説明

アルキルフェニルカルボン酸の第三アミドの製造方法

本発明の対象は、少なくとも一種の第二アミンを少なくとも一種のアルキルフェニルカルボン酸と反応させてアンモニウム塩に転化し、その後、このアンモニウム塩をマイクロ波照射の下に更に反応させて第三アミドとすることによって、アルキルフェニルカルボン酸の第三アミドを製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アルキルフェニルカルボン酸の第三アミドは、薬学的及び工業的に非常に重要な部類の化合物である。例えば、第二アルキルアミンとのアルキル安息香酸のアミドは、昆虫防除剤(防虫、駆虫剤)として使用されている。
【0002】
芳香族カルボン酸のアミドの製造のために、様々な方法が開発された。これに関して、これまでは、商業的に有利な収率を達成するために、費用集約的で時間のかかる製造方法に頼ってきた。公知の製造方法は、反応性の高いカルボン酸誘導体、例えば酸無水物、酸ハロゲン化物、例えば酸塩化物、エステルを必要としたり、またはカップリング剤、例えばN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドを使用することによる反応の場(in situ)での活性化、または非常に特殊で、それゆえ高価な触媒を必要とする。これらの製造方法の一部では、多量の不所望の副生成物、例えばアルコール、酸及び塩が生じ、これらは生成物から分離しそして廃棄処理しなければならない。しかし、生成物中に残留するこれらの助剤及び副生成物の残渣も一部は非常に望ましくない効果を引き起こす恐れがある。例えば、ハロゲン化物イオンや、酸は腐食を招く。カップリング剤及びそれから生成する副生成物の一部は有毒で、感作性であるかまたは発がん性である。
【0003】
合成の効率を高めるため及び廃棄すべき副生成物の量を減らすために、カップリング剤を使用することなく、アルキルフェニルカルボン酸及び第二アミンから直接第三アミドを製造するための新しい方法が求められている。しかし、アルキルフェニルカルボン酸と第二アミンとの直接的な熱縮合反応は、慣用のバッチ式方法において、しばしば300℃を超える温度において最大数日間までの非常に長い反応時間を必要とする上に、満足な結果を与えない。なぜならば、様々な副反応が収率を低下させるからである。このような副反応には、例えば、カルボン酸の脱カルボキシル化、長期間の加熱の間のアミノ基の酸化、及び特に、熱により誘発される第二アミノ基の分解などがある。加えて、生成する副生成物の量は、煩雑な仕上げ処理工程を必要とする。
【0004】
アミドの合成のためのより新しい方策は、カルボン酸とアミンとの反応をマイクロ波によって促進してアミドとする方法である。例えば、Gelensら、Tetrahedron Letters 2005, 46(21), 3751−3754(非特許文献1)は、マイクロ波による照射の下に行われた多数のアミドの合成法を開示している。この際、電子吸引性置換基、例えばアリール基を有するカルボン酸(安息香酸)の反応は、250〜300℃の非常に高い反応温度を必要とし、それにも係わらず、それ程高い転化率を与えない。特に問題なのは、第三アミンを生成する安息香酸とジアルキルアミンとの反応である。例えば、250℃での安息香酸とジ(n−プロピル)アミンとの反応は10%のジアミドしか与えず、これは、反応温度を高めることによって50%まで向上することができる。ジベンジルアミンとの対応する反応は、250℃の温度においてジベンジルアミドを僅か25%の収率でしか与えず、300℃まで更に温度を高めると、主に、使用した安息香酸の脱カルボキシル化をまねき、第三アミドを与えない。このような転化率は、工業的な方法にとってはあまりに低すぎる。この際、前記の脱カルボキシル化は、商業的に及び生態学的な観点から特に不利である。なぜならば、この際生ずる芳香族炭化水素は、プロセスにリサイクルできず、廃棄しなければならないからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Gelensら、Tetrahedron Letters 2005, 46(21), 3751−3754
【非特許文献2】B. L. Hayes, “Microwave Synthesis”,CEM Publishing 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、アルキルフェニルカルボン酸及び第二アミンを直接及び高収率、すなわち定量的な収率で第三アミドに転化することができる、アルキルフェニルカルボン酸の第三アミドを製造する方法を見出すことであった。更に、この際、副生成物、例えば第二アミド及び/または脱カルボキシル化されたカルボン酸は全く生成しないかまたは副次的な量でしか生成しないべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、マイクロ波を照射することによって、第二アミンとアルキルフェニルカルボン酸とを直接的反応させると、アルキルフェニルカルボン酸の第三アミドを高収量及び高純度で製造できることが見出された。驚くべきことに、芳香族系が少なくとも一つのアルキル基で置換される際に、アリールカルボン酸の脱カルボキシル化は実質的に起こらない。更に、アミノ基の脱離は僅かにしか起こらず、そして反応生成物は殆ど無色である。
【0008】
