説明

アルカリ性イオン基を有する熱可塑性重合体を押出すことを含む膜の製造方法

本発明は、アルカリ性イオン基を有する熱可塑性重合体からなる膜の製造方法に関する。本発明に従う方法は、アルカリ性イオン基を有する重合体と少なくとも1種の可塑剤とから構成される混合物を製造し、得られた混合物を押し出してフィルムを形成し、得られたフィルムを水性媒体中で洗浄して該可塑剤を除去することからなる。当該方法は、該可塑剤が該重合体のイオン基に対して安定であり、水又は水と混和性のある溶媒に可溶の非揮発性化合物から選択され、しかも
・該重合体によって保持される該イオン基のアルカリ陽イオンに対する強い親和性を有する基、及び
・該重合体によって保持されるイオン基の陰イオン部分に対する強い親和性を有する基
から選択される基を有する揮発性化合物から選択されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性イオン基を有する熱可塑性重合体からなる膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン基を有する重合体は、燃料電池用の膜を製造するために使用できることが知られている。該イオン基は酸性基又はアルカリ性基であることができる。
【0003】
また、重合体の揮発性溶媒溶液から流延又は押出のいずれかによって重合体フィルムを製造する方法も知られている。押出は、可燃性であり得る揮発性溶媒を使用しないことが可能なため、好都合である。
【0004】
重合体がガラス転移温度に依存する押出に必要な温度で分解しないように熱安定性を有するという条件で該重合体を押し出すことができる。
【0005】
イオン基を保有しない所定の骨格を有する重合体の熱安定性と、同一の骨格を有するがイオン基を保有する重合体の熱安定性とを比較すると、イオン基を有する重合体は熱安定性がさらに低いことが分かる。従って、その分解温度は低いため、これはガラス転移温度に依存する押出に必要な温度とは相容れない。
【0006】
重合体のガラス転移温度を該重合体と可塑剤とを混合させることによって低下させて熱分解を生じさせることなく押出できることが知られているが、ここで、この可塑剤は、押出後に除去される。この方法によって押し出された重合体は、イオン基を有しない重合体である。熱可塑性重合体の押出のために使用される可塑剤としては、塩素化又は非塩素化パラフィン、カルボン酸エステル(例えば、アジピン酸エステル、安息香酸エステル、クエン酸エステル及びフタル酸エステル)、燐酸エステル及びトルエンジスルホンアミドが挙げられる。例えば、H.H.Kausch外(Traite des Materiaux(Materials Compendium),14巻,Presses Polytechniques et Universitaires Romandes,仏国ローザンヌ,2001)には、可塑剤として有機剤を導入した後にポリスチレンを押し出すことが記載されている。
【非特許文献1】H.H.Kausch外,Traite des Materiaux(Materials Compendium,14巻,Presses Polytechniques et Universitaires Romandes,仏国ローザンヌ,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、アルカリ性イオン基を有する重合体のフィルムを、該重合体と可塑剤との混合物を押出し、次いで該可塑剤を押出によって得られたフィルムから除去することによって製造することを考えてきた。しかしながら、イオン基を有しない重合体の押出用の可塑剤として知られている多くの化合物の全てがアルカリ性基を有する重合体と共に使用できないことが分かった。例えば、パラフィンは、イオン基に対する親和性がほとんどなかった。
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、アルカリ性イオン基を有する重合体用の可塑剤として使用できる化合物群を明確にすることができた。該可塑剤は、そのガラス転移温度を低下させ、且つ、該重合体の分解温度よりも低いままである押出温度を可能にする。
【0009】
従って、本発明の目的は、アルカリ性イオン基を有する熱可塑性重合体を押し出すことによって膜を製造するための方法及び得られた膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従う方法は、アルカリ性イオン基を有する重合体と少なくとも1種の可塑剤とから構成される混合物を製造し、得られた混合物を押し出してフィルムを形成し、次いで、得られたフィルムを水性媒体中で洗浄して該可塑剤を除去することからなる。当該方法は、該可塑剤が、非揮発性化合物であって該重合体のイオン基に対して安定であり、水又は水と混和性のある溶媒に可溶であり、しかも
・該重合体によって保持される該イオン基のアルカリ陽イオンに対する強い親和性を有する基、及び
・該重合体によって保持されるイオン基の陰イオン部分に対する強い親和性を有する基
から選択される基を有する非揮発性化合物から選択されることを特徴とする。
【0011】
一般に、該重合体によって保持されるイオン基の陰イオン部分に対する強い親和性を有する基を保持する化合物は、該イオン基のアルカリ陽イオンに対しても、程度の差はあるが強い所定の親和性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
表現「非揮発性化合物」とは、所定の化合物であって、その沸点温度が重合体の最大押出温度よりも高い、好ましくは、>200℃であるものを意味するものとする。
【0013】
イオン基の陽イオン部分に対する親和性及び陰イオン部分に対する親和性は、それぞれ、Gutmanによって定義され且つC.Reichardt,「Solvents and solvent effects in organic chemistry」,第2版,VCH,1990で公開された「ドナー数」及び「アクセプター数」スケールで定義されるドナーの性質又はアクセプターの性質によって評価できる。
【0014】
提案する方法は、熱可塑性重合体であってその鎖が同一の又は異なる反復単位から構成されるものから膜を製造するために使用することができ、ここで、それぞれの反復単位は、少なくとも1個の官能基及び少なくとも1個の単環式又は多環式芳香族基を有し、該官能基はエステル、ケトン、エーテル、スルフィド、スルホン、ベンゾオキサゾール、アミド及びイミド基から選択され、該芳香族基の少なくともいくつかは、アルカリ性イオン基を有する。
【0015】
式−Ap-(M+p(式中、Aはイオン基の陰イオン部分を表し、pは陰イオン部分の価数を表し、Mはアルカリ金属を表す。)で表されるイオン基は、反応媒体中で十分に解離する全てのイオン基から選択できる。例としては、−O-+基、スルホン酸塩−SO3-+基、硫酸塩−OSO3-+基、カルボン酸塩−CO2+基、チオカルボン酸塩−C(=S)O-+基、ジチオカルボン酸塩−CS2-+基、ホスホン酸塩−PO32-(M+2基、スルホニルアミド−SO2NH-+基及びスルホニルイミド(X−SO2NSO2−)-+ 基(式中、Xは、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する過弗素化又は部分弗素化アルキル基、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する過弗素化又は部分弗素化アルケニル基、オキシアルキレンCH3−(O−(CH2mn基(ここで、好ましくは2≦m<5、1≦n≦10である)又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香環を有し、且つ、随意に置換基を有するアリール基である。)が挙げられる。
【0016】
この方法は、イオン基の含有量が1mol/kg重合体以上である重合体について特に有利である。
【0017】
熱可塑性重合体の例としては、官能基−Ap-(M+pが上記イオン基のいずれかを表し、記号n、m、x及びyがそれぞれ反復単位の数を表す次のセグメント:
・所定の反復単位がアルカリ性イオン基を有するポリエーテル、例えば式Iに相当するポリフェニレンオキシド(式中、R及びR1は、互いに独立して、H、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルケニル基又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香環及び随意に置換基を有するアリール基:
【化1】

