説明

アルカリ可溶性バインダー樹脂およびその製造方法、ならびにこれを含む感光性樹脂組成物

【課題】本発明は、アルカリ可溶性バインダー樹脂およびその製造方法、ならびに液晶表示素子用カラーフィルタの製造に使用される透明感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ可溶性バインダー樹脂は、エポキシ基を含むもののカルボン酸を含まないものであって、これを含む感光性樹脂組成物は保管安定性に優れ、現像工程中の小さいパターンの流失を防ぎ、パターン形成時にアンダーカットを減少させる効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性バインダー樹脂およびその製造方法、ならびにこれを含む液晶表示素子のカラーフィルタの製造に使用される透明感光性樹脂組成物に関するものであり、より詳しくは、側鎖(side chain)に酸を含まないアルカリ可溶性バインダー樹脂を含む感光性組成物は、保管安定性に優れ、現像工程中の小さいパターンの流失を防ぎ、パターン形成時にアンダーカットを減少させることができる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子に使用される液晶セルの構造は、大きく分けて駆動のための薄膜トランジスタ基板と、色を実現するカラーフィルタと、そして二枚の基板間の液晶とからなっている。前記カラーフィルタは、顔料が分散した感光性有機物質を用いてフォトリソグラフィ法によってパターンを形成した後、カラー映像を実現するために3種以上の透過-吸収波長を有するカラーインクを用いて画素を形成する基板である。カラーフィルタ基板には、画素以外にもケースにより画素の段差を減少させるためにオーバーコートが使用されたり、或いは液晶セル内部の間隔を一定に維持させるためにコラムスペーサをパターニングする。
【0003】
オーバーコートを形成したり、或いはコラムスペーサをパターニングする場合、フォトリソグラフィが可能な感光性樹脂組成物、その中でもネガティブ型組成物を一般的に使用し、このような組成物においてアルカリ溶解性を付与するためにカルボン酸、特にカルボキシ酸を含むバインダーを使用してきた。
【0004】
しかしながら、カルボン酸を含む場合は、バインダー高分子が他のバインダー高分子や架橋剤、または接着調剤などと反応して架橋することにより、時間の経過により溶液の粘度が上昇するという問題がある。
【0005】
溶液の粘度が上昇すると、膜を塗布する時に厚さ変化が発生するため、工程条件の調節が困難になる。したがって、前記溶液を5℃付近で冷蔵保管する方法があるが、保管場所や冷蔵施設に伴う付随費用が発生し好ましくない。
【0006】
なお、バインダー自体にカルボン酸が含まれている場合は、アルカリに対する溶解程度が過度に上昇されて現像工程中にアンダーカットが発生し、これにより、10ミクロン以下の小さいパターンが流失するなどの欠点がある。このような現象を防止するために現像液として使用されるアルカリ水溶液の温度を低くし、或いは前熱処理時間を長くする方法があるが、これも工程条件を変更し最適化するのに伴う費用が嵩むという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のカルボン酸を含むアルカリ可溶性バインダー樹脂が有する前記問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、感光性樹脂組成物に含まれる新規なアルカリ可溶性バインダー樹脂とその製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記のようなアルカリ可溶性バインダー樹脂を含む感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、感光性樹脂組成物に含まれるバインダー樹脂にアルカリ可溶性を付与するために、カルボン酸を含む構造においてカルボン酸を含まなく、エポキシ基を含むように設計することによって、前記のような問題点を解決できるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、長時間保管しても粘度が上昇しなく、小さいパターンの場合も現像工程中に流失しなく、アンダーカットの発生が抑制される効果がある。また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、カルボン酸を含まない高分子樹脂化合物をバインダー樹脂として使用することにより、感光性樹脂組成物の保管安定性が改善され、現像工程中の小さいパターンの流失を防ぎ、パターン形成時にアンダーカットを減少させる効果があるため、液晶表示素子のコラムスペーサ、オーバーコート、パッシベーション材料などの硬化に有利であるだけでなく、工程時の不良率を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のアルカリ可溶性バインダー樹脂は次の一般式1で表示されることを特徴とする。
【化1】