本発明の対象は、少なくとも一種の第二アミンを少なくとも一種のアルキルフェニルカルボン酸と反応させてアンモニウム塩とし、その後、このアンモニウム塩をマイクロ波照射の下に更に反応させて第三アミドにすることによって、アルキルフェニルカルボン酸の第三アミドを製造する方法である。
【0009】
第三アミドとは、アミド窒素原子が二つの炭化水素基を有するアミドのことである。
【0010】
アルキルフェニルカルボン酸とは、(4n+2)π電子を有する芳香族系(nは、自然数であり、好ましくは1、2、3、4または5である)に直接結合した少なくとも一つのカルボキシル基及び少なくとも一つのアルキル基を含む酸のことである。このような芳香族系の例は、ベンゼン、ナフタレン及びフェナントレンである。芳香族系は、カルボキシル基及びアルキル基の他に、一つまたはそれ以上、例えば一つ、二つ、三つまたはそれ以上の同一かまたは異なる更に別の置換基を有することができる。適当な更に別の置換基は、例えば、ハロゲン化されたアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基及び/またはスルホン酸基である。これらは、芳香族系の任意の位置に結合することができる。
【0011】
特に好ましくは、本発明の方法は、カルボキシル基と炭素原子数が1〜20のアルキル基を有しかつ(4n+2)π電子を有する芳香族系を含み、ここでnは1〜4の整数を表す、芳香族カルボン酸のアミド化に使用される。
【0012】
該方法は、炭素原子数1〜20、特に1〜12、例えば1〜4の少なくとも一つのアルキル基を有するアルキル安息香酸のアミド化に特に有利である。本発明による方法は、o−トリル酸、m−トリル酸、p−トリル酸、o−エチル安息香酸、m−エチル安息香酸、p−エチル安息香酸、o−プロピル安息香酸、m−プロピル安息香酸、p−プロピル安息香酸及び3,4−ジメチル安息香酸のアミド化に特に適している。
【0013】
本発明において好適な第二アミンは、二つの炭化水素残基及びアミド結合の形成のためのプロトンを有する少なくとも一つのアミノ基を有する。
【0014】
好ましいアミンは次式に相当するものである。
【0015】
HNR
式中、R1及びR2は、互いに独立して、C−C24−アルキル、C−C12−シクロアルキルまたはC−C30−アラルキルを表す。
【0016】
好ましくは、R1及びR2は、互いに独立して、C−C12−アルキル、特にC−C−アルキルを表す。アルキル基は線状もしくは分枝状であることができる。R1及びR2基は、ヘテロ原子、例えばO及び/またはSで置換されていることができるか及び/またはこのようなヘテロ原子を含む置換基を有することができる。しかし、アルキル基は、好ましくは、二つの炭素原子当たり一つより多いヘテロ原子を含まない。更に別の好ましい態様の一つでは、R1及び/またはR2は、互いに独立して、次式のポリオキシアルキレン基を表す。
【0017】
−(B−O)−R
式中、
Bは、線状もしくは分枝状C2−C4アルキレン基、特に式−CH−CH−及び/または−CH(CH)−CH−の基を表し、
mは、1〜100、好ましくは2〜20の数であり、そして
3は、水素、炭素原子数1〜20のアルキル基、環原子数が5〜12のシクロアルキル基、環原子数が6〜12のアリール基、炭素原子数が7〜30のアラルキル基、環原子数が5〜12のヘテロアリール基、または炭素原子数が6〜12のヘテロ−アラルキル基を表す。
【0018】
1及び/またはR2として特に好適な芳香脂肪族基としては、C1〜C6アルキル基を介して窒素原子に結合した、環員数が少なくとも5の環系が挙げられる。これは、ヘテロ原子、例えばS、O及びNを含むことができる。前記芳香族基及び芳香脂肪族基は、更に別の置換基、例えばアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化されたアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ニトリル基、ヒドロキシル基及び/またはヒドロキシアルキル基を有することができる。
【0019】
1及び/またはR2として特に好適なものは、低級アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチルまたはtert−ブチルである。特に、R1及びR2は同時にエチルを表す。
【0020】
好適なアミンの例は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン並びにこれらの混合物である。
【0021】
該方法は、特に、N,N−ジエチル−m−トルアミドの製造に好適である。
【0022】
本発明の方法においては、アルキルフェニルカルボン酸及びアミンは、互いに任意の比率で反応させることができる。特に好適には、アルキルフェニルカルボン酸と第二アミンとのモル比は、10:1〜1:100、好ましくは2:1〜1:2、特に1.0:1.2〜1.2:1.0、就中、当モルである。
【0023】
多くの場合において、第二アミンを過剰に、すなわちアミンとアルキルフェニルカルボン酸とのモル比を少なくとも1.01:1.00、特に1.05:1.00〜100:1、例えば1.1:1.0〜10:1として作業することが有利であることが判明した。この際、当該酸が、実質的に定量的に第三アミドに転化される。該方法は、使用する第二アミンが易揮発性である場合に特に有利である。ここで、易揮発性とは、アミンが、常圧下において好ましくは200℃未満、特に150℃未満、例えば100℃未満の沸点を有し、それゆえアミドから蒸留によって分離できること意味する。