・鎖中にエーテル官能基及びケトン官能基を有する単位から構成され、所定の単位がアルカリ性イオン基を有するポリエーテルエーテルケトン、例えば、以下の式IIに相当するポリエーテル:
【化2】

・鎖中にエーテル官能基及びケトン官能基を有する単位から構成され、所定の単位がアルカリ性イオン基を有するポリエーテルケトン、例えば、以下の式IIIに相当するポリエーテル:
【化3】

・所定の単位がアルカリ性イオン基を有するポリベンゾオキサゾール、例えば、反復単位が以下の式IVに相当する重合体:
【化4】

・所定の単位がアルカリ性イオン基を有し、押出の熱によってポリイミド、例えば以下のポリイミドV;
【化5】

に変換されるポリアミド酸;
・式Vに相当するポリイミド;
・例えば次式VIに相当する単位を含むポリパラフェニレン:
【化6】

例えば、Maxdem社により商品名「POLY−X200」の下で販売されているポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン);
・ポリフェニレンスルフィド、例えば反復単位が以下の式VIIに相当する重合体:
【化7】

・ポリエーテルスルホン、例えば、以下の式VIIIに相当する重合体(式中、R2は単結合又は−C(CH3)−基を表す。):
【化8】

から選択されるセグメントを含む重合体が挙げられる。
【0018】
該重合体の特定の一群は、以下のセグメントから選択され、そのイオン基が−SO3M(MはNa、Li又はKである。)であるセグメントを含む重合体から構成される。これらは、次式:
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

