説明

アミン酸化の抑制

1つの態様では、アミン酸化抑制剤、例えばフリーラジカル捕捉剤および/または抗酸化剤などを酸化感受性アミン、例えばアミン系触媒などに添加することで当該アミンの酸化を抑制する。次に、その抑制剤処理アミンをポリウレタン用途などの如き用途で用いることで当該ポリウレタンから放出される好ましくない酸化生成物の量を低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、2010年の1月8日付けで出願した米国特許出願連続番号61/293,388(引用することによって本明細書に組み入れられる)に対する優先権を請求するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は一般に酸化感受性アミンの中に酸化劣化生成物が生成しないようにするか或はそれの存在量を低くすること、より詳細には、酸化感受性アミンの中にホルムアルデヒドおよび/またはジメチルホルムアミドが生成しないようにするか或はそれの存在量を低くすることに関する。
【背景技術】
【0003】
アミン、例えばポリウレタン産業に有用なアミン系触媒などは経時的にか或は空気にさらされると劣化する可能性がある。そのようなアミンが劣化すると、好ましくない生成物、例えばホルムアルデヒドおよびジメチルホルムアミド(DMF)または両方が生じる。例えば、ホルムアルデヒドはアミンの酸化ジメチル化で生じる可能性があり、そしてDMFは図1に示す如き同様な酸化過程によって特定の第三級アミンから生じ得る。次に、そのようなアミンから生じたホルムアルデヒドおよび/またはDMFは何かの理由でポリウレタンもしくはポリイソシアヌレート配合物の中に取り込まれる可能性があり、従って、その配合物から生じさせる製品の中に入り込む可能性がある。そのような製品には、最終製品をほんの少し挙げるとすると、建物および電化製品用の絶縁材、ベッド、他の家具および自動車シート用の軟質フォーム、エラストマー、例えば靴底、スケート用車、医学用エラストマーなど、ウレタンおよび/または尿素コーティングおよび高弾性ウレタンプラスチック、例えば家具用フォーム、成形ドアおよび硬質絶縁パネルなどが含まれる。
【0004】
ホルムアルデヒドおよびDMFは両方とも人の健康の危険に関係している。ホルムアルデヒドは一般的な屋内汚染物でありかつ毒性を有する可能性がある。その上、それはホルムアルデヒドに敏感な人にアレルギー反応を引き起こす可能性がありかつヒト発癌物質でもあり得る。DMFは発癌物質である可能性がありかつ出生異常の原因になると考えられている。このように、ホルムアルデヒドおよびDMFへの接触を制限すべきである。Occupational Safety and Health Administration(OSHA)が決定した如きDMFおよびホルムアルデヒドに関する現在の短期接触限界、例えば15分間の接触限界はそれぞれ20ppm(parts per million)および2ppmでありかつDMFおよびホルムアルデヒドに関するより長い許容接触限界、例えば8時間の接触限界はそれぞれ10ppmおよび0.75ppmである。
【0005】
酸化感受性アミンの寿命に応じて、測定されるDMFおよびホルムアルデヒドの量は相対的に高い可能性がある。このように、酸化感受性アミンの中のDMFおよび/またはホルムアルデヒドの濃度を低くする必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの態様では、アミン酸化抑制剤、例えばフリーラジカル捕捉剤および/または抗酸化剤などを酸化感受性アミンに添加することで当該アミンの酸化を抑制する。例えば、そのようなアミン酸化抑制剤1種または2種以上を酸化感受性アミン、例えばアミン系触媒などに添加すると、好ましくないアミン酸化生成物の生成が停止するか或は生成量が低くなる可能性がある。1つの態様では、フリーラジカル捕捉剤である1−メチル−
3H−イミダゾール−2−チオン(メチマゾール)をアミン系触媒に添加することでジメチルホルムアミドおよび/またはホルムアルデヒドの生成を停止させるか或は生成量を低くすることができる。他の態様では、抗酸化剤およびアゾール(イミダゾール、置換イミダゾール、置換ベンゾチアゾールおよびベンゾオキサゾール)を用いることで同様な結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1に、アミン酸化生成物、例えばジメチルホルムアミドおよびホルムアルデヒドなどが生じる可能な経路を示す。
【図2】図2は、室温(〜25℃)の第三級アミン系触媒サンプル中のジメチルホルムアミドの増加が時間に依存することを示すグラフである。
【図3】図3は、25℃で682日間に及んでインキュベートしたサンプル中のジメチルホルムアミド生成量に対して様々な濃度のフリーラジカル捕捉剤が示した効果を示すグラフである。
【図4】図4は、40℃で39日間に及んでインキュベートしたサンプル中のジメチルホルムアミド生成量に対して様々な濃度のフリーラジカル捕捉剤が示した効果を示すグラフである。
【図5】図5は、70℃で39日間に及んでインキュベートしたサンプル中のジメチルホルムアミド生成量に対して様々な濃度のフリーラジカル捕捉剤が示した効果を示すグラフである。
【図6】図6は、25℃で368日間に及んでインキュベートしたサンプル中のジメチルホルムアミド生成量に対して2種類の濃度の数種類の抗酸化剤が示した効果を示すグラフである。
【図7】図7は、25℃で368日間に及んでインキュベートしたサンプル中のホルムアルデヒド生成量に対して数種類の抗酸化剤が示した効果を示すグラフである。
【図8】図8は、40℃で216日間に及んでインキュベートしたサンプル中のジメチルホルムアミド生成量に対して数種類の抗酸化剤が示した効果を示すグラフである。
【図9】図9は、40℃で217日間インキュベートしたサンプル中のホルムアルデヒド生成量に対して数種類の抗酸化剤が示した効果を示すグラフである。
【図10】図10は、25℃で140日間に及んでインキュベートしたサンプル中のジメチルホルムアミド生成量に対して2種類の濃度の数種類のアゾールが示した効果を示すグラフである。
【図11】図11は、25℃で140日間に及んでインキュベートしたサンプル中のホルムアルデヒド生成量に対して数種類のアゾールが示した効果を示すグラフである。
【図12】図12は、40℃で93日間に及んでインキュベートしたサンプル中のジメチルホルムアミド生成量に対して数種類のアゾールが示した効果を示すグラフである。
【詳細な説明】
【0008】
