説明

アルキルピラゾールによる金属イオンの選択的回収

【課題】金属イオンを含有する水溶液から、金属イオンを高選択的に抽出するための抽出剤および抽出法の提供。
【解決手段】アルキルピラゾールを有効成分とする、金属イオンを高選択的に抽出するための抽出剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオン、特に貴金属イオンおよびガリウムイオンを高選択的に抽出することが可能な、アルキルピラゾールを有効成分とする抽出剤および当該抽出剤を用いた金属イオン、特に貴金属イオンおよびガリウムイオンを高選択的に抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金、白金、ロジウム等の貴金属は、装飾品として我々の身の回りに用いられたり、工業的に触媒として利用されたりと、様々な分野において需要が高まっている。しかし、貴金属は天然資源として採掘される量が少ないため、貴重な天然資源となっている。
【0003】
一方、電子工業において電子材料の製造工程で排出される廃棄物、自動車廃触媒、めっき溶液などには、微量の貴金属が含まれている。今日、環境保全や資源回収の観点から、このような廃材などから貴金属を選択的に回収するための技術が関心を集めている。
【0004】
通常、貴金属は、天然においても、上記廃材においても多量の卑金属(例えば、鉄、銅、ニッケル等)と共存しているために、貴金属を得るためには、貴金属のみを卑金属から選択的に分離・抽出しなければならない。また、そこから所望の貴金属のみを得るためには、他の貴金属が共存する系の中から、さらに所望の貴金属のみを選択的に分離・抽出する工程を必要とする。
【0005】
貴金属の抽出法に関しては、これまでに様々な方法が開発されているが、いずれも選択性が乏しかったり、または操作が複雑であったりしたために、卑金属から貴金属を、また様々な貴金属の中から所望の貴金属を、簡易に、かつ高選択的に分離・抽出する方法が望まれていた。
【0006】
ガリウムは、GaAs(ガリウム砒素)やGaP(ガリウムリン)等の化合物半導体素子や青色あるいは白色LEDに用いられるGaN(窒化ガリウム)等の発光素子の原料として、現在需要が増大している。
【0007】
ガリウムは主として亜鉛製錬工程の副産物として微量に得られる金属元素である。当該副産物中には、ガリウムの他に大量の亜鉛およびインジウムなどが共存している。したがって、当該副産物よりガリウムのみを得るためには、亜鉛やインジウムなどからガリウムのみを選択的に分離・抽出する工程を必要とする。
【0008】
ガリウムの抽出法については、これまでに様々な方法が開発されているが、ガリウムとインジウムの分離が困難であったり、または操作が複雑であったりしたために、亜鉛やインジウムからガリウムを、簡易に、かつ高選択的に分離・抽出する方法が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、貴金属イオンと卑金属イオンが共存する系から、貴金属イオンを高選択的に抽出することが可能な抽出剤および抽出方法を提供する。また、本発明は、様々な貴金属イオン種が存在する系から所望の貴金属イオンを高選択的に抽出することが可能な抽出剤および抽出方法を提供する。さらに、本発明は、様々な卑金属イオン種が存在する系から所望の卑金属イオンを高選択的に抽出することが可能な抽出剤および抽出方法を提供する。さらにまた、本発明は、亜鉛イオンやインジウムイオンが共存する系から、ガリウムイオンを高選択的に抽出することが可能な抽出剤および抽出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ピラゾールを配位基としたアルキル誘導体を有効成分とする抽出剤が、金属イオン、特に貴金属イオンおよび/またはガリウムイオンを含有する酸溶液から、酸溶液中の酸濃度または酸溶液のpHを調整することによって、所望の金属イオン、特に所望の貴金属イオンおよび/またはガリウムイオンを高選択的に抽出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0012】
[1] 式(I):
【化1】

[式中、R1は直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜24のアルキル基である;R2〜R4はそれぞれ独立して、水素あるいは直鎖状または分枝鎖状の炭素数1〜12のアルキル基である]
で表される化合物またはその塩。
【0013】
[2] 式(II):
【化2】

[式中、R1は直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜24のアルキル基である]
で表される化合物またはその塩。
【0014】
[3] 式(III):
【化3】

で表される化合物またはその塩。
【0015】
[4] [1]〜[3]のいずれかの化合物またはその塩;および
