説明

アルキルアミン含有混合物の蒸留法及びアルキルアミン類の製造方法

【課題】 アルキルアミン製造プロセスにおけるアルコール回収工程において塔頂凝縮に要する冷媒の冷却コストを削減する、アルキルアミン含有混合物蒸留方法を提供する。
【解決手段】 アルキルアミン反応生成物中の未反応アルコールを回収するアルコール回収蒸留塔において、第一凝縮器で塔頂ガスをアルコールに富む液に凝縮させ、未凝縮ガスを第二凝縮器でアルキルアミンに富む液に凝縮させる工程において、第二凝縮器のガス入口にアルコール水溶液を添加することで第二凝縮器での凝縮温度を高くし、凝縮による冷却コストを低減せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルアミン含有混合物の蒸留法及びそれを用いたアルキルアミンの製造方法に関する。より詳しくは、アルキルアミン、アルコール及び水を含む混合物から経済的に有利にアルキルアミンを蒸留分離する方法及びそれを精製工程の一部に用いたアルコールとアンモニアからのアルキルアミンの製造方法に関するものであり、蒸留工程の冷却エネルギーコスト削減による経済性向上をはかったものである。アルキルアミンは各種の溶剤、医薬品、ゴム薬品、界面活性剤等の原料として重要な化学中間体である。
【背景技術】
【0002】
メチルアミン等のアルキルアミンは、一般にはアルミナ、シリカアルミナ、ゼオライト等の脱水およびアミネーション作用をもつ固体酸触媒の存在下にメタノール等のアルコールとアンモニアを気相で高温(400℃前後)反応させることによって製造される。通常、この反応ではジアルキルアミン、モノアルキルアミン、トリアルキルアミンの混合物が生成する。アルキルアミンの中でも特に工業的に重要なメチルアミン類ではジメチルアミン以外の需要が著しく少ないことから、反応混合物からジメチルアミンを分離した後、他のメチルアミン類は反応系にリサイクルして再利用されている。
【0003】
反応混合物から各アルキルアミンを分離するには蒸留が慣用されている。アルコールとアンモニアからのアルキルアミン合成反応は平衡反応であるため、反応混合物には各アルキルアミンのほか原料のアルコールとアンモニアも含まれ、更にアンモニアとメチルアミン類とは複雑な共沸系を形成することから、これを分離することは非常に煩雑な蒸留操作並びに大型の装置が必要となり、製造プロセスの消費エネルギーコストは非常に大きなものになる。なお、この回収プロセスに関しては、例えば非特許文献1に詳しく開示されている。
【0004】
特に、ゼオライト触媒を用いてメチルアミンを製造するプロセスの場合には、ジメチルアミン選択率向上のため、メタノール転化率は通常80〜98%に抑えられている。このため多くの場合未反応メタノールは分離回収し、反応工程もしくは精製工程へリサイクルし再利用される。
このメタノール回収工程に関しては、触媒毒となる微量副生物であるアルデヒド類の除去法などに関しての先行技術が開示されている(特許文献1)。
すなわち、メタノール中のアルデヒド化合物をモノメチルアミン及び/またはアンモニアと反応させ高沸化しメタノール回収蒸留塔で蒸留分離することによって、アルデヒド化合物が簡便かつ容易に除去できると提案されている。しかし、この方法では蒸留塔に低沸成分であるモノメチルアミンやアンモニアを導入するため、塔頂での凝縮温度が低くなるため凝縮用冷媒の冷却コストがかさむといった欠点がある。
【非特許文献1】「改訂製造工程図全集」(昭和53年4月25日株式会社化学工業社発行)
