説明

アリール2−メチルグリシジルエーテル類の製造法

【課題】大スケールでも安全に製造可能であり、出発物質が光学活性体の場合には光学純度が低下することのないアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法を提供する。
【解決手段】3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)をアリールオキシ化して3−アリールオキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(4)を得、これをスルホニル化し、3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類(6)を得、これのエポキシ化によりアリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬の重要中間体となりうるアリール 2−メチルグリシジルエーテルの製造法に関し、またその光学活性体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法としては、i)メタリルフェニルエーテルをジクロロメタン中、m−クロロ過安息香酸でエポキシ化する方法,ii)2−メチルエピクロロヒドリンにフェノールを相間移動触媒の存在下、塩基性条件で付加させ、得られたクロロヒドリン体を閉環する方法、iii)メタリルフェニルエーテルをクロロパーオキシダーゼによりエナンチオ選択的にエポキシ化する方法などが知られている。
【0003】
しかしながら、これらの製造方法には以下のような問題がある。即ち方法i)ではメタリルフェニルエーテルを過酸化物を用いてエポキシ化するため、より大きなスケールでの製造は安全性の点で困難である。また医薬、農薬の中間体として使用する場合、一般に光学活性体が必要となりうるが、ii)およびiii)のいずれの方法でもラセミ体のみしか製造できない。方法iii)では酵素により光学活性体が得られるが、S体のみしか得られないため、R体が必要である場合には適用できない。また、一般に光学活性な医薬品、およびその中間体には98%ee以上の光学純度が求められるが、方法iii)では89%eeに留まっている。
【非特許文献1】Journal of Fluorine Chemistry, 74, 283(1995).
【特許文献1】WO 2004−029126
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society, 117, 6412(1995).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような背景技術に鑑み、本発明の目的は、大スケールでも安全な製造が可能であり、安価で操作性良くアリール 2−メチルグリシジルエーテル類を得ることができ、さらに出発物質が光学活性体の場合にはその光学純度を損なうことなく光学活性アリール 2−メチルグリシジルエーテル類を得ることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、下記の第1および第2の発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、第1発明は、一般式(1)
【化1】

【0007】
[式中、Arは置換もしくは無置換芳香族基を意味する。]
で表されるアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法において、一般式(2)
【化2】

【0008】
[式中、Xはハロゲン原子を意味する。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類を有機溶媒中で塩基の存在下、一般式(3)
【化3】

【0009】
[式中、Arは上記と同義である。]
で表される水酸基含有アリール化合物と反応させ、アリールオキシ化により、一般式(4)
【化4】

【0010】
[式中、Arは前記と同じ意味を表す。]
で表される3−アリールオキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類を得、ついでこれに有機溶媒中で塩基の存在下、一般式(5)
SOCl
(5)
[式中、Rは置換若しくは無置換アラルキル基、または置換若しくは無置換芳香族基を意味する。]
で表されるスルホニルハライド類を作用させ、1級水酸基のスルホニル化により、一般式(6)
【化5】

【0011】
[式中、ArおよびRは上記と同義である。]
で表される3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類を得、ついでこれを一般式(7)
【化6】

[R、R、RおよびRは、同一又は異なり、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を意味し、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオンまたは水酸化物イオンを意味する。]
で表される第4級アンモニウム塩の存在下、非水溶性有機溶媒と塩基性水溶液の二相系でエポキシ化することにより、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)を製造することを特徴とするアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法である。
【0012】
第1発明において、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)として光学活性体を用いれば、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)が光学活性体として得られる。
【0013】
第1発明は下記の反応式で示される。
【化7】

【0014】
第2発明は、一般式(8)
【化8】

【0015】
[式中、Arは置換もしくは無置換芳香族基を意味する。]
で表されるアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法において、一般式(9)
【化9】

【0016】
[式中、Xはハロゲン原子を意味する。]
で表される2−メチルエピハロヒドリン類を塩基、および一般式(10)
【化10】

【0017】
[R1、R2、R3およびR4は、同一又は異なり、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を意味し、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオンまたは水酸化物イオンを意味する。]
で表される第四級アンモニウム塩の存在下、一般式(11)
【化11】

【0018】
[式中、Arは上記と同義である。]
で表される水酸基含有アリール化合物と、非水溶性有機溶媒と水溶液の二相系中で反応させることにより、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)を製造することを特徴とするアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法である。
【0019】
第2発明において、2−メチルエピハロヒドリン類(9)として光学活性体を用いれば、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(8)が光学活性体として得られる。
【0020】
第2発明は下記の反応式で示される。
【化12】