で表される。
【0019】
上記式において、記号n、m、x及びyは、それぞれ反復単位の数を表し、また、これらは、重合体の分子量が好ましくは20000g/mol〜500000g/molの間であり、且つ、イオン交換容量IECが0.8H+/gを超えるように選択される。
【0020】
アルカリ陽イオンとの高い親和性のために可塑剤として使用できる化合物は、次のものから選択できる:
・高い沸点、例えば200℃を超える沸点を有するエーテル。CH3、OH又はNH2末端基を有していてよいオリゴエーテル、例えば、オリゴオキシエチレン−α,ω−ジオール(OED)であって400g/mol(OED−400)の重量又は200g/mol(OED−200)の重量を有するものを使用することが可能である;
・スルホンR3−SO2−R4(式中、R3及びR4は、互いに独立して、1〜3個の炭素原子を有するアルキル又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香環(例えば、フェニル基、トリル基又はナフチル基)を有するアリールを表し、或いはR3及びR4は一緒になってビラジカル(例えば、−R3−R4−は−CH2CH2CH2CH2−を表す)を形成して、スルホランを与えるSO2基を有する環を形成する。)を表す;
・式HCONR67(式中R6及びR7は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)に相当するカルボキシアミド、例えばジメチルホルムアミド;及び
・テトラアルキルスルファミドのようなスルホンアミド、例えば、式(C252N−SO2−N(C252のテトラエチルスルファミド。
【0021】
該イオン基の陰イオン部分に対する親和性のために可塑剤として使用できる化合物(また、これは、程度の差はあるが陽イオンに対する強い親和性も同時に有する)は、高い沸点(好ましくは200℃を超える)及び高い(好ましくは200℃を超える)熱安定性を有し、且つ、例えば、窒素原子上に1又は2個の水素原子を有するカルボキシアミド官能基及びスルホンアミド官能基(即ち、スルファミド)、アルコール、チオール、フェノール、第一アミン及び第二アミン官能基並びにのようなプロトン性官能基を保持する化合物である。これらの化合物は、
・少なくとも2個の炭素原子を有するアルカノール、アルカンから少なくとも2個の水素原子をOH基で置換することによって誘導されたポリオール[例えば、ソルビットHO−CH2−[CH(OH)]4−CH2OH、ペンタエリトリットC(CH2OH)4及びグリセリンHO−CH2−CH(OH)−CH2OH]よりなる群から選択されるアルコール並びにエーテル基を有する化合物[例えば、式R5−(OCH2−CH2n−OH(式中、R5はH又はCH3であり、n=1〜100、好ましくは3〜30である)に相当するω−ヒドロキシオリゴ(オキシエチレン)];
・モノアミン、ジアミン又はトリアミンオリゴマー(例えば、TexacoがJEFFAMINE(商標)という商品名で販売する化合物 )であって、その窒素原子が1〜2個のオリゴ(オキシエチレン)基を保持するもの;
・スルファミドH2N−SO2−NH2、スルホンアミドR8−SO2NH2(ここで、R8は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香環(例えばフェニル基、トリル基又はナフチル基)を有するアリール基である);及び
・第一又は第二アミド、例えばホルムアミド又はメチルホルムアミド
から選択できる。
【0022】
上記定義に相当する可塑剤化合物は、押し出される重合体に単独で導入してもよいし、又は重合体骨格に対して可塑剤として作用する化合物の存在下で導入してもよいが、ただし、この場合、これら2つの化合物が混和性であることを条件とする。
【0023】
押出を受けるイオン性熱可塑性重合体と可塑剤の混合物は、さらに、押出後に得られた重合体フィルムの機械的強度を改善させることを目的とした充填剤及び最終材料に他の特性を与えることを目的とした充填剤から選択できる充填剤をさらに含有することができる。機械的強度を改善させることを目的とした充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、セルロースミクロフィブリル、アルミナ線維及び商品名「KEVLAR(商標)」の下で販売されているポリアラミド線維から選択できる。押出後に得られたフィルムの親水性、つまりその伝導性を改善させることを目的とした充填剤は、ホスファトアンチモン酸(H3)である。
【0024】
式(VIIIa)に相当するスルホン化ポリスルホン型の重合体:
【化17】

