説明

アリールピリジニル化合物の調製方法

触媒量の亜鉛塩および触媒量の二座ホスフィンとのパラジウム錯体の存在下に行われるハロピリジンとハロゲン化アリールマグネシウムとの間のアリール−アリールクロスカップリング反応によりアリールピリジン化合物を調製する方法が記載される。亜鉛塩は、好ましくは、ZnCl、ZnBrおよび/またはZn(OAc)から選択され、二座ホスフィンとのパラジウム錯体は、好ましくは、塩化(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、塩化(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)パラジウム(II)および塩化(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)パラジウム(II)からなる群より選択される。最も好ましくは、塩化(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)である。すなわち、ハロゲン化アリールマグネシウムに基づいて計算された95%を超えるモル収率、および1:1500未満の触媒性を得ることができる。この方法は、後にN1−(t−ブトキシカルボニル)−N2−(4−(2'ピリジル)ベンジル)ヒドラジンに効果的に転化され得る4−(2'−ピリジル)ベンズアルデヒドの調製に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アリールピリジンは、通常、有機合成において、種々の種類の化合物の調製のための中間体として用いられ、これらのうち、4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドが、抗ウイルス薬、および特に、例えばここで参照として援用される国際特許出願WO97/40029(特許文献2)に記載のアザヘキサンヘテロ環式誘導体のようなHIVプロテアーゼ阻害剤の調製において有用な中間体であり、これら抗ウイルス薬のうち、特に好ましいものの一つは、例えば、ドラッグズ・オブ・ザ・フューチャー(Drugs of the Future)1999,24(4):375(非特許文献1)において略号BMS−232632により示される薬であり、その構造式が以下に示される。
【0002】
【化1】



【0003】
US6,765,097B1(特許文献1)は、触媒量の亜鉛塩およびパラジウムの存在下にハロピリジンとハロゲン化アリールマグネシウム(グリニャール試薬:Grignard’s reagent)とを反応させることを含んでなるアリールピリジン化合物の調製方法を開示している。亜鉛塩は、通常、ZnCl、ZnBrおよびZn(OAc)2から選択され、パラジウムは、主に、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン[Pd(PPh]またはパラジウムの塩、通常、酢酸塩もしくは塩化物として用いられる。1,3−ビス(ジフェニルホスフィン)プロパン(DPPP)または1,4−ビス(ジフェニルホスフィン)ブタン(DPPB)のような二座ホスフィンが任意に存在してよい。
【0004】
特に、US6,765,097B1は、以下のスキーム1に従って行われる、4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドの調製に適したクロスカップリング反応を開示している。
【0005】
【化2】



【0006】
(式中、XはBrまたはClであり、cat Zn**/Pd**は、前記亜鉛塩、パラジウム塩または錯体と、ホスフィンとを含む触媒系を表す。)。
【0007】
触媒系は、Xの性質により異なる。以下の表は、XがClである場合のUS6,765,097B1に開示された幾つかの結果を要約している。
【0008】
【表1】