【発明の効果】
【0021】
本発明の製造法により、医薬、農薬の重要中間体となり得るアリール 2−メチルグリシジルエーテルを大スケールで安価で操作性良く得ることができる。また、第1発明の出発物質として光学活性3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)を用い、第2発明の出発物質として光学活性2−メチルエピハロヒドリン類(9)を用いる場合には、その光学純度を損なうことなく光学活性アリール 2−メチルグリシジルエーテル類を得ることができる。
【0022】
また、第1発明の出発原料として用いる光学活性3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)として一方の光学活性体しか入手できなかった場合は、まず、後述する方法で光学活性3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)から光学活性2−メチルエピハロヒドリン類(9)を導き、ついでこれから第2発明の方法で、第1発明で得られるアリール 2−メチルグリシジルエーテル類とは逆の立体のものを得ることができる。即ち、例えば(S)−3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類を出発原料とした場合、第1発明のルートでは(S)−アリール 2−メチルグリシジルエーテル類が得られ、光学活性2−メチルエピハロヒドリン類(9)を経由する第2発明のルートでは逆の立体である(R)−アリール 2−メチルグリシジルエーテル類を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
まず、第1発明について詳しく説明をする。
【0024】
3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)を有機溶媒中で塩基の存在下、水酸基含有アリール化合物(3)と反応させ、アリールオキシ化により、3−アリールオキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(4)を得るアリールオキシ化工程において、一般式(2)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類のハロゲン原子(X)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、好ましくは塩素原子または臭素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(2)の具体例としては3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−2−メチル−1,2−プロパンジオールなどが挙げられ、特に3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールが好んで用いられる。
【0025】
3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールは、メタリルクロライドを過酢酸などによる酸化でメチルエピクロルヒドリンとし、これを酸性条件下で水和開裂する方法といった常法により容易に調製することができる。また、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(1)の光学活性体も公知の方法、例えば特開昭63−150234号公報記載の方法で調製することができる。これは特願2005−000116号明細書記載の方法で得ることもできる。
【0026】
アリールオキシ化に使用する水酸基含有アリール化合物(3)としては、無置換のフェノールや置換基を有するフェノール類が好ましい。置換フェノールの置換基は、本反応に影響を与えない基である限り特に限定されず、例えば、メチル、エチルなどのアルキル基、アリルなどのアルケニル基、メトキシメチル、2−メトキシエチル、アリルオキシメチル、(2−メトキシエトキシ)メチル、(2−イソプロポキシエトキシ)メチルなどのエーテル結合を有するアルキル基、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードなどのハロゲン原子、トリフルオロメチル、クロロメチルなどのハロゲン化アルキル基、メトキシ、アリルオキシ、メトキシメトキシなどのアルコキシ基、アセチルアミドなどのアミド基、カルバモイル基、アルデヒド基、アセチル、ベンゾイルなどのアシル基、ニトロ基などが挙げられる。またこの置換基は、テトラメチレン基やメチレンジオキシ基などのようにフェノールの隣接炭素原子と一緒に環を形成する基であってもよい。上記の置換基は同時に複数個存在していてもよい。水酸基含有アリール化合物(3)には、α−ナフトール、β−ナフトール、7−ヒドロキシインデンなどの水酸基を有する多環式芳香族化合物や、2−ピリジルアルコール、3−ヒドロキシフラン、4−ヒドロキシインドール、5−ヒドロキシキノリンなどの水酸基を有する複素環式芳香族化合物も含まれる。これらのうち、好ましくはフェノール、4−フルオロフェノール、2−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−メトキシフェノールおよび2−アリルオキシフェノールを挙げることができ、特に好ましくはフェノール、4−フルオロフェノール、2−メチルフェノール、4−メトキシフェノールである。
【0027】
アリールオキシ化に使用する塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、tert−ブトキシカリウムなどの炭素数1〜4の低級アルキルアルコールのアルカリ金属塩;フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属のフッ化物塩が挙げられる。これらの塩基は、単独で用いても、2種類以上の混合物で用いてもよい。好ましい塩基は水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、フッ化セシウムであり、特に好ましいのは水素化ナトリウムである。
【0028】
アリールオキシ化に使用する塩基の使用量は、一般式(2)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類に対して1〜5当量、好ましくは1.5〜3当量の範囲である。また、アルカリ金属のフッ化物塩を使用する場合は、アルカリ金属の水素化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭素数1〜4の低級アルキルアルコールのアルカリ金属塩、炭素数1〜6の低級アルキル基を有する3級アミンなどの塩基を共存させると、フッ化物塩の使用量を少なくすることができる。この場合、フッ化物塩の使用量は、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)に対して0.001〜1当量、好ましくは0.01〜0.5当量の範囲である。
【0029】
アリールオキシ化の際に使用する溶媒としては、特に限定されるものではないが、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキド、スルホラン、ヘキサメチルホスホルアミドなどの非プロトン性極性溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールなどのアルコール系溶媒、水媒体などが挙げられる。好ましい溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキド、スルホラン、ヘキサメチルホスホルアミドなどの非プロトン性極性溶媒である。
【0030】
アリールオキシ化の溶媒の使用量は、特に限定するものではないが、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)に対して好ましくは2〜10倍量(v/w)、特に好ましくは3〜5倍量(v/w)である。
【0031】
アリールオキシ化の反応温度は、−50〜200℃、好ましくは0〜100℃である。反応温度が低すぎると反応速度が極めて遅く、実用的ではない。また、反応温度が高すぎると反応途中で生成するグリシドールが重合を起こすためか、収率が有意に低下する。
【0032】
アリールオキシ化により得られた3−アリールオキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(4)に有機溶媒中で塩基の存在下、スルホニルハライド類(5)を作用させ、1級水酸基のスルホニル化により3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類(6)を得るスルホニル化において、使用するスルホニルハライド類としては、ベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、α−トルエンスルホニルクロリド、2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、3−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、4−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、2−ニトロ−α−トルエンスルホニルクロリド、4−tert−ブチルベンゼンスルホニルクロリド、4−メトキシベンゼンスルホニルクロリド、4−クロロベンゼンスルホニルクロリド、4−ブロモベンゼンスルホニルクロリド、4−ヨードベンゼンスルホニルクロリド、1−ナフタレンスルホニルクロリド、2−ナフタレンスルホニルクロリド、2,4−ジニトロベンゼンスルホニルクロリド、2,5−ジクロロベンゼンスルホニルクロリドおよび2−メシチレンスルホニルクロリドなどを挙げることができるが、好ましいスルホニルハライド類はベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、3−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、4−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、2−ニトロ−α−トルエンスルホニルクロリドであり、特に好ましいのはp−トルエンスルホニルクロリド、3−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、4−ニトロベンゼンスルホニルクロリドである。
【0033】
スルホニルハライド類の使用量は、3−アリールオキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(4)に対して好ましくは1.0〜1.5当量の範囲、特に好ましくは1.0〜1.05当量である。
【0034】
スルホニル化反応に使用する塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミン類;トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン類;ピリジン、および2,4,6−コリジン、2,6−ルチジンなどのピリジン誘導体が挙げられるが、好ましい塩基はトリアルキルアミン類である。
【0035】
スルホニル化に使用される塩基の使用量は、特に限定されるものでは無いが、3−アリールオキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(4)に対して好ましくは1.0当量以上、特に好ましくは1.0〜1.5当量である。
【0036】
スルホニル化に使用する溶媒は、特に限定するものではないが、一般的な溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等の非プロトン性極性溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグリム、トリグリム等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、酢酸エチル等のケトンないしはエステル系溶媒;ならびにこれらの混合溶媒が挙げられる。また、塩基として用いる上記ピリジン誘導体を反応溶媒として用いることもできる。好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒が用いられるか、または無溶媒であり、特に好ましくは1,2−ジクロロエタンが用いられる。
【0037】
スルホニル化に使用する溶媒の使用量は、特に限定するものではないが、3−アリールオキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(4)に対して好ましくは2〜10倍量(v/w)、特に好ましくは3〜5倍量(v/w)である。
【0038】
