説明

アルキル化のためのシステム及び方法

液体酸性触媒及び炭化水素を高せん断反応装置に導入し、炭化水素を含む液滴を連続酸性相中に有するエマルジョンを形成し、エマルジョンを好適なアルキル化条件で作動する容器に導入することによってイソパラフィンの少なくとも一部をオレフィンによってアルキル化することによりアルキレートを形成し、アルキレートを含む生成物ストリームを容器から除去することによって、少なくとも一種のイソパラフィンと少なくとも一種のオレフィンとを含む炭化水素をアルキル化する方法であって、液滴は約5μm未満の平均直径を有する。同様に、前記方法を行うためのシステムが開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府によって資金援助を受けた研究又は開発に関する記述
適用なし
【0002】
本発明は概してアルキル化に関連する。より詳細には、本発明はイソパラフィン及びオレフィンを含有する原料のアルキル化を促進することによって原料のオクタン価を増加させる高せん断システム及び方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
石油の精製分野において、真空軽油(vacuum gas oil)などの重質石油留分又はある場合においては大気残油(atmospheric resid)を接触分解することによって、その大部分を多様な石油留分に変換することは周知である。水素化分解による軽質産物はイソブタンを多く含む。イソブタンは自動車燃料のアルキル化処理のための主要な原料であり、当該処理は優良で環境に良いガソリン混合成分を生じる。
【0004】
従来のアルキル化装置は、流体接触分解装置と組み合わせて製造されることによって、分解装置の軽質の副産物、すなわちイソパラフィン及びオレフィンを利用することができた。接触分解される石油留分が硫黄を含有する場合、接触分解産物は同様に硫黄の不純物を含有するであろう。水素化処理は、硫黄及び窒素を含む不要な成分の除去に用いられる。
【0005】
一般に、FCCガソリンの水素化仕上げはそのオクタン価を低下させる。イソブタン及びプロピレン又はブチレンなどの低分子は、アルキル化又は一般的ではないが二量体化などの処理によって再結合されることによって燃料におけるオクタンの所定要件を満たすことができる。同様に、ガソリンのオクタン価は接触改質によって改善され、前記接触改質は炭化水素から水素を取り除くことによってより高いオクタン価を有する芳香族化合物を生成することができる。
【0006】
アルキル化は、イソオクタンが多いアルキル化産物を生成するために軽質オレフィンをイソブタンと反応させる処理である。アルキル化において、アルキル基が有機分子(通常は芳香族化合物又はオレフィン)に加えられる。したがって、イソパラフィンはオレフィンと反応することによって高分子量のイソパラフィンをもたらすことができる。産業において、当該構想はアルキレートを生成するための酸性触媒存在下におけるC2からC5オレフィンのイソブタンとの反応に依存する。このアルキレートは、その高いオクタン価及びオクタン増強添加物に対する反応性のため、カソリンの製造における重要な混合成分である。再調合ガソリンの生成に最適なこの自動車燃料アルキレートは、その高いオクタン価及び低い蒸気圧のためにガソリン混合に適している。
【0007】
例えば上述した処理によって生成される物であるアルキル化ガソリンは、イソパラフィンを多く含んでおり、ほぼ硫黄及び芳香族化合物を含まない。一般にオクタン増強添加物に対する高い反応性を示すため、アルキル化ガソリンは、ガソリンの蒸気圧及び芳香族含有率を制限するますます厳しくなっている環境規制に適合するために自動車ガソリンに混合する第一候補である。しかしながらこれらのアルキル化ガソリンは、アルキル化触媒の酸性成分を含まなくならない限り、混合材料としての使用に適していない。特に、一般的な処理において用いられるアルキル化触媒複合体のルイス酸成分は、アルキル化産物がガソリンに混合される前に除去されなければならない。
【0008】
標準的なアルキル化処理は連続酸性相を有する。しかし、米国特許第5,345,027号は、連続炭化水素相に分散された粘性の酸性触媒を含むアルキル化処理を開示している。
【0009】
したがって、商業的に重要なイソパラフィンのアルキル化のための改良された方法及びシステムに対する産業上の要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,345,027号明細書
【発明の概要】
【0011】
イソパラフィンのアルキル化を促進するための高せん断システム及び方法が開示されている。ある実施形態においては少なくとも一種のイソパラフィンと少なくとも一種のオレフィンとを含有する炭化水素をアルキル化する方法であり、前記方法は、液体酸性触媒と炭化水素とを高せん断反応装置に導入すること、炭化水素を含有する液滴を連続酸性相中に含むエマルジョンを形成すること、ここで液滴は約5μm未満の平均直径を有し、適切なアルキル化条件下において稼働している容器へとエマルジョンを導入することによってイソパラフィンの少なくとも一部がオレフィンによってアルキル化されてアルキレートを形成すること、及びアルキレートを含有する生成物ストリームを容器から取り除くことを有する。イソパラフィンは4から8個の炭素原子を含んでもよい。オレフィンは2から12個の炭素原子を含んでもよい。ある実施形態において、少なくとも一つのイソパラフィンはイソブタンを含み、少なくとも一つのオレフィンはブテンを含む。適切なアルキル化条件は、約0℃から約90℃の温度と、約345kPaから約3447kPaの範囲の圧力とを有する。触媒は、硫酸、フッ化水素酸、BF3、SbF5、及びAlCl3から選択される酸を含む。エマルジョン中の液滴は400nm未満又は100nm以下の平均直径を有する。エマルジョンの形成は、炭化水素及び酸に対して少なくとも22.9m/s又は少なくとも40m/sの先端速度の高せん断混合を行うことを含む。高せん断混合は先端で少なくとも約1034MPaの局所圧を生じる。エマルジョンの形成は、炭化水素及び酸を含む混合物を約20,000s-1を超えるせん断速度にさらすことを含む。ある実施形態において、エマルジョンの形成は少なくとも1000W/m3のエネルギー消費を含む。アルキル化は、炭化水素及び液体酸性触媒が高せん断混合されない類似の方法の速度よりも少なくとも5倍大きな速度で起こる。
【0012】
同様に開示される対象は、少なくとも一つのイソパラフィンと少なくとも一つのオレフィンとを含む炭化水素のアルキル化のためのシステムであり、前記システムは少なくとも一つの外部高せん断混合装置、ポンプ、及び容器を有し、外部高せん断混合装置はせん断間隙によって分離された少なくとも一つのロータと少なくとも一つの固定子とを有し、せん断間隙は少なくとも一つのロータと少なくとも一つの固定子との間の最小の距離であり、高せん断混合装置は少なくとも一つのロータの先端において22.9m/s(4,500フィート/分)を超える先端速度を生じることが可能であり、ポンプは液体酸性触媒を含む加圧液体ストリームを少なくとも一つの高せん断混合装置へと輸送するよう構成されており、容器は高せん断混合装置からエマルジョンを受容するよう構成されている。せん断間隙は約0.02mmから約5mmの範囲である。高せん断混合装置は1μm未満の平均直径を有する液滴を含むエマルジョンを生成するよう構成されており、エマルジョンは酸性触媒を含む連続液体相に分散された炭化水素の液滴を含む、又はエマルジョンは炭化水素を含む連続液体相中に酸性触媒を含む液滴を含有する。少なくとも一つの高せん断混合装置は少なくとも300L/hの流速で稼動するよう構成されている。少なくとも一つの高せん断混合装置は1000W/m3を超えるエネルギー消費をもたらすよう構成されていても良い。ある実施形態においては、少なくとも一つの高せん断混合装置は少なくとも二つのロータと少なくとも二つの固定子とを有する。
【0013】
前記処理は外部高せん断機械式反応装置を用いることによって、改善された時間、温度及び圧力の条件を提供することができ、結果的に複相の反応物間における化学反応の促進をもたらす。
【0014】
ある実施形態において、システムは酸性触媒を含有する液体ストリームを高せん断混合装置へと輸送するよう構成されたポンプを更に有する。ある実施形態において、システムは高せん断装置からエマルジョンを受容するよう構成された容器を更に有する。システムのいくつかの実施形態は、外部加圧高せん断反応装置を用いることによって、大容量の反応装置を必要とせずに原料のアルキル化を実現できる。
【0015】
上述の方法又はシステムのある実施形態は、他の方法により可能な条件よりもより適した時間、温度及び圧力の条件を提供できる可能性があり、それは液体/液体又は液体/液体/固体相の処理の速度を上昇できる可能性がある。上述の方法又はシステムのある実施形態は、低温及び/又は低圧で稼働すること、並びに消費される触媒の単位あたりの生成物の増加、反応時間の短縮、過剰に使用されるオレフィンの減少、及び/又は、投資及び/又は稼動コストの減少をもたらすことによって、総合的なコストの減少をもたらす可能性がある。これら及びその他の実施形態並びに潜在的な利点は、以下の詳細な説明及び図面において明らかになる。
【0016】
本発明の好適な実施形態のより詳細な説明のために、添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本開示のある実施形態における外部高せん断分散を含むアルキル化システムのフロー図である。