有機溶媒、
を含んでなる、金属イオンを高選択的に抽出するための抽出剤。
[5] 金属イオンを含有する酸溶液から[4]の抽出剤を用いて、金属イオンを高選択的に抽出することを特徴とする、金属イオンの抽出方法。
[6] 酸溶液中の酸濃度を調整することによって、金属イオンを高選択的に抽出することを特徴とする、[5]の抽出方法。
[7] 酸溶液のpHを調整することによって、金属イオンを高選択的に抽出することを特徴とする、[5]の抽出方法。
[8] 金属イオンが、貴金属イオンおよびガリウムイオンからなる群から選択される、[5]〜[7]のいずれかの方法。
[9] 貴金属イオンが、金イオン、パラジウムイオンおよび白金イオンからなる群から選択される、[8]の方法。
[10] 金イオンおよびパラジウムイオンを含有する5.0 mol/dm3を上回る塩酸濃度の水溶液から、金イオンを高選択的に抽出する、[5]、[6]、[8]、[9]のいずれかの方法。
[11] ガリウムイオンおよびインジウムイオンを含有する1.0 mol/dm3を上回る塩酸濃度の水溶液から、ガリウムイオンを高選択的に抽出する、[5]、[6]、[8]、[9]のいずれかの方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ピラゾールを配位基としたアルキル誘導体を有効成分とする抽出剤を用いて、貴金属イオンと卑金属イオンが共存する酸溶液から貴金属イオンを、および様々な貴金属イオン種が存在する酸溶液の中から所望の貴金属イオンを、酸溶液中の酸濃度または酸溶液のpHを調整することによって、一工程にて高選択的に分離して抽出することが可能となる。また、当該抽出剤を用いて、インジウムイオンや亜鉛イオンの存在下にて、ガリウムイオンを、一工程にて高選択的に分離して抽出することが可能である。さらに、当該抽出剤を用いて抽出された貴金属イオンおよびガリウムイオンは、一般的な逆抽出操作により容易に回収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、1-ドデシル-3,5-ジメチルピラゾール合成スキームの概略図を示す。
【図2】図2は、展開溶媒(クロロホルム)合成装置を示す。
【図3A】図3Aは、1-ドデシル-3,5-ジメチルピラゾールの1H‐NMRチャートを示す。
【図3B】図3Bは、1-ドデシル-3,5-ジメチルピラゾールの1H‐NMRの結果を示す。
【図4】図4は、抽出剤による塩酸の抽出結果を示す。
【図5】図5は、クロロホルムを用いた塩酸の抽出結果を示す。
【図6】図6は、各濃度の塩酸溶液に含有される各種金属イオンの抽出剤による抽出率を示す。
【図7】図7は、各濃度の塩酸溶液に含有されるガリウム(III)イオンおよびインジウム(III)イオンの抽出剤による抽出率を示す。
【図8】図8は、各濃度の硫酸溶液に含有される各種金属イオンの抽出剤による抽出率を示す。
【図9】図9は、各濃度の硝酸溶液に含有される各種金属イオンの抽出剤による抽出率を示す。
【図10】図10は、各pHの硝酸アンモニウム溶液に含有される各種金属イオンの抽出剤による抽出率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、式(I):
【化1】

[式中、R1は直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜24のアルキル基である;R2〜R4はそれぞれ独立して、水素あるいは直鎖状または分枝鎖状の炭素数1〜12のアルキル基である]
で表される化合物に関する。
【0019】
当該化合物において、式(I)中R1〜Rは、当該化合物が疎水性の性質を保持しうる限り、下記より選択することが可能である。
式(I)中R1は、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1〜24、好ましくは8〜22、さらに好ましくは10〜18、より好ましくは12のアルキル基である。R1の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノニルデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、あるいは、これらの異性体等のアルキル基などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、ドデシル基である。
【0020】
式(I)中R〜Rは、それぞれ独立して、水素あるいは直鎖状または分枝鎖状の炭素数1〜12のアルキル基である。炭素数1〜12のアルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、あるいは、これらの異性体等のアルキル基などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、メチル基である。
【0021】
