説明

アルカリ二次電池

【課題】特に充電後における亜鉛の腐食によるガスの発生を抑止し、耐漏液特性に優れたアルカリ二次電池を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ二次電池は、電池ケース1に、正極2と、亜鉛または亜鉛合金を活物質とする負極3と、前記正極2と前記負極3との間に配置されたセパレータ4と、アルカリ電解液とを収容し、電池内圧の上昇時には電池内のガスが電池外部へ放出される安全弁5aを持つガスケット5を備えており、前記負極3はパーフルオロアルキル基の炭素数が6以下であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を含んでいるアルカリ二次電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルカリ乾電池は一次電池であるので使用し終えた後は廃棄されるのであるが、省資源のための再利用の要望が出されている。使用後のアルカリ乾電池を充電して再利用することは原理的には可能であるが、一次電池として設計されたアルカリ乾電池をそのまま充電するとガスの発生に伴う漏液等の種々の問題が生じてしまう。これは、一般的なアルカリ乾電池が、電池内圧上昇時には電池内ガスが電池外部へ放出される安全弁を備えており、この安全弁が作動した際にガスとともに電解液が排出されることによるものである。
【0003】
このアルカリ乾電池の安全弁を有する構造と同じにして、他の設計等に工夫を加えてアルカリ二次電池とする開発が行われている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、漏液の原因となるガスの発生を抑制する手段として特定のフッ素系界面活性剤が開示されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平8−508847号公報
【特許文献2】特開平5−013072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなアルカリ二次電池は、何度も繰り返し充放電を行った場合に電池内部にガスが発生して貯まっていき、電池内圧が所定の圧力を超えるとアルカリ電解液が電池外に漏れだしてしまう。
【0007】
特に、充電後保存時におけるガス発生速度は、放電後保存時におけるガス発生速度よりも大きいため(約4倍の発生速度)、特に充電後保存時における電池内圧の上昇による漏液が懸念される。漏液が生じると、アルカリ二次電池を入れた電子機器内部にアルカリ電解液が侵入することが生じるため、電子機器自体がショートしたり腐食したりして破損してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガスの発生を抑制した耐漏液特性に優れたアルカリ二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアルカリ二次電池は、電池ケースの内部に、正極と、亜鉛または亜鉛合金を活物質とする負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、アルカリ電解液とを収容し、電池内圧の上昇時には電池内のガスが電池外部へ放出される安全弁を有するガスケットで密封されており、前記負極はパーフルオロアルキル基の炭素数が6以下であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を含んでいる構成を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアルカリ二次電池は、負極からのガス発生を抑制するので、内圧の上昇を防ぎ、電池の漏液を防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るアルカリ二次電池の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態のアルカリ二次電池を示した一部断面図である。正極端子1aを兼ねた電池ケース1には、二酸化マンガンを含む中空円筒状の正極2が内接するように収納されている。正極2の中空部には、有底円筒形の多孔膜からなるセパレータ4を介して亜鉛または亜鉛合金を含む負極3が配置されている。負極3には、パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を含んでいる。電池ケース1の開口部は、正極2、負極3等の発電要素を収納した後、釘型の負極集電体6と電気的に接続された負極端子7と、安全弁5aを有する樹脂製のガスケット5とを一体化した封口ユニット9により封口される。電池ケース1の外表面は、外装ラベル8により被覆されている。
【0014】
本発明の一実施形態におけるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物は、亜鉛または亜鉛合金に対して0.002質量%以上、0.0025%質量以下であることが好ましい。
【0015】
