説明

アリールボロン酸を含む熱サーモグラフィ材料

ある特定のアリールボロン酸化合物を光サーモグラフィ材料に加えると、感度特性の好ましくない損失を招くことなく、初期画像Dminが小さく、熱暗Dmin印刷安定性の向上した材料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工後の性質の優れた現像画像が得られる、ある特定のアリールボロン酸化合物を含む光サーモグラフィ材料に関する。本発明は更に、これらの光サーモグラフィ材料の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学線で画像を形成後、液体処理を行わずに熱を用いて現像を行う、銀を含む光サーモグラフィ画像形成材料(つまり、熱で現像可能な感光性画像形成材料)は、当該技術において何年も前から知られている。このような材料は、光サーモグラフィ材料に特定の電磁放射線(例えば、X線、紫外線、可視線、または赤外線)を画像の形に露光して画像を形成し、熱エネルギーを用いて現像する記録方法に用いられる。このような材料は“乾銀(dry silver)”材料として知られ、一般に、支持体と、その上に被覆した、(a)光触媒(即ち、ハロゲン化銀などの感光性化合物)と、(b)相対的または完全に非感光性の還元性銀イオン源と、(c)還元性銀イオンのための還元組成物(一般に、現像剤を含む)と、(d)バインダと、を含む。光触媒は、先に述べたような露光を受けると露光された粒子中に潜像を形成し、次の現像工程で銀画像の形成のため触媒として働く。次に、熱エネルギーを加えて潜像を現像する。
【0003】
光サーモグラフィ材料では、写真用ハロゲン化銀に光を当てると銀原子(Agを含む小さなクラスターが生じる。当該技術で潜像として知られる、このクラスターの画像状の広がりは、一般に通常の手段では目に見えない。このため感光性材料を更に現像して可視画像を生成しなければならない。これは、潜像の銀含有クラスターを生じているハロゲン化銀粒子の触媒作用が及ぶほど近くにある銀イオンを還元することで行う。こうして黒白画像が生成する。非感光性の銀源は、触媒により還元されて目に見える黒白の陰画を生成するが、ハロゲン化銀の大半は一般にハロゲン化銀として残り、還元されることはない。
【0004】
光サーモグラフィ材料中において、しばしば“現像剤”と呼ばれる還元性銀イオンのための還元剤は、潜像の存在するところで銀イオンを金属銀に還元する化合物であればどのようなものであっても良いが、反応を起こす十分な温度に加熱されるまで反応性が比較的低いことが望ましい。文献には、光サーモグラフィ材料用の現像剤として作用する様々な種類の化合物が開示されている。加熱すると、また高温において、還元性銀イオンは還元剤によって還元される。この反応は、潜像の周囲で優先的に起こる。この反応では、調色剤や光サーモグラフィエマルション層中の他の成分の存在に応じて、黄色〜濃黒色の範囲の色を持つ金属銀の陰画が生じる。
【0005】
[光サーモグラフィと写真との違い]
画像形成技術において、光サーモグラフィは写真とは全く分野の異なるものと長い間考えられている。光サーモグラフィ材料は、水性処理溶液での処理が必要な従来のハロゲン化銀写真材料とは著しく異なるものである。
【0006】
光サーモグラフィ画像形成材料では、処理溶媒を用いず、材料中に含まれる現像剤の反応の結果として加熱によって可視画像が形成される。この乾式現像では50℃以上に加熱することが必須である。反対に、従来の写真画像形成材料では、可視画像を生成するため、水性処理浴中でより穏やかな温度(30〜50℃)で処理する必要がある。
【0007】
光サーモグラフィ材料では、光を捉えるためにごく少量のハロゲン化銀しか使用せず、熱現像を用いた可視画像の生成には、非感光性の還元性銀イオン源(例えば、カルボン酸銀または銀ベンゾトリアゾール)が用いられる。つまり、画像を生成した感光性ハロゲン化銀は、非感光性の還元性銀イオン源と添加された還元剤とが関与する物理的現像処理の触媒として作用する。これに対し従来の湿式処理の黒白写真材料では、1つの形態の銀(つまりハロゲン化銀)しか用いておらず、化学的現像においては、それ自体が少なくとも部分的に銀画像に変換され、あるいは物理的現像では、外部から銀源(または、相当する金属へ還元すると黒色の画像を生成する、その他の還元性金属イオン)を加える必要がある。つまり光サーモグラフィ材料で必要な単位面積当たりのハロゲン化銀の量は、従来の湿式写真材料で使用される量のほんの一部である。
【0008】
光サーモグラフィ材料では、画像形成のための全ての“化学物質”が材料自体に含まれている。例えば、このような材料は、従来の写真材料には通常含まれない現像剤(つまり還元性銀イオンのための還元剤)を含んでいる。現像剤を光サーモグラフィ材料に加えると、様々なタイプの“かぶり(fog)”の発生や、他の好ましくない感度的な副作用が著しくなるおそれがある。このため、これらの問題を抑えるべく、光サーモグラフィ材料の調製と製造に多くの努力が成されている。
【0009】
更に、光サーモグラフィ材料中では、露光されなかったハロゲン化銀が通常、現像後もそのまま残っているため、更に画像形成と現像が進行しないよう材料を安定化しなければならない。これに対し、従来の写真材料からは、溶液現像後、更に画像形成が進むのを防ぐためハロゲン化銀が除かれる(つまり、水性の定着工程において)。
【0010】
光サーモグラフィ材料は乾式熱処理が必要であるため、製造と使用において従来の湿式処理のハロゲン化銀写真材料とは全く異なる問題が生じ、また異なる材料を必要とする。下塗りの化学物質が著しく複雑な光サーモグラフィ材料に、従来のハロゲン化銀写真材料においてある1つの効果を持つ添加剤を加えた場合、全く違う挙動を示すと考えられる。従来の写真材料には、例えば、安定剤、かぶり防止剤、加速剤(speed enhancer)、超増感剤(supersensitizer)、スペクトルおよび化学増感剤などの添加剤が加えられているが、これらの添加剤が光サーモグラフィ材料に有益であるか有害であるかは予測できない。例えば、従来の写真材料で有用な写真かぶり防止剤が、光サーモグラフィ材料に加えると様々な種類のかぶりを生じ、あるいは写真材料で有効な超増感剤が光サーモグラフィ材料中では効かないことは珍しいことではない。
【0011】
光サーモグラフィ材料および写真材料の、これらおよびその他の違いは、Unconventional Imaging Processes, E. Brinckman et al.(Eds.), The Focal Press, London and New York, 1978, pp. 74-75、D. H. Klosterboer, Imaging Processes and Materials, (Neblette's Eighth Edition)、J. Sturge, V. Walworth, and A. Shepp, Eds., Van Nostrand-Reinhold, New York, 1989, Chapter 9, pp. 279-291、Zou et al., J. Imaging Sci. Technol. 1996, 40, pp. 94-103、および M. R. V. Sahyun, J. Imaging Sci. Technol. 1998, 42, 23 に述べられている。
【0012】
【非特許文献1】Unconventional Imaging Processes, E. Brinckman et al.(Eds.), The Focal Press, London and New York, 1978, pp. 74-75
【非特許文献2】D. H. Klosterboer, Imaging Processes and Materials, (Neblette's Eighth Edition)
【非特許文献3】J. Sturge, V. Walworth, and A. Shepp, Eds., Van Nostrand-Reinhold, New York, 1989, Chapter 9, pp. 279-291
【非特許文献4】Zou et al., J. Imaging Sci. Technol. 1996, 40, pp. 94-103
【非特許文献5】M. R. V. Sahyun, J. Imaging Sci. Technol. 1998, 42, 23
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
光サーモグラフィ材料は、医学画像産業で使用するためのものが市販されており、特に、診断および臨床画像の記録に使用されている。これらの材料は、撮像フィルムの検討と保存が適度な温度と湿度に制御された環境中で行われるような世界の地域で最も広く用いられている。しかし、今や光サーモグラフィ材料は、撮像フィルムの検討と保存の環境があまり整っておらず、撮像フィルムが高温高湿で保存されるような地域でも使用されるようになってきている。
【0014】
光サーモグラフィ材料に伴う一般的な問題の1つは、処理後の画像の安定性である。光サーモグラフィ材料は放射線で露光した後、熱で現像する。もし画像を生成した後も材料が熱に曝され、例えば高温環境中で保存されると、熱により次第に現像が進むおそれがある。この結果、Dminが大きくなって、画像部分の色が黒からブロンズ色に変わってしまう。このような変化は、“熱暗印刷(hot-dark print)安定性”、“処理後印刷安定性”または“処理後かぶり(post-processing fog)”として知られている。
【0015】
光サーモグラフィ材料に伴うもう一つの一般的な問題は、処理後のDminが低い画像を生成する材料の調製が難しいことである。この問題は、“初期画像Dmin”または“初期画像Dminかぶり”として知られている。
【0016】
ホウ素化合物は、バインダ用の硬化剤または架橋剤として光サーモグラフィ配合物に加えられている。例えば、米国特許第4,558,003号(Sagawa)では、ポリビニルアセタール樹脂の硬化剤として、三フッ化ホウ素、ホウ酸、ボロン酸、またはホウ酸塩(BO、BO、B2−、およびB)を0.05〜5重量%(望ましくは0.1〜2重量%)の量で添加することを述べている。フェニルホウ酸(即ち、フェニルボロン酸)は最も不活性であることが分かった。
【0017】
米国特許第5,804,365号(Bauerら)は、B(OR)(OR)(OR) (式中、R、R、およびRは、同じまたは異なる置換または非置換アルキルおよびアリール基)の式を持つホウ素化合物を含む光サーモグラフィ配合物を述べている。これらの化合物は、0.022〜0.33g/mの乾燥被覆重量で、被覆斑(coating mottle)、オーバーコート接着性、ベルトマーク耐性を向上させると言われている。アリールボロン酸については言及されていない。
【0018】
ホウ酸は、米国特許第6,419,987号(Bauerら)および米国特許第6,551,770号(Hirabyashi)に記載のように、ポリビニルアルコールの架橋と、コーティング組成物の粘度調節剤として用いられている。米国特許出願公開第2004/0229173号(Oyamada)は、バインダに対して40重量%までのホウ酸、あるいはアルキルまたはアリールボロン酸を用いた、光サーモグラフィ材料の保護トップコート層または裏側層中のポリビニルアルコール類を架橋することを述べている。
【0019】
同一出願人による同時係属中の米国特許出願第11/025,882号(James B. Philip, Doreen C. Lynch, William D. Ramsden, Roger L. Klaus, および Stacy M. Ulrichにより、2004年12月29日出願)は、光サーモグラフィ材料に様々なホウ素化合物を用いて、自然老化が保たれている間、フォトスピードや他の感度特性を犠牲にすることなく暗安定性とデスクトップ印刷安定性を向上させることを述べている。ホウ素化合物の添加量は、望ましくは0.010〜0.50g/mである。
【0020】
感度特性を犠牲にすることなく、初期画像のDminが小さく、熱暗Dmin安定性の良い黒白画像が得られるような、光サーモグラフィエマルション配合物および材料への効果的な化合物の添加が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、支持体と、その少なくとも一方の側に備えた光サーモグラフィ層とを含み、光サーモグラフィ材料は、a.感光性ハロゲン化銀と、b.非感光性の還元性銀イオン源と、c.還元性銀イオンのための還元剤と、d.ポリマーバインダと、e.構造式(I)で示される1つ以上のアリールボロン酸化合物とを、反応しあう関係で(in reactive association)含んでいる、黒白の有機溶媒系光サーモグラフィ材料を提示する。
【化1】


式中、Arは、芳香族炭素環または複素環基を示す。ホウ素原子の結合したAr環員原子に隣接するArの環員原子に結合している非水素置換基は、縮合芳香族または非芳香族の炭素環または複素環への結合である。また、アリールボロン酸化合物の含有量は0.5g/m以上である。
【0022】
望ましい実施の形態において、黒白の有機溶媒系光サーモグラフィ材料は、支持体と、その少なくとも一方の側に備えた光サーモグラフィ層とを含み、光サーモグラフィ材料は、a.感光性ハロゲン化銀と、b.少なくともベヘン酸銀を含む、非感光性の還元性銀イオン源と、c.還元性銀イオンのための1つ以上の還元剤と、d.ポリビニルブチラールまたはポリビニルアセタールバインダと、e.構造式(II)で示される1つ以上のアリールボロン酸化合物とを、反応し合う関係で含むものである。
【化2】


