説明

アリールピペラジン誘導体の組成物、合成および利用方法

本発明は、統合失調症ならびに関連する精神病、例えば急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病の治療に有利に使用することができるアリールピペラジン誘導体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアリールピペラジン誘導体の組成物、アリールピペラジン誘導体の合成、およびアリールピペラジン誘導体の利用方法に関する。特に、本発明は、統合失調症ならびに関連する精神病、例えば急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病の薬物療法に有用なアリールピペラジン系化合物の合成、組成物、および利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精神病性障害の治療に用いられる医薬品は抗精神病薬と呼ばれる。定型抗精神病薬(従来型抗精神病薬と呼ばれる場合がある)は、第一世代抗精神病薬のクラスであり、統合失調症を含む精神病を治療するために用いられる。定型抗精神病薬としては、クロルプロマジン(THORAZINE(登録商標))、フルフェナジン(PROLIXIN(登録商標))、ハロペリドール(HALDOL(登録商標))、チオチキセン(NAVANE(登録商標))、トリフルオロペラジン(STELAZINE(登録商標))、ペルフェナジン(TRILAFON(登録商標))、およびチオリダジン(MELLARIL(登録商標))が挙げられる。1990年代に導入された第二世代抗精神病薬は非定型抗精神病薬と呼ばれる。第一世代抗精神病薬と比較すると、非定型抗精神病薬は、幻覚および妄想のような陽性症状の軽減に対しては同等の効果を有すると思われるが、感情鈍麻、引きこもり、感情低下等のような統合失調症の陰性症状の緩和において定型抗精神病薬よりも優れている可能性がある。現在臨床に使用される非定型抗精神病薬としては、アリピプラゾール(ABILIFY(登録商標))、クロザピン(CLOZARIL(登録商標))、リスペリドン(RISPERDAL(登録商標))、オランザピン(ZYPREXA(登録商標))、クエチアピン(SEROQUEL(登録商標))、およびジプラシドン(GEODON(登録商標))が挙げられる。
【0003】
非定型抗精神病薬は、錐体外路症状(EPS)および遅発性ジスキネジア(TD)を引き起こす傾向が定型抗精神病薬よりも低い。非定型抗精神病薬に伴うさらなる効果としては、陰性症状の治療の改善、服薬遵守の改善、認知機能障害に対する効果の可能性、および再発率の低下が挙げられる。しかしながら、非定型抗精神病薬のクラスの中では、有効性および副作用のいずれにおいても差異が存在する。クロザピンはEPSを引き起こさず、今日までにヒトに使用された他のすべての抗精神病薬よりも明らかに効果が高い。しかしながら、これはその副作用のため、また一部の国々では無顆粒球症に対する継続的な医学的監視の必要があるために、生活を変えてしまう薬物である。そのために、その使用は著しく制限されている。有効性データが最も多くある他の非定型抗精神病薬はリスペリドンおよびオランザピンである。これらの薬物は今日最も広く使用される第一選択抗精神病薬である。これは、それらが従来の薬物よりも臨床効果が高く、クロザピンよりも使用がはるかに容易であることから当然であると言える。しかしながら、リスペリドンおよびオランザピンはどちらも副作用により制限を受ける。リスペリドンはプロラクチンの上昇、体重増加および用量依存性EPSを引き起こす。オランザピンの使用は、脂質およびグルコースの異常に加えてより重大な体重増加を伴う。クエチアピンおよびジプラシドンはリスペリドンおよびオランザピンのより安全な代替薬であり得るが、これらの薬物は他の非定型抗精神病薬と比べて臨床効果が低いと思われる。アリピプラゾールは、2002年11月に統合失調症の治療用としてFDAにより承認された新世代の非定型抗精神病薬の1つである(Satyanarayana, C. et al. WO 2006/030446; Tsujimori, H. et al. WO 2004/063162; Salama, P. et al. WO 2004/099152; Wikstorm, H. et al. WO 2003/064393)。これは、急性躁病および双極性障害に伴う混合性エピソードの治療用に、2005年3月に承認された。アリピプラゾールは、治療応答、有効性および忍容性に関しては他の非定型抗精神病薬と大きな違いはない。
【0004】
非定型抗精神病薬は、さまざまな精神病理学的状態に対応するために小児および青年に対する使用が増大している。非定型抗精神病薬が処方される状態としては、双極性障害、精神病性うつ病、統合失調症、広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、反抗挑戦性障害(ODD)、および行為障害が挙げられる。それらはまた、激怒、不眠症、および食欲不振の症状を治療するためにも使用される。若年の患者は非定型抗精神病薬の治療に伴う有害作用、特に体重増加および薬物誘導性真性糖尿病のリスクがより高いと思われる。
【0005】
一般に、非定型抗精神病薬には、鎮静、静坐不能、体重増加、錐体外路症状(EPS)、神経悪性症候群、遅発性ジスキネジアを含む、定型抗精神病薬と共通する多くの副作用がある。これらの薬物に関する長い経験により、メタボリックシンドロームおよびQTc延長などの新しいリスクを考慮する必要があることが明らかになっている。QTc延長は、致命的なトルサード・ド・ポアン(Torsades de Pointes)(TdP)の心不整脈を引き起こす潜在的易罹病性があることが知られている。体重増加、脂質異常、および真性糖尿病などの薬物誘発性の有害代謝作用はさまざまな医学的障害の主要な危険因子であることが明らかになっており、これが非定型抗精神病薬により治療される精神病患者における罹患率および死亡率の増加の一部の原因となっている可能性がある。
【0006】
標的外薬理作用および薬物-薬物相互作用が、非定型抗精神病薬に伴う多くの有害な副作用の主要な原因である。統合失調症および関連する精神病性障害の治療に現在使用されるすべての非定型抗精神病薬の治療標的選択性は低い。例えば、最も広く処方される非定型抗精神病薬の1つであるオランザピンおよび最も効果が高い非定型抗精神病薬であるクロザピンは、ドーパミン(D1、D2、D3およびD4)、セロトニン(5-HT2A、5-HT2C、5-HT6、および5-HT7)、アドレナリン(アルファ1およびアルファ2)、ヒスタミン(H1)、ムスカリン(M1)、ドーパミン輸送体(DAT)およびノルエピネフリン輸送体(NET)受容体などの12以上の受容体に対して有意な活性を有することが報告されている(Miyamoto et al., Molecular Psychiatry, 2005, 10, 79)。同様に、他のFDAに承認された非定型抗精神病薬、例えばリスペリドンおよびアリピプラゾールもまた上記の受容体の9種以上に対して有意な活性を有することが報告されている。最近の研究により、ドーパミン(D2)およびセロトニン(5-HT1Aおよび5-HT2A)受容体に対して活性を示す化合物は目標とする抗精神病作用を有する可能性があるが(Snyder, S. H., Nature 2008, 452, 38-39; Di Pietro, N. C., Seamans, J. K., Pharmacopsychitry 2007, 40(S1), S27-S33; Stark, A. D. et al., Psychopharmacology 2007, 190, 373-382)、セロトニン(5HT2C)、ヒスタミン(H1)、およびアドレナリン(アルファ1)のような他の受容体に対して活性を示す化合物は心不整脈などの有害な副作用を引き起こす可能性があることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2006/030446
【特許文献2】WO 2004/063162
【特許文献3】WO 2004/099152
【特許文献4】WO 2003/064393
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Miyamoto et al., Molecular Psychiatry, 2005, 10, 79
【非特許文献2】Snyder, S. H., Nature 2008, 452, 38-39
【非特許文献3】Di Pietro, N. C., Seamans, J. K., Pharmacopsychitry 2007, 40(S1), S27-S33
【非特許文献4】Stark, A. D. et al., Psychopharmacology 2007, 190, 373-382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在臨床的に使用されている非定型抗精神病薬(アリピプラゾール、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、およびジプラシドン)は統合失調症を持つ人々の治療において著しい進歩を示しているものの、改善された安全性プロファイルを有する新規の向精神薬の必要性が存在する。
【0010】
したがって、現在利用可能な治療薬よりも改善された治療標的選択性を有する新規の抗精神病薬の開発は、統合失調症および関連する精神病性障害の治療のための効果的でより安全な医薬品を提供するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アリールピペラジン誘導体である化合物、該化合物の合成、組成物、および統合失調症ならびに関連する精神病、例えば、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病を治療するための該化合物の使用方法を提供する。本発明はこのようなアリールピペラジン化合物を合成する方法を提供する。本発明はまた、統合失調症ならびに関連する精神病、例えば、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病を治療するための、アリールピペラジン系非定型抗精神病薬の使用方法、およびアリールピペラジン系非定型抗精神病薬の組成物を提供する。
【0012】
本発明の化合物は、統合失調症の治療に特に効果的でより安全な次世代型の新規抗精神病薬を提供する。それらは、そのきわめて望ましい薬理プロファイル、代謝プロファイル、および薬物動態プロファイルのために有利である。本発明の化合物は、以下のように設計される:
1) ドーパミン2(D2)受容体に親和性を示し;
2) セロトニン1A(5-HT1A)受容体に親和性を示し;
3) セロトニン2A(5-HT2A)受容体に親和性を示し;
4) 治療上不活性な、または最小限の活性を有する代謝物を生成する。
【0013】
一態様において、本発明は、式(1):
【化1】

【0014】
[式中、
Aは、-(CH2)n-、-O-(CH2)n-、-S-(CH2)n-、-S(O)(O)-(CH2)n-、-NH-(CH2)n-、
-CH2-O-(CH2)n-、-(CH2)n-O-CH2-CH2-、-CH2-S-(CH2)n-、-(CH2)n-S-CH2-CH2-、
-CH2-S(O)(O)-(CH2)n-、-(CH2)n-S(O)(O)-CH2-CH2-、-O-C(O)-(CH2)n-、
-S-C(O)-(CH2)n-、-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-C(O)-O-(CH2)n-、
-CH2-C(O)-NH-(CH2)n-、-CH2-C(O)-S-(CH2)n-、-(CH2)n-C(O)-O-CH2-CH2-、
-(CH2)n-C(O)-NH-CH2-CH2-、-(CH2)n-C(O)-S-CH2-CH2-、
-CH2-O-C(O)-(CH2)n-、-CH2-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-S-C(O)-(CH2)n-、
-(CH2)n-O-C(O)-CH2-CH2-、(CH2)n-NH-C(O)-CH2-CH2-、または
(CH2)n-S-C(O)-CH2-CH2-であり、ここで、nは1〜7の整数であり;
Bは、O、S、S(O)(O)、またはNR5であり;かつ
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8のそれぞれは、独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、アシルアルキルオキシカルボニル、アシルオキシアルキルオキシカルボニル、アシルアルキルオキシカルボニルアミノ、アシルオキシアルキルオキシカルボニルアミノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルキルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアルコキシ、アリールアルコキシカルボニルアルコキシ、アリールアルコキシカルボニルアルキルアミノ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルアルコキシ、アリールオキシカルボニルアルキルアミノ、カルボキシ、カルバモイル、カルバメート、カルボネート、シアノ、ハロ、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヒドロキシ、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、スルホネート、またはスルホンアミドであり、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8ならびにAは、場合により2H(重水素)、3H(トリチウム)、13C、36Cl、18F、15N、17O、18O、31P、32P、および35Sを含むがこれらに限定されない同位体により置換されていてもよい]
の化合物またはその製薬上許容される塩、ラセミ体もしくはジアステレオマー混合物を含むアリールピペラジン誘導体を提供する。
【0015】
本発明の一態様において、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0016】
本発明の一態様において、精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病のうちの1つを治療する方法であって、治療を必要とする患者に本明細書に開示される化合物を投与することを含む前記方法を説明する。
【0017】
本発明の一態様において、本明細書に開示される化合物は、精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病を治療するために使用される。
【0018】