【0024】
該アミドの製造は、アルキルフェニルカルボン酸と第二アミンを反応させてアンモニウム塩とし、その後、この塩にマイクロ波を照射することによって行われる。この際、このアンモニウム塩は、好ましくは、反応の場で(in situ)で生成され、単離されない。好ましくは、マイクロ波照射が原因で生ずる温度の上昇は、マイクロ波の強度の調節及び/または反応溶液の冷却によって最大で330℃に制限される。特に、該反応を、200〜300℃の温度、例えば220〜270℃の温度で実施すると特に有効であることが判明した。
【0025】
マイクロ波照射時間は、様々なファクター、例えば反応体積、反応空間の形状、及び所望の転化率などに依存する。通常は、マイクロ波の照射は、30分未満の期間、好ましくは0.01秒〜15分の期間、特に好ましくは0.1秒〜10分の期間、特に1秒〜5分の期間、例えば5秒〜2分の期間行われる。この際、マイクロ波照射の強度(出力)は、反応物が、できる限り短い時間で目的の反応温度を達成するように調節される。本発明方法の更に別の好ましい態様の一つでは、アンモニウム塩を、マイクロ波照射を始める前から既に加温することが有利であることが判明した。このためには、中でも、アンモニウム塩の生成時に発生する反応熱を利用することができる。この際、アンモニウム塩を40〜200℃の温度に、ただし好ましくは当該系の沸点未満の温度にまで加熱することが特に有利であることが判明した。次いで温度を維持するためには、反応物を、低下した及び/またはパルス化した出力で更に照射することができる。可能な限り最大のマイクロ波を照射すると共に最大温度を遵守するためには、例えば、冷却ジャケットを用いて、及び/または反応空間中に存在する冷却管を用いて、及び/または異なる照射域間での断続的な冷却によって、及び/または外部熱交換器による蒸発冷却によって反応物を冷却することが有効であることが判明した。好ましい態様の一つでは、反応生成物は、マイクロ波照射の終了後に直接、できるだけ早く120℃未満の温度、好ましくは100℃未満の温度、特に50℃未満の温度にまで冷却する。
【0026】
好ましくは、反応は、0.1〜200barの圧力、特に1bar(大気圧)〜50barの圧力下に行われる。密閉された容器中での作業が特に有効であることが判明した。このような容器中で、反応体もしくは生成物、及び場合により存在する溶剤の沸点より高い温度で、及び/または反応中に生成する反応水の上で作業される。通常は、反応原料の加熱によって生ずる圧力が、本発明方法を成功裏に実施するためには十分である。しかし、高められた圧力及び/または圧力プロフィルの適用の下に作業することもできる。本発明方法の更に別の好ましい態様の一つでは、例えば開放容器中に生ずるような大気圧下に作業が行われる。
【0027】
副反応を避けるために及びできる限り純粋な生成物を製造するためには、本発明方法を、不活性の保護ガス、例えば窒素、アルゴンまたはヘリウムの存在下に行うことが有効であることが判明した。
【0028】
好ましい態様の一つでは、反応を促進するためもしくはより完全に行うために、脱水触媒の存在下に作業される。この際、好ましくは、酸性の無機触媒、有機金属触媒もしくは有機触媒または複数種のこれらの触媒の混合物の存在下に作業される。
【0029】
本発明において酸性無機触媒としては、例えばホウ酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、明礬、酸性シリカゲル、酸性水酸化アルミニウム及び塩化亜鉛を挙げることができる。特に、ホウ酸、リン酸、ポリリン酸もしくは塩化亜鉛が有効であることが判明した。
【0030】
更に、一般式Al(ORのアルミニウム化合物、特に一般式Ti(ORのチタネートが、酸性無機触媒として特に好ましく使用される。R5基は、それぞれ同一かもしくは異なることができ、そして互いに独立して、C−C10−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec.−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、sec.−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニルまたはn−デシル、C−C12−シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシルから選択することができ; 好ましいものは、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。好ましくは、Al(ORまたはTi(OR中のR5基は、それぞれ同一であり、そしてイソプロピル、ブチル及び2−エチルヘキシルから選択される。
【0031】
好ましい酸性有機金属触媒は、例えば、ジアルキルスズ酸化物類(RSnOから選択され、式中、R5は上に定義される通りである。酸性有機金属触媒の特に好ましい代表物は、ジ−n−ブチルスズ酸化物であり、これは、所謂オキソ−ツィン(Oxo−zinn)、またはFascat(R)のブランド名で商業的に入手することができる。
【0032】
