説明

アリル化合物類の製造方法

【課題】触媒前駆体と配位子とからなる触媒系の存在下に、アリルアルコール類等を脱水アリル化させるアリル化合物類の製造方法の提供。
【解決手段】ルテニウム原子を有する錯化合物からなる触媒前駆体と、特定の構造を有する(S,S)型又は(R,R)型の配位子とを混合し、その後、アリルアルコール類と、基質とを配合し、反応させるアリル化合物類の製造方法であって、アリルアルコール類は、3位の炭素原子に炭素原子と水素原子とが結合しており、又は1位の炭素原子に炭素原子が結合しており、且つこれらの炭素原子はsp乃至sp混成の炭素原子である、又は炭素原子とのみ結合しており、基質は、1位と3位とにカルボニル基を有し、且つ2位に炭素原子を有し、この2位に炭素原子は炭素原子又は水素原子と結合している環状化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリル化合物類の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、特定の構造を備える触媒前駆体と特定の配位子とからなる触媒系の存在下に、アリルアルコール類と、求核原子である、炭素原子若しくは酸素原子を有する基質とを脱水アリル化させる(分子間反応)、又は求核原子である、炭素原子、窒素原子若しくは酸素原子を有する特定のアリルアルコール類を脱水アリル化させる(分子内反応)アリル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリルアルコール類を用いる脱水的不斉アリル化法として、ルテニウム触媒を用いる方法(例えば、非特許文献1参照。)、金触媒を用いる方法(例えば、非特許文献2参照。)、及び水銀触媒を用いる方法(例えば、非特許文献3参照。)等が知られている。また、アリルエステル又はアリルハライドとして活性化されたアリルアルコール誘導体を用いる不斉反応も数多く報告されている(例えば、非特許文献4乃至8参照)。更に、反応系内でアリルアルコールを活性化する不斉アリル化法も数多く知られている(例えば、非特許文献9乃至11参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 8948
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 9533
【非特許文献3】Chem. Eur. J. 2010, 16, 11271
【非特許文献4】Chem. Rev. 2003, 103, 2921
【非特許文献5】Chem. Asian J. 2007, 2, 1476
【非特許文献6】Chem. Commun. 2007, 675
【非特許文献7】Adv. Synth. Catal. 2005, 347, 1811
【非特許文献8】Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 258
【非特許文献9】J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 6314
【非特許文献10】J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 7508
【非特許文献11】Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 3139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献1乃至11に記載された製造方法では、触媒活性が必ずしも十分に高いとはいえない、或いは、反応溶媒が限定される傾向がある、基質についても限定され、汎用性が低い、又は多段階の反応が必要である等の問題があり、アリル化合物類を容易に、且つより効率よく得ることができる製造方法が求められている。また、1,3−ジカルボニル化合物を用いる脱水型の不斉炭素アリル化反応は知られていない。
【0005】
本発明は、前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、特定の構造を備える触媒前駆体と特定の配位子とからなる触媒系の存在下に、アリルアルコール類と、求核原子である、炭素原子若しくは酸素原子を有する基質とを脱水アリル化させる(分子間反応)、又は求核原子である、炭素原子、窒素原子若しくは酸素原子を有する特定のアリルアルコール類を脱水アリル化させる(分子内反応)アリル化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.下記式(1)により表される触媒前駆体と、下記式(2)及び下記式(3)により表される配位子のうちのいずれか一方とを混合し、その後、アリルアルコール類と、基質とを配合し、反応させるアリル化合物類の製造方法であって、
前記アリルアルコール類は、下記式(4)により表されるように、3位の炭素原子に炭素原子(a)と水素原子とが結合しており、又は下記式(5)により表されるように、1位の炭素原子に炭素原子(b)が結合しており、且つ前記炭素原子(a)及び前記炭素原子(b)の各々はsp乃至sp混成の炭素原子である、又は炭素原子とのみ結合しており、
前記基質は、1位と3位とにカルボニル基を有し、且つ2位に炭素原子を有し、前記2位の炭素原子は炭素原子又は水素原子と結合している環状化合物であることを特徴とするアリル化合物類の製造方法。
[Ru(C)(CHCN)]PF (1)
【化1】

【化2】

前記式(2)及び前記式(3)におけるRは、イソプロピル基(以下、「i−Pr基」と表記する。)、メチル基又は水素原子である。
【化3】

【化4】

2.下記式(1)により表される触媒前駆体と、下記式(2)及び下記式(3)により表される配位子のうちのいずれか一方とを混合し、その後、アリルアルコール類を配合し、反応させるアリル化合物類の製造方法であって、
前記アリルアルコール類は、アリルアルコール構造部分のヒドロキシ基と反応して脱水し得る水素原子が結合した炭素原子、窒素原子又は酸素原子を有し、
前記脱水とともに、前記アリルアルコール構造部分が有する3位の炭素原子と、前記炭素原子、前記窒素原子又は前記酸素原子とが結合して5員環構造又は6員環構造が形成されることを特徴とするアリル化合物類の製造方法。
[Ru(C)(CHCN)]PF (1)
【化5】