酸化は、ある種のアミン製品にとって懸念である。例えば、ウレタン用触媒が酸化を起こすと好ましくない酸化生成物が生じる可能性があり、それによって前記触媒の貯蔵寿命および利用性が低下する可能性がある。図2を参照して、未処理のウレタン用触媒であるビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(JEFFCAT(商標)ZF−20)が室温の空気の存在下で酸化させると、結果として酸化生成物であるジメチルホルムアミド(DMF)が経時的に絶えず増加する。例えば、DMFの濃度が初期濃度である14ppmから136日目の1378ppmに増加しそして369日目の2026ppmそして682日目の2350ppmに増加した。DMFは少なくともいくつかの国で禁止されていることから、それが生成すると製品の寿命および利用性が制限される可能性がある。
【0009】
本発明の1つの態様に従い、酸化感受性アミンにアミン酸化抑制剤、例えばフリーラジカル捕捉剤および/または抗酸化剤などによる処理を受けさせることで前記アミンの酸化を抑制する。その結果として、アミン酸化生成物、例えばDMFおよび/またはホルムアルデヒドなどが生成しなくなるか或は容易には生成しなくなり、それによって、その抑制剤で処理されたアミンの貯蔵寿命および利用性が向上する可能性がある。
【0010】
別の態様では、そのような抑制剤処理アミンを他の酸化感受性材料、例えばポリオール、イソシアネート、発泡剤およびこれらの組み合わせなどに添加してもよい。次に、その抑制剤処理アミン、他の酸化感受性材料またはこれらの組み合わせを用いて製品を製造することができる。一例として、そのような抑制剤処理アミンはポリウレタン製品の製造で用いられるウレタン用触媒であってもよい。そのような抑制剤処理アミンを用いると当該ウレタン用触媒中ばかりでなくウレタンフォーム製品または他のウレタン製品中のDMFおよび/またはホルムアルデヒドの量が最小限になることが確保される。
【0011】
そのような酸化感受性アミンは酸化を受け易い如何なるアミンであってもよい。例えば、そのような酸化感受性アミンはポリウレタンの製造に有用な1種以上のアミン含有触媒であってもよく、そのようなポリウレタンにはポリウレタンエラストマーおよび/またはポリイソシアヌレートが含まれる。そのような酸化感受性アミン系触媒には、第三級アミンを含有する触媒、ウレタンもしくは尿素反応に触媒作用を及ぼすアミン系触媒または両方が含まれる。典型的なアミン系触媒には、これらに限定するものでないが、第三級アミン系触媒、例えばビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(JEFFCAT(商標)ZF−20触媒)、N,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル(JEFFCAT(商標)ZF−10触媒)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジイソプロパノールアミン(JEFFCAT(商標)DPA触媒)、N,N−ジメチルエタノールアミン(JEFFCAT(商標)DMEA触媒)、トリエチレンジアミン(JEFFCAT(商標)TEDA触媒)、N,N−ジメチルエタノールアミンとトリエチレンジアミンの混合物(例えばJEFFCAT(商標)TD−20触媒)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(JEFFCAT(商標)DMCHA触媒)、ベンジルジメチルアミン(JEFFCAT(商標)BDMA触媒)、ペンタメチルジエチレントリアミン(JEFFCAT(商標)PMDETA触媒)、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン(JEFFCAT(商標)ZR−40触媒)、N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン(JEFFCAT(商標)ZR−50触媒)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジイソプロパノールアミン(JEFFCAT(商標)DPA触媒)、N’−(3−(ジメチルアミノ)プロピル−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(JEFFCAT(商標)Z−130触媒)、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノール(JEFFCAT(商標)ZR−70触媒)、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン(JEFFCAT(商標)Z−110触媒)、N−エチルモルホリン(JEFFCAT(商標)NEM触媒)、N−メチルモルホリン(JEFFCAT(商標)NMM触媒)、4−メトキシエチルモルホリン、N,N’ジメチルピペラジン(JEFFCAT(商標)
DMP触媒)、2,2’ジモルホリノジエチルエーテル(JEFFCAT(商標)DMDEE触媒)、1,3,5−トリス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−ヘキサヒドロ−s−トリアジン(JEFFCAT(商標)TR−90触媒)、1−プロパンアミン、3−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)およびこれらの組み合わせが含まれる。上述したJEFFCAT(商標)触媒は、Huntsman Petrochemical LLC(The Woodlands、Texas)から入手可能である。
【0012】
他の態様における酸化感受性アミンは、ポリエーテルアミン、エチレンアミン、アルコキシル化アミンおよび界面活性アミンの中の1種以上であってもよいが、態様をそれらに限定するものでない。適切なポリエーテルアミンには、モノアミン、例えばJEFFAMINE(商標)M−1000アミン、JEFFAMINE(商標)M−2005アミンおよびJEFFAMINE(商標)M−2070アミンなど、ジアミン、例えばJEFFAMINE(商標)D−230アミン、JEFFAMINE(商標)D−400アミンおよびJEFFAMINE(商標)D−2000アミンなど、ポリエーテルジアミン、例えばJEFFAMINE(商標)HK−511アミン、JEFFAMINE(商標)ED−600アミン、JEFFAMINE(商標)ED−900アミンおよびJEFFAMINE(商標)ED−2003アミンなど、非障害ジアミン、例えばJEFFAMINE(商標)EDR−104アミン、JEFFAMINE(商標)EDR−148アミンおよびJEFFAMINE(商標)EDR−176アミンなど、トリアミン、例えばJEFFAMINE(商標)T−403アミン、JEFFAMINE(商標)T−3000アミンおよびJEFFAMINE(商標)T−5000アミンなど、およびポリエーテルモノアミンとジアミンの混合物、例えばアミノ化トリエチレングリコール(例えばJEFFAMINE(商標)XTJ−512アミン)などが含まれ、適切なエチレンアミンには、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、アミノエチルピペラジン(AEP)、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)およびこれらの混合物が含まれ、適切なアルコキシル化アミンには、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(DGA(商標)アミン)、ジエタノールアミン(DEA)、N−メチルジエタノールアミン(MDEA)、トリエタノールアミン(TEA)などが含まれ、そして適切な界面活性アミンには、疎水性ポリエーテルモノアミン、例えばSURFONAMINE(商標)B−100アミンおよびSURFONAMINE(商標)B−200アミンなど、および親水性ポリエーテルモノアミン、例えばSURFONAMINE(商標)L−100アミン、SURFONAMINE(商標)L−200アミン、SURFONAMINE(商標)L−207アミン、SURFONAMINE(商標)L−300アミンなどが含まれる。