式中、R、R、およびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル基、アリール基、ニトロ基、ハロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオメチル基、アセチル基、ニトリル基を示し、あるいは、RとR、RとR、またはR、R、およびRは、互いに結合して1つ以上の縮合炭素環、複素環、芳香環、または複素芳香環を形成することができる。またアリールボロン酸化合物の含有量は0.5〜5g/mである。
【0023】
更に本発明は、
A)本発明の光サーモグラフィ材料に、電磁放射線を画像の形に露光して潜像を形成する工程と、
B)同時に、またはそれに続いて、露光した光サーモグラフィ材料を加熱して潜像を可視画像に現像する工程と、を含む、可視画像の生成方法を提示する。
【0024】
ある特定のアリールボロン酸化合物を光サーモグラフィ材料に加えると、感度特性の好ましくない低下を招くことなく、初期画像Dminが小さくなるだけでなく、熱暗Dmin印刷安定性も向上することが見出された。この向上は、熱暗Dmin印刷安定性の変化が小さくなることで、最も多く証明される。また高温貯蔵後の画像部分の濃度変化が小さくなることでもしばしば証明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本件に記載の光サーモグラフィ材料は、黒白またはカラー光サーモグラフィに使用できる。この光サーモグラフィ材料は、マイクロフィルム、X線画像形成(例えば、デジタル医療用イメージング)、X線ラジオグラフィ、工業用ラジオグラフィに使用可能である。更に、これらの光サーモグラフィ材料の350〜450nmでの吸収が好ましく低い(0.5以下)ため、グラフィックアート分野(例えば、画像製版(imagesetting)および写真植字)、印刷版の製造、密着焼付け、複製(“模造(duping)”)、および補強加工に使用できる。
【0026】
この光サーモグラフィ材料は、医学的診断に使用するため、可視線、X線、または赤外線に応じてヒトまたは動物被検体の黒白画像を作成する場合に特に有用である。このような用途としては、胸部画像形成、マンモグラフィ、歯科用画像形成、整形外科用画像形成、一般医療用ラジオグラフィ、治療用ラジオグラフィ、獣医学用ラジオグラフィ、およびオートラジオグラフィなど(但し、これらに限定しない)が挙げられる。X線を用いる場合、この光サーモグラフィ材料を、1つ以上のリン増感スクリーン、光サーモグラフィエマルション中に加えられたリン、またはそれらの組み合わせと併せて用いることもできる。このような材料は、X線で直接画像を形成する歯科用ラジオグラフィに特に有用である。更にこの材料は、X線リソグラフィや工業用ラジオグラフィなど、医療用以外でX線を用いる場合にも有用である。
【0027】
本光サーモグラフィ材料は、適当な波長の放射線に対して感度を持たせることができる。つまり一部の実施の形態において、本材料は、電磁スペクトルの紫外、可視、赤外、または近赤外波長に感度を持つ。望ましい実施の形態において、本材料は、600nm以上の放射線、望ましくは700〜950nmの赤外線に感度を持つ。様々なスペクトル増感染料を用いて、特定のスペクトル域での感度を上げることができる。
【0028】
光サーモグラフィ材料では、画像形成に必要な成分を、支持体の片側(“前側”)の1つ以上の光サーモグラフィエマルション層中に加えることができる。本件では、感光性光触媒(感光性ハロゲン化銀など)または非感光性の還元性銀イオン源、あるいはその両者を含む層を、光サーモグラフィエマルション層と呼ぶ。光触媒と非感光性の還元性銀イオン源とは触媒作用が及ぶほど近くにあり、望ましくは同じエマルション層中にある。
【0029】
光サーモグラフィ材料が支持体の片側だけに画像形成層を備えている場合、一般に、様々な非画像形成層を材料の“裏側”(非エマルションまたは非画像形成側)に設ける。このような層としては、静電防止層、導電性/静電防止層、ハレーション防止層、保護層、輸送促進(transport enabling)層などが挙げられる。
【0030】
支持体の“前側”あるいは画像形成またはエマルション側にも様々な非画像形成層を設けることができる。これらの層としては、例えば、保護用トップコート層、下塗り層、中間層、不透明化層、導電性/静電防止層、ハレーション防止層、尖鋭度層、補助層、および当業者に容易に明らかなその他の層が挙げられる。
【0031】
一部の実施の形態では、光サーモグラフィ材料を“両側”に設け、または“二重”として、支持体の両側に同じまたは異なる光サーモグラフィコーティング(または画像形成層)を備えることが有用な場合がある。このような構造では、それぞれの側に、必要とされる導電層だけでなく、1つ以上の保護用トップコート層、下塗り層、中間層、尖鋭度層、導電性/静電防止層、補助層、重複防止(anti-crossover)層、および当業者に容易に明らかなその他の層も加えることができる。
【0032】
この光サーモグラフィ材料を、画像の形に露光した後、または露光と同時にほぼ無水の状態で下記のように熱現像すると、銀画像(望ましくは黒白銀画像)が得られる。
【0033】
[本件で用いる定義]
光サーモグラフィ材料の記述において、“a”または“an”成分は、その成分(例えば、本件に記載のアリールボロン酸類)の“少なくとも1つ”を指す。
【0034】
別記のない限り、本件で“光サーモグラフィ材料”の語を用いる場合、この語は本発明の材料を指すものとする。
【0035】
“ほぼ無水の状態での加熱”とは、周囲とあまり差のない水蒸気の存在下、50〜250℃の温度での加熱を意味する。“ほぼ無水の状態”とは、反応系が空気中の水分でほぼ平衡に達しており、反応を引き起こすまたは促進する水や他の溶媒が外部から材料へ特別にまたは積極的に供給されないことを意味する。このような条件は、T. H. James, The Theory of the Photographic Process, Fourth Edition, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977, p. 374 に述べられている。
【0036】
“光サーモグラフィ材料”とは、支持体と、少なくとも1つの光サーモグラフィエマルション層または一組の光サーモグラフィエマルション層とを含む、乾式処理が可能な一体化した要素を意味する。感光性ハロゲン化銀と還元性銀イオン源は1つの層の中にあり、他の必要な成分または添加剤は所望に応じて同じ層中または隣接して被覆した層中に分散している。黒白光サーモグラフィ材料の場合、黒白銀画像が生成する。更にこれらの材料には、1つ以上の画像形成成分が異なる層中に(但し“反応しあう関係”で)存在している多層型構造も含まれる。例えば、1つの層に非感光性の還元性銀イオン源を加え、もう一つの層には還元性成分を加え、2つの反応性成分を互いに反応しあう関係としても良い。“一体化”とは、画像形成に必要な全ての画像形成化学物質が材料中にあって、別の要素(レシーバ要素など)への、または別の要素からの、画像形成化学物質や反応生成物(染料など)の拡散がないことを意味する。
【0037】
光サーモグラフィで用いる場合、“画像の形に露光する”または“画像の形の露光”とは、電磁放射線を利用して潜像を生成する露光手段を使用し、乾式処理が可能な材料としてこの材料に画像を生成することを意味する。これには、例えば、スキャンレーザ放射の調節などにより一度に1ピクセルずつ画像を形成するデジタル式露光だけでなく、感光性材料への投射によって画像を生成するアナログ式露光によるものも含まれる。
【0038】
“触媒作用を及ぼすほどに近い”または“反応しあう関係”とは、反応性成分が同じ層または隣接層中にあって、これらが画像形成および熱現像の間に互いに容易に接触することを意味する。
【0039】
“エマルション層”、“画像形成層”、“光サーモグラフィ画像形成層”、または“光サーモグラフィエマルション層”は、感光性ハロゲン化銀および/または非感光性の還元性銀イオン源、あるいは還元性組成物を含む光サーモグラフィ材料の層を意味する。このような層には更に、追加成分または所望の添加剤(追加のアリールボロン酸など)を加えても良い。これらの層は一般に支持体の“前側”として知られる側にあるが、支持体の両側に設けても良い。
【0040】
“光触媒”とは、放射線を当てると、後の画像形成材料の現像において触媒として作用する化合物を生成する、ハロゲン化銀などの感光性化合物を意味する。
【0041】
“同時コーティング”または“ウェットオンウェット(wet-on-wet)コーティング”とは、複数の層を被覆する場合に、最初に被覆した層が乾く前にその層の上に次の層を被覆することを意味する。同時コーティングは、支持体の前側、後側、または両側に層を塗布するために用いることができる。
【0042】
“透明”とは、可視光または画像形成放射線を、感知されるほど散乱または吸収することなく透過することを意味する。
【0043】
“銀塩”および“有機銀塩”とは、銀原子との結合を持つ有機分子を指す。このような形の化合物は技術的には銀配位錯体または銀化合物であるが、しばしば銀塩とも呼ばれる。
【0044】
“アリール基”とは、芳香族炭化水素から1個の原子を除いて誘導した有機基を指し、例えば、ベンゼンから1個の水素原子を除いて生成したフェニル基などである。
【0045】
“覆われた層”とは、その層の上に少なくとも1つの別の層が被覆されている層(“覆われた”裏側導電層など)を意味する。
【0046】
“コーティング重量”、“被覆重量”、および“被覆率”は同義であり、一般に単位面積当たりの重量またはモル数、例えば、g/mまたはモル/mなどで表される。
【0047】
“スペクトルの紫外領域”とは、その範囲の一部はヒトの肉眼に見えるが、410nm以下(望ましくは100〜410nm)のスペクトル域を指す。
【0048】
“スペクトルの可視領域”とは、400〜700nmのスペクトル域を指す。
【0049】
“スペクトルの短波長可視領域”とは、400〜450nmのスペクトル域を指す。
【0050】
“スペクトルの赤領域”とは、600〜700nmのスペクトル域を指す。
【0051】
“スペクトルの赤外領域”とは、700〜1400nmのスペクトル域を指す。
【0052】
“非感光性”とは、意図的に光に感度を持たないことを意味する。
【0053】
感光度測定に関する用語である“フォトスピード”、“スピード”、または“写真速度”(感度としても知られる)、吸光度、およびコントラストは、画像形成技術において公知の一般的な定義を持つ。感光度測定に関する用語である吸光度は、光学濃度(OD)の別の言い方である。
【0054】
速度2は、Dminより1.0高い濃度値に相当する、Log1/E + 4 であり、Eはエルグ/cmで表した露光である。
【0055】
相対速度2は、Dminより1.00高い濃度値で求め、アリールボロン酸化合物を含まない試料に対して標準化し、相対速度値100が割り当てられている。
【0056】
銀効率は、Dmaxを銀被覆重量で割ったものと定義され、Dmax/Agと略記される。これは所定の一連の露光および現像条件下で現像される銀の量の指標である。
【0057】
光サーモグラフィ材料において、本件ではDmin(小文字)を、予め放射線に露光せず、光サーモグラフィ材料を熱で現像した場合に達成される画像濃度とする。Dmax(小文字)は、画像形成および現像後に特定の試料の画像形成部分で得られた最大画像濃度である。
【0058】
“DminB”とは、画像形成および現像の後、440nmに透過ピークを持つ青フィルタを取り付けた濃度計を用いて記録した、最小濃度(DminBlue)を指す。“DmaxB”は、画像形成および現像の後、440nmに透過ピークを持つ青フィルタで測定した、特定の試料の画像形成部分で得られた最大画像濃度である。
【0059】
所定の試験条件に一定時間置いた後、440nmに透過ピークを持つ青フィルタを取り付けた濃度計を用いて測定したDminBの濃度変化をΔDminBとする。440nmに透過ピークを持つ青フィルタを用いて画像形成部分のあらゆる点で測定した、画像形成および現像の後の特定の試料の画像形成部分の最も大きい濃度変化を、ΔDmaxBとする。
【0060】
MlN(大文字)とは、画像を形成していない、未現像の材料の濃度である。DMAX(大文字)とは、光サーモグラフィ材料を露光した後、熱によって現像した場合に達成可能な最大画像濃度である。DMAXは、“飽和濃度”としても知られる。
【0061】
当該技術においてよく理解されているように、本件に記載の化合物に関し、置換は容認されるだけでなく多くの場合好ましいことであって、本発明で使用される化合物には別に記載のない限り、様々な置換基があるものとする。このため、ある化合物が所定の式の“構造を持つ”、またはある化合物の“誘導体”であるとされている場合、式の結合構造を変えない置換基、または構造中に示されている原子は、説明文によってこれらの置換基が特に除外されていない限り、式中に含まれるものとする。
【0062】
ある特定の置換基に関する議論と列挙を簡略化するための一法として、“基”の語には、置換されていない化学種だけでなく、置換されたものも含まれるとする。つまり、“アルキル基”という語は、メチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、イソオクチル、オクタデシルなどの純粋な炭化水素アルキル鎖だけでなく、当該技術で公知の置換基、例えば、ヒドロキシル、アルコキシ、フェニル、ハロゲン原子(F、Cl、Br、およびI)、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシなどを含むアルキル鎖も含むものとする。例えば、アルキル基には、エーテルおよびチオエーテル基(例えば、CH−CH−CH−O−CH− および CH−CH−CH−S−CH−)、ハロアルキル、ニトロアルキル、アルキルカルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキサミド、ヒドロキシアルキル、スルホアルキル、および当業者に容易に明らかなその他の基が含まれる。非常に求電子性の強いまたは酸化性の強い置換基など、他の活性成分と好ましくない反応を起こす置換基は当然、活性または有害であるとして、当業者により除外されるであろう。
【0063】
Research Disclosure (http://www.researchdisclosure.com)は、Kenneth Mason Publications Ltd., The Book Barn, Westbourne, Hampshire PO10 8RS, UK の出版物である。これは、Emsworth Design Inc., 200 Park Avenue South, Room 1101, New York, NY 10003 からも入手できる。
【0064】
本発明のその他の態様、長所、および利点は、本出願に提示の詳細な説明、実施例、および請求項より明らかである。
【0065】
[光触媒]
上記のように、光サーモグラフィ材料は、光サーモグラフィエマルション層中に1つ以上の光触媒を含んでいる。有用な光触媒は主に、臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、臭化ヨウ化銀、塩化臭化ヨウ化銀、塩化臭化銀、および当業者に容易に明らかなその他のものなどの、感光性ハロゲン化銀である。ハロゲン化銀の混合物も、適当な割合で用いることができる。臭化銀とヨウ化銀が望ましい。より望ましくは臭化ヨウ化銀であって、その中でのヨウ素の適当な量はヨウ化銀がほぼ100%までであり、ヨウ化銀が50モル%までがより有望である。更に望ましくは、臭化ヨウ化銀は、臭化物を70モル%以上(望ましくは85モル%以上、より望ましくは90モル%以上)(全ハロゲン化銀に対して)含んでいる。残りのハロゲン化物は、ヨウ化物、塩化物、または塩化物およびヨウ化物である。望ましくは、追加のハロゲン化物はヨウ化物である。臭化銀および臭化ヨウ化銀が最も望ましく、後者のハロゲン化銀は通常、10モル%までのヨウ化銀を含んでいる。
【0066】
光サーモグラフィ材料の一部の実施の形態では、均質な感光性ハロゲン化銀粒子中により多くのヨウ化物、詳細には、例えば米国特許出願公開第2004/0053173(Maskaskyら)に記載のように、20モル%からヨウ化物の飽和限界まで加えることができる。
【0067】
ハロゲン化銀粒子は、例えば、立方体、八面体、四面体、斜方晶系(orthorhombic)、菱面体(rhombic)、十二面体、その他の多面体、平板状、薄層状、双晶、または小板状(platelet)の形態など(但し、これらに限定されない)の晶癖または形態を持ち、また、その上に結晶のエピタキシャル成長を加えても良い。所望ならば、異なる形態を持つ粒子の混合物を用いることもできる。立方体または平板の形(あるいはその両方)を持つハロゲン化銀粒子が望ましい。
【0068】
ハロゲン化銀粒子は、全体のハロゲン化物の比が一定のものでも良い。更に、例えば、臭化銀とヨウ化銀の比を連続的に変えてハロゲン化物含量を段階的に変え、あるいは、1つ以上のハロゲン化銀から成る独立したコアと、1つ以上の異なるハロゲン化銀から成る独立したシェルとを備えた、コアシェル型のもので良い。光サーモグラフィ材料に有用なコアシェル型ハロゲン化銀粒子と、このような材料の製造方法は、米国特許第5,382,504号(Shorら)に記載されている。イリジウムおよび/または銅をドープしたコアシェルおよび非コアシェル型粒子は、米国特許第5,434,043号(Zouら)および米国特許第5,939,249号(Zou)に記載されている。
【0069】
一部の例では、米国特許第6,413,710号(Shorら)に記載のように、ヒドロキシテトラアザインデン(4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデンなど)、または、少なくとも1つのメルカプト基を含むN−複素環化合物(1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなど)の存在下で、感光性ハロゲン化銀粒子を調製すると有用である。
【0070】
感光性ハロゲン化銀は、非感光性の還元性銀イオン源に触媒作用を及ぼすほど近くに置かれている限り、どのような方法でエマルション層に加え(またはその中に形成)しても良い。
【0071】
ハロゲン化銀は、予め、その場以外(ex-situ)での工程によって調製することが望ましい。この技術を用いると、粒径、粒径分布、ドープ剤濃度、ハロゲン化銀の組成を、より正確に制御できるようになるため、ハロゲン化銀粒子と生成する光サーモグラフィ材料の両方に、より特徴的な性質を与えることができる。
【0072】
一部の構造では、その場以外で調製したハロゲン化銀の存在下で、非感光性の還元性銀イオン源を生成することが好ましい。この工程では、長鎖脂肪酸カルボン酸銀(一般に、銀“せっけん”またはホモジネートと呼ばれる)などの還元性銀イオン源を、予備生成したハロゲン化銀粒子の存在下で生成する。ハロゲン化銀存在下での還元性銀イオン源の共沈殿によって2つの材料がより良く混じり合い、しばしば“予備生成せっけん(preformed soap)”と呼ばれるものが生成する(米国特許第3,839,049号(Simons)参照)。
【0073】
一部の構造では、予備生成ハロゲン化銀粒子を非感光性の還元性銀イオン源に加え、“物理的に混合”することが好ましい。
【0074】
予備生成ハロゲン化銀エマルションは水性または有機性工程によって調製可能であり、可溶塩を除くため洗浄を行っても行わなくても良い。可溶塩は、所望の方法、例えば、米国特許第2,489,341号(Wallerら)、米国特許第2,565,418号(Yackel)、米国特許第2,614,928号(Yutzyら)、米国特許第2,618,556号(Hewitson ら)、および米国特許第3,241,969号(Hartら)に記載の方法で除くことができる。
【0075】
また、有機銀塩にハロゲン化物またはハロゲン含有化合物を加え、有機銀塩の銀を部分的にハロゲン化銀に変える、現場(in-situ)工程の使用も効果的である。無機ハロゲン化物(臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、またはそれらの混合物など)や、ハロゲン含有有機化合物(N−ブロモスクシンイミドまたは臭化水素酸(hydrobromide)過臭素酸ピリジニウムなど)が使用できる。このようなハロゲン化銀の現場生成の詳細はよく知られており、米国特許第3,457,075号(Morganら)に述べられている。
【0076】
予備生成したものと現場生成したものの両方のハロゲン化銀の混合物を使用すると特に効果的である。予備生成ハロゲン化銀は、望ましくは予備生成したせっけん中に存在する。
【0077】
ハロゲン化銀と有機銀塩とを生成してこれを混合する方法については更に、Research Disclosure, June 1978, item 17029、米国特許第3,700,458号(Lindholm)、米国特許第4,076,539号(Ikenoueら)、および特開昭49−013224号(富士写真フイルム)、特開昭50−017216号(富士写真フイルム)、および特開昭51−042529号(富士写真フイルム)に記載されている。
【0078】
画像形成配合物に使用されるハロゲン化銀粒子の平均粒径は、所望の用途に応じて数マイクロメータ(μm)にまで変えることができる。カルボン酸銀を含む予備生成エマルションでの使用に望ましいハロゲン化銀粒子は0.01〜1.0μmの数平均粒径を持つ立方体であり、より望ましくは0.03〜0.1μmの数平均粒径を持つものである。0.06μm以下の数平均粒径を持つ粒子が更に望ましく、0.03〜0.06μmの数平均粒径を持つものが最も望ましい。様々な平均粒径の粒子の混合物も用いられる。高速光サーモグラフィ構造での使用に望ましいハロゲン化銀粒子は、0.02μm以上、0.10μm以下の平均厚さと、0.5μm以上、8μm以下の相当円直径と、5:1以上のアスペクト比を持つ平板状粒子である。より望ましくは、0.03μm以上、0.08μm以下の平均厚さと、0.75μm以上、6μm以下の相当円直径と、10:1以上のアスペクト比を持つものである。
【0079】
感光性ハロゲン化銀粒子の平均的大きさは、粒子が球形ならば平均粒径で、粒子が立方体またはその他の非球形であれば投射像に対する相当円直径の平均で表される。代表的な粒径測定法は、Particle Size Analysis, ASTM Symposium on Light Microscopy, R. P. Loveland, 1955, pp. 94-122、 および C. E. K. Mees and T. H. James, The Theory of the Photographic Process, Third Edition, Macmillan, New York, 1966, Chapter 2 に述べられている。粒径の測定値は、粒子の投影面積またはその直径の近似値で表される。対象粒子の形状がほぼ一定であれば、これにより十分な精度の結果が得られると考えられる。
