説明

アミン酸エステルオリゴマー、それを含有するポリイミド樹脂のための前駆体組成物、及び使用

【課題】本発明の1つの目的は、エステル末端基(−C(O)OR)及びカルボキシ末端基(−C(O)OH)を担持したアミン酸エステルオリゴマーを提供することである。
【解決手段】本発明は下記式(1):


[式中、R、Rx、G、P及びmは明細書において定義される通りである]の構造を有するアミン酸エステルオリゴマーを提供する。本発明は又、上述した式(1)のオリゴマーを含むポリイミド樹脂のための前駆体組成物を提供する。前駆体組成物から合成されたポリイミドは良好な操作性及び物理化学的特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規アミン酸エステルオリゴマー及びオリゴマー含有ポリイミドのための前駆体組成物、及び使用に関する。本発明はまた、ポリイミド(PI)の製造における新規アミン酸エステルオリゴマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは優れた熱安定性及び良好な機械的、電気的及び化学的特性を有するため、高性能重合体として使用されている。更に、半導体の要求の基準は、従来の無機物の使用が問題視されるようになり適用に限界があることから、厳格になってきている。ポリイミドの特性は一部の特徴において従来の材料の難点を補うことができる。従って、EIDu Pont Companyが芳香族ポリイミド技術を開発して以来、ポリイミドは極めて一般的に使用されており、そしてその種々の用途が開発されている。
【0003】
半導体産業においては、ポリイミドはパッシベーションコーティング、ストレスバターコーティング、α−粒子バリア、ドライエッチングマスク、ミクロマシーン及び層間誘電体において広範に使用されている。今なおその他の使用が開発されている。ポリイミドは集積回路素子として信頼性があることから、ポリイミドは主に集積回路素子のためのコーティングとして使用されている。しかしなおポリイミドは集積回路産業においてのみならず、電子パッケージング、エナメル処理ワイア、プリント回線基板、センサー阻止、分離用フィルム及び構造材料にも使用されている。
【0004】
ポリイミドは典型的には2段階の重合及び縮合反応により合成される。通常は第1段階においてはアミン単量体をN−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)のような極性非プロトン性溶媒に溶解する。次に等モルの2無水物単量体を添加する。その後、縮合反応を低温又は室温で行い、ポリイミドの前駆体、即ちポリ(アミン酸)(PAA)を形成する。
【0005】
第2段階では、縮合、脱水及び環化のために熱イミド化又は化学的イミド化を行うことによりポリ(アミン酸)をポリイミドに変換する。
【0006】
ポリイミドを製造するための現在の反応スキームは、簡単には以下の通りである。
【0007】
【化1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の製造方法において、第1段階で得られたポリ(アミン酸)の分子量が特定の基準に達さない場合(即ち過度に低分子量)、イミド化後に、良好な物理的特性を有するポリイミドフィルムを得ることができない。しかしながら、第1段階で得られたポリ(アミン酸)が過度に高分子量である場合は、その粘度が過剰に高値となり、その操作性が不良になる。更に、コーティング工程において不良なレベリングが生じる。例えば、スピンコーティングの間、不良なレベリング現象が容易に起こる。更に、ポリ(アミン酸)が過度に高分子量であると、分子間の相互作用及び第2段階のイミド化における分子鎖の短縮化のために、極端に強力な内部応力が生じる。強力な内部応力はコーティングされた基盤を屈曲及び変形させてしまう。これらの問題点に対応するために、多くの文献において、第2段階のイミド化における温度上昇の勾配曲線と内部応力との間の関係について検討されている。内部応力を低減するための種々の試みも開発されている。しかしなお、第1段階において得られるポリ(アミン酸)の過度に高い分子量のためにレベリングの問題及び内部応力が生じている。換言すれば、ポリ(アミン酸)の分子量が充分制御できれば、優れた物理的特性が得られるポリイミドフィルムが提供できる。
【0009】
更に、ポリ(アミン酸)は高度に吸湿性であり、このため、ポリ(アミン酸)は容易に水分子と反応して、その後分解する。その結果、ポリ(アミン酸)の保存は容易ではない。
【0010】
有用なポリイミドがこの分野で大いに必要とされているにもかかわらず、その材料と操作性が同時に検討されることは少ない。結果として、本発明は上述した問題点を解決するために検討したものである。特に、所望の物理的特性及び操作性を有するポリイミドフィルムは産業上の必要性を満たすべく特定の合成により提供されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの目的は、エステル末端基(−C(O)OR)及びカルボキシ末端基(−C(O)OH)を担持したアミン酸エステルオリゴマーを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ジアミン化合物及びエステル末端基(−C(O)OR)及びカルボキシ末端基(−C(O)OH)を担持したアミン酸エステルオリゴマーを含むポリイミドのための前駆体組成物を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、本発明のポリイミドのための前駆体組成物の重合により得られるポリイミドを提供することである。
【0014】
本発明のアミン酸エステルオリゴマーは下記式(1):
【0015】
【化2】