JEFFAMINE(商標)製品、SURFONAMINE(商標)製品およびDGA(商標)製品は、Huntsman Petrochemical LLC(The Woodlands、Texas)から入手可能である。
【0013】
前記アミン酸化抑制剤は、適切な如何なる抑制剤であってもよく、例えば抗酸化剤および/またはフリーラジカル捕捉剤などであってもよい。適切なアミン酸化抑制剤には、1種以上のアミン、例えばアミン系触媒、ポリエーテルアミン、エチレンアミン、アルコキシル化アミンおよび/または界面活性アミンなどと混合可能でありかつそれらの酸化を抑制する能力を有する抑制剤が含まれるが、態様をそれらに限定するものでない。1つの態様におけるアミン酸化抑制剤は、少し挙げるとすると、1種以上のフリーラジカル捕捉剤、例えばメチマゾール、フェニルメチマゾールおよびこれらの誘導体、アロプリノール、プロピルチオウラシル、グルタミン、ジアミノベンジルアミンおよびニコチンアミドなどであってもよい。他の適切なアミン酸化抑制剤は、酸化感受性アミン、例えばアミン系触媒などと混合可能でありかつフリーラジカルが介在するDMFおよび/またはホルムアルデヒド生成を抑制する能力を有する1種以上の抗酸化剤であってもよい。そのような抗酸
化剤は、ヒンダードフェノール系、例えばブチル化ヒドロキシトルエン、Irgastab(商標)PUR 68抗酸化剤、Irganox(商標)1010抗酸化剤、Irganox(商標)1135抗酸化剤およびIrganox(商標)1076抗酸化剤など、ヒンダード脂肪族アミン、例えばTinuvin(商標)770光安定剤など、ヒンダード芳香族アミン、例えばIrgastab(商標)PUR 55抗酸化剤、Irganox(商標)5057抗酸化剤およびNaugard(商標)445抗酸化剤など、フェノール系とアミンの混合型、例えばIrganox(商標)MD 1024抗酸化剤およびIrganox(商標)565など、トリアゾールとフェノール基を有する抗酸化剤、例えばTinuvin(商標)P抗酸化剤、Tinuvin(商標)234抗酸化剤、Tinuvin(商標)327抗酸化剤およびTinuvin(商標)328抗酸化剤など、特許で守られている抗酸化剤、例えばTINUVIN(商標)866抗酸化剤など、および天然の抗酸化剤、例えばビタミンC、ビタミンEおよび/またはグルタチオンなどであってもよいが、態様をそのような典型的抗酸化剤に限定するものでない。その上、いくつかの態様におけるアミン酸化抑制剤は、1種以上のフリーラジカル抑制剤と抗酸化剤の組み合わせであってもよい。IGASTAB(商標)、IRGANOX(商標)およびTINUVIN(商標)製品はCiba Specialty Chemical Corporation(Tarrytown、New York)から入手可能であり、そしてNAUGARD(商標)製品はChemtura Corporation(Middlebury、Connecticut)から入手可能である。
【0014】
アゾール、例えば置換イミダゾール、アリールイミダゾールなどがヒドロキシル化およびN−脱メチルに対して抑制作用を示すことを見いだした。そのような抑制剤はイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、トリアゾールおよび置換トリアゾールであってもよいが、態様をそのような典型的アゾールに限定するものでない。
【0015】
前記酸化感受性アミンにアミン酸化抑制剤による処理を受けさせる時期は如何なる時期であってもよい。例えば、いくつかの態様では、当該アミン酸化抑制剤を当該酸化感受性アミンに使用直前または空気にさらされる可能性のある他のいずれかの時点で添加してもよい。別法として、当該アミン酸化抑制剤を製造時の当該酸化感受性アミンに貯蔵の目的で添加することも可能である。特別な態様では、当該抑制剤処理アミンを貯蔵する容器に不活性ガスを詰め込む。好適な態様では、安定性をより良好にする目的で、抑制剤処理アミンを保持する容器の塔頂空間部に窒素を詰め込んでもよい。そのような例は非限定例であり、アミン酸化抑制剤を酸化感受性アミンに添加する時期および様式は如何なる時期および如何なる様式であってもよい。
【0016】
酸化感受性アミンに添加するアミン酸化抑制剤の量は有効な如何なる量であってもよい。例えば、いくつかの態様では、当該酸化感受性アミンにアミン酸化抑制剤を5ppm、10ppm、100ppm、250ppm、1000ppmまたは5000ppmおよびそれらの間のあらゆる量で用いた処理を受けさせてもよい。他の態様では、アミン酸化抑制剤を酸化感受性アミンに添加することで混合物中のアミン酸化抑制剤の量が総混合物の0.5から10重量%である混合物を生じさせてもよい。1つの態様では、上述した混合物を所望の抑制剤濃度レベルに合わせることを可能にする濃縮物として用いることも可能である。例えば、そのような濃縮混合物を未処理の酸化感受性アミンと所望のアミン酸化抑制剤濃度になるように混合してもよい。また、そのような例も非限定例であり、個々の酸化感受性アミンの処理で用いるアミン酸化抑制剤の量は、アミンの種類、推定貯蔵時間および用途などの如き要因に応じて調整可能である。当該アミン酸化抑制剤が効果を示す温度および圧力は様々な要因に依存する可能性があり、そのような要因には、当該酸化感受性アミンの処理で用いるアミン酸化抑制剤の量が含まれる。一般的には、アミン酸化抑制剤は0℃から150℃の温度および200psi(pounds per squar
e inch)以下の圧力で効果を示す可能性がある。いくつかの態様におけるアミン酸化抑制剤は特に25℃、40℃または70℃およびこれらの間の範囲で効果を示す。
【0017】