スルホニル化の反応温度は、好ましくは−10〜25℃、より好ましくは0〜20℃の範囲である。
【0039】
スルホニル化により得られた3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類(6)を第4級アンモニウム塩(7)の存在下、非水溶性有機溶媒と塩基性水溶液の二相系でエポキシ化してアリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)を製造するエポキシ化工程において、使用する塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられるが、好ましい塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物であり、特に好ましいのは水酸化ナトリウムである。
【0040】
エポキシ化に使用する塩基の使用量は、3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類(6)に対して好ましくは1.0〜2.0当量、特に好ましくは1.05〜1.2当量である。
【0041】
エポキシ化に使用する塩基性水溶液の濃度は、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。
【0042】
エポキシ化に使用する非水溶性有機溶媒は、塩基性水溶液と相溶せずかつ反応せず、3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類(6)を溶解させるものであれば、特に限定されないが、n−へキサン、n−ヘプタンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒などが挙げられる。好ましい溶媒はトルエン、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジクロロエタンであり、特に好ましいのはトルエンである。
【0043】
エポキシ化に使用する溶媒の使用量は、3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類(6)に対して好ましくは1〜20倍量(v/w)、特に好ましくは3〜10倍量(v/w)である。
【0044】
エポキシ化に使用する第4級アンモニウム塩(7)の具体例としては、塩化テトラn−ブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化テトラn−ブチルアンモニウム、臭化n−オクチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、ヨウ化テトラn−ブチルアンモニウム、ヨウ化β−メチルコリン、硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
第4級アンモニウム塩(7)の使用量は、3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類(6)に対して触媒量でよく、0.005〜0.2当量の範囲で使用することが好ましい。特に好ましい量は0.01〜0.1当量である。
【0046】
エポキシ化の反応温度は、好ましくは0〜50℃、特に好ましくは、0〜40℃である。0℃未満では反応が抑制され、水が凍結することもあるので適当ではない。
【0047】
エポキシ化の反応終了後は、塩基性水溶液を除去し、抽出液の中和、水洗、濃縮を経て、得られた粗生成物の減圧蒸留、晶析またはカラムクロマトグラフィー等の精製手段の適宜な組み合わせにより、目的とするアリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)が得られる。
【0048】
3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)として光学活性体を用いれば、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)が光学活性体として得られる。
【0049】
つぎに、第2発明について詳細に説明をする。
【0050】
2−メチルエピハロヒドリン類(9)を塩基と第四級アンモニウム塩(10)の存在下、水酸基含有アリール化合物(11)と、非水溶性有機溶媒と水溶液の二相系中で反応させることにより、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(8)を製造する第2発明において、出発物質である2−メチルエピハロヒドリン(9)のハロゲン原子(X)としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、好ましくは塩素原子、臭素原子である。2−メチルエピハロヒドリン(9)の具体例としては、2−メチルエピクロロヒドリン、2−メチルエピブロモヒドリン等が挙げられ、特に2−メチルエピクロロヒドリンが好んで用いられる。
【0051】
2−メチルエピハロヒドリン(9)は公知の方法で得られたものであってもよい。2−メチルエピクロロヒドリンの光学活性体は、上述した特開昭63−150234または特願2005−000116に記載の方法に従って製造した光学活性な3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールの一級水酸基をピリジン等の有機塩基の存在下、ベンゼンスルホニルクロリド等のスルホニルハライドを用いてスルホニル化し、次いでこれを水酸化ナトリウム等の無機塩基で処理することにより取得することができる。
【0052】
2−メチルエピハロヒドリン(9)の使用量は、水酸基含有アリール化合物(11)に対して好ましくは1〜3当量、特に好ましくは1.5〜2当量である。1当量より少ない場合は、未反応の水酸基含有アリール化合物(11)と生成したアリール 2−メチルグリシジルエーテル類(8)がさらに反応し、2量体が副生し、純度、および収量の低下を招く恐れがある。
【0053】
水酸基含有アリール化合物(11)としては、無置換のフェノールや置換基を有するフェノール類が好ましい。置換フェノールの置換基は、本反応に影響を与えない基である限り特に限定されず、例えば、メチル、エチルなどのアルキル基、アリルなどのアルケニル基、メトキシメチル、2−メトキシエチル、アリルオキシメチル、(2−メトキシエトキシ)メチル、(2−イソプロポキシエトキシ)メチルなどのエーテル結合を有するアルキル基、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードなどのハロゲン原子、トリフルオロメチル、クロロメチルなどのハロゲン化アルキル基、メトキシ、アリルオキシ、メトキシメトキシなどのアルコキシ基、アセチルアミドなどのアミド基、カルバモイル基、アルデヒド基、アセチル、ベンゾイルなどのアシル基、ニトロ基などが挙げられる。またこの置換基は、テトラメチレン基やメチレンジオキシ基などのようにフェノールの隣接炭素原子と一緒に環を形成する基であってもよい。上記の置換基は同時に複数個存在していてもよい。水酸基含有アリール化合物(11)には、α−ナフトール、β−ナフトール、7−ヒドロキシインデンなどの水酸基を有する多環式芳香族化合物や、2−ピリジルアルコール、3−ヒドロキシフラン、4−ヒドロキシインドール、5−ヒドロキシキノリンなどの水酸基を有する複素環式芳香族化合物も含まれる。これらのうち、好ましくはフェノール、4−フルオロフェノール、2−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−メトキシフェノールおよび2−アリルオキシフェノールを挙げることができ、特に好ましくはフェノール、4−メトキシフェノール、4−フルオロフェノール、4−メチルフェノールである。
【0054】
本反応に用いられる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ;tert−ブトキシカリウムなどの水溶性の塩基が挙げられる。これらの塩基は、単独で用いても、2種類以上の混合物で用いてもよいが、好ましくは水酸化アルカリであり、特に好ましくは水酸化ナトリウムや水酸化カリウムである。
【0055】
本反応に用いられる塩基の使用量は、水酸基含有アリール化合物(11)に対して好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1〜2当量の範囲である。
【0056】
本反応に用いられる第四級アンモニウム塩(10)としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化テトラn−ブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化テトラn−ブチルアンモニウム、臭化n−オクチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、ヨウ化テトラn−ブチルアンモニウム、ヨウ化β−メチルコリン、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
【0057】
本反応に用いられる第四級アンモニウム塩(10)の使用量は、水酸基含有アリール化合物(11)に対して触媒量でよく、好ましくは0.005〜0.1当量である。
【0058】
本反応に用いられる非水溶性有機溶媒は、塩基性水溶液と相溶せずかつ反応せず、2−メチルエピハロヒドリン(9)およびアリール 2−メチルグリシジルエーテル類(8)が溶解するものであれば特に限定されず、n−ヘキサンやn−ヘプタンなどのアルカン系;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒が挙げられるが、好ましい溶媒はトルエン、tert−ブチルメチルエーテル、および1,2−ジクロロエタンである。
【0059】
本反応に用いられる非水溶性有機溶媒の使用量は、水酸基含有アリール化合物(11)に対して好ましくは1〜10倍量(v/w)、特に好ましくは2〜5倍量(v/w)である。
【0060】
本反応に用いられる水の使用量は、水酸基含有アリール化合物(11)に対して好ましくは1〜20倍量(v/w)、特に好ましくは2〜5倍量(v/w)である。
【0061】
本反応の反応温度は、好ましくは0〜50℃、特に好ましくは0〜40℃である。0℃未満では反応が抑制され、水が凍結することもあるので適当ではない。また、50℃を超えると副反応が進行して収率低下の原因となったり、さらに光学活性な2−メチルエピハロヒドリンを用いた場合は、そのラセミ化が進行し、得られる光学活性アリール 2−メチルグリシジルエーテル類の光学純度が低下するなど、好ましくない。
【0062】
反応終了後は、有機層を取り出して、希塩酸などの希鉱酸で中和し、有機溶媒を留去するという、非常に簡便な操作で目的のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類(8)を得ることができる。
【0063】
出発物質として光学活性2−メチルエピハロヒドリンを用いた場合は、光学純度を殆ど保ったまま光学活性アリール 2−メチルグリシジルエーテル類を得ることができる。
【0064】
収率が低い場合は、反応終了後に食塩、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムを適量添加してから、有機層を取り出してもよい。必要であれば、有機溶媒の留去後に蒸留、晶析およびカラムクロマトグラフィーなどの精製を行ってもよい。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0066】
実施例1
(S)−3−フェノキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(12)の合成
水素化ナトリウム3.2g(80.3mmol,60%oil dispersion)をn−へキサンで洗浄し、ジメチルホルムアミド(脱水)30mLを添加した。この懸濁液中にジメチルホルムアミド(脱水)6mLに溶解したフェノール3.8g(40.1mmol)を氷冷下、15分かけて滴下した。発泡が治まったことを確認した後、ジメチルホルムアミド(脱水)6mLに溶解した(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール5.0g(40.1mmol、光学純度99%ee)を同温度で15分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を60℃とし、混合物を12時間撹拌した。反応終了後、水を添加し、全体を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(S)−3−フェノキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(12)6.2g(34.2mmol、収率85.1%)を無色透明油状物質として得た。
【化13】