[式中、
各Rは独立して炭素原子1〜14個の直鎖又は分枝鎖のアルキル又はエチレン性不飽和基を示し;
各Rxは独立してH又は光重合性基を示し;
各Gは独立して4価の有機基を示し;
各Pは独立して2価の有機基を示し;
mは0〜100、好ましくは5〜25の範囲の整数である]を有する。
【0016】
上記式(1)のアミン酸エステルオリゴマーの実施形態において、各Rは独立して炭素原子1〜14個の直鎖又は分枝鎖のアルキル又はエチレン性不飽和基を示す。例えば、炭素原子1〜14個の直鎖又は分枝鎖のアルキルとは、下記:
【0017】
【化3】

[式中nは0〜10の整数である]であることができる。炭素原子1〜14個の直鎖又は分枝鎖のアルキルは(以下のものに限定しないが)メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオブチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルを含む。
【0018】
エチレン性不飽和基は特に制限されず、例えば(以下のものに限定しないが)、エチレン性不飽和基がビニル、プロペニル、メチルプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、ビニルフェニル、プロペニルフェニル、プロペニルオキシメチル、プロペニルオキシエチル、プロペニルオキシプロピル、プロペニルオキシブチル、プロペニルオキシアミル、プロペニルオキシヘキシル、メチルプロペニルオキシメチル、メチルプロペニルオキシエチル、メチルプロペニルオキシプロピル、メチルプロペニルオキシブチル、メチルプロペニルオキシアミル及びメチルプロペニルオキシヘキシル、及び、下記式(2):
【0019】
【化4】

[式中、R1はフェニレン又は直鎖又は分枝鎖のC1−C8アルキレン、直鎖又は分枝鎖のC2−C8アルケニレン、C3−C8シクロアルキレン又は直鎖又は分岐のC1−C8ヒドロキシアルキレンであり、R2はH又はC1−C4アルキルである]の基を包含する。式(2)の好ましい基は下記:
【0020】
【化5】

である。
【0021】
本発明の式(1)のアミン酸エステルオリゴマーにおける各Rxは、独立してH又は何れかの光重合性基を示す。好ましくは、光重合性基はエチレン性不飽和基を担持した基である。エチレン性不飽和基は上述した通りである。本発明によれば、各Rxは独立してH、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート基(H2CC(CH3)C(O)OCH2C(OH)HCH2−)、エチルメタクリレート基(H2CC(CH3)C(O)OCH2CH2−)、エチルアクリレート基(H2CCHC(O)OCH2CH2−)、プロペニル、メチルプロペニル、n−ブテニル又はイソブテニルを示すことが好ましい。より好ましくは、各Rxは独立してH又は2−ヒドロキシプロピルメタクリレート基:
【0022】
【化6】

を示す。
【0023】
本発明の式(1)のアミン酸エステルオリゴマーの4価の有機性基Gは特に限定されない。例えば4価の芳香族基又は4価の脂肪族基であることができる。芳香族基は単環又は多環であることができ、そして好ましくは、下記:
【0024】
【化7】

[式中、各Yは独立してH、ハロ基、−CF3又はC1−C4アルキルを示し、そしてBは−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−C(CH32−又は−C(CF32−である]よりなる群から選択される。より好ましくは、芳香族基は下記:
【0025】
【化8】

よりなる群から選択される。
【0026】
更に、4価の脂肪族基は下記:
【0027】
【化9】

よりなる群から選択される。
【0028】
本発明の式(1)のアミン酸エステルオリゴマーの2価の有機性基Pは特に限定されない。一般的に2価の有機性基Pは芳香族基であり、そして好ましくは、独立して下記:
【0029】
【化10】