【化6】

前記式(2)及び前記式(3)におけるRは、i−Pr基、メチル基又は水素原子である。
3.前記配合時に更に酸が配合される前記1.又は2.のうちのいずれか1項に記載のアリル化合物類の製造方法。
4.前記酸が前記反応時にブレンステッド酸として作用する酸である前記3.に記載のアリル化合物類の製造方法。
5.反応溶媒の水に対する温度20℃における溶解度が7g/100g以下である前記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のアリル化合物類の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
分子間脱水アリル化反応による本発明のアリル化合物類の製造方法、及び分子内脱水アリル化反応による他の本発明のアリル化合物類の製造方法によれば、多くの種類のアリルアルコール類と基質とを用いて、又は多くの種類の特定のアリルアルコール類を用いて、各種のアリル化合物類を、簡易な操作、工程で脱水反応させ、高い転化率で、且つ目的とするアリル化合物類を高い収率で、容易に製造することができる。また、共生成物が水のみであるため、反応系が清浄であり、環境との調和という観点でも優れている。
また、アリルアルコール類等を配合するときに酸が配合される場合は、転化率を向上させることができ、目的とするアリル化合物類を効率よく製造することができる。
更に、酸が反応時にブレンステッド酸として作用する酸である場合は、転化率を特に大きく向上させることができ、目的とするアリル化合物類をより効率よく製造することができる。
また、反応溶媒の水に対する温度20℃における溶解度が7g/100g以下である場合は、用いる酸にもよるが、転化率を十分に向上させることができるとともに、目的とするアリル化合物類を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】Rがi−Pr基である(S,S)型の配位子のH−NMRスペクトルを用いた説明図である。
【図2】Rがi−Pr基である(S,S)型の配位子の13C−NMRスペクトルを用いた説明図である。
【図3】式(22a)のアリル化合物類のH−NMRスペクトルを用いた説明図である。
【図4】式(22a)のアリル化合物類の13C−NMRスペクトルを用いた説明図である。
【図5】式(43)のアリル化合物類のH−NMRスペクトルを用いた説明図である。
【図6】式(43)のアリル化合物類の13C−NMRスペクトルを用いた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のアリル化合物類の製造方法は、前記式(1)により表される触媒前駆体と、前記式(2)及び前記式(3)で表される配位子のうちのいずれか一方とを混合し、その後、アリルアルコール類と、基質とを配合し、反応させるアリル化合物類の製造方法であって、アリルアルコール類は、前記式(4)により表されるように、3位の炭素原子に炭素原子(a)と水素原子とが結合しており、又は前記式(5)により表されるように、1位の炭素原子に炭素原子(b)が結合しており、且つ炭素原子(a)及び(b)の各々はsp乃至sp混成の炭素原子である、又は炭素原子とのみ結合しており、基質は、1位と3位とにカルボニル基を有し、且つ2位に炭素原子を有し、この2位の炭素原子は炭素原子又は水素原子と結合している環状化合物である。
【0010】
また、他の本発明のアリル化合物類の製造方法は、前記式(1)により表される触媒前駆体と、前記式(2)及び前記式(3)で表される配位子のうちのいずれか一方とを混合し、その後、アリルアルコール類を配合し、反応させるアリル化合物類の製造方法であって、アリルアルコール類は、アリルアルコール構造部分のヒドロキシ基と反応して脱水し得る水素原子が結合した炭素原子、窒素原子又は酸素原子を有し、脱水とともに、アリルアルコール構造部分が有する3位の炭素原子と、前記の炭素原子、窒素原子又は酸素原子とが結合して5員環構造又は6員環構造が形成される。
【0011】
アリルアルコール類と基質との分子間反応による本発明のアリル化合物類の製造方法、及び特定のアリルアルコール類の分子内反応による他の本発明のアリル化合物類の製造方法において、前記「触媒前駆体」は、前記式(1)により表される化合物、即ち、[Ru(C)(CHCN)]PF[Ruにシクロペンタジエニル基が結合するとともに、3個のアセトニトリル(CHCN)が配位した構造部分を有する。]である。この触媒前駆体は、配位子と組み合わせて用いられ、反応触媒系が形成される。
【0012】
また、前記「配位子」としては、前記式(2)により表される配位子、又は前記式(3)により表される配位子を用いることができる。これらの配位子におけるRはi−Pr基、メチル基又は水素原子であり、いずれも高い転化率を示すが、高い分岐/直鎖比及びエナンチオ選択性によりアリル化合物類を製造することができるi−Pr基であることが好ましい。更に、前記式(2)により表される配位子は(S,S)型であり、前記式(3)により表される配位子は(R,R)型であって、それぞれS体又はR体を高いエナンチオ選択性により製造することができる。また、両鏡像体ともに(S,S)型の配位子と(R,R)型の配位子とを使い分けることによって製造することができる。
【0013】
触媒前駆体と配位子とは、溶媒に溶解した触媒前駆体と溶媒に溶解した配位子とを混合して用いてもよく、固形の触媒前駆体と配位子とに溶媒を加えて混合して用いてもよい。また、固形の触媒前駆体と溶媒に溶解した配位子とを混合して用いてもよく、溶媒に溶解した触媒前駆体と配位子とを混合して用いてもよい。更に、各々が溶解した溶液を混合する場合、それぞれの溶媒は同一でもよく、異なっていてもよいが、通常は同一の溶媒を用いる。この溶媒は特に限定されないが、ケトン類、ハロゲン化炭素類、アルコール類等を用いることができ、特にアセトンが好ましい。
【0014】
本発明のアリル化合物類の製造方法において用いる前記「アリルアルコール類」としては、前記式(4)により表されるように、3位の炭素原子に炭素原子(a)と水素原子とが結合しており、且つ炭素原子(a)がsp乃至sp混成の炭素原子である、又は炭素原子とのみ結合しているアリルアルコール類を用いることができる。また、前記式(5)により表されるように、1位の炭素原子に炭素原子(b)が結合しており、且つ炭素原子(b)がsp乃至sp混成の炭素原子である、又は炭素原子とのみ結合しているアリルアルコール類を用いることもできる。これらのアリルアルコール類はいずれを用いてもよく、同様の脱水アリル化反応によって、各種のアリル化合物類を製造することができる。
【0015】
前記「基質」としては、1位と3位とにカルボニル基を有し、且つ2位に炭素原子を有し、この2位の炭素原子は炭素原子又は水素原子と結合している環状化合物を用いることができる。このような環状化合物は特に限定されないが、例えば、メルドラム酸[式(17)の化合物参照]を用いることが好ましい。一方、1位と3位とにカルボニル基を有し、且つ2位に炭素原子を有し、この2位の炭素原子が炭素原子又は水素原子と結合している化合物であっても、特にマロン酸エステル型の基質では、環状化合物でないときは[式(21)の化合物参照]、目的とするアリル化合物類を製造することができない。
【0016】
他の本発明のアリル化合物類の製造方法において用いる前記「アリルアルコール類」としては、アリルアルコール構造部分のヒドロキシル基と反応して脱水し得る水素原子が結合した炭素原子[式(32)の化合物等参照]、窒素原子[式(36)の化合物等参照]又は酸素原子[式(39)の化合物等参照]を有するアリルアルコール類を用いることができる。このようなアリルアルコール類を用いることにより、脱水とともに、アリルアルコール構造部分が有する3位の炭素原子と、前記の炭素原子、窒素原子又は酸素原子とが結合して5員環構造又は6員環構造が形成され、アリル化合物類[式(43)、式(47)、式(50)の化合物等参照]が製造される。
【0017】
本発明及び他の本発明のアリル化合物類の製造方法では、アリルアルコール類等の他、酸を配合することが好ましく、酸を配合することにより転化率を高めることができる。この酸は特に限定されないが、反応時にブレンステッド酸として作用する酸であることが好ましい。このような酸であれば、転化率を十分に高めることができる。この酸としては、パラトルエンスルホン酸が特に好ましい。
【0018】
本発明のアリル化合物類の製造方法では、触媒前駆体と配位子とにより触媒系が形成されている溶液に、アリルアルコール類及び基質を適宜の溶媒に溶解させてなる溶液を配合して反応させ、脱水アリル化によってアリル化合物類が製造される。この場合、アリルアルコール類及び基質を溶解させる溶媒としては、通常、触媒前駆体等を溶解させるための溶媒とは異なる溶媒が使用され、この溶媒としては反応溶媒が用いられることが多い。また、他の本発明のアリル化合物類の製造方法では、触媒前駆体と配位子とにより触媒系が形成されている溶液に、特定のアリルアルコール類を適宜の溶媒に溶解させてなる溶液を配合して反応させ、脱水アリル化によってアリル化合物類が製造される。この場合、特定のアリルアルコール類を溶解させる溶媒としては、通常、触媒前駆体等を溶解させるための溶媒とは異なる溶媒が使用され、この溶媒としては反応溶媒が用いられることが多い。
【0019】
更に、酸を用いる場合、この酸は、本発明のアリル化合物類の製造方法では、例えば、メチルアルコール等の低級アルコール等に溶解させ、濃縮してなる濃縮液を、触媒前駆体と配位子とを溶解させ、濃縮してなる濃縮液に配合して用いることができる。また、他の本発明のアリル化合物類の製造方法では、酸は、本発明のアリル化合物類の製造方法の場合と同様にして配合することができる他、例えば、特定のアリルアルコール類とともに反応溶媒等の溶媒に配合して用いることもできる。
【0020】
反応溶媒は、所定の脱水アリル化反応がなされる限り、特に限定されない。この溶媒としては、水に対する温度20℃における溶解度が7g/100g以下、好ましくは2g/100g以下である溶媒、即ち、水に溶解し難い溶媒が好ましい。このように難水溶性の反応溶媒であれば、脱水アリル化反応を促進することができ、転化率を高めることができる。また、本発明及び他の本発明では、脱水アリル化反応によってアリル化合物類が生成し、このアリル化合物類は難水溶性であるため、反応溶媒が難水溶性であれば、生成するアリル化合物類は実質的に全量が反応溶媒に溶解する。そのため、反応終了後、反応溶媒と水とを分離することにより、反応溶媒に溶解したアリル化合物類を容易に回収することができる。
【0021】
反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン(CHCl)、クロロホルム(CHCl)、トルエン(toluene)、エーテル(ether)、t−ブチルアルコール(t−COH)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(CHCN)等の他、ジメチルアセトアミド、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、アセトン、i−プロピルアルコール等が挙げられる。これらの溶媒のうちでは、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン等が好ましい。
【0022】
また、本発明のアリル化合物類の製造方法では、アリルアルコール類のモル数(M)と、基質のモル数(M)との比(M/M)は、目的とするアリル化合物類を生成させることができる範囲で調整することができるが、実用上、アリル化合物類への転化率が90%以上、特に95%以上、更に99%以上となる比であることが好ましい。具体的には、比(M/M)は1:1〜1:8とすることができ、1:2〜1:7、特に1:3〜1:6であることが好ましい。更に、アリルアルコール類のモル数(M)と、触媒前駆体と配位子とにより形成される触媒系のモル数(M)との比(M/M)は、1:0.0001〜1:0.01とすることができ、1:0.0007〜1:0.0014、特に1:0.0009〜0.0012であることが好ましい。このように、本発明のアリル化合物類の製造方法では、極めて少量の触媒によって目的とするアリル化合物類の生成率を十分に高くすることができる。また、酸を用いる場合、触媒系のモル数(M)と、酸のモル数(M)との比(M/M)は、1:2〜1:0.05、特に1:1.3〜1:0.07、更に1:1.2〜1:0.08であることが好ましい。
【0023】
また、他の本発明のアリル化合物類の製造方法では、特定のアリルアルコール類のモル数(M)と、触媒前駆体と配位子とにより形成される触媒系のモル数(M)との比(M/M)は、1:0.0001〜1:0.01とすることができ、1:0.0007〜1:0.0014、特に1:0.0009〜0.0012であることが好ましい。このように、他の本発明のアリル化合物類の製造方法でも、前記の従来技術に比べて極めて少量の触媒によって目的とするアリル化合物類の生成率を十分に高くすることができる。更に、酸を用いる場合、触媒系のモル数(M)と、酸のモル数(M)との比(M/M)は、1:2〜1:0.05、特に1:1.3〜1:0.07、更に1:1.2〜1:0.08であることが好ましい。
【0024】
本発明及び他の本発明のアリル化合物類の製造方法では、反応条件は特に限定されず、この反応条件は、アリルアルコール類等の種類などに応じて、適宜調整することが好ましい。反応温度は反応時間にもよるが、実用上の観点では、10〜100℃、特に30〜80℃、更に50〜70℃とすることが好ましい。反応時間は、0.5〜12時間、特に0.5〜10時間、更に0.5〜8時間とすることができ、1〜4時間とすることもできる。本発明及び他の本発明では、このように、短時間で十分に反応させることができる。尚、反応が促進され難いアリルアルコール類等である場合は、反応温度をより高くする、反応時間をより長くする等によって、転化率を十分に高くすることができる。
【0025】
更に、反応時の雰囲気は、通常、不活性雰囲気であり、この不活性雰囲気は特に限定されないが、例えば、窒素ガス雰囲気、又はアルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等の希ガス雰囲気とすることができ、アルゴン雰囲気であることが好ましい。また、本発明及び他の本発明のアリル化合物類の製造方法では、反応終了後、従来の精製方法、例えば、蒸留、吸着、抽出、及び再結晶等の方法、又はこれらの方法を組み合わせた方法により、目的とするアリル化合物類の回収及び精製をすることもできる。
【0026】
製造されるアリル化合物類としては、通常、分岐型(MB型)[例えば、式(22a)のS体の分岐型アリル化合物及び式(22b)のR体の分岐型アリル化合物]が主化合物として生成する。また、直鎖型(ML型)[例えば、式(22c)の直鎖型アリル化合物]の他、多くの化合物が生成し得る。これらの化合物のうちで、光学活性生理活性物質等の製造に用いるという観点では、分岐型と直鎖型の比率が高いことが好ましく、分岐型のエナンチオ選択性が高いことが特に好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
合成例1(配位子の製造)
Rがi−Pr基である(S,S)型の配位子((S,S)−a型)は、2,7−ジブロモ−1,8−ジニトロナフタレンと、(3aR,6aR)−2,2−ジイソプロピルジヒドロ−3aH−[1,3]ジオキソロ[4,5-c]ピロール−4(5H)−オン(ラクタム)とを、Buchwaldカップリング反応、ニトロ基の水素化と酸触媒を用いた脱水環化反応によって合成した。前記のキラルなラクタムは、Cohen等によって報告されている工程によって調製した。また、エナンチオマーである(R,R)型の配位子は同様の方法によって合成した。更に、Rがイソプロピル基である(S,S)型の配位子を加水分解して中間体である4価アルコールとし、その後、2,2−ジメトキシプロパン及びパラホルムアルデヒドを用いた一般的なアセタール化によって、それぞれRがメチル基である(S,S)型の配位子((S,S)−b型)及びRが水素原子である(S,S)型の配位子((S,S)−c型)を合成した。
【0028】
前記のようにして合成したRがi−Pr基である(S,S)型の配位子のNMR分析データ及び高分解能質量分析データは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3, 600 MHz) δ 0.57 (d, JH,H= 6.89 Hz, 6H, 2 x CHCH3), 0.62 (d, JH,H°= 6.89 Hz, 6H, 2 x CHCH3), 1.01 (d, JH,H°= 6.89 Hz, 6H, 2 x CHCH3), 1.02 (d, JH,H°= 6.89 Hz, 6H, 2 x CHCH3), 1.95-2.02 (m, 2H, 2 x CHCH3), 2.14-2.21 (m, 2H, 2 x CHCH3), 4.37 (dd, JH,H°= 5.50, 11.68 Hz, 2H, 2 x NCHH), 4.41 (d, JH,H°= 11.68 Hz, 2H, 2 x NCHH), 5.60 (dd, JH,H°= 5.50, 6.19 Hz, 2H, 2 x NCH2CH), 5.89 (d, JH,H°= 6.19 Hz, 2H, 2 x OCH), 7.48 (d, JH,H°= 8.25 Hz, 2H, ArH), 7.81 (d, JH,H°= 8.25 Hz, 2H, ArH); 1H NMR (50 mM CF3SO3H in CD3CN) δ 0.48 (d, JH,H°= 6.87 Hz, 6H, 2 x CHCH3), 0.56 (d, JH,H°= 6.87 Hz, 6H, 2 x CHCH3), 1.01 (d, JH,H°= 6.87 Hz, 6H, 2 x CHCH3), 1.03 (d, JH,H°= 6.87 Hz, 6H, 2 x CHCH3), 1.98-2.04 (m, 2H, 2 x CHCH3), 2.17-2.24 (m, 2H, 2 x CHCH3), 4.58 (dd, JH,H°= 5.50, 12.37 Hz, 2H, 2 x NCHH), 4.67 (d, JH,H°= 12.37 Hz, 2H, 2 x NCHH), 5.70 (dd, JH,H°= 5.50, 6.19 Hz, 2H, 2 x NCH2CH), 6.00 (d, JH,H°= 6.19 Hz, 2H, 2 x OCH), 7.86 (d, JH,H°= 8.94 Hz, 2H, ArH), 8.13 (d, JH,H°= 8.94 Hz, 2H, ArH); 13C NMR (50 mM CF3SO3H in CD3CN) δ 16.63, 16.97, 17.67, 17.80, 33.24, 35.98, 52.45, 77.39, 84.98, 112.50, 115.05, 123.45, 127.33, 128.54, 129.26, 136.01, 156.01; HRMS (ESI) calcd for C32H41N4Na1O4 [M+Na+] 567.2942, found 567.2953; [α]D21-409.6 (c 0.0221, CHCl3).
【0029】
実験例1〜6(基質、触媒及び酸の配合量のアリル化合物類の生成への影響)
実験例1
5−mmヤング型NMRチューブに、(S,S)−a型の配位子5.45mg(10.0μmol)及びアセトン(0.5mL)を投入し、他の5−mmヤング型NMRチューブに、式(1)の触媒前駆体4.34mg(10.0μmol)及びアセトン(0.5mL)を投入した後、触媒前駆体の溶液を配位子の溶液に加えた。次いで、10分間攪拌し、触媒前駆体と配位子との複合物からなる触媒系(表1〜4では「触媒」と表記する。)が形成されたことをH−NMR分析により確認した。その後、容量20mLのヤング型シュレンクチューブに、パラトルエンスルホン酸の10mM濃度のメタノール溶液0.1mL(パラトルエンスルホン酸は1.0μmolになる。)を投入し、減圧下に濃縮し、これに前記の触媒の10mM濃度のアセトン溶液0.1mL(触媒は1.0μmolになる。)を加えた。その後、混合物を減圧下に濃縮し、式(6)のアリルアルコール類の500mM濃度のジクロロエタン溶液2.0mL(アリルアルコール類は134.2mg、1.0mmolになる。)と、式(17)のメルドラム酸(基質)(720.6mg、5.0mmolになる。)を固体で加えた。次いで、密閉系で混合物を凍結させ、減圧した。その後、黄色の溶液を60℃の油浴を用いて4時間攪拌(還流)し、次いで、室温まで冷却し、式(22a)等のアリル化合物を製造した。
【0030】
その後、前記のようにして得られた混合物を減圧下に濃縮し、メシチレン46.0mg(0.33mmol)を加え、CDClに溶解させた。次いで、溶液を、Hシグナル域の集積が可能な限り正確になるように緩和時間10秒でH−NMR分析に供した。そして、生成物のメルドラム酸部分のメチル基のシグナルと、メシチレンの3個のメチル基のシグナルとの強度比により転化率を求めた。尚、アリルアルコール類のシグナルは観察されなかった。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(試料は50g、展開溶媒は酢酸エチルとヘキサンとの体積比で1:5の混合溶媒)により分離、生成されたMB型の生成物の収率は96%であった。更に、高速液体クロマトグラフィー分析(5mmφ×250mm、カラムはCHIRALPAC AD−H、溶媒は体積比で99.5:0.5のヘキサンと2−プロパノールとの混合溶媒、流速は1.0mL/分、光源の波長は220nm)によりMB型[式(22a)及び式(22b)のアリル化合物]のエナンチオ選択性を評価したところ、S体[式(22a)のアリル化合物]の保持時間は32.5分、R体[式(22b)のアリル化合物]の保持間は26.5分、S体とR体との比[(S):(R)]は99.5:0.5であった。また、混合物のH−NMR分析により、MB型とML型[式(22cのアリル化合物)]との量比を求めた。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