【図2】システムのある実施形態において用いられる複数ステージ式高せん断装置の縦方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で用いられる場合、用語「分散体」は、容易に一緒に混合及び溶解しない少なくとも二つの区別可能な物質(又は「相」)を含む液化混合物を指す。本明細書で用いられる場合、「分散体」は、他の相又は物質である不連続な液滴、気泡、及び/又は粒子をその中に保持する「連続」相(又は「マトリックス」)を含む。したがって、用語「分散体」は、液体連続相中に拡散された気泡を有する泡、第一の液体の液滴が第一の液体と非混和性である第二の液体を含む連続相全体に分散されているエマルジョン、及び固体粒子が全体に分散されている連続液体相を指す。本明細書において用いられる場合、用語「分散体」は、気泡が全体に分散された連続液体相、固体粒子(例えば固形触媒)が全体に分散している連続液体相、第一の液体の連続相であって前記連続相にほぼ不溶性の第二の液体の液滴が全体に分散している連続相、並びに固体粒子、非混和性の液滴、及び気泡の一つ又は組み合わせが全体に分散している液相を指す。したがって、分散体はある場合においては均質な混合物(例えば液体/液体)として、又は組み合わせに選択された物質の性質に応じて不均質な混合物(例えば気体/液体、固体/液体、又は気体/固体/液体)として存在することができる。
【0019】
概要
酸性触媒とのイソパラフィン及びオレフィンの液相反応を介したアルキル化のための本方法及びシステムは、外部高せん断機械式装置を有することによって、反応装置としても機能し得る高せん断混合装置内の制御された環境において化学成分の迅速な接触及び混合を提供できる。高せん断装置は反応における物質移動の制限を低下させ、結果的に全体の反応速度を上昇させる。
【0020】
触媒(例えば硫酸やフッ化水素酸などの強酸性触媒)の存在下における低分子量のアルケン(例えばプロピレン及びブチレン)とのイソパラフィン(例えばイソブタン)のアルキル化は多相反応である。二つの相はせん断を行わないと自然に分離する。エマルジョンを形成するために酸性相が炭化水素相と完全に混合される本開示の方法及びシステムは、反応成分間の接触面を増加させ、結果的に反応を促進する。開示される高せん断システム及び方法は従来のアルキル化処理に導入可能であるため、アルキル化イソパラフィンの生産量を増加させ、触媒の必要条件を低下させ(それによって、下流の触媒除去を最小限にし)、及び/又は原料中における余剰イソパラフィンの量を減少させて使用することを可能にする。
【0021】
液体、気体及び固体を含有する化学反応の速度は、接触時間、温度及び圧力に依存する。異なる相(例えば、固体及び液体;液体及び気体;固体、液体及び気体)の二つ以上の原料を反応させることが望まれる場合、反応速度を制御する律速因子の一つは反応物の接触時間を含む。不均質な触媒反応の場合、触媒がさらなる反応物に触媒作用を及ぼすことを可能にするために触媒の表面から反応産物を除去するという追加の律速因子が存在する。多くの場合、反応物及び/又は触媒の接触時間は化学反応に関与する二つ以上の反応物の接触をもたらす混合によって制御されている。均質な反応(例えば液体−液体相)は、反応装置内で均一な温度分布を少なくとも提供すると共に起こり得る副反応を最小限にすることによって、本明細書で開示されるように高せん断混合から恩恵を受けることができる。したがって、ある実施形態においては、本明細書において開示される高せん断処理は均一系反応を促進する。
【0022】
本明細書に開示される外部高せん断装置又は混合装置を有する反応装置アセンブリは、物質移動の制限を低下させることが可能であり、それによって反応が動力学的限界により接近することを可能にする。反応速度が上昇すると、滞留時間を低下させることができ、結果的に得られる処理量を増加することができる。高せん断システム及び処理の結果、生産量を増加することができる。あるいは、既存の方法によるアルキレートの生産量が満足できるものである場合、適切な高せん断の導入による必要な滞留時間の減少は、より低い温度及び/又は圧力の使用、消費される触媒の単位量あたりのアルキル化生成物の増加、及び/又は従来の方法よりも少ない余剰オレフィンの使用を可能にする。
【0023】
さらに、理論によって制限されることは望まないが、本明細書に開示される外部高せん断装置又は混合装置を有する反応装置アセンブリによってもたらされる高せん断状態は、反応が有効な程度で起こることが従来は期待できなかった広範な稼動条件においてアルキル化を可能にすると考えられる。システム及び方法の説明はイソパラフィンのアルキル化に関してなされるものの、開示されるシステム及び方法は他のアルキル化及びアシル化にも適用可能であることが理解される。
【0024】
アルキル化のためのシステム
高せん断アルキル化システムは図1に基づいて説明され、図1は、強酸性触媒(例えば、硫酸又はフッ化水素酸)の存在下における液相反応による低分子量アルケン(例えばプロペン及びブタン)とのイソパラフィンを含有する原料のアルキル化のための高せん断システム100の実施形態の方法フロー図である。図1は単純化された方法の略図であり、分離装置、加熱装置、及び凝縮装置などの処理装置の多くの構成要素が明確化のために省略されていることに留意しなければならない。代表的なシステムの基本要素は、外部高せん断混合装置(HSD)40、容器10、及びポンプ5を含む。図1に示されるように、高せん断装置40は容器/反応装置10の外に配置されている。これらの構成要素のそれぞれは以下においてより詳細に説明される。ライン21は、液体酸性触媒を含む液体ストリームを導入するためにポンプ5に接続されている。ライン13はポンプ5をHSD40に接続しており、ライン18はHSD40を容器10に接続している。ライン22は、アルキル化されるイソパラフィン及びアルケンを含む供給ストリームを導入するためにライン13に接続可能である。あるいはある実施形態において、ライン22はHSD40の入口に接続される又はライン21に取り込まれてもよい。ライン17は、未反応の炭化水素の蒸気及び他の反応ガスを含む掃気ガスの除去のために、容器10に接続されても良い。本明細書において以下に開示される高せん断アルキル化処理の説明を読むことによって明らかになるように、必要に応じてさらなる構成要素又は処理工程が容器10とHSD40との間又はポンプ5若しくはHSD40の前に導入可能である。
【0025】
例えばライン38は、マルチパス(multi-pass)操作を可能にするために、必要に応じて下流位置(例えば沈殿槽30からのライン39)からのライン13又はライン21に接続可能である。
【0026】
高せん断混合装置
高せん断装置又は高せん断混合装置とも呼ばれる外部高せん断混合装置(HSD)40は、炭化水素原料及び濃縮酸性触媒を含む流入ストリームをライン13を介して受容するように構成されている。あるいは、HSD40は液体触媒及び液体炭化水素を別々の導入ライン(図示しない)を介して受容するよう構成されてもよい。一つの高せん断装置のみが図1には図示されているが、システムのある実施形態は直列又は並列の流れに配置された二つ以上の高せん断混合装置を有することが理解されなければならない。HSD40は、ロータ/固定子の組み合わせを備える一つ以上の生成機(generator)を利用する機械装置であり、それぞれの組み合わせは固定子とロータとの間に間隙を有する。各生成機セットにおけるロータ及び固定子間の間隙は、固定されていても、調節可能であっても良い。HSD40は、高せん断装置を流れる連続酸性相に分散されている炭化水素を含有するサブミクロン(すなわち、直径が1μm未満)及び/又はミクロンサイズの粒子を含むエマルジョンを生成可能であるように構成されている。高せん断装置はエンクロージャ又はハウジングを有するため、反応混合物の圧力及び温度は制御可能である。
【0027】
一般に高せん断混合装置は、流体を混合するそれらの性能に基づいて三つの大まかなクラスに分類される。混合は、流体内の粒子又は異質な種のサイズを低下させる処理である。混合の程度又は完全性に関する一つの測定基準は、混合装置が流体粒子を破砕するために生じる単位体積あたりのエネルギー密度である。クラスは伝達されるエネルギー密度に基づいて区別される。サブミクロンから50μmの範囲のサイズである液滴を含む混合物又はエマルジョンを連続的に生産するために十分なエネルギー密度を有する工業用混合装置の三つのクラスは、均質化バルブシステム、コロイドミル、及び高速混合装置を含む。均質化バルブシステムと呼ばれる第一のクラスの高エネルギー装置において、処理される流体は狭い隙間のバルブを通って低圧環境へと非常に高い圧力によってポンプで押し出される。バルブを介する圧力勾配と結果的に生じる乱流及びキャビテーションとは流体中のあらゆる粒子を破砕するよう作用する。これらのバルブシステムはミルクの均質化において最も一般的に使用され、サブミクロンから約1μmの範囲の平均液滴(球)サイズを得ることができる。
【0028】
エネルギー密度スペクトルの反対端は低エネルギー装置と呼ばれる三番目のクラスの装置である。これらのシステムは、処理される流体の貯蔵槽において高速で回転するパドル又は流体ロータを有し、より一般的な用途の多くは食品である。これらの低エネルギーシステムは、20μmを超える平均粒子サイズが処理流体中において許容される場合に通常は用いられる。