【0080】
1つ以上の感光性ハロゲン化銀の含有量は、非感光性の還元性銀イオン源1モル当たり、望ましくは0.005〜0.5モル、より望ましくは0.01〜0.25モル、最も望ましくは0.03〜0.15モルである。
【0081】
[化学的増感]
感光性ハロゲン化銀は、イオウ、テルル、またはセレンを含む有用な化合物、または、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、またはそれらの組み合わせを含む化合物と、ハロゲン化銀などの還元剤とを含む有用な化合物、あるいはこれらの組み合わせを用いて化学的に増感させることができる。これらの材料の詳細は、例えば、T. H. James, The Theory of the Photographic Process, Fourth Edition, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977. Chapter 5, pp. 149-169 に示されている。適当な従来の化学的増感法は、米国特許第1,623,499号(Sheppardら)、米国特許第2,399,083号(Wallerら)、米国特許第3,297,447号(McVeigh)、米国特許第3,297,446号(Dunn)、米国特許第5,049,485号(Deaton)、米国特許第5,252,455号(Deaton)、米国特許第5,391,727号(Deaton)、米国特許第5,912,111号(Lokら)、米国特許第5,759,761号(Lushingtonら)、および欧州特許第0915371A1号(Lokら)にも記載されている。
【0082】
本件に挙げた米国特許第5,691,127号(Daubendiekら)に記載のメルカプトテトラゾール類およびテトラアザインデン類も、平板状ハロゲン化銀粒子に加えるべきものとして使用できる。
【0083】
米国特許第6,368,779号(Lynchら)に記載のものなどの、ある種の置換および非置換チオウレア化合物も化学増感剤として使用できる。
【0084】
更にその他の化学増感剤としては、米国特許第6,699,647号(Lynchら)に記載のある種のテルル含有化合物や、米国特許第6,620,577号(Lynchら)に記載のある種のセレン含有化合物が挙げられる。
【0085】
米国特許第6,423,481号(Simpsonら)に記載されているような、金(III)を含む化合物と、イオウ、テルル、またはセレンのいずれかを含む化合物との組み合わせも化学増感剤として有用である。
【0086】
更に、米国特許第5,891,615号(Winslowら)の教示によれば、イオウを含む化合物は、酸化環境中においてハロゲン化銀粒子上で分解することができる。この方法で使用できるイオウ含有化合物の例としては、イオウを含むスペクトル増感染料が挙げられる。酸化環境中で分解する他の有用なイオウ含有化学増感化合物は、同一出願人により同時係属中の米国特許出願公開第2005/0123870号(Simpsonら)、米国特許出願公開第2005/0123871号(Burlevaら)、および米国特許出願公開第2005/123872号(Burlevaら)に記載のジフェニルホスフィンスルフィド化合物である。
【0087】
化学増感剤の含有量は、一般にハロゲン化銀粒子の平均粒径に応じて変わる、通常の量とすることができる。一般に、0.01〜1μmの平均粒径を持つハロゲン化銀粒子では、その合計量は、銀の総量1モル当たり10−10モル以上、望ましくは銀の総量1モル当たり10−8〜10−2モルである。
【0088】
[スペクトルの増感]
紫外、可視、および/または赤外線に対するハロゲン化銀の感度(つまり、300〜1400nmの範囲での感度)を上げることが知られている1つ以上のスペクトル増感染料を用いて、感光性ハロゲン化銀をスペクトルに応じて増感させることができる。感光性ハロゲン化銀を赤外線(700〜950nm)に対して増感させることが望ましい。使用可能なスペクトル増感染料の非制限的な例としては、シアニン染料、メロシアニン(merocyanine)染料、錯体シアニン染料、錯体メロシアニン染料、ホロポラー(holopolar)シアニン染料、ヘミシアニン(hemicyanine)染料、スチリル染料、およびヘミオキサノール(hemioxanol)染料が挙げられる。これらは光サーモグラフィエマルションの調製のどの段階で加えても良いが、一般に、化学的増感を行った後に加えられる。
【0089】
本発明の実施においては、米国特許第3,719,495号(Lea)、米国特許第4,396,712号(Kinoshitaら)、米国特許第4,439,520号(Kofronら)、米国特許第4,690,883号(Kuboderaら)、米国特許第4,840,882号(Iwagakiら)、米国特許第5,064,753号(Kohnoら)、米国特許第5,281,515号(Delpratoら)、米国特許第5,393,654号(Burrowsら)、米国特許第5,441,866号(Millerら)、米国特許第5,508,162号(Dankosh)、米国特許第5,510,236号(Dankosh)、米国特許第5,541,054号(Millerら)、特開許2000−063690号(田中ら)、特開2000−112054号(福坂ら)、特開2000−273329号(田中ら)、特開2001−005145(荒井)、特開2001−064527号(押山ら)、特開2001−154305(喜多ら)に記載のものなどの適当なスペクトル増感染料が使用できる。有用なスペクトル増感染料は、Research Disclosure, December 1989, item 308119, Section IV および Research Disclosure, 1994, item 36544, section V にも記載されている。
【0090】
スペクトル増感染料の具体的な組み合わせを示しているものとしては、米国特許第4,581,329号(Sugimotoら)、米国特許第4,582,786号(Ikedaら)、米国特許第4,609,621号(Sugimotoら)、米国特許第4,675,279号(Shutoら)、米国特許第4,678,741号(Yamadaら)、米国特許第4,720,451号(Shutoら)、米国特許第4,818,675号(Miyasakaら)、米国特許第4,945,036号(Araiら)、および米国特許第4,952,491号(Nishikawaら)も挙げることができる。
【0091】
米国特許第4,524,128号(Edwardsら)、特開2001−109101号(安達)、特開2001−154305号(喜多ら)、特開2001−183770号(羽生ら)に記載のような、光や熱の作用で脱色されるスペクトル増感染料も有用である。
【0092】
超増感(supersensitization)が図れるよう染料を選び、それぞれの染料を単独で用いて得られる感度を合わせたよりも著しく高い感度を達成しても良い。
【0093】
添加するスペクトル増感染料の適当な量は、ハロゲン化銀1モル当たり、一般に10−10〜10−1モル、望ましくは10−7〜10−2モルである。
【0094】
[非感光性の還元性銀イオン源]
光サーモグラフィ材料中の非感光性の還元性銀イオン源は、還元可能な銀(1+)イオンを含む有機銀化合物である。このような化合物は一般に光に対して比較的安定で、露光された光触媒(ハロゲン化銀など)と還元剤組成物との存在下で50℃以上に熱すると銀画像を生成する、銀とこれに配位した有機配位子とから成る銀塩である。
【0095】
主な有機銀塩は、多くの場合、脂肪族カルボン酸の銀塩(以下に記載)である。脂肪族カルボン酸の銀塩の混合物は、混合物に少なくともベヘン酸銀が含まれる場合に特に有用である。
【0096】
有用なカルボン酸銀類としては、長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が挙げられる。脂肪族カルボン酸は一般に10〜30、望ましくは15〜28の炭素原子を含む脂肪鎖を含むものである。このような望ましい銀塩の例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロ酸銀、リノール酸銀、酪酸銀、ショウノウ酸銀、およびそれらの混合物が挙げられる。最も望ましくは、少なくともベヘン酸銀を単独で、または他のカルボン酸銀と混合して使用する。
【0097】
上記のカルボン酸銀以外の銀塩も用いることができる。このような銀塩としては、米国特許第3,330,663号(Weydeら)に記載のような、チオエーテル基を含む脂肪族カルボン酸の銀塩、米国特許第5,491,059号(Whitcomb)に記載のような、α位(炭化水素基上の)またはオルト位(フェニル基上の)にエーテルまたはチオエーテル結合、あるいは立体阻害性の置換基を組み込んだ、炭化水素鎖を含む可溶性カルボン酸銀、米国特許第4,504,575号(Lee)に記載のような、ジカルボン酸の銀塩、スルホン酸の銀塩、欧州特許第0227141A1号(Leendersら)に記載のようなスルホコハク酸の銀塩、例えば米国特許第4,761,361号(Ozakiら)および米国特許第4,775,613号(Hiraiら)に記載のような、アリールカルボン酸の銀塩(安息香酸銀など)、アセチレン類の銀塩、および、米国特許第4,123,274号(Knightら)および米国特許第3,785,830号(Sullivanら)に記載のような、メルカプトまたはチオン基を含む複素環化合物および誘導体の銀塩が挙げられる。
【0098】
カルボン酸銀とカルボン酸との等モル混合物などの、銀半せっけん(half soap)の使用も便利である。分析によれば、この混合物中には14.5重量%の銀の固体が含まれており、市販の脂肪族カルボン酸のアンモニウムまたはアルカリ金属塩の水溶液から沈殿させて、あるいは銀せっけんに遊離脂肪酸を加えて調製する。
【0099】
銀せっけんエマルションの製造に用いる方法は当該技術においてよく知られており、また、Research Disclosure, April 1983, item 22812、Research Disclosure, October 1983, item 23419、米国特許第3,985,565号(Gabrielsenら)、および前掲の参考文献に開示されている。
【0100】
非感光性の還元性銀イオン源は、米国特許第6,355,408号(Whitcombら)に記載のようなコアシェル型銀塩であっても良い。コアは1つ以上の銀塩を含み、シェルは1つ以上の異なる銀塩を含んでおり、銀塩の一方はカルボン酸銀である。他の有用な非感光性の還元性銀イオン源は、米国特許第6,472,131号(Whitcomb)に記載のような、2つの異なる銀塩を含む銀二量体化合物である。更に別の有用な非感光性の還元性銀イオン源は、1つ以上の感光性ハロゲン化銀を含む第1のコア、あるいは1つ以上の非感光性の無機金属塩または銀以外を含む有機塩を含む第1のコアと、第1のコアを少なくとも部分的に覆っているシェルとを含む、銀コアシェル型化合物である。このときシェルは1つ以上の非感光性銀塩を含み、その銀塩のそれぞれは銀に配位した有機配位子を含んでいる。このような化合物は、米国特許第6,803,177号(Bokhonovら)に示されている。
【0101】
有機溶媒系光サーモグラフィ材料に特に有用な有機銀塩としては、カルボン酸銀類(脂肪族カルボン酸塩およびアリールカルボン酸塩のいずれも)、銀ベンゾトリアゾラート類、スルホン酸銀類、スルホコハク酸銀類、および銀アセチリド類が挙げられる。15〜28の炭素原子を含む長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が特に望ましい。
【0102】
1つ以上の非感光性の還元性銀イオン源の含有量は、エマルション層の乾燥総重量の、望ましくは5〜70%、より望ましくは10〜50%である。別な言い方をするならば、還元性銀イオン源の量は一般に、乾燥光サーモグラフィ材料1m当たり0.002〜0.2モル(望ましくは0.01〜0.05モル)である。
【0103】
光サーモグラフィ材料中の銀の総量(全ての銀源からの)は一般に0.002モル/m以上、望ましくは0.01〜0.05モル/m、より望ましくは0.01〜0.02モル/mである。別の態様では、支持体のそれぞれの画像形成側において、銀の総量(ハロゲン化銀と還元性銀塩の両方からの)は、被覆重量で2g/m以下、望ましくは1.8g/m以下で使用することが好ましい。
【0104】
[還元剤]
還元性銀イオン源のための還元剤(または、2つ以上の成分から成る還元剤組成物)は、銀(1+)イオンを金属銀に還元するものであれば、どのような材料(望ましくは有機材料)であっても良い。“還元剤”は、“現像剤”または“現像主薬(developing agent)”と呼ばれることもある。
【0105】
光サーモグラフィ材料においてカルボン酸銀である銀源を用いる場合、1つ以上の立体阻害性の高いフェノールまたは阻害性ビスフェノール還元剤が望ましい。一部の例では、還元剤組成物は、以下に示す様々な種類の共現像剤および還元剤から選ばれる阻害性フェノールまたは阻害性ビスフェノール現像剤、共現像剤などの、2つ以上の成分を含んでいる。更にコントラスト増強剤を含む3成分現像剤混合物も有用である。このようなコントラスト増強剤は、以下に示す様々な種類の還元剤から選ぶことができる。
【0106】
“阻害性(hindered)フェノール還元剤”は、所定のフェニル環上に1つだけヒドロキシ基を持ち、またヒドロキシ基に対してオルト位に更に少なくとも1つの置換基を持つ化合物である。
【0107】
阻害性フェノール還元剤の種類の一つは、阻害性フェノール類及び阻害性ナフトール類である。このような阻害性フェノールとしては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ベンジルフェノール、2−ベンジル−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル-6−(1’−メチルシクロヘキシル)フェノール、および、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸2,2−ビス[[3−[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロポキシ]メチル]−1,3−プロパンジイルエステル(IRGANOX(登録商標)1010)が挙げられる。
【0108】
阻害性フェノール還元剤のもう一つの種類は、阻害性ビスフェノール類である。“阻害性ビスフェノール類”は、1つ以上のヒドロキシ基を含み、そのそれぞれが異なるフェニル環上に置かれている。このような阻害性フェノールとしては、例えば、ビナフトール類(つまり、ジヒドロキシビナフチル類)、ビフェノール類(即ち、ジヒドロキシビフェニル類)、ビス(ヒドロキシナフチル)メタン類、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類、およびビス(ヒドロキシフェニル)チオエーテル類などが挙げられ、そのそれぞれは更に置換基を持っていても良い。
【0109】
望ましい阻害性ビスフェノール還元剤は、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類、例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1’−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(1−メチルシクロヘキシル)−5−メチルフェニル)メタン、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、1,1’−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)イソブタン、および2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノールなどである。このような阻害性ビスフェノール化合物は更に、ヒドロキシル基に対してオルト位に少なくとも1つの置換基を持ち、しばしば“阻害性オルトビスフェノール類”と呼ばれる。
【0110】
有用な還元剤としては更に、例えば、米国特許第6,699,649号(Nishijimaら)に記載のような、結合メチレン基に付いた非芳香族の環状基を持つビスフェノール類、例えば、米国特許出願公開第2005/0221237号(Sakaiら)に記載のような、結合メチレン基に付いた脂環基またはアルキレン基を持つビスフェノール類、例えば、米国特許第6,485,898号(Yoshiokaら)に記載のような、フェノール環上に二級または三級の置換基を持つビスフェノール類が挙げられる。
【0111】
特に有用な還元剤は、芳香環上のヒドロキシル基に対してオルト位に二環式および三環式の置換基を持つビスフェノール現像剤(オルト−二環式または三環式置換ビスフェノール現像剤)である。このような還元剤は、同一出願人による同時係属中の米国特許出願第11/351,593号(Lynch, Ramsden, Hansen, および Ulrich により、本件と同日付で出願、標題“Photothermographic Reducing Agents with Bicyclic or Tricyclic Substitution”)に記載されている。
【0112】
所望ならば、米国特許第6,413,712号(Yoshiokaら)、および米国特許第6,645,714号(Oyaら)に記載の、阻害性フェノールと阻害性ビスフェノールとの混合物などの、阻害性フェノール還元剤の混合物を用いても良い。
【0113】
還元剤としては更に、米国特許第6,514,684号(Suzukiら)に記載のビスフェノール−リン(phosphorous)化合物、米国特許第6,787,298号(Yoshioka)に記載の、ビスフェノールと芳香族カルボン酸と水素結合化合物との混合物、米国特許出願公開第2005/0214702号(Ohzeki)に記載のような、一電子酸化されて、1つ以上の電子を放出する一電子酸化生成物を生じる化合物が挙げられる。構造式(I)または(II)を持つ還元剤と組み合わせ可能なその他の還元剤としては、米国特許第5,464,738号(Lynchら)に記載の、スルホニルヒドラジド類などの置換ヒドラジン類が挙げられる。更にその他の有用な還元剤は、米国特許第3,074,809号(Owen)、米国特許第3,080,254号(Grant, Jr.)、米国特許第3,094,417号(Workman)、米国特許第3,887,417号(Kleinら)、米国特許第4,030,931号(Noguchiら)、および米国特許第5,981,151号(Leendersら)に記載されている。
【0114】
使用できる還元剤としては更に、アミドキシム類(amidoximes)、アジン類、脂肪族カルボン酸アリールヒドラジド類とアスコルビン酸との組み合わせ、レダクトンおよび/またはヒドラジン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジン、ヒドロキサム酸類、アジン類とスルホンアミドフェノール類との組み合わせ、α−シアノフェニル酢酸誘導体、レダクトン類、インダン−1,3−ジオン類、クロマン類、1,4−ジヒドロピリジン類、および3−ピラゾリドン類が挙げられる。
【0115】
米国特許第6,387,605号(Lynchら)に記載されているように、有用な共現像剤還元剤も使用可能である。共現像剤還元剤として使用できるその他の還元剤の種類は、米国特許第5,496,695号(Simpsonら)に記載のようなトリチルヒドラジド類およびホルミルフェニルヒドラジド類、米国特許第5,654,130号(Murray)に記載のような2−置換マロンジアルデヒド化合物、米国特許第5,705,324号(Murray)に記載のような4−置換イソオキサゾール化合物である。更なる現像剤は、米国特許第6,100,022号(Inoueら)に記載されている。更に別の種類の共現像剤としては、米国特許第5,635,339号(Murray)においてHET−01およびHET−02、米国特許第5,545,515号(Murrayら)においてCN−01〜CN−13と表されている化合物などの、置換アクリロニトリル化合物が挙げられる。
【0116】
様々なコントラスト増強剤を加えることができる。このような材料は、印刷技術に有用な印刷版および複製用フィルムの製造や、医療診断用フィルムの核生成に有用である。このような試剤の例は、米国特許第6,150,084号(Itoら)、米国特許第6,620,582号(Hirabayashi)、および米国特許第6,764,385号(Watanabeら)に記載されている。ある種のコントラスト増強剤は、一部の光サーモグラフィ材料において特定の共還元剤と共に使用することが望ましい。有用なコントラスト増強剤の例としては、米国特許第5,545,505号(Simpson)に記載のような、ヒドロキシルアミン類、アルカノールアミン類、およびフタルアミド酸アンモニウム化合物、例えば、米国特許第5,545,507号(Simpsonら)に記載のようなヒドロキサム酸化合物、米国特許第5,558,983号(Simpsonら)に記載のようなN−アシルヒドラジン化合物、米国特許第5,637,449号(Harringら)に記載のような水素原子供与体化合物が挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0117】
本件に記載の還元剤(またはその混合物)の含有量は一般に、それが加えられている光サーモグラフィエマルション層の1〜25%(乾燥重量)である。多層型構造で還元剤を光サーモグラフィエマルション層以外の層に加える場合、割合を僅かに高く、2〜35重量%とすると良い。このように、還元剤の全範囲は1〜35%(乾燥重量)である。更に、二環式または三環式置換基を含む、本件に記載の還元剤(またはその混合物)の含有量は一般に、光サーモグラフィ材料中の銀の総量1モル当たり、少なくとも0.1モルから0.5モルまで、望ましくは銀の総量1モル当たり0.1〜0.4モルである。共還元剤の含有量は一般に、エマルション層コーティングの0.001〜20%(乾燥重量)である。
【0118】
[アリールボロン酸類]
バインダの架橋や、暗安定性とデスクトップ印刷安定性の向上に有用であると先に述べた濃度より高い濃度で、ある種のアリールボロン酸を光サーモグラフィ材料に加えると、熱暗Dmin印刷安定性の向上に効果があることを発見した。
【0119】
アリールボロン酸は、次の構造式(I)で示される。
【化3】