【0067】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.29(3H,s)、3.27(2H,brs)、3.64(2H,dd,J=40.2,10.8Hz)、3.90(2H,s)、6.88−7.25(3H,m)、7.28(2H,dd,J=7.3,1.4Hz).
実施例2
(R)−3−フェノキシ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール(13)の合成
(S)−3−フェノキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(12)2.53g(13.9mmol、トリエチルアミン1.55g(15.3mmol)および1,2−ジクロロエタン10mLの混合物に、1,2−ジクロロエタン12mLに溶解したp−トルエンスルホニルクロリド2.7g(14.2mmol)を氷冷下滴下し、滴下終了後、全体を25℃で12時間撹拌した。反応終了後、水を加え、1,2−ジクロロエタン層を取出し、飽和食塩水で洗浄し、減圧下濃縮した。残った粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(R)−3−フェノキシ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール(13)3.84g(11.4mmol、収率82.1%)を無色透明油状物質として得た。
【化14】

【0068】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.30(3H,s)、2.37(3H,s)、3.77(1H,d,J=8.9Hz)、3.81(1H,d,J=9.2Hz)、4.01(1H,d,J=9.7Hz)、4.07(1H,d,J=9.7Hz)、6.74−6.78(2H,m)、6.94−7.00(2H,m)、7.22−7.30(4H,m),7.70−7.75(2H,m).
実施例3
(S)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(14)の合成
(R)−3−フェノキシ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール(13)1.46g(4.37mmol、光学純度99%ee)、臭化テトラブチルアンモニウム17.6mg(0.055mmol)およびトルエン7.33mLの混合物に、24%水酸化ナトリウム水溶液0.80g(4.80mmol)を添加し、全体を25℃で5時間撹拌した。反応終了後、水層を除去して,トルエン層を飽和食塩水で洗浄した後、減圧下濃縮した。残った粗生成物を残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(S)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(14)0.63g(3.83mmol、収率87.6%、光学純度99%ee)を白色結晶として得た。
【化15】

