレン、エチレン一酸化炭素インターポリマー(例えば、エチレン/一酸化炭素(ECO)コポリマー、エチレン/アクリル酸/一酸化炭素ターポリマー等)である。以下に含まれるさらに他のポリマーは塩化ポリビニル(PVC)およびPVCと他の材料との配合物である。
【0137】
スチレンポリマーには、例えば、結晶性ポリスチレン、高衝撃性ポリスチレン、中衝撃性ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエン(ABS)ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、スルホン化ポリスチレンおよびスチレン/オレフィンコポリマーが含まれる。代表的なスチレン/オレフィンコポリマーは、好ましくは少なくとも20、より好ましくは25%−wt以上の共重合スチレンモノマーを含む、実質的にランダムのエチレン/スチレンコポリマーである。
【0138】
親水性ポリマーには、酸との相互作用に利用可能な電子対を有するものと特徴付けられるポリマー性塩基が含まれる。このような塩基の例には、ポリマー性アミン、例えば、ポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリデン等;窒素含有物質のポリマー性類似物、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ABS、ポリウレタン等;酸素含有化合物のポリマー性類似物、例えば、ポリマー性エーテル、エステルおよびアルコール;ならびに、グリコールと結合するときの酸−塩基水素結合相互作用、例えば、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等、ポリテトラヒドロフラン、エステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等を含む。)、およびアルコール(ポリビニルアルコールを含む。)、多糖、およびデンプンが含まれる。利用することができる他の親水性ポリマーにはスルホン化ポリスチレンが含まれる。親水性液体、例えば、イオン性液体を本発明のポリマーと組み合わせて膨潤導電性フィルムまたはゲルを形成することができる。イオン性液体、例えば、US5,827,602およびUS6,531,241(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されるものを、予めキャスティングされたメンブランを膨潤させることにより、またはメンブランのキャスティング、フィルムのコーティングもしくは繊維の形成の前に溶媒系に添加することにより、中和スルホン化ポリマーに導入することができる。
【0139】
さらなる成分として用いることができる例示的物質には、限定なしに、(1)顔料、酸化防止剤、安定化剤、表面活性剤、ワックスおよび流動促進剤;(2)微粒子、充填剤および油;ならびに(3)溶媒および組成物の加工性および取り扱いを強化するために添加される他の物質が含まれる。
【0140】
顔料、酸化防止剤、安定化剤、表面活性剤、ワックスおよび流動促進剤は、中和スルホン化ブロックコポリマーと組み合わせて用いるとき、組成物の総重量を基準にして、10重量%以下の量、即ち、0から10%の量で含めることができる。これらの成分のいずれか1種類以上が存在するとき、これらは約0.001から約5重量%、より好ましくは、約0.001から約1重量%の量で存在し得る。
【0141】
微粒子、充填剤および油は、組成物の総重量を基準にして、50重量%以下、0から50%の量で存在し得る。これらの成分のいずれか1種類以上が存在するとき、これらは約5から約50重量%、好ましくは、約7から約50重量%の量で存在し得る。
【0142】
当分野における通常の技術を有する者は、溶媒ならびに組成物の加工性および取り扱いを強化するために添加される他の物質の量が、多くの場合、配合される特定の組成物に加えて添加される溶媒および/または他の物質に依存することを理解するであろう。典型的には、このような量は、組成物の総重量を基準にして、50%を超えることはない。
【0143】
ここで説明されるアミン中和スルホン化ブロックコポリマーは様々な用途および最終使用において用いることができ、これらの特性プロフィールはこれらを、水中に浸漬するときの高いモジュラス、良好な湿潤強度、良好な寸法安定性、良好な水およびプロトン輸送特性、良好なメタノール耐性、容易なフィルムまたはメンブラン形成、良好な障壁特性、制御された柔軟性および弾性、調整可能な硬度、ならびに熱/酸化安定性を必要とする用途における材料として特に適するものとする。
【0144】