【0012】
前記式中、R〜Rは、互いに同じであるか、或いは異なるものであって、各々水素原子またはメチル基であり、各反復単位l、m、nの合計を100モル%と仮定した時、lとmの合計は50〜85モル%であり、nは15〜50モル%であり、Spは-C2k-で表現されるアルキレン基であって、k=2〜5以内の値を有する。
【0013】
また、本発明のアルカリ可溶性バインダー樹脂の製造方法は、ベンジルアクリレートまたはベンジルメタクリレート、エポキシ基を含むアクリル単量体、およびヒドロキシ基を含むアクリル単量体を共重合させる段階を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、前記一般式1で表示されるアルカリ可溶性バインダー樹脂1〜20重量%、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物1〜20重量%、光開始剤0.05〜10重量%、および溶媒10〜95重量%を含むことを特徴とする。
【0015】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0016】
本発明に係るアルカリ可溶性バインダー樹脂は前記一般式1で表示される化合物である。
【0017】
前記一般式1で表示されるバインダー樹脂において、l、m、nは反復単位を示し、lはベンジルアクリレートまたはベンジルメタクリレートから選択されたベンゼングループを含むアクリル単量体、mはエポキシ基を含むアクリル単量体であって、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート、およびnはヒドロキシ基を含むアクリル単量体であって、ヒドロキシエチルアクリレートまたはメタクリレートを示す。ここで、前記l、m、nの合計を100モル%と仮定した時、lとmの合計は50〜85モル%であり、nは15〜50モル%であるものが好ましい。特に、前記nはl+m+nの15〜50モル%の値を有さなければならなく、15モル%未満である場合は現像特性が悪くなり、50モル%を超える場合は水素結合によって粘度が上昇して扱い難くなるという欠点がある。
【0018】
本発明に係る一般式1で表示されるアルカリ可溶性バインダー樹脂は、カルボン酸を含まなく、エポキシ基などを含んでいることが分かり、前記カルボン酸を含まなくてもアルカリ現像液に対して溶解性を有することを特徴とする。 しかしながら、本発明の効果を害しない限り、他の単量体をさらに共重合して使用することもできるが、例えば、スチレン、メチルメタクリレート、N-フェニルマレイミド、およびメチルアクリレートからなる群より選択された1種以上の反応性単量体を反復単位で含む。前記反応性単量体は前記アルカリ可溶性バインダー樹脂内に30モル%以内で含むことが可能である。
【0019】
一方、前記アルカリ可溶性バインダー樹脂の製造方法は、ベンゼングループを含むアクリル単量体、エポキシ基を含むアクリル単量体、およびヒドロキシ基を含むアクリル単量体を共重合させる段階を含む。
【0020】
前記共重合方法は、通常の方法で遂行でき、その中でもラジカル反応によって遂行されることが好ましく、具体的には重合開始剤を溶媒に溶かした後、ここにベンジルアクリレートまたはベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレート、そしてグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートを投入して窒素雰囲気で30〜100℃を維持し、10〜15時間反応させてアルカリ可溶性バインダー樹脂を得る。
【0021】
前記のラジカル重合に使用される重合開始剤の種類としては、安息香酸のペルオキシド(Benzoic-Peroxide、BPO)、ジ-t-ブチル-ペルオキシド(Di-t-Butyl-Peroxide、DTBPO)、クメン-ヒドロペルオキシド(Cumene-Hydroperoxide、CHPO)、t-ブチル-ヒドロペルオキシド(t-Butyl-Hydroperoxide)、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(t-Butyl-Peroxy-2-Ethylhexanoate)、t-ブチル-ペルオキシ-ベンゾエート(t-Butyl-Peroxy-Benzoate)、アゾビス-ジメチル-バレロニトリル(Azobis-Dimethyl-valeronitrile、V-65)、アゾビス-イソブチロニトリル(Azobis-isobutylonitriel AIBN)のような群より選択された1種以上であるが、重合開始効果がある限り、特にこれに限定するのではない。
【0022】
一方、前記一般式1で表示されるアルカリ可溶性バインダー樹脂は、本発明の趣旨を外れない範囲で耐熱性または耐化学性の改善のために、スチレン、メチルメタクリレート、N-フェニルマレイミド、およびメチルアクリレートからなる群より選択された1種以上の反応性単量体をさらに添加し共重合して使用することも可能である。
【0023】
前記のように得られた本発明に係るアルカリ可溶性バインダー樹脂の重量平均分子量は1,000〜50,000以内が好ましく、分子量が1,000未満の場合は薄膜形成が困難であり、50,000を超える場合は粘度が高いため扱い難いという欠点がある。
【0024】
一方、本発明は、前記のような特性を有するアルカリ可溶性バインダー樹脂1〜20重量%、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物1〜20重量%、光開始剤0.05〜10重量%、および溶媒10〜95重量%を含むアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物を提供することも特徴とする。
【0025】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、前記アルカリ可溶性バインダー樹脂は、カルボン酸のような有機酸を含むモノマーを含まないもので、具体的には次の一般式2と3で示すことができる。
【化2】