本発明において好ましくは、当該化合物は、式(II):
【化2】

で表される化合物である。
【0022】
式(II)中R1は、上記にて定義されるものである。
【0023】
本発明においてさらに好ましくは、当該化合物は、式(III):
【化3】

で表される化合物である。
【0024】
本発明の上記化合物は、任意の有機または無機の酸または塩基と塩を形成することができる。当該塩もまた本発明の範囲内である。
【0025】
本発明において、上記化合物は、当業者に周知である方法によって製造することが可能であり、ピラゾールを配位基としてアルキル基を導入することによって得ることができる。当該化合物は、固体または液体であり得る。
【0026】
本発明の抽出剤は、上記化合物を有機溶媒中に溶解することによって得ることができる。上記化合物は、上記R1にて規定されるアルキル鎖長を変化させることにより(例えば、C10H21〜C18H37)、有機溶媒中に易溶となる。
【0027】
本発明の抽出剤に用いることが可能な有機溶媒としては、脂肪族化合物から芳香族化合物までの全ての有機溶媒が挙げられ、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、シエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、酢酸、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、クロロベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ピリジン、ニトロベンゼンおよびこれらの混合物などを用いることが可能である。好ましくは、有機溶媒はクロロホルムを用いる。
本発明の抽出剤は、上記化合物を有機溶媒中に、0.01〜2 mol/dm3、好ましくは0.1 mol/dm3の濃度で含む。
【0028】
本発明の抽出剤を用いて、金属イオンを含有する酸溶液から、所望の金属イオンを高選択的に抽出することが可能である。
本発明において、金属イオンとは、貴金属イオンおよび卑金属イオンを指す。
【0029】
貴金属イオンとは、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、およびオスミウムからなる群から選択される貴金属のイオンを指す。好ましくは、金、白金、およびパラジウムからなる群から選択される貴金属のイオンを指す。
【0030】
卑金属イオンとは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、銅、水銀からなる群から選択される卑金属のイオンを指す。
【0031】
なお、本発明において、特に明記しない限り、金属、貴金属、例えば、金、白金、パラジウム、卑金属、例えば、ガリウムなど金属元素に関する記載は、該当する金属イオンを含む。
【0032】
本発明においては、これら金属イオンの1種以上を高選択的に抽出することが可能である。
より好ましくは、本発明の抽出剤を用いて、貴金属イオンおよび/またはガリウムイオンを含有する酸溶液から、所望の貴金属イオンおよび/またはガリウムイオンを高選択的に抽出することが可能である。
【0033】
金属イオンを含有する酸溶液としては、当該金属イオンを含有する、例えば、塩酸溶液、硫酸溶液、硝酸溶液、硝酸アンモニウム溶液、酢酸溶液などの公知の酸溶液およびそれらの混合溶液を用いることができる。好ましくは、塩酸溶液、硫酸溶液、硝酸溶液、または硝酸アンモニウム溶液である。当該酸溶液に含有される金属イオンは、天然の採掘物、あるいは金属または金属イオンを含有する廃材または廃水(例えば、電子材料の廃材、触媒工場から排出される廃液、写真の定着液や現像液、貴金属を触媒として有機化合物を合成した後の廃液、めっき廃液、貴金属を装飾用、医療用等に加工した後の廃液、亜鉛製錬残渣等)を供給源とすることが可能である。
【0034】
抽出工程は、上記抽出剤(有機相)と上記金属イオンを含有する酸溶液(水相)とを接触させることにより行う。
抽出の条件は特に限定されず、例えば、金属イオンを含有する酸溶液(水相)と、式(I)で表される化合物を含有する有機相とを1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:1の容積比で、5〜50℃、好ましくは20〜40℃、より好ましくは30℃にて、0.5〜48時間、好ましくは12〜36時間、より好ましくは24時間接触させることにより有機相に、金属イオンを高選択的に抽出することができる。
【0035】
本発明において「高選択的に抽出する」とは、貴金属イオンと卑金属イオンが共存する酸溶液から貴金属イオンを、または様々な貴金属イオン種が存在する酸溶液の中から所望の貴金属イオンを、または様々な卑金属イオン種が存在する酸溶液の中から所望の卑金属イオンを、あるいはインジウムイオンとガリウムイオンが共存する酸溶液からガリウムイオンを、それぞれ優先的に(すなわち、他の金属と比べて高い抽出率にて)抽出することを意味する。