本発明の一実施形態において、アミン中和スルホン化ブロックコポリマーは電気化学用途、例えば、燃料電池(分離相)、燃料電池用のプロトン交換膜、燃料電池のものを含む電極組立において用いるためのスルホン化ポリマーセメント中の金属含浸炭素粒子の分散体、水電解槽(電解質)、酸蓄電池(電解質隔離板)、超コンデンサ(電解質)、金属回収工程用の分離セル(電解質障壁)、センサ(特には、湿度感知用の)等において用いることができる。アミン中和スルホン化ブロックコポリマーは脱塩メンブランとして、および多孔性メンブラン上のコーティングにおいても用いられる。気体の輸送におけるアミン中和スルホン化ブロックコポリマーの選択性はこれらを気体分離用途に有用なものとする。加えて、アミン中和スルホン化ブロックコポリマーは、メンブランまたは織物の一方の側から他方へ水を急速に輸送するこれらの能力の結果として所定レベルの快適性を提供しながら、例えば、発汗からの湿気を着用者の皮膚の表面からメンブランまたは織物の外部に逃がし、およびこの逆を行いながら、メンブラン、コート済み織物および貼り合わせ布が様々な環境要素(風、雨、雪、化学薬品、生物学的薬剤)からの保護障壁を提供し得る防御服および通気性織物用途において用いられる。このようなメンブランおよび織物から製造される完全密封スーツは、煙、化学薬品漏出または様々な化学的もしくは生物学的薬剤への露出の可能性がある緊急の場面で最初の応答者を保護し得る。同様の必要性が、危険性が生物学的危害への露出である医療用途、特には、手術において生じる。これらのタイプのメンブランから製造される手術用手袋およびドレープが医療環境において有用であり得る他の用途である。これらのタイプのメンブランから製造される物品はUS6,537,538、US6,239,182、US6,028,115、US6,932,619およびUS5,925,621において報告されるように抗菌および/または抗ウイルスおよび/または抗微生物特性を有する可能性があり、ここではポリスチレンスルホネートがHIV(人免疫不全ウイルス)およびHSV(単純ヘルペスウイルス)に対する阻害剤として作用することが注記される。個人用衛生用途においては、他の体液の漏れに対する障壁を提供しながら発汗からの水蒸気を輸送し、湿潤環境において強度特性を依然として保持する本発明のメンブランまたは織物が有利である。おむつおよび成人用失禁構築物におけるこれらのタイプの材料の使用は既存の技術を上回る改善である。
【0145】
従って、幾つかの実施形態において、ここで説明されるアミン中和スルホン化ブロックコポリマーは、特には、湿潤または水性環境において用いられる水蒸気輸送性メンブランのための材料として用いられる。このようなメンブランは、例えば、湿度を制御するための装置、電気透析を促進するための装置、逆電気透析のための装置、圧力抑制浸透(pressure retarded osmosis)のための装置、浸透を促進するための装置、逆浸透のための装置、水を選択的に添加するための装置、水を選択的に除去するための装置およびバッテリにおいて有用である。
【実施例】
【0146】
8.実施例
以下の例は説明のみを目的とするものであり、いかなる意味においても、本発明の範囲を制限しようとするものでもこのように解釈するべきものでもない。
【0147】
a.材料および方法
ここに記載される乾燥状態での引張係数はASTM D412に従って測定した。
【0148】
ここに記載される湿潤状態での引張係数は、試験前に水の下で24時間平衡化され、試験のための完全に水没させたサンプルを用いて、ASTM D412による方法と同様に測定した。
【0149】
全ての引張りデータは74°F(23.3℃)および50%相対湿度の環境制御室内で収集した。
【0150】
ここに記載されるWVTRはASTM E 96/E96Mと同様に測定した。このASTM法を、小さいバイアルを用い、10mlの水を用い、および露出メンブランの面積を(ASTM法による1000mmとは反対に)160mmとすることによって改変した。水を添加してバイアルをメンブラン試験種で密封した後、バイアルを反転させ、25℃の温度および50%の相対湿度を有する空気をメンブランを通して吹き込んだ。重量損失を時間に対して測定し、水輸送速度をこれらの測定に基づいてg/mとして、または、試験したメンブランの厚みについて標準化するときには、gミル/mとして算出した。
【0151】
ここに記載され、滴定によって決定されるスルホン化の程度は、以下の電位差滴定法によって測定した。非中和スルホン化反応生成物溶液を2回の別々の滴定(「2滴定法」)によって分析し、スチレンポリマースルホン酸、硫酸および非ポリマー性副生物スルホン酸(2−スルホイソ酪酸)の濃度を決定した。各々の滴定について、反応生成物溶液約5グラムのアリコートを約100mLのテトラヒドロフランおよび約2mLの水に溶解し、約2mLのメタノールを添加した。第1滴定においては、この溶液をメタノール中の0.1Nシクロヘキシルアミンで電位差的に滴定して2つの終点を得た;第1終点はサンプル中の全てのスルホン酸基に加えて硫酸の第1酸性プロトンに対応し、第2終点は硫酸の第2酸性プロトンに対応していた。第2滴定においては、溶液を約3.5:1 メタノール:水中の0.14N水酸化ナトリウムで電位差的に滴定し3つの終点を得た:第1終点はサンプル中の全てのスルホン酸基に加えて硫酸の第1および第2酸性プロトンに対応し;第2終点は2−スルホイソ酪酸のカルボン酸に対応し;および第3終点はイソ酪酸に対応していた。
