説明

アルカリ電池用の不均一な嵩密度を有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末

本発明は、粒子サイズに依存する不均一な嵩密度分布を有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末に関し、ここで、粒子サイズ範囲が75μm未満の場合と粒子サイズ範囲が150μmを越える場合における、ASTM−B212に従って測定された嵩密度の差は少なくとも0.5g/cm3であり、かつASTM−B212に従って測定された粉末の平均嵩密度は1.8から4.0g/cm3の範囲である。本発明はまた、該亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物および該粉末を含有するアルカリ電池にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子サイズ分布に依存する不均一な嵩密度を有する、アルカリ電池用の分級した亜鉛粉末または亜鉛合金粉末に関し、また亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物に関し、そして本発明の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末が電極として採用されるアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ電池に使用される多数の各種合金化された亜鉛粉末が先行技術において記述されている。ここでは、亜鉛粉末が種々の方法で合金化される。従来、水銀、カドミウムそして好ましくは鉛も含まない亜鉛粉末が使用される。アルカリ電池に使用される場合、そのような亜鉛粉末は種々の反応プロセスの結果ガスの発生を伴って徐々に分解し、そのことによって電池の電気的性質と同様、耐久性、貯蔵期間にも悪影響が及ぶという欠点を含む。これを防ぐためには、微量のその他金属を含有する亜鉛粉末の合金が電池目的としてほとんどの場合使用される。本質的に、電池のガス発生を減少させる合金要素としてインジウム、ビスマス、アルミニウム、マグネシウムおよびカルシウムが先行技術において記述されている。電池に使用される場合、これらの合金成分が電池のガス発生を極力減少させ、そうすることで貯蔵期間と使用中の電池の安全性を高める目的で添加される。
【0003】
しかしながら、最近、電池に対する技術的要求が実質的に増している。特に、デジタルカメラ、携帯電話、CDプレーヤー、MP−3プレーヤー、卓上機器などのデジタル通信と娯楽用電子機器分野における携帯機器の激しい拡大の結果、電池とその電気的性能に対する要求が著しく増大している。その結果、合金技術手段によってのみならず、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の形態を改質すること、例えば採用する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の粉末分布、粒子形状および嵩密度を改質することよって電気的性質を改良する試みがなされている。現在の技術状況に従えば、粒子サイズが約20から500μmの広い範囲に広がる亜鉛粉末または亜鉛合金粉末が一般的に使用される。
【0004】
従って、WO00/74157A1は、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物および液状電解質媒体を記載しており、ここで、媒体の体積はおおよそ乾燥バルクにおける粒子同士の隙間に対応している。これらの粒子は2.8g/cm3未満の嵩密度を有する。この開発の目的は、金属および/または合金粒子を溶解するのに十分な液状電解質媒体が依然として存在して、そのことによって電気を発生するという方法で、実際にあらゆる粒子間の直接接触を達成することである。
【0005】
同様に、WO01/03209A1は、亜鉛または亜鉛合金粒子と液状電解質媒体の混合物を記載しており、ここで、嵩密度はもっと低く約2.3g/cm3である。
【0006】
WO99/07030A1はアルカリ電池に使用するための亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を記載しており、該亜鉛または亜鉛合金は種々の量の200メッシュまたはそれより小さなサイズを有する非常に細かい粒子(74μm以下の粒子直径に対応)と混合される。そのような細かい亜鉛粒子の混合物は電池の電気的性質の改良、特に、最大放電速度における改良をもたらすことが見いだされている。 該速度は、その時間内に、電池電圧を特定値より低下させないで負荷がかかった電池から電圧が得られる時間と定義される。この量は高出力分野、特に携帯電話その他の通常、電池電圧を測定して、電池交換が必要な負荷より電圧が下がった場合は使用者に信号を発する電子製品における使用に対して重要である。従来の電池を使用する際には、電池それ自体がまだ十分な容量を有しているが電圧が高出力範囲における負荷より低下した場合にもこれが起こる。そうすると電気機器からのこの信号のため、これらの電池は十分な有効容量を有するにも拘らず、その時期でもなく不必要に交換される。
【0007】