【0036】
上記抽出法の一実施形態において、抽出される各金属イオンの抽出率は、抽出時に用いられる酸溶液の溶液濃度に応じて変化し得る。したがって、当該性質を用いて、上記抽出法において酸溶液の溶液濃度を適宜調整して、所望の金属イオン、特に貴金属イオンおよび/またはガリウムイオン、を高選択的に抽出することが可能である。
【0037】
下記実施例にて詳細に記載されるように、水相に塩酸溶液を使用した場合において、塩酸濃度が、例えば0.1〜3.0 mol/dm3においては、抽出率が高い順に、パラジウムイオンおよび金イオン、次いで白金イオンが選択的に抽出され、約3.0 mol/dm3付近においては、金イオン、次いでパラジウムイオン、さらに次いでガリウムイオン、白金が選択的に抽出され、3.0〜5.0 mol/dm3においては、金イオン、次いでパラジウムイオンおよびガリウムイオン、さらに白金イオンが選択的に抽出され、約5.0 mol/dm3以上の高塩酸濃度においては、ガリウムイオンおよび金イオン、次いで白金イオン、さらに次いでパラジウムイオンが選択的に抽出され得る。
【0038】
したがって、水相に濃度3.0 mol/dm3以下の塩酸溶液を用いることによって、金イオン、パラジウムイオン、白金イオンを高選択的に抽出することが可能である。また、水相に濃度5.0 mol/dm3以上の塩酸溶液を用いることによって、金およびガリウムイオンを高選択的に抽出することでき、またパラジウムイオンを含有する酸溶液から金イオンを分離することが可能である。
【0039】
また、水相に硫酸溶液を使用した場合において、硫酸濃度が、例えば0.1〜約1.0 mol/dm3においては、抽出率が高い順に、金イオンおよびパラジウムイオン、次いで白金イオン、さらに次いでガリウムイオンが選択的に抽出され、1.0〜3.0 mol/dm3においては、金イオンおよびパラジウムイオン、次いで白金イオン、さらに次いでガリウムイオンが選択的に抽出され、約3.0 mol dm3以上の高硫酸濃度においては、金イオン、白金イオン、およびパラジウムイオン、次いでガリウムイオンが選択的に抽出され得る。
したがって、水相に硫酸溶液を用いることによって、金イオン、パラジウムイオン、白金イオンを高選択的に抽出することが可能である。
【0040】
さらに、水相に硝酸溶液を使用した場合において、硝酸濃度が、約3.0 mol/dm3以下においては、抽出率が高い順に、金イオンおよびパラジウムイオン、次いで白金イオンが選択的に抽出され、3.0〜5.0 mol/dm3においては、金イオン、次いでパラジウムイオン、さらに次いで白金イオンが選択的に抽出され、約5.0 mol/dm3以上においては、金イオン、次いでパラジウムイオン、さらに次いで白金イオンが選択的に抽出され得る。
したがって、水相に硝酸溶液を用いることによって、金イオンおよびパラジウムイオンを高選択的に抽出することが可能である。
【0041】
上記抽出法の別の実施形態において、抽出される各金属イオンの抽出率は、抽出時に用いられる酸溶液のpHに応じて変化し得る。したがって、当該性質を用いて、上記抽出法において酸溶液のpHを適宜調整して、所望の金属イオン、特に貴金属イオンおよび/またはガリウムイオンを高選択的に抽出することが可能である。
【0042】
下記実施例にて詳細に記載されるように、水相に硝酸アンモニウム溶液を使用した場合において、硝酸アンモニウム溶液のpHが、例えば、pH=1付近においては、抽出率が高い順に、パラジウムイオン、次いで白金イオン、さらに次いで金イオンが選択的に抽出され、pH=2付近ではパラジウムイオンおよび金イオン、次いで白金イオンが選択的に抽出され得る。さらに、pH=4.5付近ではガリウムイオンが選択的に抽出され得る。
【0043】
したがって、水相に低pH(例えば、pH1以下、pH2以下)の硝酸アンモニウム溶液を用いることによって、パラジウムイオンおよび/または金イオンを高選択的に抽出することが可能である。
【0044】
上記のように、本発明の抽出剤を用いた抽出法においては、水相の酸溶液、溶液中の酸濃度、および/またはpHのみを変化させることによって、所望する金属イオンを他の金属イオンから、一工程で分離して抽出することが可能である。
【0045】
特に、本発明の抽出剤を用いた抽出法においては、水相の酸溶液、溶液中の酸濃度、および/またはpHのみを変化させることによって、所望する貴金属イオンおよび/またはガリウムイオンを、ベースメタル(例えば、銅、インジウム、ニッケル、カドミウム、亜鉛、コバルト、鉄など)イオンから、あるいは他の貴金属イオンから、一工程で分離して抽出することが可能である。
【0046】
当該抽出法は、所望する金属イオンを抽出するために、水相の酸溶液、溶液中の酸濃度およびpHに関する条件は、単独の条件を用いて行っても良いし、複数の条件を適宜組み合わせて用いて行っても良い。
【0047】