【特許文献1】特開2003−146945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アルキルアミン製造プロセスにおいて、未反応アルコールを回収蒸留塔で分離回収する工程において、消費エネルギーコストを削減し、経済的に有利なアルキルアミン製造プロセスを構築することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、アルコール回収蒸留塔において塔頂ガスを二段階で凝縮させ、特に低沸点成分に富む第二凝縮器導入ガスに対し、アルコール水溶液を添加することで第二凝縮器での冷却温度を高くできること、すなわち塔頂凝縮用の冷却コストを削減できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明の第1は、アルキルアミン、アルコール及び水を含む混合物を蒸留して、塔頂からアルコールとアルキルアミンを溜出せしめ、塔底より水を抜き出す操作において、塔頂ガスを第一段凝縮器により分縮させアルコールに富む凝縮液とアルキルアミンに富む気体とに分離し、アルコールに富む凝縮液の一部を蒸留塔に還流し、アルキルアミンに富む気体を第二段凝縮器で凝縮させることを特徴とするアルキルアミン含有混合物の蒸留法に関する。更に、第一段凝縮器において凝縮液中のアルコール濃度を80質量%以上、99質量%以下に調整すること、第二段凝縮器の気体導入口に、アルコール水溶液を導入すること、蒸留塔の運転圧力が95kPa abs以上、202kPa abs以下で、第二凝縮器に20℃以上35℃以下の冷媒を使用することにより効果を向上することが出来る。
【0008】
本発明の第2は、アルコールとアンモニアを原料とし触媒存在下で反応させてアルキルアミンを合成する合成工程と、得られた反応混合物を蒸留分離する精製工程よりなるアルキルアミンの製造法において、請求項1から請求項4の何れか一項記載のアルキルアミン含有混合物の蒸留法を精製工程の一部として含むアルキルアミンの製造法に関する。更に、第一段凝縮器により分縮させたアルコールに富む凝縮液の一部をアルキルアミン合成原料として合成工程にリサイクルし、第二段凝縮器で凝縮させた凝縮液の一部または全部を合成工程及び/または精製工程にリサイクルすることにより効果を向上することが出来る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施によりアルキルアミン製造プロセスにおけるアルコール回収工程において塔頂凝縮温度を高くすることができ、その結果、冷媒冷却用の冷凍機やその付帯設備が軽減でき、その導入・維持に要するコストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1であるアルキルアミン含有混合物の蒸留法は、アルキルアミン、アルコール及び水を含む混合物の蒸留(以下、アルコール回収蒸留と呼ぶこともある。)に関する。そしてこのアルキルアミン、アルコール及び水を含む混合物は、アルコールとアンモニアからのアルキルアミン製造工程より得られたアルキルアミン、アルコール及び水を含む混合物に適用するのが有利である。
アルキルアミンとしてはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられるが、メチルアミンへの適用が最も好ましい。各アルキルアミンはモノアルキルアミン、ジアルキルアミン及び/またはトリアルキルアミンの混合物であっても良い。
アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられるが、前述のようにアルキルアミン製造工程より得られるアルキルアミン、アルコール及び水を含む混合物の場合には、アルキルアミンのアルキル基とアルコールのアルキル基は同一となる。最も好ましいアルコールはメタノールである。
【0011】
本発明で用いられるアルコール回収蒸留塔は、通常は理論段数20〜40段程度の充填塔や棚段塔が用いられ、還流比0.5〜10、塔頂圧は0.1〜2.0MPa程度の条件で蒸留を行う。アルキルアミン、アルコール及び水を含む混合物はアルコール回収蒸留塔中段に供給する。塔頂においては二段凝縮を行い、塔頂からアルコール及びアルキルアミン(好ましくはメタノール及びメチルアミン)を抜き出す操作において、塔頂操作圧力95kPa以上202kPa以下、好ましくは95kPa以上150kPa以下、より好ましくは95kPa以上120kPa以下で、第一凝縮器の凝縮温度が35℃以上85℃以下、好ましくは35℃以上75℃以下、より好ましくは35℃以上70℃以下となるよう冷媒流量を調整する。