【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6765097B1
【特許文献2】国際公開第97/40029号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Drugs of the Future,1999,24(4):375
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
US6,765,097B1の実施例23による4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドを調製する方法の規模拡大中に、2−クロロピリジンに基づく約90%の収率およびグリニャール試薬に基づく約80%の収率が予想外に得られた。アルデヒドのトルエン溶液の単離およびその後のN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−(2’−ピリジル)ベンジル]ヒドラジンを生成するための工程に影響を与える水性操作中に、不溶性材料の存在による問題が生じた。具体的には、アルデヒドのトルエン溶液とtert−ブチルカルバゼートとの反応によりN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−[(2−ピリジルフェニル)]メチリデン]ヒドラゾンが、4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタールに基づく全収率77.8%で得られたが、最終的還元工程の収率は僅か76%であった。最終工程の低い収率は、遅い反応速度と、副産物である4−(2’−ピリジル)トルエンの高含量とが原因であった。遅い反応速度は、接触水素化を阻害するカップリング工程から生じる不純物が原因であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
触媒量の亜鉛塩および二座ホスフィンとのパラジウム錯体の存在下にハロピリジンとハロゲン化アリールマグネシウム(グリニャール試薬)との間のクロスカップリング反応を行うと、得られるアリールピリジンのハロゲン化アリールマグネシウムに基づく収率は著しく増加し、典型的に95%より高いことが、今回、驚くべきことに発見された。
【0013】
さらに、
a)本発明による、触媒量の亜鉛塩および二座ホスフィンとのパラジウム錯体の存在下におけるハロピリジンとハロゲン化アリールマグネシウムとの間のクロスカップリング反応による4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドの調製、
b)後者のN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−[(2−ピリジルフェニル)]メチリデン]ヒドラゾンへの転化、および
c)このヒドラゾンのN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−(2’−ピリジル)ベンジル]ヒドラジンへの還元、
を含んでなるN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−(2’−ピリジル)ベンジル]ヒドラジンを調製するための多段階方法においてそのようなクロスカップリング反応を適用すると、
US6,765,097B1に開示のクロスカップリング条件を適用する場合よりも、高いモルコストの試薬(すなわち、ハロゲン化アリールマグネシウム)について高い収率で、ヒドラゾン形成とその還元との両方が進行する。さらに、ヒドラゾンの単離は容易になされ、その還元はより早く、最終生成物であるN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−(2’−ピリジル)ベンジル]ヒドラジンがより良い品質で得られる。
【0014】
従って、本発明の目的は、触媒量の亜鉛塩および触媒量の二座ホスフィンとのパラジウム錯体の存在下にハロゲン化アリールマグネシウムをハロピリジンと反応させることからなり、前記パラジウム錯体とハロピリジンとのモル比が1:100未満、通常1:1000未満である、アリールピリジンの調製方法である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
望ましくない二次反応を避けるために、ハロゲン化アリールマグネシウムおよびハロピリジンは、グリニャール反応を妨げ得る他の置換基を含むべきでなく、あるいは、そのような置換基が存在する場合、適切に保護された状態であるべきであり、カルボニル基は、例えば、予め対応するアセタールに転化することにより保護することができる。従って、本発明の一つの目的は、以下のスキーム2に示される方法である。
【0016】
【化3】



【0017】
(式中、AおよびBは同一または互いに異なって、H、線状または分岐状C1−C8アルキル、置換されていてよいアセタール基、またはグリニア反応を妨げない基により置換されていてよいアリールもしくはベンジルを表し、X1およびX2は同一または互いに異なって、Cl、BrまたはIを表し、ここで、化合物3を得るための化合物1と化合物2との間の反応は、触媒量の亜鉛塩および二座ホスフィンとのパラジウム錯体の存在下に行われる。)。
【0018】
好ましい態様において、本発明による方法を、以下のスキーム3に示すことができる。
【0019】
【化4】



【0020】
(式中、R1、R2およびR3は同一または互いに異なって、H、線状または分岐状C1−C6アルキル、線状または分岐状C1−C6アルキルにより置換されていてよいアリール、好ましくはフェニルである、あるいは、R1およびR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環式であってよいアセタール基を表し、X1およびX2は同一または互いに異なって、Cl、BrまたはIを表し、ここで、化合物3を得るための化合物1と化合物2との間の反応は、触媒量の亜鉛塩および二座ホスフィンとのパラジウム錯体の存在下に行われる。)。
【0021】
そのより好ましい態様において、この方法は、
(a)式1:
【0022】
【化5】



【0023】
(式中、X1はCl、BrまたはIを表し、R1とR2は同一または互いに異なり線状または分岐状C1−C6アルキル、好ましくはメチルを表す、あるいは、R1とR2とが一緒になって単一のC1−C8アルキルまたはアルキレン基、好ましくは1,3−プロピル、1,2−ブチル、1,4−ブテニルおよび2,2−ジメチル−1,3−プロピルを表し、R3は水素または線状もしくは分岐状C1−C6アルキルまたはアルキレン基を表す。)で示されるハロゲン化アリールマグネシウムを、
式2:
【0024】
【化6】



【0025】
(式中、X2はCl、BrまたはIを表す。)
で示されるハロピリジンと、触媒量の二座ホスフィンとのパラジウム錯体および触媒量の亜鉛塩の存在下、(それに対して、化合物1は好ましくは力学的に不足状態で用いられ)、二座ホスフィンとのパラジウム錯体とアリールピリジン産物とのモル比を1:100未満、好ましくは1:1000未満として反応させること、および
(b)そのように得られた中間体化合物を、アセタール基をカルボニル基に転化することにより、所望の化合物に変換することからなる。特に、これは、
(a)式1bis:
【0026】
【化7】