本発明の一態様において、本明細書に開示される化合物は、精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病の治療において使用するための医薬品の製造に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、統合失調症ならびに関連する精神病、例えば、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病の治療に有用なアリールピペラジン誘導体の合成、組成物および使用方法に関する。本発明は、統合失調症ならびに関連する精神病、例えば、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病の薬物治療のための化合物、組成物および方法を提供する。
【0020】
定義
明細書および特許請求の範囲を含む本出願において使用される以下の用語は、他に明記しない限り、以下に記載する定義を有する。本明細書に直接定義されていない用語は、本発明の技術分野において理解される通りの一般に使用される意味を有するものと理解されるべきである。
【0021】
明細書および添付する特許請求の範囲において使用される場合、文脈上明白に他に指示されない限り、単数の表現は複数の指示対象をも含むことに留意しなければならない。
【0022】
標準的な化学用語の定義は、Carey and Sundberg (1992) “Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.” Vols. A and B, Plenum Press, New Yorkを含む参考文献に記載されている。本発明の実施は、他に指示されない限り、当技術分野の技術範囲内の質量分析、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の通常の方法を使用する。本明細書に記載される組成物および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990)に記載される製薬上許容される賦形剤および塩を使用して実施することができる。
【0023】
「本発明の化合物」とは、本明細書に開示される構造式(1)により包含される化合物を指す。本発明の化合物は、その化学構造および/または化学名により識別することができる。化学構造および化学名が一致しない場合には、化学構造により化合物の同一性を決定する。本発明の化合物は1個以上のキラル中心および/または二重結合を有する可能性があるので、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、エナンチオマーまたはジアステレオマーなどの立体異性体として存在し得る。したがって、本明細書に示される化学構造は、図示された化合物のすべての可能なエナンチオマーおよび立体異性体を包含し、これには、純粋な形の立体異性体(例えば純粋な幾何異性体、純粋なエナンチオマーまたは純粋なジアステレオマー)およびエナンチオマーおよび立体異性体の混合物が含まれる。エナンチオマーおよび立体異性体の混合物は、当業者に公知の分離技術または不斉合成技術を用いてその成分であるエナンチオマーまたは立体異性体に分割することができる。本発明の化合物は、エノール形、ケト形およびその混合物を含むいくつかの互変異性体としても存在し得る。したがって、本明細書に示される化学構造は、図示された化合物のすべての可能な互変異性体を包含する。本発明の化合物は、1個以上の原子が通常自然界に見出される原子量とは異なる原子量を有する、同位体標識された化合物をも含む。本発明の化合物に組み入れることが可能な同位体の例としては、2H、3H、13C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18Fおよび36Clが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明の化合物の部分構造を図示する場合、ダッシュ記号に括弧をつけたものは、部分構造の分子の残りの部分への結合の位置を示すものと理解されたい。
【0024】
「本発明の組成物」は、少なくとも1種の本発明の化合物と、該化合物と一緒に患者に投与される製薬上許容されるビヒクルとを指す。患者に投与する場合、本発明の化合物は単離された形態で投与されるが、これは合成に使用した有機反応混合物から分離されていることを意味する。
【0025】
「アルキル」は、親アルカン、アルケンまたはアルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより得られる飽和または不飽和の、分枝鎖、直鎖または環状の一価炭化水素基である。典型的なアルキル基としては、メチル;エチル、例えば、エタニル、エテニル、エチニル;プロピル、例えば、プロパン-1-イル、プロパン-2-イル、シクロプロパン-1-イル、プロプ-1-エン-1-イル、プロプ-1-エン-2-イル、プロプ-2-エン-1-イル(アリル)、シクロプロプ-1-エン-1-イル、シクロプロプ-2-エン-1-イル、プロプ-1-イン-1-イル、プロプ-2-イン-1-イル等;ブチル、例えば、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イル、シクロブタン-1-イル、ブト-1-エン-1-イル、ブト-1-エン-2-イル、2-メチル-プロプ-1-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-2-イル、ブタ-1、3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブト-1-エン-1-イル、シクロブト-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブト-1-イン-1-イル、ブト-1-イン-3-イル、ブト-3-イン-1-イル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
用語「アルキル」は、特に、任意の飽和度および飽和レベルを有する基、すなわち、炭素-炭素単結合のみを有する基、1個以上の炭素-炭素二重結合を有する基、1個以上の炭素-炭素三重結合を有する基ならびに炭素-炭素単結合、二重結合および三重結合を混合して有する基を含むことを意図している。特定の飽和レベルを意図する場合には、「アルカニル」、「アルケニル」、および「アルキニル」という表現を使用する。好ましくは、アルキル基は1〜20個の炭素原子を含み、より好ましくは1〜10個の炭素原子を含む。
【0027】
「アルカニル」は、親アルカンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより得られる飽和分枝鎖、直鎖または環状アルキル基を指す。典型的なアルカニル基としては、メタニル;エタニル;プロパニル、例えば、プロパン-1-イル、プロパン-2-イル(イソプロピル)、シクロプロパン-1-イル等;ブタニル、例えば、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル(sec-ブチル)、2-メチル-プロパン-1-イル(イソブチル)、2-メチル-プロパン-2-イル(t-ブチル)、シクロブタン-1-イル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「アルケニル」は、親アルケンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより得られる少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する不飽和分枝鎖、直鎖または環状アルキル基を指す。この基は、二重結合に関してシスまたはトランス配置のいずれかであり得る。典型的なアルケニル基としては、エテニル;プロペニル、例えば、プロプ-1-エン-1-イル、プロプ-1-エン-2-イル、プロプ-2-エン-1-イル(アリル)、プロプ-2-エン-2-イル、シクロプロプ-1-エン-1-イル、シクロプロプ-2-エン-1-イル;ブテニル、例えば、ブト-1-エン-1-イル、ブト-1-エン-2-イル、2-メチル-プロプ-1-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブト-1-エン-1-イル、シクロブト-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「アルキニル」は、親アルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより得られる少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する不飽和分枝鎖、直鎖または環状アルキル基を指す。典型的なアルキニル基としては、エチニル;プロピニル、例えば、プロプ-1-イン-1-イル、プロプ-2-イン-1-イル等;ブチニル、例えば、ブト-1-イン-1-イル、ブト-1-イン-3-イル、ブト-3-イン-1-イル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「アシル」は、基-C(O)R [式中、Rは、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「アシルオキシアルキルオキシカルボニル」は、基-C(O)OCR’R’’OC(O)R”’[式中、R’、R’’、およびR’’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-C(O)OCH2OC(O)CH3、-C(O)OCH2OC(O)CH2CH3、-C(O)OCH(CH3)OC(O)CH2CH3、-C(O)OCH(CH3)OC(O)C6H5等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「アシルアルキルオキシカルボニル」は、基-C(O)OCR’R’’C(O)R”’[式中、R’、R’’、およびR”’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-C(O)OCH2C(O)CH3、-C(O)OCH2C(O)CH2CH3、-C(O)OCH(CH3)C(O)CH2CH3、-C(O)OCH(CH3)C(O)C6H5等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
「アシルオキシアルキルオキシカルボニルアミノ」は、基-NRC(O)OCR’R’’OC(O)R”’[式中、R、R’、R’’、およびR’’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-NHC(O)OCH2OC(O)CH3、-NHC(O)OCH2OC(O)CH2CH3、-NHC(O)OCH(CH3)OC(O)CH2CH3、-NHC(O)OCH(CH3)OC(O)C6H5等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
「アシルアルキルオキシカルボニルアミノ」は、基-NRC(O)OCR’R’’C(O)R”’[式中、R、R’、R’’、およびR’’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-NHC(O)OCH2C(O)CH3、-NHC(O)OCH2C(O)CH2CH3、-NHC(O)OCH(CH3)C(O)CH2CH3、-NHC(O)OCH(CH3)C(O)C6H5等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「アシルアミノ」は、本明細書に定義される通りの「アミド」を指す。
【0036】
「アルキルアミノ」は、基-NHR [式中、Rは、本明細書に定義される通りのアルキルまたはシクロアルキル基を表し、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を意味する。代表的な例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、1-メチルエチルアミノ、シクロヘキシルアミノ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
「アルコキシ」は、基-OR [式中、Rは、本明細書に定義される通りのアルキルまたはシクロアルキル基を表し、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「アルコキシカルボニル」は、基-C(O)-アルコキシ[式中、アルコキシは本明細書に定義される通りである]を指す。
【0039】
「アルコキシカルボニルアルコキシ」は、基-OCR’R’’C(O)-アルコキシ[式中、アルコキシは本明細書に定義される通りであり、同様に、R’およびR’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-OCH2C(O)OCH3、-OCH2C(O)OCH2CH3、-OCH(CH3)C(O)OCH2CH3、-OCH(C6H5)C(O)OCH2CH3、-OCH(CH2C6H5)C(O)OCH2CH3、-OC(CH3)(CH3)C(O)OCH2CH3等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「アルコキシカルボニルアルキルアミノ」は、基-NRCR’R’’C(O)-アルコキシ[式中、アルコキシは本明細書に定義される通りであり、同様に、R、R’およびR’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-NHCH2C(O)OCH3、-N(CH3)CH2C(O)OCH2CH3、-NHCH(CH3)C(O)OCH2CH3、-NHCH(C6H5)C(O)OCH2CH3、-NHCH(CH2C6H5)C(O)OCH2CH3、-NHC(CH3)(CH3)C(O)OCH2CH3等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「アルキルスルホニル」は、基-S(O)2R [式中、Rは、本明細書に定義される通りのアルキルまたはシクロアルキル基であり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
「アルキルスルフィニル」は、基-S(O)R [式中、Rは、本明細書に定義される通りのアルキルまたはシクロアルキル基であり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「アルキルチオ」は、基-SR [式中、Rは、本明細書に定義される通りのアルキルまたはシクロアルキル基であり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「アミド」または「アシルアミノ」は、基-NR’C(O)R’’[式中、R’およびR’’は、それぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、シクロヘキシルメチルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、ベンジルカルボニルアミノ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「アミノ」は、基-NH2を指す。
【0046】