第一凝縮器において凝縮液中のアルコール濃度(好ましくはメタノール濃度)80質量%以上99質量%以下の凝縮液を得るのが好ましい。第一凝縮器での未凝縮ガスを第二凝縮器に送り凝縮させる。第二凝縮器の冷媒温度は20℃以上35℃以下とするのが好ましい。未凝縮ガスの凝縮温度は通常第一凝縮器の凝縮温度より低いため、第二凝縮器において全量凝縮せず、そのため圧力が上昇していくので第二凝縮器ガス導入口にアルコール水溶液を加え圧力上昇を防ぐのが好ましい。アルコール水溶液は、99質量%のメタノール水溶液である場合、添加後の組成でメタノール濃度が、蒸留塔運転圧力202kPa以上であれば55質量%以上99質量%以下、蒸留塔運転圧力150kPa以上であれば67質量%以上99質量%以下、蒸留塔運転圧力120kPa以上であれば75質量%以上99質量%以下、蒸留塔運転圧力が100kPa以上であれば、81質量%以上99質量%以下となるよう添加するのが好ましい。
【0012】
本発明の第2は、アルコールとアンモニアを原料とし触媒存在下で反応させてアルキルアミンを合成する合成工程と、得られた反応混合物を蒸留分離する精製工程よりなるアルキルアミンの製造法において、前記のアルキルアミン含有混合物の蒸留法を精製工程の一部として含むアルキルアミンの製造法に関する。
合成工程で用いられる原料としてアルコールアンモニアのほかに精製工程からリサイクルされたアルキルアミン混合物(モノ体、ジ体及び/またはトリ体の混合物)を用いても良い。合成工程で用いる触媒としてはシリカ、シリカアルミナ、アルミナ及びゼオライトなどが用いられるが、需要の多いジメチルアミン等のジアルキルアミンの選択率の高いゼオライトが好ましく用いられる。ゼオライトとしてはモルデナイト、チャバサイト、エリオナイト、ゼオライトrhoなどやそれらの変性体が用いられる。
本発明によりアルキルアミンを製造する反応温度は、好ましくは200〜350℃、特に好ましくは250〜330℃の範囲で行われる。反応圧力は、好ましくは0.1〜5MPa G、特に好ましくは0.5〜3MPa Gの範囲、N/C比(反応系における窒素原子と炭素原子の数のモル比)が1〜2.5の範囲で実施するのがよい。
【0013】
本発明はアルコールとアンモニアとを触媒の存在下で気相接触反応させ得られた反応混合物からアルキルアミン類を分離精製するプロセスに適用される。好ましい精製工程の一例としては、反応混合物をアンモニア分離塔において未反応のアンモニアを、トリアルキルアミン分離塔でトリアルキルアミンを、脱水塔で水を分離したのちに、アンモニアを含むモノアルキルアミンとジアルキルアミン混合物をモノアルキルアミン分離塔に供給し、モノアルキルアミンとジアルキルアミンを回収し、脱水塔の塔底から得られる溜出物をアルコール回収蒸留塔に供給し、塔底より廃水を、塔頂よりアルコール及びアルキルアミンを抜き出し、塔頂溜出物を反応工程もしくは精製工程へリサイクルするプロセスを含むアルキルアミン類の精製プロセスを挙げることができる。
本発明はアルコール回収蒸留塔における塔頂での凝縮方法に改良を加えることで、エネルギーコストと設備コストの削減をはかったものである。
【0014】
本発明で用いられるアンモニア分離塔は、通常は、理論段数20〜40段程度の充填塔や棚段塔が用いられ、還流比1〜10、塔頂圧は1.2〜3.0MPa程度の条件で蒸留を行う。また、反応混合物は蒸留塔中段に供給される。ここで、未反応アンモニアのほぼ全量とモノアルキルアミンとジアルキルアミンとトリアルキルアミンの一部が塔頂より抜出され反応系へリサイクルされる。塔底からはモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、未反応アルコール、反応副生水と微量のアンモニアが抜出される。塔底のアンモニア濃度は、アンモニア分離塔の加熱蒸気量により変動する。この時の塔底アンモニア濃度は、好ましくは200ppm以下、より好ましくは150ppm以下になるよう加熱量を調整する。
【0015】