生成した式(22a)のアリル化合物のNMR分析データは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.45 (s, 3H, CH3), 1.69 (s, 3H, CH3), 3.90 (d, JH,H = 2.86 Hz, 1H, COCH(CH)CO), 4.55 (dd, JH,H = 2.86, 8.59 Hz, 1H, ArCH), 5.26 (d, JH,H = 8.59 Hz, 1H, CH=CHH), 5.28 (d, JH,H = 17.18 Hz, 1H, CH=CHH), 6.51 (ddd, JH,H = 8.59, 8.59, 17.18 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.22-7.26 (m, 1H, ArH), 7.30 (t, JH,H = 7.45 Hz, 2H, ArH) 7.35 (d, JH,H = 7.45 Hz, 2H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 27.74, 28.29, 48.22, 52.26, 105.33, 118.38, 127.45, 128.66, 128.69, 136.77, 139.51, 164.52, 164.56. [α]D21 -50.7 (c 1.0, CHCl3)
【0031】
実験例2〜6
表1に記載したように、酸を配合しなかった(実験例2)、触媒の配合量を10.0μmolとし、還流時間を1時間とした(実験例3)、触媒及び酸の配合量を各々10.0μmolとし、還流時間を1時間とした(実験例4)、基質の配合量を1.0mmol、触媒の及び酸の配合量を各々10.0μmolとした(実験例5)、及び配位子としてRがi−Pr基である(R,R)型(表1では「(R,R)−a」と表記する。)を用いた(実験例6)、他は実験例1と同様にしてアリル化合物を製造した。また、同様にして転化率、MB型の収率、MB型のエナンチオ選択性、ML型の収率及びMB型とML型との収率比を求めた。結果を表1に併記する。
【0032】
【表1】