別の態様では、抑制剤処理アミン(例えば、適切なアミン酸化抑制剤で処理しておいたアミン)を他の酸化感受性材料に添加してもよい。特別な態様では、抑制剤処理アミンをポリウレタン製品、ポリイソシアヌレート製品または他のいずれかのポリウレタン製品を製造するための1種以上の成分に添加してもよい。一般に、ポリウレタン製品(またはポリイソシアヌレート製品)の製造はイソシアネート成分とポリオール成分を反応させることで実施可能である。1種以上の抑制剤処理アミン、例えばアミン系触媒などをイソシアネート成分、ポリオール成分または両方に添加してもよい。追加または別法として、そのような抑制剤処理アミンを1種以上のサブコンポーネント、例えば発泡剤、添加剤または助剤などに添加してもよく、その後、それらをポリオール成分および/またはイソシアネート成分に添加してもよい。このように、結果としてもたらされたポリウレタン/ポリイソシアヌレート製品が含有する酸化生成物、例えばDMF、ホルムアルデヒドまたは両方などの量が低下する可能性があり、このことは、そのような製品から放出される可能性のある酸化生成物の量が少なくなり得ることを意味する。
【0018】
前記イソシアネート成分は、ポリウレタンおよび/またはポリイソシアヌレートの分野で公知の如何なるイソシアネートまたはイソシアネートの組み合わせであってもよい。そのようなイソシアネートの例には、これらに限定するものでないが、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、官能性がより高い(3以上)のメチレンジフェニルジイソシアネート(ポリMDIまたはpMDI)およびそのようなイソシアネートのプレポリマー/準プレポリマーが含まれる。いくつかの態様では、抑制剤処理アミン、例えば抑制剤処理アミン系触媒などをイソシアネート成分に添加してもよい。特別な態様における抑制剤処理アミン系触媒は、抑制剤で処理されたウレタン用触媒である。
【0019】
前記ポリオール成分には、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートの分野で用いるに有用な全てのポリオールまたはポリオールの組み合わせが含まれる。例えば、そのようなポリオール成分には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、他の全てのポリオールおよびポリオールの組み合わせが含まれ得る。その上、そのようなポリオールは1、2、3またはそれ以上の官能性の開始剤から生じさせたポリオールであってもよく、それらにはアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドおよび/またはそれらまたは他のオキサイドの任意組み合わせが含まれ得る。ポリエーテルポリオールの例には、ポリオキシプロピレンおよび/またはポリオキシエチレンポリオールが含まれ、そしてポリエステルポリオールの例には、芳香族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリエステルポリオールが含まれる。特に有用なポリオールには、プロピレングリコールを開始剤として用いたポリオール、例えばJEFFOL(商標)PPG−2000ポリオール、プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド共重合体、例えばJEFFOL(商標)G−31−28ポリオールおよびJEFFOL(商標)PPG−3706ポリオールなど、ポリエーテルポリオール、例えばVORANOL(商標)4701ポリオールおよびVORANOL(商標)4702ポリオールなどが含まれる。JEFFOL(商標)製品はHuntsman International
LLC(The Woodlands、Texas)から入手可能であり、VORANOL(商標)製品はDow Chemical Company(Midland、Michigan)から入手可能である。
【0020】
また、ポリオール成分には、1種以上の低分子量鎖延長剤、架橋剤、または鎖延長剤と架橋剤の組み合わせも含まれ得る。鎖延長剤には、アルカンジオール、ジアルキレングリコール、ポリアルキレンポリオールおよびこれらの組み合わせが含まれ得、そして架橋剤
には、エタンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールおよびこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0021】
いくつかの態様では、抑制剤処理アミン、例えば抑制剤で処理したアミン系触媒などを当該組成物の1種以上のポリオールに添加してもよい。特別な態様における抑制剤処理アミン系触媒は、抑制剤で処理したウレタン用触媒である。
【0022】
いくつかの態様では、発泡剤をイソシアネート成分もしくはポリオール成分に添加してもよい。その上、そのような発泡剤には抑制剤処理アミンが添加されていてもよいか或は添加されていなくてもよい。そのような発泡剤は、ポリウレタンおよび/またはポリイソシアヌレートの技術分野で有用ないずれかの発泡剤または発泡剤の組み合わせであってもよい。一般に、そのような発泡剤には、水、物理的発泡剤および化学的発泡剤が含まれ、それらを単独または組み合わせて用いてもよい。典型的な発泡剤には、これらに限定するものでないが、水、ペンタン、シクロペンタン、ブタン、FORANE(商標)141B剤[Arkema Inc.(Philadelphia、PA)から入手可能]およびHFC−245FA[Honeywell International Inc.(Morristown、NJ)から入手可能]が含まれる。
【0023】
前記ポリオール成分には典型的に添加剤および/または助剤が入っている可能性がある。典型的な添加剤および/または助剤には、膜安定剤、気泡調節剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、顔料、界面活性剤などまたはこれらの任意組み合わせが含まれる。ある添加剤または助剤が酸化感受性アミンである度合で、そのような添加剤もしくは助剤にアミン酸化抑制剤を添加してもよい。
【0024】
前記ポリウレタンもしくはポリイソシアヌレートの製造はいずれかの技術を用いて実施可能である。例えば、ポリウレタンもしくはポリイソシアヌレートの製造はポリオール成分およびイソシアネート成分の成分を個別に混合することで実施可能であるが、それらの成分のいずれかまたは両方に抑制剤処理触媒および/または他の抑制剤処理アミンを入れておいてもよい。前記2種類の成分を個別に混合した後、それらを当該技術分野で公知のいずれかの手段で混合してもよい。例えば、ポリオール成分とイソシアネート成分の混合を鋳込み品または鋳型を用いないで作られる製品の製造が容易になるように行ってもよい。
【0025】
しかしながら、態様をポリウレタンおよび/またはポリイソシアヌレートに限定するものでなく、当該抑制剤処理アミンをフリーラジカルが介在する酸化が起こる可能性があるいずれかの用途で用いてもよい。その上、当該抑制剤処理アミンを別の酸化感受性材料に添加する時期にも制限はないが、しかしながら、当該抑制剤処理アミンを貯蔵前または使用直前の他の酸化感受性材料に添加するのが有益であり得る。同様に、抑制剤が有効である温度の範囲も幅広い可能性があり、例えば0℃から150℃の温度であり得そして圧力も200psi以下であってもよい。