【0152】
第1滴定における硫酸の第2酸性プロトンの選択的検出は、第2滴定における2−スルホイソ酪酸のカルボン酸の選択的検出と共に、酸成分濃度の算出を可能にした。
【0153】
ここに記載され、H−NMRによって決定されるスルホン化の程度は、以下の手順を用いて測定した。約2グラムの非中和スルホン化ポリマー生成物溶液を数滴のメタノールで処理し、50℃真空オーブン内で約0.5時間乾燥させることによって溶媒を奪った。乾燥ポリマーの30mgサンプルを約0.75mLのテトラヒドロフラン−d(THF−d)に溶解した後、これに濃HSOの部分液滴を添加し、次のNMR解析における妨害性不安定プロトンシグナルを芳香族プロトンシグナルから低磁場側にシフトさせた。得られる溶液を約60℃でH−NMRによって分析した。約7.6百万分率(ppm)のH−NMRシグナルの積分からスチレンスルホン化パーセンテージを算出し、これはスルホン化スチレン単位上の芳香族プロトンの1/2に相当する;このような芳香族プロトンの他の半分に相当するシグナルは非スルホン化スチレン芳香族プロトンおよびtert−ブチルスチレン芳香族プロトンに相当するシグナルと重複していた。
【0154】
ここに記載されるイオン交換能力は上述の電位差滴定法によって決定し、スルホン化ブロックコポリマーのグラムあたりのスルホン酸官能基のミリ当量として報告した。
【0155】
ミセルの形成は、シクロヘキサンで約0.5から0.6重量%の濃度に希釈したポリマーサンプル溶液を用いる、UKのMalvern Instruments Limitedから入手可能なMalvern Zetasizer Nano Series動的光散乱機器、モデル番号ZEN3600での粒子サイズ分析によって確認した。希釈したポリマー溶液サンプルを1cmアクリルキュベットに入れ、これにサイズ分布を強度の関数として決定するための機器の汎用アルゴリズム(A.S.Yeung and C.W.Frank,Polymer,31,pages 2089−2100 and 2101−2111(1990)を参照)を施した。
【0156】
b.実験
非中和スルホン化ブロックコポリマー SBC−1の調製
Aブロックがパラ−tert−ブチルスチレン(ptBS)のポリマーブロックであり、Dブロックが水素化イソプレン(Ip)のポリマーブロックを含んでなり、およびBブロックが非置換スチレン(S)のポリマーブロックを含んでなる、配置A−D−B−D−Aを有するペンタブロックコポリマーを連続アニオン重合によって調製した。sec−ブチルリチウムを用いてシクロヘキサン中でのt−ブチルスチレンのアニオン重合を開始し、15,000g/molの分子量を有するAブロックを得た。次に、イソプレンモノマーを添加し、9,000g/molの分子量を有する第2ブロック(ptBS−Ip−Li)を得た。続いて、スチレンモノマーをリビング(ptBS−Ip−Li)ジブロックコポリマー溶液に添加し、重合してリビングトリブロックコポリマー(ptBS−Ip−S−Li)を得た。ポリマースチレンブロックは28,000g/molの分子量を有するポリスチレンのみを含んでなるものであった。この溶液にイソプレンモノマーの他のアリコートを添加することで、11,000g/molの分子量を有するイソプレンブロックが生じた。従って、これはリビングテトラブロックコポリマー構造(ptBS−Ip−S−Ip−Li)をもたらした。パラ−tert−ブチルスチレンモノマーの第2アリコートを添加し、メタノールを添加することによってこれらの重合を停止させて約14,000g/molの分子量を有するptBSブロックを得た。その後、標準Co2+/トリエチルアルミニウム法を用いてこのptBS−Ip−S−Ip−ptBSを水素化し、ペンタブロックのイソプレン部分内のC=C不飽和を除去した。次に、無水i−酪酸/硫酸試薬を用いて、(さらなる処理なしに、酸化、洗浄をせず、「仕上げ」もせずに)このブロックポリマーを直接スルホン化した。ヘプタン(ブロックコポリマー溶液の体積あたりおおよそ等体積のヘプタン)を添加することにより、この水素化ブロックコポリマー溶液を約10%固体まで希釈した。十分な無水i−酪酸および硫酸(1/1(mol/mol))を添加し、ブロックコポリマーのgあたり2.0meqのスルホン化ポリスチレン官能基を得た。エタノール(2molエタノール/無水i−酪酸のmol)を添加することによってスルホン化反応を停止させた。生じるポリマーは、電位差滴定により、2.0meqの−SOH/ポリマーgの「イオン交換能力(IEC)」を有することが見出された。スルホン化ポリマーの溶液はヘプタン、シクロヘキサンおよびi−酪酸エチルの混合液中で約10%wt/wtの固体濃度を有していた。
【0157】
キャストメンブラン中和手順
