説明

アラセルタコナゾールの膣内投与のための坐剤

【課題】アラセルタコナゾールモノニトレート、コロイドシリカ、及び脂肪基剤からなる、膣内投与のためのアラセルタコナゾールモノニトレートの坐剤を提供すること。
【解決手段】100から1000mgのアラセルタコナゾールモノニトレート並びに賦形剤の混合物を含む、アラセルタコナゾールモノニトレートの膣内投与のための坐剤であって、該賦形剤の混合物が、
(i)坐剤全体のうちの0.5から5重量%の範囲のコロイドシリカ、及び
(ii)坐剤全体のうちの100重量%までの十分な範囲の脂肪基剤
を含む、上記坐剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラセルタコナゾールモノニトレート、すなわちR−(−)−1−[2−(7−クロロベンゾ[b]チオフェン−3−イル−メトキシ)−2−(2,4−ジクロロフェニル−エチル]−1H−イミダゾールモノニトレートの膣内投与のための坐剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アラセルタコナゾールは、セルタコナゾールのR−鏡像異性体に相当する。セルタコナゾール(EP151477B1)は、抗真菌薬として臨床診療に広く使用されており、モノニトレートはその好ましい塩である。セルタコナゾールの2つの鏡像異性体のうちのもっとも活性な鏡像異性体は、アラセルタコナゾールである。アラセルタコナゾールモノニトレートの構造式を下記に示す。
【化1】