好ましい酸性有機触媒は、例えばホスフェート基、スルホン酸基、スルフェート基もしくはホスホン酸基を有する、酸性有機化合物である。特に好ましいスルホン酸類は、少なくとも一つのスルホン酸基、及び炭素原子数が1〜40、好ましくは3〜24の飽和状もしくは不飽和状の線状、分枝状及び/または環状の少なくとも一つの炭化水素残基を含む。特に好ましいものは、芳香族スルホン酸類、特に一つもしくはそれ以上のC−C28−アルキル基を有するアルキル芳香族モノスルホン酸類、就中、C−C22−アルキル基を有するアルキル芳香族モノスルホン酸類である。好適な例は、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、2−メシチレンスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、4−ブチルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸; ドデシルベンゼンスルホン酸、ジドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸である。酸性イオン交換体も、酸性有機触媒として使用することができ、例えば、約2モル%のジビニルベンゼンで架橋したスルホン酸基含有ポリ(スチレン)樹脂などがある。
【0033】
本発明方法の実施に特に好ましいものは、ホウ酸、リン酸、ポリリン酸及びポリスチレンスルホン酸である。特に好ましいものは、一般式Ti(ORのチタネート、特にチタンテトラブチレート及びチタンテトライソプロピレートである。
【0034】
酸性の無機、有機金属もしくは有機触媒を使用することが望ましい場合は、本発明においては、使用した反応体の質量を基準にして0.01〜10.0重量%、好ましくは0.05〜5.0重量%、例えば0.1〜2.0重量%の触媒が使用される。特に好ましい態様の一つでは、触媒を使用せずに作業される。
【0035】
更に別の好ましい態様の一つでは、マイクロ波照射は、酸性の固形触媒の存在下に行われる。この際、固形の触媒を、場合により溶剤と混合したアンモニウム塩中に懸濁させるかまたは連続式プロセスの場合には特に、場合により溶剤と混合したアンモニウム塩を固定床触媒上に導き、そしてマイクロ波照射に付す。適当な固形触媒は、例えばゼオライト、シリカゲル及びモンモリロナイト、または(部分的に)架橋されたポリスチレンスルホン酸であり、これらは、場合により、触媒活性金属塩を含浸することができる。固体相触媒として使用することができる架橋されたポリスチレンスルホン酸に基づく適当な酸性イオン交換体は、例えば、Rohm&Haas社からAmberlyst(R)の商号で入手することができる。
【0036】
例えば反応媒体の粘度を低下させるため、不均一系の場合には反応混合物を流動化するため及び/または例えば蒸発冷却による放熱を向上するために、溶剤の存在下に作業することが有効であることが判明した。このためには、使用する反応条件下に不活性でありそして反応体もしくは生じた生成物と反応しないものであれば、原則的に全ての溶剤を使用することができる。適当な溶剤の選択の際の重要のファクターの一つは、それの極性であり、これは、一方では溶解性を、他方ではマイクロ波照射との相互作用の程度を決定する。適当な溶剤の選択の際の特に重要なファクターの一つは、それの誘電損失ε''である。誘電損失ε''は、物質とマイクロ波放射との相互作用の際に熱に変換されるマイクロ波放射線の部分である。後者の値は、本発明方法の実施に対する溶剤の適性のための特に重要な規準であることが判明した。マイクロ波吸収量ができる限り少なく、それ故、反応系の昇温に対する寄与が小さい溶剤中で作業することが特に有効であることが判明した。本発明方法に好ましい溶剤は、室温及び2450MHzで測定して、10未満、好ましくは1未満、例えば0.5未満の誘電損失ε''を有する。様々な溶剤の誘電損失についての概要は、例えば、B. L. Hayes著の“Microwave Synthesis”,CEM Publishing 2002(非特許文献2)に記載されている。本発明方法に好適なものは、特に、10未満のε''値を有する溶剤、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはアセトン、特に1未満のε''値を有する溶剤である。1未満のε''値を有する特に好ましい溶剤の例は、芳香族及び/または脂肪族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、ヘキサン、シクロヘキサン、デカン、ペンタデカン、デカリン、並びに商業的な炭化水素混合物、例えばベンジン留分、ケロシン、ソルベントナフサ、(R)Shellsol AB、(R)Solvesso 150、(R)Solvesso 200、(R)Exxsol、(R)Isopar及び(R)Shellsol−タイプである。好ましくは10未満のε''値、特に1未満のε''値を有する溶剤混合物も、本発明方法の実施に同様に好ましい。原則的には、本発明方法は、10またはそれ以上のε''値を有する溶剤中でも可能であるが、これは、最大温度の遵守に特別な措置を必要とし、そしてしばしば収量の低下を招く。溶剤の存在下で作業する場合は、反応混合物中でのそれの割合は、好ましくは2〜95重量%、特に5〜90重量%、就中10〜75重量%、例えば30〜60重量%である。特に好ましくは、反応は、溶剤無しで行われる。
【0037】
マイクロ波照射は、通常、マイクロ波に対して殆ど透明な材料からなる反応空間を有する装置中で行われ、マイクロ波発生器中で発生したマイクロ波放射線が適当なアンテナシステムを介して前記の反応空間中に導入される。マイクロ波発生器、例えばマグネトロン及びクリストロンは当業者には既知である。