「アリール」は、親芳香環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価の芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基としては、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオリン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイデン(pleidene)、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレン等に由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、アリール基は6〜20個の炭素原子を含み、より好ましくは6〜12個の炭素原子を含む。
【0047】
「アリールアルキル」は、炭素原子(典型的には末端炭素原子またはsp3炭素原子)に結合する水素原子の1つがアリール基により置換されている非環式アルキルを指す。典型的なアリールアルキル基としては、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イル等が挙げられるが、これらに限定されない。特定のアルキル部分を意図する場合には、アリールアルカニル、アリールアルケニルおよび/またはアリールアルキニルの命名法を用いる。好ましくは、アリールアルキル基は(C6-C30)アリールアルキルであり(例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分が(C1〜C10)であり、アリール部分が(C6〜C20)である)、より好ましくは、アリールアルキル基は(C6〜C20)アリールアルキルである(例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分が(C1〜C8)であり、アリール部分が(C6〜C12)である)。
【0048】
「アリールアルコキシ」は、-O-アリールアルキル基[式中、アリールアルキルは本明細書に定義される通りであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0049】
「アリールアルコキシカルボニルアルコキシ」は、基-OCR’R’’C(O)-アリールアルコキシ[式中、アリールアルコキシは本明細書に定義される通りであり、同様に、R’およびR’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-OCH2C(O)OCH2C6H5、-OCH(CH3)C(O)O-CH2C6H5、-OCH(C6H5)C(O)O-CH2C6H5、-OCH(CH2C6H5)C(O)O-CH2C6H5、-OC(CH3)(CH3)C(O)O-CH2C6H5等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
「アリールアルコキシカルボニルアルキルアミノ」は、基-NRCR’R’’C(O)-アリールアルコキシ[式中、アリールアルコキシは本明細書に定義される通りであり、同様に、R、R’およびR’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-NHCH2C(O)OCH2C6H5、-N(CH3)CH2C(O)OCH2C6H5、-NHCH(CH3)C(O)OCH2C6H5、-NHCH(C6H5)C(O)OCH2C6H5、-NHCH(CH2C6H5)C(O)OCH2C6H5、-NHC(CH3)(CH3)C(O)OCH2C6H5等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
「アリールオキシカルボニル」は、基-C(O)-O-アリール[式中、アリールは本明細書に定義される通りであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0052】
「アリールオキシカルボニルアルコキシ」は、基-OCR’R’’C(O)-アリールオキシ[式中、アリールオキシは本明細書に定義される通りであり、同様に、R’およびR’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-OCH2C(O)OC6H5、-OCH(CH3)C(O)OC6H5、-OCH(C6H5)C(O)OC6H5、-OCH(CH2C6H5)C(O)OC6H5、-OC(CH3)(CH3)C(O)OC6H5等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
「アリールオキシカルボニルアルキルアミノ」は、基-NRCR’R’’C(O)-アリールオキシ[式中、アリールオキシは本明細書に定義される通りであり、同様に、R、R’およびR’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、-NHCH2C(O)OC6H5、-N(CH3)CH2C(O)OC6H5、-NHCH(CH3)C(O)OC6H5、-NHCH(C6H5)C(O)OC6H5、-NHCH(CH2C6H5)C(O)OC6H5、-NHC(CH3)(CH3)C(O)OC6H5等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
「カルバモイル」は、基-C(O)NRR [式中、それぞれのR基は独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0055】
「カルバメート」は、基-NR’C(O)OR’’[式中、R’およびR’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、メチルカルバメート(-NHC(O)OCH3)、エチルカルバメート(-NHC(O)OCH2CH3)、ベンジルカルバメート(-NHC(O)OCH2C6H5)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
「カルボネート」は、基-OC(O)OR [式中、R は、本明細書に定義される通りのアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、メチルカルボネート(-C(O)OCH3)、シクロヘキシルカルボネート(-C(O)OC6H11)、フェニルカルボネート(-C(O)OC6H5)、ベンジルカルボネート(-C(O)OCH2C6H5)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
「カルボキシ」は、基-C(O)OHを意味する。
【0058】
「シアノ」は、基-CNを意味する。
【0059】
「シクロアルキル」は、置換または無置換環状アルキル基を指す。特定の飽和レベルを意図する場合には、「シクロアルカニル」または「シクロアルケニル」の命名法を用いる。典型的なシクロアルキル基としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等に由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、シクロアルキル基は(C3〜C10)シクロアルキル、より好ましくは(C3〜C7)シクロアルキルである。
【0060】
「シクロヘテロアルキル」は、飽和または不飽和環状アルキル基であって、1個以上の炭素原子(およびそれに付随する水素原子)が独立して同一のまたは異なるヘテロ原子により置換されているものを指す。炭素原子を置換する典型的なヘテロ原子としては、N、P、O、S、Si等が挙げられるが、これらに限定されない。特定の飽和レベルを意図する場合には、「シクロヘテロアルカニル」または「シクロヘテロアルケニル」の命名法を用いる。典型的なシクロヘテロアルキル基としては、エポキシド、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジン、キヌクリジン等に由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
「シクロヘテロアルコキシカルボニル」は、基-C(O)-OR [式中、Rは、本明細書に定義される通りのシクロヘテロアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0062】
「ジアルキルアミノ」は、基-NRR’[式中、RおよびR’は独立して、本明細書に定義される通りのアルキルまたはシクロアルキル基を表し、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を意味する。代表的な例としては、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジ-(1-メチルエチル)アミノ、(シクロヘキシル)(メチル)アミノ、(シクロヘキシル)(エチル)アミノ、(シクロヘキシル)(プロピル)アミノ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
「薬物に由来する」とは、その薬物と構造的に関連する断片を指す。断片の構造は、ヘテロ原子(NまたはO)に結合する水素原子が別の基(典型的にはプロ部分(promoiety))との共有結合により置換されている点を除いて、薬物と同一である。薬物がカルボン酸、ホスホン酸またはリン酸の塩の形態である場合、その薬物に由来する対応する構造断片はプロトン化された酸の形態に由来するものと見なされることに留意されたい。
【0064】
「薬物」は、患者または哺乳動物に有効量で投与した場合に、治療および/または予防および/または診断において有用性を示す化合物を指す。
【0065】
「エステル」は、基-C(O)OR [式中、Rは、本明細書に定義される通りのアルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。代表的な例としては、メチルエステル(-C(O)OCH3)、シクロヘキシルエステル(-C(O)OC6H11)、フェニルエステル(-C(O)OC6H5)、ベンジルエステル(-C(O)OCH2C6H5)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
「エーテル」は、基-OR [式中、Rは、本明細書に定義される通りのアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0067】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。
【0068】
「ヘテロアルコキシ」は、-O-ヘテロアルキル基[ここで、ヘテロアルキルは本明細書に定義される通りであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を意味する。
【0069】
「ヘテロアルキル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル」は、それぞれアルキル、アルカニル、アルケニルおよびアルキニル基であって、1個以上の炭素原子(およびそれに付随する水素原子)がそれぞれ独立して同一のまたは異なるヘテロ原子基により置換されているものを指す。典型的なヘテロ原子基としては、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-OS-、-NR’-、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR’-、-PH-、-P(O)2-、-O-P(O)-、-S(O-、-S(O)2-、-SnH2-等[式中、R’は、水素、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アリールまたは置換されたアリールであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
「ヘテロアリール」は、親芳香族複素環系の1個の原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価のヘテロ芳香族基を指す。典型的なヘテロアリール基としては、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテン等から誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ヘテロアリール基は5〜20員ヘテロアリールであり、5〜10員ヘテロアリールが特に好ましい。好ましいヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾールおよびピラジンから誘導されるものである。
【0071】
「ヘテロアリールオキシカルボニル」は、基-C(O)-OR [式中、Rは、本明細書に定義される通りのヘテロアリールであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0072】
「ヘテロアリールアルキル」は、炭素原子(典型的には末端炭素原子またはsp3炭素原子)に結合する水素原子の1つがヘテロアリール基により置換されている非環式アルキル基を指す。特定のアルキル部分を意図する場合には、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニルおよび/またはヘテロアリールアルキニルの命名法を用いる。好ましくは、ヘテロアリールアルキル基は、6〜30個の炭素を有するヘテロアリールアルキルであり(例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分が1〜10員であり、ヘテロアリール部分が5〜20員ヘテロアリールである)、より好ましくは、6〜20員ヘテロアリールアルキルである(例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分が1〜8員であり、ヘテロアリール部分が5〜12員ヘテロアリールである)。
【0073】
「ヒドロキシ」は、基-OHを意味する。
【0074】
「オキソ」は、2価の基=Oを意味する。
【0075】
本明細書において使用する場合、用語「患者」は、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、哺乳類のクラスに属するすべてのメンバー:ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジー、および他の類人猿およびサル種;家畜、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;家庭用家畜、例えばウサギ、イヌおよびネコ;実験動物、例えば、齧歯類、例えばラット、マウスおよびモルモット等が挙げられるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例としては、鳥、魚等が挙げられるが、これらに限定されない。この用語は特定の年齢および性別を意味しない。
【0076】
「製薬上許容される」は、連邦政府または州政府の監督官庁により承認されているか承認見込みであること、またはアメリカ薬局方または他の一般に認められている薬局方に動物およびより特定的にはヒトにおける使用に関して記載されていることを意味する。
【0077】