【0029】
流体に伝達される混合エネルギー密度に関して低エネルギー装置と均質化バルブシステムとの間に位置するものは、中間エネルギー装置として分類されるコロイドミル及び他の高速ロータ−固定子装置である。一般的なコロイドミル構造は、綿密に制御されたロータ−固定子の間隙によって相補的な液冷固定子から離間されている円錐型又は円盤型のロータを有し、前記間隙は通常0.0254mmから10.16mm(0.001−0.40インチ)である。通常、ロータは直接駆動又はベルト機構を介して電動モータによって駆動される。ロータが高速で回転すると、ロータはロータの外面と固定子の内面との間に流体をポンプ輸送し、間隙で生じるせん断力が流体を処理する。適切な調節がなされた多くのコロイドミルは処理流体中で0.1−25μmの平均粒子サイズを実現する。このような性能は、化粧品、マヨネーズ、又はシリコン/銀アマルガム形成から屋根用タールの混合に必要な処理などのコロイド及び油/水ベースのエマルジョン処理を含む様々な使用にコロイドミルを適合させる。
【0030】
先端速度は、単位時間当たりにロータの先端が移動する周方向の距離である。そのため、先端速度はロータの直径と回転数との関数である。先端速度(例えば、分あたりのメートル)は、ロータの先端によって辿られる周方向の距離、2πR、ここでRはロータの半径(例えば、メートル)である、を回転数(例えば、一分あたりの回転数、rpm)倍することによって算出可能である。例えば、コロイドミルは22.9m/s(4500フィート/分)を超える先端速度を有し、40m/s(7900フィート/分)を超えても良い。本開示のため、用語「高せん断」は、5.1m/s(1000フィート/分)を超える先端速度を可能にするとともに、機械駆動式の外部電源装置が反応対象となる生成物ストリームへとエネルギーを伝えることを必要とする機械式ロータ固定子装置(例えば、コロイドミル又はロータ−固定子分散装置)を指す。例えばHSD40において、22.9m/s(4500フィート/分)を超える先端速度が利用可能であり、40m/s(7900フィート/分)を超えても良い。ある実施形態において、HSD40は少なくとも22.9m/s(4500フィート/分)の先端速度で少なくとも300L/hを供給可能である。電力消費は約1.5kWである。
【0031】
HSD40は、高い先端速度を非常に小さなせん断間隙と組み合わせることによって、処理される材料に対する大きなせん断を生じることができる。せん断の量は流体の粘度に依存する。したがって、圧力及び温度が上昇している局所領域が高せん断装置の稼動中にロータの先端に生じる。ある場合には、局所的に上昇した圧力は約1034.2MPa(150,000psi)である。ある場合には、局所的に上昇した温度は約500℃である。ある場合には、これらの局所的な圧力及び温度の上昇はナノ又はピコ秒の間持続するであろう。
【0032】
流体に加えられるエネルギーの概算値(kW/L/分)は、モータのエネルギー(kW)及び流体の処理量(L/分)を測定することによって算出可能である。上述したように、先端速度は反応物に加えられる機械力を生じる一つ以上の回転要素の先端に関する速度(フィート/分又はm/s)である。ある実施形態において、HSD40のエネルギー消費は1000W/m3より大きい。ある実施形態において、HSD40のエネルギー消費は約3000W/m3から約7500W/m3の範囲である。
【0033】
せん断速度は先端速度をせん断間隙幅(ロータと固定子との間の最小の隙間)によって割ったものである。HSD40内で生じるせん断速度は20,000s-1を超えても良い。ある実施形態におけるせん断速度は少なくとも40,000s-1である。ある実施形態におけるせん断速度は少なくとも100,000s-1である。ある実施形態におけるせん断速度は少なくとも500,000s-1である。ある実施形態におけるせん断速度は少なくとも1,000,000s-1である。ある実施形態におけるせん断速度は少なくとも1,600,000s-1である。ある実施形態において、HSD40によって生じるせん断速度は20,000s-1から100,000s-1の範囲である。例えばある実施例において、ロータの先端速度は約40m/s(7900フィート/分)であり、せん断間隙幅は0.0254mm(0.001インチ)であり、1,600,000s-1のせん断速度を生じる。別の実施例において、せん断速度は約22.9m/s(4500フィート/分)であり、せん断間隙幅は0.0254mm(0.001インチ)であり、約901,600s-1のせん断速度を生じる。
【0034】
HSD40は、小さなオレフィン及びイソパラフィンの少なくとも一部が高オクタン価を有する大きなイソパラフィンに変換されるような条件下において、炭化水素が通常は非混和性である酸を含んだ主要液相に炭化水素を高度に乳化することができる。本明細書において詳細には説明されてないものの、ある実施形態においては粘性の酸性相が利用可能であり、そのような場合にHSD40は、炭化水素の連続相に分散した粘性の酸性触媒を含むエマルジョンを形成するために使用可能である。したがって、ある実施形態において連続相は酸性触媒を含む。別の実施形態において、連続相は炭化水素を含む。
【0035】
ある実施形態において、エマルジョンは固形粒子触媒をさらに含む。ある実施形態において、HSD40はコロイドミルを備える。例えば好適なコロイドミルは、ノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(登録商標) ワークス,インコーポレーテッド(IKA(R) Works,Inc.)及びマサチューセッツ州ウィルミントンのAPV ノース アメリカ,インコーポレーテッド(APV North America,Inc.)によって製造されている。ある実施例において、HSD40はIKA(登録商標) ワークス,インコーポレーテッドのディスパックス リアクタ(登録商標)(Dispax Reactor(R))を有する。
【0036】
高せん断装置は、反応物に加えられる機械力を生じる少なくとも一つの回転要素を有する。高せん断装置は、隙間によって分離された少なくとも一つの固定子と少なくとも一つのロータとを有する。例えば、ロータは円錐型又は円盤型であり、相補的な形状の固定子から離間されている。ある実施形態において、ロータ及び固定子の両者は周方向に離間した複数の歯を備える。ある実施形態における固定子は、それぞれの生成機(ロータ/固定子のセット)のロータ及び固定子の間に所望のせん断間隙を得るために調節可能である。ロータ及び/又は固定子の歯の間の溝は、乱流を増加させるために交互のステージにおいて向きを互い違いにすることができる。それぞれの生成機は必要な回転をもたらすよう構成された適切な駆動システムによって駆動することができる。
【0037】
ある実施形態において、固定子とロータとの間の最小の隙間(せん断間隙幅)は約0.0254mm(0.001インチ)から約3.175mm(0.125インチ)の範囲である。ある実施形態において、固定子とロータとの間の最小の隙間(せん断間隙幅)は約1.52mm(0.060インチ)である。ある形態において、ロータと固定子との間の最小の隙間(せん断間隙)は少なくとも1.78mm(0.07インチ)である。高せん断装置によって生じるせん断速度は流路に沿った長手方向の位置によって変化しても良い。ある実施形態において、ロータはロータの直径及び所望の先端速度に応じた速度で回転するよう設定されている。ある実施形態において、高せん断装置は固定子及びロータの間に固定された隙間(せん断間隙幅)を有する。あるいは、高せん断装置は調節可能な隙間(せん断間隙幅)を有する。
【0038】
ある実施形態において、HSD40は単一ステージの分散チャンバ(すなわち、単一のロータ/固定子の組み合わせ、単一の生成機)を有する。ある実施形態において、高せん断装置40は複数ステージが直列に並んだ分散装置であり、複数の生成機を有する。ある実施形態においては、HSD40は少なくとも二つの生成機を有する。別の実施形態においては、高せん断装置40は少なくとも三つの生成機を有する。ある実施形態においては、高せん断装置40は複数ステージ式の混合装置であり、(上述したように先端速度に比例し、ロータ/固定子の間隙幅に反比例して変化する)せん断速度は本明細書の以下においてさらに説明されるように流路に沿った長手方向の位置によって変化する。
【0039】
ある実施形態において、外部高せん断装置の各ステージは交換可能な混合機具を有することによって、柔軟性をもたらす。例えば、ノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(登録商標) ワークス,インコーポレーテッド及びマサチューセッツ州ウィルミントンのAPV ノース アメリカ,インコーポレーテッドのDR2000/4ディスパックス リアクタ(登録商標)は、三ステージ型の分散モジュールを有する。このモジュールは、各ステージにおいて細かい、中間、粗い、及び非常に細かいの選択がなされる最大で三つのロータ/固定子の組み合わせ(生成機)を有することができる。これは、(例えば炭化水素の液滴である)所望の液滴サイズが狭い分布をなすエマルジョンを生成することができる。ある実施形態において、それぞれのステージは非常に細かい生成機を用いて稼働される。ある実施形態において、少なくとも一つの生成機のセットが約5.08mm(0.20インチ)より大きなロータ/固定子の最小の隙間(せん断間隙幅)を有する。代替形態において、少なくとも一つの生成機セットは約1.78mm(0.07インチ)より大きな最小のロータ/固定子の隙間を有する。