この問題を解決するために、本発明の発明者による出願分野であるEP02,009,501.4は、60から100重量%の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末が40から140μmの直径を有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を示唆している。好ましくは、この粉末は嵩密度が2.9 から 4.5g/cm3の範囲の比較的高い密度を有し、好ましいガス発生性を示す。
【0008】
電池に使用するための亜鉛粉末または亜鉛合金粉末についての要求は著しく変わり、全ての試験方法において改良が達成された特に、電池ガス発生が低い亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の開発は現在に到るまで成功していない。例えば、これは上記WO99/07030においても見られる。そこに記された実施例において、高出力用途のために好適な亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の電池ガス発生が研究されておらずそして、電池の性質が最適化されていないと推定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の技術的目的は、アルカリ電池に使用するための卓越した電気的性質、低い電池ガス発生および、特に高出力用途に適合性を有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を供することである。
【0010】
該目的は、粒子サイズに依存する不均一な嵩密度分布を有し、粒子サイズ範囲が75μm未満の場合と粒子サイズ範囲が150μmを越える場合における、ASTM−B212に従って測定された嵩密度の差が少なくとも0.5g/cm3、好ましくは0.5g/cm3から2.0g/cm3あり、かつASTM−B212に従って測定された粉末の平均嵩密度が1.8 から4.0g/cm3の範囲である、等級付けをした(graduated)アルカリ電池用亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の手段によって達成される。
【0011】
既に判明した通り、著しく好ましい電池の性質をもたらすものは正にこの不均一な嵩密度分布である。それらの混合物によってのみならず、標準粉末の使用によってさえも電池の性質が改良できる。亜鉛粉末の不均一性が大きいほど、それだけ電池の性質特に、高出力範囲における性質が好ましくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一つの好ましい態様において、嵩密度差は以下のような粒子サイズ依存性の分布を有する:
75μm未満に対する100μm未満から75μmまでの差が少なくとも0.13g/cm3、好ましくは0.15から0.5g/cm3
100μm未満から75μmまでに対する150μm未満から100μmまでの差が少なくとも0.13g/cm3、好ましくは0.15から0.5g/cm3
150μm未満から100μmに対する250μmから150μmまでの差が少なくとも 0.13g/cm3、好ましくは0.15から0.5g/cm3
【0013】
粒子のサイズは、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末に関して20から1000μmであり得る。
【0014】
更に、直径が75μmまでの亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の粒子は好ましくはより球状の粒子形状を有し、かつ粒子サイズが大きくなると共に針状または小平板形状になると考えられる。
【0015】
本発明の意味での粒子サイズ分布は、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末における粒子サイズの分布であって、粒子サイズがμm単位の直径として特定されると理解される。粒子サイズ分布は、ASTM−B214に従って求められた。本発明の意味での嵩密度は、質量をもし存在するならば間隙と追加空洞も含む占有体積で割った値と理解される。該嵩密度はASTM−B212に従って測定される。
【0016】
本明細書中で亜鉛粉末または亜鉛合金粉末に言及するときは、これらはその純度に関して、従来技術に従う電池用に好適な亜鉛種であることを意図している。使用される従来の亜鉛種は99.99重量%、99.995重量%または99.999重量%の純度を有する。本明細書中に与えられる合金データは、合金化される要素の量を意味し、つまり、亜鉛粉末中に存在する可能性がある不純物を意味しない。亜鉛合金に関して与えられる量は、合金要素の各々の量が合金化され、残りが亜鉛であると考えるべきである。
【0017】
本発明に従う亜鉛粉末または亜鉛合金粉末は、特定の粒子サイズ分布を有し、その嵩密度は粒子サイズと共に大きく変わる。それは、特にアルカリ電池に使用された時に卓越した電気的性質を有する。従来技術の亜鉛粉末と比較すると、電池のガス発生が少なくその結果、本発明の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を採用したアルカリ電池の耐久性と貯蔵安定性が実質的に増す。
【0018】