[式中、各Xは独立してH、ハロ基、C1−C4アルキル又はC1−C4パーフルオロアルキルを示し;Aは−O−、−S−、−CO−、−CH2−、−OC(O)−又は−CONH−である]を示す。より好ましくは、各2価の有機性基Pは独立して下記:
【0030】
【化11】

を示す。1つの実施形態において、2価の有機性基Pは下記:
【0031】
【化12】

である。
【0032】
2価の有機性基Pはまた、非芳香族基、例えば、下記:
【0033】
【化13】

[式中、Xは上述した意味を有し、そして各w及びzは独立して1〜3の整数を示す]であることができる。好ましくは、2価の有機性基Pは下記:
【0034】
【化14】

である。
【0035】
本発明の発明者等は、ポリイミドの製造のための従来のポリ(アミン酸)前駆体とは異なり、式(1)のアミン酸エステルオリゴマーが低減された酸性基を有し、このため、より低い吸湿性を有することを発見した。式(1)のアミン酸エステルオリゴマーが水分を吸収しても、より安定であり、且つ、室温で保存することができる。即ち前駆体を低温(例えば−20℃)で保存することは不必要である。
【0036】
本発明のアミン酸エステルオリゴマーは限定しないが例えば以下の操作法:
(a)式(3)の2無水物をヒドロキシルを有する化合物(R−OH)と反応させることにより式(4)の化合物を形成すること、及び、
【0037】
【化15】

(b)工程(a)で得られた生成物に式H2N−Pn1−NH2のジアミン化合物を添加することにより、式(5)(nl=1の場合)のアミン酸エステルオリゴマーを形成すること、
【0038】
【化16】

(c)場合により、反応を実施するために光重合性基(R*)を担持する単量体、例えばエポキシアクリレートを添加することにより、式(6)(nl=1の場合)のアミン酸エステルオリゴマーを形成すること、
【0039】
【化17】

に従って重合することができ、ここでR、G、P及びmは上述の通りに定義され;nlは1〜100の整数であり、そして好ましくは1であり;そしてa、b及びfの各々は独立して0〜100の範囲の整数を示し、そしてa+b□100である。
【0040】
式(1)のアミン酸エステルオリゴマーを製造するための上記方法において、工程(a)で使用する2無水物は脂肪族又は芳香族であることができ、好ましくは芳香族である。例示されるものは(限定しないが)2無水ピロメリット酸(PMDA)、無水4,4’−ビフタル酸(BPDA)、無水4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸(6FDA)、2無水1−(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸(P3FDA)、無水3,3’,4,4’−オキシジフタル酸(ODPA)、2無水1,4−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸(P6FDA)、2無水1−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5,6−ジカルボン酸、2無水1−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−6,7−ジカルボン酸、2無水1−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)−3−メチルインダン−5,6−ジカルボン酸、2無水1−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)−3−メチルインダン−6,7−ジカルボン酸、2無水2,3,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、2無水1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2無水2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2無水2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2無水2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−2,4,5,8−テトラカルボン酸、2無水フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸、2無水3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2無水1,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2無水3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2無水2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、無水4,4’−イソプロピリデンジフタル酸、無水3,3’−イソプロピリデンジフタル酸、無水4,4’−オキシジフタル酸、無水4,4’−スルホニルジフタル酸、無水3,3’−オキシジフタル酸、無水4,4’−メチレンジフタル酸、無水4,4’−チオジフタル酸、無水4,4’−エチリデンジフタル酸、2無水2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2無水1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸、2無水1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2無水ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、2無水ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸及びこれらの組み合わせを含む。
【0041】
好ましくは、工程(a)において使用される芳香族2無水物は2無水ピロメリット酸(PMDA)、無水4,4’−ビフタル酸(BPDA)、無水4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸(6FDA)、2無水1−(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸(P3FDA)、2無水1,4−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸(P6FDA)、2無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)、無水3,3’,4,4’−オキシジフタル酸(ODPA)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。1つの実施形態においては、2無水ピロメリット酸(PMDA)を使用する。
【0042】
式(1)のアミン酸エステルオリゴマーを製造するための本発明の工程において有用なヒドロキシルを有する化合物はアルコール、例えばモノオール、ジオール、又はポリオール、好ましくはモノオールであることができる。本発明において有用なモノオールは特に限定されないが、鎖状炭化水素アルコール、アリール鎖状炭化水素アルコール又はアリールアルコールの何れかであることができる。モノオールは(限定しないが)炭素原子1〜14個を有する直鎖又は分岐アルキルアルコールであることができる。例えば、アルキルアルコールは下記:
【0043】
【化18】