「製薬上許容される塩」は、製薬上許容され、親化合物の望まれる薬理活性を有する本発明の化合物の塩を指す。このような塩としては、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等のような無機酸と共に形成される酸付加塩;または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2,2,2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等のような有機酸と共に形成される酸付加塩;または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはアルミニウムイオンにより置換された場合、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン等のような有機塩基に配位する場合に形成される塩が挙げられる。
【0078】
「製薬上許容されるビヒクル」は、本発明の化合物と一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤または担体を指す。
【0079】
「ホスフェート」は、基-OP(O)(OR’)(OR’’) [式中、R’およびR’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0080】
「ホスホネート」は、基-P(O)(OR’)(OR’’) [式中、R’およびR’’はそれぞれ独立して、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0081】
「予防する」または「予防」は、疾患または障害を獲得するリスクの低下(すなわち、疾患に曝されるか罹りやすくなっているが、未だに疾患の症状を経験していないか症状が現れていない患者において、疾患の臨床症状の少なくとも1つが発達しないようにすること)を指す。
【0082】
「保護基」は、分子中の反応性の基に結合した時に、その反応性を遮蔽、低減または阻止する原子の群を指す。保護基の例は、Green et al., “Protective Groups in Organic Chemistry”, (Wiley, 2nd ed. 1991)、およびHarrison et al., “Compendium of Synthetic Organic Methods”, vols. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996)に記載されている。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(“CBZ”)、tert-ブトキシカルボニル(“Boc”)、トリメチルシリル(“TMS”)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(“SES”)、トリチルおよび置換されたトリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシ-カルボニル(“FMOC”)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(“NVOC”)等が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なヒドロキシ保護基としては、ヒドロキシ基がアセチル化またはアルキル化(例えばベンジル化)されるもの、およびトリアルキルシリルエーテルおよびアリルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
「ラセミ体」は、キラル分子のエナンチオマーの等モル混合物を指す。
【0084】
「置換された」は、1個以上の水素原子がそれぞれ独立して、同一のまたは異なる置換基により置き換えられた基を指す。典型的な置換基としては、-X、-R54、-O-、=O、-OR54、-SR54、-S、=S、-NR54R55、=NR54、-CX3、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2O-、-S(O)2OH、-S(O)2OR54、-OS(O)2O31、-OS(O)2R54、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR14)(O31)、-OP(O)(OR54)(OR55)、-C(O)R54、-C(S)R54、-C(O)OR54、-C(O)NR54R55、-C(O)O-、-C(S)OR54、-NR56C(O)NR54R55、-NR56C(S)NR54R55、-NR57C(NR56)NR54R55、および-C(NR56)NR54R55 [式中、それぞれのXは独立してハロゲンであり;R54、R55、R56およびR57はそれぞれ独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、-NR58R59、-C(O)R58または-S(O)2R58であり、または、場合により、R58およびR59はそれら両方が結合する原子と一緒になってシクロヘテロアルキルまたは置換されたシクロヘテロアルキル環を形成し;R58およびR59は独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキルである]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
「サルフェート」は、基-OS(O)(O)OR [式中、Rは、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0086】
「スルホンアミド」は、基-S(O)(O)NR’R”[式中、R’およびR”は独立して、本明細書に定義された通りの、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよく、または、場合により、R’およびR”はそれら両方が結合する原子と一緒になって、シクロヘテロアルキルまたは置換されたシクロヘテロアルキル環を形成する]を指す。代表的な例としては、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、4-(NR’”)-ピペラジニルまたはイミダゾリル基(ここで、前記基は場合により本明細書に記載される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。R’”は、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい。
【0087】
「スルホネート」は、基-S(O)(O)OR [式中、Rは、本明細書に定義される通りの水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0088】
「チオ」は基-SHを意味する。
【0089】
「チオエーテル」は、基-SR [式中、Rは、本明細書に定義される通りのアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは場合により本明細書に定義される通りの1個以上の置換基により置換されていてもよい]を指す。
【0090】
疾患または障害を「治療する」または疾患または障害の「治療」は、一実施形態において、疾患またな障害を改善する(すなわち、疾患の発達またはその少なくとも1つの臨床症状を停止もしくは低下させる)ことを指す。別の実施形態において、「治療する」または「治療」は、少なくとも1つの身体パラメーター(患者には認識できないものであってもよい)を改善することを指す。さらに別の実施形態において、「治療する」または「治療」は、疾患または障害を、身体的に(例えば認識できる症状の安定化)、生理的に(例えば、身体パラメーターの安定化)のいずれかまたは両方で、阻害することを指す。さらに別の実施形態において、「治療する」または「治療」は、疾患または障害の開始を遅らせることを指す。
【0091】
「治療上有効な量」は、疾患の治療のために患者に投与した場合にその疾患の治療に効果を示すのに十分な化合物の量を意味する。「治療上有効な量」は、化合物、疾患およびその重篤度ならびに治療される患者の年齢、体重等に依存して変化し、当業者が過度の実験をすることなく決定することができる。
【0092】
以下に本発明の好ましい実施形態を詳細に論じる。本発明を好ましい実施形態に関して説明するが、これは発明をそれらの好ましい実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されよう。反対に、代替のもの、改変されたもの、および同等のものも、添付する特許請求の範囲により定義される発明の精神および範囲に包含されることが意図されている。
【0093】
本発明の化合物
本発明の一態様において、式(1)の化合物は、
【化2】

【0094】
[式中、
Aは、-(CH2)n-、-O-(CH2)n-、-S-(CH2)n-、-S(O)(O)-(CH2)n-、-NH-(CH2)n-、
-CH2-O-(CH2)n-、-(CH2)n-O-CH2-CH2-、-CH2-S-(CH2)n-、-(CH2)n-S-CH2-CH2-、
-CH2-S(O)(O)-(CH2)n-、-(CH2)n-S(O)(O)-CH2-CH2-、-O-C(O)-(CH2)n-、
-S-C(O)-(CH2)n-、-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-C(O)-O-(CH2)n-、
-CH2-C(O)-NH-(CH2)n-、-CH2-C(O)-S-(CH2)n-、-(CH2)n-C(O)-O-CH2-CH2-、
-(CH2)n-C(O)-NH-CH2-CH2-、-(CH2)n-C(O)-S-CH2-CH2-、
-CH2-O-C(O)-(CH2)n-、-CH2-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-S-C(O)-(CH2)n-、
-(CH2)n-O-C(O)-CH2-CH2-、(CH2)n-NH-C(O)-CH2-CH2-、または
(CH2)n-S-C(O)-CH2-CH2-であり、ここで、nは1〜7の整数であり;
Bは、O、S、S(O)(O)、またはNR5であり;かつ
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8のそれぞれは、独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、アシルアルキルオキシカルボニル、アシルオキシアルキルオキシカルボニル、アシルアルキルオキシカルボニルアミノ、アシルオキシアルキルオキシカルボニルアミノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルキルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアルコキシ、アリールアルコキシカルボニルアルコキシ、アリールアルコキシカルボニルアルキルアミノ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルアルコキシ、アリールオキシカルボニルアルキルアミノ、カルボキシ、カルバモイル、カルバメート、カルボネート、シアノ、ハロ、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヒドロキシ、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、スルホネート、またはスルホンアミドであり、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8ならびにAは、場合により2H(重水素)、3H(トリチウム)、13C、36Cl、18F、15N、17O、18O、31P、32P、および35Sを含むがこれらに限定されない同位体により置換されていてもよい]
またはその製薬上許容される塩、ラセミ体もしくはジアステレオマー混合物
のように表される。
【0095】
別の態様において、式(1a)の化合物は、
【化3】

【0096】
[式中、
Aは、-(CH2)n-、-O-(CH2)n-、-S-(CH2)n-、-S(O)(O)-(CH2)n-、-NH-(CH2)n-、
-CH2-O-(CH2)n-、-(CH2)n-O-CH2-CH2-、-CH2-S-(CH2)n-、-(CH2)n-S-CH2-CH2-、
-CH2-S(O)(O)-(CH2)n-、-(CH2)n-S(O)(O)-CH2-CH2-、-O-C(O)-(CH2)n-、
-S-C(O)-(CH2)n-、-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-C(O)-O-(CH2)n-、
-CH2-C(O)-NH-(CH2)n-、-CH2-C(O)-S-(CH2)n-、-(CH2)n-C(O)-O-CH2-CH2-、
-(CH2)n-C(O)-NH-CH2-CH2-、-(CH2)n-C(O)-S-CH2-CH2-、
-CH2-O-C(O)-(CH2)n-、-CH2-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-S-C(O)-(CH2)n-、
-(CH2)n-O-C(O)-CH2-CH2-、(CH2)n-NH-C(O)-CH2-CH2-、または
(CH2)n-S-C(O)-CH2-CH2-であり、ここで、nは1〜7の整数であり;
Bは、O、S、S(O)(O)、またはNR5であり;かつ
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8のそれぞれは、独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、アシルアルキルオキシカルボニル、アシルオキシアルキルオキシカルボニル、アシルアルキルオキシカルボニルアミノ、アシルオキシアルキルオキシカルボニルアミノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルキルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアルコキシ、アリールアルコキシカルボニルアルコキシ、アリールアルコキシカルボニルアルキルアミノ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルアルコキシ、アリールオキシカルボニルアルキルアミノ、カルボキシ、カルバモイル、カルバメート、カルボネート、シアノ、ハロ、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヒドロキシ、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、スルホネート、またはスルホンアミドであり、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8ならびにAは、場合により2H(重水素)、3H(トリチウム)、13C、36Cl、18F、15N、17O、18O、31P、32P、および35Sを含むがこれらに限定されない同位体により置換されていてもよい]
またはその製薬上許容される塩、ラセミ体もしくはジアステレオマー混合物
のように表される。
【0097】
本発明の別の態様において、Aは-(CH2)n-である。
【0098】
本発明の別の態様において、Aは、-O-(CH2)n-、-S-(CH2)n-、-CH2-O-(CH2)n-、-(CH2)n-O-CH2-CH2-、-CH2-S-(CH2)n-、または-(CH2)n-S-CH2-CH2-である。
【0099】