【0033】
表1によれば、酸を用いなかった実験例2では、転化率は低いものの、S体のエナンチオ選択性は高く、MB型の収率比も十分に高いことが分かる。一方、各々の成分の配合量及び還流時間を変化させた実験例3〜5では、実験例1と同様の良好な結果が得られていることが分かる。また、配位子として(R,R)−a型を用いた実験例6では、転化率、MB型の収率ともに十分に高く、R体のエナンチオ選択性も高いことが分かる。
【0034】
実験例7〜16(触媒量、並びに酸の種類及び配合量のアリル化合物類の生成への影響)
表2に記載したように、酸をp-TsOH/Pyとした(実験例7)、触媒の配合量を10.0μmolとし、酸をp-TsOH/2Pyとし、その配合量を10.0μmolとし、還流時間を1時間とした(実験例8)、酸をp-TsOH/(CH)Nとした(実験例9)、酸をCFSOHとした(実験例10)、酸を(CH)POHとした(実験例11)、酸をCHCOOHとした(実験例12)、酸をB(CF)とした(実験例13)、酸をZn(OTf)とした(実験例14)、酸をIn(OTf)とした(実験例15)、及び酸をSm(OTf)とした(実験例16)、他は実験例1と同様にしてアリル化合物を製造した。また、同様にして転化率、MB型の収率、MB型のエナンチオ選択性、ML型の収率及びMB型とML型との収率比を求めた。結果を表2に併記する。
【0035】
【表2】

【0036】
表2によれば、実験例7及び9〜14では、酸の種類によって転化率及び収率が変動しており、酸の選択が重要であることが示唆されている。また、実験例7及び9〜14では転化率及び収率ともに十分ではない一方で、S体のエナンチオ選択性、及びMB型の収率比は十分に高い。更に、実験例8では転化率が低く、p-TsOH/2Pyは好ましい酸ではない。また、実験例15、16では、同定できない化合物が生成しており、In(OTf)、Sm(OTf)も好ましい酸ではないことが分かる。
【0037】
実験例17〜24(反応溶媒の種類のアリル化合物類の生成への影響)
表3に記載したように、溶媒をCHClとした(実験例17)、溶媒をtolueneとした(実験例18)、溶媒をTHF(テトラヒドロフラン)とした(実験例19)、溶媒をetherとした(実験例20)、溶媒をt-CHOHとした(実験例21)、溶媒をDMF(ジメチルホルムアミド)とした(実験例22)、溶媒をCHCNとした(実験例23)、及び触媒の配合量を10.0μmolとし、溶媒をCHCNとし、還流時間を1時間とした(実験例24)、他は実験例1と同様にしてアリル化合物を製造した。また、同様にして転化率、MB型の収率、MB型のエナンチオ選択性、ML型の収率及びMB型とML型との収率比を求めた。結果を表3に併記する。
【0038】
【表3】

【0039】
表3によれば、実験例17、18では、転化率、S体のエナンチオ選択性、MB型の収率比はいずれも高く、CHCl及びtolueneが好ましい溶媒であることが分かる。一方、実験例19〜21では、転化率、MB型の収率ともに低く、実験例19,22では、転化率は高いものの、MB型の収率が低い。また、実験例23では、転化率、MB型の収率ともに低く、同じ溶媒を使用し、触媒を増量したものの、還流時間が1時間と短い実験例24では、転化率は向上するものの、MB型の収率は低い。このように、溶媒の選択も重要であることが示唆されている。
【0040】
実験例25〜30(配位子の種類のアリル化合物類の生成への影響)
表4に記載したように、配位子としてRがメチル基である(S,S)型(表4では「(S,S)−b」と表記する。)を用いた(実験例25)、配位子としてRが水素原子である(S,S)型(表4では「(S,S)−c」と表記する。)を用いた(実験例26)、配位子として(S,S)-(-)-2,2'-Isopropylidenebis(4-tert-butyl-2-oxazoline)(表4では「La」と表記する。)を使用し、触媒及び酸の配合量をそれぞれ10.0μmolとし、還流時間を1時間とした(実験例27)、配位子として(+)-2,2'-Methylenebis- [(3aR,8aS)-3a,8a-dihydro-8H-indeno[1,2-d]oxazole](表4では「Lb」と表記する。)を使用し、触媒及び酸の配合量をそれぞれ10.0μmolとし、還流時間を1時間とした(実験例28)、配位子として(2,2'-bis(diphenylphosphino)-1,1'- binaphthyl)(表4では「BINAP」と表記する。)を使用し、触媒及び酸の配合量を各々10.0μmolとし、還流時間を1時間とした(実験例29)、及び配位子として(S,S)−aを使用し、触媒前駆体として「[Ru[C(CH](CHCN)]PF」を使用し、触媒(表4では「触媒−*」と表記する。)及び酸の配合量を各々10.0μmolとし、還流時間を1時間とした(実験例30)、他は実験例1と同様にしてアリル化合物を製造した。また、同様にして転化率、MB型の収率、MB型のエナンチオ選択性、ML型の収率及びMB型とML型との収率比を求めた。結果を表4に併記する。
【0041】
【表4】

【0042】
表4によれば、実験例25、26では、転化率は高く、MB型の収率及びエナンチオ選択性ともに十分に高いが、(S,S)−a型に比べると少し低く、配位子としては(S,S)−a型が最も好ましいことが分かる。一方、本発明には含まれない種類の配位子を使用している実施例27〜29では、MB型の収率が測定限界値未満であり、劣っている。また、実験例30では、転化率が低く、且つ生成物の全量がMB型ではない。
【0043】
実験例31〜44(各種のアリルアルコール類及び基質を用いた分子間脱水アリル化によるアリル化合物類の製造)
実験例31
式(7)のアリルアルコール類を使用した他は実験例4と同様にして、式(23)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は95%と高く、エナンチオ選択性も高く、MB型の生成物のエナンチオマー比は98:2であった。
【化12】

【化13】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.46 (s, 3H, CH3), 1.70 (s, 3H, CH3), 3.78 (s, 3H, ArOCH3), 3.83 (d, JH,H = 2.75 Hz, 1H, COCH(CH)CO), 4.51 (dd, JH,H = 2.75, 8.26 Hz, 1H, ArCH), 5.24 (d, JH,H = 10.33 Hz, 1H, CH=CHH), 5.25 (d, JH,H = 17.21 Hz, 1H, CH=CHH), 6.51 (ddd, JH,H = 8.26, 10.33, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2), 6.84 (d, JH,H = 8.94 Hz, 2H, ArH), 7.28 (d, JH,H = 8.94 Hz, 2H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 28.00, 28.43, 47.92, 52.62, 55.41, 105.39, 114.16, 117.91, 130. 00, 131.49, 137.38, 159.01, 164.64, 164.87; HRMS (FAB) calcd for C16H18O5 [M+] 290.1154, found 290.1142; [α]D22 -51.5 (c 1.0, CHCl3); 97.7:2.3 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99:1 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 48.8 min and 56.8 min).
【0044】
実験例32
式(8)のアリルアルコール類を使用した他は実験例4と同様にして、式(24)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は96%と高く、エナンチオ選択性も高く、MB型の生成物のエナンチオマー比は99:1であった。
【化14】