【0040】
図2を参照すると、好適な高せん断装置200の長手方向の断面が示されている。図2の高せん断装置200は三つのステージ又はロータ−固定子の組み合わせを有する分散装置である。高せん断装置200は、三つのステージ又はロータ−固定子の組み合わせ220、230及び240を有する分散装置である。ロータ−固定子の組み合わせは、限定することなく生成機220、230、240又はステージとして認識される。三つのロータ/固定子のセット又は生成機220、230、及び240は駆動シャフト250に沿って一列に並んでいる。
【0041】
第一の生成機220はロータ222及び固定子227を有する。第二の生成機230はロータ223及び固定子228を有する。第三の生成機240はロータ224及び固定子229を有する。それぞれの生成機において、ロータはインプット250によって回転駆動され、矢印265によって示されるように軸260を中心として回転する。回転方向は矢印265によって示される向きと反対(例えば、回転軸260を中心とした時計回り方向又は反時計回り方向)であっても良い。固定子227、228及び229は高せん断装置200の壁255に固定するよう連結される。
【0042】
本明細書において上述したように、それぞれの生成機はロータ及び固定子の間における最小の距離であるせん断間隙幅を有する。図2の実施形態において、第一の生成機220は第一のせん断間隙225を有し、第二の生成機230は第二のせん断間隙235を有し、第三の生成機240は第三のせん断間隙245を有する。ある実施形態において、せん断間隙225、235、245は約0.025mmから約10.0mmの範囲の幅を有する。あるいは、方法は高せん断装置200の利用を含み、間隙225、235、245は約0.5mmから約2.5mmの範囲の幅を有する。ある実施例において、せん断間隙幅は約1.5mmに維持されている。あるいは、せん断間隙225、235、245の幅は生成機220、230、240によって異なる。ある実施例において、第一の生成機220のせん断間隙225の幅は第二の生成機230のせん断間隙235の幅より大きく、せん断間隙幅235は同様に第三の生成機240のせん断間隙幅245より大きい。上述したように、各ステージの生成機は交換可能であるため、柔軟性をもたらすことができる。高せん断装置200は、せん断速度が流れ260の向きに沿って長手方向において段階的に増加するように構成されても良い。
【0043】
生成機220、230及び240は粗い、中間、細かい、及び非常に細かい性質を有する。ロータ222、223、及び224並びに固定子227、228及び229は歯付き設計であってもよい。それぞれの生成機はロータ−固定子の歯の二つ以上のセットを有する。ある実施形態において、ロータ222、223、及び224はそれぞれのロータの外周付近において周方向に離間した10個より多くのロータの歯を有する。ある実施形態において、固定子227、228、及び229は、それぞれの固定子の外周付近において周方向に離間した10個より多くの固定子の歯を有する。ある実施形態において、ロータの内径は約12cmである。ある実施形態において、固定子の直径は約6cmである。ある実施形態において、固定子の外径は約15cmである。ある実施形態において、固定子の直径は約6.4cmである。ある実施形態において、直径がロータは60mmであり、固定子は64mmであるため、約4mmの隙間をもたらすことができる。ある実施形態において、三つのステージのそれぞれは約0.025mmから約4mmのせん断間隙を有する非常に細かい生成機を用いて稼働される。固体粒子が高せん断装置40を通って送られる使用態様において、適切なせん断間隙幅(ロータ及び固定子の間の最小の隙間)は適切な粒子サイズの減少及び粒子の表面積の増加のために選択される。ある実施形態において、このことは粒子をせん断及び分散することによって触媒の表面積を増加させるために有益である。
【0044】
高せん断装置200は、入口205においてライン13から反応物ストリームを受容するよう構成されている。反応混合物は分散相としての酸性触媒と、連続相としての炭化水素液を含む。供給ストリームは、粒子状の固形触媒成分を更に含んでいてもよい。入口205に入る供給ストリームが生成機220、230、そして240を順番に通ってポンプ輸送されることによって、生成物エマルジョンが形成される。生成物エマルジョンは出口210(及び図1のライン18)を介して高せん断装置200から出る。各生成機のロータ222、223、224が固定された固定子227、228、229に対して高速で回転することによって、高いせん断速度をもたらすことができる。ロータの回転は、入口205に入る供給ストリームなどの流体をせん断間隙(及び存在する場合は、ロータの歯の間の空間及び固定子の歯の間の空間)を通して外に押し出すことによって、局所的な高せん断状態を作り出すことができる。流体が通過するせん断間隙225、235及び245(及び存在する場合は、ロータの歯及び固定子の歯の間の隙間)において流体に加わる高せん断力は、流体を処理して生成物エマルジョンを形成する。生成物エマルジョンは高せん断出口210(及び図1のライン18)を介して高せん断装置200から外に出る。
【0045】
連続液体相に液滴を含有する生成物エマルジョンは、本明細書中において分散体又はエマルジョンと呼ばれる。生成物エマルジョンは約5μm未満の平均液滴サイズを有する。ある実施形態において、HSD40は約1.5μm未満の平均液滴サイズを有するエマルジョンを生成する。ある実施形態において、HSD40は1μm未満の平均液滴サイズを有するエマルジョンを生成し、液滴は直径がサブミクロンサイズであることが好ましい。ある実施例において、平均液滴サイズは約0.1μmから約1.0μmである。ある実施形態において、HSD40は400nm未満の平均液滴サイズを有するエマルジョンを生成する。ある実施形態において、HSD40は100nm未満の平均液滴サイズを有するエマルジョンを生成する。高せん断装置200は、大気圧で少なくとも約10分間又は少なくとも約15分間にわたって分散状態を維持できる分散された液滴を含有するエマルジョンを生成する。
【0046】
ある実施例において、高せん断装置200はノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(登録商標) ワークス,インコーポレーテッド及びマサチューセッツ州ウィルミントンのAPV ノースアメリカ,インコーポレーテッドのディスパックス リアクタ(登録商標)を有する。様々な入口/出口の接続、馬力、先端速度、出力rpm、及び流速を有するいくつかのモデルが利用可能である。高せん断装置の選択は、生成量の必要条件と高せん断装置200の出口210から出る(図1の)ライン18におけるエマルジョン中の所望の液滴又は球のサイズとによって決まる。例えば、IKA(登録商標)モデルDR2000/4はベルトドライブ、4M生成機、PTFE密閉リング、入口フランジ用の25.4mm(1インチ)の清浄クランプ、出口フランジ用の19mm(3/4インチ)の清浄クランプ、2馬力、7900rpmの出力速度、(生成機によって決まる)約300−700L/hの(水の場合の)流動能力、9.4−41m/s(1850フィート/分から8070フィート/分)の先端速度を有する。
【0047】
容器
ライン18のエマルジョンは、アルキル化が継続的に行われる反応装置10へと入る。容器又は反応装置10は、多段階のアルキル化反応が広がることができる任意の種類の容器である。容器10は任意の好適な容器、例えば、一般に硫酸のアルキル化に用いられる反応装置のような連続攪拌タンク反応装置、又は一般にフッ化水素酸のアルキル化に用いられる反応装置のような管状垂直型反応装置である。例えば容器10は連続又は半連続式攪拌タンク反応装置であり、又は一つ以上のバッチ式反応装置が直列又は並列に使用可能である。容器10は、ある利用態様においてはタワー型反応装置であり、他の利用態様においては管状反応装置、又は複管状反応装置である。一又は複数のライン15は、酸性触媒を導入するため、又は水若しくは他の材料(例えば固形触媒)を投入するために容器10に連結可能である。
【0048】
アルキル化反応は、適切な時間、温度、及び圧力の条件が存在すればいつでも起こり得る。このため、温度及び圧力の条件が適切であれば図1のフロー図のあらゆる場所においてアルキル化は起こり得る。
【0049】
容器10は、一又は複数の以下の構成要素:反応容器設計の分野で周知である攪拌システム、温度制御機能、圧力測定装置、温度測定装置、一つ以上の注入箇所、及び水位制御装置(図示しない)を備えることができる。例えば、攪拌装置は図1に示されるようにモータ駆動式混合装置3を備えても良い。例えば、温度制御装置は熱交換器を備える。あるいは、ある実施形態においてはHSD40内で大部分のアルキル化が起こるため、容器10はいくつかの場合においては貯蔵容器として主に機能する。一般にあまり望まれないものの、特に複数の高せん断装置/反応装置が直列に使用される場合、以下においてより詳細に説明されるようにある利用態様において容器10は省略可能である。
【0050】
ライン16は、アルキレートを含む反応産物を回収又は除去するために容器10に接続されている。ある実施形態においては、所望される場合、HSD40に再循環可能な酸性触媒から炭化水素を分離するために分離タンク30がライン16によって容器10へと連結される。ライン17は、掃気ガスの除去のために容器10へと接続可能である。ある実施形態においては、容器10は複数の反応装置生成物ライン16を備える。