[式中、nは1〜10の整数である]であることができる。この場合、炭素原子1〜14個を有する直鎖又は分岐アルキルアルコールは(限定しないが)メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−メチルプロパノール、2−メチルプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ネオブタノール、1−メチルブタノール、2−メチルブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール及びオクタノールを含む。
【0044】
本発明の工程において有用なヒドロキシルを有する化合物はまた、エチレン性不飽和基などの光重合性基を担持することができる。好ましくは、化合物は下記式(7):
【0045】
【化19】

[式中、R1はフェニレン、直鎖又は分岐のC1−C8アルキレン、直鎖又は分岐のC2−C8アルケニレン、C3−C8シクロアルキレン又は直鎖又は分岐のC1−C8ヒドロキシアルキレンであり;そしてR2はH又はC1−C4アルキルである]を有する。好ましくは、式(7)の化合物は2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアクリレート及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。
【0046】
式(1)のアミン酸エステルオリゴマーを製造するための上記方法においては、工程(b)で使用するジアミンは特に限定されないが、通常は芳香族ジアミンから選択される。本発明の工程において有用な芳香族ジアミンは当業者に良く知られている。例えば以下の群:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、p−フェニレンジアミン(pPDA)、ジメチルジベンジリデン(DMDB)、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンジリジン(TFMB)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(oTLD)、4,4’−オクタフルオロベンジジン(OFB)、テトラフルオロフェニレンジアミン(TFPD)、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン(TCB)、3,3’−ジクロロベンジジン(DCB)、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−オキソ−ビス(3−トリフルオロメチル)アニリン、3,5−ジアミノベンゾトリフルロリド、テトラフルオロフェニレンジアミン、テトラフルオロ−m−フェニレンジアミン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ−2−テトラブチルベンゼン(BATB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(DBAPB)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(BAPPH)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ノルボラン(BAPN)、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)、3,3’−ジクロロベンジジン(DCB)、3,3’−スルホニルジアニリン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド、N−(ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、N−(ビス(4−アミノフェニル))−N−フェニルアミン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−メトキシアニリン)、5,5’−メチレンビス(2−アミノフェノール)、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−オキシビス(2−メトキシアニリン)、4,4’−オキシビス(2−クロロアニリン)、2,2’−ビス(4−アミノフェノール)、5,5’−オキシビス(2−アミノフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチルアニリン)、4,4’−チオビス(2−メトキシアニリン)、4,4’−チオビス(2−クロロアニリン)、4,4’−スルホニルビス(2−メチルアニリン)、4,4’−スルホニルビス(2−エトキシアニリン)、4,4’−スルホニルビス(2−クロロアニリン)、5,5’−スルホニルビス(2−アミノフェノール)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノフェニル、m−フェニレンジアミン、4,4−メチレンジアニリン(MDA)、4,4’−チオジアニリン、4,4’−スルホニルジアニリン、4,4’−イソプロピリデンジアニリン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジカルボキシベンジジン、2,4−トリルジアミン、2,5−トリルジアミン、2,6−トリルジアミン、m−キシリルジアミン、2,4−ジアミノ−5−クロロトルエン、2,4−ジアミノ−6−クロロトルエン及びこれらの組み合わせから選択される芳香族ジアミンを本発明のアミン酸エステルオリゴマーの製造に使用できる。好ましくは、ジアミンは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、p−フェニレンジアミン(pPDA),ジメチルジベンジリデン(DMDB)、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンジリジン(TFMB)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(oTLD)、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)及びこれらの組み合わせから選択される。
【0047】
好ましくは、工程(b)で使用するジアミンは下記:
【0048】
【化20】