以下でさらに説明される中和手順の前に、SBC−1ポリマーの既にキャスティングされたメンブランを中和する初期試験を行った。従って、SBC−1ポリマー溶液の20ミル厚フィルムを16”×16”シラン処理ガラスプレート上に引き出した。このフィルムをキャスティングチャンバー内、1気圧、50%の相対湿度および室温(約25℃)で一晩乾燥させ、約1ミル厚のメンブランを得た。
【0158】
このメンブランを幾つかのアミンと接触させた。しかしながら、メンブランを特定のアミンと接触させるとき、このメンブランは分解し、またはアミン中に溶解した。
【0159】
【表1】

【0160】
代わりの手順において、メンブランを水中にほぼ1日浸漬させた後、水中のアミンの溶液(水中に約10%wtアミン)と接触させた。これはメンブランが溶解することを妨げたが、この方法で処理されているメンブランを真空下で乾燥させたとき、メンブランに空隙が生じた。フィルム内に空隙があることはメンブランを選択的浸透用途に不適切なものとする。
【0161】
従って、メンブランを溶解するアミンを、スルホン化ブロックコポリマーを含む既にキャスティングされたメンブランの中和に用いることはできなかった。
【0162】
ミセル中和手順
代表的実験においては、上述のSBC−1ブロックコポリマーのスルホン化の後に、メンブランにキャスティングすることなしに、10gのSBC−1ポリマー(および、従って、20meqの−SOH)を有する100gの溶液をさらに40gのシクロヘキサンで希釈した。N,N−ジメチルエチレンジアミン(1.86g、20mmol)を撹拌したスルホン化コポリマー溶液に約30分にわたって滴下により添加した。中程度の発熱が観察された(約3℃)(中和の熱)。この溶液をさらに30分間撹拌したが、粘度の顕著な増加はなかった。
【0163】
中和ポリマー溶液の20ミル厚フィルムを16”×16”シラン処理ガラスプレート上に引き出した。このフィルムをキャスティングチャンバー内、1気圧、50%の相対湿度および室温で一晩乾燥させ、約1ミル厚のメンブランを得た。
【0164】
この手順を、記述される通りではあるが、20mmolのN,N−ジメチルエチレンジアミンの代わりに以下のアミンのうちの1つを指示された量で用いて反復した:
N,N’−ジメチルエチレンジアミン−1.85g、20mmol
1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン−4.05g、20mmol
テトラエチレンペンタアミン−3.89g、20mmol
ペンタエチレンヘキサアミン−4.66g、20mmol
【0165】
表1はこの方法で得られる中和ブロックコポリマーをまとめる。
【0166】
【表2】

【0167】
上記表1に示されるように、SBC−1はアミンによって中和されていないスルホン化ブロックコポリマーである。さらに、NSBC−1、NSBC−2およびNSBC−3は2から4の間の窒素官能基を有する多官能性アミンで中和し、その一方でNSBC−4およびNSBC−5は、それぞれ、5および6の窒素官能基を有するアミンで中和した。表1に示されるブロックコポリマーを様々な性能特性に関して試験した。これらの試験結果を下記表2にまとめる:
【0168】
【表3】

【0169】
表2の結果は、ミセル溶液中でのスルホン化ブロックコポリマーのアミン中和が優れた特性を中和スルホン化ブロックコポリマーに付与することを示す。表1に示されるように、両アミン N,N’−ジメチルエチレンジアミンおよびN,N−ジメチルエチレンジアミンはキャストスルホン化ブロックコポリマーメンブランを溶解する効果を有し、従って、非中和スルホン化ブロックコポリマーで形成されるメンブランの中和に用いることはできなかった。しかしながら、表2に示されるように、調べたアミンの全てがミセル溶液中のスルホン化ブロックコポリマーの中和にうまく用いられ、中和ミセル溶液は空隙のない有用なメンブランにうまくキャスティングされた。さらに、これらのデータは、ポリマーNSBC−1からNSBC−5において乾燥引張係数が非中和SBC−1コポリマーと比較して減少し、従って、アミン添加の可塑化効果が示されることを示す。同時に、湿潤引張り強さは非中和形態にある対照メンブランの湿潤引張り強さの50%以上であった。アミン中和メンブランはアミンでの中和によって可塑化されたものの、これらはこれらの湿潤強度性能を保持していた。本発明の実施形態に従ってアミンでの中和によって調製されたメンブランは対照メンブランで観察されているものよりも低い低乾燥モジュラス値を有し、および、重要なことには、値が対照メンブランで観察されているものよりも乾燥モジュラス値に近い湿潤モジュラス値を有していた。本発明のメンブランは対照メンブランで観察されるものよりも環境湿度レベルに対する感受性が低い性能をもたらす。さらに、アミン中和スルホン化ブロックコポリマーから得られるメンブランの吸水値は対応する非中和SBC−1コポリマーのものよりもかなり小さいものであった。これはアミン中和材料の寸法安定性の改善の反映である。