【化15】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.47 (s, 3H, CH3), 1.70 (s, 3H, CH3), 2.31 (s, 3H, ArCH3), 3.85 (d, JH,H = 2.75 Hz, 1H, COCH(CH)CO), 4.52 (dd, JH,H = 2.75, 8.26 Hz, 1H, ArCH), 5.25 (d, JH,H = 8.95 Hz, 1H, CH=CHH), 5.27 (d, JH,H = 17.21 Hz, 1H, CH=CHH), 6.50 (ddd, JH,H = 8.26, 8.95, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.12 (d, JH,H = 8.26 Hz, 2H, ArH), 7.24 (d, JH,H = 8.26 Hz, 2H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 21.16, 27.96, 28.41, 48.16, 52.51, 105.38, 118.20, 128.64, 129.48, 136.54, 137.11, 137.25, 164.64, 164.72; HRMS (FAB) calcd for C16H18O4 [M+] 274.1205, found 274.1216; [α]D22 -53.4 (c 1.0, CHCl3); 99.0:1.0 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99:1 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 31.0 min and 38.5 min).
【0045】
実験例33
式(9)のアリルアルコール類を使用した他は実験例4と同様にして、式(25)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率94%と高く、エナンチオ選択性も高く、MB型の生成物のエナンチオマー比は99:1であった。
【化16】

【化17】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.57 (s, 3H, CH3), 1.73 (s, 3H, CH3), 3.85 (d, JH,H = 2.75 Hz, 1H, COCH(CH)CO), 4.52 (dd, JH,H = 2.75, 8.26 Hz, 1H, ArCH), 5.275 (d, JH,H = 11.02 Hz, 1H, CH=CHH), 5.280 (d, JH,H = 15.84 Hz, 1H, CH=CHH), 6.46 (ddd, JH,H = 8.26, 11.02, 15.84 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.28 (d, JH,H = 8.26 Hz, 2H, ArH), 7.31 (d, JH,H = 8.26 Hz, 2H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 27.78, 28.41, 47.49, 52.31, 105.41, 118.87, 128.87, 130.31, 133.46, 136.43, 138.07, 164.31, 164.42; HRMS (FAB) calcd for C15H15O4Cl1 [M+] 294.0659, found 294.0652; [α]D22 -51.3 (c 1.0, CHCl3); 98.8:1.2 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99:1 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 39.5 min and 48.1 min).
【0046】
実験例34
式(10)のアリルアルコール類を使用した他は実験例4と同様にして、式(26)のアリル化合物を製造し、H−NMR分析により単離収率は>99%と決定したが、過剰のメルドラム酸基質との分離が容易ではなく、直接、MB体のエナンチオマー比を求めることができなかった。そのため、生成物をEthyl 3-(4-nitrophenyl)pent-4-enoateに変換後、エナンチオマー比を99:1と評価した。
【化18】

【化19】

生成したアリル化合物のNMR分析データ及び高分解能質量分析データは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.67 (s, 3H, CH3), 1.77 (s, 3H, CH3), 3.93 (d, JH,H = 2.75 Hz, 1H, COCH(CH)CO), 4.67 (dd, JH,H = 2.75, 8.95 Hz, 1H, ArCH), 5.347 (d, JH,H = 17.90 Hz, 1H, CH=CHH), 5.354 (d, JH,H = 10.33 Hz, 1H, CH=CHH), 6.45 (ddd, JH,H = 8.95, 10.33, 17.90 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.58 (d, JH,H = 8.26 Hz, 2H, ArH), 8.17 (d, JH,H = 8.26 Hz, 2H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 27.51, 28.38, 47.31, 51.99, 105.55, 120.19, 123.77, 129.87, 135.19, 147.19, 147.24, 163.93, 163.97; HRMS (FAB) calcd for C15H15O6N1 [M+] 305.0899, found 305.0898.
【0047】
実験例35
式(11)のアリルアルコール類を使用した他は実験例4と同様にして、式(27)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は少し低く73%であった。また、MB型の生成物のエナンチオマー比も少し低く、96:4であった。
【化20】

【化21】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.69 (s, 3H, C=CCH3), 1.73 (s, 6H, C(CH3)2), 1.74 (s, 3H, C=CCH3), 3.55 (d, JH,H = 2.07 Hz, 1H, COCH(CH)CO), 4.09-4.12 (m, 1H, C=CHCH(CH)CH=CH2), 5.09 (d, JH,H = 10.33 Hz, 1H, CH=CHH), 5.18 (d, JH,H = 17.21 Hz, 1H, CH=CHH), 5.42 (d, JH,H = 9.64 Hz, 1H, (CH3)2C=CHCH), 6.00 (ddd, JH,H = 7.23, 10.33, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2); 13C NMR (CDCl3) δ 18.21, 26.07, 27.69, 41.98, 51.55, 105.11, 116.73, 121.78, 136.07, 137.43, 164.67, 164.76; HRMS (FAB) calcd for C13H18O4 [M+] 238.1205, found 238.1204; [α]D22 -39.1 (c 1.0, CHCl3); 95.7:4.3 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99.5:0.5 hexane-2-propanol eluent; 0.5 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 °C; tR 48.8 min and 54.6 min)
【0048】
実験例36
式(12)のアリルアルコール類を使用した他は実験例4と同様にして、式(28)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は89%と少し低かったが、MB型の生成物のエナンチオマー比は高く、99:1であった。
【化22】

【化23】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.78 (s, 3H, CH3), 1.79 (s, 3H, CH3), 3.80 (d, JH,H = 2.75 Hz, 1H, COCH(CH)CO), 4.42-4.44 (m, 1H, C≡CCH), 5.31 (d, JH,H = 10.33 Hz, 1H, CH=CHH), 5.53 (d, JH,H = 17.21 Hz, 1H, CH=CHH), 6.12 (ddd, JH,H = 9.64, 10.33, 17.21 Hz, 1H, CH=CH2), 7.25-7.29 (m, 2H, PhH), 7.41-7.43 (m, 2H, PhH); 13C NMR (CDCl3) δ 27.64, 28.59, 35.50, 51.27, 85.04, 85.87, 105.43, 119.06, 122.86, 128.33, 128.46, 131.99, 133.84, 163.33, 163.56; HRMS (FAB) calcd for C17H16O4 [M+] 284.1049, found 284.1053; [α]D23 -118.1 (c 1.0, CHCl3); 98.6:1.4 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99:1 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 48.8 min and 72.9 min)
【0049】
実験例37
式(13)の3位の炭素原子に結合している炭素原子[前記式(4)における炭素原子(a)参照]が、炭素原子のみでなく、1個の水素原子とも結合しているアリルアルコール類を使用し、実験例4と同様にしてアリル化合物の製造を試みた。しかし、主たる生成物はアリリデンシクロヘキサンであった。
【化24】

【0050】
実験例38
式(14)のアリルアルコール類を使用した他は実験例4と同様にして、式(22a)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は93%であった。また、MB型の生成物のエナンチオマー比は97:3であり、式(6)のアリルアルコールを使用した場合と同じエナンチオ面選択性であった。尚、標準に比べて5倍に希釈して反応させた。
【化25】

【化26】

【0051】
実験例39
式(15)のアリルアルコール類を使用した他は実験例4と同様にして、式(22a)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は96%であった。また、MB型の生成物のエナンチオマー比は96:4であり、式(6)のアリルアルコールを使用した場合と同じエナンチオ面選択性であった。尚、標準に比べて5倍に希釈して反応させた。
【化27】

【化28】

【0052】
実験例40
式(16)のアリルアルコール類の3位の炭素原子が炭素原子とのみ結合しているアリルアルコール類を使用し、実験例4と同様にしてアリル化合物を製造しようとしたが、反応せず、アリル化合物は生成しなかった。
【化29】

【0053】
実験例41
式(6)のアリルアルコール類を使用し、式(18)の基質を用いた他は実験例4と同様にして、式(29)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は87%と少し低かったが、MB型の生成物のエナンチオマー比は高く、99:1であった。
【化30】