上記の抽出工程により有機相中に抽出された金属イオンは、当業者に公知の手法を用いて容易に回収することが可能である。例えば、抽出された金属イオンを含有する有機相と水相とを分離して、当該有機相からアンモニア溶液、濃塩酸、チオ尿素(塩酸+チオ尿素)溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水などを逆抽出用の水相(逆抽出液)として用いて、抽出された金属イオンを逆抽出して回収することが可能である。
【0048】
(実施例)
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。本実施例において特に明記しない限り、試薬は和光純薬工業株式会社より購入したものを用いた。
【実施例1】
【0049】
抽出剤の作製
1-ドデシル-3,5-ジメチルピラゾール(DDMP)の合成
DDMPの合成スキームを図1に示す。当該スキームに従って、以下のとおりDDMPの合成を行った。
【0050】
3,5ジメチルピラゾール38.5 g(0.4 mol)を500 cm3三口フラスコに入れて、ジオキサン約300 cm3により溶解させた。さらにトリエチルアミン(東京化成工業株式会社)18.2 g(0.18 mol)を加え、滴下ロートにより1-ブロモドデカン49.85 g(0.2 mol)を1時間ほどかけて、攪拌しながら、ゆっくり滴下した。
【0051】
滴下終了後、ヒーターを使って80℃にて24時間還流させた。反応時間は薄層クロマトグラフィーにより決定した。展開溶媒(クロロホルム)合成装置を図2に示す。
【0052】
反応終了後、減圧留去により溶媒であるジオキサンの除去を行い、クロロホルムを加え溶解し、0.1 mol/dm3の塩酸で3回分液し、その後0.1 mol/dm3の水酸化ナトリウムで3回分液し、蒸留水でpHが約7になるまで3回程度分液を行った。その後無水硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過を行い、その後再び減圧留去を行いクロロホルムの除去を行った。次にカラムに綿をつめ、シリカゲルとヘキサンを混合し、カラムに流した。その後、合成物を流し、ヘキサンを溶媒として、不純物の除去を行った。終点は薄層クロマトグラフィー、展開溶媒(クロロホルム)により決定した。最終生成物は液体で得られ、TLC、1H‐NMRにて同定を行い、目的生成物であることを確認した。DDMPの1H‐NMRチャートをそれぞれ図3AおよびBに示した。
【0053】
DDMPはクロロホルムには可溶であったため、クロロホルムを希釈剤として用いて、DDMPを0.1 mol/dm3の濃度で含有する抽出剤を作製し、以下の実験に用いた。
【実施例2】
【0054】
抽出剤の物性実験
DDMPは窒素原子を有することから塩酸を抽出すると考えられるため、DDMPによる塩酸の抽出実験を行った。抽出実験は全てバッチ法により行った。水相は、それぞれ所定の塩酸濃度に調整した。有機相には上記実施例1で作製した抽出剤を用いた。各相を共栓つき三角フラスコにとり、30℃恒温槽中で24時間振とうした。その後水相と有機相を分取し、平衡後の水相塩酸濃度を水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定により求めた。また、平衡後の有機相塩酸濃度は水酸化カリウム/エタノール(日本アルコール販売株式会社)を用いた中和滴定により求めた。

【0055】
クロロホルムによる塩酸の抽出
図4に示す結果において、若干見られる塩酸の抽出がクロロホルムにより生じる可能性が考えられたので、クロロホルムのみを用いて塩酸の抽出実験を行った。抽出実験は全てバッチ法により行った。水相は、それぞれ所定の濃度に調整した塩酸を用いた。有機相にはクロロホルムを用いた。各相を共栓つき三角フラスコにとり、30℃恒温槽中で24時間振とうした。その後水相と有機相を分取し、平衡後の水相塩酸濃度を水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定により求めた。また、平衡後の有機相塩酸濃度は水酸化カリウム/エタノールを用いた中和滴定により求めた。

水相 :各種塩酸濃度溶液(水素イオン濃度:0.1 〜 5 mol/dm3);
有機相:クロロホルム溶液
図5にクロロホルムのみを用いた塩酸の抽出結果を示す。結果よりクロロホルムのみでは、塩酸の抽出は起こらないことが示された。
【実施例3】
【0056】
抽出剤を用いた金属イオンの選択的抽出実験
実験操作
抽出実験は全てバッチ法により行った。水相および有機相は、それぞれ下記所定の条件に調整したものを使用した。各相を15 mlずつ共栓つき三角フラスコに分取し、30℃恒温槽中で24時間振とうした。その後水相を分取し、初期金属濃度および平衡後の水相中の金属濃度を原子吸光光度計(PERKIN ELMER Aanalyst100)を用いて測定した。また、有機相中の金属濃度は物質収支により求めた。平衡後のpHはpHメーター計(東亜電波工業(株)HM-30S)を用いて測定し、平衡後の塩酸濃度は中和滴定により求めた。