式中、Arは、置換または非置換の芳香族炭素環または複素環基を示し、ホウ素原子の結合したAr環員原子に隣接するArの環員原子に結合している非水素置換基は、縮合芳香族または非芳香族の炭素環または複素環への結合である。
【0120】
望ましい実施の形態では、アリールボロン酸は、次の構造式(II)で示される。
【化4】


式中、R、R、およびRはそれぞれ独立して、水素、置換または非置換アルキル基(メチル、エチル、またはt−ブチル基など)、置換または非置換シクロアルキル基(シクロヘキシルまたは4−メチルシクロヘキシル基など)、置換または非置換アリール基(フェニル基など)、ニトロ基、ハロ基(フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードなど)、トリハロメチル基(トリフルオロメチル基など)、ヒドロキシ基、置換または非置換アルコキシ基(メトキシなど)、置換または非置換アリールオキシ基(フェノキシ基など)、置換または非置換アルキルチオ基(メチルチオ基など)、ニトリル基、またはアセチル(アルキルまたはアリールカルボニル)基を示している。更に、RとR、RとR、またはR、R、およびRは互いに結合して1つ以上の縮合芳香族または非芳香族の炭素環または複素環を形成(例えば、ナフタレン、キノリン、またはイソキノリン環構造を形成)しても良い。R、R、およびRが、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはアリール基である場合、1つ以上のハロゲンなどで更に置換されてトリフルオロメチルやトリクロロメチルを形成し、あるいは、当業者に容易に明らかなその他の置換基で置換されていても良い。
【0121】
望ましくは、R、R、およびRは独立して、水素、あるいはヒドロキシ、ハロ、ニトロ、ニトリル、またはアセタール基である。
【0122】
以下の化合物(ABA−1)〜(ABA−22)は、本発明において有用なアリールボロン酸化合物の代表的なものである。
【化5】