【実施例】
【0026】
本明細書に記述した態様を更に例示する目的で以下の非限定実施例を示す。しかしながら、本実施例は全てを含めることを意図したものでなくかつ本明細書に記述する態様の範囲を限定することを意図したものでない。
【0027】
実施例1
実施例1a−1cでは、第三級アミンをメチマゾール(MM)と混合したサンプル中のDMFおよびホルムアルデヒド濃度を追跡する。一般的には、各々にメチマゾール(アミ
ン酸化抑制剤)が10、100、250および1000ppm入っている50mlの溶液の調製をビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル[Huntsman Petrochemical LLC(The Woodlands、Texas)から入手可能なJEFFCAT(商標)ZF−20アミン系触媒]を用いて実施した。メチマゾールはSigma−Aldrich Corp.(St.Louis、MO)から入手可能である。
【0028】
前記調製液の各々から8mlの分量を取り出して相当する20mlの瓶の中に注ぎ込み、そして未処理のJEFFCAT(商標)ZF−20アミン系触媒を8mlの分量で取り出して別の20mlの瓶の中に注ぎ込んだ。このように、20mlの瓶5個を1組にし、1組当たり少なくとも1個のサンプルにメチマゾールを0、10、100、250または1000ppm入れた。組にしたサンプルを25℃、40℃または70℃でインキュベートした。定期的に各サンプルの一部(約0.4ml)を取り出して、そのサンプル中に生じたDMFおよび/またはホルムアルデヒドの濃度を測定した。DMFおよびホルムアルデヒド濃度の測定を紫外線検出器が備わっている高性能液クロを用いて実施した。
【0029】
実施例1a
この実施例では、室温(約25℃)で680日間に及んでインキュベートした1組のサンプル中のDMFおよびホルムアルデヒド濃度を追跡した。サンプル1a(Neat ZF−20)はメチマゾールが入っていない対照サンプルであり、そしてサンプル2a、3a、4aおよび5aは、メチマゾールをそれぞれ10、100、250および1000ppm入れた試験サンプルであった。インキュベーションに先立って、DMFおよびホルムアルデヒドのベースライン濃度を測定した。その後、当該組の各サンプルが示すDMFおよびホルムアルデヒド濃度を定期的に測定した。
【0030】
図3を参照して、サンプル1a−5aがいろいろな時間点で示したDMF濃度(ppm)を示す。インキュベーションを約1日(18時間)実施した後のサンプルはDMF蓄積量に関して評価できるほどの差を示さなかった。しかしながら、その後、サンプル1a中のDMF濃度は試験サンプルに比べて上昇し始め、そして12日目以降では、対照サンプル1aと試験サンプルの間のDMF濃度の差が極めて劇的になった。このことは特にサンプル1aとサンプル4aおよび5aの間のDMF濃度の差に当てはまる。
【0031】
以下の表1を参照して、サンプル1a、4aおよび5aが示したDMF濃度(ppmで表す)を示す。これらのサンプルが示した初期DMF含有量は14ppmであった。しかしながら、インキュベーションを25℃で39日間実施すると、サンプル1a中のDMF濃度が812ppmにまで上昇したが、サンプル4aおよび5aが示したDMF濃度はそれぞれ100ppm未満および25ppm未満であった。このように、その時点で試験サンプル4aおよび5a中の生成DMF量は対照サンプル1aのそれに比べてずっと少なかった。同様に、インキュベーションを136日間行うとサンプル1a中のDMF含有量が1378ppm(初期濃度の約100倍)にまで上昇したが、サンプル4aおよび5a中のそれはそれぞれ337ppmおよび35ppmのみであった。同様に、232日後の対照サンプル1aが示したDMF含有量が1940ppmであるのに比較して、サンプル4aおよび5aのDMF含有量はそれぞれ588ppmおよび184ppmであった。このように、ほぼ室温である25℃において、メチマゾールを入れたサンプル、特にメチマゾールを250および1000ppm入れたサンプルが示したDMF濃度の方がメチマゾールが入っていない対照サンプルのそれに比べて低かった。表1および図3を参照して、そのような傾向は682日に及ぶあらゆる時間点で継続して存在していた。しかしながら、サンプル5aが示したDMF濃度は521日目にサンプル4aのそれに近づくことを確認し、そして最終的に597日目および682日目の時間点の時にはサンプル5aが示したDMF濃度の方がサンプル4aのそれに比べて高くなった。
【0032】
【表1】

【0033】
以下の表2を参照して、フリーラジカル捕捉剤であるメチマゾールはまたサンプル4aおよび5a中のホルムアルデヒド蓄積も防止することも観察した(対照サンプル1aに比較して)。例えば、サンプル1a、4aおよび5a中の初期ホルムアルデヒド含有量は50ppmであった。しかしながら、インキュベーションを25℃で521日間実施すると、対照サンプル1aのホルムアルデヒド量は772ppmであったが、試験サンプル4aおよび5aのホルムアルデヒド量はそれぞれ538ppmおよび580ppmであった。インキュベーションを25℃で682日間実施すると、サンプル4aが示したホルムアルデヒド濃度が548ppmにまで高くなったが、それでも、対照サンプルが示したホルムアルデヒド濃度である851ppmよりもずっと低かった。しかしながら、その時点のサンプル5aが示したホルムアルデヒド濃度である782ppmは対照サンプルが示したそれに近かった。
【0034】
【表2】

【0035】
また、25℃で136日、232日、368日および682日間インキュベートした後のサンプル中に残存するメチマゾールの量も測定した。DMFと同様に、メチマゾールの測定も紫外線検出器が備わっている高性能液クロを用いて実施した。表3を参照して、最初にメチマゾールをそれぞれ10および100ppm入れておいたサンプル2aおよび3aは両方とも136日後にメチマゾールの量がゼロになった。対照的に、サンプル4aおよび5aにはメチマゾールが136日後にまだそれぞれ30ppmおよび760ppm残存していた。サンプル4aおよび5aから更にメチマゾールが失われたことを232日後に観察した。サンプル5aに入っていた1000ppmのメチマゾールから682日後に残った量は70ppmのみであった。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例1b
この実施例では、1組のサンプルを40℃のオーブンに入れて全体で39日間インキュベートした後にDMFの存在を分析した。サンプル1bはメチマゾールが入っていない対照サンプルであり、そしてサンプル2b、3b、4bおよび5bはメチマゾールをそれぞれ10、100、250および1000ppm入れた試験サンプルであった。
【0038】
