説明

アルカジエニル基を側鎖として有する化合物およびこれを用いた液晶組成物

【課題】熱、光などに対する安定性、小さな粘度、適切大きさの屈折率異方性値、適切な大きさの誘電率異方性値および急峻な電気光学特性、ネマチック相の広い温度範囲、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物、特にネマチック相の広い温度範囲を有する液晶性化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物。


[R1は水素、アルキル又はアルケニルを、環A1はハロゲン置換可の1,4−フェニレンを、環A2および環A3はハロゲン置換可の例えば1,4−フェニレンを、Z1、Z2およびZ3は、例えば単結合又は−CH2CH2−を、L1およびL2は、水素またはフッ素を、X1は水素、フッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF5、または−Q−Wで示される基を、Qは単結合、酸素、または硫黄を、Wは少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルキルを、n、mは0または1を、pは1〜4の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示素子用の材料として有用な新規液晶性化合物およびこの化合物を含有する液晶組成物に関する。詳しくは低い粘性、他の液晶化合物との良好な相溶性を持ち、加えて適切な大きさの屈折率異方性値および誘電率異方性値を有し、液晶表示素子に使用した場合には急峻な電気光学特性を得ることができる新規液晶性化合物およびこの化合物を含有する液晶組成物ならびにこの液晶組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(Bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(opticallycompensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)などである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PM(passive matrix)はスタティック(static)とマルチプレックス
(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metalinsulator metal)などに分類される。
【0003】
これらの液晶表示素子は、適切な物性を有する液晶組成物を含有する。液晶表示素子の特性を向上させるには、この液晶組成物が適切な物性を有するのが好ましい。液晶組成物の成分である液晶性化合物に必要な一般的物性は、次のとおりである。
(1)化学的な安定性と物理的な安定性。
(2)高い透明点。透明点は、液晶相−等方相の転移温度である。
(3)液晶相の低い下限温度。液晶相は、ネマチック相、スメクチック相などを意味する。
(4)小さな粘度。
(5)適切な光学異方性。
(6)適切な誘電率異方性。大きな誘電率異方性を有する化合物は、大きな粘度を有することが多い。
(7)大きな比抵抗。
【0004】
液晶組成物は多くの液晶性化合物を混合して調製される。したがって、液晶性化合物は他の液晶性化合物とよく混和するのが好ましい。液晶表示素子を氷点下の温度で使うこともあるので、低い温度で良好な相溶性を有する液晶性化合物が好ましい。高い透明点または液晶相の低い下限温度を有する液晶性化合物は、液晶組成物におけるネマチック相の広い温度範囲に寄与する。好ましい液晶組成物は、小さな粘度と液晶表示素子のモードに適した光学異方性を有する。液晶性化合物の大きな誘電率異方性は、液晶組成物の低いしきい値電圧に寄与する。このような液晶組成物によって、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、駆動電圧が小さい、消費電力が小さい、電圧保持率が大きいなどの特性を有する液晶表示素子を得ることができる。
【0005】
従来、TN、STN、TFTなどの液晶表示素子に好適に用いられることができる液晶性化合物として、側鎖にアルケニル基を持つ化合物が種々合成され、そのうちのいくつかは実用的に用いられている。例えば、非特許文献1および特許文献1に下記(s−1)〜(s−3)式で示される化合物が、特許文献2に下記(s−4)および(s−5)式で示される化合物が、特許文献3に下記(s−6)および(s−7)式で示される化合物が開示されている。また、特許文献4〜6に(s−8)および(s−9)式で示される化合物
および組成物が開示されている。さらに二重結合にフッ素が直結した下記の(s−10)および(s−11)式で示される化合物が特許文献7に、下記の(s−12)式で示される化合物が特許文献8に開示されている。
【0006】
しかし、(s−1)〜(s−7)式で示される化合物は、いずれもスメクチック性が強く、組成物中に大量に使用できない。さらに(s−4)〜(s−7)式で示される化合物は粘性が高く、(s−8)〜(s−12)式で示される化合物は光学安定性や熱安定性が十分でない場合がある。
【0007】
【化1】

【0008】
また、他にアルカジエニル基を側鎖に有する化合物として特許文献9に(s−13)式で示される化合物が、特許文献10に(s−14)式で示される化合物が開示されている。
【0009】
また、特許文献11には(s−15)式で示される末端基がハロゲン等の極性基であるが開示されているが、アルカジエニル基とを同時に持つ化合物は開示されていない。
【0010】
【化2】

【0011】
(s−13)式および(s−14)式で示される化合物はいずれも誘電率異方性値が小さく、これらを含有する液晶組成物ではその駆動電圧を下げることができない。さらに、(s−13)式で示される化合物は粘性が高い上に屈折率異方性値も小さく、(s−14)式で示される化合物においては安定性が極端に悪い。また、(s−15)式で示される化合物は、弾性定数比(K33/K11)が小さい、相溶性が充分でない、ネマチック相の上限温度が低い等のさらに改良の求められる点があり、さらに好ましい液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子が依然として望まれている。
【0012】
【特許文献1】特開平61−83136号公報
【特許文献2】特願平6−92740号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第19520246号明細書
【特許文献4】特開2002−294237号公報
【特許文献5】特開平10−102060号公報
【特許文献6】特開2005−132998号公報
【特許文献7】特表平6−500343号公報
【特許文献8】特表平4−502627号公報
【特許文献9】国際公開第96/022261号パンフレット
【特許文献10】特表2001−500894号公報
【特許文献11】国際公開第2002/093244号パンフレット
【非特許文献1】Mol. Cryst. Liq. Cryst., 122, 241 (1885)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の第一の目的は、液晶性化合物に必要な一般的物性、すなわち熱、光などに対する安定性、小さな粘度、適切な大きさの屈折率異方性値、適切な大きさの誘電率異方性値および急峻な電気光学特性、ネマチック相の広い温度範囲、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供することであり、特にネマチック相の広い温度範囲を有する液晶性化合物を提供することである。第二の目的は、この液晶性化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、および低いしきい値電圧を有する液晶組成物を提供することであり、特にネマチック相の高い上限温度およびネマチック相の低い下限温度を有する液晶組成物を提供することである。第三の目的は、この組成物を含有し、使用できる広い温度範囲、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト、および低い駆動電圧を有する液晶表示素子を提供することであり、特に、使用できる広い温度範囲を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、分子の一方の末端にアルカジエニル基を、他方の末端にハロゲン等の極性基を有する化合物が極めて大きな弾性定数比(K33/K11)、非常に低い粘性、高い化学的安定性、広いネマチック相温度範囲、大きな屈折率異方性値および誘電率異方性値を持つことを見出した。さらに上記化合物を含有する液晶組成物を用いると、急峻な電気光学特性、短い応答時間、広い動作温度範囲および駆動電力が小さい液晶表示素子を作製できることを見出した。従って、上記化合物は液晶表示素子、特に現在広く利用されているTN、STN、TFTなどの液晶表示素子に好適であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
本発明の要旨は下記の項1から項31のとおりである。
1. 一般式(1)で表される化合物。
【0016】
【化3】

【0017】
[式中、R1は水素、炭素数1〜5のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルであり;
環A1は1,4−フェニレンであり、この環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、環A2および環A3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、または1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの環において任意の−CH2−は、−O−または−S−により置き換えられていてもよく、任意の−CH=は、−N=により置き換えられていてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
1、Z2およびZ3は独立して、単結合、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、−CF=CF−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−であり;
1およびL2は独立して、水素またはフッ素であり;
1は水素、フッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF5、または−Q−Wで示される基であり、Qは単結合、酸素、または硫黄であり、Wは少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1〜5のアルキルであり;
n、mは独立して、0または1であり、pは1〜4の整数である。]
2. 環A1、環A2および環A3が独立して、1,4−フェニレンまたはハロゲン化された1,4−フェニレンである、項1に記載の化合物。
3. 環A1、環A2および環A3のうち少なくとも1つがハロゲン化された1,4−フェニレンであり、ハロゲン化された1,4−フェニレンがフッ素化された1,4−フェニレンである、項2に記載の化合物。
4. 前記フッ素化された1,4−フェニレンが、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである、項3に記載の化合物。
5. 環A1、環A2および環A3のうち少なくとも1つがピリミジン−2,5−ジイルである、項1に記載の化合物。
6. Z1、Z2およびZ3のうち少なくとも1つが単結合である、項1〜5のいずれかに記載の化合物。
7. Z1、Z2およびZ3のいずれか1つが、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2
、または−CF=CF−である、項6に記載の化合物。
8. Z1、Z2およびZ3がいずれも単結合である、項6に記載の化合物。
9. L1、L2およびX1のうち少なくとも1つがハロゲンである、項1〜8のいずれかに記載の化合物。
10. 下記のいずれか1つの一般式で表される項1に記載の化合物。
一般式(1)においてp=1、n=m=0である下記の一般式(1−a)で表される化合物、
一般式(1)においてp=1、n=0、m=1である下記の一般式(1−b)で表される化合物、または、
一般式(1)においてp=1、n=m=1である下記の一般式(1−c)で表される化合物。
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、R1は水素、炭素数1〜5のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルであり;
環A1は1,4−フェニレンであり、この環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、環A2および環A3は独立して、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、または1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、1,4−フェニレンにおいて任意の−CH=は、−N=により置き換えられていてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
1、Z2およびZ3は独立して、単結合、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、または−CF=CF−であり;
1およびL2は独立して、水素またはフッ素であり;
1はフッ素、塩素、−C≡N、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fである。]
11. 環A1、環A2および環A3が独立して、1,4−フェニレンまたはハロゲン化された1,4−フェニレンである、項10に記載の化合物。
12. 環A1、環A2および環A3のうち少なくとも1つが、ハロゲン化された1,4−フェニレンであり、ハロゲン化された1,4−フェニレンがフッ素化された1,4−フェニレンである、項11に記載の化合物。
13. 前記フッ素化された1,4−フェニレンが、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである項12に記載の化合物。
14. 環A1、環A2および環A3のうち少なくとも1つがピリミジン−2,5−ジイルである、項10に記載の化合物。
15. Z1、Z2およびZ3のうち少なくとも1つが単結合である、項10〜14のいず
れかに記載の化合物。
16. Z1、Z2およびZ3のいずれか1つが、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、または−OCH2−である、項15に記載の化合物。
17. Z1、Z2およびZ3がいずれも単結合である、項15に記載の化合物。
18. L1、L2およびX1のうち少なくとも1つがハロゲンである、項10〜17のいずれかに記載の化合物。
19. 下記の一般式(1−1)〜(1−48)のいずれか1つの式で表される項1に記載の化合物。
【0020】
【化5】