本発明の別の態様において、Aは、-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-C(O)-NH-(CH2)n-または-(CH2)n-C(O)-NH-CH2-CH2-である。
【0100】
本発明の別の態様において、BはOである。
【0101】
本発明の別の態様において、R4はHである。
【0102】
本発明の別の態様において、R1およびR2のそれぞれは独立して、H、ハロゲン、ハロアルキルまたはアルコキシである。
【0103】
本明細書に記載されるこの発明の化合物は、以下の特徴または特性の1つ以上を有し得る:
(a) 本発明の化合物は、ドーパミンD2受容体に対する親和性を有し得る;
(b) 本発明の化合物は、セロトニン5-HT1A受容体に対する親和性を有し得る;
(c) 本発明の化合物は、セロトニン5-HT2A受容体に対する親和性を有し得る;
(d) 親薬物の電気生理学的性質に関わらず、通常治療に使用する親薬物の血漿濃度で、一次代謝産物がHERG(ヒトエーテル・ア・ゴー・ゴー(ether-a-go-go)関連遺伝子)カリウムチャネルにおいて無視できる程度の阻害活性しか示さない(例えば、代謝産物の濃度が通常治療に使用する親化合物の濃度の少なくとも5倍高くならないとHERGカリウムチャネルにおける活性を観察できない);
(e) 本発明の化合物、ならびにその代謝産物は、他の薬物と共投与された場合に、代謝による薬物-薬物相互作用(DDI)を引き起こさないか、その発生率がより少ない;
(f) 本発明の化合物、ならびにその代謝産物は、単独で投与された場合に、肝機能検査(LFT)値を実質的に上昇させない;
(g) 化合物の経口バイオアベイラビリティーは、標準的な薬理学による経口用製剤を用いる経口投与と整合性が取れたものである。一方で、化合物およびその組成物は、長時間にわたり一定で制御可能な血中濃度を作り出す送達系を使用して投与することもできる。
【0104】
一態様において、本発明は上に特定した特徴または特性の2つ以上を有する化合物を提供する。別の態様において、本発明は上に特定した特徴または特性の3つ以上を有する化合物を提供する。好ましくは、本発明の化合物は7つの特徴または特性のすべてを有する。
【0105】
本明細書に開示される化合物のさらなる改変は、当業者により容易に実施され得る。したがって、例示された化合物の類似物および塩は本発明の範囲に包含される。本発明の化合物の知識により、当業者は入手可能な基剤から公知の方法を用いてこれらの化合物を合成することができる。本出願において、用語「類似物」は別の化合物と実質的に同じであるが、例えばさらなる側基を加えることにより改変されている化合物を指す。本出願において、用語「類似物」は、別の化合物と実質的に同じであるが、化合物中のある位置で原子または分子が置換されている化合物も指す。
【0106】
本発明はさらに、エナンチオマーとして単離された化合物および該化合物を含む組成物に関する。本発明の化合物の単離されたエナンチオマーは、他方の型を実質的に含まない(すなわち、エナンチオマー過剰である)。言い換えると、化合物の「R」体は、その化合物の「S」体を実質的に含まず、そのため「S」体のエナンチオマー過剰である。反対に、化合物の「S」体は、その化合物の「R」体を実質的に含まず、そのため「R」体のエナンチオマー過剰である。本発明の一実施形態において、単離されたエナンチオマー化合物は、約80%以上エナンチオマー過剰である。したがって、例えば、化合物は、約90%以上エナンチオマー過剰、好ましくは約95%以上エナンチオマー過剰、より好ましくは約97%以上エナンチオマー過剰、またはさらに好ましくは99%以上または99%を越えるエナンチオマー過剰である。
【0107】
本発明の化合物の合成
本発明の化合物は、スキーム1〜2に図示する合成方法により得ることができる。いくつかの方法はアリールピペラジン誘導体の合成方法として既に当技術分野の文献に記載されている。本発明の化合物およびその中間物質を調製するために有用な出発物質および構築ブロックは市販されているか、周知の合成法により調製することができる(例えば、Green et al., “Protective Groups in Organic Chemistry,”(Wiley , 4th ed., 2006); Harrison et al “Compendium of Synthetic Organic Methods,” vols. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996); “Beilstein Handbook of Organic Chemistry, Frankfurt, Germany; Feiser et al, “Reagents for Organic Synthesis,” Volumes 1-45, Karger, 1991; March , Advanced Organic Chemistry,” Wiley Interscience, 4th ed., 1991; Larock “Comprehensive Organic Transformations,” Wiley-VCH Publishers, 2nd ed., 1999; Paquette, “Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,” John Wiley and Sons, 1st ed., 1995を参照されたい)。本明細書に記載されるアリールピペラジン誘導体の合成のための他の方法は、当技術分野の文献に記載されているか、上記の参照文献を考慮すれば当業者に容易に明らかになるものであり、それらを用いて本発明の化合物を合成することが可能である。したがって、本明細書のスキームに提示される方法は、包括的なものではなく、一例に過ぎない。
【0108】
1つの方法において、式(1)を含むアリールピペラジン誘導体は、スキーム1に記載される通りに調製された。出発構築ブロックの6-ニトロベンズオキサジノン1は、Sigma-Aldrich社より購入した。化合物1は文献により周知の方法により合成することも可能である。弱いルイス酸である塩化銅(1)(CuCl)の存在下、メタノールなどのプロトン性溶媒中で、水素化ホウ素カリウム(KBH4)のような還元剤を用いて化合物1のニトロ部分を還元して、6-アミノベンズオキサジノン2を得た。目的とするベンズオキサジノン4は、アミン2と好適なカルボン酸3とを、標準的なカップリング条件下で、弱い塩基4-(N,N,-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下、極性非プロトン性溶媒中で、カップリング剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いてカップリングすることにより調製した。カルボン酸3は、好適なアリールピペラジンを適切なブロモカルボン酸エステルによりアルキル化した後、鹸化することにより調製した。ベンゾオキサジノン誘導体4は、標準的な条件下で塩化水素により処理することにより、塩酸塩5に変換した。ベンゾオキサジノン4は、当分野において周知の方法を用いて、他の製薬上許容される塩(例えばメタンスルホン酸塩および低級脂肪族カルボン酸塩)の形態に変換することもできる。
【化4】

【0109】
別の方法において、式(1)を含むアリールピペラジン誘導体は、スキーム2に記載される通りに調製された。出発構築ブロック4-メトキシ-2-ニトロフェノール6は、Sigma-Aldrich社より購入した。ニトロフェノール6を、ブロモ酢酸エチル7により、弱い塩基である炭酸カリウム(K2CO3)の存在下、アセトン中で加熱することによりアルキル化して、エステル8を得た。エステル8を、無水ジクロロメタン中、還流温度で塩化アルミニウム(AlCl3)により処理して、対応するニトロフェノール誘導体9を得た。化合物11は、ニトロフェノール9を1,4-ジブロモブタン10により、化合物8の調製について記載したものと同一の反応条件下でアルキル化することにより調製した(スキーム2)。化合物11とアリールピペラジン12とを、アセトニトリル中、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の存在下で、約60〜70℃で8〜16時間反応させて、化合物13を得た。化合物13を、エタノールおよび酢酸の溶媒混合物中、金属鉄の存在下、還流温度で塩化鉄(III)を用いる還元条件下に置くと、対応するベンズオキサジノン14が得られた。これを標準的な条件下で塩化水素により処理して塩酸塩15に変換した。触媒のパラジウム-活性炭(Pd/C)の存在下での水素化のような他の標準的なニトロ基還元条件によっても対応する環化生成物14が得られる。ベンズオキサジノン14は、当分野において周知の方法を用いて、他の製薬上許容される塩(例えば、メタンスルホン酸塩および低級脂肪族カルボン酸塩)の形態に変換することもできる。
【化5】

【0110】
構造式(1)の化合物の治療への使用
本発明は、統合失調症ならびに関連する精神病、例えば、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病の治療に有用なアリールピペラジン系化合物の合成、組成物および使用方法に関する。本発明は、このようなアリールピペラジン系抗精神病薬の合成方法を提供する。本発明はまた、統合失調症ならびに関連する精神病、例えば、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病を治療するための、アリールピペラジン系抗精神病薬の使用方法およびアリールピペラジン系抗精神病薬の組成物を提供する。
【0111】
本発明によれば、構造式(1)の化合物および構造式(1)の化合物を含有する組成物は、統合失調症を病む患者、好ましくはヒトに投与される。さらに、ある実施形態において、本発明の化合物および/または組成物は、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病の治療または予防手段として患者、好ましくはヒトに投与される。
【0112】
したがって、当業者は、抗精神病薬が必要とされる医学的状態を治療するために、構造式(1)の化合物および/または構造式(1)の化合物を含む組成物を容易にアッセイして使用することができる。
【0113】
治療的/予防的投与
構造式(1)の化合物および/または該化合物を含有する組成物は、有利にはヒトの医療において使用され得る。上に詳細に説明した通り、構造式(1)の化合物および該化合物を含有する組成物は、統合失調症ならびに関連する精神病、例えば、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病の治療に有用である。
【0114】
上記の疾患または障害を治療または予防するために使用する場合、本発明の化合物および/または組成物は、単独で、他の薬剤と組み合わせて投与または適用することができる。本発明の化合物および/または組成物は単独で、他の薬理活性を有する薬剤(本発明の他の化合物およびまたは組成物を含む)と組み合わせて投与または適用することもできる。
【0115】
本発明は治療上有効な量の本発明の組成物および/または化合物を患者に投与することによる治療および予防の方法を提供する。患者は動物であってよく、より好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0116】
本発明の化合物および/または組成物は、1種以上の本発明の化合物および/または組成物を含み、好ましくは経口投与される。本発明の化合物および/または組成物は、他の任意の都合の良い経路により、例えば注入またはボーラス注射により、上皮層または粘膜層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜等)を通した吸収により、投与してもよい。投与は全身投与または局所投与であり得る。本発明の化合物および/または組成物を投与するために使用し得るさまざまな送達系が知られている(例えばリポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル、カプセル等へのカプセル化)。投与の方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、腟内(intravabinal)、経皮、直腸、吸入による、または局所、特に耳、鼻、目または皮膚への投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
特に、好ましい実施形態において、本発明の化合物および/または組成物は、持続放出系、好ましくは経口持続放出系を用いて送達される。一実施形態において、ポンプを使用し得る(Langer, supra; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref Biomed. Eng. 14:201; Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照されたい)。
【0118】
別の実施形態において、高分子材料を使用し得る(“Medical Applications of Controlled Release,” Langer and Wise (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, 1983, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol Chem. 23:61を参照されたい;さらに、Levy et al., 1985, Science 228:190; During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howard et al, 1989, J. Neurosurg. 71:105も参照されたい)。好ましい実施形態において、高分子材料は経口持続放出送達に使用される。好ましい高分子としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースが挙げられる(最も好ましいのは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである)。他の好ましいセルロースエーテルは当技術分野の文献に記載されている(Bamba et al., Int. J. Pharm., 1979, 2, 307)。
【0119】
別の実施形態において、腸溶コーティング製剤を経口持続放出投与に使用することができる。好ましいコーティング材料としては、pH依存性溶解度を有する高分子(すなわち、pH制御放出)、遅いまたはpHに依存する膨潤、崩壊または侵食速度を有する高分子(すなわち、時間制御放出)、酵素により分解される高分子(すなわち、酵素制御放出)および圧力の増加により破壊される硬い層を形成する高分子(すなわち、圧力制御放出)が挙げられる。
【0120】
さらに別の実施形態において、経口持続放出投与に浸透圧送達系を使用する(Verma et al., Drug Dev. Ind. Pharm., 2000, 26:695-708)。好ましい実施形態において、OROS(登録商標)浸透圧送達系を経口持続放出送達装置として使用する(例えば、Theeuwes et al., 米国特許第3,845,770号;およびTheeuwes et al, 米国特許第3,916,899号を参照されたい)。