図4を参照して、サンプル1b−5b中のDMF濃度を示す。対照サンプル1aの場合と同様に、対照サンプル1bも39日間に渡って一定したDMF濃度上昇を示した。対照的に、サンプル2b−5bが経時的に示したDMF生成量は対照1bのそれに比べて低かった。40℃において最も有効なメチマゾール濃度は1000ppmであった。興味の持たれることに、メチマゾールを250ppm入れたサンプル4bがインキュベーションを40℃で18日またはそれ以上行った時に示した効果はメチマゾールを100ppm入れたサンプル3bほどではないように見えた。
【0039】
実施例1c
この実施例では、1組の触媒サンプルを70℃のオーブンに入れて全体で39日間インキュベートした後にDMFの存在を分析した。サンプル1cはメチマゾールが入っていない対照触媒サンプルであり、そして触媒サンプル2c、3c、4cおよび5cは、アミン系触媒に加えてメチマゾールをそれぞれ10、100、250および1000ppm入れた試験触媒サンプルであった。
【0040】
図5を参照して、触媒サンプル1c−5c中のDMF濃度を示す。他の対照サンプルの場合と同様に、対照サンプル1cも39日間のインキュベーション期間全体に渡って一定したDMF生成量上昇を示した。サンプル2cおよび3c中のメチマゾールはそのような温度でDMFの生成に影響を与えなかった。実際、メチマゾールを100ppm入れたサンプル3c中に生じたDMF量はほとんどの時間点で対照(1c)のそれよりも高かった。しかしながら、サンプル4c(250ppmのメチマゾール)中に生成したDMFの量は一般に様々な時間点で対照サンプルのそれよりも低かった。他の温度の場合と同様に、インキュベーション期間全体に渡って対照1cと比較したDMF生成量低下度合はメチマゾールを1000ppm入れたサンプル(5c)が最大であることが分かった。
【0041】
実施例1bおよび1cに関して得たデータの不確かさの度合の方が高かったことを注目すべきであり、それは、DMFが蒸発でいくらか失われたことによるものであると考えた。蒸発による損失の測定をサンプルをオーブンに入れる前のサンプルの重量およびそれをオーブンから取り出して冷却した後の重量を計ることで実施した。蒸発による典型的な損
失量は40℃および70℃のそれぞれで0.2%および0.4%であることが分かった。
【0042】
実施例2
この実施例では、軟質フォームから放出されるアルデヒドの量を測定した。一般的には、下記の同じ処方を用いて対照フォームおよび試験フォームを作成した:
【0043】
【表4】

【0044】
ここで、対照フォームで用いる触媒にはメチマゾールを入れず、そして試験フォームで用いる触媒にはメチマゾールを1000ppm入れた。この上の配合に入れたJEFFCAT(商標)ZF−10触媒およびJEFFCAT(商標)DPA触媒は第三級アミンであり、反応性触媒として働く。それらはHuntsman Petrochemical
LLC(The Woodlands、Texas)から入手可能である。
【0045】
フォーム配合で用いる前の試験フォーム用触媒の調製では、JEFFCAT(商標)ZF−10触媒およびthe JEFFCAT(商標)DPA触媒の各々にメチマゾールを触媒当たりのメチマゾールの量が1000ppmになるに充分な量で加えることで調製を実施した。メチマゾールを加える前のJEFFCAT(商標)ZF−10触媒中のアルデヒドおよびケトンの濃度は下記の通りであった:ホルムアルデヒド:46ppm、アセトアルデヒド:41ppm、アセトン:0.1ppm、プロピオンアルデヒド:1.1ppmおよびブチルアルデヒド:0ppm。JEFFCAT(商標)DPA触媒に関する相当する濃度は下記の通りであった:ホルムアルデヒド:12ppm、アセトアルデヒド:9.3ppm、アセトン:6.0ppm、プロピオンアルデヒド:22ppmおよびブチルアルデヒド:0ppm。対照フォーム用触媒は、試験フォームのそれと同じ触媒バッチから得た触媒であるが、それにはフリーラジカル捕捉剤を全く添加しなかった。
【0046】
フォームの製造を一般的にはポリオール、水、個々の触媒、シリコーン系界面活性剤および安定剤を混合用カップ内で24秒間混合することを通して実施した。その後、そのポリオール混合物にイソシアネートを加えた後、それを6秒間撹拌し、そして65cm x
60cm x 10cmのブロック鋳型の中に注ぎ込んだ。そのフォームを60℃で3分間硬化させた。
【0047】
次に、そのフォームブロックにアルデヒド放出量に関する試験をASTM D−5116−06と同様な様式で受けさせた。この場合、Voetsch Industrietechnik(ドイツ)のモデルVCE 1000装置を環境チャンバ試験用として用いた。そのチャンバの大きさは1000リットルであった。サンプルの大きさは65cm
x 60cm x 10cmのフォームブロックの一片であった。前記チャンバの温度を65℃に維持しかつ湿度を50%に維持した。ゼロ次空気交換速度を400L/時にした。フォームから出て来る揮発性アルデヒドをサンプリング用ポンプを用いて2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)被覆シリカゲルカートリッジに通して排気流出口に5時間引き込んだ。サンプルを集めた後、5mlのアセトニトリルを用いて各DNPHカートリッジからアルデヒドを溶離させて、HPLC−UV検出器で測定した。
【0048】
以下の表5を参照して、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドおよびブチルアルデヒドの存在を対照および試験フォームサンプルの両方に関して評価した。対照フォームに比較して、試験フォーム中の各ガスの濃度の方が低かった。このように、また、フリーラジカル捕捉剤を触媒サンプルに添加することでもそのような触媒から作られたフォームに対して有益な効果が得られる。
【0049】
【表5】

【0050】
実施例3
実施例3a−3bでは、第三級アミンであるJEFFCAT(商標)ZF−20を抗酸化剤と混合したサンプル中のDMFおよびホルムアルデヒド濃度を追跡した。一般的には、各々に抗酸化剤が200ppmおよび1000ppm入っている25mlの溶液の調製をJEFFCAT(商標)ZF−20アミン系触媒を用いて実施した。未処理のJEFFCAT(商標)ZF−20(Neat ZF−20)を対照サンプルとして用いた。抗酸化剤として、Irganox(商標)1010(Irg 1010)、Irganox(商標)MD 1024(MD 1024)、TINUVIN(商標)866(Tin 866)、Tinuvin(商標)328(Tin 328)およびTinuvin(商標)770(Tin 770)に試験を受けさせた。それらはSigma−Aldrich Corp.(St.Louis、MO)から入手可能であった。図6から9中では、そのような抗酸化剤を括弧内に示す省略形で表す。
【0051】