【0021】
[式中、R1は水素、炭素数1〜5のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルであり;
1、L2およびY1〜Y6は独立して、水素またはフッ素であり;
1はフッ素、塩素、−C≡N、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fである。]
20. 下記の一般式(1−49)〜(1−51)のいずれか1つの式で表される項1に記載の化合物。
【0022】
【化6】

【0023】
[式中、L1、L2およびY1〜Y3は独立して、水素またはフッ素であり;
1はフッ素または塩素である。]
21. 項1〜20のいずれかに記載の化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする、2成分以上からなる液晶組成物。
22. 一般式(2)、(3)および(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項21に記載の液晶組成物。
【0024】
【化7】

【0025】
[式中、R2は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、アルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
2はフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環Bおよび環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Eは、1,4−シクロヘキシレンまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
4およびZ5は独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、または単結合であり;
3およびL4は独立して、水素またはフッ素である。]
23. 一般式(5)および(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項21に記載の液晶組成物。
【0026】
【化8】

【0027】
[式中、R3およびR4は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、アルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
3は、−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Gは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、環Jは、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Kは、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;
6は、−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、または単結合であり;
5、L6およびL7は独立して、水素またはフッ素であり;
b、cおよびdは独立して、0または1である。]
24. 一般式(7)、(8)、(9)、(10)および(11)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項21に記載の液晶組成物。
【0028】
【化9】

【0029】
[式中、R5は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、アルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
6はフッ素、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、このアルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
環Mおよび環Pは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、またはデカヒドロ−2,6−ナフチレンであり;
7およびZ8は独立して、−(CH22−、−COO−、または単結合であり;
8、L9、L10およびL11は独立して、水素またはフッ素であって、L8、L9、L10およびL11の少なくとも1つはフッ素である。]
25. 一般式(12)、(13)および(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項21に記載の液晶組成物。
【0030】
【化10】

【0031】
[式中、R7およびR8は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、このアルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
環J、環Tおよび環Uは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2、5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
9およびZ10は独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。]
26. 一般式(5)および(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項22に記載の液晶組成物。
27. 一般式(12)、(13)および(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項22に記載の液晶組成物。
28. 一般式(12)、(13)および(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項23に記載の液晶組成物。
29. 一般式(12)、(13)および(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項24に記載の液晶組成物。
30. 少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、項21〜29のいずれかに記載の液晶組成物。
31. 項21〜30のいずれかに記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0032】
本発明の化合物は、液晶性化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、小さな粘度、適切な大きさの光学異方性、適切な大きさの誘電率異方性および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する。本発明の液晶組成物は、これらの化合物の少なくとも一つを含有し、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な大きさの光学異方性、低いしきい値電圧を有する。本発明の液晶表示素子は、この組成物を含有し、そして使用できる広い温度範囲、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト比、および低い駆動電圧を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)から式(14)において、六角形で囲んだA1、B、D、Eなどの記号はそれぞれ環A1、環B、環D、環Eなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全質量に基づいた質量百分率(質量%)である。以下に本発明をさらに説明する。
【0034】
第一に、本発明の化合物(1)をさらに説明する。化合物(1)について表25に記載したように、左末端基、結合基、環構造、および右末端基の構造に分けて、各構造について説明する。化合物(1)はアルケニルを有する二環、三環または四環の化合物である。なお、ナフタレン環などの縮合環は一環と数える。この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶性化合物との相溶性がよい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。この組成物を低い温度で保管しても、この化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。この化合物は、化合物に必要な一般的物性、適切な光学異方性、そして適切な誘電率異方性を有する。
【0035】
化合物(1)の末端基、環構造および結合基を適切に選択することによって、光学異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。化合物(1)における好ましい末端基、環A1、A2およびA3、結合基Z1、Z2およびZ3とそれらの種類が、化合物(1)の物性に与える効果を以下に説明する。
【0036】
化合物(1)における左末端基において、R1が直鎖であるときは液晶相の温度範囲が広くそして粘度が小さい。R1が分岐鎖であるときは他の液晶性化合物との相溶性がよい。R1が光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。R1が光学活性基でない化合物は組成物の成分として有用である。R1がアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。アルケニルの好ましい立体配置と、上限温度または液晶相の温度範囲との関係について、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0037】
左末端基において、R1は、水素、炭素数1〜5のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルである。ここでアルケニルは、アルキルにおいて任意の−(CH22−が、−CH=CH−などで置き換えられた基であり、一例で示す。CH3(CH23−において任意の−(CH22−を−CH=CH−で置き換えた基の例は、H2C=CH−(CH22−、CH3−CH=CH−CH2−などである。このように「任意の」語は、「区別なく選択された少なくとも一つの」を意味する。化合物の安定性を考慮して、二重結合が隣接したCH2=CH−CH=CH−CH2−CH2−よりも、二重結合が隣接しないCH2=CH−CH2−CH2−CH=CH−の方が好ましい。
【0038】
1が、アルキルおよびアルケニルである場合、分岐よりも直鎖の方が好ましい。R1が分岐の基であっても光学活性であるときは好ましい。
【0039】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH3、−CH=CHC25、−CH=CHC37および−CH=CHC49のような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CH2CH=CHCH3、−CH2CH=CHC25、および−CH2CH=CHC37のような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。
【0040】
好ましいR1の具体的な例は、−H、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−CH=CH2、−CH=CHCH3、−CH2CH=CH2、−CH=CHC25、−CH2CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、−CH=CHC37、−CH2CH=CHC25、−(CH22CH=CHCH3および−(CH23CH=CH2である。
【0041】
さらに好ましいR1の具体的な例は、−H、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−CH2CH=CH2、−CH2CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、−CH2CH=CHC25、−(CH22CH=CHCH3および−(CH23CH=CH2である。
【0042】
最も好ましいR1の具体的な例は、−H、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−(CH22CH=CH2、および−(CH22CH=CHCH3である。
【0043】
左末端基において、pは1〜4のいずれかの整数を示し、好ましくはpは1である。
【0044】
化合物(1)における右末端基において、X1は水素、フッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF5、または−Q−Wで示される基であり、Qは単結合、酸素、または硫黄であり、Wは少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1〜5のアルキル基である。右末端基に関しては、化合物の用途に応じて下記の具体例を参照し選択することができる。
【0045】
好ましいX1は水素、フッ素、塩素、−C≡N、または−Q−Wで示される基であり、Qは単結合、酸素、硫黄であり、Wは少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1〜5のアルキルである。
【0046】
さらに好ましいX1はフッ素、塩素、−C≡N、または−Q−Wで示される基であり、Qは単結合、酸素であり、Wは少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1〜5のアルキルである。
【0047】
より好ましいX1はフッ素、塩素、−C≡N、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fである。
【0048】
さらに好ましいX1はフッ素、塩素、−C≡N、−OCF3、または−OCHF2である。
【0049】
最も好ましいX1はフッ素または塩素である。
【0050】
Wは少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1〜5のアルキルである。好ましいハロゲンはフッ素および塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。これらの基において分岐よりも直鎖の方が好ましい。
【0051】
少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられたアルキルの具体的な例は、−CH2F、−CHF2、−CF3、−(CH22F、−CF2CH2F、−CF2CHF2、−CH2CF3、−CF2CF3、−(CH23F、−(CF22CF3、−CF2CHFCF3、−CHFCF2CF3、−(CH24F、−(CF23CF3、−(CH25Fおよび−(CF24CF3などである。
【0052】
好ましいWの具体的な例は、−CF3、−CHF2、−CH2F、−(CH22F、−CF2CH2F、−CF2CHF2、−CH2CF3、−CF2CF3、−(CH23F、−(CF22CF3、−CF2CHFCF3、−CHFCF2CF3、−(CH24F、−(CF23CF3、−(CH25Fおよび−(CF24CF3である。
【0053】
さらに好ましいWの具体的な例は、−CF3、−CHF2、−CH2F、−(CH22F、−CF2CH2F、−CF2CHF2、−CH2CF3、−CF2CF3、−(CH23F、−(CF22CF3、−CF2CHFCF3、−CHFCF2CF3、−(CH24F、−(CF23CF3および−(CH25F、−(CF24CF3である。
【0054】
最も好ましいWの具体的な例は、−CF3、−CHF2、−CH2F、−(CH22F、−CF2CH2F、−CF2CHF2、−CH2CF3、−CF2CF3、−(CH23F、−(CF22CF3、−CF2CHFCF3および−CHFCF2CF3である。
【0055】
右末端基の結合する環構造において、L1およびL2は独立して、水素またはフッ素である。
【0056】
化合物(1)は、誘電率異方性が正に大きい。大きな誘電率異方性を有する化合物は、
組成物のしきい値電圧を下げるための成分として有用である。
【0057】
化合物(1)における環構造としては、環A1は1,4−フェニレンであり、この環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、環A2および環A3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルおよび1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの環において任意の−CH2−は、−O−、および−S−により置き換えられていてもよく、任意の−CH=は、−N=により置き換えられていてもよい。これらの環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0058】
「これらの環において任意の−CH2−は、−O−、および−S−により置き換えられていてもよく、任意の−CH=は、−N=により置き換えられていてもよい」好ましい環の例は、下記の環(15−1)〜(15−31)などである。さらに好ましい例は、環(15−1)、(15−2)、(15−3)、(15−4)、(15−9)、(15−10)、(15−11)および(15−12)である。
【0059】
【化11】