【化6】


【化7】

【0123】
アリールボロン酸誘導体は、ウィスコンシン州ミルウォーキー、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)その他の化学品製造業者など、一般的な業者より入手可能である。アリールボロン酸誘導体は、塩酸を用いたアリールボラン類の加水分解(例えば、N. P. Bullen, K .S. Chiheru. F. G. Thorpe. J. Organomet. Chem., 1980, 195(2), pp. 147-53 または M. Lauer, G. Wulff, J. Organomet. Chem., 1983, 256(1), pp. 1-9 参照)などの一般的な文献に記載の方法でも調製できる。更に、芳香族ハロゲン化物をTHF中でそのアリールマグネシウム臭化物または塩化物に変えた後、エーテル中でホウ酸トリメチルと反応させ、次に、加水分解しても調製可能である(例えば、I. G. C. Coutts, H. R. Goldschmid, O. C. Musgrave, J. Chem. Soc. C, 1970, (3), pp. 488-93、W. Schacht, D. Kaufmann, Chem. Ber., 1987, 120(8), pp. 1331-8、H. Matsubara, K. Seto, T. Tahara, S. Takahashi, Bull. Chem. Soc. Jpn., 1989, 62(12), pp. 3896-901、欧州特許第1070718号(Giffelsら)、または、欧州特許第1314727号(Capelleら)参照)。臭化アリール類とブチルリチウムとを反応させた後、ホウ酸トリメチルと反応させ、次に、加水分解してもアリールボロン酸が生成する(例えば、J. A. Bryant, R. C. Helgeson, C. B. Knobler, M. P. DeGrandpre, D. J. Cram, J. Org. Chem.,1990, 55(15), pp. 4622-34、 T. R. Kelly, G. J. Bridger, C. Zhao, J. Am. Chem. Soc., 1990, 112(22), pp. 8024-34、または G. W. Kabalka, N. K. Reddy, L. Wang, R. R. Malladi, Org. Prep. Proced. Int., 2000, 32(3), pp. 290-293 参照)。
【0124】
被覆、乾燥、貯蔵、熱現像、または処理後の貯蔵の間、光サーモグラフィ層との密着性を保てるならば、光サーモグラフィ層を備えた側の支持体上の層に1つ以上のアリールボロン酸化合物を加えることができる。つまり1つ以上のアリールボロン酸化合物は、光サーモグラフィ層へ直接、あるいは、光サーモグラフィ層の上に被覆した1つ以上の層(例えば、トップコート層、中間層、または障壁層)および/または光サーモグラフィ層の下の層(例えば、プライマー層、下塗り(subbing)層、またはキャリア層)に加えることができる。望ましくは1つ以上のアリールボロン酸化合物を光サーモグラフィ層へ直接加え、あるいはオーバーコート層に加えて光サーモグラフィ層へ拡散させる。
【0125】
光サーモグラフィ材料が支持体の両側に1つ以上の光サーモグラフィ層を備えている場合、支持体の片側または両側で、1つ以上の同じまたは異なるアリールボロン酸化合物を用いても良い。
【0126】
一般に、本件に記載の1つ以上のアリールボロン酸化合物の総含有量は、支持体の画像形成側の1つ以上の層中で0.5g/m以上、あるいは、これらの化合物をその中に混合または拡散させる光サーモグラフィ層のバインダの乾燥総重量の8重量%以上である。支持体の画像形成側の1つ以上の層中でのアリールボロン酸化合物の総含有量は、望ましくは0.5〜15g/m、より望ましくは0.5〜5g/mである。
【0127】
[その他追加すべきもの]
光サーモグラフィ材料には更に、その他の添加剤、例えば、保存寿命安定剤、かぶり防止剤、コントラスト増強剤、現像促進剤、尖鋭度染料、追加の処理後安定剤または安定剤前駆物質、熱溶媒(融成物生成剤としても知られる)、および当業者に容易に明らかなその他の画像調整剤などを加えることができる。
【0128】
単独で、または組み合わせて使用できる適当な安定剤としては、米国特許第2,131,038号(Brooker)および米国特許第2,694,716号(Allen)に記載のようなチアゾリウム塩類、米国特許第2,886,437号(Piper)に記載のようなアザインデン類、米国特許第2,444,605号(Heimbach)に記載のようなトリアザインドリジン類、米国特許第3,287,135号(Anderson)に記載のウラゾール(urazole)類、米国特許第3,235,652号(Kennard)に記載のようなスルホカテコール類、英国特許第623,448号(Carrolら)に記載のオキシム類、米国特許第2,839,405号(Jones)に記載のような多価金属塩類、米国特許第3,220,839号(Herz)に記載のようなチウロニウム(thiuronium)塩類、米国特許第2,566,263号(Trirelli)および米国特許第2,597,915号(Damshroder)に記載のような、パラジウム、白金、および金塩類、欧州特許第0559228B1号(Philipら)に記載の複素芳香族メルカプト化合物または複素芳香族ジスルフィド化合物が挙げられる。
【0129】
複素芳香族メルカプト化合物が最も望ましい。望ましい複素芳香族メルカプト化合物の例は、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、およびそれらの混合物である。エマルション層中での複素芳香族メルカプト化合物の含有量は一般に、エマルション層中の銀の総量1モル当たり0.0001モル以上(望ましくは0.001〜1.0モル)である。
【0130】
その他の有用なかぶり防止剤/安定剤は、米国特許第6,083,681号(Lynchら)に記載されている。更にその他のかぶり防止剤は、米国特許第5,028,523号(Skoug)に記載のような複素環化合物の臭化水素酸塩(例えば、臭化水素酸過臭素酸ピリジニウムなど)、米国特許第4,784,939号(Pham)に記載のようなベンゾイル酸(benzoyl acid)化合物、米国特許第5,686,228号(Murrayら)に記載のような置換プロペンニトリル化合物、米国特許第5,358,843号(Sakizadehら)に記載のようなシリルでブロックした化合物、同一出願人による同時係属中の米国特許出願第11/284,928号(Bryan V. Hunt および Kumars Sakizadehにより、2005年11月22出願)に記載の1,3−ジアリール置換尿素化合物、欧州特許第0600587A1号(Oliffら)に記載のようなトリブロモメチルケトン類である。
【0131】
望ましくは、光サーモグラフィ材料は更に、式 Q−(Y)−C(ZX) (式中、Qは、アルキル、アリール(ヘテロアリールを含む)、または複素環基を示し、Yは、2価の結合基を示し、nは0または1を示し、ZおよびZはそれぞれハロゲン原子を示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、または電子吸引基を示す)で表せる1つ以上のポリハロゲン安定剤を含む。特に有用なこの種の化合物は、Qがアリール基を示し、Yが(C=O)またはSOを示し、nが1であり、Z、Z、およびXがそれぞれ臭素原子を示しているポリハロゲン安定剤である。−SOCBr基を含む、このような化合物の例は、米国特許第3,874,946号(Costaら)、米国特許第5,369,000号(Sakizadehら)、米国特許第5,464,747号(Sakizadehら)、米国特許第5,594,143号(Kirkら)、米国特許第5,374,514号(Kirkら)、および米国特許第5,460,938号(Kirkら)に示されている。このような化合物の例としては、2−トリブロモメチルスルホニル−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、2−トリブロモメチルスルホニルピリジン、2−トリブロモメチルスルホニルキノリン、および2−トリブロモメチルスルホニルベンゼンが挙げられる(但し、これらに限定しない)。1つ以上の層中におけるポリハロゲン安定剤の総含有量は、銀の総量の1モルに対して0.005〜0.01モル、望ましくは銀の総量1モルに対して0.01〜0.05モルとすることができる。
【0132】
米国特許第5,158,866号(Simpsonら)、米国特許第5,175,081号(Krepskiら)、米国特許第5,298,390号(Sakizadehら)、および米国特許第5,300,420号(Kenneyら)に記載のように、画像形成の間に熱が加わると安定剤を放出する、安定剤前駆物質化合物も使用することができる。
【0133】
更に、米国特許第6,171,767号(Kongら)に記載のように、ベンゾトリアゾール類のある特定の置換スルホニル誘導体を安定化化合物として用いても良い。
【0134】
画像を向上させる“トナー”またはその誘導体は、光サーモグラフィ材料の望ましい成分である。これらの化合物を画像形成層に加えると、画像の色が黄色味を帯びたオレンジ色から茶黒または暗藍色にシフトする。一般に、本件に記載の1つ以上のトナーの含有量は、トナーを含む層の乾燥総重量の0.01〜10%(より望ましくは0.1〜10%)である。トナーは、光サーモグラフィ層または隣接する非画像形成層に加えられる。
【0135】
トナーとして有用な化合物は、米国特許第3,080,254号(Grant, Jr.)、米国特許第3,847,612号(Winslow)、米国特許第4,123,282号(Winslow)、米国特許第4,082,901号(Laridonら)、米国特許第3,074,809号(Owen)、米国特許第3,446,648号(Workman)、米国特許第3,844,797号(Willemsら)、米国特許第3,951,660号(Hagemannら)、米国特許第5,599,647号(Defieuwら)、および英国特許第1,439,478号(AGFA)に記載されている。
【0136】
有用なトナーは更に、米国特許第3,832,186号(Masudaら)、米国特許第6,165,704号(Miyakeら)、米国特許第5,149,620号(Simpsonら)、米国特許第6,713,240号(Lynchら)、および米国特許第6,841,343号(Lynchら)に記載のような置換および非置換メルカプトトリアゾール類である。
【0137】
フタラジンおよびフタラジン誘導体(米国特許第6,146,822号(Asanumaら)に記載のものなど)、フタラジノンおよびフタラジノン誘導体は、特に有用なトナーである。
【0138】
熱溶媒(または溶融物生成剤)やこれらの化合物の組み合わせ(例えば、スクシンイミドとジメチル尿素との組み合わせ)も使用可能である。熱溶媒は、周囲温度では固体であるが処理に用いる温度では溶融する化合物である。熱溶媒は、熱現像性感光性材料の様々な成分に対して溶媒として働き、熱現像を促進し、銀イオンおよび/または錯体、還元剤、および染料など、様々な材料の拡散の際の媒体となる。公知の熱溶媒は、米国特許第3,438,776号(Yudelson)、米国特許第5,064,753号(前掲)、米国特許第5,250,386号(Aonoら)、米国特許第5,368,979号(Freedmanら)、米国特許第5,716,772号(Taguchiら)、および米国特許第6,013,420号(Windender)に開示されている。
【0139】
光サーモグラフィ材料には更に、画像を安定化する化合物を1つ以上加えることができ、これらは一般に、“裏側”層に加えられる。このような化合物としては、フタラジノンとその誘導体、ピリダジンとその誘導体、ベンゾキサジンとベンゾキサジン誘導体、ベンゾチアジンジオンとその誘導体、およびキナゾリンジオンとその誘導体、特に、米国特許第6,599,685号(Kong)に記載のものが挙げられる。その他有用な裏側画像安定剤としては、アントラセン化合物、クマリン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ナフタル酸イミド化合物、ピラゾリン化合物、または、米国特許第6,465,162号(Kongら)および英国特許第1,565,043号(Fuji Photo)に記載の化合物が挙げられる。
【0140】
蛍りん光体(phosphors)は、励起すると赤外、可視、または紫外線を放出する物質であって、光サーモグラフィ材料中に加えることができる。特に有用な蛍りん光体は、X線に感度を持ち、主にスペクトルの紫外、近紫外、または可視領域(即ち、100〜700nm)の光を放射する。本質的な蛍りん光体は、自然に(即ち、本質的に)りん光を発する物質である。“活性化”蛍りん光体は、本質的な蛍りん光体である、または蛍りん光体ではない基本的材料から成り、これに1つ以上のドーパントを意図的に加えたものである。これらのドーパントまたは活性化剤は、蛍りん光体を“活性化”して紫外線または可視光を放射させる。複数のドーパントを用いれば、蛍りん光体は“活性化剤”と“共活性化剤”の両方を含むことになる。
【0141】
一般的または有用な蛍りん光体を、単独で、または混合して使用することができる。例えば、有用な蛍りん光体は、光サーモグラフィ材料に関する、米国特許第6,440,649号(Simpsonら)および米国特許第6,573,033号(Simpsonら)の他にも、蛍光増感スクリーンに関する多くの参考文献に述べられている。特に有用ないくつかの蛍りん光体は、主に、リン酸塩蛍りん光体およびホウ酸塩蛍りん光体として知られる“活性化”蛍りん光体である。このような蛍りん光体の例は、米国特許出願公開第2005/0233269号(Simpsonら)に記載のような、希土類のリン酸塩、リン酸イットリウム、リン酸ストロンチウム、またはフルオロホウ酸ストロンチウム(セリウムで活性化した希土類またはイットリウムのリン酸塩、あるいは、ユーロピウムで活性化したフルオロホウ酸ストロンチウムを含む)である。
【0142】
1つ以上の蛍りん光体は、光サーモグラフィ材料中の銀の総量1モル当たり0.1モル以上、望ましくは0.5〜20モルの量で光サーモグラフィ材料に加えることができる。前述のように、一般に銀の総量は0.002モル/m以上である。蛍りん光体は支持体の片側または両側のどの画像形成層に加えても良いが、支持体の片側または両側の感光性ハロゲン化銀と同じ層に加えることが好ましい。
【0143】
[バインダ類]
感光性ハロゲン化銀、非感光性の還元性銀イオン源、還元剤組成物、およびその他の画像形成層添加剤は通常、一般に疎水性の性質を持つ1つ以上のバインダと組み合わせる。このため、光サーモグラフィ材料の調製には有機溶媒系配合物が用いられる。少量(バインダの総量の20重量%以下)の親水性または水に可分散性のポリマーラテックスバインダも加えることができる。
【0144】
典型的な疎水性バインダの例としては、ポリビニルアセタール類、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリスチレン類、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート類、メタクリラート共重合体、無水マレイン酸エステル共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、および当業者に容易に明らかなその他の材料が挙げられる。共重合体(ターポリマーを含む)もポリマーの定義に含まれる。ポリビニルアセタール類(ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、およびポリビニルホルマールなど)およびビニル共重合体(ポリ酢酸ビニルおよびポリ塩化ビニルなど)が特に望ましい。特に適した疎水性バインダはポリビニルブチラール樹脂であり、MOWITAL(登録商標)(ニューヨーク州ニューヨーク、Kuraray America製)、S−LEC(登録商標)(ミシガン州トロイ、Sekisui Chemical Company製)、BUTVAR(登録商標)(ミズーリ州セントルイス、Solutia, Inc.製)、およびPIOLOFORM(登録商標)(ミシガン州エードリアン、Wacker Chemical Company製)などの名前で入手可能である。
【0145】
所望ならば、様々なバインダのための硬化剤を加えても良い。有用な硬化剤は良く知られており、欧州特許第0600586B1号(Philipら)に記載のようなジイソシアナート化合物、米国特許第6,143,487号(Philipら)および欧州特許第0640589A1号(Gathmannら)に記載のようなビニルスルホン化合物、米国特許第6,190,822号(Dickersonら)に記載のようなアルデヒド類及び様々な他の硬化剤が挙げられる。有用な硬化剤はよく知られており、例えば、T. H. James, The Theory of the Photographic Process, Fourth Edition, Eastman Kodak Company, Rochester, NY, 1977, Chapter 2, pp. 77-8 に記載されている。
【0146】
光サーモグラフィ材料の大きさと活性のために特定の現像時間と温度が必要な場合、バインダはこのような状態に耐えるものでなければならない。疎水性バインダを用いる場合、バインダ(またはその混合物)は、120℃で60秒間、分解せず、またはその構造完全性を失わないことが望ましい。より望ましくは、バインダは、177℃で60秒間、分解せず、またはその構造完全性を失わない。
【0147】
ポリマーバインダは、その中に分散させた成分の運搬に十分な量を用いる。望ましくは、バインダは、層の乾燥総重量の10〜90重量%の量(より望ましくは20〜70重量%の量)で用いる。光サーモグラフィ材料は、支持体の両側(特に、支持体の画像形成側)の画像形成および非画像形成層の両方に50重量%以上の疎水性バインダを含んでいると特に有用である。
【0148】
[支持材]
光サーモグラフィ材料にはポリマー支持体が含まれる。この支持体は、望ましくは所望の厚さを持ち、1つ以上のポリマー材料から成る、可撓性で透明のフィルムである。これは、熱現像の際には寸法安定性を示し、その上に重ねた層との適当な接着性を備えている必要がある。このような支持体の製造に有用なポリマー材料としては、ポリエステル類(ポリエチレンテレフタラートおよびポリエチレンナフタラートなど)、酢酸セルロースおよびその他のセルロースエステル類、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン類、ポリカーボネート類、およびポリスチレン類が挙げられる。望ましい支持体は、熱安定性の良いポリマー類、例えば、ポリエステル類やポリカーボネート類などから成るものである。支持材に更に処理またはアニールを行って、縮みを小さくし、寸法安定性を高めても良い。
【0149】
米国特許第6,630,283号(Simpsonら)に記載のような、2種類以上の異なるポリマー材料から成る、交互に被覆した多数の層を含む、透明な積層型ポリマー支持体を用いることも有益である。別の支持体は、米国特許第5,795,708号(Boutet)に記載のような、2色性ミラー層を含むものである。
【0150】
不透明な支持体、例えば、着色ポリマーフィルムや、高温でも安定な樹脂コート紙なども使用できる。
【0151】
所望ならば、支持体材料に様々な着色料、顔料、ハレーション防止または尖鋭度染料を加えることができる。例えば、生成する画像フィルムが青くなるような1つ以上の染料を支持体に加えても良い。一般的な手法(コロナ放電など)で支持体材料を処理し、上に重ねる層との接着性を高め、あるいは、下塗りやその他の接着促進層を用いても良い。
【0152】
[光サーモグラフィ配合物および構造]
光サーモグラフィエマルション層で用いる有機溶媒系の被覆用配合物は、適当な有機溶媒系の中で様々な成分を1つ以上のバインダと混合して調製することができる。適当な有機溶媒としては一般に、トルエン、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、アセトン、テトラヒドロフラン、またはそれらの混合物などの1つ以上の溶媒が挙げられる。メチルエチルケトンが望ましい被覆用溶媒である。