【化31】

【化32】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 0.93 (s, 3H, CH3), 1.58 (s, 3H, CH3), 1.64 (s, 3H, COC(CO)CH3C), 3.93 (d, JH,H = 9.97 Hz, 1H, PhCH), 5.27 (dd, JH,H = 1.36, 17.18 Hz, 1H, CH=CHH), 5.31 (dd, JH,H = 1.36, 10.31 Hz, 1H, CH=CHH), 6.55 (ddd, JH,H = 9.97, 10.31, 17.18 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.19 (d, JH,H = 6.87 Hz, 2H, PhH), 7.24 (t, JH,H = 6.87 Hz, 1H, PhH), 7.29 (t, JH,H = 6.87 Hz, 2H, PhH); 13C NMR (CDCl3) δ 23.76, 27.83, 30.10, 54.30, 58.51, 105.37, 119.79, 128.05, 128.89, 129.01, 134.92, 138.90, 168.82, 170.42; HRMS (ESI) calcd for C16H18Na1O4 [M+Na+] 297.1097, found 297.1087; [α]D21 -75.5 (c 1.0, CHCl3); 98.9:1.1 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK OJ-H; 99:1 hexane-2-propanol eluent; 0.5 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 40.1 min and 47.6 min).
【0054】
実験例42
式(6)のアリルアルコール類を使用し、式(19)の基質を用いた他は実験例4と同様にして、式(30)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は89%で、MB型の生成物のエナンチオマー比は>99:1であった。エナンチオ選択性は、アセチル化した後、高速液体クロマトグラフィにより測定した。
【化33】

【化34】

【化35】

生成したアリル化合物のNMR分析データ及び高分解能質量分析データは下記のとおりである。
1H NMR (CD3OD) δ 4.45 (d, JH,H = 8.25 Hz, 1H, PhCH), 4.62 (s, 2H, COCH2O), 5.099 (d, JH,H = 10.31 Hz, 1H, CH=CHH), 5.100 (d, JH,H = 17.18 Hz, 1H, CH=CHH), 6.40 (ddd, JH,H = 8.25, 10.31, 17.18 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.15 (t, JH,H = 7.56 Hz, 1H, PhH), 7.24 (t, JH,H = 7.56 Hz, 2H, PhH), 7.30 (d, JH,H = 7.56 Hz, 2H, PhH); 13C NMR (CD3OD) δ 43.70, 68.04, 103.22, 115.91, 127.34, 128.76, 129.24, 139.00, 143.10, 175.30, 177.25; HRMS (ESI) calcd for C13H12Na1O3 [M+Na+] 239.0679, found 239.0687; [α]D21 -54.5 (c 1.0, CH3OH).
【0055】
実験例43
式(6)のアリルアルコール類を使用し、式(20)の基質を用いた他は実験例4と同様にして、式(31)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は88%で、1:1のジアステレオマー比のMB型の生成物を得た。両異性体のエナンチオマー比はともに95:5ないし96:4及び94:6であり得る。
【化36】

【化37】

【化38】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.32 (s, 3H, CH3), 1.35 (s, 3H, CH3), 3.46 (d, JH,H = 16.53 Hz, 1H, OCHHCO), 3.54 (d, JH,H = 10.33 Hz, 1H, OCHHCO), 3.64 (d, JH,H = 10.33 Hz, 1H, OCHHCO), 3.78 (d, JH,H = 16.53 Hz, 1H, OCHHCO), 4.31 (d, JH,H = 17.21 Hz, 1H, PhCH), 4.35 (d, JH,H = 17.21 Hz, 1H, PhCH), 5.26 (d, JH,H = 17.21 Hz, 2H, 2 x CH=CHH), 5.31 (d, JH,H = 10.33 Hz, 2H, 2 x CH=CHH), 6.37 (ddd, JH,H = 10.33, 17.21, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2), 6.46 (ddd, JH,H = 10.33, 17.21, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.18 (d, JH,H = 7.57 Hz, 2H, PhH), 7.20 (d, JH,H = 7.57 Hz, 2H, PhH), 7.25-7.32 (m, 6H, PhH); 13C NMR (CDCl3) δ 18.95, 19.18, 52.66, 52.74, 56.26, 56.82, 72.72, 72.82, 119.83, 120.08, 128.14, 128.18, 128.28, 128.34, 129.06, 129.22, 133.43, 133.88 137.97, 176.29, 176.86, 210.69, 210.83; HRMS (EI) calcd for C14H14O3 [M+] 230.0943, found 230.0933; 95:5 and 95:5 (or 96:4 and 94:6) er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99:1 hexane-2-propanol eluent; 1 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 11.8 min, 13.3 min, 15.1 min and 26.4 min).
【0056】
実験例44
式(6)のアリルアルコール類を使用し、式(21)の環状構造を有していない基質を用いて、実験例4と同様にしてアリル化合物の製造を試みたが、主たる生成物はジシンナミルエーテルであった。
【化39】

【化40】

以上、実験例31〜44の結果を表5にまとめて記載する。
【0057】
【表5】

【0058】
実験例45〜58(各種のアリルアルコール類を用いた分子内脱水アリル化によるアリル化合物類の製造)
実験例45
5−mmヤング型NMRチューブに、(S,S)−a型の配位子5.45mg(10.0μmol)及びアセトン(0.5mL)を投入し、他の5−mmヤング型NMRチューブに、式(1)の触媒前駆体4.34mg(10.0μmol)及びアセトン(0.5mL)を投入した後、触媒前駆体の溶液を配位子の溶液に加えた。次いで、10分間攪拌し、触媒前駆体と配位子との複合物からなる触媒系(以下、「触媒」と表記する。)が形成されたことをH−NMR分析により確認した。その後、容量20mLのヤング型シュレンクチューブに、パラトルエンスルホン酸の10mM濃度のメタノール溶液0.1mL(パラトルエンスルホン酸は1.0μmolになる。)を投入し、減圧下に濃縮し、これに前記の触媒の10mM濃度のアセトン溶液0.1mL(触媒は1.0μmolになる。)を加えた。その後、混合物を減圧下に濃縮し、式(32)のアリルアルコール類の1000mM濃度のジクロロエタン溶液1.0mL(アリルアルコール類は290.3mg、1.0mmolになる。)を加えた、次いで、密閉系で混合物を凍結し、減圧にした。その後、黄色の溶液を60℃の油浴を用いて1時間攪拌し、次いで、室温まで冷却し、アリル化合物を製造した。
【0059】
その後、前記のようにして得られた混合物を減圧下に濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(試料は5g、展開溶媒は酢酸エチルとヘキサンとの体積比で1:4の混合溶媒)により分離、生成された式(43)のアリル化合物の生成物の収率は98%であった。更に、高速液体クロマトグラフィー分析(5mmφ×250mm、カラムはCHIRALPAC AD−H、溶媒は体積比で95:5のヘキサンと2−プロパノールとの混合溶媒、流速は0.8mL/分、光源の波長は220nm)によりエナンチオ選択性を評価したところ、S体の保持時間は15.7分、R体の保持間は17.3分、S体とR体との比[(S):(R)]は1:>99であった。
【化41】

【化42】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3, 600 MHz) δ 1.76 (s, 3H, CH3), 1.77 (s, 3H, CH3), 3.64 (d, JH,H = 15.84 Hz, 1H, ArCHHC), 3.74 (d, JH,H = 15.84 Hz, 1H, ArCHHC), 4.61 (d, JH,H = 8.94 Hz, 1H, ArCHC), 5.37 (d, JH,H = 9.64 Hz, 1H, CH=CHH), 5.38 (d, JH,H = 17.21 Hz, 1H, CH=CHH), 5.90 (ddd, JH,H = 8.94, 9.64, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.06 (d, JH,H = 5.51 Hz, 1H, ArH), 7.21-7.27 (m, 3H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 29.13, 29.83, 43.66, 59.60, 61.80, 105.45, 121.25, 123.96, 124.06, 127.63, 128.13, 134.76, 139.33, 141.27, 167.78, 170.96; HRMS (ESI) calcd for C16H16Na1O4 [M+Na+] 295.0941, found 295.0936; [α]D21 -104.9 (c 1.0, CHCl3). er(5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 95:5 hexane-2-propanol eluent, 0.8 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 15.7 min (S) and 17.3 min (R))
【0060】
実験例46
式(33)のアリルアルコール類を使用し、触媒及び酸を各々10.0μmolとした他は実験例45と同様にして式(44)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は98%と高く、エナンチオマー比は>99:1であった。
【化43】