合金化技術に関しては、本亜鉛粉末は全く制限されず、従って亜鉛粉末用の従来の合金要素、つまり、インジウム、ビスマス、鉛、アルミニウム、カルシウム、リチウム、ナトリウムおよびマグネシウムまたはそれらの混合物が合金要素として使用できる。好ましい態様において、一つまたはそれより多くの合金要素は以下の量で含まれ得る:0.1から1200ppmのインジウム、0.1から1000ppmのビスマス、0.1から1000ppmのアルミニウム、0.1から200ppmのカルシウム、0.1から200ppmのマグネシウム、また同様に0.1から200ppmのナトリウムおよび/または0.1から200ppmのリチウムのようなアルカリ金属。
【0019】
以下の合金が特に好ましい:0.1から1200ppmのインジジウム、好ましくは100から850ppmのインジジウムと0.1から1000ppmのビスマス、好ましくは50から500ppmのビスマス。
【0020】
0.1から1200ppmのインジウム、好ましくは100から500ppmのインジウム、そして0.1から1000ppmのビスマス、好ましくは50から500ppmのビスマスおよび0.1から1000ppmの鉛、好ましくは400から600ppmの鉛を含む合金も好ましい。
【0021】
更に、0.1から1000ppmの鉛、好ましくは400から600ppmの鉛と0.1から1000ppmのインジウム、好ましくは100から850ppmのインジウムを含む合金が特に好ましい。
【0022】
0.1から1000ppmの鉛、特に400から600ppmの鉛を含む合金も合金として好ましい。
【0023】
これら合金データにおける残りは亜鉛である。
【0024】
研究の結果、前述の要素の合金化が、電気的性質または電池のガス発生性に関して如何なる不利も引起さないことが分かっている。本発明の亜鉛粉末はあらゆる用途および電池種に対しても鉛を含有しない粉末として使用できる。合金要素として使用される鉛を含まない亜鉛粉末または亜鉛合金粉末に関する電池試験の結果、特に、丸型アルカリ電池種におけるガス発生性が極めて少ないこと、および国際分類のサイズCとDの電池種にも応用されることが示された。
【0025】
平均嵩密度を変えることによって、3つの異なる亜鉛粉末または亜鉛合金粉末が、本発明の特に好ましい態様を表す。第一番目は、1.8から2.2g/cm3、好ましくは1.9から2.1g/cm3、そしてより好ましくは2.0g/cm3の平均嵩密度を有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末であり、以後LD(低密度)粉末と称される。好ましい態様において、該LD種の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末は以下のような粒子サイズ依存性の嵩密度分布(表A)と以下のような分級分布(表B)を有する。
【0026】
【表A】

【0027】
【表B】

【0028】
もう一つ本発明の特別態様は、2.5から2.9g/cm3、好ましくは2.6から2.8g/cm3、そしてより好ましくは2.7g/cm3の平均嵩密度を有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末であり、以後MD(中密度)粉末と称される。好ましい態様において、該MD種の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末は以下のような粒子サイズ範囲依存性の嵩密度(表C)と以下のような分級分布(表D)を有する。
【0029】
【表C】

【0030】
【表D】

【0031】
第三番目の本発明の特別態様は、3.0から3.4g/cm3、好ましくは3.1から3.3g/cm3、そしてより好ましくは3.2g/cm3の高嵩密度を有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末であり、以後HD(高密度)粉末と称される。好ましい態様において、該HD種の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末は以下のような粒子サイズ範囲依存性の嵩密度分布(表E)と以下のような分級分布(表F)を有する。
【0032】
【表E】

【0033】
【表F】

【0034】
以下の図は、本発明をもっと詳細に例示する意図を有する。これらの図は、全体分布および75μm未満で150μmを超える分別品の特定の粒子サイズの形態も含む、本発明のLD、MDおよびHD種の亜鉛粉末の電子顕微鏡撮像を示す。
【0035】
好ましい態様において、本発明の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を組合せること、特に、上記LD、MDおよびHD種の粉末をその他従来技術の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末と組合せることまたは互いに組合せることも可能であり、そうすることで二山分布のような混合物を創出できる。
【0036】
そのための一つの好ましい態様には、嵩密度2.8から3.0g/cm3を有する従来技術の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末をLD、MDまたはHD種粉末と混合して含有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物が含まれる。特に好ましいのは、LD種の粉末の混合である。好ましい態様において、この混合は少なくとも5重量%、好ましくは10から80重量%である。
【0037】