【0153】
光サーモグラフィ材料は、可塑剤および滑剤、例えば、米国特許第2,960,404号(Miltonら)に記載のような、ポリアルコール類およびジオール類、米国特許第2,588,765号(Robijns)および米国特許第3,121,060号(Duane)に記載のような、脂肪酸類またはエステル類、および英国特許第955,061号(DuPont)に記載のようなシリコーン樹脂などを含むことができる。光サーモグラフィ材料には、米国特許第2,992,101号(Jelleyら)および米国特許第2,701,245号(Lynn)に記載のような、無機および有機つや消し剤も加えることができる。また、米国特許第5,468,603号(Kub)に記載のように、1つ以上の層にポリマー系フッ素化界面活性剤を加えることも有用である。
【0154】
更に光サーモグラフィ材料には、表面を保護するためのトップコート層を1つ以上のエマルション層の上に加えても良い。米国特許第6,352,819号(Kenneyら)、米国特許第6,352,820号(Bauerら)、米国特許第6,420,l02号(Bauerら)、米国特許第6,667,148号(Raoら)、および米国特許第6,746,831号(Hunt)に記載のポリマー系障壁層などの、材料からの放射を少なくする層を加えても良い。
【0155】
本件に挙げられている米国特許第6,436,616号(Geislerら)は、“木目調(woodgrain)”効果として知られているもの、または光学濃度の斑を少なくするため、光サーモグラフィ材料を調節する様々な方法を述べている。
【0156】
光サーモグラフィ材料では、支持体の片側または両側の層のいずれかに1つ以上の帯電防止または導電層試剤を加えることができる。導電性成分としては、米国特許第2,861,056号(Minsk)および米国特許第3,206,312号(Stermanら)に記載のような、可溶性の塩、蒸着した金属層、またはイオン性ポリマー、米国特許第3,428,451号(Trevoy)に記載のような不溶性の無機塩、米国特許第5,310,640号(Markinら)に記載のような導電性の下塗り、米国特許第5,368,995号(Christianら)に記載のような導電性の金属アンチモン酸塩粒子、および、欧州特許第0678776A1号(Melpolderら)に記載のような、ポリマーバインダ中に分散させた導電性金属を含む粒子が挙げられる。特に有用な導電性粒子は、米国特許第6,689,546号(LaBelleら)、同一出願人による同時係属中の米国特許出願第10/930,428号(Ludemann, LaBelle, Koestner, Hefley, Bhave, Geisler,および Philip により、2004年8月31日出願)、米国特許第7,087,364号、米国特許第7,067,242号、米国特許第7,022,467号、および米国特許第7,018,787号(Ludemannら)に記載のような、覆われた裏側導電層中に用いられている尖っていない金属アンチモン酸塩粒子である。
【0157】
導電層を支持体の裏側に設け、また特にこれを、裏側保護層などの1つ以上の他の層で覆い、またはその下に置くと特に有用である。このような裏側導電層は典型的に、塩橋水電極(salt bridge water electrode)抵抗率測定法を用いた測定で10〜1012オーム/sqの抵抗率を持つ。この技術は、R. A. Elder, Resistivity Measurements on Buried Conductive Layers, EOS/ESD Symposium Proceedings, Lake Buena Vista, FL, 1990, pp. 251-254. [EOS/ESD stands for Electrical Overstress/Electrostatic Discharge] に記載されている。
【0158】
更にその他の導電性組成物としては、1つ以上のフッ素化合物が挙げられる。これらはいずれも、米国特許第6,699,648号(Sakizadehら)に記載のような、R−CHCH−SOH (Rは、4以上の完全にフッ素化された炭素原子から成る)とアミンとの反応生成物である。
【0159】
更に、導電性組成物としては、米国特許第6,762,013号(Sakizadehら)に詳細に述べられている、1つ以上のフッ素化合物が挙げられる。
【0160】
光サーモグラフィ材料に、Research Disclosure, Item 34390, November 1992 に開示のような磁気記録材料、または、米国特許第4,302,523号(Audranら)に記載のような、透明支持体の下側に磁性粒子を含む層などの透明磁気記録層を加えることも有用である。
【0161】
画像をより鮮明にするため、光サーモグラフィ材料に尖鋭度および/またはハレーション防止染料を含む1つ以上の層を加えても良い。このような染料は、露光波長に近い吸収を持つものを選び、散乱光の吸収を目的とする。1つ以上のハレーション防止組成物を支持体、裏側層、下層、またはオーバーコート層に加えることができる。更に、1つ以上の尖鋭度染料を前側の1つ以上の画像形成層に加えても良い。
【0162】
ハレーション防止および尖鋭度染料として有用な染料としては、米国特許第5,380,635号(Gomezら)、米国特許第6,063,560号(Suzukiら)、および欧州特許第1083459A1号(Kimura)に記載のようなスクアレイン(squaraine)染料、欧州特許第0342810A1号(Leichter)に記載のようなインドレニン(indolenine)染料、および、米国特許第6,689,547号(Huntら)に記載のようなシアニン染料が挙げられる。
【0163】
米国特許第5,135,842号(Kitchinら)、米国特許第5,266,452号(Kitchinら)、米国特許第5,314,795号(Hellandら)、米国特許第6,306,566号(Sakuradaら)、特開2001−142175号(羽生ら)、および特開2001−183770号(羽生ら)に記載のような、加工の際の熱によって脱色または退色する尖鋭度またはハレーション防止染料などの組成物を使用することも有用である。有用な退色性組成物は、特開平11−302550号(藤原)、特開2001−109101号(安達)、特開2001−51371号(矢吹ら)、および特開2000−029168号(野呂)に述べられている。
【0164】
その他の有用な熱退色性ハレーション防止組成物としては、オキソノール(oxonol)染料や、ヘキサアリールビイミダゾール(“HABI”としても知られる)と組み合わせて用いられるその他の様々な化合物などの赤外線吸収化合物、またはそれらの混合物が挙げられる。HABI化合物は、米国特許第4,196,002号(Levinsonら)、米国特許第5,652,091号(Perryら)、および米国特許第5,672,562号(Perryら)に述べられている。このような熱退色性化合物の例は、例えば、米国特許第6,455,210号(Irvingら)、米国特許第6,514,677号(Ramsdenら)、および米国特許第6,558,880号(Goswamiら)に述べられている。
【0165】
実際の使用条件下では、これらの組成物が退色するよう、90℃以上の温度で0.5秒間以上(望ましくは100〜200℃の温度で5〜20秒間)加熱する。
【0166】
斑点やその他の表面の異状は、例えば米国特許第5,532,121号(Yonkoskiら)に記載のフッ素化ポリマーを材料に加え、あるいは、例えば米国特許第5,621,983号(Ludemannら)に記載のような特定の乾燥法を用いることで少なくすることができる。
【0167】
光サーモグラフィ材料では、1つ以上の放射線吸収物質を、一般に1つ以上の光サーモグラフィ層に加え、支持体のその側の全ての層の総吸光度(または光学濃度)を、光サーモグラフィ材料の露光波長で0.1以上(望ましくは、0.6以上)とすることが望ましい。更に、画像形成層が支持体の片側だけにある場合は、支持体の裏(非画像形成)側の全ての層の露光波長での総吸光度(または光学濃度)は0.2以上であることが望ましい。
【0168】
光サーモグラフィ配合物は、巻き線棒コーティング、浸漬コーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング、スライドコーティング、あるいは、米国特許第2,681,294号(Beguin)に記載の型のホッパを用いた押し出しコーティングなど、様々なコーティング法で被覆することができる。層は、1度に1層、あるいは、米国特許第2,761,791号(Russell)、米国特許第4,001,024号(Dittmanら)、米国特許第4,569,863号(Keopkeら)、米国特許第5,340,613号(Hanzalikら)、米国特許第5,405,740号(LaBelle)、米国特許第5,415,993号(Hanzalikら)、米国特許第5,525,376号(Leonard)、米国特許第5,733,608号(Kesselら)、米国特許第5,849,363号(Yapelら)、米国特許第5,843,530号(Jerryら)、米国特許第5,861,195号(Bhaveら)、および英国特許第837,095号(Ilford)に記載の方法で、2つ以上の層を同時に被覆することができる。エマルション層の典型的なコーティングギャップを10〜750μmとし、20〜100℃の温度で強制換気しながら層を乾燥することができる。層の厚さは、ミシガン州グランヴィル、X-rite Corporation製の、301 Visual Opticsを取り付けた361/V型X−rite濃度計により測定した最大画像濃度が0.2以上、より望ましくは0.5〜5.0、またはそれ以上となるような厚さとすることが望ましい。
【0169】
望ましくは、スライドコーティング法を用いて、2つ以上の層配合物を同時に支持体に塗布し、第2層がまだ濡れているうちに第2層の上に第1層を被覆する。これらの層の被覆に用いる第1液と第2液は、同じ溶媒を用いたものでも、異なる溶媒を用いたものでも良い。例えば、エマルション配合物を支持体に塗布した後に、または同時に、1つ以上の保護用のオーバーコート配合物をエマルション配合物の上に塗布することができる。同時コーティングは、支持体の前側、後側、または両側に層を塗布するために用いることができる。
【0170】
他の実施の形態では、米国特許第6,355,405号(Ludemannら)に記載のように、上記の2種類以上のポリマーから成る単一相の混合物を含む“キャリア”層配合物を支持体に直接塗布し、これをエマルション層の下に設ける。キャリア層配合物は、エマルション層配合物やオーバーコートまたは表面保護層の塗布と同時に塗布することができる。
【0171】
第1層と第2層とをフィルム支持体の片側に被覆することができるが、この製造法には更に、ポリマー支持体の反対側または裏側に、1つ以上の追加の層、例えば、伝導層、ハレーション防止層、またはつや消し剤(シリカなど)を含む層、あるいはこれらの層を組み合わせたものの形成を加えても良い。あるいは、1つの裏側層が所望の機能の全てを果たしても良い。
【0172】
望ましい構造では、2種類以上のポリマーと針状でない金属アンチモン酸塩粒子とから成る単一相混合物を含む導電性“キャリア”層配合物を支持体の裏側に直接塗布し、これを他の裏側層の下に置く。キャリア層配合物は、他の裏側層配合物の塗布と同時に塗布しても良い。
【0173】
光サーモグラフィ材料が、支持体の両側に1つ以上の光サーモグラフィ層を含み、および/または、支持体の少なくとも一方の側の少なくとも1つの光サーモグラフィ層の下に、ハレーション防止用の下塗りを含むことも意図している。更に、本材料は、支持体の両側の全ての光サーモグラフィ層の上に設けた最も外側の保護層を含んでいても良い。
【0174】
米国特許第5,891,610号(Bauerら)、米国特許第5,804,365号(Bauerら)、および米国特許第4,741,992号(Przezdziecki)に記載のように、ある層と他の層との接着性を高める層も公知である。接着性は、米国特許第5,928,857号(Geislerら)に記載のような特定のポリマー接着剤を用いても高めることができる。
【0175】
[画像形成/現像]
光サーモグラフィ材料は、これらが感度を持つ適当な画像形成源を用いて、材料の種類に応じた適当な方法で画像を形成することができる。殆どの実施の形態において、この材料は、少なくとも100nm〜1400nmの範囲の放射線に対して感度を持つ。一部の実施の形態においては、本材料は300〜600nm、より望ましくは300〜450nm、更に望ましくは360〜420nmの波長の放射線に感度を持つ。望ましい実施の形態では、本材料は600〜1200nm、より望ましくは700〜950nmの赤外線に感度を持つよう作られる。必要ならば、適当なスペクトル増感染料を用いて特定波長に感度を持たせても良い。
【0176】
画像形成は、光サーモグラフィ材料を、それが感度を持つ適当な放射線源、例えばX線、紫外線、可視光、近赤外線、および赤外線に露光して、潜像を形成することで行うことができる。適当な露光手段はよく知られており、蛍りん光体が発する放射線(特に、X線で誘発した蛍りん光体が発する放射線)、白熱灯または蛍光灯、キセノンフラッシュランプ、レーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、赤外線レーザ、赤外線レーザダイオード、赤外線発光ダイオード、赤外線ランプ、あるいは、Research Disclosure, item 38957(前掲)に記載のような、当業者に容易に明らかなその他の紫外、可視、または赤外線源が挙げられる。特に有用な赤外線露光手段としては、レーザダイオード、例えば、米国特許第5,780,207号(Mohapatraら)に記載のような、縦マルチ(multi-longitudinal)露光技術として知られる、画像形成効果を高める技術を用いて変調を行ったレーザダイオードが挙げられる。その他の露光技術は、米国特許第5,493,327号(McCallumら)に述べられている。
【0177】
本光サーモグラフィ材料は、X線画像形成源と、光サーモグラフィ材料のすぐ近くに設けた1つ以上の即時放出(prompt-emitting)または蓄積型(storage)X線感受性蛍りん光体スクリーンとを用いて、間接的に画像を形成することも可能である。蛍りん光体は、光サーモグラフィ材料の露光に適した放射線を放出する。望ましいX線スクリーンは、スペクトルの近紫外領域(300〜400nm)、スペクトルの青色領域(400〜500nm)、スペクトルの緑色領域(500〜600nm)の放射線を出す蛍りん光体を含むものである。
【0178】
他の実施の形態では、X線画像形成源を用いて光サーモグラフィ材料に直接画像を描き、潜像を生成することができる。
【0179】
熱現像の条件は使用する構造によって変わるが、典型的に、画像の形に露光した光サーモグラフィ材料を適度に高い温度、例えば、50〜250℃(望ましくは80〜200℃、より望ましくは100〜200℃)で十分な時間、一般に1〜120秒間加熱する工程を含んでいる。加熱は、熱したドラム、板、またはローラに材料を接触させ、あるいは、材料の裏面に耐熱層を設け、材料を加熱するようこの層に電流を流すなど、適当な加熱手段を用いて行うことができる。光サーモグラフィ材料に望ましい加熱現像法としては、130〜165℃で3〜25秒間(望ましくは20秒以下)加熱する方法が挙げられる。光サーモグラフィ材料の熱現像は、ほぼ無水の環境中で、材料に何も溶媒を塗布せずに行う。
【0180】
[フォトマスクとしての使用]
光サーモグラフィ材料の画像を形成していない部分を350〜450nmの範囲で十分に透過性のものとし、後に紫外または短波長可視光に感度を持つ画像形成媒体の露光を行う方法にこれを使用することができる。熱現像した材料は、可視画像のある部分では紫外または短波長可視光を吸収し、可視画像のない部分では紫外または短波長可視光を透過する。次に、熱現像材料をマスクとして用い、画像形成放射線源(紫外または短波長可視光エネルギー源など)と、このような画像形成放射線に感度を持つ画像形成材料(フォトポリマー、ジアゾ材料、フォトレジスト、または感光性印刷板など)との間に置く。露光および熱現像した光サーモグラフィ材料の可視画像を通過させた画像形成放射線を画像形成材料に露光すると、画像形成材料中に画像が形成される。この方法は、画像形成媒体が印刷板から成り、光サーモグラフィ材料が画像を設定するフィルムの働きをする場合に特に有用である。
【0181】
このように、本発明は、
(A)透明支持体を備えた光サーモグラフィ材料に、電磁放射線を画像の形に露光して潜像を形成する工程と、
(B)同時に、またはそれに続いて、露光した光サーモグラフィ材料を、20秒以下の十分な時間、110〜150℃の温度範囲内で加熱し、潜像を、3.0以上のDmaxを持つ可視画像に現像する工程と、
(C)露光および熱現像した光サーモグラフィ材料を、画像形成放射線源と画像形成放射線に感度を持つ画像形成材料との間に置く工程と、
(D)露光および熱現像した光サーモグラフィ材料の可視画像を通過させた画像形成放射線を画像形成材料に露光して、画像形成材料中に画像を形成する工程と、
を含む、可視画像の生成法を提示する。
【実施例】
【0182】
以下の実施例は、本発明の実施の形態を説明するために示すものであり、これによって本発明が制限されるものではない。
【0183】
[実施例で用いる材料および方法]
以下の実施例で使用する材料は全て、別に指定のない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキー、アルドリッチ・ケミカル社などの、一般的な業者から容易に入手可能である。全ての割合は、別記のない限り重量比である。以下に追加する用語および材料を用いた。
【0184】
本件で用いるアリールボロン酸化合物は、市販のもの、または上記の合成方法の一つを用いて調製したもののいずれでも良い。
【0185】
本件で用いる化学的成分の多くは溶液として供給される。“活性成分”とは、試料中に含まれる所望の化学的成分の量または割合を意味する。本件に掲げた量は全て、別に指定のない限り、加えられた活性成分の量である。
【0186】
PARALOID(登録商標)A−21は、ペンシルバニア州フィラデルフィア、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)より入手可能なアクリル酸共重合体である。
【0187】
CAB 171−15Sは、テネシー州キングスポート、イーストマン・ケミカル社(Eastman Chemical Co.)より入手可能な酢酸酪酸セルロース樹脂である。
【0188】
DESMODUR(登録商標)N3300は、ペンシルバニア州ピッツバーグ、バイエル・ケミカルズ(Bayer Chemicals)より入手可能な脂肪族ヘキサメチレンジイソシアナートの三量体である。
【0189】
現像剤1は、1,1’−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)イソブタン、CAS登録番号[33145−10−7]である。現像剤2は、ビス[2−ヒドロキシ−3−(1−メチルシクロヘキシル)−5−メチルフェニル]メタン、CAS登録番号[77−62−3]である。いずれも、インディアナ州ウエストラファイエット、グレート・レイクス・ケミカル(Great Lakes Chemical)より入手した。
【0190】
PIOLOFORM(登録商標)BL−16は、84℃のガラス転移温度を持つポリビニルブチラール樹脂であると報じられている。PIOLOFORM(登録商標)BM−18は、70℃のガラス転移温度を持つポリビニルブチラール樹脂であると報じられている。いずれも、ミシガン州エードリアン、ワッカー・ポリマー・システムズ(Wacker Polymer Systems)より入手可能である。
【0191】
MEKはメチルエチルケトン(または2−ブタノン)である。
【0192】
ビニルスルホン1(VS−1)は米国特許第6,143,487号に記載されており、下記の構造を持つ。
【化8】