なお、金属イオンの抽出特性を評価するため、抽出率Eおよび分配比Dを以下のように定義する。
【0057】
E = Corg/ Cinit ×100
D = Corg/ Caq
Corg = Cinit- Caq
Cinit;初期金属濃度 [mol/dm3]
Caq ;平衡水相金属濃度 [mol/dm3]
Corg ;平衡有機相金属濃度 [mol/dm3]
【0058】
塩酸溶液からの金属イオンの選択的抽出
抽出剤を用いた、塩酸溶液からの金属イオンの抽出選択性を検討するために、各種の金属を用いて実験を行った。金属は金(III)、パラジウム(II)、白金(IV)、銅(II)、ニッケル(II)、カドミウム(II)、亜鉛(II)、コバルト(II)、鉄(III)、インジウム(III)、錫(II)、ガリウム(III)の塩化物塩を用いた。
【0059】
抽出実験に用いた水相および有機相は以下のものを用いた。
水相 :約1×10-3mol/dm3の各種金属イオンを含む塩酸溶液(塩酸濃度:0.1 〜 5 mol/dm3);
有機相:0.1 mol/dm3 DDMPを含有するクロロホルム溶液(抽出剤)
【0060】
図6に、各濃度の塩酸溶液に含有される各種金属イオンの抽出結果を示す。銅(II)、インジウム(III)、ニッケル(II)、カドミウム(II)、亜鉛(II)、コバルト(II)、鉄(III)は、全塩酸濃度にわたってほとんど抽出されなかった。白金(IV)は、塩酸濃度の影響をほとんど受けず、全塩酸濃度にわたって約80%から60%の抽出率を示した。パラジウム(II)は、塩酸濃度が0.1 mol/dm3 付近では約100 %の高い抽出率を示すが、塩酸濃度が増加すると抽出率は急激に減少し、その後も少しずつ減少していった。金(III)は、全塩酸濃度にわたって高い抽出率を示した(約99%)。
【0061】
これらの結果から、水相に塩酸溶液を用いることによって、ベースメタルから金(III)、パラジウム(II)および白金(IV)の選択的分離が可能であることが示された。また、高濃度の塩酸溶液を水相に用いることによって、金(III)とパラジウム(II)の分離、白金とパラジウム(II)の分離が可能であることが示された。
【0062】
さらに、当該抽出実験における、ガリウム(III)およびインジウム(III)の抽出率を示す結果を図7に示す。
図7の結果より、高濃度の塩酸溶液を水相に用いることによって、ガリウム(III)とインジウム(III)を分離して、ガリウム(III)を高選択的に抽出できることが明らかとなった。
【0063】
硫酸溶液からの金属イオンの選択的抽出
抽出剤を用いた、硫酸溶液からの金属イオンの抽出選択性を検討するために、各種の金属を用いて実験を行った。金属は金(III)、白金(IV)、パラジウム(II)、銅(II)、ニッケル(II)、インジウム(III)、亜鉛(II)、ガリウム(III)、コバルト(II)、鉄(III)の塩化物塩を用いた。
【0064】
抽出実験に用いた水相および有機相は以下のものを用いた。
水相 :約1×10-3mol/dm3の各種金属イオンを含む硫酸溶液(硫酸濃度:0.1 〜 5 mol/dm3);
有機相:0.1 mol/dm3 DDMPを含有するクロロホルム溶液(抽出剤)
【0065】
図8に、各濃度の硫酸溶液に含有される各種金属イオンの抽出結果を示す。銅(II)、ニッケル(II)、インジウム(III)、亜鉛(II)、コバルト(II)、鉄(III)は、全硫酸濃度にわたってほとんど抽出されなかった。白金(IV)は、硫酸濃度が0.1 mol/dm3から1.0 mol/dm3付近まで約80%の抽出率を示し、3.0 mol/dm3以上の硫酸濃度では100%に近い抽出率を示した。パラジウム(II)は、全硫酸濃度にわたって100%の抽出率を示した。また金(III)もパラジウム(II)と同じ挙動を示した。
【0066】
これらの結果から、水相に硫酸溶液を用いることによって、ベースメタルから金(III)、パラジウム(II)および白金(IV)の選択的分離が可能であることが示された。
【0067】
硝酸溶液からの金属イオンの選択的抽出
抽出剤を用いた、硝酸溶液からの金属イオンの抽出選択性を検討するために、各種の金属を用いて実験を行った。金属は金(III)、白金(IV)、パラジウム(II)、銅(II)、ニッケル(II)、ガリウム(III)、インジウム(III)、亜鉛(II)、コバルト(II)、鉄(III)の塩化物塩を用いた。
【0068】
抽出実験に用いた水相および有機相は以下のものを用いた。
水相 :約1×10-3mol/dm3の各種金属イオンを含む硝酸溶液(硝酸濃度:0.1 〜 5 mol/dm3);
有機相:0.1 mol dm-3 DDMPを含有するクロロホルム溶液(抽出剤)
【0069】