【化44】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.72 (s, 3H, CH3), 1.74 (s, 3H, CH3), 1.81 (s, 3H, (CH3)C=CH2), 3.67 (s, 2H, ArCH2C), 4.67 (s, 1H, ArCHC), 5.05 (d, JH,H = 1.38 Hz, 1H, C=CHH), 5.16 (d, JH,H = 1.38 Hz, 1H, C=CHH), 7.08 (d, JH,H = 6.89 Hz, 1H, ArH), 7.22-7.28 (m, 3H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 21.45, 28.31, 30.41, 42.06, 60.57, 66.26, 105.17, 118.23, 124.11, 125.01, 127.32, 128.04, 140.02, 140.73, 141.50, 167.82, 171.16; HRMS (FAB) calcd for C17H18O4 [M+] 286.1205, found 286.1191; [α]D22 -3.2 (c 1.0, CHCl3); 99.5:0.5 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99:1 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 29.6 min and 44.1 min).
【0061】
実験例47
式(34)のアリルアルコール類を使用した他は実験例45と同様にして、式(45)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は97%と高く、エナンチオマー比は>99:1であった。
【化45】

【化46】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.73 (s, 3H, CH3), 1.76 (s, 3H, CH3), 2.31(ddd, JH,H = 4.12, 4.81, 13.75 Hz, 1H, ArCH2CHHC), 2.47-2.53(m, 1H, ArCH2CHHC), 2.93 (ddd, JH,H = 4.67, 4.81, 16.70 Hz, 1H, ArCHHCH2C), 3.01-3.08 (m, 1H, ArCHHCH2C), 4.32 (d, JH,H = 9.62 Hz, 1H, ArCHC), 5.39 (d, JH,H = 17.18 Hz, 1H, CH=CHH), 5.40 (d, JH,H = 10.31 Hz, 1H, CH=CHH), 5.83 (ddd, JH,H = 9.62, 10.31, 17.18 Hz, 1H, CH=CHCH2), 7.13-7.19 (m, 3H, ArH), 7.25-7.27 (m, 1H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 26.14, 29.28, 29.69, 32.33, 49.39, 54.30, 105.36, 122.08, 126.46, 126.48, 127.30, 128.16, 134.58, 135.32, 135.72, 166.32, 170.51; HRMS (FAB) calcd for C17H18O4 [M+] 286.1205, found 286.1192; [α]D22 -169.4 (c 1.0, CHCl3); 99.9:0.1 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99:1 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 17.7 min and 19.4 min).
【0062】
実験例48
式(35)のアリルアルコール類を使用し、触媒及び酸を各々10.0μmolとした他は実験例45と同様にして、式(46)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、環化生成物の単離収率は低く57%であった。また、目的とするアリル化合物ではない他の生成物が多かった。更に、エナンチオマー比も低く、88:12であった。
【化47】

【化48】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.698 (s, 3H, CH3), 1.704 (s, 3H, CH3), 1.98-2.12 (m, 4H, CH2=CHCHCH2CH2CH2), 2.31-2.42 (m, 2H, CH2=CHCHCH2CH2CH2), 3.33 (dt, JH,H = 7.57, 8.26 Hz, 1H, CHCH=CH2), 5.13 (dd, JH,H = 1.38, 9.64 Hz, 1H, CH=CHH), 5.18 (dd, JH,H = 1.38, 17.21 Hz, 1H, CH=CHH), 5.73 (ddd, JH,H = 8.26, 9.64, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2); 13C NMR (CDCl3) δ 25.65, 28.75, 29.81, 32.81, 39.05, 58.43, 100.06, 104.96, 119.08, 135.61, 169.36, 172.21; HRMS (ESI) calcd for C12H16Na1O4 [M+Na+] 247.0941, found 247.0940; 87.5:12.5 er (0.25 mm x 0.125 mm x 30 m CHIRALDEX B-PM; temp, 100 ℃, 140 kPa, split ratio 100:1; tR 94.2 min and 95.7 min).
【0063】
実験例49
式(36)のアリルアルコール類を使用し、実験例45と同様にして、式(47)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、単離収率は99%と高く、エナンチオ選択性も高く、(S):(R)比は1:>99であった。
【化49】

【化50】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 2.39 (s, 3H, SO2C6H4CH3), 4.64 (d, JH,H = 13.06 Hz, 1H, ArCHHN), 4.73 (d, JH,H = 13.06 Hz, 1H, ArCHHN), 5.24 (d, JH,H = 10.31 Hz, 1H, CH=CHH), 5.41 (d, JH,H = 17.18 Hz, 1H, CH=CHH), 5.55 (d, JH,H = 5.73 Hz, 1H, ArCHN), 5.89 (ddd, JH,H = 5.73, 10.31, 17.18 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.05-7.08 (m, 1H, ArH), 7.15-7.18 (m, 1H, ArH), 7.24 (t, JH,H = 4.12 Hz, 2H, ArH), 7.28 (d, JH,H = 8.25 Hz, 2H, tosyl-ArH), 7.76 (d, JH,H = 8.25 Hz, 2H, tosyl-ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 21.62, 53.89, 68.65, 116.70, 122.61, 123.58, 127.78, 127.89, 128.26, 129.82, 135.20, 135.45, 138.31, 138.96, 143.66; HRMS (EI) calcd for C17H17N1O2S1 [M+] 299.0980, found 299.0978; [α]D21 -127.6 (c 1.0, CHCl3); 99.5:0.5 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 95:5 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 25.0 min (R) and 34.7 min (S)).
【0064】
実験例50
式(37)のアリルアルコール類を使用し、実験例45と同様にして、式(48)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、環化生成物の単離収率は99%と高く、そのエナンチオマー比も高く、99:1であった。
【化51】

【化52】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 2.36 (s, 3H, SO2C6H4CH3), 2.62 (ddd, JH,H = 5.51, 6.20, 16.04 Hz, 1H, ArCHHCH2N), 2.72-2.81 (m, 1H, ArCHHCH2N), 3.32-3.39 (m, 1H, ArCH2CHHN), 3.82-3.87 (m, 1H, ArCH2CHHN), 5.04 (dd, JH,H = 1.15, 17.18 Hz, 1H, CH=CHH), 5.16 (dd, JH,H = 1.15, 10.31 Hz, 1H, CH=CHH), 5.55 (d, JH,H = 5.73 Hz, 1H, ArCHN), 5.90 (ddd, JH,H = 5.73, 10.31, 17.18 Hz, 1H, CH=CH2), 7.00 (d, JH,H = 7.45 Hz, 1H, ArH), 7.06 (d, JH,H = 7.45 Hz, 1H, ArH), 7.14 (d, JH,H = 6.30, 6.87 Hz, 2H, ArH), 7.18 (d, JH,H = 8.02 Hz, 2H, tosyl-ArH), 7.66 (d, JH,H = 8.02 Hz, 2H, tosyl-ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 21.60, 27.82, 39.47, 58.30, 117.75, 126.23, 127.12, 127.32, 1238.06, 129.12, 129.57, 133.69, 133.85, 137.54, 137.92, 143.23; HRMS (EI) calcd for C18H19N1O2S1 [M+] 313.1137, found 313.1136; [α]D22 -97.0 (c 1.0, CHCl3); 99.4:0.6 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 98:2 hexane-2-propanol eluent; 0.8 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 33.8 min and 46.9 min.
【0065】
実験例51
実験例50と同様に、式(37)のアリルアルコール類を使用し、触媒の配合量を0.2μmol、酸の配合量を0.4μmolとし、還流時間を6時間とした他は実験例45と同様にして、式(48)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、環化生成物の単離収率は95%と十分に高く、そのエナンチオマー比も高く、99:1であった。
【0066】
実験例52
実験例50と同様に、式(37)のアリルアルコール類を使用し、触媒の配合量を0.1μmol、酸の配合量を0.4μmolとし、還流時間を12時間とした他は実験例45と同様にして、式(48)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、環化生成物の単離収率は83%と少し低く、エナンチオマー比も、95:5であり、少し低かった。
【0067】
実験例53
式(38)のアリルアルコール類を使用し、触媒及び酸を各々10.0μmolとした他は実験例45と同様にして、式(49)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、環化生成物の単離収率は97%と十分に高かったが、エナンチオマー比は少し低く、82:18であった。
【化53】

【化54】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.59-1.85 (m, 4H, NCH2CH2CH2), 2.43 (s, 3H, SO2C6H4CH3), 3.24 (m, 1H, NCHH), 3.44 (ddd, JH,H = 4.82, 7.57, 10.16 Hz, 1H, NCHH), 4.14 (m, 1H, CHCH=CH2), 5.11 (dd, JH,H = 1.38, 10.33 Hz, 1H, CH=CHH), 5.27 (dd, JH,H = 1.38, 17.21 Hz, 1H, CH=CHH), 5.81 (ddd, JH,H = 6.20, 10.33, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.30 (d, JH,H = 8.26 Hz, 2H, tosyl-ArH), 7.72 (d, JH,H = 8.26 Hz, 2H, tosyl-ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 21.65, 23.88, 32.44, 48.91, 62.04, 115.43, 127.68, 129.70, 135.36, 138.84, 143.36;[36] HRMS (FAB) calcd for C19H21O2N1S1 [M+] 327.1293, found 327.1289; 82.4:17.6 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 98:2 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 28.4 min and 31.7 min.
【0068】
実験例54
式(39)のアリルアルコール類を使用し、実験例45と同様にして、式(50)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、環化生成物の単離収率は89%と少し低かったが、その(S):(R)比は高く、99:1であった。
【化55】