そのような二山分布は電池において非常に良好な高出力性をもたらす。第二の亜鉛粉末は電池用として従来通りの粉末または亜鉛合金粉末に存在するような分子サイズ分布を有する。今では、粒子サイズが約20から500μmの広い範囲にある技術に従った亜鉛粉末または亜鉛合金粉末が従来から使用される。好ましい態様において、ASTM214に従って測定された粒子サイズ分布は75から500μmの広い範囲にあるべきである。本発明の亜鉛粉末を使用する場合、たった5重量%添加するだけで電池の性質への良い影響を疑いなく求め得る。これらの亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合比率には全く制限がない。望まれる電池の性質に従って、この混合比率が制御された状態で調整され得る。
【0038】
また、互いに異なる平均嵩密度を有する本発明の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物が特に好ましい。この方法で、各々の粉末の量を介して平均嵩密度を制御された方法で調整することができる。
【0039】
従って、互いに異なる平均嵩密度を有するLD、MDおよびHD種の混合物を使用することが可能であり、そして各々の場合、より低い嵩密度を有する粉末が混合される。従って、例えば、HD粉末が少なくとも5重量%、好ましくは10から80重量%の量でLD粉末と混合できる。しかしながら、MD粉末をLD粉末と混合することもでき、この場合も同様に少なくとも5重量%、好ましくは10から80重量%の量でLD粉末が混合される。また、HD粉末とMD粉末の混合物も好ましく、この場合、MD粉末が同様に少なくとも5重量%、好ましくは10から80重量%の量で混合される。
【0040】
亜鉛粉末または亜鉛合金粉末またはその混合物は、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末が使用される全てのボタン電池種と同様、国際種AAAA、AAA、AA、C、Dなどの丸型アルカリ電池における使用に好適である。例えば、これらには亜鉛/空気電池、アルカリマンガンボタン電池および亜鉛/酸化銀ボタン電池が挙げられる。ボタン電池に使用するためには、水銀を約0.15から6重量%の量で含有するアマルガム化された亜鉛粉末が更にしばしば採用される。もしそのようなアマルガム化が望まれる場合、本発明の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末は追加の表面アマルガム化処理される。しかしながら、その低いガス発生故に、この粉末は水銀無添加でも使用され、この場合、水銀含有量は1ppm未満になる。
【0041】
本発明に従う亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の製造はそれ自体公知の方法で進行する。亜鉛または亜鉛合金の粒子が液体亜鉛または液体亜鉛合金から種々の方法に従って製造される。例えば、回転粉砕機板上で噴霧または粒状化が行われ、粒子サイズ、粒子サイズ分布および粒子の外形がプロセス条件に依存して調整される。特別な保護ガス室は必ずしも必要ではない。特定の粒子サイズ分布が望まれる場合は、個々の粒子サイズ分布を有する個別粒子を含む適切な分級フラクションを設定することもできる。これらの粒子は望みの粒子サイズ分布と嵩密度で再混合できる。しばしば、分級フラクションが過大サイズと過小サイズから分離される。
【0042】
好ましい態様において、本発明の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末はアルカリ電池に使用される。そのようなアルカリ電池は従来技術で公知でありそして例えば、WO99/07030に記載されている。これらのアルカリ電池は通常、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末から成る負極と、二酸化マンガンまたは空気や酸化銀などのその他材料からから成る陰極を有する。負極に関しては、アルカリ性亜鉛合金粉末が公知のゲル化剤またはその他の添加剤を用いて、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を安定化させそして電極中で好ましくは理想的分布を得るために電解質液中で固化される。
【0043】
本発明の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末は、好ましい粒子サイズ範囲と粒子サイズ依存性の好ましい嵩密度分布を有しそしてあらゆる丸型アルカリ電池とボタン電池における電池用に使用され得る。更に、本発明の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末は、合金成分として鉛、カドミウムおよび水銀を添加しなくても低い電池ガス発生性を達成するため、全てのアルカリ電池種にあまねく使用され得る粉末を供する。
【0044】
以下の実施例は本発明を更に詳細に例示することを意図したものである。
【0045】
実施例
種々の合金成分を含有する亜鉛粉末を本明細書に述べられた方法に従って製造した。3つの異なる平均嵩密度はプロセス技術の手段によって調整された。更に、本発明の亜鉛粉末を、混合比率を変えて標準亜鉛粉末と共に使用した。当然、中間的な平均嵩密度も容易に製造できそして、それらの使用によっては非常に好適である。
【0046】
1.種 1:約2.0g/cm3の平均嵩密度を有するLD(低密度)
2.種 2:約2.7g/cm3の平均嵩密度を有するMD(中密度)
