説明

アルカリ金属電池

蓄電池は、鉛よりなる正電極と、水銀よりなる負電極と、アルカリ金属塩の水溶液からなる電解液とを含んで与えられる。電池を充電すると、鉛は2酸化鉛に変換され、アルカリ金属は水銀を含むアマルガムを形成する。放電の際には、2酸化鉛は、鉛(IV)の状態まで還元され、アルカリ金属は、正イオンに酸化され、溶液の中に入り込む。水銀は、種々の代替的方法の一つに固定化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その独特の電気化学によって特徴付けされる新規な種類の蓄電池(storage battery)に関する。この電池の正電極は鉛をベースとする材料、すなわち、二酸化鉛、一酸化鉛、または鉛塩より製造される。負電極は、水銀よりなる。電池の電解液は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムを含むアルカリ金属の塩の水溶液である。電池を充電すると、鉛をベースとする材料は、二酸化鉛に変換され、アマルガムが水銀およびアルカリ金属より形成される。電池が放電されると、二酸化鉛は鉛(IV)の形態まで還元され、アマルガム内のアルカリ金属は、酸化されて正イオンを形成し、溶液の状態になる。
【背景技術】
【0002】
殆ど全ての自動車の車体の中で見られる最も一般的な蓄電池は、鉛蓄電池である。この電池は、二酸化鉛の正電極と鉛金属の負電極と、電解液用の硫酸とを含む。
鉛蓄電池の多数の代替物は、他の応用における使用のため長年にわたって開発されてきた。これら代替電池のうちの2つは、負電極として亜鉛、電解液として苛性カリを用いる。1方の電池の正電極は酸化ニッケルであり、他方の電池は酸化銀を用いる。
【0003】
鉛蓄電池および一般のアルカリ電池の最も良い特徴を組み合わせるために、鉛アルカリ電池が開発された。上記特定された同時係属中の特許出願においては、この電池は鉛の正電極と、亜鉛、カドミウム、鉛、及び鉄のような実績ある材料よりなる負電極と、アルカリ電解液とを有することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらなる改良型蓄電池を提供することが、本発明の目的である。本発明のこれらの及び他の目的、特徴、効果は、以下の記載により分かるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、鉛をベースとする材料を含む正電極と、水銀の負電極と、アルカリ金属塩の水溶液である電解液とを備えた再充電可能な電池である。電池を充電すると、鉛をベースとする材料は、二酸化鉛に変換され、水銀およびアルカリ金属よりアマルガムが形成される。電池が放電されると、二酸化鉛は、一酸化鉛または鉛(II)塩に還元され、アマルガムからのアルカリ金属は、酸化されて正イオンを形成し、溶液内に入る。
【0006】
アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、又はセシウムからなる群から選択され得る。これらの金属の塩は、硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、及びホウ酸塩を含む。これらの塩は、個別にあるいは組み合わせて用いることができる。
液体水銀の安定性を維持するために、特に、自動車の適用においては種々の手段を用いられる。例えば、水銀の運動を制限するために半透過膜を用いることができる。このような膜は、電解液を透過するが、水銀をその区画に閉じ込める。代替手段として、水銀を被膜、めっき、吸収し、あるいは、導電性の個体基板に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の重要な特徴を組み合わせた電池のプロトタイプの概略図である。
【図2】他の実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のアルカリ金属電池の電気化学は、硫酸ナトリウム溶液が電解液に使用される場合によって説明できる。放電の際、以下の反応が予想される。
正電極では、
(1)PbO2+Na2SO4+2H2O+2e→PbSO4+2NaOH+2OH
負電極では、
(2)2Na(Hg) →2Na++Hg+2e
セルの再充電の際、上記反応は逆になる。
【0009】
本発明の電池では、全てのアルカリ金属を用いることができる。従って、上記反応式によって示されるナトリウムの代わりに、リチウム、カリウム、ルビジウム、又はセシウムを用いることができる。これらの反応はアルカリ金属の全てに対して同様であるが、性能は同じではない。負電極の一つの電極電位は、用いられた特定のアルカリ金属に依存することが分かる。
【0010】
アルカリ金属は、他の点で互いに異なる。すなわち、それらの塩の溶解度は異なる。例えば、硫酸セシウムの水への溶解度は、0℃で、水100g当たり167gである。この値は、同じ温度で、硫酸カルシウムの水100g当たり7.25gに匹敵する。