【0060】
「これらの環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい」環の例は、下記の環(16−1)〜(16−30)などである。好ましい例は、環(16−1)、(16−2)、(16−3)および(16−4)である。
【0061】
【化12】

【0062】
好ましい環A2およびA3の例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルおよびピリダジン−3,6−ジイルである。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスが好ましい。1,3−ジオキサン−2,5−ジイルは、4,6−ジオキサン−2,5−ジイルと構造的に同一であるので、後者は例示しなかった。この規則は、2−フルオロ−1,4−フェニレンと3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンと3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンの関係などにも適用される。
【0063】
より好ましい環A2およびA3の例は、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイルおよびピリミジン−2,5−ジイルである。
【0064】
最も好ましい環A1、A2およびA3の例は、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0065】
環A1、A2およびA3のいずれかまたは全てが、任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは誘電率異方性が大きい。
【0066】
環A1、A2およびA3のいずれかまたは全てが、任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレンまたはピリジン−2,5−ジイルであるときは光学異方性が大きい。環A1、A2およびA3のいずれかまたは全てが、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは光学異方性が小さい。
【0067】
少なくとも二つの環が1,4−シクロヘキシレンであるときは、上限温度が高く、光学異方性が小さく、そして粘度が小さい。少なくとも一つの環が1,4−フェニレンのときは、光学異方性が比較的大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が大きい。少なくとも二つの環が1,4−フェニレンであるときは、光学異方性が大きく、液晶相の温度範囲が広く、そして上限温度が高い。
【0068】
化合物(1)における結合基である、Z1、Z2およびZ3は独立して、単結合、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、−CF=CF−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−を示す。−CH=CH−のような結合基の二重結合に関する立体配置はシスよりもトランスが好ましい。
【0069】
好ましいZ1、Z2およびZ3は、単結合、−CH2CH2−、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、および−C≡C−である。
【0070】
さらに好ましいZ1、Z2およびZ3は、単結合、−CH2CH2−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、および−C≡C−である。
【0071】
最も好ましいZ1、Z2およびZ3は、単結合である。
【0072】
結合基Z1、Z2、またはZ3のいずれかまたは全てが単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH22CF2O−、−OCF2(CH22−、または−(CH24−であるときは粘度が小さい。結合基のいずれかまたは全てが単結合、−(CH22−、−CF2O−、−OCF2−、または−CH=CH−であるときは粘度がより小さい。結合基のいずれかまたは全てが、−CH=CH−であるときは液晶相の温度範囲が広く、そして弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)が大きい。結合基のいずれかまたは全てが、−C≡C−のときは光学異方性が大きい。
【0073】
化合物(1)が二環または三環を有するときは粘度が小さい。化合物(1)が三環または四環を有するときは上限温度が高い。以上のように、末端基、環構造および結合基の種類、環の数を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)はPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に用いられる組成物の成分として有用である。
【0074】
化合物(1)の好ましい例は、前記本発明の項10に記載した化合物(1−a)〜(1−c)である。より具体的な例は、下記の化合物(1−a−i)〜(1−c−i)である。これらの化合物におけるR1、L1、L2、X1、Z1、Z2およびZ3の記号の意味は、項10に記載した記号の意味と同一である。Y1〜Y6は、独立して、水素またはフッ素である。
【0075】
【化13】

【0076】
さらに具体的な例は、下記の化合物(1−a−1)〜(1−a−3)、(1−b−1)〜(1−b−6)および(1−c−1)〜(1−c−8)である。これらの化合物におけるR1、L1、L2、X1、Z1、Z2およびZ3の記号の意味は、項10に記載した記号の意味と同一である。
【0077】

【化14】


【0078】
他の具体的な例は、下記の化合物(1−1)〜(1−48)である。これらの化合物におけるR1、L1、L2、X1、Y1〜Y6の記号の意味は、項19に記載した記号の意味と同一である。
【0079】

【化15】




【0080】
好ましい例は、下記の化合物(1−49)〜(1−51)である。これらの化合物におけるL1、L2、X1、Y1〜Y3の記号の意味は、項20に記載した記号の意味と同一である。
【0081】
【化16】

【0082】
この明細書において構造が明らかにされた化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成することができる。出発物に目的の末端基、環構造および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。
【0083】
結合基Z1、Z2、またはZ3を生成する方法の一例に関して、最初にスキームを示し、次に項(I)〜項(XI)でスキームを説明する。このスキームにおいて、MSG1またはMSG2は少なくとも一つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG1(またはMSG2)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から(1K)は化合物(1)に相当する。
【0084】

【化17】


【0085】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸(21)と公知の方法で合成される化合物(22)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(22)を反応させることによっても合成される。
【0086】
(II)−COO−と−OCO−の生成
化合物(23)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。化合物(24)と、公知の方法で合成されるフェノール(25)とをDDC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成する。
【0087】
(III)−CF2O−と−OCF2−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(26)を得る。化合物(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CF2O−を有する化合物(1C)を合成する。さらにM. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(26)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。さらにW. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF2−を有する化合物も合成する。Peer. Kirsch et al., Anbew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこれらの結合基を生成させることも可能である。
【0088】
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0089】
(V)−(CH22−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0090】
(VI)−(CH24−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(29)を用い、項(IV)の方法に従って−(CH22−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0091】
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(23)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(30)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(30)を化合物(22)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0092】
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(31)を得る。化合物(22)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(31)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0093】
(IX)−CH2O−または−OCH2−の生成
化合物(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(32)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(33)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(33)を化合物(25)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0094】
(X)−(CH23O−または−O(CH23−の生成
化合物(28)の代わりに化合物(34)を用いて、項(IX)の方法に従って化合物(1K)を合成する。
【0095】
次に式(T−1)で表される化合物にアルカジエニル基を導入する方法の具体例を下記のスキームに示す。ただし、下記反応経路においてR1、A1、A2、A3、Z1、Z2、Z3、L1、L2、X1、n、m、pは前記と同一の意味を示す。
【0096】
【化18】

【0097】
特公平7−2653号、特公平7−2654号、特開平5−286873号および特願平7−310039号等の方法に準じて製造したアルデヒド体(T−1)を製造する。ついで、製造したアルデヒド体(T−1)にアルケニルハライドのホスホニウム塩(T−5)とカリウム−t−ブトキシドから調整したイリドを作用させてシスオレフィン(T−2)を製造する。
【0098】
シスオレフィン(T−2)にメタクロロ過安息香酸(T−6)を作用させてエポキシド(T−3)に変換した後、このエポキシド(T−3)にジブロモトリフェニルホスホラン(T−7)を作用させてanti−ジブロミド(T−4)とし、次いで還元的に脱臭素反応を行い本発明の化合物(1)を製造することができる。
【0099】
第二に、本発明の組成物をさらに説明する。この組成物の成分は化合物(1)から選ばれた2種類以上の複数の化合物のみであってもよい。好ましい組成物は化合物(1)から選択された少なくとも一つの化合物を1〜99%の割合で含有する。この組成物は、さらに、化合物(2)〜(14)の群から選択された成分を含有することができる。組成物を調製するときには、化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択する。
【0100】
誘電率異方性が正に大きい化合物(1)を含有する好ましい組成物は次のとおりである。この好ましい組成物は化合物(2)、(3)および(4)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、化合物(5)および(6)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、このような二つの群のそれぞれから選択された少なくとも二つの化合物を含有する。これらの組成物は、液晶相の温度範囲、粘度、光学異方性、誘電率異方性、しきい値電圧などを調整する目的で、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。これらの組成物は、物性をさらに調整する目的で、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。これらの組成物は、AM−TN素子、STN素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0101】
別の好ましい組成物は化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。この組成物は、物性をさらに調整する目的で、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、AM−TN素子、STN素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0102】
誘電率異方性が小さい化合物(1)を含有する好ましい組成物は次のとおりである。好ましい組成物は化合物(2)、(3)および(4)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、化合物(5)および(6)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、このような二つの群のそれぞれから選択された少なくとも二つの化合物を含有する。これらの組成物は、液晶相の温度範囲、粘度、光学異方性、誘電率異方性、しきい値電圧などを調整する目的で、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、物性をさらに調整する目的で、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、AM−TN素子、STN素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0103】
別の好ましい組成物は、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。この組成物は、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、物性をさらに調整する目的で、化合物(2)〜(6)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、VA素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0104】
化合物(2)、(3)および(4)は、誘電率異方性が正に大きいので、AM−TN素
子用の組成物に主として用いられる。この組成物において、これらの化合物の量は1〜99%である。好ましい量は10〜97%である。より好ましい量は40〜95%である。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、この化合物の好ましい量は60%以下である。より好ましい量は40%以下である。
【0105】
化合物(5)および(6)は、誘電率異方性が正に非常に大きいので、STN素子用の組成物に主として用いられる。この組成物において、これらの化合物の量は1〜99%である。好ましい量は10〜97%である。より好ましい量は40〜95%である。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、この化合物の好ましい量は60%以下である。より好ましい量は40%以下である。
【0106】
化合物(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)は、誘電率異方性が負であるので、VA素子用の組成物に主として用いられる。これらの化合物の好ましい量は80%以下である。より好ましい量は40〜80%である。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、この化合物の好ましい量は60%以下である。より好ましい量は40%以下である。
【0107】
化合物(12)、(13)および(14)の誘電率異方性は小さい。化合物(12)は粘度または光学異方性を調整する目的で主に使用される。化合物(13)および(14)は上限温度を上げて液晶相の温度範囲を広げる、または光学異方性を調整する目的で使用される。化合物(12)、(13)および(14)の量を増加させると組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が小さくなる。したがって、組成物のしきい値電圧の要求値を満たすかぎり多量に使用してもよい。
【0108】
好ましい化合物(2)〜(14)は、例えば、それぞれ化合物(2−1)〜(2−9)、化合物(3−1)〜(3−97)、化合物(4−1)〜(4−33)、化合物(5−1)〜(5−56)、化合物(6−1)〜(6−3)、化合物(7−1)〜(7−4)、化合物(8−1)〜(8−6)、化合物(9−1)〜(9−4)、化合物(10−1)、化合物(11−1)、化合物(12−1)〜(12−11)、化合物(13−1)〜(13−21)、および化合物(14−1)〜(14−6)である。これらの化合物において、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、X2、およびX3の記号の意味は、化合物(2)〜(14)におけるこれらの記号の意味と同一である。
【0109】