図9に、各濃度の硝酸溶液に含有される各種金属イオンの抽出結果を示す。銅(II)、ニッケル(II)、インジウム(III)、亜鉛(II)、コバルト(II)、鉄(III)は、全硝酸濃度にわたってほとんど抽出されなかった。白金(IV)は、硝酸濃度の影響をほとんど受けず、全硝酸濃度にわたって約10〜20%の抽出率を示した。パラジウム(II)は、硝酸濃度が0.1 mol/dm3から3.0 mol/dm3付近では100%の高い抽出率を示すが、硝酸濃度が5.0 mol/dm3では抽出率は減少し約70%の抽出率であった。金(III)は、硝酸濃度が0.1 mol/dm3から3.0 mol/dm3付近では100%の高い抽出率を示すが、硝酸濃度が5.0 mol/dm3では抽出率は減少し約80%の抽出率であった。
【0070】
これらの結果から、水相に硝酸溶液を用いることによって、ベースメタルから金(III)、パラジウム(II)および白金(IV)の選択的分離が可能であることが示された。また、水相に硝酸溶液を用いることによって、白金(IV)とパラジウム(II)および金(III) の分離が可能であることが示された。
【0071】
硝酸アンモニウム溶液からの金属イオンの選択的抽出
抽出剤を用いた、硝酸アンモニウム溶液からの金属イオンの抽出選択性を検討するために、各種の金属を用いて実験を行った。金属は金(III)、白金(IV)の塩化物塩、原子吸光分析用パラジウム(II)標準原液(関東化学株式会社)、銅(II)、ニッケル(II)、カドミウム(II)、亜鉛(II)、コバルト(II)、鉄(III)、ガリウム(III)の硝酸塩を用いた。
【0072】
抽出実験に用いた水相および有機相は以下のものを用いた。
水相 :約1×10-3mol/dm3の各種金属イオンを含む硝酸アンモニウム水溶液(硝酸イオン濃度:0.1 mol/dm3;pH = 1〜7)
水相は1 mol/dm3硝酸アンモニウムと1 mol/dm3硝酸を混合することによっておおまかにpHを調整した後、少量の強硝酸および強アンモニアを用いてさらに細かくpHを調整した;
有機相:0.1 mol/dm3 DDMPを含有するクロロホルム溶液(抽出剤)
【0073】
図10に、各pHの硝酸アンモニウム溶液に含有される各種金属イオンの抽出結果を示す。銅(II)、ニッケル(II)、亜鉛(II)、コバルト(II)、鉄(III)は、硝酸アンモニウム溶液の全pH領域にわたってほとんど抽出されなかった。金(III)は、pH=2付近では約60%の抽出率を示し、その後はpHの増加に伴い抽出率は減少していった。パラジウムにおいては、pH=1付近では100%、pH=2付近では約60%の抽出率を示し、その後は減少していった。白金はpH=1において約40%の抽出率を示し、その後減少した。
【0074】
これらの結果から、水相に低pHの硝酸アンモニウム溶液を用いることによって、ベースメタルからパラジウム(II)の選択的分離、金(III)とパラジウム(II)の分離、および白金(IV)とパラジウム(II)の分離が可能であることが示された。
【実施例4】
【0075】
ガリウム(III)の逆抽出実験
抽出実験には、以下の水相、有機相、逆抽出液を用いた。
水相 :約1×10-3 mol/dm3の塩化ガリウム(III)を含む塩酸溶液(塩酸濃度: 5 mol/dm3
有機相:0.1 mol/dm3 DDMPを含有するクロロホルム溶液(抽出剤)
逆抽出液:水;
:0.1 mol/dm3水酸化ナトリウム水溶液;または
:1 mol/dm3水酸化ナトリウム水溶液
【0076】
抽出実験は全てバッチ法により行った。上記水相および有機相をそれぞれ50 mlずつ共栓つき三角フラスコに分取し、30℃の恒温槽中で約24時間、振とうして抽出した。その後、水相と有機相を分取し、分取した有機相10 mlを上記の各逆抽出液10 mlと共栓つき三角フラスコに取り、再び30℃の恒温槽中で24時間振とうした。初期金属イオン濃度および平衡後の水相金属イオン濃度は原子吸光光度計を用いて測定した。なお、金属イオンの抽出特性は、上記実施例3に記載の抽出率Eを用いて評価した。
ガリウム(III)の逆抽出結果を以下の表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
これらの結果より、逆抽出液として水または1.0 mol/dm3水酸化ナトリウム水溶液を用いることによって、有機相中に抽出されたガリウム(III)を高効率で逆抽出(回収)できることが示された。この結果から、抽出操作後のガリウム(III)はこれらの逆抽出剤によりほぼ100%の回収率で、濃縮することが可能である。
【実施例5】
【0079】
パラジウム(II)の逆抽出実験
抽出実験には、以下の水相、有機相、逆抽出液を用いた。
水相 :約1×10-3 mol/dm3の塩化パラジウム(II)を含む塩酸溶液(塩酸濃度: 0.05 mol/dm3
有機相:0.1 mol/dm3 DDMPを含有するクロロホルム溶液(抽出剤)
逆抽出液:1 mol/dm3 アンモニア水溶液;