【0038】
約1cm〜1mの波長及び約300MHz〜30GHzの周波数を有する電磁線がマイクロ波と称される。この周波数範囲が、原則的に本発明方法に好適である。好ましくは、産業的、科学技術的及び医学的な用途に許可された915MHz、2.45GHz、5.8GHzまたは27.12GHzの周波数を有するマイクロ波放射線が本発明方法に使用される。単一モードもしくは疑似単一モードまたは多モードのいずれかで作業することができる。この際、装置及び反応空間の形状及び大きさに高い要求を課す単一モードでは、定在波によって、特にそれの最大値において非常に高いエネルギー密度が発生する。それに対し、多モードでは、反応空間全体が殆ど均一に照射され、これは、例えば、より大きな反応体積を可能にする。
【0039】
本発明方法の実施のために反応容器に照射されるマイクロ波出力は、特に、反応空間の形状、それ故反応体積に、並びに必要な照射時間に依存する。このマイクロ波出力は、通常は100W〜数100kW、特に200W〜100kW、例えば500W〜70kWである。これは、反応器の一つまたは複数の箇所に適用される。これは、一つのもしくは複数のマイクロ波発生器で発生させることができる。
【0040】
反応は、バッチ式方法において非連続的にまたは、好ましくは、例えば流管中で、連続的に行うことができる。更に、反応は、半バッチ式方法で、例えば連続的に運転される攪拌反応器またはカスケード反応器中で行うこともできる。好ましい態様の一つでは、反応は、密閉された容器中で行われ、この際、生成した縮合物、場合によって及び反応体、及び存在する場合には溶剤は、圧力の上昇を招く。反応の終了後、その過圧は、放圧して反応水、場合によっては及び溶剤並びに過剰反応体の気化及び分離に及び/または反応生成物の冷却に使用することができる。更に別の態様の一つでは、生成した反応水は、冷却後及び/または放圧後に、慣用の方法、例えば相分離、蒸留及び/または吸収によって分離される。また、本発明方法は、開放容器中で、蒸発冷却及び/または反応水の除去の下に同様に成功裏に行うことができる。
【0041】
好ましい態様の一つでは、本発明方法は、非連続式マイクロ波反応器中で行われる。この際、マイクロ波の放射は、攪拌された容器中で行われる。好ましくは、過剰の熱の除去のために、反応容器中には冷却要素、例えばクーリングフィンガーもしくは冷却コイルが存在するか、または反応媒体の蒸発冷却のために反応容器のフランジに還流冷却器が取り付けられている。ここで、より大きな反応体積の照射のためには、マイクロ波は好ましくは多モードで操業される。本発明方法の非連続的態様は、マイクロ波の出力を変化させることによって、速いかもしくは遅い加熱速度、特により長期間、例えば数時間にわたる温度の維持を可能にする。反応体、場合によっては及び溶剤及び更に別の助剤は、マイクロ波放射を始める前に、反応容器に仕込むことができる。この際、好ましくは、これらは、100℃未満、例えば10〜50℃の温度を有する。好ましい態様の一つでは、反応体またはそれの一部を、マイクロ波の照射中に初めて反応溶液に供給する。更に別の好ましい態様の一つでは、非連続的マイクロ波反応器を、反応体を連続的に供給しながら、またそれと同時に半バッチ式もしくはカスケード反応器の形で反応物を排出して、操業する。
【0042】
特に好ましい態様の一つでは、本発明方法は連続式マイクロ波反応器で行われる。このためには、反応混合物は、圧密であり、反応体に対して不活性であり、マイクロ波に対してほぼ透過性でありそしてマイクロ波オーブン中に据え付けられた反応管に導通される。この反応管は、好ましくは、1ミリメータ〜約50cm、特に2mm〜35cm、例えば5mm〜15cmの直径を有する。ここで反応管とは、直径に対する長さの比率が5超、好ましくは10〜100,000、特に好ましくは20〜10,000、例えば30〜1,000である容器のことである。具体的な態様の一つでは、反応管は、ジャケット付き管の形に構成され、例えば方法の温度伝導及びエネルギー効率を高めるために、それの内室及び外室に、反応混合物を互いに向流で導通することができる。この際、反応混合物が流れる総距離が反応管の長さである。反応管は、それの長さに沿って、少なくとも一つのマイクロ波照射器、しかし好ましくは複数、例えば二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つまたはそれ以上のマイクロ波照射器によって囲まれている。マイクロ波の照射は、好ましくは、管のジャケットを介して行われる。更に別の好ましい態様の一つでは、マイクロ波の照射は、少なくとも一つのアンテナを用いて管の端部を介して行われる。反応管は、通常は、その入口には計量供給ポンプ及びマノメータを、その出口には圧力保持バルブ及び熱交換器が装備される。好ましくは、反応体であるアミン及びアルキルフェニルカルボン酸(双方、互いに独立して、場合により溶剤で希釈される)は、反応管の入口のすこし前になって初めて混合される。更に好ましくは、これらの反応体は、100℃未満、例えば10℃〜50℃の温度を有する液体の形で本発明方法に供給される。このためには、融点が高めの反応体は、例えば溶融した状態でまたは溶剤で希釈して使用することができる。
【0043】