【0170】
加えて、NSBC−1、NSBC−2およびNSBC−3が例外的な性能特性の組み合わせを示す優れた結果を生じたことは驚くべきことであり、予期せざることであった。表2の結果において示されるように、これらの中和ブロックコポリマーの乾燥引張係数は非中和SBC−1ブロックコポリマーと比較して減少していた。これに加えて、アミン中和スルホン化ブロックコポリマーから得られるメンブランは非中和SBC−1の高いWVTRを維持していた。これは、WVTRが典型的にはこのタイプのメンブランの吸水値と直接相関するため、驚くべき結果である。さらに、WVTRが維持されているものの、アミン中和スルホン化ブロックコポリマーから得られるメンブランは非中和SBC−1ブロックコポリマーよりもかなり小さい吸水値を示していた。従って、高いWVTRを有していても、ブロックコポリマーNSBC−1、NSBC−2およびNSBC−3は非中和SBC−1を上回る改善された寸法安定性を有する(それぞれ31.5%、38.6%、41.2%吸水対SBC−1の144%吸水)。従って、これらのデータは、2から4の窒素官能基を有するアミンでの中和が予期せざる有利な結果を生じることを示す。
【0171】
下記表3は、水中に浸漬して平衡化した後のメンブランの物理的寸法の変化を示すことにより、試験したブロックコポリマーの寸法安定性をさらに示す。
【0172】
【表4】

【0173】
表3に示されるように、調べた全てのアミン中和ブロックコポリマーは寸法安定性の観点で非中和SBC−1コポリマーを上回る著しい改善を示した。アミン中和ブロックコポリマーの寸法増加は、各々の場合において、対応する非中和SBC−1コポリマーよりも少なかった。水中での寸法安定性はこのタイプのメンブランの性能特性を評価する上での要素である。多くの用途において、これらのメンブランは湿潤条件から乾燥条件に循環し、再度湿潤に戻る。環境の湿度に依存して膨潤および収縮するメンブランは循環の間に屈曲し(過剰の水)、および引き裂きが生じる(乾燥状態)傾向にある。この挙動はしばしばメンブランの機械的損傷につながる。さらに、上述のように、NSBC−1、NSBC−2およびNSBC−3は、例外的な寸法安定性を有することに加えて、高いWVTRをさらに有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの終端ブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン酸またはスルホネートエステル官能基を本質的に含まず、および各々のBブロックはBブロックのモノマー単位の数を基準にして約10から約100モルパーセントの中和されていないスルホン酸またはスルホネートエステル官能基を含むポリマーブロックであるスルホン化ブロックコポリマーの中和方法であって、
有機溶媒およびミセル形態にある非中和ブロックコポリマーを含む溶液を提供し、ならびに
少なくとも1種類のアミンを溶液に添加する、
ことを含む方法。
【請求項2】
スルホン酸またはスルホネートエステル官能基の80%が中和される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非中和ブロックコポリマーのスルホン酸またはスルホネートエステル官能基1当量あたり約0.8から約10当量のアミン塩基の量でアミンを添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
有機溶媒が非ハロゲン化脂肪族溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒が少なくとも第1および第2脂肪族溶媒を含み、Bブロックが第1溶媒に実質的に可溶であり、ならびにAブロックが第2溶媒に実質的に可溶である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アミンが多官能性アミン、一官能性アミンおよびこれらの混合物からなる群より選択され、各々の場合におけるアミン基は1、2または3の脂肪族および/または芳香族置換基を有する一級、二級または三級アミンであり、一級、二級および三級アミン基の置換基は直鎖、分岐鎖もしくは環状脂肪族もしくは芳香族部分またはこのような置換基の混合である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アミンが2から4の窒素官能基を有する多官能性アミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各々のAブロックが重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18個の炭素原子のアルファオレフィン;(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化前に35モルパーセント未満のビニル含有率を有する共役ジエンのモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルおよび(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