【0121】
さらに別の実施形態において、制御放出系は本発明の化合物および/または組成物の標的に近接して置くことができ、これにより必要量が全身用量の何分の一かになる(例えば、Goodson, in “Medical Applications of Controlled Release,” supra, vol. 2, pp. 115-138 (1984)を参照されたい)。Langer, 1990, Science 249:1527-1533に論じられる他の制御放出系も使用することができる。
【0122】
本発明の構造式(1)の化合物および/または該化合物を含有する組成物は、化学的および/または酵素的に開裂し得る。哺乳動物の胃、腸管腔、腸組織、血液、肝臓、脳または他の好適な組織に存在する1種以上の酵素が本発明の化合物および/または組成物を酵素的に開裂し得る。
【0123】
本発明の組成物
本発明の一態様において、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0124】
本組成物は、治療上有効な量の1種以上の本発明の化合物を、好ましくは精製された形で、患者への適切な投与のための剤形を提供するための好適な量の製薬上許容されるビヒクルと共に含有する。患者に投与する場合、本発明の化合物および製薬上許容されるビヒクルは、好ましくは無菌である。本発明の化合物を静脈内投与する場合には水が好適なビヒクルである。生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセリン水溶液も、液体ビヒクルとして、特に注射溶液に使用することができる。好適な製薬用ビヒクルとしては、例えばデンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレングリコール、水、エタノール等のような賦形剤も挙げられる。本薬剤、またはpH緩衝剤、さらに、助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤および着色剤を使用してもよい。
【0125】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、通常の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉末化、および乳化、カプセル化、取り込みまたは凍結乾燥工程により製造することができる。医薬組成物は、本発明の化合物の医薬品として使用することができる製剤への加工を容易にするために、1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤、賦形剤または助剤を用いて通常の方法により製剤化することができる。適切な製剤は選択された投与経路に依存する。
【0126】
本発明の組成物は、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、およびカプセル剤、液体を含有するカプセル剤、粉剤、持続放出製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル、スプレー、懸濁剤または他の任意の使用に適した剤形の形態を取ることができる。一実施形態において、製薬上許容されるビヒクルはカプセルである(例えば、Grosswald et al., 米国特許第5,698,155号を参照されたい)。他の好適な製薬用ビヒクルは、当技術分野の文献に記載されている(Remington’s Pharmaceutical Sciences, Philadelphia College of Pharmacy and Science, 17th Edition, 1985を参照されたい)。本発明の好ましい組成物は、経口送達用に、特に経口持続放出投与用に製剤される。
【0127】
経口送達用の組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ剤、水性または油性懸濁剤、顆粒剤、粉剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤の剤形であってよい。経口投与される組成物は、場合により、医薬として口当たりがよい製剤を提供するための1種以上の薬剤、例えば、フルクトース、アスパルテームまたはサッカリンなどの甘味料;ペパーミント、冬緑油などの香味料、またはチェリー着色剤および保存剤を含有してもよい。さらに、錠剤または丸剤の剤形では、組成物は、胃腸管での崩壊および吸収を遅らせてより長時間に渡って持続する作用を提供するためのコーティングを施してもよい。浸透活性推進化合物を取り囲む選択的透過膜も経口投与される本発明の化合物に好適である。この後者のプラットフォームにおいて、カプセルを取り巻く環境からの液体が推進化合物により吸い込まれ、これが膨潤して薬剤または薬剤組成物を開口部を通して排出させる。これらの送達プラットフォームは、即効性製剤のスパイク型プロファイルとは対照的に、本質的に0次の送達プロファイルを提供し得る。モノステアリン酸グリセリンまたはステアリン酸グリセリンなどの時間遅延材料を使用してもよい。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等のような標準的なビヒクルを含むことができる。このようなビヒクルは、好ましくは製薬等級である。
【0128】
例えば懸濁剤、エリキシル剤および溶液剤などの経口液体製剤に好適な担体、賦形剤または希釈剤としては、水、生理食塩水、アルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、油、アルコール、pH4〜pH6の間の弱酸性緩衝液(例えば、約mM〜約50 mMの間の酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩)等が挙げられる。さらに、香味料、保存剤、着色剤、胆汁酸塩、アシルカミチン(acylcamitines)等を加えてもよい。
【0129】
他の経路により投与するための組成物も想定される。口腔内投与には、組成物は、通常の方法により製剤された錠剤、ロゼンジ剤等の剤形を取ることができる。ネブライザーおよび液体スプレー装置およびEHDエアロゾル装置を用いて使用するのに適した液体薬物製剤は、典型的には、本発明の化合物と製薬上許容されるビヒクルとを含む。好ましくは、製薬上許容されるビヒクルは、アルコール、水、ポリエチレングリコールまたはパーフルオロカーボンなどの液体である。場合により、本発明の化合物の溶液または懸濁液のエアロゾル特性を変えるために別の材料を加えてもよい。好ましくは、この材料は、アルコール、グリコール、ポリグリコールまたは脂肪酸などの液体である。エアロゾル装置において使用するのに適した液体薬物溶液または懸濁液を製剤化する他の方法は当業者に公知である(例えば、Biesalski, 米国特許第5, 112,598号;Biesalski, 米国特許第5,556,611号を参照されたい)。本発明の化合物は、直腸用または膣用組成物、例えばココア、バターまたは他のグリセリドなどの通常の座薬基剤を含有する坐剤または停留浣腸剤として製剤化することも可能である。先に記載した製剤に加えて、本発明の化合物はデポー調製物として製剤化することも可能である。このような持続性製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋内)または筋内注射により投与することができる。したがって、例えば、本発明の化合物は好適な高分子もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)もしくはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として、例えば難溶性の塩として製剤化することができる。
【0130】
本発明の化合物が酸性である場合、それは、遊離酸、製薬上許容される塩、溶媒和物または水和物として、上記の製剤のいずれかに含有される。製薬上許容される塩は、遊離酸の活性を実質的に保持し、塩基との反応により調製され、対応する遊離酸型よりも水性および他のプロトン性溶媒に対する溶解度が高い傾向がある。
【0131】
使用の方法および投薬
本発明の化合物またはその組成物は、一般に、意図する目的を達成するのに有効な量で使用される。統合失調症ならびに関連する精神病、例えば、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病を治療するための使用には、式(1)の化合物および式(1)の化合物を含有する組成物を治療上有効な量で投与または適用する。
【0132】
本明細書に開示される特定の障害または状態の治療に効果を有する本発明の化合物の量は、障害または状態の性質に依存し、これまでに報告されている当技術分野において公知の標準的な臨床技術により決定することができる。さらに、最適な用量範囲を特定するための補助的手段として、場合によりin vitroまたはin vivoアッセイを使用してもよい。当然、投与される本発明の化合物の量は、他の要因の中でも、治療される被験体および被験体の体重、疾患の重篤度、投与の方式および処方する医師の判断に依存する。例えば、用量は、医薬組成物として、1回の投与により、複数回の適用または制御放出により送達される。好ましい実施形態において、本発明の化合物は経口持続放出投与により送達される。好ましくは、この実施形態において、本発明の化合物は1日2回、より好ましくは1日1回投与される。投薬は間欠的に繰り返してよく、単独でまたは他の薬物と組み合わせて提供してよく、また病状または障害の効果的な治療のために必要とされる限り続けてよい。
【0133】
統合失調症ならびに関連する精神病、例えば、急性躁病、双極性障害、自閉性障害およびうつ病の薬物治療のための構造式(1)の化合物および/または該化合物を含有する組成物は、1日あたり、1回以上の服用で与えられる、0.1 mg〜500 mg、好ましくは1 mg〜100 mgの範囲の量で、より好ましくは1日あたり5 mg、10 mg、15 mg、20 mg、25 mg、35 mgまたは50 mgの量で、最も好ましくは10 mgの量で、投与され得る。
【0134】
好ましくは、本発明の化合物は、ヒトに使用する前に、望まれる治療または予防活性についてin vitroおよびin vivoでアッセイされる。本発明の化合物は、動物モデル系を用いて有効性および安全性を証明することもできる。
【0135】
好ましくは、本明細書に記載される本発明の化合物の治療上有効な用量は、実質的な毒性を伴うことなく、治療効果を提供するものである。本発明の化合物の毒性は、標準的な薬学的手段を用いて決定することができ、当業者により容易に確認され得る。毒性と治療効果の間の用量比が治療指数である。好ましくは、本発明の化合物は疾患および障害の治療において特に高い治療指数を示す。好ましくは、本明細書に記載される本発明の化合物の用量は、毒性がほとんどまたは全くない、有効用量を含む血中濃度の範囲内である。
【0136】
本発明の一態様において、精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病の1つを治療する方法であって、治療を必要とする患者に本明細書に開示される化合物を投与することを含む前記方法を説明する。
【0137】
本発明の別の態様において、前記方法は統合失調症を治療する。
【0138】
本発明の別の態様において、前記方法は双極性障害を治療する。
【0139】
本発明の一態様において、本明細書に開示される化合物は、精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病を治療するために使用される。
【0140】
本発明の別の態様において、使用は統合失調症の治療を含む。
【0141】
本発明の別の態様において、使用は双極性障害の治療を含む。
【0142】
本発明の一態様において、本明細書に開示される化合物は、精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病の治療に使用する医薬品の製造に使用され、精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病を治療する。
【0143】
本発明の別の態様において、使用は統合失調症の治療を目的とする。
【0144】
本発明の別の態様において、使用は双極性障害の治療を目的とする。
【0145】
併用療法
本発明のある実施形態において、本発明の化合物は、少なくとも1種の他の治療薬と共に併用療法に使用することができる。本発明の化合物および他の治療薬は相加的に、またはより好ましくは相乗的に作用し得る。好ましい実施形態において、本発明の化合物を含む組成物を別の治療薬の投与と同時に投与する。この場合、別の治療薬は同じ組成物に含まれていてもよい。別の実施形態において、本発明の化合物を含む組成物を、別の治療薬の投与の前または後に投与する。
【実施例】
【0146】
本発明を、以下の実施例を参照してさらに明確にする。実施例において、本発明の化合物および組成物の調製ならびに本発明の化合物および組成物を使用するためのアッセイを詳細に説明する。本発明の範囲を逸脱することなく材料および方法の両方に対して多くの改変を加えることができることは当業者には明白であろう。
【0147】
以下の実施例において、以下の略号は下記の通りの意味を有する。略号が定義されていない場合、それはその一般に認められた意味を有する。
【0148】
Atm = 気圧
CDI = 1,1’-カルボニルジイミダゾール
DCM = ジクロロメタン
DMAP = 4-N,N-ジメチルアミノピリジン
DMF = N,N-ジメチルホルムアミド
g = グラム
h = 時間
L = リットル
LC/MS = 液体クロマトグラフィー/質量分析
M = モル
mL = ミリリットル
mmol = ミリモル
nM = ナノモル
μM = マイクロモル
MTBE = メチルtert-ブチルエーテル
rt = 室温
TEA = トリエチルアミン
THF = テトラヒドロフラン
TFA = トリフルオロ酢酸
【0149】
実施例1
6-アミノ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(2)(スキーム1)。6-ニトロ-2H-1,4-ベンズオキサジン-3(4H)-オン1(0.5 g、0.0026 mol)およびCuCl(0.77 g、0.0078 mol)の無水メタノール(25 mL)中の懸濁液に、25℃で撹拌しながら、水素化ホウ素カリウム(0.98 g、0.018 mol)を少しずつ加えた(水素ガスの発生を伴う発熱反応)。反応混合物を25℃で30分間撹拌した。形成された黒色の沈殿を濾過してメタノールにより洗浄した。濾液および洗浄液を合わせて蒸発させて、6-アミノ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチルを用いて精製した。褐色の固体(0.29 g、67%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ4.34 (s, 2H); 4.81 (s, 2H); 6.09 (dd, J = 2.8, 8.4 Hz, 1H); 6.14 (d, J = 2.8 Hz, 1H); 6.59 (d, J = 8.4 Hz, 1H); 10.44 (s, 1H).