管の断面積、照射域の長さ(これは、反応物がマイクロ波放射線に曝される反応管部分のことである)、流速、マイクロ波照射器の形状、照射されるマイクロ波の出力及びこの際到達する温度の変更によって、反応条件を、最大の反応温度にできるだけ速く到達するように、及び最大温度での滞留時間が副反応及び後反応ができるだけ少なくなるように短時間となるように、調節される。好ましくは、連続式マイクロ波反応器は、単一モードまたは疑似単一モードで操業される。この際、反応管中での滞留時間は、一般的に30分未満、好ましくは0.01秒〜15分、好ましくは0.1秒〜5分、例えば1秒〜3分である。反応物は、反応を完全にするために、場合により合間に冷却して、複数回反応器に通すことができる。反応生成物を、反応管から出たら直ぐに、冷却、例えばジャケット冷却または放圧によって冷却すると特に有効であることが判明した。
【0044】
この際、流れが連続する流管においてマイクロ波場でのアンモニウム塩の滞留時間が非常に短いにも拘わらず、それほど顕著な量の副生成物を形成することなく、かなりのアミド化が起こるということは特に驚くべきことであった。サーマルジャケットによる加熱の下に流管中での対応するこれらのアンモニウム塩の反応では、適当な反応温度に達するためには、着色した化学種の形成を招く極めて高い壁温度が必要であるが、アミドは実質上形成しない。
【0045】
反応を完全にするためには、得られた粗製生成物を乾燥して反応水を除去し、そして再びマイクロ波照射に曝すことが多くの場合に有効であることが判明した。更に別の好ましい態様の一つでは、反応生成物の分離の後に未反応の反応体を本発明方法にリサイクルすることが有効であることが判明した。これは、使用した反応体、特にアルキルフェニルカルボン酸の実質的に定量的な反応を与える。
【0046】
本発明の方法に従い製造された第三アミドは、通常は、次の使用に十分な純度で生ずる。しかし、特別な要求のためには、通常の精製方法、例えば蒸留、再結晶化、濾過もしくはクロマトグラフィ法などで更に精製することができる。
【0047】
本発明の方法は、アルキルフェニルカルボン酸の第三アミドを非常に短時間でかつコスト的に有利に高収率及び高純度で製造することを可能にする。この際、副生成物は、顕著な量では生じない。加えて、本発明方法に従い製造された生成物は、ほぼ無色であり、すなわち5未満、しばしば2未満、例えば0.1〜1.5のヨウ素カラーナンバーを有する。これに対して、オートクレーブ中で熱縮合することによって製造される生成物は、通常、30を超えるヨウ素カラーナンバーを有するか、またはしばしばもはや全く測定することができない。それ故、本発明方法に従い製造された生成物の場合は、通常は、仕上げ処理工程もしくは後処理工程は不要である。特に、アルキルフェニルカルボン酸が、本発明方法の条件下では顕著な脱カルボキシル化を示さないという観察は驚くべきことであった。このような高速で選択的な反応は、従来の方法では達成できず、高温に加熱するだけでは期待することもできなかった。本発明に従い製造されたアルキルフェニルカルボン酸の第三アミドは、特に、駆虫剤として適している。本発明方法に従い製造された第三アミドは、その製造方法の故に、カップリング剤もしくはそれの副生成物の残渣を含まないので、毒性が特に問題となる分野、例えば化粧料調合物及び医薬調合物にも問題なく使用することができる。
【実施例】
【0048】
マイクロ波照射下での反応は、CEM社の“Discover”型単一モードマイクロ波反応器中で、2.45GHzの周波数で行った。反応容器の冷却は圧搾空気を用いて行った。温度の測定は、反応容器中の加圧条件の故に、キュヴェットの底のIRセンサーにより行わなければならなかった。反応混合物中に浸漬したガラス繊維光学設備を用いた比較試験によって、反応媒体中の温度は、ここで重要な温度範囲内において、キュヴェットの底のIRセンサーで測定した温度よりも約50〜80℃高いことが確認された。
【0049】
非連続式に行った反応は、8mlの容積を有する密閉した圧密ガラスキュヴェット中で磁気攪拌しながら行った。連続式に行った反応は、キュヴェットの床の上まで伸びる内部導入管、及びキュヴェットの上端にある生成物取り出し部を有する、ジャケット付き管として構成した圧密の筒状ガラスキュヴェット(約10×1.5cm; 反応体積 約15ml)中で行った。反応中に生じた圧力は、圧力保持バルブによって最大20barに制限しそして受け器中に解放した。アンモニウム塩は、前記導入管を通してキュヴェットにポンプ輸送し、そして照射域中の滞留時間は、ポンプの出力を変えることによって約1分間に調節した。
【0050】
生成物の分析は、ピリジン−d5中で500MHzにおいて1H−NMR分光分析によって、またはGC/MSを用いて行った。この際、芳香族炭化水素の検出限界は約1%であった。水の測定は、カールフィッシャー滴定によって行った。
【0051】
例1: N,N−ジエチル−m−トルアミドの製造
ジエチルアミン1gに、当モル量(1.9g)のm−トリル酸を冷却しながらゆっくりと加え、そして混合した。熱量変化が静まった後、こうして得られたアンモニウム塩を、密閉したキュヴェット中で、最大の冷却力の下に5分間、150Wのマイクロ波照射に付した。IRセンサーで測定した温度が160℃に達し、圧力が約14barに上昇した。次いで、反応混合物を、2分間のうちに30℃まで冷却した。
【0052】