よりなる群から選択される。
【0049】
上述した通り、光重合性基を担持した単量体を随意的に工程(c)に添加することによりアミン酸エステルオリゴマーに光重合性基を付加させることができる。特に、光重合性基を有する単量体を添加しない場合、式(1)のアミン酸エステルオリゴマーのRxはHを示す。光重合性基を有する単量体を添加する場合、式(1)のアミン酸エステルオリゴマーのRxは光重合性基を示す。Rxが光重合性基である場合、分子間の化学結合はポリイミドを合成するためのその後の工程の経過中に交差結合を形成する。
【0050】
本発明は更に下記式(1):
【0051】
【化21】

のアミン酸エステルオリゴマー及び式H2N−Pn1−NH2のジアミン化合物を含むポリイミドのための前駆体組成物を提供する。式(1)のアミン酸エステルオリゴマーのジアミン化合物に対する総モル比は約0.8:1〜約1.2:1の範囲である。R、Rx、G、P、m及びn1は上記の定義した意味を有する。上述したジアミンは特に限定されないが、単量体、オリゴマー又は重合体、好ましくは単量体であることができる。ジアミン化合物は下記:
【0052】
【化22】

よりなる群から選択される。
【0053】
本発明の組成物において、アミン酸エステルオリゴマーのジアミン化合物に対する総モル比は、約0.9:1〜約1.1:1の範囲であることが好ましい。式(1)のアミン酸エステルオリゴマーは上述した工程を用いて製造できる。
【0054】
本発明の組成物は更に、溶媒、好ましくは極性非プロトン性溶媒を含む。極性非プロトン性溶媒は(限定しないが)N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、キシレン及びこれらの組み合わせよりなる群から選択できる。
【0055】
本発明の組成物において、全前駆体組成物の総重量に基づき、アミン酸エステルオリゴマーの量は約15%〜約55%、好ましくは約30%〜約40%であり;ジアミン化合物の量は約0.1%〜約25%、好ましくは約0.2%〜約20%であり、そして溶媒の量は約20%〜約80%、好ましくは約45%〜約75%である。
【0056】
本発明の組成物は随意的に、当業者に知られた何れかの添加物、例えば光重合開始剤、シランカップリング剤、レベリング剤、安定化剤、触媒及び/又は消泡剤を含むことができる。
【0057】
本発明に適する光重合開始剤は特に限定されないが、ベンゾフェノン、ベンゾイン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、N−フェニルグリシン、9−フェニルアクリジン、ベンジルジメチルケタール、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルケトン、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体またはこれらの組み合わせよりなる群から選択することができ、好ましくはベンゾフェノンである。特に本発明の前駆体組成物の総重量に基づき、光重合開始剤の量は約0.01〜約20重量%、好ましくは約0.1〜約5重量%の範囲である。
【0058】
一般的なシランカップリング剤は(限定しないが)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される。
【0059】
本発明はまたポリイミドを提供し、これは式(1)のアミン酸エステルオリゴマー及び式H2N−Pn1−NH2
【0060】
【化23】

[式中、R、Rx、G、P、m及びn1は上記の定義した意味を有する]のジアミン化合物の重合により製造される。式(1)のアミン酸エステルオリゴマーのジアミン化合物に対する総モル比は、約0.8:1〜約1.2:1、好ましくは約0.9:1〜約1.1:1である。上述したジアミン化合物は特に限定されないが、単量体、オリゴマー又は重合体、好ましくは単量体であることができる。
【0061】
本発明のポリアミドの重合のための工程は(限定しないが)下記:
【0062】
【化24】