は、Solvayによって、それぞれ商品名UDEL(商標)(式中、R2は−C(CH32−基を表す。)及びRADEL(商標)(式中、R2は単結合を表す。)の下に販売されている重合体から得ることができる。これらの重合体は、上記重合体(VIIIa)の構造と同様の構造を有するが、これらのものは、いかなるイオン基も有しない。UDEL又はRADEL先駆重合体(Ip)から重合体(VIIIa)を製造するための方法は、次の工程:
1.重合体(Ip)を塩素化有機溶媒(例えば、ジクロロエタンDCE、テトラクロロエタンTCE若しくはジクロロメタンDCM)又はクロロホルムから選択される溶媒に溶解してなる無水溶液を調製し;
2.スルホン化反応体であるクロルスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を製造し;
3.これら2つの無水溶液を、強く撹拌しつつ、アルゴン下で数時間にわたり30℃〜65℃の温度で接触させ;
4.該スルホン化重合体を1mol/L水酸化ナトリウムエタノール溶液中で沈殿後、ろ過によって抽出し;
5.ナトリウム塩の形態の該重合体をろ過し、そして中性のpHまで水で洗浄し;
6.該スルホン化重合体(ナトリウム塩)を、動的真空下で40℃〜80℃の温度、例えば50℃で乾燥させること
を含む。
【実施例】
【0025】
本発明を次の実施例で例示するが、これは本発明を限定するものではない。
これらの例において、様々な試料を、DSCの商品名でTAインストルメント社により販売されている装置を使用して示差走査熱量測定により分析した。試料を加熱する方法によって、全熱流の成分が可逆シグナルと呼ばれるシグナルと不可逆シグナルと呼ばれる別のシグナルとに分けられた。得られるサームグラムにおいて、
・可逆シグナルを表す曲線は、ガラス転移のような可逆温度遷移に相当し、また、不可逆シグナルを表す曲線は、溶融又は結晶化のような不可逆温度遷移に相当し;
・実線の曲線は全熱流を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表し;及び
・エネルギーQ(W/gのポリスルホン)はy軸に表されており、温度Tはx軸に表されている。
【0026】
例1は、イオン基を有するスルホン化ポリスルホンの製造に関する。
【0027】
例1
スルホン化ポリスルホンナトリウム塩の製造
第一工程の間に、UDEL(商標)重合体の無水溶液を1600g(3.62mol)のUDEL(商標)重合体を16LのDCEに50℃で溶解させ、次いで、1LのDCEが除去されるまで共沸蒸留によって該溶液を乾燥させることにより調製した。
同時に、クロルスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を472g(4.34mol)の塩化トリメチルシラン及び422g(3.6mol)のクロルスルホン酸(ClSO3H)を500mLの乾燥DCE中にアルゴン下で2時間にわたり磁気撹拌しつつ溶解させ(全ての成分は無水である)、形成されたHClを捕捉して製造した。
第二工程の間に、この2つの無水溶液をアルゴンパージ下で混合し、そして該混合物を17時間にわたり強く撹拌しつつ35℃で保持した。
第3工程中に、該溶液を、1mol/LのNaOHを含有するエタノールで沈殿させた。形成された沈殿物をろ過で分離し、そしてこれをエタノールで3回、続いて蒸留水で中性のpHまで洗浄した。次いで、該沈殿物を空気中20℃で24時間、次いで20mbarの圧力下に55℃で72時間にわたり乾燥させた。このようにして得られたスルホン化重合体(PSUSNa)は、0.64H+/mol(1.3ミリ当量/g)のスルホン化度(イオン交換容量IEC)を有していた。
該スルホン化重合体のIECを3つの技術:1H NMR分析、赤外分光分析及び酸塩基滴定によって決定した。酸塩基滴定を、1mol/L塩酸溶液にナトリウム塩の形態の重合体を室温で12時間浸漬した後に実施してナトリウムをプロトンに変換させた。次いで、この酸の状態のスルホン化重合体をろ過し、そして減圧下で24時間にわたり50℃で乾燥させた。1gの乾燥重合体を100mLのジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGME)に溶解させ、そして変色指示薬(メチルオレンジ)の存在下で2.5×10-3mol/L水酸化ナトリウムDGME溶液を添加した。図1は1H NMRスペクトルを示しており、図2はIRスペクトルを示している。図2において、Tは透過率、Nは波数を表している。
ポリスルホンのDSCサーモグラムを図3に示しており、そしてこれは、融点が252℃であることを示している。
【0028】
例2〜4
例2〜4は、スルホン化ポリスルホン及び可塑剤を含む様々な組成物の押出性を実証し、且つ、膜の製造を説明するものである。これらの例は、Gottfert1500毛管レオメータで実施した動的レオメトリー及び押出の試験を説明するものである。動的レオメトリーは、時間と温度の等価性を用いることにより、ブレンドが押出器中で受ける剪断勾配条件下で該ブレンドを特徴付けることを可能にする。該毛管レオメータは、その操作性のため及び重合体の消費量があまり多くないため、押田性の研究によく適する。2タイプのレオメトリー試験によって得られたデータは、一軸又は二軸押出器における押出を表すものである。
【0029】
例2
スルホン化ポリスルホン/ソルビット
この例を、例1からの手順に従って得られたポリスルホンの画分(PSUSNAとして知られている)及び可塑剤としてのソルビットを使用して実施した。PSUSNAは、例1に従って得られたポリスルホンを摩砕し、次いで300μm未満の寸法にまで選別することによって得られた、300μm未満の寸法を有する粒子から構成させる生成物を表す。
図4は、ソルビットのDSCサーモグラムを示しており、これは、該ソルビットが98℃の融点を有することを示している(不可逆シグナルの曲線上の変曲点)。
PSUSNA/ソルビット混合物(44/56の容量比に相当する40/60重量比で表す)を、70cm3のチャンバーと25mm直径の逆回転ローターとを備えるRheomixミキサー(Haak社製)内で作製した。該チャンバー上には、充填を実施するホッパーが搭載されていた。該ミキサーの温度を180℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
8.8gのPSUSNA及び18.6gのソルビットを1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、琥珀色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち180℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は軟質になった。
図5は、該混合物のDSCサーモグラムを示す。これは、そのガラス転移温度が−23℃であったことを示している。
得られたPSUSNA/ソルビット混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(商品名IKAの下で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、60℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