得られた粗製生成物は、主成分として66%のN,N−ジエチル−m−トルアミド、2%のN−エチル−m−トルアミド、6%の水、及び未反応の反応体を含んでいた。反応混合物を分子篩上で乾燥し、150Wのマイクロ波で再び1分間照射し、そして分子篩で乾燥した後、m−トリル酸からN,N−ジエチル−m−トルアミドへの92%の転化が達成された。熱分解生成物としてトルエンは検出されなかった。ヨウ素カラーナンバーは3であった。
【0053】
例2: ホウ酸/p−トルエンスルホン酸による触媒作用下でのN,N−ジエチル−m−トルアミドの製造
ジエチルアミン0.53gに、冷却しながら、当モル量(1.0g)のm−トリル酸をゆっくりと加えそして混合した。熱量変化が静まった後、こうして得られたアンモニウム塩に、ホウ酸15.6mg及びp−トルエンスルホン酸15mgを加え、そして密閉したキュヴェット中で、最大の冷却力下に5分間、75Wのマイクロ波照射に付した。IRセンサーで測定した温度は200℃に達し、そして圧力は20barに上昇した。次いで、反応混合物を2分以内に30℃まで冷却した。
【0054】
得られた粗製生成物は、主成分として75%のN,N−ジエチル−m−トルアミド及び8%のN−エチル−m−トルアミド及び未反応の反応体、並びに6.5%の水を含んでいた。熱分解生成物としてのトルエンは検出されなかった。ヨウ素カラーナンバーは4であった。
【0055】
例3: チタンテトラブチレートによる触媒作用の下でのN,N−ジエチル−m−トルアミドの製造
ジエチルアミン2gに冷却しながらm−トリル酸1gをゆっくりと加えそして混合した。熱量変化が静まった後、こうして得られたアンモニウム塩に30mgのチタンテトラブチレートを加え、そして密閉したキュヴェット中で、最大の冷却力の下に2分間、150Wのマイクロ波照射に付した。IRセンサーで測定した温度は200℃に達し、圧力は20barに上昇した。次いで、反応混合物を2分間以内で30℃まで冷却した。
【0056】
得られた粗製生成物中で、81%のトリル酸がN,N−ジエチル−m−トルアミドに転化され、残りの9%はN−エチル−m−トルアミドに転化された。反応水を除去し、再び照射し、次いで水及び過剰のジエチルアミンを留去した後、90%濃度のN,N−ジエチル−m−トルアミドが得られた。熱分解生成物としてのトルエンは検出されなかった。得られた生成物のヨウ素カラーナンバーは4であった。
【0057】
例4: 過剰のジヘキシルアミンを用いたN,N−ジヘキシル−m−トルアミドの製造
ジヘキシルアミン2.5gに、冷却及び攪拌しながら、m−トリル酸1gをゆっくりと加えた。熱量変化が静まったら、こうして得られたアンモニウム塩の溶液を、密閉したキュヴェット中で、最大の冷却力の下に7分間、100Wのマイクロ波照射に付した。IRセンサーで測定した温度が、16barの圧力において190℃に到達した。次いで、反応混合物を2分間以内に30℃まで冷却した。
【0058】
こうして得られた粗製生成物において、トリル酸の50%がN,N−ジヘキシル−m−トルアミドに転化された。分子篩上で乾燥した後、再び5分間、マイクロ波で照射した。過剰のジヘキシルアミン及び反応水を留去した後、(使用したm−トリル酸を基準にして)77%のN,N−ジヘキシル−m−トルアミドが得られた。熱分解生成物としてのトルエンは検出されなかった。得られた生成物のヨウ素カラーナンバーは3であった。
【0059】
例5: N,N−ジエチル−m−トルアミドの連続的製造
冷却及び攪拌しながら、ジエチルアミン100gにm−トリル酸136gをゆっくりと加えた。熱量変化が静まった後、こうして得られたアンモニウム塩を、底の入口から、マイクロ波キャビティに据え付けたガラスキュヴェットに通して連続的にポンプ輸送した。この際、ポンプの輸送出力は、キュヴェット中での滞留時間、すなわち照射域中での滞留時間が約10秒間となるように調節した。最大の冷却力の下に、300Wのマイクロ波出力で作業し、この際、IRセンサーで測定した温度は150℃に到達した。ガラスキュヴェットを出た後、反応混合物は、短いリービッヒ冷却器で30℃まで冷却した。
【0060】
粗製生成物は、使用したm−トリル酸を基準にして56%の収率でN,N−ジエチル−m−トルアミドを含んでいた。反応水を分離し、上記の工程に再び通し、そして過剰のジエチルアミン及び反応水を留去した後、使用したm−トリル酸を基準にして79%の転化率でN,N−ジエチル−m−トルアミドが得られた。熱分解生成物としてのトルエンは検出されなかった。得られた生成物のヨウ素カラーナンバーは1であった。
【0061】
例6: N,N−ジエチル−m−トルアミドの連続的製造
冷却及び攪拌しながら、ジエチルアミン73g(1モル)にm−トリル酸136g(1モル)をゆっくりと加えた。熱量変化が静まったら、こうして得られたアンモニウム塩を、底の入口から、マイクロ波キャビティに据え付けたガラスキュヴェットに通して連続的にポンプ輸送した。ポンプの輸送出力は、キュヴェット中の滞留時間、すなわち照射域中での滞留時間が約100秒となるように調節した。最大の冷却力の下に、500Wのマイクロ波出力で作業し、この際、IRセンサーで測定した温度は200℃に到達した。ガラスキュヴェットを出た後、反応混合物は短いリービッヒ冷却器で室温まで冷却した。
【0062】
粗製生成物は、使用したm−トリル酸を基準にして75%の収率でN,N−ジエチル−m−トルアミドを含んでいた。熱分解生成物としてのトルエンは検出されなかった。反応水を分離しそして上記の工程に再び通した後、使用したm−トリル酸を基準にして88%の転化率でN,N−ジエチル−m−トルアミドが得られた。得られた生成物のヨウ素カラーナンバーは1であった。