例えば、特許文献2には、亜鉛を活物質とする負極に、界面活性剤を添加することで、ガス発生を抑制する方法が開示されている。亜鉛の表面で、
2HO+2e→2OH+H↑・・・(1)
に示される水の還元反応が起こることによって、水素ガスは発生する。これに対し、負極中に界面活性剤を添加すると、界面活性剤の疎水基が電解液側へ向く格好で、親水基が亜鉛表面に吸着すると考えられる。これによって、電解液中の水分子は、亜鉛表面への接近が阻まれるため、亜鉛表面における(1)式に示される反応が起こりにくくなり、水素ガスの発生が抑制される、というのが、界面活性剤による防食機構であると考えられている。
【0016】
しかしながら、アルカリ二次電池においては、単純に特許文献2の構成をそのまま用いても、効果は得られなかった。これは、充放電を複数回繰り返すことに伴う電気的作用や酸化・還元雰囲気になることにより、界面活性剤分子が分解されてしまうため、前述した水素の発生を抑制する効果を十分に得るのが困難であるためと考えられる。
【0017】
発明者らは、鋭意検討を行った結果、パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を負極へ添加することで、充電後のガス発生を抑制し、アルカリ二次電池に用いるのに十分な防食効果を得られることを見出した。
【0018】
詳細なメカニズムは不明ではあるが、アルカリ二次電池において、パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物が防食効果を発揮する理由として、以下の理由が考えられる。
【0019】
まず、親水基として、アルカリ電解液への溶解性に優れたエチレンオキサイド基を持つため、安定して電解液中に存在し、防食効果を発揮することができるからであると考えられる。また、エチレンオキサイド基は充放電操作を経た後も、亜鉛表面へ安定して吸着することができるものと考えられる。
【0020】
次に、疎水基として、従来の炭化水素系界面活性剤と比べて原子間の結合が強固であるパーフルオロアルキル基を持つため、充放電操作を経ても疎水基が分解されること無く、水分子が亜鉛表面へ接近するのを阻む効果を保持することができるためであると考えられる。疎水基がアルキル基(炭化水素系)である場合は、炭素鎖が二次元的なジグザグの構造をとるが、パーフルオロアルキル基である場合には、フッ素原子は水素原子よりもファンデルワールス半径が大きいため、炭素鎖が三次元的な螺旋構造となり、剛直で強固な結合になると考えられている。
【0021】
しかしながら、パーフルオロアルキル基の長さ(炭素数)に関して、炭素数が6を超えるさらに長いものに関しては、十分な防食効果がみられない。この理由としては、充電あるいは放電操作に起因する電気的作用によって界面活性剤が亜鉛表面から脱離し、電解液中を泳動した場合に、パーフルオロアルキル基の炭素数が6以上の長さだと、泳動の過程でパーフルオロアルキル基の鎖が切断されやすくなり、界面活性剤の構造が変わってしまうため、有効な防食効果を発揮しないのではないかと考えられる。
【0022】
以上の理由から、親水基としてエチレンオキサイド基を、疎水基として炭素数が6以下であるパーフルオロアルキル基を持つ、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を負極へ添加することで、ガスの発生を抑制し、優れた耐漏液特性を発揮することができると考えられる。
【実施例】
【0023】
以下に本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されない。
【0024】
以下の手順で単3形のアルカリ二次電池を作製した。
【0025】
まず正極2を作製した。電解二酸化マンガンの粉末及び黒鉛の粉末を質量比94:6の割合で混合して混合粉を得た。この混合粉100質量部に対してアルカリ電解液を2質量部加えた後、ミキサーで攪拌して混合粉とアルカリ電解液とを均一に混合し、一定粒度に整粒した。アルカリ電解液は、35質量%の水酸化カリウム水溶液(ZnO:1質量%含む)とした。
【0026】
上記の整粒した混合粉を中空円筒状に加圧成形して正極ペレットを得た。ここで、電解二酸化マンガンとしては東ソー株式会社製のHH−TFを用い、黒鉛としては日本黒鉛工業株式会社製のSP−20を用いた。
【0027】
有底円筒形の電池ケース1に正極ペレットを2個挿入して加圧し、正極ペレットを電池ケース1内面に密着させて正極2とした。
【0028】
次に、セパレータ4を作製した。株式会社クラレ製のビニロン−リヨセル複合繊維からなる不織布と、フタムラ化学株式会社製のセロハンとを重ねて丸めて円筒形にし、一方の底にも不織布とセロハンを重ねたものをホットメルトにより接着させて底部にしてセパレータ4とした。このセパレータ4を正極2の内側の中空部分に底部を下にして挿入した。その後、円筒形のセパレータ4の中空部分にアルカリ電解液を注入した。
【0029】
続いて、負極3を作製した。まず、Al:0.005質量%、Bi:0.015質量%、In:0.02質量%を含有する亜鉛合金の粉末をガスアトマイズ法によって作製した。次に、作製された亜鉛合金の粉末を、篩を用いて分級した。そして、BET比表面積が0.040cm/gとなるように、亜鉛合金の粉末を調整した。