【0069】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.49(3H,s)、2.73(2H,d,J=5.1Hz)、2.87(2H,d,J=5.1Hz)、3.94(2H,d,J=10.5Hz)、4.02(2H,d,J=10.5Hz)、6.89−7.25(3H,m)、7.24−7.31(2H,m).
実施例4
(S)−3−(4−メトキシフェノキシ)−2−メチル−1,2−プロパンジオール(15)の合成
4−メトシキフェノール3.6g(28.9mmol)をジメチルホルムアミド(脱水)20mLに溶解し、ここへ炭酸カリウム8.0g(57.8mmol)を添加した。この懸濁液中にジメチルホルムアミド(脱水)10mLに溶解した(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール5.0g(40.1mmol、光学純度99%ee)を25℃で15分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を65℃とし、混合物を12時間撹拌した。反応終了後、水を添加し、全体を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチル/n−へキサン=1/4で再結晶化し、目的物である(S)−3−(4−メトキシフェノキシ)−2−メチル−1,2−プロパンジオール(15)3.6g(17.0mmol、収率70.4%)を微褐色粉末として得た。
【化16】

【0070】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.28(3H,s)、2.28(1H,brt,J=5.9Hz)、2.77(1H,brs)、3.57(1H,dd,J=11.3、6.2Hz)、3.72(1H,d,J=11.1、5.1Hz)、3.77(3H,s)、3.85(1H,d,J=8.9Hz)、3.92(1H,d,J=8.9Hz)、6.78−6.88(4H,m).
実施例5
(R)−3−(4−メトキシフェノキシ)−2−メチル−1−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシ)−2−プロパノール(16)の合成
(S)−3−(4−メトキシフェノキシ)−2−メチル−1,2−プロパンジオール(15)3.6(17.0mmol)、トリエチルアミン1.8g(17.8mmol)および1,2−ジクロロエタン34mLの混合物に、1,2−ジクロロエタン10.8mLに溶解した4−ニトロベンセンスルホン酸クロリド3.9g(17.8mmol)を室温で滴下し、滴下終了後、全体を40時間撹拌した。反応終了後、1,2−ジクロロエタンを減圧留去し、残渣に酢酸エチルと水を加え、酢酸エチル層を分取した。酢酸エチル層を水洗し、飽和食塩水で洗浄した後、減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチル/n−へキサン=1/4で再結晶化し、目的物である(R)−3−(4−メトキシフェノキシ)−2−メチル−1−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシ)−2−プロパノール(16)5.6g(14.2mmol、収率83.6%)を黄白色粉末として得た。
【化17】

【0071】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.32(3H,s)、2.43(1H,brs)、3.67(1H,d,J=9.2Hz)、3.71(1H,d,J=8.9Hz)、3.78(1H,s)、4.11(1H,d,J=9.7Hz)、4.17(1H,d,J=9.7Hz)、6.61(2H,d,J=9.5Hz)、6.77(2H,d,J=9.2Hz)、8.02(2H,d,J=8.9Hz)、8.21(2H,d,J=8.6Hz).
実施例6
(S)−(4−メトキシフェニル) 2−メチルグリシジルエーテル(17)の合成
(R)−3−(4−メトキシフェノキシ)−2−メチル−1−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシ)−2−プロパノール(16)2.19g(5.52mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム22.2mg(0.069mmol)およびトルエン22mLの混合物に、24%水酸化ナトリウム水溶液1.01g(4.80mmol)を添加し、全体を25℃で1時間撹拌した。反応終了後、水層を除去して,トルエン層を水、飽和食塩水で洗浄した後、減圧下濃縮した。残った粗生成物を残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(S)−(4−メトキシフェニル) 2−メチルグリシジルエーテル(17)0.94g(4.84mmol、収率87.7%、光学純度99%ee)を白色結晶として得た。
【化18】