に示すスキームに従って実施できる。
【0063】
従来技術において使用されているポリイミドの合成において、前駆体としてより高分子量のポリ(アミン酸)を合成することが必要である。しかしながら、過度に高い分子量及びそれにより生じる高粘度のために、操作性が不良になり、レベリングの問題がコーティング中に生じやすくなる。更に、ポリ(アミン酸)が過度に高分子量であると、分子間の相互作用及び前駆体のポリイミド化中の分子鎖の短縮化によって、極端な内部応力が生じる。極端な内部応力はコーティングされた基盤を屈曲及び変形させてしまう。また、従来技術のポリイミド合成によれば、重合を介して形成されたポリ(アミン酸)の固体含有量は、約10%〜約30%間の収率を与えるのみであり、そしてこのため、環化後の容量収縮比が高値となる。その結果、生成物の所望の厚みを達成するためにはコーティング操作を多数回反復する必要が生じ、処理の困難さが増強される。
【発明の効果】
【0064】
本発明のポリイミドはアミン酸エステルオリゴマー及びジアミン化合物の重合により製造され、エステル末端基(−C(O)OR)及びカルボキシル末端基(−C(O)OH)が中等度の安定状態となっており、このため、室温でジアミン化合物と反応しないという特徴を有する。また、アミン酸エステルオリゴマーは低い分子量を有するため、その操作性は良好であり、コーティング中にレベリング作用を維持できる。後硬化中、温度が100℃を超えた後、(−C(O)OR)及び(−C(O)OH)末端基をジアミン化合物により還元して無水物とし、次に反応を行ってアミン酸エステルオリゴマーを形成する。その後、オリゴマーを更に重合して後の縮合のためにより高分子量の分子を形成し、これにより、優れた熱的特性、機械的特性及び引っ張り特性を有するポリイミドが得られる。従来技術と比較して、本発明は、より高粘度の高分子量ポリ(アミン酸)ではなく、ポリイミドの製造のための前駆体としてはより低粘度のアミン酸エステルオリゴマーを利用している。従って、本発明のポリイミドはより良好なレベリング特性及び操作性をコーティング時に示すのである。
【0065】
本発明のポリイミドは更に、前駆体組成物のポリイミド化中、アミン酸エステルオリゴマーが分子環内環化した後に、分子間の重合及び環化が行われるという特徴を有する。この反応順序はポリイミド内の分子内応力を効果的に低減する。従来技術と比較して、本発明の前駆体組成物から環化したポリイミドは屈曲しない。
【0066】
本発明のポリイミドの前駆体組成物は高固体含有量であるため、使用する溶媒量を低減することによりベーキング時間を短縮化し、ベーキング温度を低下させることができる。また、形成したフィルムの乾燥も高速化され、製品の所望の厚みを達成するためのコーティングの回数も低減する。
【0067】
更に別の特徴において、ポリイミドを製造するための硬化温度が一般的に従来は300〜350℃であった。しかしながら、本発明の前駆体組成物は約200℃〜250℃の範囲の温度で硬化することができ、操作コストを更に低減する。
【0068】
更に、一部の単量体又は短鎖オリゴマーは典型的には重合に添加され、分子間の交差結合が起こるようにする。しかしながら、本発明の前駆体組成物は光重合性基を含んでいるため、硬化工程において自己交差結合ができる。従って、本発明の前駆体組成物は追加的な不飽和単量体又はオリゴマーを必要とせず、そしてこの特徴において従来技術と比較して好都合である。
【0069】
以下の実施例に示すとおり、本発明により提供されるポリイミドは、従来技術で製造されたものよりも良好な熱的特性、機械的特性及び引っ張り特性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
実施例1〜20は本発明のポリイミドのために組成物を製造するための工程及び条件を説明するものである。比較例1は従来技術により製造されたポリイミドのための組成物に関する。
【実施例1】
【0071】
2無水トリメリット酸(PMDA)2.181gをN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)200g中に溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1.161g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)18.018g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にODA2.0024g(0.01モル)を添加し、混合物を1時間攪拌した。
【0072】
[比較実施例1]
ODA20.024g(0.1モル)をNMP200gに溶解し、次に混合物を1時間攪拌しながら0℃のアイスバス中に置いた。次に無水フタル酸0.29g(0.002モル)を添加し、1時間攪拌した。次にPMDA21.59g(0.099モル)をゆっくり添加し、12時間攪拌した。
【実施例2】
【0073】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)13.01g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にODA18.018g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にODA2.0024g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例3】
【0074】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。HEA1.161g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にp−フェニレンジアミン(pPDA)9.733g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にpPDA1.0814g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例4】
【0075】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。HEMA13.01g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、反応物を50℃で2時間攪拌した。次にpPDA9.733g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にpPDA1.0814g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例5】
【0076】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。HEA1.161g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にジメチルジベンジリデン(DMDB)19.1065g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にDMDB2.123g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例6】
【0077】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。HEMA13.01g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にDMDB19.1065g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にDMDB2.123g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例7】
【0078】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。HEA1.161g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次に3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(oTLD)19.1065g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にoTLD2.123g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例8】
【0079】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。HEMA13.01g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にoTLD19.1065g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にoTLD2.123g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例9】
【0080】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。HEA1.161g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にp−ビス(トリフルオロメチル)−ベンジリジン(TFMB)28.821g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にTFMB3.202g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例10】
【0081】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。HEMA13.01g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にTFMB28.821g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にTFMB3.202g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例11】
【0082】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。メタノール0.32g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にODA18.018g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にODA2.0024g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例12】
【0083】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。イソプロパノール0.601g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にODA18.018g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にODA2.0024g(0.01モル)を添加し、混合物を1時間攪拌した。
【実施例13】
【0084】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。メタノール0.32g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にp−フェニレンジアミン(pPDA)9.377g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にpPDA1.0814g(0.01モル)を添加し、混合物を1時間攪拌した。
【実施例14】
【0085】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。イソプロパノール0.601g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にpPDA9.733g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にpPDA1.0814g(0.01モル)を添加し、混合物を1時間攪拌した。
【実施例15】
【0086】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。メタノール10.32g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にジメチルジベンジリデン(DMDB)19.1065g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にDMDB2.123g(0.01モル)を添加し、1時間攪拌した。
【実施例16】
【0087】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。イソプロパノール0.601g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にDMDB19.1065g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にDMDB2.123g(0.01モル)を添加し、混合物を1時間攪拌した。
【実施例17】
【0088】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。メタノール0.32g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次に3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(oTLD)19.1065g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にoTLD2.123g(0.01モル)を添加し、混合物を1時間攪拌した。
【実施例18】
【0089】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。イソプロパノール0.601g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にoTLD19.1065g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にoTLD2.123g(0.01モル)を添加し、混合物を1時間攪拌した。
【実施例19】
【0090】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。メタノール0.32g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にp−ビス(トリフルオロメチル)−ベンジリジン(TFMB)28.821g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にTFMB3.202g(0.01モル)を添加し、混合物を1時間攪拌した。
【実施例20】
【0091】
PMDA2.181g(0.01モル)をNMP200gに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。イソプロパノール0.601g(0.01モル)を混合物にゆっくり滴下し、50℃で2時間攪拌した。次にTFMB28.821g(0.09モル)を溶液に添加した。完全に溶解した後、PMDA18.0216g(0.09モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。最後にTFMB3.202g(0.01モル)を添加し、混合物を1時間攪拌した。
ポリイミドの物理的特性の試験
【0092】
製造したポリイミドの分子量の該当データをHT−GPC機器(Waters2010型)で試験し、表1に示した。
【0093】
【表1】