ある種の組成物を押し出すことを可能にするためには、その粘度は、該組成物が押出温度で流動する程度に低いことが必要である。該PSUSNA/ソルビット混合物の粘度を、ARESレオメーター(Rheometrics社製)により160℃〜200℃で10-1〜102-1の剪断勾配にわたる動的レオメトリーで特徴付けた。これらの粘度測定から、該混合物の押出中の挙動を、時間−温度重ね合わせの原理によって与えた。図6は、該混合物の160℃、180℃及び200℃での挙動を示している。y軸において、η*は粘度を示し、x軸において、fは試料の歪み頻度を示している。細い実線の曲線は、弾性率、即ち貯蔵弾性率G'及び粘性係数、即ち損失弾性率G”を表す。太い実線の曲線は粘度η*を表す。
これらの曲線は、押出を代表する剪断について、PSUSNA/ソルビット混合物の粘度が104-1で10Pa.sに近く、非常に低いことを示している。そのため、該混合物は押出できた。
フィルムを、Gottfert1500毛管レオメータを使用してPSUSNA/ソルビット混合物を押し出すことによって製造した。このレオメーターは、該混合物が導入される加熱容器を備えていた。ピストンが0.8mmの厚さを有するシートダイを介して該溶融混合物を押圧する。この押出温度は、該重合体が流動するように該混合物のガラス転移温度を超える必要があるが、ただし可塑剤の蒸発温度よりも低くなければならないが、この場合において押出温度は200℃であった。ダイから出たときのフィルムの厚さは0.8mmであり、そして、該フィルムの延伸によってその厚さを0.1mmにまで減少させた。
次いで、該フィルムを室温にまで冷却させた。このものは透明であり、しかもその表面にはいかなる欠陥もなかった。
次いで、該フィルムを0.5mol/Lの塩酸溶液中に24時間にわたって室温で浸漬させて、該溶液中に溶解している可塑剤を除去し、そして該膜を酸性化させた。該材料の乾燥後のNMR分析により、該可塑剤が完全に除去されたことをチェックすることが可能となり、ここで、このNMRスペクトルは、図1に示した出発ポリスルホンのスペクトルと同一であった。
これらの電気化学的結果を、該フィルムが電解質を構成し且つ2個の金電極間に配置される電気化学セルにおいて、低振幅正弦波電圧を当該セルにその平行電圧付近で印加することによるインピーダンス測定によって得た。該フィルムのプロトン伝導性(20℃及び90%湿度で測定)は、140mS/cmに等しかった。
【0030】
例3
スルホン化ポリスルホン/ポリオール
この例は、例2で使用したPSUSNA重合体及び可塑剤としてポリオールを使用して製造した。得られた混合物は、75重量%、即ち72容量%のポリスルホンを含有していた。
可塑剤は、シェル社がET570という商品名で販売しているポリオールであった。DSCによって決定されるその融点は、ポリオールのDSCサームグラムを示す図7に示されるように、−60℃であった。
該PSUSNA/ポリオール混合物を例2で使用したのと同一のRheomixミキサーで製造した。該ミキサーの温度を180℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
22.56gのPSUSNA及び7.54gのイミダゾールを1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、淡褐色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち180℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は固体になり、肉眼では均質に見えた。
該混合物のガラス転移をDSCによって決定した。図8は、該混合物のDSCサーモグラムを示しており、ガラス転移温度が180℃であったことを示している。
該PSUSNA/ポリオール混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(IKAの商品名で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、80℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
該PSUSNA/ポリオール混合物の粘度を、ARESレオメーター(Rheometrics社製)により140℃〜200℃で10-1〜102-1の剪断勾配にわたる動的レオメトリーで特徴付けた。図9は、該混合物の140℃、160℃、180℃及び200℃での挙動を示している。y軸において、η*は粘度を示し、x軸において、fは試料の歪み頻度を示している。細い実線の曲線は、弾性率、即ち貯蔵弾性率G'及び粘性係数、即ち損失弾性率G”を表す。太い実線の曲線は粘度η*を表す。200℃では、該混合物は、ずり低下性混合物であり、その粘度は104-1で10Pa.sであり、非常に低い。そのため、該混合物は押出できた。
フィルムを、上記Gottfert1500毛管レオメータを使用してPSUSNA/ポリオール混合物を押し出すことによって製造した。この場合において選択した押出温度は200℃であった。ダイから出たフィルムの厚さは0.8mmであり、該フィルムの延伸によってその厚さを0.1mmまで減少させることができた。
次いで、該フィルムを室温にまで冷却させた。このものは透明であり、しかもその表面にはいかなる欠陥もなかった。
次いで、該フィルムを0.5mol/Lの塩酸溶液中に24時間にわたって室温で浸漬させて、該溶液に溶解している可塑剤を除去しし、この膜を酸性化させた。
例2と同様に、これらの電気化学的結果を、低振幅正弦波電圧を電気化学セルにその平行電圧付近で印加することによる、当該セルにおけるインピーダンス測定によって得た。該フィルムのプロトン伝導性(20℃及び98%湿度で測定)は、30±6mS/cmに等しかった。
【0031】
例4
スルホン化ポリスルホン/OED−400/H3
この例を、例2で使用したPSUS重合体、可塑剤としてのテトラエチルスルホンアミド及び充填剤として400g/molのオリゴオキシエチレン−α,ω−ジオール及び充填剤としてホスホナトアンチモン酸H3を使用して実施した。該混合物は、33重量%、即ち32容量%の可塑剤を含有していた。PSUSNA+H3画分において、H3は、PSUSNAに対して10容量%に相当する。
OED−400は、ポリオールのDSCサーモグラムを示す図10に示すように、−78℃のガラス転移温度(DSCによって決定される)を有していた。
該PSUSNA/OED−400/H3混合物を例2で使用したのと同一のRheomixミキサーで製造した。該ミキサーの温度を120℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
39.56gのPSUSNA、16.95gのOED−400及び7.05gのH3を1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、淡黄色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち120℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は固体になり、肉眼及び操作電子顕微鏡では均質であった。
該PSUSNA/OED−400/H3混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(IKAという商品名で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、60℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
フィルムを、上記Gottfert1500毛管レオメータを使用してPSUSNA/OED−400/H3混合物を押し出すことによって製造した。この場合において選択した押出温度は120℃であった。ダイから出たフィルムの厚さは0.8mmであり、該フィルムの延伸によってその厚さを0.1mmまで減少させることができた。