前記式中、l、m、nおよびSpは前記一般式1で定義したことと同一である。
【化3】

前記式中、l、m、nおよびSpは前記一般式1で定義したことと同一である。
【0026】
前記のようなアルカリ可溶性バインダー樹脂は、感光性樹脂組成物の全体重量中1〜20重量%で含まれることが、厚さ1〜100ミクロンの薄膜を形成するのに好ましい。1重量%未満の場合は薄膜形成がされなく、20重量%を超える場合は粘度が上昇し薄膜が非常に厚く形成されるという欠点がある。
【0027】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物において、前記エチレン性不飽和結合を有する代表的な重合性化合物としては、次の一般式4〜7の化合物を挙げられるが、本発明の趣旨に符合する限り、これらに限定されるのではなく、当該技術分野において知られているものなどを使用することができる。
【0028】
前記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物にはエポキシ基が含まれていないため、バインダー樹脂とは異なり次の一般式5、一般式7のように有機酸を含む構造を使用することが可能である。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0029】
前記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、1〜20重量%を使用することが好ましく、1重量%未満の場合は充分な重合効果を期待し難く、20重量%を超える場合はアルカリ可溶性バインダー樹脂の相対的量が不充分であるため、薄膜形成が困難だという欠点がある。
【0030】
前記一般式で表示されるエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物以外に他の重合性化合物の具体的な例を挙げると、ジペンタエリスリトールに導入した形態として、KAYARAD DPCA-20、KAYARAD DPCA-30、KAYARAD DPCA-60、KAYARAD DPCA-120等があり、テトラヒドロフルフリルアクリレートに導入したKAYARAD TC-110S、ネオペンチルグルコールヒドロキシピバレートに導入したKAYARAD HX-220、KAYARAD HK-620等がある。エチレン性不飽和結合を有する官能性モノマーで、その他の官能性モノマーとしてはビスフェノールA誘導体のエポキシアクリレート、ノボラック-エポキシアクリレート、ウレタン系の多官能性アクリレートとしてはU-324A、U15HA、U-4HAなどがある。前記エチレン性不飽和二重結合を有する官能性モノマーは単独でもしくは2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、前記光活性のラジカル開始剤としては1または2種以上を混合して使用することができるが、その例としては2,4-トリクロロメチル-(4'-メトキシフェニル)-6-トリアジンのようなトリアジン系化合物、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾールのようなビイミダゾール化合物、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンなどのようなアセトフェノン系化合物、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系化合物、2,4-ジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系化合物、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドのようなフォスフィンオキサイド系化合物、3,3'-カルボニル-7-(ジエチルアミノ)クマリンのようなクマリン系化合物、Ciba Geigy社のIrgacure OXE-01、OXE-02のようなO-アシルオキシム系化合物などを挙げられるが、特にこれに限定されるのではなく、当該技術分野において知られているものなどを使用することができる。その含有量は、感光性樹脂組成物の全体重量に対して0.05〜10重量%で使用することが好ましい。
【0032】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、前記溶媒は、1または2種類以上の混合物を使用することができるが、その例としてはメチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、2-エトキシプロパノール、2-メトキシプロパノール、3-メトキシブタノール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ブチルアセテート、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選択されたものであるが、必ずしもこれに限定されるのではなく、当該技術分野において知られているものなどを使用することができる。
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合抑制剤、可塑剤、接着促進剤、充填剤または界面活性剤などの添加剤をさらに1種以上含むことができる。
【0034】
前記の硬化促進剤の例としては、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、および2-メルカプト-4,6-ジメチルアミノピリジンからなる群より選択されたものであるが、必ずしもこれに限定されるのではなく、当該技術分野において知られているものなどを使用することができる。
【0035】
前記の熱重合抑制剤の例としては、p-アニソール、ヒドロキノンなどを挙げられるが、必ずしもこれに限定されるのではなく、当該技術分野において知られているものなどを使用することができる。
【0036】
前記の可塑剤、接着促進剤、充填剤および界面活性剤などとしても従来の感光性樹脂組成物に含まれる全ての化合物が使用可能である。
【0037】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法、スロットダイ(slot-die)コーティング法、各種印刷法、沈積法などの方法を用いて、金属、紙、ガラス、プラスチック基盤などの支持体に塗布することができる。
【0038】
また、前記支持体上に塗布した後、その他の支持体上に転写させたり、第1の支持体に塗布させた後、ブランケットなどに転写させてから再度第2の支持体に転写することも可能であり、その適用方法は特に限定されない。
【0039】
本発明に係る感光性樹脂組成物を硬化させるための光源の例としては、波長が250〜450nmの光を発散する水銀蒸気アーク、炭素アーク、キセノンアーク、ハロゲンアークなどを使用することができるが、特にこれに限定されるのではなく、当該技術分野において知られているものなどを使用することができる。
【0040】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、光硬化性塗料、光硬化性インク、LCDカラーフィルタ製造用透明感光性組成物、顔料分散型感光性樹脂組成物、LCDまたは有機発光ダイオードの遮光膜形成用感光性樹脂組成物の製造などに使用することができ、その用途は特に制限がない。
【0041】
なお、本発明は、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて製造することを特徴とする液晶表示装置用透明薄膜層を提供する。前記液晶表示装置用の透明薄膜層は本発明に係る感光性樹脂組成物を用いることを除いては、当該技術分野において知られている一般的な製造方法によって製造することができる。
【0042】
なお、本発明は、前記液晶表示装置用透明薄膜層を含んで製造することを特徴とする液晶表示装置を提供する。前記液晶表示装置は、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された液晶表示装置用透明薄膜層を含んで製造することを除いては当該技術分野において知られている一般的な製造方法によって製造することができる。
(実施の形態)
【0043】
以下の実施例によって本発明をより詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものだけで、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるのではない。
(合成例1)
【0044】
重合開始剤のAzobis-Dimethyl-valeronitrile(V-65)をジエチレングリコールメチルエチルエーテルに溶かした後、ここにベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、そしてヒドロキシエチルメタクリレートを35:40:25のモル比で投入して窒素雰囲気で50〜70℃を維持し、10〜14時間反応させてアルカリ可溶性バインダー樹脂を得た。前記の製造されたアルカリ可溶性バインダー樹脂の重量平均分子量は19,500であった。
(合成例2)
【0045】
ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、そしてヒドロキシエチルメタクリレートのモル比を29:43:28にし、反応温度を40〜50℃にしたことを除いては合成例1と同じ方法で製造し、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は13,100であった。
(合成例3)
【0046】
重合開始剤のAzobis-Dimethyl-valeronitrile(V-65)をジエチレングリコールメチルエチルエーテルに溶かした後、ここにベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、そしてヒドロキシエチルアクリレートを35:40:25のモル比で投入して窒素雰囲気で50〜70℃を維持し、10〜14時間反応させてアルカリ可溶性バインダー樹脂を得た。前記の製造されたアルカリ可溶性バインダー樹脂の重量平均分子量は19,800であった。
(合成例4)
【0047】
反応温度を40〜50℃にしたことを除いては前記合成例3と同じ方法で製造し、製造されたアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は13,300であった。