【0193】
かぶり防止剤AF−Aは2−ピリジルトリブロモメチルスルホンであり、下記の構造を持つ。
【化9】

【0194】
尖鋭度染料AD−1は次の構造を持つ。
【化10】


着色染料TD−1は次の構造を持つ。
【化11】


増感染料Aは米国特許第5,541,054号(Millerら)に記載されており、下記の構造を持つ。
【化12】

【0195】
かぶり防止剤AF−Bは2−シアノ−3−オキソブタン酸エチルである。これは、米国特許第5,686,228号(Murrayら)に記載されており、下記の構造を持つ。
【化13】


支持体染料SD−1は次の構造を持つ。
【化14】


比較用試料の調製には次の化合物を用いた。
【化15】


【化16】

【0196】
実施例1.
[光サーモグラフィ材料の調製]
[予備調製ハロゲン化銀、カルボン酸銀せっけん分散液]
予備調製したハロゲン化銀、カルボン酸銀せっけん分散液は、米国特許第5,939,249号(前掲)に記載の方法と同様に調製した。コアシェル型のハロゲン化銀エマルションは、8%のヨウ素を含むヨウ化臭化銀コアと、イリジウムと銅とでドープした臭化銀シェルとから成る。それぞれのハロゲン化銀粒子は、25%をコアが占め、残りの75%がシェルであった。ハロゲン化銀粒子は立方体で、平均粒径は0.055〜0.06μmであった。予備調製ハロゲン化銀、カルボン酸銀せっけん分散液は、26.1%の予備調製ハロゲン化銀、カルボン酸銀せっけんと、2.1%のPIOLOFORM(登録商標)BM−18ポリビニルブチラールバインダと、71.8%のMEKとを混合し、8000psi(55MPa)で3回ホモジナイズして調製した。
【0197】
[光サーモグラフィエマルション配合物1]
174部の、上記で調製した予備調製ハロゲン化銀、カルボン酸銀せっけん分散液に、1.6部の、臭化水素酸過臭素酸ピリジニウムの15%メタノール溶液を撹拌しながら加えた。60分間混ぜ合わせた後、2.1部の臭化亜鉛の11%メタノール溶液を加えた。30分間撹拌を続けた後、0.15部の2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾールと、0.007部の増感染料Aと、1.7部の2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸と、10.8部のメタノールと、3.8部のMEKとから成る溶液を加えた。75分間撹拌後、温度を10℃に下げ、26部のPIOLOFORM(登録商標)BM18と、20部のPIOLOFORM(登録商標)BL16とを加えた。更に30分間撹拌を続けた。
【0198】
下記の材料を加えて、光サーモグラフィエマルション配合物1の調製を完了した。各成分の添加の間隔は5分とした。
かぶり防止剤 AF−A 0.80部
テトラクロロフタル酸(TCPA) 0.37部
4−メチルフタル酸(4MPA) 0.72部
MEK 21部
メタノール 0.36部
現像剤2 9.5部
DESMODUR(登録商標)N3300 0.66部(0.33部のMEK中)
フタラジン(PHZ) 1.3部(6.3部のMEK中)
アリールボロン酸化合物 表1参照
【0199】
[トップコート配合物1]
次の材料を混合して、トップコート配合物1を調製した。
MEK 92部
PARALOID(登録商標)A−21 0.59部
CAB 171−15S 6.4部
ビニルスルホン VS−1 0.24部
ベンゾトリアゾール(BZT) 0.18部
尖鋭度染料 AD−1 0.09部
かぶり防止剤 AF−B 0.16部
DESMODUR(登録商標)N3300 0.48部
着色染料 TD−1 0.004部
【0200】
[光サーモグラフィ材料の調製]
光サーモグラフィエマルション画像形成配合物1と、トップコート配合物1とを、支持体用染料SD−1で青く染めた7ミル(178μm)のポリエチレンテレフタラート支持体に同時に被覆して、光サーモグラフィ材料を調製した。直列型(in-line)乾燥機を取り付けた自動デュアルナイフコータ(dual knife coater)を使用した。被覆直後、80〜95℃の強制換気オーブン中で4〜5分間、試料を乾燥させた。光サーモグラフィエマルション配合物1を、銀の被覆総重量が1.65〜2.0g/m(0.0153〜0.0185モル/m)となるよう被覆した。トップコート配合物1は、乾燥被覆重量が0.2g/平方フィート(2.2g/m)、画像形成層中の光学濃度(吸光度)が810nmで1.0となるように被覆した。アリールボロン酸を含まない比較用試料も調製した。
【0201】
6個の試料を調製した。比較用試料1−1はアリールボロン酸化合物を含んでいない。比較用試料1−2は、米国特許第4,558,003号(前掲)で用いられた望ましい濃度および米国特許出願第11/025,882号(前掲)で用いられた濃度でアリールボロン酸化合物ABA−1を含むものであった。本発明の試料1−3〜1−6は、光サーモグラフィエマルション層に、次第に濃度を高くしたアリールボロン酸化合物ABA−1を含むものであった。これらの試料の組成を表1に示す。
【0202】
全ての試料について、支持体の裏側には、805〜815nmで0.3以上の吸光度と、1011オーム/平方(square)以下の抵抗率とを持つ、ハレーション防止および帯電防止層を被覆した。
【0203】
[光サーモグラフィ材料の評価]
各光サーモグラフィ材料の試料をストリップに裁断し、レーザ感光計を用いて810nmで露光し、熱現像して、露光光源と現像条件において可能な最小濃度(Dmin)から最大濃度(Dmax)の範囲で変化させた画像濃度の連続階調を作成した。現像は、直径6インチ(15.2cm)の加熱した回転ドラム上で行った。122.5℃において、ドラムが210度、約11インチ(28cm)回転する間、0.733インチ/秒(112cm/分)の速度では15秒間、ストリップをドラムに接触させた。これらの試料から、初期Dmin、Dmax、相対速度2、および銀効率(Dmax/Ag)を求めた。これを表2に示す。
【0204】
濃度測定は、ISO標準5−2および5−3に適合した特別仕様のコンピュータ制御走査濃度計で行った。これは、市販の濃度計による測定値と比較できると考えられる。光サーモグラフィ材料の感度に適したフィルタを用いて階調の濃度を測定し、濃度に対する露光の対数のグラフ(つまり、D−logE曲線)を得た。Dminは、現像後の非露光部分の濃度であり、これは8個の最低濃度値の平均である。相対速度2は、Dminより1.00高い濃度値において求めた後、比較用試料1−1に対して標準化した。比較用試料1−1は、現像剤として現像剤2を使用し、アリールボロン酸化合物を含まないものである。相対速度2の値を100とした。
【0205】
[銀効率の算出]
maxを銀の被覆重量で除して、各試料の銀効率を算出した。各フィルム試料の銀被覆重量は、一般的に知られている手法を用いたX線蛍光法で求めた。
【0206】
[処理後熱暗(Post-Processing Hot-Dark)印刷安定性試験]
現像した各光サーモグラフィ材料の連続階調ストリップ試料を、440nmに透過ピークを持つ青色フィルタを備えたコンピュータ濃度計を用いて測定し、画像の青色濃度を記録した。次に各試料を、21℃、相対湿度50%で3時間、蛍光灯で照らした。各ストリップ表面での照度は90〜120フートキャンドル(968〜1291ルックス)であった。次に、積み重ねたフィルム試料の上下に、支持体染料SD−1で青く染めたポリエチレンテレフタラート支持体の3枚のストリップを置いて、高密度の平らな黒色ポリエチレン袋にこの試料を詰めた。袋詰めした試料を、示してあるように3時間または20時間、68〜74℃のオーブンに入れた。次に、同じ濃度計と青色フィルタで試料を再び測定した。試験後の試料の青色濃度から初期試料の青色濃度を差し引いて、初期Dminでの濃度の変化(ΔDminB)と、連続階調全体での最大濃度変化(ΔDmaxB)を算出した。
【0207】
下記の表2の結果は、アリールボロン酸を含まない試料と比べ、アリールボロン酸化合物ABA−1が、光サーモグラフィフィルムの初期Dminを下げ、処理後熱暗印刷安定性も向上させることを示している。アリールボロン酸化合物ABA−1を低い濃度で含む試料は、米国特許第4,558,003号(前掲)に記載のように、架橋に効果があり、あるいは、米国特許出願第11/025,882号(前掲)に記載のように、暗安定性やデスクトップ印刷安定性の向上に効果があることは既に分かっている。しかし、熱暗印刷安定性の向上や、初期画像Dminの低下に効果は認められていなかった。化合物ABA−1を含む本発明の全ての試料は、銀効率(Dmax/Ag)や相対速度2などの所望の感度特性をあまり損なうことなく、初期Dminが低く、3時間熱暗印刷安定性試験後のΔDminBとΔDmaxBのいずれの変化も小さく、20時間熱暗印刷安定性試験後のΔDminBの変化も小さかった。
【表1】