【0051】
伝熱装置
上述の容器10の加熱/冷却機能に加えて、図1に図示される実施形態の変形形態において処理ストリームを加熱又は冷却するための他の外部又は内部伝熱装置が同様に想定される。例えば、反応が発熱性である場合、反応熱は当業者に周知の方法によって容器10から除去可能である。外部加熱及び/又は冷却伝熱装置の使用も同様に想定される。一又は複数のそのような伝熱装置にとって好適な位置は、ポンプ5とHSD40との間、HSD40と容器10との間、及びシステム100がマルチパスモードで稼働する場合は容器10とポンプ5との間である。そのような伝熱装置の非限定的な実施例は、当業者に周知であるシェル、管、板、及びコイル状の熱交換器である。
【0052】
ポンプ
ポンプ5は、連続又は半連続稼働用に構成されており、HSD40及びシステム100を通る制御されたフローを可能にするために、202.65kPa(2気圧)より大きな圧力、好ましくは303.975kPa(3気圧)より大きな圧力を供給可能な任意の好適なポンプ装置である。例えば、(ジョージア州コマース(Commerce Georgia)の)ローパー ポンプ カンパニー(Roper Pump Company)のローパー1型ギアポンプ(Roper Type 1 gear pump)又は(イリノイ州ナイルズ(Niles,IL)の)デイトン エレクトリック カンパニー(Dayton Electric Co)のデイトン プレッシャー ブースター ポンプ(Dayton Pressure Booster Pump Model)モデル 2P372Eは一つの好適なポンプである。好ましくは、ポンプの全ての接触部品がステンレス鋼を含んでおり、又は濃酸などの腐食性物質がポンプ輸送される場合には、接触面は金メッキが施されてもよい。システムのある実施形態において、ポンプ5は約2026.5kPa(20気圧)を超える加圧能力を有する。ポンプ5に加えて、一つ以上の追加高圧ポンプ(図示しない)が図1に図示されるシステムに導入可能である。例えば、ポンプ5に似たブースターポンプは、容器10への圧力を増圧するために、HSD40と容器10との間に設置可能である。別の実施例として、ポンプ5に似た追加供給ポンプが、強酸、水若しくは追加の反応材料、又は固形触媒を容器10へと導入するために設置可能である。図1に示されていないものの、排出ラインはポンプ5及びライン13を介してHSD40へと酸性触媒を導入するために容器10をライン21へと連結することができる。
【0053】
アルキル化処理
高せん断アルキル化システム100の運用が図1を参照して説明される。イソパラフィンを含む炭化水素ストリームのアルキル化の作業において、分散性炭化水素供給ストリームはライン22を介してシステム100へと導入されるとともに、酸性触媒を含むライン21の液体ストリームとライン13において混合される。
【0054】
ライン22に導入された炭化水素供給ストリームは少なくともアルキル化されるオレフィン及びパラフィンを含む。ある実施形態において、このアルキル化処理に用いられるイソパラフィン反応物は約4から8個の炭素原子を含む。そのようなイソパラフィンの代表的な例には、イソブタン、イソペンタン、3−メチルヘキサン、2−メチルヘキサン、2,3−ジメチルブタン、及び2,4−ジメチルヘキサンが含まれる。ある実施形態において、イソパラフィンはイソブテンである。原料のオレフィン成分は2から12個の炭素原子を有する少なくとも一つのオレフィンを含む。そのようなオレフィンの代表的な実施例には、例えば2−ブテン、イソブチレン、1−ブテン、プロピレン、エチレン、ヘキセン、オクテン、及びヘプテンが含まれる。最も好ましいオレフィンは、例えばプロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、又はこれらのオレフィンの二つ以上の混合物であるC3及びC4のオレフィンである。ある実施形態において、ライン22の炭化水素供給ストリームはプロピレン、ブチレン、ペンチレン及びそれらの混合物から選択されるオレフィンを含む。ある実施形態において、ライン22の炭化水素供給ストリームは流動接触分解ユニットに由来する。
【0055】
オレフィンに対するイソパラフィンの比率は、生成物のオクタン価を低下させる可能性がある副反応を阻止/最小化するために、従来はイソパラフィンのアルキル化の間において高く維持される。ある実施形態において、炭化水素供給におけるオレフィンに対するイソパラフィンの全体のモル比は、1:1から100:1、好ましくは約5:1から約20:1の間の範囲である。開示される高せん断システム及び方法の使用は、オレフィンに対するイソパラフィンの従来よりも低い比率におけるアルキル化を可能にする。
【0056】
ある実施形態において、触媒は液体触媒である。ある実施形態において、触媒は固形触媒である。ある実施形態において、触媒は液体相及び固体相の触媒の混合物である。ある実施形態において、ライン21の分散性反応物は液体の酸性触媒を含む。
【0057】
ある実施形態において、ライン21の分散性触媒はブレンステッド酸を含む。ある実施形態において、触媒ライン21はフッ化水素酸及び硫酸から選択されたブレンステッド酸を含む。フッ化水素酸触媒及び硫酸触媒の両者は継続的なアルキル化において徐々に消耗するため、酸強度、反応速度、及び得られるアルキレートの質を維持するために新たな酸がライン21へと継続的に導入される。アルキレートの質は酸強度によって影響を受け、新たな酸の構成及び/又は再生率は、必要なアルキレートの質の基準を満たすように、温度及び空間速度などの他の処理変数とともに制御される。一般に、より濃縮された酸性触媒はイソパラフィンの収率を最大にし、不要なオレフィンのオリゴマー化副反応を抑制する。ある実施形態において、触媒ライン21はルイス酸を含む。ルイス酸にはBF3、又はBF3:H3PO4付加物が含まれる。
【0058】
これらの液体酸性触媒アルキル化処理における酸強度は、ライン21における新たな酸の継続的な添加及び使用済みの酸の継続的な回収によって88から94重量パーセントに維持されることが好ましい。ある実施形態において、使用済みの酸は使用済み酸ライン38を介して高せん断システム100から除去され、その一部は例えば酸再循環ライン39を介した酸ライン21への導入によって高せん断装置40へと再循環可能である。ライン21を介してHSD40に再循環される酸は、HSD40へと再導入される前に更なる処理を経ても良い。ある実施形態においては、新たな触媒は高せん断装置40の上流において高せん断システム100に入れられる。ある実施形態においては、新たな酸性触媒は導入ライン15を介して高せん断アルキル化システム100に導入される。ある実施形態においては、使用済みの酸は使用済み酸ライン37を介して高せん断システム100から除去される。
【0059】
ある実施形態においては、高せん断システム100は当該技術分野において開示されている好適な固形触媒を含む。ある実施形態においては、高せん断処理100によって行われるアルキル化反応は固形触媒を含む不均一触媒反応である。固形触媒が利用される実施形態においては、反応装置10は例えば固定層又はスラリー層を有する。ある実施形態においては、反応装置10は固形触媒を含む。例えばある実施形態において、触媒は少なくとも一つのルイス酸、好ましくはBF3によって処理される一つ以上の遷移アルミナを含む。また、処理は一定量の遊離ルイス酸を使用することによって高オクタン価のアルキレートを生成することができる。ある実施形態において、固形触媒は大径孔のゼオライトであるZSM−4、ZSM−20、ZSM−3、ZSM−18、ゼオライトβ、フォージャサイト、モルデナイト、ゼオライトY、及びゼオライトYの希土類金属含有形態、並びにBF3、SbF5、又はAlCl3などのルイス酸を含む。ある実施形態において、触媒はルイス酸と、層状ケイ酸塩及びケイ酸塩の層を分離する酸化物の柱(pillar)を有する固形成分とを含む。好適な固形触媒には、酸性のゼオライト、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ、酸化ホウ素、酸化リン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、クロミア、酸化亜鉛、マグネシア、酸化カルシウム、シリカ−アルミナ−ジルコニア、クロミア−アルミナ、アルミナ−ボリア、シリカ−ジルコニア、リン酸アルミニウムの分子ふるい、シリコアルミノリン酸塩の分子ふるい、固形ポリマーイオン交換樹脂、ペンダント酸基を有する四価金属ホスホン酸塩、硫酸化された(アルミナなどの)金属酸化物などが含まれる。これらの触媒はルイス酸で処理される、又はルイス酸と複合体を形成しても良い。これらは、炭化水素転換触媒としてのそれらの機能において全て酸性である。
【0060】
ある実施形態において固形触媒がアルキル化反応を促進するために使用される場合、固形触媒は水性又は非水性のスラリー又はストリームとしてライン15を介して容器10へと導入される。あるいは又は更に、触媒はシステム1の他の場所においても添加可能である。例えば、触媒スラリーはライン21へと投入可能である。ある実施形態において、触媒は連続的にライン15を介して容器10へと添加される。理論によって限定されることを望まないが、液体中に分散しているサブミクロンサイズの粒子又は気泡は主にブラウン運動効果によって移動すると考えられている。HSD40によって生成された生成物エマルジョン中の液滴は固形触媒粒子の境界層を通過するより大きな移動性を有し、その結果、反応物の移動の向上によって触媒反応を促進及び加速することができる。