各々のBブロックが重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)アルファ−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーのセグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
スルホン化ブロックコポリマーが一般配置A−B−A、A−B−A−B−A、(A−B−A)X、(A−B)X、A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)X、(A−B−D)Xまたはこれらの混合を有し、式中、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残滓であり、各々のDブロックはスルホン化に抵抗するポリマーブロックであり、ならびに複数のAブロック、BブロックまたはDブロックは同じであるか、または異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
各々のDブロックが(i)20から80モルパーセントの水素化前のビニル含有率を有するイソプレン、1,3−ブタジエンから選択される重合または共重合共役ジエン、(ii)重合アクリレートモノマー、(iii)シリコンポリマー、(iv)重合イソブチレンおよび(v)これらの混合物からなる群より選択され、重合1,3−ブタジエンまたはイソプレンを含むあらゆるセグメントが続いて水素化される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2つのポリマー終端ブロックAおよび少なくとも1つのポリマー内部ブロックBを含む、水中で固体である中和スルホン化ブロックコポリマーであって、
a.各々のAブロックはスルホン酸またはスルホネートエステル官能基を本質的に含まず、および各々のBブロックはBブロックのモノマー単位の数を基準にして約10から約100モルパーセントのスルホン酸またはスルホネートエステル官能基を含むポリマーブロックであり;
b.スルホン化Bブロックは2から4の窒素官能基を有する多官能性アミンで中和され、Bブロック内のスルホン酸またはスルホネートエステル官能基の95%から100%が中和される、
中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項13】
多官能性アミンが2または3の窒素官能基を有する、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項14】
多官能性アミンが、C−C直鎖、分岐鎖または環状脂肪族架橋性部分を介して互いに連結する、少なくとも2つの窒素官能基を含む、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項15】
多官能性アミンが下記一般式:
−NH−A−NR−R
(式中、
Aは2から6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキレン部分であり;
は水素またはC−C−アルキルであり、
は水素またはC−C−アルキルであり、
はC−C−アルキルであり;
またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と共に、4から6個の炭素原子および、場合により、1または2個のさらなる窒素環員で生成される5から7員環を形成し、これらのさらなる窒素環員は互いに独立に水素、C−C−アルキルまたはアミノ置換C−C−アルキルによって置換される。)
を有する、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項16】
多官能性アミンがN,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミンおよび1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンまたはこれらの混合物からなる群より選択される、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項17】
以下の条件のうちの1つまたは両方を満たす、請求項12に記載の中和ブロックコポリマーであって、:
a.中和ブロックコポリマーが対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値以下である吸水値を有し;および/または