【0030】
それから、亜鉛合金の粉末100質量部に対して、分散媒であるゲル状のアルカリ電解液として、アルカリ電解液50質量部と、架橋型ポリアクリル酸0.35質量部、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム0.7質量部を混合し、ゲル状のアルカリ電解液を作製した。そして、このゲル状のアルカリ電解液と前記亜鉛合金の粉末とを混合してゲル状の負極3を作製した。
【0031】
この負極3に対し、AGCセイミケミカル株式会社から入手したパーフルオロアルキル基の炭素数が3、6、10であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物の他、パーフルオロアルキル基の炭素数が6であるパーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミンオキシド、および、先行技術文献に記載の化合物(C13−C−(OCOCH)−CH(CHCHCOOH)を、亜鉛合金粉100質量部に対して0.015質量部加え、セパレータ4の中空部分にそれぞれ注入した。作製した電池をそれぞれ、電池A1からA7とし、以下に説明する評価を行った。
【0032】
電池の評価は、放電・充電と高温保存とを組み合わせてこれを繰り返し、漏液の発生を観察することにより行った。放電は、100mAで連続放電させて電池電圧が1.0Vに達したら終了とした。放電後に電池を60℃で1日保管し、保管後、充電を行った。充電は、まず150mAの定電流充電を行い、その後に1.8Vの定電圧充電を行い電流値が25mAになったら終了とした。充電後に電池を60℃で1日保管した。以上を1サイクルとし、これを15サイクル繰り返した。
【0033】
電池A1からA7の各々5個ずつを評価し、何サイクル目で漏液が発生するかを確認した。漏液が発生したサイクル数の平均値の評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物以外の界面活性剤を添加した電池(電池A4〜A7)およびパーフルオロアルキル基の炭素数が10であるフッ素系界面活性剤を添加した電池(電池A3)はともに、3〜4回目の充電が行われた後の60℃保管中に漏液が発生した。
【0036】
電池A1、A2はともに、15サイクル終了後も漏液は無く、優れた耐漏液特性を有することが明確となった。
【0037】
なお、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物は、亜鉛または亜鉛合金の質量に対して0.002質量%以上含まれていると実質的な効果を得ることができた。また、0.025質量%以上含んでいても、効果の増大は得られなかった。したがって、亜鉛または亜鉛合金の質量に対して0.002質量%以上0.025質量%以下含まれていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明に係るアルカリ二次電池は、特に充電後保存時における電池内圧上昇を抑制するので、耐漏液性が高い二次電池として電子機器や玩具等の電源として有用である。
【0039】
また、アルカリ乾電池に本発明のパーフルオロアルキル基の炭素数が6以下であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 電池ケース
1a 正極端子
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 ガスケット
5a 安全弁
6 負極集電体
7 負極端子
8 外装ラベル
9 封口ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケースの内部に、正極と、亜鉛または亜鉛合金を活物質とする負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、アルカリ電解液とを収容し、電池内圧の上昇時には電池内のガスが電池外部へ放出される安全弁を有するガスケットで密封したアルカリ二次電池において、前記負極はパーフルオロアルキル基の炭素数が6以下であるパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を含んでいることを特徴とするアルカリ二次電池。
【請求項2】
前記パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物は、前記亜鉛または亜鉛合金に対して0.002質量%以上0.025質量%以下含まれている請求項1に記載されているアルカリ二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−164555(P2012−164555A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24916(P2011−24916)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】