【0150】
実施例2
4-(4-(2-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-イル)ブタンアミド(4a)(スキーム1)。6-アミノ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン2(0.08 g、0.0005 mol)、4-(4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル)ブタン酸3a(0.0005 mol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.1 g、0.0005 mol)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(0.006 g、0.00005 mol)の10 mLのジクロロメタン中の混合物を室温で一晩撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)によりモニターした。反応混合物を冷却し、濾過して尿素沈殿物を除去し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥し、減圧蒸発させて、4-(4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-イル)ブタンアミド4aを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチルおよびメタノールの0〜10%の勾配を用いて精製した。純粋な生成物4aは満足できる1H NMRおよび/または質量スペクトルのデータを与えた。白色の固体(0.06 g、29%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.94-2.00 (m, 2H); 2.53-2.59 (m, 4H); 2.70 (br s, 4H); 3.14 (br s, 4H); 3.87 (s, 3H); 4.55 (s, 2H); 6.63 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 1H); 6.84-6.88 (m, 2H); 6.93-6.95 (m, 2H); 6.99-7.04 (m, 1H); 7.82 (d, J = 2.4 Hz, 1H); 9.04 (br s, 1H); 9.12 (br s, 1H). MS (ESI): m/z = 425.2 (M+H+).
【0151】
実施例3
4-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-イル)ブタンアミド(4b)(スキーム1)。実施例2(スキーム1)において化合物4aの合成について記載したプロトコールを用いて化合物4bを合成した。白色の固体(0.08 g、34%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.93-2.00 (m, 2H); 2.50-2.57 (m, 4H); 2.68 (br s, 4H); 3.09 (br s, 4H); 4.50 (s, 2H); 6.63 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 1H); 6.88 (d, J = 8.8 Hz; 1H); 6.99-6.92 (m, 1H); 7.13-7.20 (m, 2H); 7.71-7.72 (m, 1H); 8.46 (br s, 1H); 8.58 (br s, 1H). MS (ESI): m/z = 463.2 (M+).
【0152】
実施例4
4-(4-(2-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-イル)ブタンアミド塩酸塩(5a)(スキーム1)。4-(4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-イル)ブタンアミド4aの5 mLのジクロロメタン中の溶液に、2 mLの2M HClジエチルエーテル溶液を加えた後、溶液を25℃で蒸発させて、4-(4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-イル)ブタンアミド塩酸塩5aを得た。純粋な生成物5aは満足できる1H NMRおよび/または質量スペクトルデータを与えた。白色の固体(60 mg)。MS (ESI): m/z = 425.2 (M-HCl)。
【0153】
実施例5
4-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-6-イル)ブタンアミド塩酸塩(5b)(スキーム1)。実施例4(スキーム1)において化合物5aの合成について記載したプロトコールを用いて化合物5bを合成した。白色の固体(40 mg)。MS (ESI): m/z = 463.2 (M-HCl).
【0154】
実施例6
2-(4-メトキシ-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル(8)(スキーム2)。4-メトキシ-2-ニトロフェノール6(1.69 g、0.01 mol)、炭酸カリウム(2.76 g、0.02 mol)およびブロモ酢酸エチル7(1.1 mL、0.01 mol)の20 mLの無水アセトン中の混合物を一晩(12時間)還流した。反応の進行を薄層クロマトグラフィーによりモニターした。反応混合物を蒸発させ、残渣を水により希釈し、混合物を酢酸エチルにより抽出した。有機相を食塩水により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥し、蒸発させて、2-(4-メトキシ-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル8を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサンおよび酢酸エチルの0〜50%の勾配を用いて精製した。黄色の固体(2.18 g、85%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.28 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 3.82 (s, 3H); 4.25 (q, J = 7.2 Hz, 2H); 4.70 (s, 2H); 7.01 (d, J = 9.2 Hz, 1H); 7.08 (dd, J = 3.2, 9.2 Hz, 1H); 7.40 (d, J = 2.8 Hz, 1H).
【0155】
実施例7
2-(4-ヒドロキシ-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル(9)(スキーム2)。2-(4-メトキシ-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル8(1.0 g、0.004 mol)の10 mLのジクロロメタン中の溶液を氷浴で冷却し、ここに塩化アルミニウム(1.6 g、0.0133 mol)を少しずつ加えた。得られた混合物をゆっくりと室温に温めた後、4時間還流した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)によりモニターした。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥して、2-(4-ヒドロキシ-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル9を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサンおよび酢酸エチルの勾配を用いて精製した。白色の固体(0.28 g、37%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.26 (t, J = 6.8 Hz, 3H); 4.27 (q, J = 6.8 Hz, 2H); 4.71 (S, 2H); 6.32 (S, 1H); 6.90 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 6.99 (dd, J = 3.2 Hz; 8.8 Hz, 1H); 7.30 (d, J = 2.8 Hz, 1H).
【0156】
実施例8
2-(4-(4-ブロモブトキシ)-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル(11)(スキーム2)。2-(4-ヒドロキシ-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル9(0.17 g、0.0007 mol)の10 mLのアセトン中の溶液に、炭酸カリウム(0.39 g、0.0028 mol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌した。次に、1,4-ジブロモブタン10(0.33 mL、0.0028 mol)を加えた。得られた混合物を12時間加熱還流した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)によりモニターした。アセトンを蒸発させ、残渣を水により希釈し、酢酸エチルにより抽出し、硫酸ナトリウムにより乾燥して、2-(4-(4-ブロモブトキシ)-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル11を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサンおよび酢酸エチルの0〜20%の勾配を用いて精製した。黄色のオイル(0.52 g、92%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.26 (t, J = 6.8 Hz, 3H); 1.91-1.98 (m, 2H); 2.02-2.09 (m, 2H); 3.48 (t, J = 6.8 Hz, 2H); 3.99 (t, J = 6.0 Hz, 2H); 4.26 (q, J = 6.8 Hz, 2H); 4.70 (s, 2H); 6.99-7.02 (m, 2H); 7.38 (d, J = 3.2 Hz, 1H).
【0157】
実施例9
2-(4-(4-(4-(2-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル13a(スキーム2)。2-(4-(4-ブロモブトキシ)-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル11(0.0007 mol)、1-(2-置換フェニル)ピペラジン塩酸塩12(0.16 g、0.0007 mol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.36 mL、0.0021 mol)の10 mLのアセトニトリル中の混合物を60℃に12時間加熱した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)によりモニターした。反応混合物を蒸発させて揮発性物質を除去し、残渣を水により希釈し、酢酸エチルにより抽出し、有機抽出物を炭酸水素ナトリウム溶液により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥して、2-(4-(4-(4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル13aを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサンおよび酢酸エチルの勾配を用いて精製した。純粋な生成物13aは満足できる1H NMRおよび/または質量スペクトルデータを与えた。無色のオイル(0.3 g、88%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.26 (t, J = 6.8 Hz, 3H); 1.70-1.72 (m, 2H); 1.82-1.85 (m, 2H); 2.47 (t, J = 6.4 Hz, 2H); 2.67 (br s, 4H); 3.10 (br s, 4H); 3.86 (s, 3H); 3.98 (t, J = 6.4 Hz, 2H); 4.24 (q, J = 6.8 Hz, 2H); 4.70 (s, 2H); 6.84-6.96-7.08 (m, 6H); 7.38 (d, J = 2.8 Hz, 1H).
【0158】
実施例10
2-(4-(4-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル13b(スキーム2)。実施例9(スキーム2)に記載される化合物13aの合成のプロトコールを用いて化合物13bを調製した。黄色のオイル(0.3 g、81%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.26 (t, J = 6.8 Hz, 3H); 1.70-1.73 (m, 2H); 1.80-1.85 (m, 2H); 2.48 (t, J = 6.4 Hz, 2H); 2.65 (br s, 4H); 3.07 (br s, 4H); 3.99 (t, J = 6.4 Hz, 2H); 4.26 (q, J = 6.8 Hz, 2H); 4.70 (s, 2H); 6.94-7.08 (m, 3H); 7.13-7.16 (m, 2H); 7.39 (d, J = 3.2 Hz, 1H).
【0159】
実施例11
6-(4-(4-(2-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(14a)(スキーム2)。効率的な冷却器を取り付けた100 mLのフラスコ中で、2-(4-(4-(4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2-ニトロフェノキシ)酢酸エチル13a(0.1 g、0.0002 mol)を10 mLのエタノールと1.2 mLの酢酸との混合物に溶解し、混合物を撹拌しながら穏やかに還流した。鉄粉末(0.084 g、0.0015 mol)を加えた後、すぐに塩化鉄(III)六水和物(0.01 g、0.000034 mol)を加えた。混合物をさらに3時間還流した後、冷却し、ブフナーロートを用いて濾過し、エタノールにより洗浄した。濾液および洗浄液を合わせて蒸発させた。残渣に酢酸エチルおよび水を加えて、水層を酢酸エチルにより2回抽出した。有機相を合わせて乾燥し、濃縮して、6-(4-(4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン14aを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサンおよび酢酸エチルの勾配を用いて精製した。純粋な生成物14aは満足できる1H NMRおよび/または質量スペクトルデータを与えた。無色のオイル(0.08 g、97%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.70 (br s, 2H); 1.78 (br s, 2H); 2.47 (br s, 2H); 2.67 (br s, 4H); 3.10 (br s, 4H); 3.86 (s, 3H); 3.91 (br s, 2H); 4.55 (s, 2H); 6.38 (br s, 1H); 6.48-6.50 (m, 1H); 6.85-6.99 (m, 5H); 9.12 (br s, 1H). MS (ESI): m/z = 412.3 (M++H).