:1 mol/dm3 チオ尿素水溶液;
:1 mol/dm3チオ尿素 + 1 mol/dm3 HCl水溶液;または
:1 mol/dm3チオシアン酸アンモニウム水溶液
【0080】
抽出実験は全てバッチ法により行った。上記水相および有機相をそれぞれ50 mlずつ共栓つき三角フラスコに分取し、30℃の恒温槽中で約24時間、振とうして抽出した。その後、水相と有機相を分取し、分取した有機相10 mlを上記の各逆抽出液10 mlと共栓つき三角フラスコに取り、再び30℃の恒温槽中で24時間振とうした。初期金属イオン濃度および平衡後の水相金属イオン濃度は原子吸光光度計を用いて測定した。なお、金属イオンの抽出特性は、上記実施例3に記載の抽出率Eを用いて評価した。
パラジウム(II)の逆抽出結果を以下の表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
以上の結果より、パラジウム(II)は1 mol/dm3 のアンモニア、1 mol/dm3 チオ尿素、1 mol/dm3 チオ尿素 + 1 mol/dm3 HCl水溶液を逆抽出液として用いた場合に、それぞれ高い逆抽出率を示した。パラジウム(II)のチオ尿素水溶液を用いた場合の逆抽出において、チオ尿素と塩酸を混合し逆抽出液中の塩酸濃度を高くすることによって、逆抽出されたパラジウム(II)が再び有機相に抽出されることを防ぎ、逆抽出率を高めることが可能である。
【0083】
以上の結果より、抽出操作後のパラジウム(II)はこれらの逆抽出液によりほぼ100%の回収率で、濃縮することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の金属イオンを高選択的に抽出するための抽出剤を用いることによって、貴金属イオンが微量含有されためっき廃液や電子部品・電子機器、あるいは廃触媒などの廃棄物からの貴金属イオンを高選択的に回収することが可能であり、また亜鉛製錬残渣など亜鉛イオンやインジウムイオンが共存する溶液中からガリウムイオンを高選択的に抽出すること可能であり、環境保全や資源回収などの分野において重要な貢献をすることが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、R1は直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜24のアルキル基である;R2〜R4はそれぞれ独立して、水素あるいは直鎖状または分枝鎖状の炭素数1〜12のアルキル基である]
で表される化合物またはその塩。
【請求項2】
式(II):
【化2】

[式中、R1は直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜24のアルキル基である]
で表される化合物またはその塩。
【請求項3】
式(III):
【化3】

で表される化合物またはその塩。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物またはその塩;および
有機溶媒、
を含んでなる、金属イオンを高選択的に抽出するための抽出剤。
【請求項5】
金属イオンを含有する酸溶液から請求項4記載の抽出剤を用いて、金属イオンを高選択的に抽出することを特徴とする、金属イオンの抽出方法。
【請求項6】
酸溶液中の酸濃度を調整することによって、金属イオンを高選択的に抽出することを特徴とする、請求項5記載の抽出方法。
【請求項7】
酸溶液のpHを調整することによって、金属イオンを高選択的に抽出することを特徴とする、請求項5記載の抽出方法。
【請求項8】
金属イオンが、貴金属イオンおよびガリウムイオンからなる群から選択される、請求項5〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
貴金属イオンが、金イオン、パラジウムイオンおよび白金イオンからなる群から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
金イオンおよびパラジウムイオンを含有する5.0 mol/dm3を上回る塩酸濃度の水溶液から、金イオンを高選択的に抽出する、請求項5、6、8、9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ガリウムイオンおよびインジウムイオンを含有する1.0 mol/dm3を上回る塩酸濃度の水溶液から、ガリウムイオンを高選択的に抽出する、請求項5、6、8、9のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−189348(P2010−189348A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37123(P2009−37123)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】