本発明で用いられるトリアルキルアミン分離塔は、通常は、理論段数20〜40段程度の充填塔や棚段塔が用いられ、還流比5〜10、塔頂圧は0.5〜2.0MPa程度の条件で蒸留を行う。また、アンモニア分離塔塔底液は蒸留塔中段に供給され、塔頂付近に水を供給し抽出蒸留を行う。塔頂よりトリアルキルアミンを留出させ、塔底からはモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、未反応アルコール、水と微量のアンモニアが抜出される。
【0016】
本発明で用いる脱水塔は、通常は、理論段数25〜45段程度の充填塔や棚段塔が用いられ、還流比0.5〜5、塔頂圧は0.2〜2.0MPa程度の条件で蒸留を行う。また、トリアルキルアミン分離塔塔底液は蒸留塔中段に供給される。塔頂よりモノアルキルアミン、ジアルキルアミンと微量のアンモニアを留出させ、塔底からは未反応アルコール、水、アルキルアミンが抜出される。塔底液にアルキルアミンが混入するが主成分であるアルコールや水に比べて濃度は低い。
【0017】
本発明で用いられるモノアルキルアミン分離塔は理論段数30〜50段程度の充填塔や棚段塔が用いられ、還流比3〜20、塔頂圧は0.2〜0.7MPaで蒸留を行う。また、モノアルキルアミンとジアルキルアミンと微量のアンモニアはモノアルキルアミン分離塔の中段に供給する。モノアルキルアミン分離塔の塔頂よりアンモニアを含むモノアルキルアミンを留出し、理論段にして2段〜10段、より好ましくは3段〜8段からサイドカット留分として製品モノアルキルアミンを、塔底より製品ジアルキルアミンを抜出す。サイドカット段が2段より上では不純物のアンモニアを充分に除去できず、アンモニア塔での蒸気削減効果が小さくなり、10段より下では製品モノアルキルアミン中のジアルキルアミン濃度が上昇することになる。また、塔頂からの低沸不純物除去のための留出量はサイドカット留分に対しモル比にして0.01〜0.9で実施するのが好ましく、より好ましくは0.05〜0.7以下である。0.01以下では低沸不純物の除去が充分ではなく、0.9以上では低沸不純物量は低下するがリサイクル量が増えることによる脱水塔、モノアルキルアミン分離塔での蒸気使用量が増えてしまいアンモニア除去塔での蒸気削減効果が小さくなってしまう。このような条件下で蒸留することでサイドカット留分として純度99.9質量%以上、不純物アンモニア300ppm以下の高品質な製品モノアルキルアミンを得ることができる。
【0018】
本発明で用いられるアルコール回収蒸留塔は、通常は理論段数20〜40段程度の充填塔や棚段塔が用いられ、還流比0.5〜10、塔頂圧は0.1〜2.0MPa程度の条件で蒸留を行う。アルキルアミン、アルコール及び水を含む脱水塔塔底液をアルコール回収蒸留塔中段に供給する。塔底溜出物は反応副生水及びトリアルキルアミン分離塔で注入した水が主成分であり廃水として系外に排出するが、廃水中にアルコールやアルキルアミンが含まれることは廃水処理費用の増大や製品収率の悪化を招くため好ましくなく、そのため塔底廃水中の不純物濃度は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下となるよう加熱量を調整する。塔頂においては二段凝縮を行い、塔底から水を、塔頂からアルコール及びアルキルアミン(好ましくはメタノール及びメチルアミン)を抜き出す操作において、塔頂操作圧力95kPa以上202kPa以下、好ましくは95kPa以上150kPa以下、より好ましくは95kPa以上120kPa以下で、第一凝縮器の凝縮温度が35℃以上85℃以下、好ましくは35℃以上75℃以下、より好ましくは35℃以上70℃以下となるよう冷媒流量を調整する。第一凝縮器において凝縮液中のアルコール濃度(好ましくはメタノール濃度)80質量%以上99質量%以下の凝縮液を得るのが好ましい。第一凝縮器での未凝縮ガスを第二凝縮器に送り凝縮させる。第二凝縮器の冷媒温度は20℃以上35℃以下とするのが好ましい。未凝縮ガスの凝縮温度は通常第一凝縮器の凝縮温度より低いため、第二凝縮器において全量凝縮せず、そのため圧力が上昇していくので第二凝縮器ガス導入口にアルコール水溶液を加え圧力上昇を防ぐのが好ましい。