次いで、該フィルムを室温にまで冷却させた。このものは透明であり、しかもその表面にはいかなる欠陥もなかった。
次いで、該フィルムを0.5mol/Lの塩酸溶液中に24時間にわたって室温で浸漬させて、該水中に溶解している可塑剤を除去し、この膜を酸性化させた。
【0032】
例5〜7
これらの例において、押出は、Microcompounderという商品名でDACA社が販売する押出器を使用して実施した。
該押出器の本体は、共に組み立てられた2個の同様のプレートから形成されている。図11は、該押出器を洗浄のために開いたときに見られるようなプレート(5)の一つの正面図を示している。このものは、2個の逆回転円錐スクリュー(2,2’)が設置された胴部(1)と、該胴部内の温度を均一に維持するように該2個のプレート間に挿入された加熱カートリッジ(図示しない)と、温度センサー(図示しない)と、トルクセンサー(図示しない)と、二方弁(3)と、交換可能ダイ4と、該胴部の下部を上部に連結している導管(6)とを備えている。
胴部の体積(1)は4.5cm3であった。
2逆回転円錐円錐スクリュー(2,2’)は、100mmの長さ及び10mmの最大直径を有していた。それらの回転速度は、0〜360ppmに変更できる。この例では、その速度は100rpmであったが、これはほぼ1500s-1の平均ずり、即ち、産業上の押出条件を表すずりに相当する。
二方弁(3)は、該スクリューの終端部にある材料を再度胴部の中に戻すことができる「再循環」位置か、又は該材料をダイから出すための「押出」位置のいずれかにあることができる。
この例で使用した交換可能ダイ(4)は、2mm直径の軸対称ダイであった。Microcompounder押出器において、押出をを次の条件下で実施した。該押出器のプレートを所定の温度Teに設定した。押し出される混合物を供給ホッパーに置き、そしてピストンで胴部に押し込んだ。該胴部の内部で、2個の共回転スクリューが該材料を混合及び溶融させ、そしてこれを底部に押しやる。該材料が該胴部の底部に達したときに、このものを外部導管(6)を介して戻し、次いで、再度胴部に入れて混合する。このプロセスを、所定の期間Deにわたって数回繰り返すことができた。該重合体/可塑剤混合物の温度を温度センサーによりリアルタイムで測定した。トルクセンサー(図示しない)により、これらのスクリューの回転中に該材料によって生じた抵抗を0〜5N.m. の範囲で測定した。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイ(4)から出した。
【0033】
例5
スルホン化ポリスルホン/ソルビット
この例は、例2で使用したPSUSNA重合体及び可塑剤としてソルビットを使用して製造した。該混合物は、60重量%、即ち56容量%の可塑剤を含有していた。
押出を、4.02gのPSUSNA/ソルビット混合物、180℃のプレート温度Te及び5分の期間Deで実施した。
温度センサーによってリアルタイムで測定される該PSUSNA/イミダゾール混合物の温度は、180℃で一定のままであったが、これは、該混合物が過剰に加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは1.2N.m.であった。つまり、該材料は容易に流動した。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイから出した。得られた押出物は滑らかであり且つ室温では柔らかかった。
【0034】
例6
スルホン化ポリスルホン/OED−400/ガラス繊維
この例を、例2で使用したPSUSNA重合体、可塑剤として可塑剤として400g/molのオリゴオキシエチレン−α,ω−ジオール及び充填剤としてガラス繊維を使用して実施した。該混合物は、38重量%、即ち40容量%の可塑剤を含有していた。PSUSNA+ガラス繊維部分において、該ガラス繊維は、PSUSNAに対して10容量%に相当する。
該PSUSNA/OED−400/ガラス繊維混合物を例2で使用したのと同一のRheomixミキサーで製造した。該ミキサーの温度を120℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
22.58gのPSUSNA、14.0gのOED−400及び2.4gのガラス繊維を1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、黄色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち120℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は固体になり、肉眼及び走査電子顕微鏡では均質に見えた。
該PSUSNA/0ED−400/ガラス繊維混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(IKAという商品名で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、60℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
押出を、140℃のプレート温度Te及び5分の期間Deで、Microcompounder押出器内で実施した。
温度センサーによってリアルタイムで測定される該PSUSNA/イミダゾール混合物の温度は、140℃で一定のままであったが、これは、該混合物が過剰に加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは3N.m.であった。つまり、該材料は140℃で容易に流動した。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイから出した。得られた押出物は滑らかであり且つ室温では柔らかかった。
【0035】
例7
スルホン化 ポリエーテルエーテルケトンナトリウム塩/OED−400
重合体としてスルホン化ポリエーテルエーテルケトンナトリウム塩及び可塑剤としてOED−400を使用して実施した。該混合物は、51重量%、即ち55容量%の可塑剤を含有していた。該スルホン化ポリエーテルエーテルケトンナトリウム塩は、次の手順に従って製造した。
Goodfellowによって販売される50gのポリエーテルエーテルケトンを500mLの96%硫酸に室温で窒素雰囲気下に溶解させた。この溶解は、4時間後に完了し、そして茶色の溶液を生じさせた。次に、146mLの油剤を20%のSO3とともに添加して、98.5%に等しい硫酸濃度を達成させた。該反応混合物を45℃の温度にまでもたらし、そしてこれをこの温度で45分間保持した。次いで、該反応混合物を、5Lの冷水中で機械的に撹拌しつつゆっくりと沈殿させた。該沈殿物をろ過し、そして、蒸留水で、該使用蒸留水のpHが達成されるまで数回洗浄した。続いて、10mbarの動的真空下で3日間にわたり60℃で乾燥させた。検定を、変色指示薬(メチルオレンジ)の存在下で、2.5×10-3mol/L水酸化ナトリウムDGME溶液により、1gの乾燥重合体を100mLのジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGME)に溶解させることによって実施した。1.3ミリ当量/gのIECを得た。このようにして得られた酸性重合体を1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に戻し、そして4時間撹拌した。次いで、該沈殿物をろ過し、蒸留水で中性pHまで洗浄し、次いで10mbarの動的真空下で2日間にわたって70℃で乾燥させた。