【化19】














【0110】
本発明の組成物は公知の方法によって調製される。例えば、成分である化合物を混合し、加熱によって互いに溶解させる。組成物に適当な添加物を加えて組成物の物性を調整してもよい。このような添加物は当業者によく知られている。メロシアニン、スチリル、アゾ、アゾメチン、アゾキシ、キノフタロン、アントラキノン、テトラジンなどの化合物である二色性色素を添加してGH素子用の組成物を調製してもよい。一方、液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与える目的でキラルドーパントが添加される。キラルドーパントの例は、例えば、下記の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)である。
【0111】
【化20】

【0112】
キラルドーパントを組成物に添加してねじれのピッチを調整する。TN素子およびTN−TFT素子用の好ましいピッチは40〜200μmの範囲である。STN素子用の好ましいピッチは6〜20μmの範囲である。BTN素子用の好ましいピッチは1.5〜4μmの範囲である。PC素子用の組成物にはキラルドーパントを比較的多量に添加する。ピ
ッチの温度依存性を調整する目的で少なくとも二つのキラルドーパントを添加してもよい。
【0113】
本発明の組成物は、PC、TN、STN、BTN,ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に使用できる。これらの素子は駆動方式がPMであってもよいし、またはAMであってもよい。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例によって制限されない。得られた化合物はNMRスペクトル、質量スペクトルなどで構造を同定した。これらによる測定方法は後述する方法に従った。
【0115】
1H−NMR分析:測定は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)製)を用いた。CDCl3など重水素化されたサンプルが可溶な溶媒に溶解させた溶液を、室温にて核磁気共鳴装置を用いて測定した。なお、δ値のゼロ点の基準物質にはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0116】
ガスクロマトグラフ分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2ml/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent TechnologiesInc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、180℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1質量%)に調製したあと、その1μlを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0117】
[実施例1]
3,4,5,2′−テトラフルオロ−4″−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニル(1−b−2−2)を下記に示す合成スキームに従って合成した。
【0118】
【化21】

【0119】
3′−フルオロ−ビフェニル−4−カルバルデヒド(T−8)の合成
4−ブロモベンズアルデヒド (32.0g)、3−フルオロフェニルボロン酸(25.4g)、炭酸カリウム(47.7g)およびPd(PPh32Cl2 (1.21g)をソルミックス (400ml)に溶解させ、窒素雰囲気下4時間加熱還流した。反応終了後セライトろ過し、ろ液をトルエンにて抽出した。有機層を2N水酸化ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒色油状物を得た。このものをヘプタン−トルエンにて再結晶することにより、3′−フルオロ−ビフェニル−4−カルバルデヒド(T−8)を淡黄色粉末として(25.3g)得た。
【0120】
(T−10)の合成
1時間真空乾燥したホスホニウム塩 (T−9)(51.4g)に乾燥テトラヒドロフラン(THF)(200ml)を加え、−70℃まで冷却した。窒素雰囲気下カリウム−t−ブトキシド(13.4g)を少量ずつ分割して加え1時間撹拌した。その後3′−フルオロ−ビフェニル−4−カルバルデヒド(20.0g)のdryTHF溶液を−70℃でゆっくりと滴下し、室温まで昇温して4時間撹拌した。反応終了後トルエンにて抽出し
、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=20:1(容量比))、及びヘプタンにて再結晶することにより、(T−10)を白色粉末として(16.9g)得た。
【0121】
(T−11)の合成
上記操作で得られた化合物(T−10)(16.3g)をトルエン(100ml)、イソプロピルアルコール(IPA)(100ml)に溶解させ、窒素雰囲気下Pd−C(NXタイプ)(0.50g)を加えた後、反応系内を水素置換して室温で14時間撹拌した。反応終了後Pd−Cをろ別し減圧濃縮して淡黒色固体を得た。このものをヘプタンにて再結晶することにより、(T−11)を白色粉末として(15.2g)得た。
【0122】
(T−12)の合成
上記操作で得られた化合物(T−11)(30.0g)をdryTHF(400ml)に溶解させ、−70℃まで冷却した後、sec−BuLi(219ml)をゆっくりと滴下し、そのまま1時間撹拌した。その後ヨウ素 (14.0g)のdryTHF(140ml)溶液をゆっくりと滴下し、室温まで昇温して3時間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えトルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=4:1(容量比))、および再結晶(ヘプタン:トルエン=4:1(容量比))することにより、(T−12)を白色粉末として(30.0g)得た。
【0123】
(T−13)の合成
上記操作で得られた化合物(T−12)(15.0g)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(7.96g)、Pd−C(NXタイプ)(0.16g)および炭酸カリウム(10.4g)にトルエン(75ml)、ソルミックス(75ml)および水(3.8ml)を加え窒素雰囲気下5時間加熱還流した。反応終了後Pd−Cをろ別し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=4:1(容量比))、および再結晶(ヘプタン:トルエン=4:1(容量比))することにより、(T−13)を白色粉末として(13.9g)得た。
【0124】
(T−14)の合成
上記操作で得られた化合物(T−13)(13.9g)をギ酸 (2.25ml)、トルエン140mlに溶解させ、窒素雰囲気下6時間加熱還流した。反応の進行が遅いため、途中でギ酸(2.25ml)を6回追加した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を撹拌しながら少しずつ加え、トルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものを再結晶(ヘプタン:トルエン=4:1(容量比))することにより、(T−14)を白色粉末として(10.7g)得た。
【0125】
(T−16)の合成
1時間真空乾燥したホスホニウム塩(T−15)(14.8g)にdryTHF200mlを加え、−70℃まで冷却した。窒素雰囲気下カリウム−t−ブトキシド(4.03g)を分割して少量ずつ加え1時間撹拌した。その後、上記操作で得られた化合物(T−14)(10.7g)のdryTHF溶液をゆっくりと滴下し、室温まで昇温して4時間撹拌した。反応終了後氷冷し撹拌しながら水を加え、トルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮
して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=20:1(容量比))、およびヘプタンにて再結晶することにより、(T−16)を白色粉末として(10.5g)得た。
【0126】
(T−17)の合成
上記操作で得られた化合物(T−16)(10.5g)に、炭酸カリウム (8.83g)、ジクロロメタン(200ml)を加え氷冷した後、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)(4.86g)を加え、窒素雰囲気下室温にて14時間撹拌した。反応の進行が遅いため、途中でmCPBA(2.43g)を6回追加した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えジクロロメタンにて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して(T−17)を黒色油状物として(10.8g)得た。
【0127】
(T−18)の合成
上記操作で得られた化合物(T−17)(10.8g)に、トリフェニルホスフィンジブロミド(16.0g)、トルエン(200ml)を加え、窒素雰囲気下8時間加熱還流した。反応終了後、トルエンにて抽出し、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒黄色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=4:1(容量比))にて精製することにより、(T−18)を黄色油状物として(9.94g)得た。
【0128】
3,4,5,2′−テトラフルオロ−4″−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニルの合成
上記操作で得られた化合物(T−18)(9.94g)を酢酸(100ml)に溶解させ、亜鉛粉末(5.70g)を分割して少量ずつ加えた後、窒素雰囲気下室温で3時間撹拌した。反応終了後、不溶物をろ別し、ヘプタンにて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒茶色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=40:1(容量比))、及びヘプタンにて再結晶することにより、表題化合物(1−b−2−2)を白色粉末として(3.1g)得た。
【0129】
物性値は下記組成例の項に記載した様に、15質量%の化合物および85質量%の母液晶を混合することによって試料を調製し、測定によって得られた値から外挿法によって算出した。外挿値=(試料の測定値−0.85×母液晶の測定値)/0.15。物性値は、Δε=12.3, Δn=0.250, η=44.6mPa・s, C 33.3 SA 78.9 N 118.5 Iである。
【0130】
[実施例2]
4−クロロ−3,2′−ジフルオロ−4″−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニル(1−b−2−1)を実施例1に示した方法と同様にして、上記操作で得られた化合物(T−12)(21.0g)および3−クロロ−4−フルオロフェニルボロン酸(10.5g)より、白色粉末として(3.0g)得た。
【0131】
物性値は下記組成例の項に記載した様に、15質量%の化合物および85質量%の母液晶を混合することによって試料を調製し、測定によって得られた値から外挿法によって算出した。外挿値=(試料の測定値−0.85×母液晶の測定値)/0.15。物性値は、Δε=17.4, Δn=0.197, η=46.3mPa・s, C 37.0 N 55.8 Iである。
【0132】
[実施例3]
4′−フルオロ−4−オクタ−3,7−ジエニル−ビフェニル(1−a−1−1)を下記に示す合成スキームに従って合成した。
【0133】
【化22】