【0027】
(式中、X1、R1およびR2は前記意味を有する。)
で示されるハロゲン化アリールマグネシウムを、
式2bis:
【0028】
【化8】



【0029】
(式中、X2は前記意味を有する。)
で示されるハロピリジンと、触媒量の二座ホスフィンとのパラジウム錯体および触媒量の亜鉛塩の存在下に反応させ、(それに対して、化合物1は力学的に不足状態で用いられ)、
(b)式3bis:
【0030】
【化9】

【0031】
で示されるそのように得られた中間体化合物を、アセタール基をカルボニル基に転化することにより4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドに変換する、4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドの調製方法により表される。
【0032】
本発明の目的において、「触媒量」の亜鉛塩という表現は、ハロピリジン100モルあたり1〜50モルの亜鉛、好ましくは4〜35モルの亜鉛を意味し、「触媒量」の二座ホスフィンとのパラジウム錯体という表現は、ハロピリジン100モルあたり0.01〜1モルの二座ホスフィンとのパラジウム錯体、好ましくは0.05〜0.1モルの二座ホスフィンとのパラジウム錯体を意味し、「グリニャール化合物は亜鉛塩に対して力学的に不足状態で用いられる」という表現は、ハロピリジン、二座ホスフィンとのパラジウム錯体および亜鉛塩を既に含んでいる溶液にハロゲン化アリールマグネシウムを滴下することを意味する。最後に、「触媒性」という用語は、触媒のハロピリジンに対するモル比を意味し、本発明の方法によりハロピリジンがほとんど定量的にアリールピリジン産物に転化するので、実際の「触媒性」は、触媒のアリールピリジンに対するモル比と一致する。
【0033】
一般的態様および好ましいまたはより好ましい態様の両方において、二座ホスフィンとのパラジウム錯体とハロピリジンとのモル比は、普通は1:3000〜1:1000、好ましくは約1:2000であり、ハロピリジンは、ハロゲン化アリールマグネシウム1モルあたり、普通は0.5〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.2モルの量で用いられる。特に好ましい態様において、ハロピリジンとハロゲン化アリールマグネシウムとのモル比は1:1である。
【0034】
カップリング反応が、最少量の触媒の存在下に高収率および高度の選択性で起こるために、グリニャール試薬が反応媒体中に蓄積することを防止しなくてはならず、よって、亜鉛塩に対して力学的に不足状態でなくてはならず、必要な共触媒(Zn塩)の量は、グリニャール化合物の規則性および添加速度に依存し、Zn塩とハロピリジンとの1:50〜1:10の比が満足できるものと分かった。
【0035】
亜鉛塩は、通常、塩化亜鉛(ZnCl)、臭化亜鉛(ZnBr)および酢酸亜鉛[Zn(OAc)]から選択される。
【0036】
二座ホスフィンとのパラジウム錯体は、好ましくは、塩化(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、塩化(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)パラジウム(II)および塩化(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)パラジウム(II)からなる群より選択される。最も好ましいのは塩化(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)である。
【0037】
これらの錯体を亜鉛塩と組み合わせて用いると、ブロモピリジンおよびより経済的で普通は反応性のより低いクロロピリジンの両方を用いて、ハロゲン化アリールマグネシウムに基づいて計算される95%を超えるモル収率および1:1500未満の触媒性を得ることが可能になる。
【0038】
塩化(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、塩化(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)パラジウム(II)および塩化(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)パラジウム(II)が既知の市販の化合物である。
【0039】
カップリング反応は、通常、グリニア化合物と反応しない非プロトン性有機溶媒、好ましくはテトラヒドロフランおよび/またはトルエン中にて、25〜85℃、好ましくは25〜50℃の温度で行われる。
【0040】
本発明のより好ましい態様において、アセタール基の除去は酸加水分解により行われる、すなわち、工程(b)は、通常は、中間体(例えば3bis)を酸性水溶液と反応させることにより行われ、この工程は、好ましくは、工程(a)で得られた有機溶液にHCl水溶液を直接加え、温度を40℃より低く維持することにより行われる。
【0041】
本発明のもう一つの目的は、以下の工程を含むN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−(2’−ピリジル)ベンジル]ヒドラジンを調製する方法である:
a)4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドを提供する工程、
b)4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドをN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−[(2−ピリジルフェニル)]メチリデン]ヒドラゾンに転化する工程、および
c)N1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−[(2−ピリジルフェニル)]メチリデン]ヒドラゾンをN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−(2’−ピリジル)ベンジル]ヒドラジンに還元する工程。
【0042】
この方法は、工程a)において、触媒量の亜鉛塩および二座ホスフィンとのパラジウム錯体の存在下におけるハロピリジンとハロゲン化アリールマグネシウムとの間のクロスカップリング反応を含む本発明による方法により4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドが提供されることを特徴とする。
【0043】
工程b)におけるヒドラゾン形成および工程c)におけるその還元の両方が、US6,765,097B1に開示の方法によるよりも、本発明の方法により提供された4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドを用いて、高いモルコストの試薬、すなわち、ハロゲン化アリールマグネシウムについて高い全収率で進行する。
【0044】
さらに、N1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−[(2−ピリジルフェニル)]メチリデン]ヒドラゾンの単離が容易に達成され、その還元がより早く、最終生成物であるN1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−(2’−ピリジル)ベンジル]ヒドラジンがより良い品質で得られる。