【0160】
実施例12
6-(4-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(14b)(スキーム2)。実施例11(スキーム2)に記載される化合物14aの合成のプロトコールを用いて、化合物14bを調製した。無色のオイル(0.1 g、42%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.79 (br s, 4H); 2.74 (br s, 2H); 2.96 (br s, 4H); 3.17 (br s, 4H); 3.91 (s, 2H); 4.05 (s, 2H); 6.44 (s, 1H); 6.48 (dd, J = 2.4 Hz; 8.8 Hz, 1H); 6.85 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 6.96 (dd, J = 2.0Hz; 7.2 Hz, 1H); 7.12-7.19 (m, 2H); 9.49 (s, 1H); 9.87 (br s, 1H). MS (ESI): m/z = 450.2 (M+).
【0161】
実施例13
6-(4-(4-(2-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩(15a)(スキーム2)。6-(4-(4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン14aの5 mLのジクロロメタン中の溶液に2 mLの2M HClジエチルエーテル溶液を加えた後、溶液を25℃で蒸発させて、6-(4-(4-(置換フェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩15aを得た。純粋な生成物15aは満足できる1H NMRおよび/または質量スペクトルデータを与えた。白色の固体(0.08 g)。MS (ESI): m/z = 412.3 (M-HCl).
【0162】
実施例14
6-(4-(4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル)ブトキシ)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン塩酸塩(15b)(スキーム2)。実施例13(スキーム2)に記載される化合物15aの合成のプロトコールを用いて化合物15bを調製した。白色の固体(0.28 g)。MS (ESI): m/z = 450.2 (M-HCl).
【0163】
in vitro薬理試験の結果
本発明に記載された式(1)を含むアリールピペラジン誘導体をin vitro薬理アッセイにより試験し、そのドーパミンD2S、セロトニン5-HT1Aおよびセロトニン5-HT2A受容体に対する活性を評価した。このin vitroアッセイのプロトコールおよび参照文献をここに記載する。
【0164】
ドーパミンD2S(ヒト組み換え型)結合アッセイ
材料および方法:
受容体源:CHO細胞中に発現させたヒト組み換え型
放射性リガンド:[3H]スピペロン(20〜60 Ci/mmol)
対照化合物:ハロペリドール
インキュベーション条件:反応は、120 mM NaCl、5 mM KCl、5 mM MgCl2、1 mM EDTAを含有する50 mM TRIS-HCl (pH 7.4)中、25℃で60分間実施した。ガラス繊維フィルター上での急速真空濾過により反応を終了した。フィルターに捕捉された放射能を測定し、対照値と比較して、試験化合物とクローンドーパミン-D2短結合部位との相互作用を確認した(参照文献:Jarvis, K. R. et al. Journal of Receptor Research 1993, 13(1-4), 573-590; Gundlach, A. L. et al. Life Sciences 1984, 35, 1981-1988)。
【0165】
セロトニン5-HT1A(ヒト組み換え型)結合アッセイ
材料および方法:
受容体源:HEK-293細胞中に発現させたヒト組み換え型
放射性リガンド:[3H]-8-OH-DPAT (221 Ci/mmol)
対照化合物:8-OH-DPAT
インキュベーション条件:反応は、10 mM MgSO4、0.5 mM EDTAおよび0.1%アスコルビン酸を含有する50 mM TRIS-HCl (pH 7.4)中、室温で1時間実施した。ガラス繊維フィルター上での急速真空濾過により反応を終了した。フィルターに捕捉された放射能を測定し、対照値と比較して、試験化合物とクローンセロトニン-5HT1A結合部位との相互作用を確認した(参照文献:Hoyer, D. et al. Eur. Journal Pharmacol. 1985, 118, 13-23; Schoeffter, P. and Hoyer, D. Naunyn-Schmiedeberg’s Arch. Pharmac. 1989, 340, 135-138)。
【0166】
セロトニン5-HT2A(ヒト)結合アッセイ
材料および方法:
受容体源:ヒト皮質
放射性リガンド:[3H]-ケタンセリン(60-90 Ci/mmol)
対照化合物:ケタンセリン
インキュベーション条件:反応は、50 mM TRIS-HCl (pH 7.6)中、室温で90分間実施した。ガラス繊維フィルター上での急速真空濾過により反応を終了した。フィルターに捕捉された放射能を測定し、対照値と比較して、試験化合物とセロトニン-5HT2A結合部位との相互作用を確認した(参照文献:Leysen, J. E. et al. Mol. Pharmacol. 1982, 21, 301-314; Martin, G. R. and Humphrey, P. P. A. Neuropharmacol. 1994, 33(3/4), 261-273)。
【0167】
ドーパミン-D2S、セロトニン-5HT1Aおよびセロトニン-5HT2Aに対する放射性リガンド結合アッセイを6種の異なる濃度で実施した。試験濃度は、0.5 nM、1 nM、10 nM、100 nM、300 nMおよび1000 nMであった。
【0168】
放射性リガンド結合アッセイによる選択された化合物のin vitro薬理活性を以下の表に報告する。
【表1】

【0169】
本発明を好ましい実施形態および種々の代替の実施形態を参照して詳細に提示および説明したが、当業者は本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな形態および詳細の改変をおこなうことができることを理解するであろう。本出願において参照されたすべての出版された特許および文献は、ここに引用することによりその全体を本明細書に組み入れるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、
Aは、-(CH2)n-、-O-(CH2)n-、-S-(CH2)n-、-S(O)(O)-(CH2)n-、-NH-(CH2)n-、
-CH2-O-(CH2)n-、-(CH2)n-O-CH2-CH2-、-CH2-S-(CH2)n-、-(CH2)n-S-CH2-CH2-、
-CH2-S(O)(O)-(CH2)n-、-(CH2)n-S(O)(O)-CH2-CH2-、-O-C(O)-(CH2)n-、
-S-C(O)-(CH2)n-、-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-C(O)-O-(CH2)n-、
-CH2-C(O)-NH-(CH2)n-、-CH2-C(O)-S-(CH2)n-、-(CH2)n-C(O)-O-CH2-CH2-、
-(CH2)n-C(O)-NH-CH2-CH2-、-(CH2)n-C(O)-S-CH2-CH2-、
-CH2-O-C(O)-(CH2)n-、-CH2-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-S-C(O)-(CH2)n-、
-(CH2)n-O-C(O)-CH2-CH2-、(CH2)n-NH-C(O)-CH2-CH2-、または
(CH2)n-S-C(O)-CH2-CH2-であり、ここで、nは1〜7の整数であり;
Bは、O、S、S(O)(O)、またはNR5であり;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8のそれぞれは、独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、アシルアルキルオキシカルボニル、アシルオキシアルキルオキシカルボニル、アシルアルキルオキシカルボニルアミノ、アシルオキシアルキルオキシカルボニルアミノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシカルボニルアルキルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアルコキシ、アリールアルコキシカルボニルアルコキシ、アリールアルコキシカルボニルアルキルアミノ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルアルコキシ、アリールオキシカルボニルアルキルアミノ、カルボキシ、カルバモイル、カルバメート、カルボネート、シアノ、ハロ、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヒドロキシ、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、スルホネート、またはスルホンアミドであり、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8ならびにAは、場合により2H(重水素)、3H(トリチウム)、13C、36Cl、18F、15N、17O、18O、31P、32P、および35Sを含むがこれらに限定されない同位体により置換されていてもよい]
の化合物、またはその製薬上許容される塩、ラセミ体もしくはジアステレオマー混合物。
【請求項2】
式(1a):
【化2】

の、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが-(CH2)n-である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、-O-(CH2)n-、-S-(CH2)n-、-CH2-O-(CH2)n-、-(CH2)n-O-CH2-CH2-、-CH2-S-(CH2)n-、または-(CH2)n-S-CH2-CH2-である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
Aが、-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-NH-C(O)-(CH2)n-、-CH2-C(O)-NH-(CH2)n-または-(CH2)n-C(O)-NH-CH2-CH2-である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
BがOである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項7】
R4がHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項8】
R1およびR2のそれぞれが独立して、H、ハロゲン、ハロアルキルまたはアルコキシである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項9】
化合物が、
ドーパミンD2受容体に対する親和性;
セロトニン5-HT1A受容体に対する親和性;
セロトニン5-HT2A受容体に対する親和性;
加水分解酵素により非酸化的に開裂され得る少なくとも1個の加水分解性結合を有すること;
非酸化的代謝経路から生じる一次代謝産物を有すること;
通常治療に使用する親薬物の血漿濃度で、無視できる程度のHERG(ヒトエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子)カリウムチャネルにおける活性を有する一次代謝産物を有すること;
他の薬物と共投与された場合に代謝性薬物-薬物相互作用の発生がないことまたは減少していること;
単独で投与された場合に肝機能検査の値を実質的に上昇させないこと;または
経口バイオアベイラビリティを有すること
により特徴付けられる、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項11】
精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病のうちの1つを治療する方法であって、治療を必要とする患者に請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項12】
統合失調症を治療する方法であって、治療を必要とする患者に請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項13】
双極性障害を治療する方法であって、治療を必要とする患者に請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項14】
精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病のうちの1つの治療において使用するための、請求項1〜10に記載の化合物のいずれか1つの使用。
【請求項15】
使用が統合失調症の治療を含む、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
使用が双極性障害の治療を含む、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
精神病、統合失調症、急性躁病、双極性障害、自閉性障害またはうつ病のうちの1つの治療に使用するための医薬品の製造における、請求項1〜10の化合物のいずれか1つの使用。
【請求項18】
統合失調症の治療に使用するための医薬品の製造における、請求項1〜10に記載の化合物のいずれか1つの使用。
【請求項19】
双極性障害の治療に使用するための医薬品の製造における、請求項1〜10に記載の化合物のいずれか1つの使用。

【公表番号】特表2012−519182(P2012−519182A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552210(P2011−552210)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025687
【国際公開番号】WO2010/099502
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(509322616)レビバ ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】