【0134】
4′−フルオロ−ビフェニル−4−カルバルデヒド(T−19)の合成
4−ブロモベンズアルデヒド (37.0g)、4−フルオロフェニルボロン酸(29.4g)、炭酸カリウム(41.4g)およびPd(PPh32Cl2 (1.40g)をソルミックス (400ml)に溶解させ、窒素雰囲気下4時間加熱還流した。反応終了後セライトろ過し、ろ液をトルエンにて抽出した。有機層を2N水酸化ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒色油状物を得た。このものをヘプタン−トルエンにて再結晶することにより、4′−フルオロ−ビフェニル−4−カルバルデヒド(T−19)を淡黄色粉末として(25.3g)得た。
【0135】
(T−21)の合成
1時間真空乾燥したホスホニウム塩 (T−20)(65.4g)に乾燥テトラヒドロフラン(THF)(300ml)を加え、−70℃まで冷却した。窒素雰囲気下カリウム−t−ブトキシド(25.3g)を少量ずつ分割して加え1時間撹拌した。その後4′−フルオロ−ビフェニル−4−カルバルデヒド(T−19)(25.3g)のdryTHF溶液を−70℃でゆっくりと滴下し、室温まで昇温して4時間撹拌した。反応終了後トルエンにて抽出し、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=20:1(容量比))、及びヘプタンにて再結晶することにより、(T−21)を白色粉末として(27.5g)得た。
【0136】
(T−22)の合成
上記操作で得られた化合物(T−21)(27.5g)をトルエン(150ml)、イソプロピルアルコール(IPA)(150ml)に溶解させ、窒素雰囲気下Pd−C(NXタイプ)(0.83g)を加えた後、反応系内を水素置換して室温で14時間撹拌した。反応終了後Pd−Cをろ別し減圧濃縮して淡黒色固体を得た。このものをヘプタンにて再結晶することにより、(T−22)を白色粉末として(27.3g)得た。
【0137】
(T−23)の合成
上記操作で得られた化合物(T−22)(27.3g)をギ酸 (16.0ml)、トルエン200mlに溶解させ、窒素雰囲気下6時間加熱還流した。反応の進行が遅いため、途中でギ酸(8.0ml)を2回追加した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を撹拌しながら少しずつ加え、トルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものを再結晶(ヘプタン:トルエン=4:1)することにより、(T−23)を白色粉末として(21.6g)得た。
【0138】
(T−25)の合成
1時間真空乾燥したホスホニウム塩(T−24)(46.6g)にdryTHF300mlを加え、−70℃まで冷却した。窒素雰囲気下カリウム−t−ブトキシド(13.5g)を分割して少量ずつ加え1時間撹拌した。その後、上記操作で得られた化合物(T−14)(21.6g)のdryTHF溶液をゆっくりと滴下し、室温まで昇温して4時間撹拌した。反応終了後氷冷し撹拌しながら水を加え、トルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=20:1(容量比))、およびヘプタンにて再結晶することにより、(T−25)を白色粉末として(23.5g)得た。
【0139】
(T−26)の合成
上記操作で得られた化合物(T−25)(23.5g)に、炭酸カリウム (28.9g)、ジクロロメタン(300ml)を加え氷冷した後、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)(21.7g)を加え、窒素雰囲気下室温にて14時間撹拌した。反応の進行が遅いため、途中でmCPBA(10.9g)を3回追加した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えジクロロメタンにて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して(T−26)を黒色油状物として(16.8g)得た。
【0140】
(T−27)の合成
上記操作で得られた化合物(T−26)(16.8g)に、トリフェニルホスフィンジブロミド(35.8g)、トルエン(300ml)を加え、窒素雰囲気下8時間加熱還流した。反応終了後、トルエンにて抽出し、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒黄色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=20:1(容量比))にて精製することにより、(T−27)を黄色油状物として(7.47g)得た。
【0141】
4′−フルオロ−4−オクタ−3,7−ジエニル−ビフェニル(1−a−1−1)の合成
上記操作で得られた化合物(T−27)(7.47g)を酢酸(100ml)に溶解させ、亜鉛粉末(5.56g)を分割して少量ずつ加えた後、窒素雰囲気下室温で3時間撹拌した。反応終了後、不溶物をろ別し、ヘプタンにて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒茶色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラ
フィー(ヘプタン:トルエン=40:1(容量比))にて精製することにより表題化合物を無色粘性液体として(1.5g)得た。
【0142】
化合物の物性値を表1に示す。物性値は上記実施例1および2と同様にして測定した。
【0143】
[実施例4]
4′−クロロ−4−オクタ−3,7−ジエニル−ビフェニル(1−a−1−2)を実施例3に示した方法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (37.0g)および4−クロロフェニルボロン酸(32.8g)より、白色粉末として(1.1g)得た。
【0144】
化合物の物性値を表1に示す。物性値は上記実施例1および2と同様にして測定した。
【0145】
[実施例5]
3,4,5,2′−テトラフルオロ−4′−オクタ−3,7−ジエニル−ビフェニル(1−a−2−2)を下記に示す合成スキームに従って合成した。
【0146】
【化23】