3.種 3:約3.2g/cm3の平均嵩密度約を有するHD(高密度)
【0047】
LR6(AA)およびLR14(C)電池についての電池試験を行った。この目的のために、新しい亜鉛粉末種と標準亜鉛粉末の混合物も製造し試験した。これら全ての場合において、これらの電池は標準亜鉛粉末と比べて卓越した電池性質を示しそして、全ての場合において電池ガス発生性が著しく少なかった。LR14(C)電池も使用して、2オームで40から270分のON放電に続いて、70℃で7日間の電池貯蔵後のガス発生を求めた。全ての場合において、ガス発生は4mlガス/電池未満の値であった。特に顕著な点は、40分放電における極めて低いガス発生で、同様に電池当たり4ml未満の値であった。単にLD粉末のみでは如何なる改善も示さず、標準亜鉛粉末と組合せた場合に高い放電性を有する。標準亜鉛粉末とは対照的に、20倍もの改善が達成される。
【0048】
更に、標準ガス発生(電池外ガス試験)が実施された。この目的のために、25gの亜鉛粉末を135mlの36%KOHと4%のZnOと共にガラスフラスコ中に入れた。45℃で1日後の水素の発生量を求めた。本発明に従う亜鉛粉末のガス発生値は、標準亜鉛粉末の範囲であったが、標準亜鉛微粉末の値よりも著しく低かった。流速をASTM−B213(50g 1/10" No.1−2288)に従って測定した。
【0049】
表1は、2つの特定の分級フラクションの粒子サイズ分布、嵩密度、平均嵩密度および本発明の種々の亜鉛合金粉末と標準亜鉛粉末を用いたガス発生試験の結果を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表2は、標準亜鉛粉末と比較した本発明のLD、MDおよびHD種亜鉛粉末の分級分布を重量%で示す。粒子サイズはμmで示されている。本表から分かるように、本発明の亜鉛粉末は標準亜鉛粉末と比較して完全に異なる分級分布を有する。明らかに、標準亜鉛粉末と比較して大量に存在するのは、本発明の亜鉛粉末中の特に75から40μmの範囲にある粒子サイズである。逆にいえば、標準亜鉛粉末において大量に存在するのは、250から150μmの範囲にある粒子サイズである。
【0052】
【表2】

【0053】
表3は、標準亜鉛粉末と比較したLD、MDおよびHD種亜鉛粉末の粒子サイズ依存性の嵩密度分布を示す。明らかに、本発明の亜鉛粉末においては各粒子サイズ範囲に関する嵩密度分布が非常に不均一であり、そして、粒子サイズが増すにつれて著しく減っている。対照的に、標準亜鉛粉末における比較できる嵩密度はあらゆる粒子サイズ範囲において相対的に均一である。
【0054】
【表3】

【0055】
LR6電池を用いた放電結果の評価
LR6電池について標準ANSIデジタルカメラとANSI光フラッシュに従う放電試験を、従来の標準粉末を比較亜鉛粉末として使用して行った。
【0056】
試験1:ANSIデジタルカメラ:1000mA、連続、電池端部電圧1.0V。
従来の標準粉末の放電結果を100%と設定する。この%数字は測定された粉末の容量を%で示したものである。
【0057】
試験2:ANSI光フラッシュ:1000mA、10s/分、1h/d、電池端部電圧0.9V。試験1と異なり連続放電でないため、この%数字は求められた放電サイクルに関係する。
【0058】
表4は放電結果を示す。本表から分かるように、本発明の亜鉛合金同士の混合物または標準亜鉛合金粉末との混合物を用いた放電結果は、2から3倍も優れている。従って、本発明の亜鉛合金およびそれらを含む混合物はアルカリ電池における使用にすばらしく適しており、特に卓越した高出力性を有する。
【0059】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に従うLD種亜鉛粉末の全体分布(低嵩密度2.0g/cm3)の例 図であり、本当の定量的分布とは関連していない。
【図2】75μm未満のLD種フラクションを示すが、本当の定量的分布とは関連し ていない。このフラクションは相対的に丸型の粒子形状である点が顕著であるがMD 種の形状よりももっと長楕円状である。
【図3】150μmを越えるLD種フラクションを示すが、本当の定量的分布とは関 連していない。このフラクションは著しく小平板状の粒子形状である点が顕著である 。
【図4】本発明に従うMD種亜鉛粉末の全体分布(平均嵩密度2.7g/cm3)の 図例であるが、本当の定量的分布とは関連していない。
【図5】75μm未満のMD種フラクションを示すが、本当の定量的分布とは関連し ていない。このフラクションは相対的に丸型の粒子形状である点が顕著である。
【図6】150μmを越えるMD種フラクションを示すが、本当の定量的分布とは関 連していない。このフラクションは著しく針状、小平板状の粒子形状を示す。
【図7】本発明に従うHD種亜鉛粉末の全体分布(平均嵩密度3.2g/cm3)の 図例であるが、本当の定量的分布とは関連していない。
【図8】は75μm未満のHD種フラクションを示すが、本当の定量的分布とは関連 していない。このフラクションは相対的に丸型の粒子形状である点が顕著である。