(合成例5)
【0048】
単量体としてベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、そしてスチレンを30:35:25:10のモル比で投入したことを除いては合成例1と同様に製造し、製造されたアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は19,100であった。
(合成例6)
【0049】
単量体としてベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、そしてスチレンを30:35:25:10のモル比で投入することを除いては合成例3と同様に製造し、製造されたアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は19,300であった。
(実施例1)
【0050】
前記の合成例1によるアルカリ可溶性バインダー樹脂8重量部、一般式4の重合性化合物16重量部、光重合開始剤としてCiba Geigy社のIrgacure OXE-02 1重量部と有機溶媒のシクロヘキサノン75重量部をシェーカーを用いて3時間混合させた。前記混合感光性溶液を5ミクロンの大きさのフィルタを用いてろ過し、ガラスの上にスピンコーティングして約100℃に2分間前熱処理し、厚さが約4ミクロンとなる均一なフィルムを形成させた。
【0051】
前記フィルムを1から20ミクロンまで1ミクロン間隔の直径を持った円形の独立パターン型フォトマスクを用いて高圧水銀ランプ下で露光させた後、パターンをpH11〜12の間のKOHアルカリ水溶液で現像し、脱イオン水で洗浄した後、基板上のパターンを観察した。小さいパターンが流失する程度を調べるために、ガラス基板上に残っている最小大きさのパターン(最小残留パターン)をマスクの大きさを基準として判断し、アンダーカットの発生有無は電子走査顕微鏡を用いて断面を観察することにより、直径20ミクロンのパターンから発生したアンダーカットの程度を基準として判断した。
【0052】
透明感光性組成物の保管安定性を測定するために、前記混合感光性溶液20gを50mLの透明ポリエチレン瓶に入れ密封した後、45℃に維持されるオーブンの中に24時間保管した後に粘度の上昇程度(%)を観察した。
(実施例2)
【0053】
アルカリ可溶性バインダー樹脂として前記合成例2で製造されたバインダー樹脂8重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例3)
【0054】
アルカリ可溶性バインダー樹脂として前記合成例3で製造されたバインダー樹脂8重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例4)
【0055】
アルカリ可溶性バインダー樹脂として前記合成例4で製造されたバインダー樹脂8重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例5)
【0056】
アルカリ可溶性バインダー樹脂として前記合成例5で製造されたバインダー樹脂8重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例6)
【0057】
アルカリ可溶性バインダー樹脂として前記合成例6で製造されたバインダー樹脂8重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例7)
【0058】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式5の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例8)
【0059】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式5の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例2と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例9)
【0060】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式5の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例3と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例10)
【0061】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式5の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例4と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例11)
【0062】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式5の化合物16重量部を使用することを除いては、前記実施例5と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例12)
【0063】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式5の化合物16重量部を使用することを除いては、前記実施例6と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例13)
【0064】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式6の化合物16重量部を使用することを除いては、前記実施例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例14)
【0065】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式6の化合物16重量部を使用することを除いては、前記実施例2と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例15)
【0066】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式6の化合物16重量部を使用することを除いては、前記実施例3と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例16)
【0067】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式6の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例4と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例17)
【0068】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式6の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例5と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例18)
【0069】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式6の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例6と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例19)
【0070】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式7の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例20)
【0071】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式7の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例2と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例21)
【0072】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式7の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例3と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例22)
【0073】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式7の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例4と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例23)
【0074】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式7の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例5と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(実施例24)
【0075】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式7の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記実施例6と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(比較例1)
【0076】
アルカリ可溶性バインダー樹脂として、次の一般式8で表示される化合物(l:m:n = 35:40:25、重量平均分子量20,500)8重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
【化8】