【0061】
濃酸液のストリームは、ライン21に導入され、ライン13を介してHSD40へとポンプによって押し出される。ライン13において、酸性混合物はライン22を介してライン13へと導入される液体炭化水素と混合される。あるいは、炭化水素はHSD40へと直接供給されるか、ライン13の酸と混合されるのではなくポンプ5の上流で酸と混合される。ポンプ5は、ライン21を介して酸を送り出すとともに圧力を上昇させてHSD40に供給するために稼働され、高せん断混合装置(HSD)40及びシステム100全体にわたって制御された流れを提供できる。ある実施形態において、ポンプ5はHSD流入ストリームの圧力を345kPa(50psig)を超えるまで上昇させる。ある実施形態において、ポンプ5は前記ストリームの圧力を3447kPa(500psig)を超えるまで上昇させる。ある実施形態において、ポンプ5は前記ストリームの圧力を202.65kPa(29psig)又は約303.975kPa(44psig)を超えるまで上昇させる。このように、高せん断システム100は高せん断を圧力と組み合わせることによって、反応混合物における反応物の念入りな混合を促進することができる。
【0062】
このように、外部高せん断装置40はライン21を介して導入される連続相内にライン22由来の分散性反応物のエマルジョンを生成する。
【0063】
他のシステムとは対照的に、本開示の高せん断システム100は、酸性触媒中の炭化水素(又は炭化水素中の酸性触媒)のエマルジョン(及び/又はサブミクロンサイズの球)を形成するために、密閉された外部高せん断混合装置40を有する。本明細書において詳細に上述されたように、外部高せん断装置40は、例えば固定子とロータとの間に固定された隙間を有する固定子ロータ混合ヘッドを利用する機械装置である。分散性触媒及び液体炭化水素は別々に又は混合されたストリームとしてHSD40へと導入される。混合は、液滴がミクロン又はサブミクロンサイズである分散性触媒のエマルジョンをもたらす。したがって、高せん断混合装置の排出ライン18は上述したようにミクロン及び/又はサブミクロンサイズの球のエマルジョンを有する。
【0064】
ある実施形態において、炭化水素原料がライン13へと連続的に供給されることによって、HSD40への供給ストリームが形成される。また、水は酸とともに導入されるか、又は別々に導入される。原材料の実際の割合は所望の選択性並びに作動温度及び圧力によって変わる。
【0065】
ポンプで押し出した後に、炭化水素及び酸性反応物は、濃酸混合物中に炭化水素の細かな分散体又はエマルジョンを生成する機能を有するHSD40内で混合される。HSD40において、炭化水素及び濃酸触媒はエマルジョンが形成されるように激しく分散される。エマルジョンはナノエマルジョンであってもよい。また、エマルジョン又はナノエマルジョンは場合によっては本明細書において「分散体」と呼ばれる。本開示において、ナノエマルジョンは非混和性液体相のエマルジョンであり、分散相中の液滴(球)のサイズは1000nm未満(すなわち、<1μm)である。例えば、直列に配置された固定子と組み合わされる三つのロータを備えるよう構成された3ステージ型の高せん断分散装置である分散装置IKA(登録商標)モデルDR2000/4が、濃酸触媒を含む液状媒体中に炭化水素のエマルジョンを形成するために用いられる。ロータ/固定子のセットは、例えば図2に図示されるように構成可能である。混合された反応物はライン13を介して高せん断混合装置に入り、周方向に離間した第1ステージのせん断開口部を有する第1ステージのロータ/固定子の組み合わせ体に入る。第1ステージから出た粗いエマルジョンは第2ステージのせん断開口部を有する第2のロータ/固定子ステージに入る。第2ステージから出た液滴サイズの低下したエマルジョンは第3ステージのせん断開口部を有する第3ステージのロータ/固定子の組み合わせ体に入る。エマルジョンはライン18を介して高せん断混合装置から出る。ある実施形態において、せん断速度は流れの向きに沿った長手方向において段階的に上昇する。例えばある実施形態においては、第1のロータ/固定子ステージにおけるせん断速度は後のステージのせん断速度より大きい。別の実施形態において、同一のステージを備え、せん断速度は流れの方向に沿ってほぼ一定である。高せん断混合装置がPTFEシールを有する場合、例えば前記シールを当該分野で周知の適切な技術を用いて冷却することができる。例えば、ライン13を流れる反応物ストリームはシールを冷却するために使用され、その際に必要に応じて高せん断混合装置に入る前に予熱される。
【0066】
HSD40のロータは、ロータの直径と所望の先端速度とに対応する速度で回転するよう設定されている。上述したように、高せん断混合装置(例えばコロイドミル)は固定子とロータとの間に固定の隙間を有するか、又は調節可能な隙間を有する。HSD40は炭化水素及び濃酸を完全に混合する機能を果たす。方法のある実施形態において、反応物の輸送抵抗は、反応速度を約5倍以上に上昇させるように、高せん断混合装置の稼働によって低下される。ある実施形態において、反応速度は少なくとも10倍に向上される。ある実施形態において、速度は約10から約100倍の範囲の倍数だけ向上される。ある実施形態において、HSD40は40m/s(7900フィート/分)を超えても良い少なくとも22.9m/s(4500フィート/分)の公称先端速度で1.5kWの電力消費により少なくとも300L/hを処理する。ある実施形態において、混合物は20,000s-1より大きいせん断速度にさらされる。
【0067】
HSD40内の回転せん断ユニット又は回転要素の先端における瞬間的な温度及び圧力の測定は困難であるものの、完全に混合された反応物で観察される局所温度は500℃を超えており、圧力はキャビテーション状態において500kg/cm2を超えていることが推測される。高せん断混合は、分散した炭化水素含有液滴/球がミクロン又はサブミクロンサイズの粒子(すなわち、1μm未満の平均直径)であるエマルジョン又はナノエマルジョンの形成をもたらす。ある実施形態において、結果的に得られるエマルジョンは約1.5μm未満の平均液滴サイズである。ある実施形態において、平均液滴サイズは約0.4μmから約1.5μmの範囲である。ある実施形態において、エマルジョンは、液滴の平均直径が1μm未満のサイズであるナノエマルジョンである。ある実施形態において、平均液滴サイズは約400nm未満であり、約200nmから約400nmの範囲であるか、ある場合には約100nmである。したがって、ライン18を介してHSD40から出たエマルジョンはミクロン及び/又はサブミクロンサイズの液滴を含む。多くの実施形態において、エマルジョンは大気圧において少なくとも15分にわたって分散状態を維持することができる。
【0068】
分散されると、得られるエマルジョンは図1に図示されるようにライン18を介してHSD40から出て、容器10へと入る。イソパラフィンのアルキル化は適切な時間、温度及び圧力の条件が存在すればいつでも起こり得る。このため、温度及び圧力の条件が好ましければ、反応は図1に示されるHSD40、容器10及びポンプ5の間の通路のあらゆる場所で起こり得る。容器10に入る前の反応物の完全な混合によって、化学反応の大部分はHSD40内で起こる。しかしながら、利用可能な場合には、大量の反応物の攪拌及び加熱及び/又は冷却を向上させ、並びに滞留時間を増加させるために分離した反応装置が通常は望まれる。したがって、ある実施形態においては、容器10は触媒の最初の導入及び/又は生成物の分離に主に用いられる。あるいは又は更に、容器10は全アルキレート産物の大半又は一部が生成される主要反応容器としての役割を果たすこともできる。いずれの場合においても、化学反応は反応物が非常に細かいエマルジョンの形態である液体−液体(又は液体/液体/固体若しくは固形触媒存在下における液体/固体)反応を含む。反応物(すなわち炭化水素及び酸)は二相のエマルジョン又はナノエマルジョンを含む。
【0069】
本方法に用いられる特別な作動条件は行われる特定のアルキル化反応によって変わる。反応物の温度、圧力、空間速度及びモル比などの処理条件は結果的に得られるアルキレートの性質に影響を与え、最小限の試行錯誤のみで当業者によって開示される範囲内で調節可能である。
【0070】
反応物の大半の又は広範囲の操作温度はそれらの引火点より低く維持されることが望まれる。高せん断システム100の温度及び圧力は原料、使用される触媒の種類、及び処理において求められるアルキル化の程度によって変化する。一般に、アルキル化は穏やかな温度で行われる。工業的なアルキル化処理は、歴史的にフッ化水素酸又は硫酸触媒を比較的低温の条件下で用いてきた。特に硫酸のアルキル化反応は温度感受性が高く、オレフィンのポリマー化の副反応を最小限にするために低温が望ましい。
【0071】
このアルキル化処理は、約−40℃から約500℃、不要な副反応を避けるために好ましくは約40℃以下、最も好ましくは約0℃から約20℃の温度で行われるのに適している。ある実施形態において、アルキル化は約0℃から約30℃の温度で行われる。ある実施形態において、アルキル化は約0℃から約90℃の範囲の温度で行われる。低い反応温度はアルキレートのオクタン価を最大にするために好ましい。