【0045】
本発明を、ここで、以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタールグリニャール試薬
温度を30〜35℃に調整しつつ、ヨウ素(0.1g)および、次に、約1時間かけて、4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタール(155.7g、0.674mol)をテトラヒドロフラン(170ml)中に含む溶液を、マグネシウム(17.2g、0.708mol)をテトラヒドロフラン(290ml)中に含む30℃に維持された懸濁液に、攪拌しつつ不活性雰囲気下に添加する。反応混合物を30℃で1時間維持する。
【0047】
(実施例2)
4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒド
無水塩化亜鉛(4.55g、33.5mmol)、および次に、2−クロロピリジン(80.3g、0.708mol)を、攪拌しつつ不活性雰囲気下にテトラヒドロフラン(134ml)に加える。塩化(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)(DPPE−パラジウム)(0.246g、0.43mmol)、および次に2時間かけて、実施例1と同様にして調製したグリニャール溶液を、40℃に維持された懸濁液に、攪拌しつつ不活性雰囲気下に加える。反応を40℃で約30分間維持し、次に25℃に冷却する。
【0048】
水(315ml)と37%塩酸(88g)との溶液を、反応混合物に約30分間かけて加え、次に、溶液を攪拌下に1時間維持する。トルエン(130ml)を加え、相を分離する。攪拌下の水相に、トルエン(350ml)および次に30%アンモニア溶液(約110ml)を加える。相を分離し、有機相を減圧下に蒸発させて、4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドからなる残渣(118.4g、0.647mol)を得る。4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタールに対するモル収率は96%である。触媒(DPPE−パラジウム)の触媒回転数は1504である。
【0049】
生成物を、国際特許出願WO97/40029に記載の実施例37bに従って調製された信頼性のあるサンプルと比較することにより確認した。
【0050】
(実施例3)
4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒド
無水塩化亜鉛(4.1g、30mmol)、および次に、2−クロロピリジン(76.5g、0.674mol)を、攪拌しつつ不活性雰囲気下に、テトラヒドロフラン(135ml)に加える。DPPE−パラジウム(0.228g、0.396mmol)、および次に、2時間かけて、実施例1と同様に調製した4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタールのグリニャール試薬の溶液を、45℃に維持された懸濁液に、攪拌しつつ不活性雰囲気下に加える。45℃で30分後、混合物を25℃に冷却し、水(300ml)と37%塩酸(83g)との溶液を約30分間かけて加える。トルエン(130ml)を加え、相を分離する。トルエン(250ml)、および次に、30%アンモニア溶液(105ml)を、攪拌下に、下側の水相に加える。相を分離し、有機相をHPLCにより滴定して4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドの含量117.3g(0.640mol)を得る。4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタールに対するモル収率は95%である。触媒の触媒回転数は1616である。
【0051】
(実施例4)
N1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−[(2−ピリジルフェニル)]メチリデン]ヒドラゾン
実施例3の4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドのトルエン溶液に、酢酸(2.7ml)、および次に、80℃の温度で攪拌下に、tert−ブチルカルバゼート(89g、0.652mol)をトルエン(85ml)中に含む溶液を加える。混合物を80℃で2時間維持し、次に10℃に冷却する。混合物を80℃で2時間維持し、次に10℃に冷却する。30分後、固形物を濾過し、冷トルエンで洗う。減圧下に乾燥後、ヒドラゾン(184.3g、0.620mol)を得る。4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタールに対するモル収率は92%である。
【0052】
(実施例5)
N1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−(2’−ピリジル)ベンジル]ヒドラジン(比較例)
US6,765,097B1の実施例28に記載の手順を繰り返した。
【0053】
実施例4のヒドラゾン5g(0.0168mol)および、メタノール(75ml)中の5%パラジウム−炭素(50%湿潤)0.5gを、周囲圧力で8時間水素化する。触媒を濾過し、メタノールで洗う。減圧下の蒸留により溶媒を除去し、油性残渣にシクロヘキサンを加える。周囲温度で約1時間および15℃で30分間攪拌後、固形物を濾過し、冷シクロヘキサンで洗う。減圧下に40℃で乾燥後、表記ヒドラジンを得る。
【0054】
融点77〜79℃
H−NMR(200MHz,CDCl):ppm 8.69(1H,m);7.69(2H,d);7.8−7.65(2H,m);7.22(1H,m);4.06(2H,s);1.47(9H,s)。
【0055】
(実施例6)
N1−(t−ブトキシカルボニル)−N2−(4−(2’ピリジル)ベンジル)ヒドラジン
実施例4のヒドラゾン50g(0.168mol)、メタノール(350ml)、蟻酸アンモニウム(23.8g、0.378mol)、水(16ml)および次にPd/C(50%湿潤)(3.8g)をフラスコに仕込み、50℃で約3時間温める。反応が完了すると、冷混合物を濾過し、溶液を濃縮して残渣とする。シクロヘキサン(200ml)および次に水(20ml)を加え、混合物を60℃に温める。有機相を分離し、15℃に冷却して生成物を結晶化させる。減圧下に40℃で乾燥後、表記ヒドラジン(43.4g,0.145mol)を得る。
【0056】
出発ヒドラゾンに対するモル収率は86%である
4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタールに対する全収率は79.2%である。
【0057】
(実施例7)(比較例)
以下の表は、出発4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドを本発明により得た場合(登録番号1)の本発明の実施例4および6に記載の工程の収率およびN1−(t−ブトキシカルボニル)−N2−(4−(2’ピリジル)ベンジル)ヒドラジンの全収率を、出発4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドをUS6,765,097に記載の方法を用いて得た場合の対応する工程の収率と比較する。
【0058】
【表2】