(1)分子量ピーク値
(2)多分散性
【0094】
表1のデータから、本発明はより低い多分散性を有する、即ち狭小な分子量分布及び高分子量と低分子量の間のより小さい差を有し、より良好な品質を示すポリイミドを提供することができることがわかる。
【0095】
実施例1及び比較例1の組成物を硬化させてポリイミドを得た。重合体材料をスピンコーティングによりフィルムに成型した。次にフィルムを2℃/分の加熱速度で、150℃/60分、250℃/60分、及び350℃/60分の3段階において、オーブン中でベーキングし、その後冷却した。次に物理的特性を試験した。
【0096】
その後、ユニバーサル張力機(高温屈曲試験装置、9102型、Hon−Tai Company製)によりポリイミドフィルムの機械的特性を試験した。ポリイミドフィルムを12cm×10cm×0.25mmの寸法の形状に切り出し、次にユニバーサル張力機上に置いた。試験は23℃の温度及び10mm/分の速度で実施した。実施例1及び比較例1で製造したポリイミドフィルムを別個に試験して引っ張り強度を測定した。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表2の結果から、本発明のポリイミドフィルムは優れた引っ張り強度及び伸長を示すことがわかる。
【0099】
上記の実施例は本発明の実施形態を説明し、その技術的特徴を解明することを意図しており、本発明の保護の範囲を限定するものではない。本分野における当業者が容易に達成できる如何なる変形又は等価な置き換えも本発明の請求範囲に属するものである。本発明の保護の範囲は添付する以下の請求項に基づくべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):