(比較例2)
【0077】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式5の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記比較例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(比較例3)
【0078】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式6の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記比較例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
(比較例4)
【0079】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として前記一般式7の化合物16重量部を使用したことを除いては、前記比較例1と同じ方法で感光性樹脂組成物を製造した。
【0080】
前記実施例と比較例によって得られた結果を次の表1に示す。
【表1】

【0081】
前記表1の結果から分かるように、実施例1〜24の場合は比較例1〜4と比較して保管による粘度変化が少ない。これは保管中に副反応の発生が少ないため安定性に優れるという証拠である。また、実施例1〜24から観察された最小残留パターンの大きさが比較例1〜4の場合より小さいことは、パターンの付着力に優れており、パターンと基板との間を剥離させることができるアンダーカット現象が抑制されたからである。アンダーカットの現象が深刻化するとパターンと基板との面積が減少するため、一般的にパターンの接着力が減少する。したがって、実施例1〜24を適用すると工程時のパターン流失を効果的に抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式1で表示されるアルカリ可溶性バインダー樹脂1〜20重量%、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物1〜20重量%、光開始剤0.05〜10重量%、および溶媒10〜95重量%を含むアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物。
一般式1

前記式中、R〜Rは、互いに同じであるか、或いは異なるものであって、各々水素原子またはメチル基であり、各反復単位l、m、nの合を100モル%と仮定した時、lは20〜40モル%であり、mは30〜45%であり、nは15〜50%であり、Spは-C2k-で表現されるアルキレン基であって、k=2〜5以内の値を有する。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、次の一般式4〜7からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物。
一般式4

一般式5

一般式6

一般式7

【請求項3】
前記光開始剤は、トリアジン系化合物、ビイミダゾール化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、チオキサントン系化合物、クマリン系化合物、およびO-アシルオキシム系化合物からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記溶媒は、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、2-エトキシプロパノール、2-メトキシプロパノール、3-メトキシブタノール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ブチルアセテート、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記組成物は、硬化促進剤、熱重合抑制剤、可塑剤、接着促進剤、充填剤および界面活性剤からなる群より選択された1種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物から得られた結果物。
【請求項7】
前記結果物は、光硬化性塗料、光硬化性インク、カラーフィルタ、顔料分散型組成、および遮光膜からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の結果物。
【請求項8】
請求項7に記載のカラーフィルタを含む液晶表示素子。

【公開番号】特開2013−15863(P2013−15863A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214964(P2012−214964)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2008−310294(P2008−310294)の分割
【原出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】