【0072】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.48(3H,s)、2.72(1H,d,J=4.9Hz)、2.86(1H,d,J=4.6Hz)、3.76(3H,s)、3.90(1H,d,J=10.8Hz)、3.98(1H,d,J=10.3Hz)、6.79−6.88(4H,m).
参考例1((S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールの合成)
実施例1における出発物質(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールは、次の方法で調製した。
【0073】
オルトチタン酸テトライソプロピル7.9.ml(26mmol)、水素化カルシウム150mg(2.5mmol)、シリカゲル150mg(2.5mmol)およびL−酒石酸ジブチル5ml(30mmol)を塩化メチレン150ml中にて−18℃で10分間放置した。次にβ−メタリルアルコールI.6ml(25mmol)およびクメンヒドロパーオキシド(クメン中66%)7ml(50mmol)を加え、混合物を−18℃で16時間放置した。次にジエチルエーテル300mlと水酸化ナトリウム溶液(28%)50ml(0.35mmol)を加え、混合物を室温で1.5時間攪拌した。次に混合物をエーテルで抽出し、有機相を塩化マグネシウム20.3g(0.1モル)で処理し、室温で16時間撹伴した。次に混合物を濾過し、濾液を蒸発させ、クメンおよびクメンアルコールを水蒸気蒸留した。残渣を濃縮し、[α]20=+5.4°(e=3%、CHCl}及びガスクロマトグラフ法による光学純度98%(e.e.)以上の無色の油として、(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール2.47gを得た。
【0074】
実施例7
(R)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(18)の合成
(S)−2−メチルエピクロロヒドリン12.0g(0.113mol、光学純度99%ee)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム253mg(0.784mmol)、トルエン20mLおよび水20mLの混合物を氷冷した。ここへフェノール5.9g(0.063mol)を加えた後に、混合物を攪拌しながら24%水酸化ナトリウム水溶液15.7g(0.094mol)を1時間かけて滴下した。全体を氷冷したまま30分間、さらに25℃で48時間撹拌した。反応終了後、水層を取り除き、トルエン層を5%塩酸で洗浄し、さらに水で洗浄した。トルエン層を減圧下濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(R)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(18)8.8g(0.054mol、収率85.1%、光学純度99%ee)を白色結晶として得た。
【化19】

【0075】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.49(3H,s)、2.73(1H,d,J=5.1Hz)、2.87(1H,d,J=5.1Hz)、3.94(1H,d,J=10.5Hz)、4.02(1H,d,J=10.5Hz)、6.89−6.99(3H,m)、7.24−7.31(2H,m).
実施例8
(R)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(19)の合成
(S)−2−メチルエピクロロヒドリン11.3g(0.106mol、光学純度99%ee)、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム123mg(0.663mmol)、トルエン17mLおよび水17mLの混合物を氷冷した。ここへフェノール5.0g(0.053mol)を加えた後に、混合物を攪拌しながら24%水酸化ナトリウム水溶液17.7g(0.106mol)を1時間かけて滴下した。全体を氷冷したまま30分間、さらに25℃で48時間撹拌した。反応終了後、水層を取り除き、トルエン層を5%塩酸で洗浄し、さらに水で洗浄した。トルエン層を減圧下濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(R)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(19)7.6g(0.046mol、収率87.3%、光学純度99%ee)を白色結晶として得た。NMRのスペクトルデータは、実施例1と同様であった。
【0076】
実施例9
(R)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(19)の合成
(S)−2−メチルエピブロモヒドリン16.0g(0.106mol、光学純度99%ee)、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム123mg(0.663mmol)、トルエン17mLおよび水17mLの混合物を氷冷した。ここへフェノール5.0g(0.053mol)を加えた後に、混合物を攪拌しながら24%水酸化ナトリウム水溶液17.7g(0.106mol)を1時間かけて滴下した。全体を氷冷したまま30分間、さらに25℃で48時間撹拌した。反応終了後、水層を取り除き、トルエン層を5%塩酸で洗浄し、さらに水で洗浄した。トルエン層を減圧下濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(R)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(19)7.7g(0.047mol、収率88.2%、光学純度99%ee)を白色結晶として得た。NMRのスペクトルデータは、実施例1と同様であった。
【0077】
実施例10
(R)−(4−メトキシフェニル) 2−メチルグリシジルエーテル(20)の合成
(S)−2−メチルエピクロロヒドリン16.0g(0.150mol、光学純度99%ee)、塩化テトラn−ブチルアンモニウム347mg(1.25mmol)、トルエン41.8mLおよび水41.8mLの混合物を氷冷した。ここへ4−メトキシフェノール12.4g(0.100mol)を加えた後に、混合物を攪拌しながら24%水酸化ナトリウム水溶液33.3g(0.200mmol)を1時間かけて滴下した。全体を氷冷したまま30分間、さらに25℃で48時間撹拌した。反応終了後、水層を取り除き、トルエン層を5%塩酸で洗浄し、さらに水で洗浄した。トルエン層を減圧下濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(R)−(4−メトキシフェニル) 2−メチルグリシジルエーテル(20)16.1g(0.083mol、収率83.0%、光学純度99%ee)を白色結晶として得た。
【化20】