【0003】
セルタコナゾールモノニトレートそれ自体は、膣内適用のための坐剤としてすでに処方されており、Monazol(登録商標)の商標名でフランスで市販されている。各Monazol(登録商標)坐剤は、300mgのセルタコナゾールモノニトレート並びに賦形剤として固形半合成グリセリド及びコロイド無水シリカを含有している。Monazol(登録商標)300mg坐剤は、膣粘膜内のカンジダ(Candida)により引き起こされる感染症の局所治療に適応がとられている。
【0004】
しかし、臨床診療によれば、用量依存的挙動に基づいた投与により、より大きな自由を可能にするさらに強力な製剤を提供する必要性が存在することが明らかにされている。したがって、異なった種類の病態及び潜在的抵抗を治療する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、驚くべきことに、Monazol坐剤を投与する場合よりも高く長期にわたるレベルを示したアラセルタコナゾールモノニトレートの新規膣内坐剤を提供する。これはより大きな治療効果が生じ、より重篤の症例の他にも抵抗性になる可能性があるカンジダ症の管理が可能になる。
【0006】
さらに、アラセルタコナゾールモノニトレート膣内坐剤の血漿濃度は、投与される用量に比例している。これにより、症例重症度に合わせた用量調整が簡素化される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の目的は、100〜1000mgの量のアラセルタコナゾールモノニトレート並びに賦形剤の混合物を含む、膣内投与のためのアラセルタコナゾールモノニトレートの坐剤であって、該賦形剤の混合物が、
(i)坐剤全体のうちの0.5から5重量%の範囲のコロイドシリカ、
及び
(ii)坐剤全体のうちの100重量%までの十分な範囲の脂肪基剤
を含む、上記坐剤を提供することである。
【0008】
本発明では、語句「坐剤全体のうちの100重量%までの十分な範囲の脂肪基剤」とは、脂肪基剤の量が坐剤全体の100重量%を得るような量であることを意味する。脂肪基剤の量は、活性成分とコロイドシリカの量に、及び追加の賦形剤が存在する場合は、その追加の賦形剤の量に依拠することになる。
【0009】
本発明の膣内投与のための坐剤は、形状、サイズ、及び稠度などのその物理的特性が、膣内挿入によるその治療的使用を容易にする、室温で固体のどのような薬剤剤形でもよいことが理解される。
【0010】
好ましい実施形態では、アラセルタコナゾールモノニトレートの割合は、坐剤全体のうちの3から50重量%に相当する。
【0011】
好ましい実施形態では、アラセルタコナゾールモノニトレートの量は、坐剤あたり150から600mgを含む。
【0012】
好ましい実施形態では、アラセルタコナゾールモノニトレートの割合は、坐剤全体のうちの5から30重量%に相当する。
【0013】
別の好ましい実施形態では、コロイドシリカは、坐剤全体のうちの3重量%の割合で存在する。
【0014】
別の好ましい実施形態では、コロイドシリカは無水形である。他の添加物の非限定的例には、原薬の放出又は吸収を支持するための界面活性剤;融点を増加させるための密蝋、セチルアルコール、ステアリン酸、ステアリルアルコール、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム、ベントナイト又はステアリン酸マグネシウム及びその混合物などの稠度因子(硬化剤とも呼ばれる);融点を下げるためのモノステアリン酸グリセリン、ミリスチルアルコール、ポリソルベート80又はプロピレングリコール及びその混合物などの可塑剤;その他に界面活性剤、稠度因子及び可塑剤の混合物が挙げられ、これらをコロイド無水シリカに取って替えても、又は一緒に混合してもよい。
【0015】
別の好ましい実施形態では、脂肪基剤は、C〜C20脂肪酸のトリグリセリド、モノグリセリド及びジグリセリドエステル並びにその混合物から選択される。これらの脂肪酸の非限定的例には、カプリン酸、カプリル酸、エイコサン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの都合よく処方される脂肪基剤の多くは、天然源(ココナツ油、パーム油及びその同類のもの)から調製され、異なる使用に適合させるために様々な添加物と随意に混合されるが、市販されている。脂肪基剤の商標名の非限定的例は、Suppocire(登録商標)、Ovucire(登録商標)、Japocire(登録商標)、Witepsol(登録商標)、Massa estarinum(登録商標)、Wecobee(登録商標)及びNovata(登録商標)である。脂肪基剤を水溶性基剤と置き換える、又は脂肪基剤を水溶性基剤と混合することも可能である。本発明において有用な水溶性基剤の非限定的例には、とりわけ、ポリエチレングリコール及びグリセロレート化グリセリン基剤が挙げられる。
【0016】
a)脂肪基剤を温度35〜80℃で融解する段階と、
b)攪拌しながら融解した脂肪基剤にコロイドシリカを添加する段階と、
c)塊温度30〜60℃に到達するまでゆっくり攪拌することにより、混合物を予冷し、次に激しい攪拌下でアラセルタコナゾールモノニトレートを添加する段階と、
d)型温が30〜50℃に到達するまでゆっくり攪拌を続ける段階と、
e)型に塊を充填する段階と、
f)型中で坐剤を冷却する段階と、
g)型を密封する段階とを
含む、本発明の坐剤を調製するための方法を提供することも本発明の目的である。
【0017】
他の好ましい実施形態では、段階a)の温度は40〜75℃であり、段階c)の温度は35〜55℃であり、段階d)の温度は30〜40℃である。
【0018】
本出願の追加の目的は、外陰膣カンジダ症を治療するための本発明に定義される坐剤を提供することである。この態様は、外陰膣カンジダ症の治療のための薬物の製造のための本発明に定義される坐剤の使用としての他にも、本発明の坐剤を、それを必要とする患者に投与することを含む外陰膣カンジダ症の治療のための方法として述べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】セルタコナゾールモノニトレート300mg(S−300、Monazol)の坐剤の膣内投与後のセルタコナゾール血漿濃度と比べた、例1において調製されるアラセルタコナゾールモノニトレート150mg(A−150)の坐剤の膣内投与後のアラセルタコナゾール血漿濃度を示す図である。血漿濃度は、ng/mlで、及び時間は時間(h)で表されている。
【図2】図1と同じ変数を示しているが、血漿濃度が対数尺度で表されている図である。
【図3】例1で調製されるアラセルタコナゾールモノニトレート150mg(A−150)、300mg(A−300)及び600mg(A−600)の坐剤の膣内投与後のアラセルタコナゾール血漿濃度を示す図である。血漿濃度は、ng/mlで、及び時間は時間(h)で表されている。
【実施例】
【0020】
(例1)アラセルタコナゾールモノニトレート150mg、300mg及び600mgの膣内適用のための坐剤
アラセルタコナゾールモノニトレート坐剤の組成は表1に示されている。
【表1】

【0021】
(例2)アラセルタコナゾールモノニトレート150mg、300mg及び600mgの膣内適用のための坐剤の調製のための方法
3バッチの1000坐剤それぞれの調製のための方法は下に記載されている。各バッチは例1に記載される150、300及び600mg坐剤に相当する。表2は、グラムで表される坐剤成分の量を示している。
【表2】