【0147】
(T−28)の合成
1時間真空乾燥したホスホニウム塩 (T−9)(65.4g)に乾燥テトラヒドロフラン(THF)(300ml)を加え、−70℃まで冷却した。窒素雰囲気下カリウム−t−ブトキシド(25.3g)を少量ずつ分割して加え1時間撹拌した。その後3−フルオロベンズアルデヒド(17.8g)のdryTHF溶液を−70℃でゆっくりと滴下し、室温まで昇温して4時間撹拌した。反応終了後トルエンにて抽出し、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=20:1(容量比))、及びヘプタンにて再結晶することにより、(T−28)を白色粉末として(19.8g)得た。
【0148】
(T−29)の合成
上記操作で得られた化合物(T−28)(19.8g)をトルエン(150ml)、イソプロピルアルコール(IPA)(150ml)に溶解させ、窒素雰囲気下Pd−C(NXタイプ)(0.89g)を加えた後、反応系内を水素置換して室温で14時間撹拌した。反応終了後Pd−Cをろ別し減圧濃縮して淡黒色固体を得た。このものをヘプタンにて再結晶することにより、(T−29)を白色粉末として(19.6g)得た。
【0149】
(T−30)の合成
上記操作で得られた化合物(T−29)(19.6g)をdryTHF(400ml)に溶解させ、−70℃まで冷却した後、sec−BuLi(119ml)をゆっくりと滴下し、そのまま1時間撹拌した。その後ヨウ素 (15.2g)のdryTHF(150ml)溶液をゆっくりと滴下し、室温まで昇温して3時間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えトルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=4:1(容量比))、およびヘプタン/トルエン=4/1(容量比)混合溶媒にて再結晶することにより、(T−30)を白色粉末として(21.9g)得た。
【0150】
(T−31)の合成
上記操作で得られた化合物(T−30)(21.9g)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(14.4g)、Pd−C(NXタイプ)(0.15g)および炭酸カリウム(18.8g)にトルエン(100ml)、ソルミックス(100ml)および水(5.0ml)を加え窒素雰囲気下5時間加熱還流した。反応終了後Pd−Cをろ別し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=4:1(容量比))、およびヘプタン/トルエン=4/1(容量比)混合溶媒にて再結晶することにより、(T−31)を白色粉末として(19.1g)得た。
【0151】
(T−32)の合成
上記操作で得られた化合物(T−31)(19.1g)をギ酸 (16.0ml)、トルエン200mlに溶解させ、窒素雰囲気下6時間加熱還流した。反応の進行が遅いため、途中でギ酸(8.0ml)を3回追加した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を撹拌しながら少しずつ加え、トルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをヘプタン/トルエン=4/1(容量比)混合溶媒にて再結晶することにより、(T−31)を白色粉末として(14.4g)得た。
【0152】
(T−34)の合成
1時間真空乾燥したホスホニウム塩(T−33)(25.0g)にdryTHF200
mlを加え、−70℃まで冷却した。窒素雰囲気下カリウム−t−ブトキシド(6.84g)を分割して少量ずつ加え1時間撹拌した。その後、上記操作で得られた化合物(T−32)(14.4g)のdryTHF溶液をゆっくりと滴下し、室温まで昇温して4時間撹拌した。反応終了後氷冷し撹拌しながら水を加え、トルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=20:1(容量比))、およびヘプタンにて再結晶することにより、(T−34)を白色粉末として(14.5g)得た。
【0153】
(T−35)の合成
上記操作で得られた化合物(T−34)(14.5g)に、炭酸カリウム (14.9g)、ジクロロメタン(200ml)を加え氷冷した後、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)(8.22g)を加え、窒素雰囲気下室温にて14時間撹拌した。反応の進行が遅いため、途中でmCPBA(4.11g)を2回追加した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えジクロロメタンにて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して(T−35)を黒色油状物として(10.1g)得た。
【0154】
(T−36)の合成
上記操作で得られた化合物(T−35)(10.1g)に、トリフェニルホスフィンジブロミド(18.2g)、トルエン(200ml)を加え、窒素雰囲気下8時間加熱還流した。反応終了後、トルエンにて抽出し、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒黄色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=20:1(容量比))により精製することにより、(T−36)を黄色油状物として(4.27g)得た。
【0155】
3,4,5,2′−テトラフルオロ−4′−オクタ−3,7−ジエニル−ビフェニル(1−a−2−2)の合成
上記操作で得られた化合物(T−36)(4.27g)を酢酸(100ml)に溶解させ、亜鉛粉末(0.85g)を分割して少量ずつ加えた後、窒素雰囲気下室温で3時間撹拌した。反応終了後、不溶物をろ別し、ヘプタンにて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒茶色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=40:1(容量比))にて精製することにより、表題化合物を無色粘性液体として(1.2g)得た。
【0156】
化合物の物性値を表2に示す。物性値は上記実施例1および2と同様にして測定した。
【0157】
[実施例6]
4−クロロ−3,2′−ジフルオロ−4′−オクタ−3,7−ジエニル−ビフェニル(1−a−2−1)を実施例5に示した方法と同様にして、上記操作で得られた化合物(T−30)(21.9g)および3−クロロ−4−フルオロフェニルボロン酸(14.2g)より、無色粘性液体として(1.4g)得た。
【0158】
化合物の物性値を表2に示す。物性値は上記実施例1および2と同様にして測定した。
【0159】
[実施例7]
4,2′,6′−トリフルオロ−4″−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニル(1−b−3−1)を実施例1に示した方法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (38.5g)、4−フルオロフェニルボロン酸(21.0g)
および3,5−ジフルオロフェニルボロン酸(39.5g)より、白色粉末として(1.8g)得た。
【0160】
[実施例8]
4−クロロ−2′,6′−ジフルオロ−4″−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニル(1−b−3−2)を実施例1に示した方法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (30.8g)、4−クロロフェニルボロン酸(23.4g)および3,5−ジフルオロフェニルボロン酸(31.6g)より、白色粉末として(1.5g)得た。
【0161】
[実施例9]
3,4,5,2′,6′−ペンタフルオロ−4″−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニル(1−b−3−5)を実施例1に示した方法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (30.8g)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(17.6g)および3,5−ジフルオロフェニルボロン酸(31.6g)より、白色粉末として(1.7g)得た。
【0162】
[実施例10]
4−クロロ−3,5,2′,6′−テトラフルオロ−4″−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニル(1−b−3−6)を実施例1に示した方法および記載した合成法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (30.8g)、4−クロロ−3,5−ジフルオロフェニルボロン酸(19.2g)および3,5−ジフルオロフェニルボロン酸(31.6g)より、白色粉末として(1.4g)得た。
【0163】
[実施例11]
3,4,5−トリフルオロ−4″−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニル(1−b−1−3)を実施例1に示した方法および記載した合成法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (19.3g)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(17.6g)および4−クロロフェニルボロン酸(23.4g)より、白色粉末として(1.7g)得た。
【0164】
[実施例12]
3−フルオロ−4′−オクタ−3,7−ジエニル−4−[2−(3,4,5−トリフルオロ−フェニル)−エチル]−ビフェニル(1−b−2−7)を実施例1に示した方法および記載した合成法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (38.5g)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(26.4g)および3−フルオロフェニルボロン酸(35.0g)より、白色粉末として(1.4g)得た。
【0165】
[実施例13]
4−[2−(4−クロロ−3,5−ジフルオロ−フェニル)−エチル]−3−フルオロ−4′−オクタ−3,7−ジエニル−ビフェニル(1−b−2−6)を実施例1に示した方法および記載した合成法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (30.8g)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(26.4g)および3−フルオロフェニルボロン酸(28.0g)より、白色粉末として(1.2g)得た。
【0166】
[実施例14]
3,4,5,2′−テトラフルオロ−4″−ノナ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニル(1−b−2−41)を実施例1に示した方法および記載した合成法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (23.1g)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(17.6g)および3−フルオロフェニルボロン酸(21.0
g)より、白色粉末として(1.3g)得た。
【0167】
[実施例15]
3,4,5,2′−ペンタフルオロ−4″′−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″,4″,1″′]クォーターフェニル(1−c−2−2)を実施例1に示した方法および記載した合成法と同様にして、4−ブロモベンズアルデヒド (43.2g)、4−ブロモフェニルボロン酸(56.3g)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(17.6g)および3−フルオロフェニルボロン酸(28.0g)より、表題化合物を白色粉末として(1.9g)得た。
【0168】
[実施例16]
3,4,5,2′,2″−ペンタフルオロ−4″′−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″,4″,1″′]クウォーターフェニル(1−c−4−1)を下記に示す合成スキームに従って合成した。
【0169】
【化24】

【0170】
(T−37)の合成
実施例1で得られた化合物(T−12)(22.1g)、3−フルオロフェニルボロン酸(8.55g)、Pd−C(NXタイプ)(0.66g)および炭酸カリウム(15.3g)にトルエン(100ml)、ソルミックス(100ml)および水(5.0ml)を加え窒素雰囲気下5時間加熱還流した。反応終了後Pd−Cをろ別し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロ
マトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=4:1(容量比))、および再結晶(ヘプタン:トルエン=4:1(容量比))することにより、(T−37)を白色粉末として(14.7g)得た。
【0171】
(T−38)の合成
上記操作で得られた化合物(T−37)(29.4g)をdryTHF(400ml)に溶解させ、−70℃まで冷却した後、sec−BuLi(96ml)をゆっくりと滴下し、そのまま3時間撹拌した。その後ヨウ素 (30.6g)のdryTHF(150ml)溶液をゆっくりと滴下し、室温まで昇温して12時間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えトルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=4:1(容量比))、および再結晶(ヘプタン:トルエン=4:1(容量比))することにより、(T−38)を白色粉末として(17.2g)得た。
【0172】
(T−39)の合成
上記操作で得られた化合物(T−38)(17.2g)、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸(6.78g)、Pd−C(NXタイプ)(0.52g)および炭酸カリウム(9.66g)にトルエン(150ml)、ソルミックス(150ml)および水(7.5ml)を加え窒素雰囲気下6時間加熱還流した。反応終了後Pd−Cをろ別し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=4:1(容量比))、および再結晶(ヘプタン:トルエン=4:1(容量比))することにより、(T−39)を白色粉末として(20.2g)得た。
【0173】
(T−40)の合成
上記操作で得られた化合物(T−39)(20.2g)をギ酸 (8.0ml)、トルエン200mlに溶解させ、窒素雰囲気下6時間加熱還流した。反応の進行が遅いため、途中でギ酸(8ml)を2回追加した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を撹拌しながら少しずつ加え、トルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものを再結晶(ヘプタン:トルエン=4:1(容量比))することにより、(T−40)を白色粉末として(16.0g)得た。
【0174】
(T−41)の合成
1時間真空乾燥したホスホニウム塩(T−15)(15.2g)にdryTHF200mlを加え、−70℃まで冷却した。窒素雰囲気下カリウム−t−ブトキシド(4.17g)を分割して少量ずつ加え1時間撹拌した。その後、上記操作で得られた化合物(T−40)(14.0g)のdryTHF溶液をゆっくりと滴下し、室温まで昇温して4時間撹拌した。反応終了後氷冷し撹拌しながら水を加え、トルエンにて抽出した。有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡黄色固体を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=20:1(容量比))、およびヘプタンにて再結晶することにより、(T−41)を白色粉末として(10.8g)得た。
【0175】
(T−42)の合成
上記操作で得られた化合物(T−41)(10.8g)に、炭酸カリウム (7.40g)、ジクロロメタン(100ml)を加え氷冷した後、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)(11.1g)を加え、窒素雰囲気下室温にて14時間撹拌した。反応の進行が遅
いため、途中でmCPBA(6.5g)を2回追加した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えジクロロメタンにて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して(T−42)を黒色油状物として(10.6g)得た。
【0176】
(T−43)の合成
上記操作で得られた化合物(T−42)(10.6g)に、トリフェニルホスフィンジブロミド(13.3g)、トルエン(200ml)を加え、窒素雰囲気下8時間加熱還流した。反応終了後、トルエンにて抽出し、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒黄色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=4:1(容量比))にて精製することにより、(T−43)を黄色油状物として(11.2g)得た。
【0177】
3,4,5,2′,2″−ペンタフルオロ−4″′−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″,4″,1″′]クウォーターフェニル(1−c−4−1)の合成
上記操作で得られた化合物(T−43)(11.2g)を酢酸(100ml)に溶解させ、亜鉛粉末(4.41g)を分割して少量ずつ加えた後、窒素雰囲気下室温で3時間撹拌した。反応終了後、不溶物をろ別し、ヘプタンにて抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して黒茶色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=40:1(容量比))、及びヘプタンにて再結晶することにより、表題化合物(1−c−4−1)を白色粉末として(1.0g)得た。
【0178】
化合物の物性値を表22に示す。物性値は上記実施例1および2と同様にして測定した。
【0179】
[実施例17]
4−クロロ−3,2′,2″−トリフルオロ−4″′−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″,4″,1″′]クウォーターフェニル(1−c−4−7)を実施例16に示した方法と同様にして、上記操作で得られた化合物(T−38)(20.0g)および3−クロロ−4−フルオロフェニルボロン酸(7.42g)より、白色粉末として(0.14g)得た。
【0180】
化合物の物性値を表22に示す。物性値は上記実施例1および2と同様にして測定した。
【0181】
実施例1〜実施例17に記載した合成法をもとに、下記の化合物を合成する。一般式(1)で表される化合物のうち、p=1、m=n=0である化合物を表1〜4に示した。一般式(1)で表される化合物のうち、p=1、m=0、n=1である化合物を表5〜15に示した。一般式(1)で表される化合物のうち、p=1、m=n=1である化合物を表16〜24に示した。実施例1〜実施例17で得られる化合物(1−a−1−1、1−a−1−2、1−a−2−1、1−a−2−2、1−b−1−3、1−b−2−1、1−b−2−2、1−b−2−6、1−b−2−7、1−b−2−41、1−b−3−1、1−b−3−2、1−b−3−5、1−b−3−6、1−c−2−2、1−c−4−1および1−c−4−7)も再掲した。
【0182】
【化25】