押出を、140℃のプレート温度Te及び5分の期間Deで、Microcompounder押出器内で、0.90gのポリエーテルエーテルケトンナトリウム塩及び0.95gのOED−400を含有する混合物を該押出器に導入して実施した。
温度センサーによってリアルタイムで測定される該PSUSNA/イミダゾール混合物の温度は、140℃で一定のままであったが、これは、該混合物が過剰に加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは2.5N.m.であった。つまり、該材料は140℃で高い粘度を有していた。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイから出した。得られた押出物は滑らかであり且つ室温では柔らかかった。
【0036】
例8
膜の製造
例1に従って得られたスルホン化重合体の膜を、可塑剤としてオリゴオキシエチレン−α,ω−ジオールOEDを使用して製造した。OED−400(Tg=−78℃)又はOED−200(Tg=−86℃)で様々な製造を実施した。
連動スクリュー及び胴部を備えた共回転二軸押出器(図11)を使用した。これにより、短い滞留時間分布を得ることが可能になった。圧力の平行により、大きなトルク、剪断速度及び流量に至った。図12は、使用した押出器の1個のスクリューの外形の側面図を示している。
このスクリューは、供給区域Aと、該押出器内での混合物の滞留時間を増加させ且つ剪断を促進させるのを可能にする3個の混合区域(B)と、該混合物をシートダイ(D)に運搬するための3個の輸送区域(C)とを備える。該スクリューの全長さは640mmである。
これらのスクリューに沿った温度プロファイルは、
・区域中でスルホン化ポリスルホン(1)が分解しない;
・オリゴオキシエチレン−α,ω−ジオール(2)が蒸発しない;
・2種成分(3)〜(6)の均一な混合を低粘度とすることで確実にする;
・混合物(7)及び(8)の粘度を低下させてダイから出たときのフィルムの挙動を保証する
ように選択される。
スルホン化ポリスルホンを供給区域(A)の入口部に導入した。該スルホン化ポリスルホンの供給速度を、秤量供給器で制御した。これは、この供給速度を重量損失によって連続的に測定することを可能にするはかり(図示しない)上に置かれたホッパー(図示しない)であった。調節器によって、押出器のスクリューの回転速度を調節して、所望の処理量を得た。秤量供給器の稼働能力は2kgであり、そして、スルホン化ポリスルホンにより利用可能な処理能力範囲は、0.2〜2.5 kg/hで変化した。
該OEDを、輸液用ポンプを使用して供給区域(A)の出口部に導入した。
押出試験を、上記のスクリュー外形で、例1の方法に従って得られた様々なイオン基レベルを有するスルホン化ポリスルホンPSUNAを使用して、様々なイオン基レベルを得るようにスルホン化剤の割合を変更し且つ可塑剤としてOED−200又はOED−400のいずれかを使用することによって実施した。
イオン伝導性の測定を、例2に記載された技術に従って得られた膜で実施した。
押出によって得られた膜の膨張の程度を、次の方法に従って決定した。押し出された膜を0.5mol/L塩酸溶液中に24にわたり室温で浸漬させて該溶液中に溶解された可塑剤を除去し、そして該膜を酸性化させた。次いで、次いで、膜の質量M0を秤量によって決定した。次いで、該膜を60℃の10mbarの動的真空下で72時間にわたり乾燥させた。室温にまで冷却した後に、膜の質量M1を再度秤量によって決定した。膨張の程度は、Tx=[(M0−M1)/M1]×100/であった。
【0037】
様々な試験の押出条件及び結果を次の表に与えている。25℃及び100%RHでの伝導性はms/cmで表している。膨張度Txはパーセンテージとして与えている。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ポリスルホンの1H NMRスペクトル図である。
【図2】ポリスルホンのIRスペクトル図である。
【図3】ポリスルホンのDSCサーモグラムを示す図である。
【図4】ソルビットのDSCサーモグラムを示す図である。
【図5】PSUSNA/ソルビット混合物のDSCサーモグラムを示す図である。
【図6】PSUNA/ソルビット混合物の160℃、180℃及び200℃での挙動を示す図である。
【図7】ポリオールのDSCサーモグラムを示す図である。
【図8】PSUSNA/ポリオール混合物のDSCサーモグラムを示す図である。
【図9】PSUSNA/ポリオール混合物の140℃、160℃、180℃及び200℃での挙動を示す図である。
【図10】ポリオールのDSCサーモグラムを示す図である。
【図11】押出器本体のプレートの正面図である。
【図12】押出器のスクリューの側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 胴部
2 逆回転円錐スクリュー
2’ 逆回転円錐スクリュー
3 二方弁
4 交換可能ダイ
5 プレート
6 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性イオン基を有する重合体と少なくとも1種の可塑剤とから構成される混合物を製造し、得られた混合物を押し出してフィルムを形成し、得られたフィルムを水性媒体中で洗浄して該可塑剤を除去することからなる、アルカリ性イオン基を有する熱可塑性重合体の押出による膜の製造方法において、該可塑剤が、非揮発性化合物であって該重合体のイオン基に対して安定であり、水又は水と混和性のある溶媒に可溶であり、しかも
・該重合体によって保持される該イオン基のアルカリ陽イオンに対する強い親和性を有する基、及び
・該重合体によって保持されるイオン基の陰イオン部分に対する強い親和性を有する基
から選択される基を有する非揮発性化合物から選択されることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ性イオン基が式−Ap-(M+p(式中、Aはイオン基の陰イオン部分を表し、pは陰イオン部分の価数を表し、Mはアルカリ金属を表す。)に相当することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン基が−O-+基、スルホン酸塩−SO3-+基、硫酸塩−OSO3-+基、カルボン酸塩−CO2-+基、チオカルボン酸塩−C(=S)O-+基、ジチオカルボン酸塩−CS2-+基、ホスホン酸塩−PO32-(M+2基、スルホニルアミド−SO2NH-+基及びスルホニルイミド(X−SO2NSO2--+基(式中、Xは、アルキル基、過弗素化又は部分弗素化アルキル基、アルケニル基、過弗素化又は部分弗素化アルケニル基、オキシアルキレンCH3−(O−(CH2mn基(ここで、2≦m<5、1≦n≦10である)又はアリール基から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性重合体が、重合体であってその鎖が同一の又は異なる反復単位から構成されるものであり、ここで、それぞれの反復単位は、少なくとも1個の官能基及び少なくとも1個の単環式又は多環式芳香族基を有し、該官能基はエステル、ケトン、エーテル、スルフィド、スルホン、ベンゾオキサゾール、アミド及びイミド基から選択され、該芳香族基の少なくともいくつかは、アルカリ性イオン基を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性重合体が、記号n、m、x及びyがそれぞれ反復単位の数を表す次のセグメント:
・次式Iに相当するポリフェニレンオキシド(式中、R及びR1は、互いに独立して、H、アルキル基、アルケニル基又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香環及び随意に置換基を有するアリール基を表す。):
【化1】