アルコール水溶液は、99質量%のメタノール水溶液である場合、添加後の組成でメタノール濃度が、蒸留塔運転圧力202kPa以上であれば55質量%以上99質量%以下、蒸留塔運転圧力150kPa以上であれば67質量%以上99質量%以下、蒸留塔運転圧力120kPa以上であれば75質量%以上99質量%以下、蒸留塔運転圧力が100kPa以上であれば、81質量%以上99質量%以下となるよう添加するのが好ましい。 第一凝縮器での凝縮液は、一部をアルコール回収蒸留塔に還流し、一部をアルキルアミン原料として合成工程にリサイクルし、第二凝縮器での凝縮液はアルキルアミン原料として合成工程へ、もしくは有効成分を回収し製品収率を上昇させるために精製工程へリサイクルすることができる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
モノメチルアミン 11.7質量%、ジメチルアミン 6.4質量%、トリメチルアミン 3.1質量%、メタノール31.3質量%、水 47.5質量%からなる原料液を10kg/hで蒸留実験装置に供給し、圧力101kPaで蒸留操作を実施した。塔頂には凝縮器を二段設け、第一凝縮器の凝縮温度が38℃となるよう通水量を調整し、未凝縮のガスを第二凝縮器へ導入し、さらに第二凝縮器ガス入口部に99質量%からなるメタノール水溶液を6kg/hで供給した。蒸留操作を継続し、第一凝縮器からの液溜出量を3kg/h、第一凝縮器からの塔還流量を7.5kg/h、第二凝縮器からの液溜出量を2kg/h、塔底からの抜出量を5kg/hとなるよう塔底加熱量を調整した。第一凝縮器及び第二凝縮器では温度25℃の水を冷媒として使用した。
蒸留の結果、第二凝縮器に導入された第一凝縮器未凝縮ガスとメタノール水溶液の混合物は温度36℃で全量凝縮した。第一凝縮器凝縮液の組成はメタノール80.9質量%であり、第二凝縮器凝縮液の組成はメタノール79.6質量%であった。本操作における物質収支を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例2
第二凝縮器ガス入口部へのメタノール水溶液供給をしない以外は実施例1と同様の条件で蒸留した結果、第一凝縮器では組成メタノール80.9質量%の凝縮液が得られたが、第二凝縮器に導入したガスは凝縮せずに全量ガスとして溜出したため凝縮液は得られなかった。そこで、第二凝縮器の冷媒を温度−10℃のエチレングリコール水溶液に変更し再度、同様の蒸留操作を行ったところ第二凝縮器に導入された第一凝縮器未凝縮ガスは温度3.5℃で全量凝縮した。本操作における物質収支を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
比較例1
塔頂で二段凝縮を行わず、塔頂から5kg/hで溜出させる以外は実施例1と同様の条件で蒸留した結果、凝縮器において未凝縮ガスが多量に発生し目標の液溜出量を得ることができなかった。そこで凝縮器の冷媒を温度−10℃のエチレングリコール水溶液に変更し再度、同様の蒸留操作を行ったところ塔頂温度19℃で目標の流量となった。本操作における物質収支を表3に示す。
【0025】
【表3】

【0026】
実施例3
メタノールとアンモニアとをゼオライト触媒の存在下で気相接触反応させ得られた反応混合物を、アンモニア分離塔(塔径0.5m、理論段30段、棚段塔)において未反応のアンモニアを分離したところ、塔底より1023kg/hで留出物を得た。アンモニア分離塔塔底留出物をトリメチルアミン分離塔(塔径0.3m、理論段30段、充填塔)へ供給し、285kg/hの注水を行いつつ還流比15で分離操作を行い、トリメチルアミンを分離除去し、塔底より1188kg/hの留出物を得た。これを脱水塔(塔径0.3m、理論段35段、充填塔)に供給し還流比1.3で分離操作を行い、塔頂より水が分離され、微量のアンモニアを含むモノメチルアミンとジメチルアミン混合物を462kg/hで得、これをモノメチルアミン分離塔(塔径0.45m、理論段40段、棚段塔)に供給し、還流比5で分離操作を行い、塔頂よりモノメチルアミン22kg/hを、塔底よりジメチルアミン440kg/hを得た。