【0183】
【表1】

【0184】
【化26】

【0185】
【表2】

【0186】
【化27】

【0187】
【表3】

【0188】
【表4】

【0189】
【化28】

【0190】
【表5】

【0191】
【化29】

【0192】
【表6】

【0193】
【表7】

【0194】
【化30】

【0195】
【表8】

【0196】
【表9】

【0197】
【表10】

【0198】
【化31】

【0199】
【表11】

【0200】
【表12】

【0201】
【化32】

【0202】
【表13】

【0203】
【表14】

【0204】
【表15】

【0205】
【化33】

【0206】
【表16】

【0207】
【化34】

【0208】
【表17】

【0209】
【表18】

【0210】
【化35】

【0211】
【表19】

【0212】
【表20】

【0213】
【表21】

【0214】
【化36】

【0215】
【表22】

【0216】
【表23】

【0217】
【化37】

【0218】
【表24】

【0219】
本発明の代表的組成の一例を以下に示す。物性値の測定方法は後述する方法に従った。
【0220】
[組成例1]
4つの化合物を混合して、ネマチック相を有する組成物A(母液晶)を調製した。4つの化合物は、4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(24%)、4−(4
−ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(36%)、4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(25%)、4−(4−ペンチルシクロヘキシル)−4’−シアノビフェニル(15%)である。
【0221】
組成物Aの物性値は次のとおりであった。上限温度(NI)=71.7℃;粘度(η20)=27.0mPa・s;光学異方性(Δn)=0.137;誘電率異方性(Δε)=11.0。
【0222】
この組成物Aに実施例1に記載の3,4,5,2′−テトラフルオロ−4″−オクタ−3,7−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニルを15質量%添加して物性値を測定した。その結果、上限温度(NI)=58.4℃;光学異方性(Δn)=0.197;誘電率異方性(Δε)=17.4であった。
【0223】
[比較例1]
組成例1に記載した組成物Aの85%と4″−フルオロ−4−ヘキサ−1,5−ジエニル−[1,1′,4′,1″]ターフェニルの15%とからなる組成物を調製し、物性値の測定を試みた。しかし、この化合物は母液晶に全く溶けず、物性値を測定することができなかった。この化合物はフェニレンに二重結合が直結した構造の為、安定性が極端に悪く、重合反応が起きてしまったものと予想される。よって、このような構造を持った他の化合物でも同様のことが起こると予想される。
【0224】
さらに本発明の代表的な組成物を組成物例2〜14にまとめた。最初に、組成物の成分である化合物とその量(質量%)を示した。化合物は表25の取り決めに従い、左末端基、結合基、環構造、および右末端基の記号によって表示した。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はトランスである。末端基の記号がない場合は、末端基が水素であることを意味する。次に組成物の物性値を示した。
【0225】
【表25】

【0226】
特性値の測定は下記の方法にしたがって行うことができる。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0227】
転移温度(℃):次のいずれかの方法で測定した。1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置き、1℃/分
の速度で加熱した。試料が相変化したときの温度を測定した。2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システムを用い3℃/分速度で測定した。
【0228】
結晶はCと表した。結晶の区別がつく場合は、それぞれC1またはC2と表した。スメクチック相はSと表した。液体(アイソトロピック)はIsoと表した。ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、スメクチックC相またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれSB、SCまたはSAと表した。転移温度の表記として、「C 92.9 N 196.9 Iso」とは、結晶からネマチック相への転移温度(CN)が92.9℃であり、ネマチック相から液体への転移温度(NI)が196.9℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0229】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0230】
ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶(またはスメクチック相)に変化したとき、TCを≦−20℃と記載する。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0231】
化合物の相溶性:類似の構造を有する幾つかの化合物を混合してネマチック相を有する母液晶を調製した。測定する化合物とこの母液晶とを混合した組成物を得た。混合する割合の一例は、15%の化合物と85%の母液晶である。この組成物を−20℃、−30℃のような低い温度で30日間保管した。この組成物の一部が結晶(またはスメクチック相)に変化したか否かを観察した。必要に応じて混合する割合と保管温度とを変更した。このようにして測定した結果から、結晶(またはスメクチック相)が析出する条件および結晶(またはスメクチック相)が析出しない条件を求めた。これらの条件が相溶性の尺度である。
【0232】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。
【0233】
回転粘度(γ1;25℃で測定;mPa・s):1)誘電率異方性が正である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。TN素子に16ボルトから19.5ボルトの範囲で0.5ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度の測定で使用した素子にて、下記の誘電率異方性の測定方法で求めた。
【0234】
2)誘電率異方性が負である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピー
ク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0235】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。試料が組成物のときはこの方法によって光学異方性を測定した。試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと光学異方性を測定した。化合物の光学異方性は外挿値である。
【0236】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと誘電率異方性を測定した。化合物の誘電率異方性は外挿値である。1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0237】
2)誘電率異方性が負である組成物:ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を測定した。ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0238】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあとしきい値電圧を測定した。化合物のしきい値電圧は外挿値である。1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した光学異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
【0239】
2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率10%になったときの電圧の値を測定した。
【0240】
電圧保持率(VHR;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は6μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0241】
らせんピッチ(20℃で測定;μm):らせんピッチの測定には、カノのくさび型セル法を用いた。カノのくさび型セルに試料を注入し、セルから観察されるディスクリネーションラインの間隔(a;単位はμm)を測定した。らせんピッチ(P)は、式P=2・a
・tanθから算出した。θは、くさび型セルにおける2枚のガラス板の間の角度である。
【0242】
成分または液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶性化合物の全質量に基づいた質量百分率(質量%)である。組成物は、液晶性化合物などの成分の質量を測定してから混合することによって調製される。したがって、成分の質量%を算出するのは容易である。
【0243】
特性値の測定において、化合物単体をそのまま試料として用いる場合、化合物を母液晶に混合し試料として用いる場合、そして組成物をそのまま試料として用いる場合の3通りの方法がある。化合物を母液晶に混合する場合は、次の方法をとる。15質量%の化合物および85質量%の母液晶を混合することによって試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。外挿値=(試料の測定値−0.85×母液晶の測定値)/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10質量%:90質量%、5質量%:95質量%、1質量%:99質量%の順に変更した。
【0244】
測定で得られた値のうち、化合物単体をそのまま試料として用い得られた値と、組成物をそのまま試料として用いて得られた値は、そのままの値を実験データとして記載する。化合物を母液晶に混合し試料として用い得られた値は、そのままの値を実験データとして記載する場合もあるし、外挿法で得られた値を記載する場合もある。
【0245】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。成分化合物の質量%は各ピークの面積比と完全には同一ではない。しかし、本発明においては、これらのキャピラリカラムを用いるときは、成分化合物の質量%は各ピークの面積比と同一であると見なしてよい。成分化合物における補正係数に大きな差異がないからである。
【0246】
[組成例2]
V2V2−BB(F)B(F,F)−F 5%
V2V2−BB(F)B(F)−CL 5%
2−BEB(F)−C 5%
3−BEB(F)−C 4%
4−BEB(F)−C 12%
1V2−BEB(F,F)−C 14%
3−HB−O2 8%
3−HH−4 3%
3−HHB−F 3%
3−HHB−1 4%
3−HHB−O1 4%
3−HBEB−F 4%
3−HHEB−F 6%
5−HHEB−F 6%
3−H2BTB−2 4%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
3−HB(F)TB−2 5%
NI=84.1℃;Δn=0.145;Δε=27.2;Vth=1.17V.
【0247】
[組成例3]
V2V2−BB−F 5%
V2V2−BB−CL 4%
2−HB−C 5%
3−HB−C 12%
3−HB−O2 15%
2−BTB−1 3%
3−HHB−F 4%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
3−HHB−3 13%
3−HHEB−F 4%
5−HHEB−F 4%
2−HHB(F)−F 4%
3−HHB(F)−F 4%
5−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F,F)−F 5%
【0248】
[組成例4]
V2V2−B(F)B(F,F)−F 5%
V2V2−B(F)B(F)−CL 3%
3−BEB(F)−C 8%
3−HB−C 8%
V−HB−C 8%
1V−HB−C 8%
3−HB−O2 3%
3−HH−2V 11%
3−HH−2V1 7%
V2−HHB−1 10%
3−HHB−1 5%
3−HHEB−F 7%
3−H2BTB−2 6%
3−H2BTB−3 6%
3−H2BTB−4 5%
【0249】
[組成例5]
V2V2−BBB(F,F)−F 3%
1V2V2−BB(F)B(F,F)−F 4%
V2V2−BB(F)2B(F,F)−F 4%
5−BEB(F)−C 5%
V−HB−C 8%
5−PyB−C 6%
4−BB−3 8%
3−HH−2V 10%
5−HH−V 11%
V−HHB−1 7%
V2−HHB−1 10%
3−HHB−1 9%
1V2−HBB−2 10%
3−HHEBH−3 5%
【0250】
[組成例6]
V2V2−BB(F)2B(F)−CL 4%
V2V2−BB(F,F)B−F 4%
1V2−BEB(F,F)−C 6%
3−HB−C 18%
2−BTB−1 10%
5−HH−VFF 22%
3−HHB−1 4%
VFF−HHB−1 8%
VFF2−HHB−1 11%
3−H2BTB−2 5%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
【0251】
[組成例7]
V2V2−BB(F)B(F,F)−F 4%
V2V2−BB(F)B(F)−CL 4%
5−HB−CL 16%
3−HH−4 12%
3−HH−5 4%
3−HHB−F 4%
3−HHB−CL 3%
4−HHB−CL 4%
3−HHB(F)−F 8%
4−HHB(F)−F 7%
5−HHB(F)−F 7%
7−HHB(F)−F 6%
5−HBB(F)−F 4%
1O1−HBBH−5 3%
3−HHBB(F,F)−F 2%
4−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 3%
4−HH2BB(F,F)−F 3%
NI=110.5℃;Δn=0.095;Δε=3.8;Vth=2.62V.
【0252】
上記組成物100部にOp−05を0.25部添加したときのらせんピッチは61.0μmであった。
【0253】
[組成例8]
V2V2−BB(F,F)B−CL 4%
V2V2−BB(F,F)B(F,F)−F 3%
3−HHB(F,F)−F 9%
3−H2HB(F,F)−F 8%
4−H2HB(F,F)−F 8%
5−H2HB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 18%
5−HBB(F,F)−F 16%
3−H2BB(F,F)−F 10%
5−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHEBB−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 2%
1O1−HBBH−4 4%
1O1−HBBH−5 4%
【0254】
[組成例9]
V2V2−BB(F,F)B(F,F)−CL 5%
V2V2−BBB(F)B(F,F)−F 3%
5−HB−F 12%
6−HB−F 9%
7−HB−F 7%
2−HHB−OCF3 7%
3−HHB−OCF3 7%
4−HHB−OCF3 7%
5−HHB−OCF3 5%
3−HH2B−OCF3 4%
5−HH2B−OCF3 4%
3−HHB(F,F)−OCHF2 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 5%
3−HH2B(F)−F 3%
3−HBB(F)−F 6%
5−HBB(F)−F 6%
5−HBBH−3 3%
3−HB(F)BH−3 3%
【0255】
[組成例10]
V2V2−BB−F 6%
V2V2−BBB(F,F)−F 4%
5−HB−CL 11%
3−HH−4 8%
3−HHB−1 5%
3−HHB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 15%
5−HBB(F,F)−F 10%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 3%
5−HHEB(F,F)−F 3%
2−HBEB(F,F)−F 3%
3−HBEB(F,F)−F 5%
5−HBEB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 6%
【0256】
[組成例11]
V2V2−BB−CL 3%
V2V2−B(F)B(F)−CL 3%
3−HB−CL 6%
5−HB−CL 4%
3−HHB−OCF3 5%
3−H2HB−OCF3 5%
5−H4HB−OCF3 15%
V−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F)−F 4%
5−HHB(F)−F 4%
3−H4HB(F,F)−CF3 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 10%
5−H2HB(F,F)−F 5%
5−H4HB(F,F)−F 7%
2−H2BB(F)−F 3%
3−H2BB(F)−F 8%
3−HBEB(F,F)−F 5%
【0257】
[組成例12]
V2V2−BB(F)2B(F,F)−F 5%
V2V2−BB(F)2B(F)−CL 4%
5−HB−CL 17%
7−HB(F,F)−F 3%
3−HH−4 10%
3−HH−5 5%
3−HB−O2 10%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
2−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F)−F 7%
5−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F,F)−F 6%
3−H2HB(F,F)−F 5%
4−H2HB(F,F)−F 5%
【0258】
[組成例13]
V2V2−B(F)B(F,F)−F 4%
V2V2−BB(F,F)B(F,F)−F 4%
5−HB−CL 3%
7−HB(F)−F 7%
3−HH−4 9%
3−HH−EMe 15%
3−HHEB−F 8%
5−HHEB−F 8%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 5%
4−HGB(F,F)−F 5%
5−HGB(F,F)−F 6%
2−H2GB(F,F)−F 4%
3−H2GB(F,F)−F 5%
5−GHB(F,F)−F 7%
【0259】
[組成例14]
V2V2−BB(F,F)B−F 3%
V2V2−BB(F,F)B−CL 3%
V2V2−BBB(F)B(F,F)−F 3%
3−HH−4 8%
3−HHB−1 6%
3−HHB(F,F)−F 10%
3−H2HB(F,F)−F 9%
3−HBB(F,F)−F 15%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F 26%
1O1−HBBH−5 7%
2−HHBB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 4%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物。
【化1】