【表2】

【0208】
実施例2.
[光サーモグラフィ材料の配合の変更例]
以下の実施例は、アリールボロン酸化合物が、配合の異なる光サーモグラフィ材料の初期画像Dminを下げ、熱暗印刷安定性を向上させることを示すものである。
【0209】
光サーモグラフィエマルション配合物1とトップコート配合物1とを用いて2つの試料を調製した。実施例1に述べたように光サーモグラフィ材料を被覆、乾燥、画像形成、現像、および評価した。比較用試料2−1はアリールボロン酸化合物を加えずに調製した。本発明の試料2−2はアリールボロン酸化合物ABA−1を含んでいる。これらの試料の組成を表3に示す。
【0210】
[光サーモグラフィエマルション配合物2]
276部の、実施例1で調製した予備調製ハロゲン化銀、カルボン酸銀せっけん分散液に、2.5部の臭化水素酸過臭素酸ピリジニウムの15%メタノール溶液を撹拌しながら加えた。60分間混ぜ合わせた後、3.3部の臭化亜鉛の11%メタノール溶液を加えた。30分間撹拌を続けた後、0.29部の2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾールと、0.014部の増感染料Aと、3.2部の2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸と、23部のメタノールとから成る溶液を加えた。75分間撹拌後、温度を10℃に下げ、19部のPIOLOFORM(登録商標)BL16を加えた。更に60分間混合を続けた。
【0211】
[トナー−現像剤溶液1]
下記の材料を含むトナー−現像剤溶液1を調製した。各成分の添加の間隔は5分とした。
PIOLOFORM(登録商標)BM18 81部
かぶり防止剤 AF−A 1.39部
テトラクロロフタル酸(TCPA) 0.64部
4−メチルフタル酸(4MPA) 1.23部
MEK 183部
現像剤2 13部
フタラジン(PHZ) 2.4部(7.7部のMEK中)
アリールボロン酸化合物 表3参照
【0212】
光サーモグラフィエマルション配合物2と、トナー−現像剤溶液1とを合わせ、この混合物を5分間混合後すぐに被覆した。
【0213】
[トップコート配合物2]
次の材料を混合して、トップコート配合物2を調製した。
MEK 92部
PARALOID(登録商標)A−21 0.59部
CAB 171−15S 6.4部
ビニルスルホン VS−1 0.24部
尖鋭度染料 AD−1 0.09部
かぶり防止剤 AF−B 0.16部
DESMODUR(登録商標)N3300 0.48部
着色染料 TD−1 0.004部
【0214】
[光サーモグラフィ材料の調製]
先に実施例1で述べたように、光サーモグラフィエマルション配合物2とトナー溶液1とを合わせた配合物と、トップコート配合物2とを、支持体染料(SD−1)で青く染めた7ミル(178μm)のポリエチレンテレフタラート支持体に同時に被覆した。実施例1に述べたように光サーモグラフィ材料を被覆、乾燥、画像形成、現像、および評価した。比較用試料2−3はアリールボロン酸化合物を含んでいない。本発明の試料2−4はアリールボロン酸化合物ABA−1を含んでいる。これらの試料の組成を表3に示す。
【0215】
下記の表4の結果は、アリールボロン酸化合物を加えると、いずれの光サーモグラフィエマルション配合物においても初期画像Dminが下がり、熱暗印刷安定性が向上することを示している。化合物ABA−1を含む試料は、銀効率(Dmax/Ag)や相対速度2などの所望の感度特性をあまり損なうことなく、アリールボロン酸化合物を含まない比較用試料よりも、初期画像Dminが低く、3時間熱暗印刷安定性試験後のΔDminBとΔDmaxBのいずれの変化も小さく、20時間熱暗印刷安定性試験後のΔDminBの変化も小さかった。
【表3】

【表4】

【0216】
実施例3.
[光サーモグラフィ材料の現像剤の変更例]
光サーモグラフィエマルション配合物2とトップコート配合物2とを用いて、実施例2に述べたように光サーモグラフィコーティングを調製した。2つの現像剤を含む試料を調製した。実施例2に述べたように光サーモグラフィ材料を被覆、乾燥、画像形成、現像、および評価した。比較用試料はアリールボロン酸化合物を加えずに調製した。本発明の試料はアリールボロン酸化合物ABA−1を含んでいる。これらの試料の組成を表5に示す。
【0217】
下記の表6の結果は、アリールボロン酸化合物ABA−1が、現像剤として現像剤1または現像剤2を用いた配合物の処理後熱暗印刷安定性を向上させることを示している。化合物ABA−1を含む試料は、初期画像Dmin、銀効率(Dmax/Ag)、相対速度2などの所望の感度特性をあまり損なうことなく、アリールボロン酸化合物を含まない比較用試料よりも、3時間および20時間熱暗印刷安定性試験後のΔDminBの変化が小さかった。
【表5】

【表6】

【0218】
実施例4.
[アリールボロン酸化合物の添加法の変更例]
現像剤として現像剤1を用いて、実施例2に述べたように光サーモグラフィエマルション配合物2を調製した。実施例2に述べたように光サーモグラフィ材料を被覆、乾燥、画像形成、現像、および評価した。比較用試料(比較用試料4−1)は、アリールボロン酸化合物を加えずに調製した。本発明の試料4−2は、光サーモグラフィエマルション層中にアリールボロン酸化合物ABA−1を含んでいる。本発明の試料4−3は、トップコート層中にアリールボロン酸化合物ABA−1を含んでいる。これらの試料の組成を表7に示す。
【0219】
下記の表8の結果は、アリールボロン酸を光サーモグラフィエマルション層に直接加えても、あるいはトップコート層に加えて光サーモグラフィエマルション層に拡散させても効果があることを示している。比較用試料4−1に比べ、本発明の試料はいずれも、20時間熱暗印刷安定性試験後において同様な安定性の向上を示した。
【表7】

【表8】

【0220】
実施例5.
[アリールボロン酸化合物の評価]
この実施例では、ホウ酸、アルキルボロン酸、およびボリン酸と比較した、アリールボロン酸の、光サーモグラフィ材料の熱暗印刷安定性の向上における特異的な性質を示す。
【0221】
現像剤として現像剤1を用いて、実施例2に述べたように光サーモグラフィエマルション配合物2を調製した。実施例2に述べたように光サーモグラフィ材料を被覆、乾燥、画像形成、現像、および評価した。比較用試料5−1を調製した。これはアリールボロン酸化合物を含んでいない。比較用試料5−2〜5−5も調製した。これらはそれぞれ比較用化合物C−BA−1、C−BA−2、C−BA−5、C−BA−6を含んでいる。アリールボロン酸化合物ABA−1〜ABA−3を含む本発明の試料5−6〜5−8も調製した。これらの試料の組成を表9に示す。
【0222】
下記の表10の結果は、アリールボロン酸化合物ABA−1〜ABA−3が、初期画像Dmin、銀効率(Dmax/Ag)、および相対速度2などの望ましい感度特性をあまり損なうことなく、処理後熱暗印刷安定性を向上させることを示している。アリールボロン酸化合物を含まない比較用試料5−1と比べて、本発明の試料は全て、20時間熱暗印刷安定性試験後のΔDmaxBとΔDminBの変化が小さかった。C−BA−1を含む比較用試料5−2は、処理後熱暗印刷安定性にあまり向上は見られなかった。それぞれアルキルボロン酸C−BA−2、ボリン酸C−BA−5、および“ブロックした(blocked)”ボロン酸C−BA−6を含む比較用試料5−3〜5−5では、実質的に熱暗印刷安定性が低下した。
【0223】
米国特許第4,558,003号(前掲)に記載のように、C−BA−1は、ポリビニルブチラールの架橋剤となることが分かった。C−BA−1、C−BA−5、およびC−BA−6は、米国特許出願第11/025,882号(前掲)に記載のように、光サーモグラフィ材料の暗安定性とデスクトップ印刷安定性を向上させることが分かった。本発明のアリールボロン酸と比べ、これらの化合物は全て、熱暗印刷安定性には効果がない。
【表9】

【表10】

【0224】
実施例6.
[アリールボロン酸化合物の評価]
現像剤として現像剤2を用いて、実施例2に述べたように光サーモグラフィエマルション配合物2を調製した。実施例2に述べたように光サーモグラフィ材料を被覆、乾燥、画像形成、現像、および評価した。3つの比較用試料を調製した。比較用試料6−1はアリールボロン酸化合物を含んでいない。比較用試料6−2は比較用化合物C−BA−3を含んでいる。比較用試料6−3は比較用化合物C−BA−7を含んでいる。本発明の試料6−4〜6−14も調製した。これらはそれぞれ、アリールボロン酸化合物ABA−1〜ABA−11、ABA−13を含んでいる。これらの試料の組成を表11に示す。
【0225】
下記の表12に示す結果は、アリールボロン酸化合物ABA−1〜ABA−11、ABA−13が、銀効率(Dmax/Ag)や相対速度2などの所望の感度特性をあまり損なうことなく、初期かぶりを減らし、更に光サーモグラフィフィルムの処理後熱暗印刷安定性も向上させることを示している。一般に、本発明の試料は、比較用試料6−1よりも初期画像Dminが低く、3時間および20時間熱暗印刷安定性試験後のΔDminBの変化が小さかった。更に、アルキルボロン酸化合物C−BA−3を含む比較用試料6−2と、構造(I)を持たないアリールボロン酸化合物を含む比較用試料6−3では、感度特性に向上が見られず、実質的に熱暗印刷安定性が低下した。
【表11】

【表12】

【0226】
実施例7.
[様々なアリールボロン酸化合物の評価]
この実施例では、オルト置換基を持つアリールボロン酸化合物と比較した、構造(I)を持つアリールボロン酸化合物の、初期画像Dminの低下と処理後熱暗印刷安定性の向上における特異的な性質を示す。
【0227】
現像剤として現像剤2を用いて、実施例1に述べたように光サーモグラフィエマルション配合物1を調製した。実施例1に述べたように光サーモグラフィ材料を被覆、乾燥、画像形成、現像、および評価した。2つの比較用試料を調製した。比較用試料7−1はアリールボロン酸化合物を含んでいない。比較用試料7−2は化合物C−BA−4を含んでいる。本発明の試料7−3〜7−7も調製した。これらはそれぞれ、アリールボロン酸化合物ABA−1、ABA−11、ABA−12、ABA−14、ABA−21を含んでいる。これらの試料の組成を表13に示す。
【0228】
下記の表14の結果は、アリールボロン酸化合物ABA−1、ABA−11、ABA−12、ABA−14、ABA−21が、銀効率(Dmax/Ag)や相対速度2などの望ましい感度特性をあまり損なうことなく、初期かぶりを減少させるだけでなく、光サーモグラフィフィルムの処理後熱暗印刷安定性も向上させることを示している。本発明の試料は全て、比較用試料7−1よりも初期画像Dminが低く、3時間および20時間熱暗印刷安定性試験後のΔDminBの変化が小さかった。ホウ素原子が結合している位置の隣に塩素置換基のあるアリールボロン酸化合物である、化合物C−BA−4を含む比較用試料7−2は、感度特性または熱暗印刷安定性のどちらにも向上が見られなかった。
【表13】

【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体の少なくとも一方の側に設けられた光サーモグラフィ層と、
を含む黒白の有機溶媒系光サーモグラフィ材料であって、
前記光サーモグラフィ材料は、
a.感光性ハロゲン化銀と、
b.非感光性の還元性銀イオン源と、
c.前記還元性銀イオンのための還元剤と、
d.ポリマーバインダと、
e.構造式(I)で示される1つ以上のアリールボロン酸化合物と、
を反応しあう関係で(in reactive association)含み、
【化1】


式中、
Arは、芳香族炭素環または複素環基を示し、
ホウ素原子の結合したAr環員原子に隣接するArの環員原子に結合している非水素置換基は、縮合芳香族または非芳香族の炭素環または複素環への結合であり、
前記アリールボロン酸化合物の含有量は0.5g/m以上である、
ことを特徴とする光サーモグラフィ材料。
【請求項2】
前記1つ以上のアリールボロン酸化合物は構造式(II)で示され、
【化2】


式中、
、R、およびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ニトロ基、ハロ基、トリハロメチル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アセチル基、またはニトリル基を示し、
あるいは、RとR、RとR、またはR、R、およびRは、互いに結合して1つ以上の縮合芳香族または非芳香族の炭素環または複素環を形成することができる、
ことを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項3】
、R、およびRは独立して、水素、あるいは、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、ニトリル、またはアセタール基であることを特徴とする請求項2の光サーモグラフィ材料。
【請求項4】
前記1つ以上のアリールボロン酸化合物は、次の化合物(ABA−1)〜(ABA−22)で示されることを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【化3】


【化4】


【化5】


【化6】

【請求項5】
黒白画像を生成し、600〜1200nmの波長に感度を持つことを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項6】
前記支持体の両側に、同じまたは異なる光サーモグラフィ層を備え、前記1つ以上のアリールボロン酸化合物は前記支持体の両側に存在することを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項7】
前記支持体のそれぞれの画像形成側に被覆した銀の総重量は2g/m以下であることを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項8】
コントラスト増強剤を更に含むことを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項9】
共現像剤(co-developer)還元剤を更に含むことを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項10】
前記共現像剤還元剤は、トリチルヒドラジド類、ホルミルフェニルヒドラジド類、2−置換マロンジアルデヒド類、4−置換イソオキサゾール類、および置換アクリロニトリル化合物の1つ以上を含むことを特徴とする請求項9の光サーモグラフィ材料。
【請求項11】
ヒドロキシルアミン類、アルカノールアミン類、フタルアミド酸アンモニウム(ammonium phthalamate)化合物、ヒドロキサム酸類、N−アシルヒドラジン類、または水素原子供与体化合物の1つ以上を更に含むことを特徴とする請求項10の光サーモグラフィ材料。
【請求項12】
前記アリールボロン酸化合物は光サーモグラフィエマルション層中に存在することを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項13】
前記光サーモグラフィ層の上に設けた保護オーバーコート層を更に含み、前記アリールボロン酸化合物は少なくとも前記保護オーバーコート層に加えられていることを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項14】
前記アリールボロン酸化合物は、1つ以上の層の中に総量で0.5〜15g/m含まれていることを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項15】
現像促進剤と1つ以上のポリハロゲン安定剤とを更に含むことを特徴とする請求項1の光サーモグラフィ材料。
【請求項16】
支持体と、
前記支持体の少なくとも一方の側に設けられた光サーモグラフィ層と、
を含む黒白の有機溶媒系光サーモグラフィ材料であって、
前記光サーモグラフィ材料は、
a.感光性ハロゲン化銀と、
b.少なくともベヘン酸銀を含む、非感光性の還元性銀イオン源と、
c.前記還元性銀イオンのための1つ以上の還元剤と、
d.ポリビニルブチラールまたはポリビニルアセタールバインダと、
e.構造式(II)で示される1つ以上のアリールボロン酸化合物と、
を反応しあう関係で含み、
【化7】


式中、
、R、およびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ニトロ基、ハロ基、トリハロメチル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アセチル基、ニトリル基を示し、
あるいは、RとR、RとR、またはR、R、およびRは、互いに結合して1つ以上の縮合炭素環、複素環、芳香環、または複素芳香環を形成することができ、
前記アリールボロン酸化合物の含有量は0.5〜5g/mである、
ことを特徴とする光サーモグラフィ材料。
【請求項17】
前記1つ以上の還元剤は、1つ以上の阻害性(hindered)フェノールまたは阻害性ビスフェノール還元剤、あるいはその混合物を含むことを特徴とする請求項16の光サーモグラフィ材料。
【請求項18】
A)請求項1の光サーモグラフィ材料に、電磁放射線を画像の形に露光して潜像を形成する工程と、
B)同時に、またはそれに続いて、露光した光サーモグラフィ材料を加熱して前記潜像を可視画像に現像する工程と、
を含むことを特徴とする可視画像の生成方法。
【請求項19】
前記現像は25秒以下で行われることを特徴とする請求項18の可視画像の生成方法。
【請求項20】
前記画像の形の露光は700〜950nmのレーザイメージングを用いて行われることを特徴とする請求項18の可視画像の生成方法。

【公表番号】特表2009−526269(P2009−526269A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554266(P2008−554266)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/002528
【国際公開番号】WO2007/092208
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(507224587)ケアストリーム ヘルス インク (76)
【Fターム(参考)】