a)脂肪基剤成分を秤量し、該成分が完全に融解するまで約42〜48℃の温度にさらした;
b)コロイド無水シリカを秤量し、攪拌を止めることなく、ターボ攪拌器を用いた攪拌により融解した脂肪基剤に添加した;
c)ターボ攪拌器を用いた攪拌を止め、36〜40℃の範囲の温度に達するまで塊をゆっくり攪拌することにより予冷し、次にあらかじめ秤量したAMをターボ攪拌器を使用して添加した;
d)最後に、ターボ攪拌器を止め、型温度が約33〜35℃に達するまでゆっくりと攪拌を続けた;
e)型に塊を充填した;
f)型内で坐剤を冷却した;
g)型を密封した。
段階(a)、(c)、及び(d)で指摘される温度範囲の作業すれば、方法に対する同一効果が達成される。
【0022】
(例3)150mg、300mg及び600mg坐剤の膣内適用後のアラセルタコナゾールモノニトレート吸収レベルの決定
年齢18〜65歳の女性を含む比較臨床実験では、セルタコナゾールモノニトレート(SM)300mg坐剤(Monazol(登録商標))対AM150、300及び600mg坐剤(例1)の膣内投与後に、アラセルタコナゾールの吸収が評価された。血漿レベルは、HPLCにより決定された(図1〜3)。
【0023】
HPLC条件は以下の通りであった。
カラム:ChiraDex 4.0×250mm、5μm、Agilent
注入試料容量:30μL
流速:0.8mL/分
移動相:メタノールとギ酸アンモニウムを含む緩衝液の混合物
【0024】
セルタコナゾールのR及びS鏡像異性体の保持時間は、それぞれ約7.4及び9.1分であった。セルタコナゾールの血漿濃度を決定するためには、R及びS鏡像異性体について得られた値を加算した。
【0025】
図1は、AM 150mg坐剤(A−150)を用いて到達したレベルは、SM 300mg坐剤(S−300)を用いて到達したレベルよりも高かったことを示している。これは、セルタコナゾールのより活性が低い鏡像異性体、すなわち(S)−セルタコナゾールの存在が、SM坐剤中のもっとも活性な鏡像異性体、すなわちアラセルタコナゾールの膣内吸収に対して負の効果を及ぼすことを意味する。したがって、AM 150mg坐剤はSM 300mg坐剤よりも、驚くほど、及び有利に優れている。さらに、その結果が対数尺度で表される場合、アラセルタコナゾールレベルは、セルタコナゾールレベルよりも長時間持続性が高いことも示されている(図2)。
【0026】
図3は、血漿濃度が用量依存性であることを明瞭に示しており、したがって、投与量は症例の重症度に合わせて調整することができる。血漿濃度に対する用量依存効果は、実験した用量範囲においては飽和現象は存在しないようであることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100から1000mgのアラセルタコナゾールモノニトレート並びに賦形剤の混合物を含む、アラセルタコナゾールモノニトレートの膣内投与のための坐剤であって、該賦形剤の混合物が、
(i)坐剤全体のうちの0.5から5重量%の範囲のコロイドシリカ、及び
(ii)坐剤全体のうちの100重量%までの十分な範囲の脂肪基剤
を含む、上記坐剤。
【請求項2】
アラセルタコナゾールモノニトレートの割合が坐剤全体のうちの3から50重量%に相当する、請求項1に記載の坐剤。
【請求項3】
アラセルタコナゾールモノニトレートの量が150から600mgを含む、請求項1に記載の坐剤。
【請求項4】
アラセルタコナゾールモノニトレートの割合が坐剤全体のうちの5から30重量%に相当する、請求項3に記載の坐剤。
【請求項5】
コロイドシリカが坐剤全体のうちの3重量%の量で存在する、請求項1に記載の坐剤。
【請求項6】
コロイドシリカが無水形である、請求項1に記載の坐剤。
【請求項7】
脂肪基剤が、C〜C20脂肪酸のトリグリセリド、モノグリセリド及びジグリセリドエステル並びにその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の坐剤。
【請求項8】
a)脂肪基剤を温度35〜80℃で融解する段階と、
b)攪拌しながら融解した脂肪基剤にコロイドシリカを添加する段階と、
c)塊温度30〜60℃に到達するまでゆっくり攪拌することにより、混合物を予冷し、次に激しい攪拌下でアラセルタコナゾールモノニトレートを添加する段階と、
d)型温が30〜50℃に到達するまでゆっくり攪拌を続ける段階と、
e)型に塊を充填する段階と、
f)型中で坐剤を冷却する段階と、
g)型を密封する段階とを
含む、請求項1の坐剤を調製するための方法。
【請求項9】
段階a)の温度が40〜75℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
段階c)の温度が35〜55℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
段階d)の温度が30〜40℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
外陰膣カンジダ症を治療するための請求項1から7までのいずれか一項に記載の坐剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−77061(P2012−77061A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−267005(P2010−267005)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載日平成22年6月9日、掲載アドレスhttp://clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT01144286
【出願人】(501108452)フエルレル インターナショナル,ソシエダッド アノニマ (39)
【Fターム(参考)】