【0078】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.48(3H,s)、2.72(1H,d,J=4.9Hz)、2.86(1H,d,J=4.6Hz)、3.76(3H,s)、3.90(1H,d,J=10.8Hz)、3.98(1H,d,J=10.3Hz)、6.79−6.88(4H,m).
実施例11
(S)−(4−フルオロフェニル) 2−メチルグリシジルエーテル(21)の合成
の合成
(R)−2−メチルエピクロロヒドリン21.3g(0.200mol、光学純度99%ee)、塩化テトラn−ブチルアンモニウム347mg(1.25mmol)、トルエン38.1mLおよび水38.1mLの混合物を氷冷した。ここへ4−フルオロフェノール11.2g(0.100mol)を加えた後に、混合物を攪拌しながら24%水酸化ナトリウム水溶液33.3g(0.200mmol)を1時間かけて滴下した。全体を氷冷したまま30分間、さらに25℃で48時間撹拌した。反応終了後、水層を取り除き、トルエン層を5%塩酸で洗浄し、さらに水で洗浄した。トルエン層を減圧下濃縮して目的物である(S)−(4−フルオロフェニル) 2−メチルグリシジルエーテル(21)を定量値14.8g(0.081mol、収率81.5%、光学純度99%ee)で得た。
【化21】

【0079】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.48(3H,s)、2.73(1H,d,J=4.9Hz)、2.86(1H,d,J=4.7Hz)、3.91(1H,d,J=10.7Hz)、4.01(1H,d,J=10.2Hz)、6.77−7.02(4H,m).
実施例12
(S)−(4−メチルフェニル) 2−メチルグリシジルエーテル(22)の合成
の合成
(R)−2−メチルエピクロロヒドリン21.3g(0.200mol、光学純度99%ee)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム402mg(1.25mmol)、1,2−ジクロロエタン36.7mLおよび水36.7mLの混合物を氷冷した。ここへp−クレゾール10.8g(0.100mol)を加えた後に、混合物を攪拌しながら24%水酸化ナトリウム水溶液33.3g(0.200mmol)を1時間かけて滴下した。全体を氷冷したまま30分間、さらに25℃で48時間撹拌した。反応終了後、水層を取り除き、トルエン層を5%塩酸で洗浄し、さらに水で洗浄した。トルエン層を減圧下濃縮して目的物である(S)−(4−メチルフェニル) 2−メチルグリシジルエーテル(22)を定量値14.4g(0.081mol、収率81.0%、光学純度99%ee)で得た。
【化22】

【0080】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.48(3H,s)、2.45(3H,s)、2.72(1H,d,J=4.9Hz)、2.86(1H,d,J=4.7Hz)、3.91(1H,d,J=10.6Hz)、3.99(1H,d,J=10.1Hz)、6.57−7.12(4H,m).
比較例1
(R)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(19)の合成
(S)−2−メチルエピクロロヒドリン11.3g(0.106mol、光学純度99%ee)、トルエン17mLおよび水17mLの混合物を氷冷した。ここへフェノール5.0g(0.053mol)を加えた後に、混合物を攪拌しながら24%水酸化ナトリウム水溶液17.7g(0.106mol)を1時間かけて滴下した。全体を氷冷したまま30分間、さらに25℃で50時間撹拌した。反応終了後、水層を取り除き、トルエン層を5%塩酸で洗浄し、さらに水で洗浄した。トルエン層を減圧下濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(R)−フェニール 2−メチルグリシジルエーテル(19)5.9g(0.036mol、収率68%、光学純度92%ee)を白色結晶として得た。NMRのスペクトルデータは、実施例1と同様であった。
【0081】
参考例2((R)−2−メチルエピクロロヒドリンの合成)
実施例11における出発物質(R)−2−メチルエピクロロヒドリンは、次の方法で合成した。
【0082】
(R)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール7.0g(56.2mmol、光学純度99%ee)、2,6−ルチジン7.2g(56.2mmol)、及び1,2−ジクロロエタン35mLの混合物に、氷冷下p−トルエンスルホニルクロリド10.7g(56.2mmol)を加え、全体を25℃で12時間撹拌した。反応終了後、水を加え、有機層を取り出し、飽和食塩水で洗浄し、減圧下濃縮した。残った粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物である(R)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール13.3g(47.9mmol、収率85.2%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。
次いで、得られた(R)−3−クロロ−2−メチル−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−プロパノール6.80g(24.4mmol、光学純度99%ee)とジクロロメタン13.6mLの混合物に、24%水酸化ナトリウム水溶液4.47g(26.8mmol)を滴下し、全体を25℃で5時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタン層を取り出し、飽和食塩水で洗浄した後、減圧下濃縮した。残った粗生成物を減圧蒸留にて精製して目的物である(R)−2−メチルエピクロロヒドリン2.14g(20.1mmol、収率82.3%、光学純度99%ee)を無色透明油状物質として得た。

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明により得られるアリール 2−メチルグリシジルエーテル類は、特にその光学活性体においては、医薬品の原料として使用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Arは置換もしくは無置換芳香族基を意味する。]
で表されるアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法において、一般式(2)
【化2】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類を有機溶媒中で塩基の存在下、一般式(3)
【化3】

[式中、Arは上記と同義である。]
で表される水酸基含有アリール化合物と反応させ、アリールオキシ化により、一般式(4)
【化4】

[式中、Arは前記と同じ意味を表す。]
で表される3−アリールオキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類を得、ついでこれに有機溶媒中で塩基の存在下、一般式(5)
SOCl
(5)
[式中、Rは置換若しくは無置換アラルキル基、または置換若しくは無置換芳香族基を意味する。]
で表されるスルホニルハライド類を作用させ、1級水酸基のスルホニル化により、一般式(6)
【化5】