b.中和ブロックコポリマーが対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの、ASTM D412に従って測定される、乾燥引張係数以下である乾燥引張係数を有する、
中和ブロックコポリマー。
【請求項18】
対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値の80%未満の吸水値を有する、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項19】
乾燥重量の100%未満の吸水値を有する、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項20】
少なくとも15,000g/m/日/ミルの水蒸気輸送速度を有する、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項21】
対応する非中和ブロックコポリマーの水輸送速度の少なくとも約50%の水輸送速度を有する、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項22】
対応する非中和ブロックコポリマーの水輸送速度の少なくとも約50%の水輸送速度を有する、請求項18に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項23】
対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの乾燥引張係数よりも小さい乾燥引張係数を有し、この係数がASTM D412に従って測定される、請求項22に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項24】
水和形態にある、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項25】
以下の条件の両方を満たす、請求項24に記載の水和中和ブロックコポリマーであって、:
a.水和中和ブロックコポリマーが対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの水和形態の水輸送速度の少なくとも約50%の水輸送速度を有し;
b.水和中和ブロックコポリマーが対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値の80%未満の吸水値を有する、
水和中和ブロックコポリマー。
【請求項26】
各々のBブロックが重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)アルファ−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーのセグメントを含む、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項27】
一般配置A−B−A、A−B−A−B−A、(A−B−A)X、(A−B)X、A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)X、(A−B−D)Xまたはこれらの混合を有し、式中、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残滓であり、各々のDブロックはスルホン化に抵抗するポリマーブロックであり、ならびに複数のAブロック、BブロックまたはDブロックは同じであるか、または異なる、請求項12に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項28】
1以上のブロックDを含み、各々のDブロックは(i)20から80モルパーセントの水素化前のビニル含有率を有するイソプレン、1,3−ブタジエンから選択される重合または共重合共役ジエン、(ii)重合アクリレートモノマー、(iii)シリコンポリマー、(iv)重合イソブチレンおよび(v)これらの混合物からなる群より独立に選択され、重合1,3−ブタジエンまたはイソプレンを含むあらゆるセグメントが続いて水素化される、請求項27に記載の中和ブロックコポリマー。
【請求項29】
請求項12において規定される中和ブロックコポリマーを含むメンブラン。

【公表番号】特表2013−507517(P2013−507517A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534200(P2012−534200)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/049273
【国際公開番号】WO2011/046708
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(510145211)クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー (10)
【Fターム(参考)】