脱水塔の塔底からは804kg/hで溜出物が得られ、これをメタノール回収塔(塔径0.3m、理論段35段、棚段塔)に供給し還流比2で分離操作を行った。メタノール回収塔は運転圧力101kPaとし、塔頂ガスを二段階で凝縮させ、第二凝縮器のガス導入口に99%メタノール水溶液を60kg/hで添加した。この時、第一凝縮器の凝縮温度は43℃、第二凝縮器の凝縮温度は35.6℃であり、何れの凝縮器も冷媒に28℃の工業用水を使用した。この操作により第一凝縮器から90kg/hで溜出液を得、第二凝縮器から89kg/hで溜出液を得、それらをゼオライト触媒反応工程前段の原料と混合し反応原料としてリサイクルした。
【0027】
比較例2
メタノール回収塔、第二凝縮器ガス導入口でのメタノール添加を行わない以外は、実施例3と同様の条件で運転を実施したところ、メタノール回収塔第二凝縮器で28℃の工業用水では十分に凝縮せず、メタノール回収塔の圧力が上昇していったため、第二凝縮器供給ガスを除害設備へ送った。この操作により第一凝縮器から90kg/hで溜出液を得、ゼオライト触媒反応工程前段の原料と混合し反応原料としてリサイクルした。第二凝縮器からのリサイクルはできず、29kg/hの製品ロスとなった。
【0028】
比較例3
メタノール回収塔、第二凝縮器において冷媒を−10℃のエチレングリコールに変更した以外は、比較例2と同様の条件で運転を実施したところ、メタノール回収塔第一凝縮器から90kg/hで溜出液を得、第二凝縮器から29kg/hで溜出液を得、それらをゼオライト触媒反応工程前段の原料と混合し反応原料としてリサイクルした。−10℃エチレングリコールを製造するために冷凍機を運転し電力使用量が増したため、メチルアミン電力原単位が5kWh/T悪化した。
【0029】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明で製造あるいは蒸留されるアルキルアミンは各種の溶剤、医薬品、ゴム薬品、界面活性剤等の原料として重要な化学中間体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルアミン、アルコール及び水を含む混合物を蒸留して、塔頂からアルコールとアルキルアミンを溜出せしめ、塔底より水を抜き出す操作において、塔頂ガスを第一段凝縮器により分縮させアルコールに富む凝縮液とアルキルアミンに富む気体とに分離し、アルコールに富む凝縮液の一部を蒸留塔に還流し、アルキルアミンに富む気体を第二段凝縮器で凝縮させることを特徴とするアルキルアミン含有混合物の蒸留法。
【請求項2】
第一段凝縮器において凝縮液中のアルコール濃度を80質量%以上、99質量%以下に調整することを特徴とする請求項1記載のアルキルアミン含有混合物の蒸留法。
【請求項3】
第二段凝縮器の気体導入口に、アルコール水溶液を導入することを特徴とする請求項1もしくは請求項2記載のアルキルアミン含有混合物の蒸留法。
【請求項4】
蒸留塔の運転圧力が95kPa abs以上、202kPa abs以下で、第二凝縮器に20℃以上35℃以下の冷媒を使用することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項記載のアルコール及びアルキルアミン含有混合物の蒸留法。
【請求項5】
アルコールとアンモニアを原料とし触媒存在下で反応させてアルキルアミンを合成する合成工程と、得られた反応混合物を蒸留分離する精製工程よりなるアルキルアミンの製造法において、請求項1から請求項4の何れか一項記載のアルキルアミン含有混合物の蒸留法を精製工程の一部として含むアルキルアミンの製造法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造法において、第一段凝縮器により分縮させたアルコールに富む凝縮液の一部をアルキルアミン合成原料として合成工程にリサイクルし、第二段凝縮器で凝縮させた凝縮液の一部または全部を合成工程及び/または精製工程にリサイクルすることを特徴とするアルキルアミンの製造法。