【0072】
作動圧は反応物を液相に維持するように制御され、約345kPa(50psig)から約34.5MPa(5000psig)、好ましくは約345kPa(50psig)から約10.3MPa(1500psig)、及びより好ましくは約552kPa(80psig)から約1379kPa(200psig)が適している。単位時間当たりの重量空間速度は、反応領域へのオレフィンの全供給に基づいて約0.01hr-1から約100hr-1の範囲となる。最も好ましい単位時間当たりの重量空間速度は反応温度及び原料の組成に応じてこの範囲内で変化する。単位時間当たりの重量空間速度は最小限の試行錯誤によって希望するオクタン特性を得られるように容易に最適化できる。
【0073】
必要に応じて、エマルジョンは容器10に入る前に更に処理することができる。容器10の内容物は連続又は半連続的に攪拌され、反応物の温度は(例えば熱交換器を用いて)制御され、容器10内の流体の水位は標準的な方法を用いて制御される。アルキレートは希望に応じて連続的、半連続的、又は回分的に生成される。生成される反応ガスはガスライン17を介して反応装置10から出る。例えば、このガスストリームは揮発性の生成物を含む。ライン17を介して除去されたガスは更に処理及び掃気されるか、要望に応じてその成分は再循環される。
【0074】
未変換の液体炭化水素、アルキレート及び誘導体並びに副産物を含む反応産物ストリームはライン16によって容器10から出る。アルキレート生成物は高オクタン価の分枝パラフィン性炭化水素の混合物を含み得る。ある実施形態において、アルキレートはイソペンタン及びイソオクタンを主に含む。ある実施形態において、ライン16のアルキレート生成物ストリームはアンチノック性及び排ガスのきれいな性質を有するプレミアムガソリンのブレンド基材に適している。反応装置10からの除去において、ライン16の生成物を当業者に周知である追加処理のために生成物改質システムに送ることもできる。
【0075】
ある実施形態において、図1に示されるように、ライン16の生成物は液体−液体分離装置30へと導入される。例えば分離装置30はデカンター又は沈殿槽である。分離装置30において、密度の高い液体酸性アルキル化触媒は急速に分離装置の底に移行する一方で、アルキレート生成物及び未反応の炭化水素は沈殿槽の上部に浮かび上がる。液体触媒38は沈殿槽の底から回収され、使用済み酸ライン37を介して廃棄される及び/又はHSD40に再導入するために未使用触媒ライン21へとライン39を介して導入される。触媒液の一部は、再生設備における処理又は適切な設備における廃棄(図示しない)のために、例えば使用済み酸ライン37を介して高せん断システム100から連続的又は断続的に回収可能である。
【0076】
再循環される触媒はライン21へ導入される前に再生することができる。例えばある実施形態において、ライン38の触媒は高せん断システム100に戻る前に(図1において図示されていない)触媒冷却装置に流れ込む。アルキル化反応は一般に発熱反応であり、そのため、アルキル化反応の温度を好ましい範囲内に維持するために触媒はHSD40に戻される前に予冷することができる。上述したように、アルキル化反応領域における温度制御はアルキレートの質に影響を与え、そのため重要な処理制御の検討事項である。適切な冷却媒体は、好ましくは前記冷却媒体がシェル及びチューブ型熱交換器の管を通過する際に触媒溶液と間接的に接触することによって液体酸性触媒から熱を取り除く。当業者に周知の適切な冷却媒体、例えば冷水又はエチレングリコールの水溶液が使用可能である。
【0077】
分離装置30に送られるアルキル化反応装置排出物に含まれる軽質炭化水素相は、分離装置30の上部で分離した炭化水素相を容易に形成する。少量の酸性触媒とともにアルキル化生成物のみではなく未反応の炭化水素も含むこの炭化水素相は生成物ライン35を介して分離装置30から回収される。アルキレート生成物は、例えば炭化水素生成物が残留する酸を除去するために苛性水溶液(NaOH)に接触する苛性洗浄器である脱酸段階へとパイプで輸送されてもよい。炭化水素相及び苛性水相は実質的に非混和性であるため、二つの液体は容易に分離し、使用済みの苛性及び(ほぼ)無酸性の炭化水素は脱酸容器からの分離ストリームを介して回収される。
【0078】
触媒が除去された生成物35は更なる処理がなされ、ライン35における一部を再循環することもできる。例えば高せん断システム100は、燃料として再販売又は使用するためにプロパンが除去される脱プロパン装置(図1に図示されない)及び/又はイソブタンが除去される脱イソブタン装置(図1に図示されない)を更に有することもできる。回収された未変換のイソブタンの一部は、例えば再循環イソパラフィンライン20を介して高せん断装置40へと再循環可能である。脱イソブタン装置及び脱プロパン装置である分離装置は、例えば再沸騰装置及び頂部凝縮装置を備える従来の多棚段型分留塔である当業者に周知の適切な分離手段を有しても良い。
【0079】
ある実施形態において、酸性触媒は特にルイス酸で処理されたゼオライト又はアルミナである固形酸性触媒を含み、アルキル化は低度のポリマー又はオリゴマーであると思われる物質を生成する。そのような実施形態においては、溶媒抽出がこれらの副産物を除去するために利用可能である。
【0080】
マルチパス操作
さらに図1を参照すると、システムはシングルパス又はマルチパス用に構成されており、液体反応物の導入及び処理の開始後に、容器10のライン16からの排出物はアルキレートの回収又は追加処理に直接向かう。ある実施形態においては、二回目の通過の間にライン16の内容物又はその液体画分をHSD40に通すことが望ましい。この場合、ライン16の生成物の少なくとも一部は、さらなる乳化及び反応のために介在処理の有無に関わらずHSD40に戻すことができる。必要に応じて、追加の酸又は水がライン21を介してライン13へと投入されるか、又はそれは高せん断混合装置(図示しない)に直接添加される。
【0081】
ある実施形態において、HSD40のような又は異なって構成されても良い二つ以上の高せん断装置は直列に配置されており、反応を更に促進するために用いられる。それらの運転は回分又は連続モードのいずれであってもよい。一度の通過又は「ワンススルー(once through)」処理が望まれる実施例において、同様に直列の複数の高せん断装置の使用が有益である。複数の高せん断装置が直列に稼働する実施形態においては、容器10は省略可能である。複数の高せん断装置40が直列に作動する場合、追加の反応物が各装置の導入供給ストリームに投入可能である。ある実施形態において、複数の高せん断装置40は並列に稼働し、そこからの排出エマルジョンは一又は複数の容器10に導入される。
【0082】
ある実施形態において、外部高せん断装置40を介した反応物の混合を含む開示されるシステム及び方法の使用は、従来可能であったものよりも高せん断システム100内において少ない酸性触媒及び/又は過剰イソパラフィンの使用が可能になる。ある実施形態において、外部高せん断装置40は既存の方法に組み込まれており、それによって高せん断装置40を用いずに行われる方法からの生成量の増加(より多くの産生量)を可能にする。ある実施形態において、多くの反応が外部高せん断装置40内で起こる。ある実施形態において、外部高せん断装置40の非存在下におけるアルキル化と比べた場合、触媒の使用量は減少している。ある実施形態において、高せん断装置40の非存在下におけるアルキル化と比べた場合、過剰オレフィンの量は減少している。
【0083】
ある実施形態において、本開示のシステム及び方法は、外部高せん断混合を有さない従来のアルキル化システム及び方法よりもイソパラフィン原料からのアルキレートの高い収率をもたらす。ある実施形態において、本開示の高せん断アルキル化システム及び方法は、高せん断装置40の非存在下においてアルキル化反応装置から得られるアルキレートよりも高いオクタン価を有するアルキレートの生成が可能である。ある実施形態において、イソパラフィンのアルキル化のための本システム及び方法の使用は、アルキル化の速度を向上させることなどによって減少した量のオレフィン及び/又は触媒の使用が経済的に好適になる。
【0084】
ある実施形態において、混合の増強は処理ストリームの生成量を増加できる可能性がある。反応装置の圧力を増加させることによってアルキル化の程度を向上しようとする既存の方法とは対照的に、外部高せん断分散によってもたらされる優れた溶解及び/又はエマルジョン形成は、多くの場合において反応速度を維持又は上昇させつつ作動圧全体の低下を可能にする。特定の理論に限定されることは望まないが、高せん断混合のレベル又は程度は物質移動の速度を上昇させるために十分であり、また、別の方法ではギブズの自由エネルギー予測に基づいて起こることが期待されない反応を起こすことができる局所的な理想的でない状態を生じることもできると考えられる。局所的な理想的でない状態は高せん断装置内で生じ、最も顕著な上昇は局所圧であると考えられる温度及び圧力の上昇を結果的にもたらすと考えられる。高せん断装置内における圧力及び温度の上昇は瞬間的及び局所的であり、高せん断装置から出ると大部分の又は平均的なシステムの状態に急速に戻る。ある場合において、高せん断混合装置は十分な強さのキャビテーションを誘導することによって、一又は複数の反応物をフリーラジカルに解裂することができ、前記フリーラジカルは化学反応を増強させ、又は本来必要とされるであろう条件よりもより穏やかな条件で反応を起こすことができる。また、キャビテーションは局所的な乱流及び液体の微小循環(音響流)を生ずることによって輸送工程の速度を上昇させることができる。化学/物理的処理の適用におけるキャビテーション現象の利用の概要は、「キャビテーション:技術の展望(Cavitation: A technology on the horizon)」、カレント サイエンス(Current Science)、2006年、91 (No.1):35−46貢としてゴゲート(Gogate)他によって提供されている。本システム及び方法の実施形態の高せん断混合装置は、後にアルキレート生成物を形成するフリーラジカルへと反応物を解裂するために有効なキャビテーション条件であると考えられる条件下で稼働される。