前記調製液の各々から8mlの分量を取り出して相当する20mlの瓶の中に注ぎ込み、そして未処理のJEFFCAT(商標)ZF−20アミン系触媒を8mlの分量で取り出して別の20mlの瓶の中に注ぎ込んだ。このように、各抗酸化剤毎に20mlの瓶を2個ずつ存在させ、例えばIrg 1010,200ppmおよびIrg 1010,1000ppmはIrganox(商標)1010抗酸化剤がそれぞれ200ppmおよび1000ppm入っている2種類の溶液である。このように、各組のサンプルに11個のサンプル溶液を存在させた。組にしたサンプルを25℃および40℃でインキュベートした。定期的に各サンプルの一部(約0.4ml)を取り出して、そのサンプル中に生じたDMFおよび/またはホルムアルデヒドの濃度を測定した。DMFおよびホルムアルデヒド濃度の測定を紫外線検出器が備わっている高性能液クロを用いて実施した。
【0052】
実施例3a
図6を参照して、11個のサンプル溶液を1組にして25℃でいろいろな時間点におけるDMF濃度を示す。JEFFCAT(商標)ZF−20中の初期DMF濃度は18.9ppmであった。Neat ZF−20、Tin 770,200ppmおよびTin 770,1000ppmのサンプル中のDMF濃度は4日後に他の試験サンプルよりも速い速度で上昇し始めた。その後、対照サンプルと試験サンプルの間のDMF濃度の差が極めて大きくなった。ほとんどあらゆる時間点で、Irganox(商標)MD 1024が1000ppmのサンプルが示すDMF濃度が最も低いことを観察し、それに続いてIrganox(商標)1010が1000ppmそしてIrganox(商標)1010が200ppmのサンプルが低かった。しかしながら、368日間に渡るこの試験は、2種類のTinuvin(商標)770溶液を除くあらゆる溶液に生じたDMFの量の方が対照サンプルのそれに比べて低いことを示唆している。
【0053】
図7を参照して、抗酸化剤を用いた試験を368日間実施した結果、2種類の抗酸化剤であるIrganox(商標)1010およびIrganox(商標)MD 1024は対照サンプルに比べてホルムアルデヒドの蓄積を低下させ得ることが分かった。両方の抗酸化剤とも1000ppmの時に有効でありかつIrg 1010は200ppmの時にも有効であることを確認した。
【0054】
実施例3b
図8を参照して、2番目の組のサンプルを40℃のオーブンに入れて全体で216日間インキュベートした後にDMFの存在を分析した。この場合、DMF濃度は18日間に渡って163ppm以下の比較的低いままである。その後、対照サンプルの場合と同様に、あらゆるサンプルが一定したDMF濃度上昇を示した。しかしながら、Irg 1010,1000ppmおよびMD 1024,1000ppmのサンプルが示した経時的DMF生成量の方が対照サンプルのそれに比べて低かった。
【0055】
図9を参照して、オーブンに入れて217日間インキュベートしたあらゆるサンプルのホルムアルデヒド濃度を測定した。インキュベート期間が終了した時点のJEFFCAT(商標)ZF−20中のホルムアルデヒド濃度は、アミン系触媒中のホルムアルデヒド生成速度を下げるにIrg 1010,1000ppmおよびMD 1024,1000ppmが有効であることを示していた。
【0056】
実施例4
実施例4aおよび4bでは、三級アミンであるJEFFCAT(商標)ZF−20をアゾールと混合従ってサンプル中のDMFおよびホルムアルデヒド濃度を追跡した。一般的には、各々にアゾールが200ppmおよび1000ppm入っている25mlの溶液の調製をJEFFCAT(商標)ZF−20アミン系触媒を用いて実施した。未処理のJEFFCAT(商標)ZF−20(Neat ZF−20)を対照サンプルとして用いた。下記のアゾールに試験を受けさせた:2−メルカプトイミダゾール(2−MCIZ)、2−メルカプトベンゾイミダゾール(2−MCBIZ)、2−メルカプトベンゾチアゾール(2−MCBTZ)、2−メルカプトベンゾオキサゾール(2−MCBOZ)およびイミダゾール(IMIDAZ)。それらはSigma−Aldrich Corp.(St.Louis、MO)から入手可能である。図10から12中では、そのようなアゾールを括弧内に示す省略形で表す。
【0057】
前記アゾール調製液の各々から8mlの分量を取り出して相当する20mlの瓶の中に注ぎ込み、そして未処理のJEFFCAT(商標)ZF−20アミン系触媒を8mlの分量で取り出して別の20mlの瓶の中に注ぎ込んだ。このように、各アゾール毎に2個の20ml瓶を存在させた。例えば、2−MCIZ,200ppmおよび2−MCIZ,1000ppmは2−メルカプトイミダゾールがそれぞれ200ppmおよび1000ppm入っている2種類の溶液である。このように、各組のサンプルに11個のサンプル溶液
を存在させた。組にしたサンプルを25℃および40℃でインキュベートした。定期的に各サンプルの一部(約0.4ml)を取り出して、そのサンプル中に生じたDMFおよび/またはホルムアルデヒドの濃度を測定した。DMFおよびホルムアルデヒド濃度の測定を紫外線検出器が備わっている高性能液クロを用いて実施した。
【0058】
実施例4a
図10を参照して、11個のサンプル溶液を1組にして25℃で140日間に及ぶ様々な時間点におけるDMF濃度を示す。JEFFCAT(商標)ZF−20中の初期DMF濃度は18.1ppmであった。対照サンプル(NeatZF−20)溶液に比べて、2−メルカプトイミダゾール溶液、2−メルカプトベンゾオキサゾール溶液およびイミダゾール溶液はDMF量の低下を示した。2−メルカプトベンゾイミダゾールおよび2−メルカプトベンゾチアゾールは両方ともほとんどあらゆる時間点において対照サンプルに匹敵するか或はそれに比べて高いDMF量を示した。
【0059】
図11を参照して、アゾール溶液を用いて140日間実施した試験は、ホルムアルデヒドデータが散乱していることを示唆している。しかしながら、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾールおよびイミダゾールは対照サンプルに比べていくらかの利点を示した。
【0060】
実施例4b
図12を参照して、2番目の組のサンプルを40℃のオーブンに入れて全体で93日間インキュベートした後にDMFの存在を分析した。この場合、DMF濃度はあらゆる溶液中で一定して高くなった。しかしながら、2−MCBOZ,200ppmおよびIMIDAZ,1000ppmのサンプルはあらゆる時間点で対照サンプルに比べて低いDMF量を示した。
【0061】
実施例5
実施例5では、第三級アミンであるJEFFCAT(商標)ZF−20サンプルを20mLの瓶に入れて窒素で覆った後に室温の窒素ボックス内で370日間貯蔵した。実験開始時および終了時にDMFおよびホルムアルデヒド濃度を測定した。初期DMF濃度は18.9ppmであり、そして370日後のそれは36ppmであった。相当するホルムアルデヒド量はそれぞれ60ppmおよび221ppmである。
【0062】