【0059】
(実施例8)
N1−(t−ブトキシカルボニル)−N2−(4−(2’ピリジル)ベンジル)ヒドラジンの工業的調製
4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタールグリニャール試薬の調製
適当なステンレス鋼容器中に、不活性雰囲気下、マグネシウム(49.7kg)、ヨウ素(0.29kg)および次にTHF(840リッター)を仕込む。攪拌下に、4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタール(40kg)を、温度を35〜40℃に昇温しつつ仕込む。この温度において、反応を開始させ、次に、2〜3時間かけて、4−ブロモベンズアルデヒドジメチルアセタール(410kg)をTHF(495リッター)中に含む溶液を加える。
【0060】
HPLCによるIPCが、0.5%未満の4−ブロモベンズアルデヒド含量を示したときに、反応完了と考える。
【0061】
カップリング反応
ステンレス鋼反応器中に、不活性雰囲気下、THF(390リッター)、無水塩化亜鉛(11.9kg)および次に2−クロロピリジン(222kg)を仕込む。30分後、DPPE−パラジウム(0.66kg)を加える。反応液を35〜40℃に温め、予め調製したグリニャール溶液をゆっくり加える。最後に、温度を35〜40℃に約1時間保持する。HPLC制御が0.5%未満のベンズアルデヒド含量を示した時に、反応完了と考える。水(870リッター)と30%塩酸(約290kg)との溶液をゆっくり加える。トルエン(380リッター)を加え、20分間攪拌し、その後、混合物を攪拌することなく1時間保持し、次に、相を分離する。攪拌下に、下側の相に、トルエン(380リッター)を加え、次に、30%アンモニア溶液(約300リッター)をゆっくり加え、30分間攪拌する。攪拌を1時間止め、次に、相を分離する。有機相をHPLCにより滴定すると、4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドの含量が約340kgである。
【0062】
N1−(tert−ブトキシカルボニル)−N2−[4−[(2−ピリジルフェニル)]メチリデン]ヒドラゾンの調製
ステンレス鋼反応器中に、不活性雰囲気下に、4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒド約340kgを含む先の工程の有機相を仕込み、酢酸(7.8リッター)を加える。溶液を80℃に温め、攪拌下にtert−ブチルカルバゼート(258kg)を加える。80℃で2時間後、混合物を15℃に冷却し、次に、生成物を濾過し、冷トルエンで洗い、減圧下に45℃の温度で乾燥して、ヒドラゾン約540kgを得る。
【0063】
N1−(t−ブトキシカルボニル)−N2−(4−(2’ピリジル)ベンジル)ヒドラジンのための工業的還元方法
ステンレス鋼反応器中に、不活性雰囲気下、ヒドラゾン(540kg、1.82kmol)、メタノール(3200リッター)、蟻酸アンモニウム(238kg、3.78kmol)、水(165リッター)および次にPd/C(50%湿潤)(38kg)を仕込む。
【0064】
混合物をしっかり攪拌しつつ50℃に温める。反応が完了(HPLC試験による残留ヒドラゾン量が0.2%未満)すると、混合物を25℃に冷却し、触媒を濾過する。濾液を減圧下に濃縮して、残留粘性塊を得る。シクロヘキサン(1720リッター)および水(167リッター)を仕込み、65℃に温める。この温度で、相を分離する。有機相を攪拌下に25℃に冷却して、生成物を完全に結晶化させる。
【0065】
生成物を濾過し、ケーキを冷シクロヘキサンで洗う。減圧下に45℃で乾燥させて、N1−(t−ブトキシカルボニル)−N2−(4−(2’ピリジル)ベンジル)ヒドラジン約480kgを得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式1bis:
【化1】