【0063】
例7: N,N−ジエチル−ベンズアミドの製造(比較例1)
ジエチルアミン2gに、冷却しながら安息香酸1gをゆっくりと加え、混合した。熱量変化が静まった後、こうして得られたアンモニウム塩を、密閉したキュヴェット中で、最大の冷却力の下に5分間、200Wのマイクロ波照射に付した。IRセンサーで測定した温度は230℃に達し、圧力は20barに上昇した。次いで、反応混合物を2分間以内に30℃まで冷却した。
【0064】
粗製生成物において、使用した安息香酸の42%がN,N−ジエチル−ベンズアミドに転化され、そして別の15%がN−エチル−ベンズアミドに転化された。更に、粗製生成物中には、使用した安息香酸の熱的脱カルボキシル化に由来する11%のベンゼンが検出された。
【0065】
例8: m−トリル酸及びジエチルアミンの連続的熱反応(比較例2)
冷却及び攪拌しながら、ジエチルアミン73g(1モル)にm−トリル酸136g(1モル)を加えた。熱量変化が静まった後、こうして得られたアンモニウム塩を、底の入口から、300℃の油浴中に入れた圧密ガラスキュヴェットに通して連続的にポンプ輸送した。ポンプの輸送出力は、キュヴェット中での反応体の滞留時間、それゆえ反応域中での滞留時間が約85秒間となるように調節した。温度の測定は、キュヴェットの流出口のところで行った。この際に観察された最大温度は220℃に達した。ガラスキュヴェットを出た後、反応混合物は、短いリービッヒ冷却器で室温まで冷却した。
【0066】
こうして得られた反応混合物は、N,N−ジエチル−m−トルアミドを2モル%未満の量で含んでいた。ヨウ素カラーナンバーは35であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の第二アミンを少なくとも一種のアルキルフェニルカルボン酸と反応させてアンモニウム塩に転化し、その後、このアンモニウム塩をマイクロ波照射の下に更に反応させて第三アミドに転化することによって、アルキルフェニルカルボン酸の第三アミドを製造する方法。
【請求項2】
アルキルフェニルカルボン酸が、少なくとも一つのC1〜C20アルキル基を有する、請求項1の方法。
【請求項3】
アルキルフェニルカルボン酸が、o−トリル酸、m−トリル酸、p−トリル酸、o−エチル安息香酸、m−エチル安息香酸、p−エチル安息香酸、o−プロピル安息香酸、m−プロピル安息香酸、p−プロピル安息香酸、及び3,4−ジメチル安息香酸から選択される、請求項1及び/または2の方法。
【請求項4】
アミンが次式
HNR
[式中、R1及びR2は、互いに独立して、C−C24−アルキル、C−C12−シクロアルキルもしくはC−C30−アラルキルを表すか、または次式のポリオキシアルキレン基を表し、
−(B−O)−R
Bは、線状もしくは分枝状C−C−アルキレン基、特に式−CH−CH−及び/または−CH(CH)−CH−の基を表し、
mは、1〜100の数、好ましくは2〜20の数を表し、そして
3は、水素、炭素原子数1〜20のアルキル基、環原子数5〜12のシクロアルキル基、環原子数6〜12のアリール基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、環原子数5〜12のヘテロアリール基、または炭素原子数6〜12のヘテロアラルキル基を表す]
に相当するものである、請求項1〜3の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項5】
マイクロ波照射が、脱水触媒の存在下に行われる、請求項1〜4の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項6】
溶剤の存在下に行われる、請求項1〜5の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項7】
溶剤が、10未満のε''値を有する、請求項6の方法。
【請求項8】
反応温度が330℃未満である、請求項1〜7の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項9】
反応が0.1〜200barの圧力下に行われる、請求項1〜8の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項10】
反応が、上記アンモニウム塩が流れる反応管中で、マイクロ波で照射することによって連続的に行われる、請求項1〜9の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項11】
反応管が、マイクロ波を透過する非金属材料からなる、請求項10の方法。
【請求項12】
反応管中での反応物の滞留時間が30分未満である、請求項10及び/または11の方法。
【請求項13】
反応管の直径に対する長さの比率が少なくとも5である、請求項10〜12の一つまたはそれ以上の方法。

【公表番号】特表2010−505892(P2010−505892A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531751(P2009−531751)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008679
【国際公開番号】WO2008/043494
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】