・以下の式IIに相当するポリエーテルエーテルケトン:
【化2】

・以下の式IIIに相当するポリエーテルケトン:
【化3】

・反復単位が以下の式IVに相当するポリベンゾオキサゾール:
【化4】

・押出の熱によって以下のポリイミド(V):
【化5】

に変換されるポリアミド酸;
・式(V)に相当するポリイミド;
・例えば次式(VI)に相当する単位を含むポリパラフェニレン:
【化6】

・反復単位が以下の式(VII)に相当するポリフェニレンスルフィド:
【化7】

・以下の式VIIIに相当するポリエーテルスルホン(式中、R2は単結合又は−C(CH3)−基を表す):
【化8】

から選択されるセグメントを含む重合体であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性重合体が、次式(−SO3Mにおいて、MはNa又はLiである。):
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

で表されるセグメントを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記可塑剤が、前記熱可塑性重合体の前記イオン基のアルカリ陽イオンに対する強い親和性を有するエーテル又はスルホン基を保持することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記可塑剤が、
・CH3、OH又はNH2末端基を有していてよいオリゴエーテル;
・スルホンR3−SO2−R4(式中、R3及びR4は、互いに独立して、1〜3個の炭素原子を有するアルキル、1個以上の縮合又は非縮合芳香環を有するアリールを表し、或いはR3及びR4は一緒になってビラジカルを形成して、スルホランを与えるSO2基を有する環を形成する。);
・式HCONR67(式中R6及びR7は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)に相当するカルボキシアミド;及び
・テトラアルキルスルファミドのようなスルホンアミド
から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記可塑剤が、窒素原子上に1又は2個の水素原子を有するカルボキシアミド官能基、窒素原子上に1又は2個の水素原子を有するスルホンアミド官能基、アルコール、チオール、フェノール、第一アミン及び第二アミン官能基から選択されるプロトン性官能基を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記可塑剤が、
・少なくとも2個の炭素原子を有するアルカノール、アルカンから少なくとも2個の水素原子をOH基で置換することによって誘導されたポリオール及びエーテル基を有する化合物;
・モノアミン、ジアミン又はトリアミンオリゴマーであって、その窒素原子が1〜3個のオリゴ(オキシエチレン)基を保持するもの;
・スルファミドH2N−SO2−NH2、スルホンアミドR8−SO2NH2(ここで、R8は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香環を有するアリール基である。);及び
・第一又は第二アミド
から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
押出を受けるイオン性熱可塑性重合体と可塑剤との混合物が充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記充填剤が、押出後に得られる重合体フィルムの機械的強度を改善させることができる充填剤であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記充填剤が、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、セルロースミクロフィブリル、アルミナ繊維及びポリアラミド繊維から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記充填剤がホスファトアンチモン酸であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−537562(P2008−537562A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501354(P2008−501354)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000525
【国際公開番号】WO2006/097602
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507310949)
【出願人】(507310961)
【出願人】(507308898)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【Fターム(参考)】