(式中、X1はCl、BrまたはIを表し、R1とR2は同一または互いに異なり線状または分岐状C1−C6アルキルを表す、あるいは、R1とR2とが一緒になって単一の線状または分岐状C1−C6アルキレン基を表す。)
で示されるハロゲン化アリールマグネシウムを、
式2bis:
【化2】

(式中、X2はCl、BrまたはIをあらわす)
で示されるハロピリジンと、触媒量の亜鉛塩および触媒量の二座ホスフィンとのパラジウム錯体の存在下、前記パラジウム錯体と式2bisで示されるハロピリジンとのモル比を1:1000未満として反応させ、
(b)そのように得られた中間体化合物を、アセタール基をカルボニル基に転化することにより、所望の化合物に変換する、
4−(2’−ピリジル)ベンズアルデヒドの調製方法。
【請求項2】
前記式1bisで示されるハロゲン化アリールマグネシウムを、亜鉛塩に対して力学的に不足状態で用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式2bisで示されるハロピリジンが2−クロロピリジンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記式1bisで示されるハロゲン化アリールマグネシウムが、臭化物または塩化物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記亜鉛塩がZnCl、ZnBrおよび/またはZn(OAc)から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記亜鉛塩が、前記式2bisで示されるハロピリジン100モルあたり1〜50モル、好ましくは4〜30モルの量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二座ホスフィンとのパラジウム錯体が、塩化(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、塩化(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)パラジウム(II)および塩化(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)パラジウム(II)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記二座ホスフィンとのパラジウム錯体が塩化(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記二座ホスフィンとのパラジウム錯体が、前記式2bisで示されるハロピリジン100モルあたり0.01〜1モル、好ましくは0.05〜0.1モルの量で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記式2bisで示されるハロピリジンが、前記式1bisで示されるハロゲン化アリールマグネシウム1モルあたり0.8〜1.2モルの量で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(a)を、0〜85℃、好ましくは30〜50℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(a)を、非プロトン性有機溶媒、好ましくはテトラヒドロフランおよび/またはトルエン中で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(b)を酸加水分解により行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記酸加水分解を40℃より低い温度で行うことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記R1および前記R2がいずれもメチルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記R1および前記R2が、ともに、1,3−プロピル、1,2−ブチル、1,4−ブテニルおよび2,2−ジメチル−1,3−プロピルから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記二座ホスフィンとのパラジウム錯体と前記式2bisで示されるハロピリジンとのモル比が1:3000〜1:1000であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法を含むことを特徴とする、式:
【化3】

で示される抗ウイルス作用を有するアザヘキサンヘテロ環式誘導体を調製する方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法を含むことを特徴とする、N−1−(tert−ブトキシカルボニル)−N−2−[4−(2−ピリジル)−ベンジル]−ヒドラジンまたはN−1−(tert−ブトキシカルボニル)−N−2−{4−[(2−ピリジル)−フェニル]メチリデン}−ヒドラゾンの調製方法。

【公表番号】特表2012−530739(P2012−530739A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516570(P2012−516570)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003780
【国際公開番号】WO2010/149356
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511312104)プライム ユーロピアン テラペウティカルズ ソシエタ ペル アチオニ (1)
【氏名又は名称原語表記】PRIME EUROPEAN THERAPEUTICALS S.P.A.
【Fターム(参考)】