【0085】
ある実施形態において、本明細書において説明されるシステム及び方法は、外部高せん断混合装置40を使用せずに従来可能であったものよりも小さい及び/又は低い資本集約的方法の設計を可能にする。開示される方法のある実施形態の潜在的な利点は、既存の方法からの稼働コストの減少及び生産量の増加である。開示される方法のある実施形態は、新たな方法の設計のための投資コストの低下という利点をさらにもたらす。アルキル化のためのこのシステム及び方法のある実施形態の潜在的な利点は、限定されないが、小さな反応装置の設計及び/又はより低い温度及び/又は圧力におけるアルキル化処理の実施による短い循環時間、生産量の増加、高度の転換、稼働コストの低下及び/又は資本経費の低下を含む。
【0086】
発明の好適な実施形態が示されて説明されたが、それらの改良が発明の精神及び教示から逸脱することなく当業者によってなされるであろう。本明細書において説明される実施形態は単なる例示であり、限定することを目的としていない。本明細書において開示される発明の多くの変形形態及び改良が可能であるとともに発明の範囲内に位置する。数値範囲又は限定が明確に記載されている場合、そのような明確な範囲又は限定は、明確に記載された範囲又は限定内に入る同程度の反復する範囲又は限定を含むことが理解されなければならない(例えば、約1から約10は2、3、4などを含み、0.10より大きいは0.11、0.12、0.13などを含む)。請求項の構成要素に関する用語「任意に(optionally)」の使用は、対象の構成要素が必要である、あるいは必要でないことを意味することを目的とする。両方の選択肢が請求項の範囲内に入ることを意図している。有する(comprises)、含む(includes)、有する(having)などの広い用語の使用は、からなる(consisting of)、基本的に〜からなる(consisting essentially of)、ほぼ〜からなる(comprised substantially of)などの狭い用語に対する支持をもたらすことが理解されなければならない。
【0087】
したがって、保護の範囲は上述の説明によって限定されることは無く、その範囲が請求項の対象の全ての均等物を含む以下の請求項によってのみ限定される。それぞれ及び全ての請求項は本発明の実施形態として明細書に援用される。したがって、請求項はさらなる説明であり、本発明の好適な実施形態の追加である。本明細書において引用された全ての特許、特許出願及び刊行物の開示内容は、それらが本明細書に記載される事項を補完する例示的、手順の又は他の詳細を提供する範囲で参照によって援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のイソパラフィンと少なくとも一種のオレフィンとを含む炭化水素をアルキル化する方法であって、
液体酸性触媒及び炭化水素を高せん断反応装置へ導入する段階、
炭化水素を含む液滴を連続酸性相中に有するエマルジョンを形成する段階、
好適なアルキル化条件で稼働する容器へとエマルジョンを導入することによって、イソパラフィンの少なくとも一部がオレフィンによってアルキル化されることでアルキレートを形成する段階、及び
アルキレートを含む生成物ストリームを容器から取り除く段階
を有し、液滴は約5μm未満の平均直径を有する方法。
【請求項2】
少なくとも一種のイソパラフィンは4から8個の炭素原子を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一種のオレフィンは2から12個の炭素原子を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一種のイソパラフィンはイソブタンを含み、少なくとも一種のオレフィンはブテンを含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
好適なアルキル化条件は、約0℃から約90℃の温度及び約345kPaから約3447kPaの範囲の圧力を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
触媒は、硫酸、フッ化水素酸、BF3、SbF5、及びAlCl3から選択される酸を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
液滴は400nm未満の平均直径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
液滴は100nm以下の平均直径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
エマルジョンを形成する段階は、少なくとも22.9m/sの先端速度で炭化水素及び酸を高せん断混合することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
先端速度は少なくとも40m/sである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
高せん断混合は先端において少なくとも約1034MPaの局所圧を生じる請求項9に記載の方法。
【請求項12】
エマルジョンを形成する段階は、炭化水素及び酸を含む混合物に約20,000s-1より大きなせん断速度を加えることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
エマルジョンを形成する段階は、少なくとも1000W/m3のエネルギーを消費する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
アルキル化は、炭化水素及び液体酸性触媒に対して高せん断混合が行われない類似の方法の速度よりも少なくとも5倍以上の速度で起こる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一種のイソパラフィン及び少なくとも一種のオレフィンを含む炭化水素のアルキル化のためのシステムであって、
せん断間隙によって離間された少なくとも一つのロータと少なくとも一つの固定子とを備える少なくとも一つの外部高せん断混合装置、
液体酸性触媒を含む加圧液体ストリームを少なくとも一つの高せん断混合装置へと輸送するよう構成されたポンプ、及び
高せん断混合装置からエマルジョンを受け取るよう構成された容器
を有し、せん断間隙は少なくとも一つのロータと少なくとも一つの固定子との間の最小の距離であり、高せん断混合装置は少なくとも一つのロータの先端において22.9m/s(4,500フィート/分)より大きな先端速度を生じることができるシステム。
【請求項16】
せん断間隙は約0.02mmから約5mmの範囲である請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
高せん断混合装置は1μm未満の平均直径を有する液滴を含むエマルジョンを生成するよう構成されており、
エマルジョンは酸性触媒を含む連続液体相に分散された炭化水素の液滴を含む又はエマルジョンは炭化水素を含む連続液体相中に酸性触媒を含む液滴を有する請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
少なくとも一つの高せん断混合装置は少なくとも300L/hの流速で作動するよう構成されている請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
少なくとも一つの高せん断混合装置は1000W/m3を超えるエネルギー消費をもたらすよう構成されている請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
少なくとも一つの高せん断混合装置は少なくとも二つのロータと少なくとも二つの固定子とを有する請求項15に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−529149(P2010−529149A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511432(P2010−511432)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/067992
【国際公開番号】WO2009/002967
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(509218652)エイチ アール ディー コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】