この上に開示した主題事項は例示であり、限定するものでないと見なされるべきであり、添付請求項に本発明の真の範囲内に入るそのような修飾形、改善形および他の態様の全部を包含させることを意図する。このように、法が許す最大度合まで、本発明の範囲は以下の請求項およびそれらの相当物の許容される最も幅広い解釈によって決定されるべきであり、この上で行った詳細な説明で制限も限定もされるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
アミン系触媒、ポリエーテルアミン、エチレンアミン、アルコキシル化アミン、アルコキシル化アミンおよび界面活性アミンの中の1つ以上から選択される酸化感受性アミン、および
フリーラジカル捕捉剤、抗酸化剤または両方から選択されるアミン酸化抑制剤、
を含有して成る組成物。
【請求項2】
前記酸化感受性アミンがビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジイソプロパノールアミン、N’−(3−(ジメチルアミノ)プロピル−N,N−ジメチル−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、4−メトキシエチルモルホリン、N,N’ジメチルピペラジン、2,2’ジモルホリノジエチルエーテル、1,3,5−トリス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1−プロパンアミン、3−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)の中の1つ以上から選択される第三級アミン系触媒である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記酸化感受性アミンがモノアミン、ジアミン、ポリエーテルジアミン、非障害ジアミンおよびトリアミンの中の1つ以上から選択されるポリエーテルアミンである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記酸化感受性アミンがエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、アミノエチルピペラジン、アミノエチルエタノールアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンおよびこれらの混合物の中の1つ以上から選択されるエチレンアミンである請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記酸化感受性アミンが2−(2−アミノエトキシ)エタノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンの中の1つ以上から選択されるアルコキシル化アミンである請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記酸化感受性アミンがポリエーテルモノアミン、疎水性モノアミンおよび親水性ポリエーテルモノアミンの中の1つ以上から選択される界面活性アミンである請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記アミン酸化抑制剤がアロプリノール、プロピルチオウラシル、グルタミン、ジアミノベンジルアミン、ニコチンアミド、メチマゾール、フェニルメチマゾールおよびメチマゾールもしくはフェニルメチマゾールの誘導体の中の1つ以上から選択されるフリーラジカル捕捉剤である請求項1−6のいずれか記載の組成物。
【請求項8】
前記アミン酸化抑制剤がメチマゾールである請求項1−6のいずれか記載の組成物。
【請求項9】
前記アミン酸化抑制剤がヒンダードフェノール系、ヒンダード脂肪族アミン、ヒンダー
ド芳香族アミン、混合フェノール系、トリアゾールとフェノール基を有する抗酸化剤および天然の抗酸化剤の中の1つ以上から選択される抗酸化剤である請求項1−6のいずれか記載の組成物。
【請求項10】
組成物に入っている前記アミン酸化抑制剤の量が5ppmから5000ppmである請求項1−9のいずれか記載の組成物。
【請求項11】
組成物に入っている前記アミン酸化抑制剤の量が組成物の0.5から10重量%である請求項1−9のいずれか記載の組成物。
【請求項12】
抑制剤処理アミンを生じさせる方法であって、
アミン系触媒、ポリエーテルアミン、エチレンアミン、アルコキシル化アミンおよび界面活性アミンの中の1つ以上から選択した酸化感受性アミンを抗酸化剤、フリーラジカル捕捉剤または両方から選択したアミン酸化抑制剤と一緒にして抑制剤処理アミンを生じさせる、
ことを含んで成る方法。
【請求項13】
更に前記抑制剤処理アミンを不活性ガスを詰め込んだ容器の中に貯蔵することも包含する請求項12記載の方法。
【請求項14】
5ppmから5000ppmの量の前記アミン酸化抑制剤を前記酸化感受性アミンと一緒にする請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記抑制剤処理アミンと前記アミン酸化抑制剤を一緒にすることで混合物中のアミン酸化抑制剤の濃度が総混合物の0.5から10重量%であるような混合物を生じさせる請求項12記載の方法。
【請求項16】
更に前記抑制剤処理アミンを0℃から150℃の温度でインキュベートすることも含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項17】
更に前記抑制剤処理アミンをイソシアネート、ポリオール、プレポリマー、準プレポリマーおよび発泡剤の中の1つ以上から選択した別の酸化感受性材料に加えることも包含する請求項12記載の方法。
【請求項18】
更に前記抑制剤処理アミンの中に生じるアミン酸化生成物の量の方が前記アミン酸化抑制剤による処理を受けさせていない同じ酸化感受性アミンのそれに比べて少ないことも包含する請求項12記載の方法。
【請求項19】
請求項1記載の組成物を用いて作られたポリウレタン製品であって、請求項1記載の組成物を用いないで作られた同じポリウレタン製品に比べて減少したアミン酸化生成物量を示すポリウレタン製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−516539(P2013−516539A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548046(P2012−548046)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062476
【国際公開番号】WO2011/084865
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(505318547)ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー (17)
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
【Fターム(参考)】