電解液中での使用に考えられる塩の溶解度もまた、特定のアニオンに依存する。説明のため、硫酸リチウムは、0℃で100g当たり35.34gの溶解度を有する。一方、ケイ酸リチウムは不溶性である。リチウムは、特に、適切な市販のスラットの数によって完全に制限される。
【0011】
硫酸塩に加え、本発明の電池は、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、及びホウ酸塩を含む多数の他の塩を用いることができる。これらの塩は、所望の結果を得るために、単独であるいは添加物として用いることができる。
硫酸塩以外の塩が用いられると、その電気化学は反応式1に示すものとは異なる。これらの塩は、溶液中でアルカリになる傾向があるので、電気化学の当業者は、電池が放電されるとき、2酸化鉛が還元されて酸化鉛になることが分かる。この結果は、正電極の一つの電極電位に影響を与える。
【0012】
本発明の実用的な電池を、図1に示す。セル・キャスティング1は、容器の底部を保護する水銀のプール2を保持する。この水銀は、負電極として働く。正電極は、鉛のシート3から製造される。水銀のプールへの導線は、電解液から絶縁するために、ガラス管4を通る。両電極、すなわち水銀のプールおよび鉛のシートは、水溶性電解液5に浸漬される。半透過膜6は、適当な位置に水銀2を保持する。
【0013】
図2は、本発明の他の実施形態であり、ここでは、水銀2がグラファイト基板8に接着され、水銀2を固定する。他の構成要素の全ては、図1の構成要素と同一であり、同様に番号を付されている。
【実施例】
【0014】
実験セルは、2.5インチの径、2インチの高さのガラスジャーより製造された。正電極は、2.5インチの径の鉛盤とした。負電極は、ジャーの底部を覆う水銀のプールとした。負電極の鉛は、ガラス管の内側の銅線によって水銀に接続した。電解液は、26.0gの硫酸ナトリウムを100mlの水に溶解することによって作製した。
セルを3.7Vで3分間充電した後、3.38Vの開回路の電位が得られた。セルは、再生可能な結果で、繰り返し充電し放電した。この実験の最後に、電極は良好な状態となり、電解液は無色透明になった。
【0015】
上述した実験は、ナトリウムの代わりに他のアルカリ金属を用いて繰り返された。その結果は以下の通りである。硫酸リチウムを含む電解液を有するセルは、3.5Vで3分間充電後に、3.33Vの開回路電位を生じた。硫酸カリウムの溶液を電解液として、セルは、3.7Vで7分間充電後、3.45Vの開回路電位に達した。最後に、電解液中に硫酸セシウムを用いて22分間3.9Vで充電後、3.50Vの開回路電位が、セルから得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛をベースとする材料よりなる正電極と、
水銀よりなる負電極と、
アルカリ金属塩の水溶液よりなる電解液と、
を備えた蓄電池。
【請求項2】
前記アルカリ金属は、リチウムである、請求項1の蓄電池。
【請求項3】
前記アルカリ金属は、ナトリウムである、請求項1の蓄電池。
【請求項4】
前記アルカリ金属は、カリウムである、請求項1の蓄電池。
【請求項5】
前記アルカリ金属は、ルビジウムである、請求項1の蓄電池。
【請求項6】
前記アルカリ金属は、セシウムである、請求項1の蓄電池。
【請求項7】
前記アルカリ金属は、硫酸塩である、請求項1の蓄電池。
【請求項8】
前記アルカリ金属は、炭酸塩である、請求項1の蓄電池。
【請求項9】
前記アルカリ金属は、リン酸塩である、請求項1の蓄電池。
【請求項10】
前記アルカリ金属は、ケイ酸塩である、請求項1の蓄電池。
【請求項11】
前記アルカリ金属は、ホウ酸塩である、請求項1の蓄電池。
【請求項12】
前記アルカリ金属は、水銀を固定化する手段が設けられている、請求項1の蓄電池。
【請求項13】
前記固定化する手段は、水銀が接着された個体基板を有する、請求項12の蓄電池。
【請求項14】
前記個体基板は、グラファイトである、請求項13の蓄電池。
【請求項15】
前記個体化する手段は、水銀と電極との間の半透過膜である、請求項12の蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−537388(P2010−537388A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522063(P2010−522063)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/073990
【国際公開番号】WO2009/026500
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(505014753)
【氏名又は名称原語表記】John E. Stauffer
【住所又は居所原語表記】6 Pecksland Road,Greenwich,CT 06831,U.S.A.
【Fターム(参考)】