【図9】は150μmを越えるHD種フラクションを示すが、本当の定量的分布とは 関連していない。このフラクションは顕著に針状、かつ著しくより小平板状の粒子形 状を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子サイズに依存する不均一な嵩密度分布を有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末であって、粒子サイズ範囲が75μm未満の場合と粒子サイズ範囲が150μmを越える場合における、ASTM−B212に従って測定された嵩密度の差が少なくとも0.5g/cm3であり、かつASTM−B212に従って測定された粉末の平均嵩密度が1.8から4.0g/cm3の範囲である、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項2】
粒子サイズ範囲が75μm未満の場合と粒子サイズ範囲が150μmを越える場合における嵩密度の差が少なくとも0.5g/cm3から2.0g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項3】
嵩密度差が以下のような粒子サイズ依存性の分布を有することを特徴とする請求項1から2の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末:
75μm未満に対する100μm未満から75μmまでの差が少なくとも 0.13g/cm3
100μm未満から75μmまでに対する150μm未満から100μmまでの差が少なくとも 0.13g/cm3
150μm未満から100μmに対する250μmから150μmまでの差が少なくとも 0.13g/cm3
【請求項4】
嵩密度差が以下のような粒子サイズ依存性の分布を有することを特徴とする請求項3に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末:
75μm未満に対する100μm未満から75μmまでの差が0.15から0.5g/cm3
100μm未満から75μmまでに対する150μm未満から100μmまでの差が少なくとも0.15から0.5g/cm3
150μm未満から100μmまでに対する250μmから150μmまでの差が少なくとも 0.15から0.5g/cm3
【請求項5】
インジウム、ビスマス、鉛、アルミニウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウムまたはそれらの混合物のグループ選ばれる金属が合金要素として含まれることを特徴とする請求項1から4の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項6】
以下の金属グループから選ばれる1つまたはそれより多くの合金要素が以下の量で含まれ得ることを特徴とする請求項5に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末:0.1から1200ppmのインジウム、0.1から1000ppmのビスマス、0.1から1000ppmの鉛、0.1から200ppmのアルミニウム、0.1から200ppmのカルシウム、0.1から200ppmのリチウム、0.1から200ppmのナトリウム、0.1から200ppmのマグネシウム。
【請求項7】
この粉末が0.1から1200ppmのインジジウムと0.1から1000ppmのビスマスを含有することを特徴とする請求項5に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項8】
粉末が0.1から1200ppmのインジウム、0.1から1000ppmのビスマスおよび0.1から1000ppmの鉛を含有することを特徴とする請求項5に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項9】
粉末が0.1から1000ppmの鉛と0.1から1000ppmのインジウムまたはビスマスを含有することを特徴とする請求項5に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項10】
粉末が0.1から1000ppmの鉛を含有することを特徴とする請求項5に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項11】
粉末が0.1から1000ppmのインジウム、0.1から1000ppmのビスマスおよび0.1から200ppmのアルミニウムを含有することを特徴とする請求項5に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項12】
亜鉛粉末がアマルガム化された亜鉛粉末であることを特徴とする請求項1から11の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項13】
亜鉛粉末が0.1から7重量%の水銀でアマルガム化されることを特徴とする請求項12に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項14】
亜鉛粉末または亜鉛合金粉末が1.8から2.2g/cm3の平均嵩密度を有すること(LD粉末)を特徴とする請求項1から13の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項15】
亜鉛粉末または亜鉛合金粉末が2.5から2.9g/cm3の平均嵩密度を有すること(MD粉末)を特徴とする請求項1から13の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項16】