[式中、ArおよびRは上記と同義である。]
で表される3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類を得、ついでこれを一般式(7)
【化6】

[R、R、RおよびRは、同一又は異なり、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を意味し、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオンまたは水酸化物イオンを意味する。]
で表される第4級アンモニウム塩の存在下、非水溶性有機溶媒と塩基性水溶液の二相系でエポキシ化することにより、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)を製造することを特徴とするアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項2】
一般式(2)におけるハロゲン原子(X)が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される原子である請求項1記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項3】
水酸基含有アリール化合物(3)が、置換若しくは無置換フェノール、水酸基を有する多環式芳香族化合物、または水酸基を有する複素環式芳香族化合物である請求項1または2に記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項4】
置換フェノールの置換基が、飽和もしくは不飽和アルキル基、エーテル結合を有するアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アミド基、カルバモイル基、アシル基、ニトロ基、または、フェノールの隣接炭素原子と一緒に環を形成するテトラメチレン基若しくはメチレンジオキシ基である請求項3に記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項5】
アリールオキシ化に使用する塩基が、アルカリ金属の水素化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭素数1〜4の低級アルキルアルコールのアルカリ金属塩、およびアルカリ金属のフッ化物塩からなる群より選択される少なくとも1つ請求項1から4のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項6】
アリールオキシ化に使用する塩基が、水素化ナトリウム、炭酸カリウムおよびフッ化セシウムからなる群より選択される化合物である請求項1から5のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項7】
スルホニルハライド(5)が、置換若しくは無置換アラルキルスルホニルハライド、置換若しくは無置換芳香族スルホニルハライドである請求項1から6のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項8】
スルホニル化に用いる塩基がトリアルキルアミン類、トリアリールアミン類、ピリジンおよびピリジン誘導体からなる群より選択される請求項1から7のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項9】
エポキシ化に用いる塩基がアルカリ金属の水酸化物である請求項1から8のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項10】
3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類(2)として光学活性体を用い、光学活性アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)を製造する請求項1から9のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項11】
一般式(1)
【化7】

[式中、Arは置換もしくは無置換芳香族基を意味する。]
で表されるアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法において、一般式(4)
【化8】

[式中、Arは上記と同義である。]
で表される3−アリールオキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール類に有機溶媒中で塩基の存在下、一般式(5)
SOCl
(5)
[式中、Rは置換若しくは無置換アラルキル基、または置換若しくは無置換芳香族基を意味する。]
で表されるスルホニルハライド類を作用させ、1級水酸基のスルホニル化により、一般式(6)
【化9】

[式中、ArおよびRは上記と同義である。]
で表される3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類を得、ついでこれを一般式(7)
【化10】

[R、R、RおよびRは、同一又は異なり、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を意味し、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオンまたは水酸化物イオンを意味する。]
で表される第4級アンモニウム塩の存在下、非水溶性有機溶媒と塩基性水溶液の二相系でエポキシ化することにより、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)を製造することを特徴とするアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項12】
一般式(1)
【化11】

[式中、Arは置換もしくは無置換芳香族基を意味する。]
で表されるアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法において、一般式(6)
【化12】

[式中、Arは上記と同義である。Rは置換若しくは無置換アラルキル基、または置換若しくは無置換芳香族基を意味する。]
で表される3−アリールオキシ−2−メチル−1−スルホニルオキシ−2−プロパノール類を一般式(7)
【化13】

[R、R、RおよびRは、同一又は異なり、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を意味し、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオンまたは水酸化物イオンを意味する。]
で表される第4級アンモニウム塩の存在下、非水溶性有機溶媒と塩基性水溶液の二相系でエポキシ化することにより、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)を製造することを特徴とするアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項13】
一般式(8)
【化14】

[式中、Arは置換もしくは無置換芳香族基を意味する。]
で表されるアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法において、一般式(9)
【化15】

[式中、Xはハロゲン原子を意味する。]
で表される2−メチルエピハロヒドリン類を塩基、および一般式(10)
【化16】

[R1、R2、R3およびR4は、同一又は異なり、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を意味し、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオンまたは水酸化物イオンを意味する。]
で表される第四級アンモニウム塩の存在下、一般式(11)
【化17】

[式中、Arは上記と同義である。]
で表される水酸基含有アリール化合物と、非水溶性有機溶媒と水溶液の二相系中で反応させることにより、アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(1)を製造することを特徴とするアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項14】
一般式(2)におけるハロゲン原子Xが、フッ素原子,塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される原子である請求項13記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項15】
水酸基含有アリール化合物が、置換若しくは無置換フェノール、水酸基を有する多環式芳香族化合物、または、水酸基を有する複素環式芳香族化合物である請求項13または14に記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項16】
置換フェノールの置換基が、飽和もしくは不飽和アルキル基、エーテル結合を有するアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アミド基、カルバモイル基、アシル基、ニトロ基、または、隣接する炭素原子間で橋を形成しているテトラメチレン基若しくはメチレンジオキシ基である請求項13から15のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項17】
塩基がアルカリ金属の水酸化物である請求項13から16のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項18】
非水溶性有機溶媒が、トルエン、tert−ブチルメチルエーテルまたは1,2−ジクロロエタンである請求項13から17のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。
【請求項19】
2−メチルエピハロヒドリン類(9)として光学活性体を用い、光学活性アリール 2−メチルグリシジルエーテル類(8)を製造する請求項13から18のいずれかに記載のアリール 2−メチルグリシジルエーテル類の製造法。


【公開番号】特開2007−297321(P2007−297321A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125886(P2006−125886)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】