[式中、R1は水素、炭素数1〜5のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルであり;
環A1は1,4−フェニレンであり、この環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、環A2および環A3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、または1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの環において任意の−CH2−は、−O−または−S−により置き換えられていてもよく、任意の−CH=は、−N=により置き換えられていてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
1、Z2およびZ3は独立して、単結合、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、−CF=CF−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−であり;
1およびL2は独立して、水素またはフッ素であり;
1は水素、フッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF5、または−Q−Wで示される基であり、Qは単結合、酸素、または硫黄であり、Wは少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1〜5のアルキルであり;
n、mは独立して、0または1であり、pは1〜4の整数である。]
【請求項2】
環A1、環A2および環A3が独立して、1,4−フェニレンまたはハロゲン化された1,4−フェニレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環A1、環A2および環A3のうち少なくとも1つがハロゲン化された1,4−フェニレンであり、ハロゲン化された1,4−フェニレンがフッ素化された1,4−フェニレンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記フッ素化された1,4−フェニレンが、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
環A1、環A2および環A3のうち少なくとも1つがピリミジン−2,5−ジイルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
1、Z2およびZ3のうち少なくとも1つが単結合である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
1、Z2およびZ3のいずれか1つが、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、または−CF=CF−である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
1、Z2およびZ3がいずれも単結合である、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
1、L2およびX1のうち少なくとも1つがハロゲンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
下記のいずれか1つの一般式で表される請求項1に記載の化合物。
一般式(1)においてp=1、n=m=0である下記の一般式(1−a)で表される化合物、
一般式(1)においてp=1、n=0、m=1である下記の一般式(1−b)で表される化合物、または、
一般式(1)においてp=1、n=m=1である下記の一般式(1−c)で表される化合物。
【化2】

[式中、R1は水素、炭素数1〜5のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルであり;
環A1は1,4−フェニレンであり、この環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、環A2および環A3は独立して、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、または1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、1,4−フェニレンにおいて任意の−CH=は、−N=により置き換えられていてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
1、Z2およびZ3は独立して、単結合、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、または−CF=CF−であり;
1およびL2は独立して、水素またはフッ素であり;
1はフッ素、塩素、−C≡N、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fである。]
【請求項11】
環A1、環A2および環A3が独立して、1,4−フェニレンまたはハロゲン化された1,4−フェニレンである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
環A1、環A2および環A3のうち少なくとも1つが、ハロゲン化された1,4−フェニレンであり、ハロゲン化された1,4−フェニレンがフッ素化された1,4−フェニレンである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記フッ素化された1,4−フェニレンが、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
環A1、環A2および環A3のうち少なくとも1つがピリミジン−2,5−ジイルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
1、Z2およびZ3のうち少なくとも1つが単結合である、請求項10〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
1、Z2およびZ3のいずれか1つが、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、または−OCH2−である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
1、Z2およびZ3がいずれも単結合である、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
1、L2およびX1のうち少なくとも1つがハロゲンである、請求項10〜17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
下記の一般式(1−1)〜(1−48)のいずれか1つの式で表される請求項1に記載の化合物。

【化3】




[式中、R1は水素、炭素数1〜5のアルキル、または炭素数2〜5のアルケニルであり;
1、L2およびY1〜Y6は独立して、水素またはフッ素であり;
1はフッ素、塩素、−C≡N、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fである。]
【請求項20】
下記の一般式(1−49)〜(1−51)のいずれか1つの式で表される請求項1に記載の化合物。
【化4】

[式中、L1、L2およびY1〜Y3は独立して、水素またはフッ素であり;
1はフッ素または塩素である。]
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の化合物を少なくとも1種類含有することを特徴とする、2成分以上からなる液晶組成物。
【請求項22】
一般式(2)、(3)および(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項21に記載の液晶組成物。
【化5】

[式中、R2は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、アルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
2はフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環Bおよび環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Eは、1,4−シクロヘキシレンまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
4およびZ5は独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、または単結合であり;
3およびL4は独立して、水素またはフッ素である。]
【請求項23】
一般式(5)および(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項21に記載の液晶組成物。
【化6】

[式中、R3およびR4は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、アルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
3は、−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Gは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、環Jは、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Kは、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;
6は、−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、または単結合であり;
5、L6およびL7は独立して、水素またはフッ素であり;
b、cおよびdは独立して、0または1である。]
【請求項24】
一般式(7)、(8)、(9)、(10)および(11)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項21に記載の液晶組成物。
【化7】

[式中、R5は炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、アルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
6は、フッ素、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、このアルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
環Mおよび環Pは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、またはデカヒドロ−2,6−ナフチレンであり;
7およびZ8は独立して、−(CH22−、−COO−、または単結合であり;
8、L9、L10およびL11は独立して、水素またはフッ素であって、L8、L9、L10およびL11の少なくとも1つはフッ素である。]
【請求項25】
一般式(12)、(13)および(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項21に記載の液晶組成物。
【化8】

[式中、R7およびR8は独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、このアルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
環J、環Tおよび環Uは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2、5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
9およびZ10は独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH
−、または単結合である。]
【請求項26】
一般式(5)および(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項22に記載の液晶組成物。
【請求項27】
一般式(12)、(13)および(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項22に記載の液晶組成物。
【請求項28】
一般式(12)、(13)および(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項23に記載の液晶組成物。
【請求項29】
一般式(12)、(13)および(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項24に記載の液晶組成物。
【請求項30】
少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、請求項21〜29のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項31】
請求項21〜30のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2007−126449(P2007−126449A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270738(P2006−270738)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】