亜鉛粉末または亜鉛合金粉末が3.0から3.4g/cm3の平均嵩密度を有すること(HD粉末)を特徴とする請求項1から13の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項17】
嵩密度2.8から3.0g/cm3を有する従来技術の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を請求項14から16の1項に記載の粉末と混合して含有する亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物。
【請求項18】
この混合物が請求項14に記載の粉末を含有することを特徴とする請求項17に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項19】
この混合物が請求項14から16に記載の粉末を少なくとも5重量%含有することを特徴とする請求項17または18に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項20】
この混合物が請求項14から16に記載の粉末を10から80重量%含有することを特徴とする請求項17から19の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項21】
請求項14に記載の低嵩密度粉末(LD粉末)と請求項16に記載の高嵩密度粉末(HD粉末)を含む、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物。
【請求項22】
この混合物が低嵩密度粉末(LD粉末)を少なくとも5重量%含有することを特徴とする請求項21に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物。
【請求項23】
この混合物が低嵩密度粉末(LD粉末)を10から80重量%含有することを特徴とする、請求項22に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物。
【請求項24】
請求項15に記載の中嵩密度粉末(MD粉末)と請求項16に記載の高嵩密度粉末(HD粉末)を含む、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項25】
この混合物が中嵩密度粉末(MD粉末)を少なくとも5重量%含有することを特徴とする請求項24に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物。
【請求項26】
この混合物が中嵩密度粉末(MD粉末)を10から80重量%含有することを特徴とする、請求項25に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物。
【請求項27】
請求項14に記載の低嵩密度粉末(LD粉末)と請求項15に記載の中嵩密度粉末(MD粉末)を含む、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末。
【請求項28】
混合物が低嵩密度粉末(LD粉末)を少なくとも5重量%含有することを特徴とする請求項27に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物。
【請求項29】
混合物が低嵩密度粉末(LD粉末)を10から80重量%含有することを特徴とする、請求項28に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物。
【請求項30】
負極として請求項1から16の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末を含むアルカリ電池。
【請求項31】
負極として請求項17から20の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物を含むアルカリ電池。
【請求項32】
負極として請求項21から23の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物を含むアルカリ電池。
【請求項33】
負極として請求項24から26の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物を含むアルカリ電池。
【請求項34】
負極として請求項27から29の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物を含むアルカリ電池。
【請求項35】
負極として請求項21から23の1項に記載の亜鉛粉末または亜鉛合金粉末の混合物を含むアルカリ電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−511703(P2006−511703A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561193(P2004−561193)
【出願日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013441
【国際公開番号】WO2004/056507
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(501459619)グリーロ ヴェルケ アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】