[式中、
各Rxは独立してH又はエチレン性不飽和基を示し;
各Gは独立して4価の有機基を示し;
各Pは独立して2価の有機基を示し;
mは0〜100の範囲の整数であり;そして、
各Rは独立して炭素原子1〜14個の直鎖又は分岐のアルキル又はエチレン性不飽和基を示す]のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項2】
エチレン性不飽和基がビニル、プロペニル、メチルプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、ビニルフェニル、プロペニルフェニル、プロペニルオキシメチル、プロペニルオキシエチル、プロペニルオキシプロピル、プロペニルオキシブチル、プロペニルオキシアミル、プロペニルオキシヘキシル、メチルプロペニルオキシメチル、メチルプロペニルオキシエチル、メチルプロペニルオキシプロピル、メチルプロペニルオキシブチル、メチルプロペニルオキシアミル及びメチルプロペニルオキシヘキシル、及び、下記式(2):

[式中、R2はH又はC1−C4アルキルであり、そしてR1はフェニレン又は直鎖又は分岐のC1−C8アルキレン、直鎖又は分岐のC2−C8アルケニレン、C3−C8シクロアルケニレン又は直鎖又は分岐のC1−C8ヒドロキシアルキレンである]の基よりなる群から選択される請求項1記載のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項3】
各Rxが独立してH、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート基(H2CC(CH3)C(O)OCH2C(OH)HCH2−)、エチルメタクリレート基(H2CC(CH3)C(O)OCH2CH2−)、エチルアクリレート基(H2CCHC(O)OCH2CH2−)、プロペニル、メチルプロペニル、n−ブテニル又はイソブテニルを示す請求項1記載のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項4】
各Rxが独立してH又は2−ヒドロキシプロピルメタクリレート基(H2CC(CH3)C(O)OCH2CH2−)を示す請求項1記載のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項5】
4価の有機基が下記:

[式中、各Yは独立してH、ハロ基、−CF3又はC1−C4アルキルを示し、Bは−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−C(CH32−又は−C(CF32−である]よりなる群から選択される請求項1記載のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項6】
4価の有機基が下記:



よりなる群から選択される請求項5記載のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項7】
2価の有機基が下記:


[式中、各Xは独立してH、ハロ基、C1−C4アルキル又はC1−C4パーフルオロアルキルを示し;Aは−O−、−S−、−CO−、−CH2−、−OC(O)−又は−CONH−であり;そして各w及びzは独立して1〜3の範囲の整数を示す]よりなる群から選択される請求項1記載のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項8】
2価の有機基が下記:

よりなる群から選択される請求項7記載のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項9】
mが5〜25の範囲の整数である請求項1記載のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項10】
Rが下記:

[式中nは0〜10の範囲の整数である]よりなる群から選択される請求項1記載のアミン酸エステルオリゴマー。
【請求項11】
下記式(1):

のアミン酸エステルオリゴマー及びジアミン化合物を含むポリイミドの前駆体組成物であって、式(1)のアミン酸エステルオリゴマーのジアミン化合物に対する総モル比が約0.8:1〜約1.2:1であり、ここでR、Rx、G、P及びmは請求項1記載の意味を有する上記組成物。
【請求項12】
式(1)のアミン酸エステルオリゴマーのジアミン化合物に対する総モル比が約0.9:1〜約1.1:1である請求項11記載の組成物。
【請求項13】
ジアミン化合物が下記:

よりなる群から選択される請求項11記載の組成物。
【請求項14】
N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、キシレン及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される溶媒を更に含む請求項11記載の組成物。
【請求項15】
ベンゾフェノン、ベンゾイン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−エタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、N−フェニルグリシン、9−フェニルアクリジン、ベンジルジメチルケタール、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルケトン、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される光重合開始剤を更に含む請求項11記載の組成物。
【請求項16】
式(1)のアミン酸エステルオリゴマー及びジアミン化合物:

を重合することにより得られるポリイミドであって、ここで式(1)のアミン酸エステルオリゴマーのジアミン化合物に対する総モル比が約0.8:1〜約1.2:1であり、R、Rx、G、P及びmは請求項1記載の意味を有する上記ポリイミド。
【請求項17】
式(1)のアミン酸エステルオリゴマーのジアミン化合物に対する総モル比が約0.9:1〜約1.1:1である請求項16記載のポリイミド。

【公開番号】特開2008−101186(P2008−101186A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125662(P2007−125662)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(599008067)長興化学工業股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】