【化56】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 5.10 (d, JH,H = 12.39 Hz, 1H, ArCHHO), 5.18 (dd, JH,H = 1.38, 11.71 Hz, 1H, CH=CHH), 5.25 (d, JH,H = 12.39 Hz, 1H, ArCHHO), 5.43 (dd, JH,H = 1.38, 17.21 Hz, 1H, CH=CHH), 5.59 (d, JH,H = 7.57 Hz, 1H, ArCHO), 5.94 (ddd, JH,H = 7.57, 11.71, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.14-7.16 (m, 1H, ArH), 7.23-7.30 (m, 3H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 73.67, 73.92, 127.02, 127.52, 127.97, 128.81, 130.73, 132.82, 136.14, 139.39; HRMS (ESI) calcd for C10H10Na1O1 [M+Na+] 169.0624, found 169.0625; [α]D20 -67.7 (c 1.09, CHCl3); 99.4:0.6 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99.7:0.3 hexane-2-propanol eluent; 0.8 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 13.8 min and 16.2 min).
【0069】
実験例55
式(40)のアリルアルコール類を使用し、実験例45と同様にして、式(51)のアリル化合物を製造した。その結果、環化生成物の単離収率は98%と高く、エナンチオ選択性も高く、エナンチオマー比は1:>99であった。
【化57】

【化58】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 2.76 (ddd, JH,H = 0.69, 4.13, 15.84 Hz, 1H, ArCHHCH2O), 2.94-3.00 (m, 1H, ArCHHCH2O), 3.86 (ddd, JH,H = 4.13, 8.95, 11.02 Hz, 1H, ArCH2CHHO), 4.16 (ddd, JH,H = 0.69, 4.82, 11.02 Hz, 1H, ArCH2CHHO), 5.16 (d, JH,H = 6.89 Hz, 1H, ArCHO), 5.34 (d, JH,H = 10.33 Hz, 1H, CH=CHH), 5.38 (d, JH,H = 17.21 Hz, 1H, CH=CHH), 5.97 (ddd, JH,H = 6.89, 10.33, 17.21 Hz, 1H, CHCH=CH2), 7.04-7.06 (m, 1H, ArH), 7.11-7.13 (m, 1H, ArH), 7.15-7.19 (m, 2H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 28.87, 63.29, 78.26, 118.61, 126.10, 126.22, 126.78, 129.04, 133.71, 136.24, 138.18; HRMS (EI) calcd for C11H12O1 [M+] 160.0888, found 160.0889; [α]D22 -10.9 (c 1.0, CHCl3); 99.7:0.3 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99.5:0.5 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 8.1 min (S) and 9.4 min (R)).
【0070】
実験例56
実験例55と同様に、式(40)のアリルアルコール類を使用し、触媒の配合量を0.2μmol、酸の配合量を0.4μmolとし、還流時間を6時間とした他は実験例45と同様にして、式(51)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、環化生成物の単離収率は93%と十分に高く、エナンチオ選択性は少し低く、(S):(R)比は6:94であった。
【0071】
実験例57
式(41)のアリルアルコール類を使用し、触媒及び酸を各々10.0μmolとした他は実験例45と同様にして、式(52)のアリル化合物を製造し、同様にして転化率及びエナンチオ選択性を評価した。その結果、環化生成物の単離収率は94%と十分に高く、エナンチオマー比も高く、99:1であった。
【化59】

【化60】

生成したアリル化合物のNMR分析データ、高分解能質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィデータは下記のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.62 (s, 3H, CH2=CCH3), 2.69 (ddd, JH,H = 2.75, 3.44, 15.84 Hz, 1H, ArCHHCH2O), 3.00-3.08 (m, 1H, ArCHHCH2O), 3.82 (ddd, JH,H = 2.75, 4.13, 11.02 Hz, 1H, ArCH2CHHO), 4.18 (ddd, JH,H = 3.44, 5.51, 11.02 Hz, 1H, ArCH2CHHO), 5.06 (s, 1H, CHH=C), 5.09 (s, 1H, CHH=C), 5.16 (s, 1H, ArCHO), 7.04 (d, JH,H = 7.57 Hz, 1H, ArH), 7.11 (d, JH,H = 7.57 Hz 1H, ArH), 7.14-7.19 (m, 2H, ArH); 13C NMR (CDCl3) δ 17.54, 28.92, 63.72, 81.77, 116.04, 125.79, 126.10, 126.65, 128.83, 134.23, 135.84, 145.41; HRMS (FAB) calcd for C12H14O1 [M+] 174.1045, found 174.1051; [α]D22 -22.9 (c 1.0, CHCl3); 99.1:0.9 er (5 mm φ x 250 mm CHIRALPAK AD-H; 99.5:0.5 hexane-2-propanol eluent; 1.0 mL/min flow rate; 220-nm detection; 27 ℃; tR 5.4 min and 6.8 min).
【0072】
実験例58
式(42)のアリルアルコール類を使用した他は実験例45と同様にして、式(53)のアリル化合物を製造した。その結果、目的とする環化生成物の単離は容易ではなく、反応混合物をガスクロマトグラフィ分析することによって、転化率は>99%、生成物のエナンチオマー比は60:40と決定した。
【化61】

【化62】

以上、実験例45〜58の結果を表6にまとめて記載する。
【0073】
【表6】

【0074】
尚、本発明においては、前記の実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、基質としてマロン酸アミドを用いることもでき、この場合、非環状化合物であっても反応することがある。また、アリルアルコール類に代えて、アリルエステル類、アリルエーテル類を用いた場合も、同様のアリル化反応によってアリル化合物類を製造することができるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、アリルアルコール類と、求核原子である、炭素原子若しくは酸素原子を有する基質との分子間反応、又は求核原子である、炭素原子、窒素原子若しくは酸素原子を有する特定のアリルアルコール類の分子内反応によって脱水アリル化させてアリル化合物を製造する技術分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)により表される触媒前駆体と、下記式(2)及び下記式(3)により表される配位子のうちのいずれか一方とを混合し、その後、アリルアルコール類と、基質とを配合し、反応させるアリル化合物類の製造方法であって、
前記アリルアルコール類は、下記式(4)により表されるように、3位の炭素原子に炭素原子(a)と水素原子とが結合しており、又は下記式(5)により表されるように、1位の炭素原子に炭素原子(b)が結合しており、且つ前記炭素原子(a)及び前記炭素原子(b)の各々はsp乃至sp混成の炭素原子である、又は炭素原子とのみ結合しており、
前記基質は、1位と3位とにカルボニル基を有し、且つ2位に炭素原子を有し、前記2位の炭素原子は炭素原子又は水素原子と結合している環状化合物であることを特徴とするアリル化合物類の製造方法。
[Ru(C)(CHCN)]PF (1)
【化1】

【化2】

前記式(2)及び前記式(3)におけるRは、イソプロピル基、メチル基又は水素原子である。
【化3】

【化4】

【請求項2】
下記式(1)により表される触媒前駆体と、下記式(2)及び下記式(3)により表される配位子のうちのいずれか一方とを混合し、その後、アリルアルコール類を配合し、反応させるアリル化合物類の製造方法であって、
前記アリルアルコール類は、アリルアルコール構造部分のヒドロキシ基と反応して脱水し得る水素原子が結合した炭素原子、窒素原子又は酸素原子を有し、
前記脱水とともに、前記アリルアルコール構造部分が有する3位の炭素原子と、前記炭素原子、前記窒素原子又は前記酸素原子とが結合して5員環構造又は6員環構造が形成されることを特徴とするアリル化合物類の製造方法。
[Ru(C)(CHCN)]PF (1)
【化5】

【化6】

前記式(2)及び前記式(3)におけるRは、イソプロピル基、メチル基又は水素原子である。
【請求項3】
前記配合時に更に酸が配合される請求項1又は2に記載のアリル化合物類の製造方法。
【請求項4】
前記酸が前記反応時にブレンステッド酸として作用する酸である請求項3に記載のアリル化合物類の製造方法。
【請求項5】
反応溶媒の水に対する温度20℃における溶解度が7g/100g以下である請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のアリル化合物類の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201644(P2012−201644A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68664(P2011−68664)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】