説明

アルギン酸塩の超高純度精製方法

本発明はアルギン酸塩の超高純度精製方法に関し、特にヒトの細胞移植におけるマイクロカプセル化のために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルギン酸塩の超高純度精製方法に関し、特にヒト細胞移植におけるマイクロカプセル化のために意図された同方法に関する。この方法は医薬品等級のアルギン酸ナトリウムを出発粉体とする精製に有意に適用され、プロダクトの分子構造を不変に維持しながら、エンドトキシンおよび内因性発熱物質を除去する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸ナトリウム(AG)はある種の海藻類、とりわけ太平洋西海岸全般に沿って生息するMacrocystis pyriferaから抽出されるポリサッカライドであり、バイオテクノロジーを含む様々な分野で幅広い用途が見い出されている。その精製が本発明の主題であるところの該バイオポリマー塩は水溶性のポリサッカライドであり、生きている成長有機体(vegetal organisms)によって自発的に浸出し、あるいはそれから抽出される。実際、アルギン酸塩は、D−マンヌロン酸(−M−)とL−グルロン酸(−G−)の両ユニットのコポリマー構造を示すアルギン酸の塩である。これらのユニットは、分子パターンにおいて時として交替するポリマーまたはダイマーのブロックMMまたはGGを生成する。
【0003】
アルギン酸塩の分子配列および組成は主としてその取得元によって決定される。たとえば最も一般的に用いられるアルギン酸塩はカナダ藻(brown seaweeds)に由来し、とりわけMacrocystis pyriferaに由来するプロダクトは1.56:1に等しいM/G比を有するのに対して、Laminaria Hyperboreaに由来するものは0.45に等しいM/G比を有する。アルギン酸塩の一価の塩(Na,K)は概して水溶性であり、ゲルまたは固体の形態で見られる二価塩(Ba,Ca)または多価塩(Fe,Al)とは異なる。
【0004】
AGは永年に亘って食品および医薬品産業において、フルーツゼリーの製造やある種の医薬品(たとえば抗酸剤など)のための賦形剤の製造に用いられてきた。しかしながら、市場で入手可能なアルギン酸ナトリウムは、ヒトの移植における適用など、厳密且つ国際的に認められた品質コントロール標準、たとえば健康に関する省庁や米国薬局方のガイドラインが要求される特別な適用については精製が不十分であった。
【0005】
アルギン酸塩は、精製されるべき原抽出物として、および部分的に精製された溶液として、市場で入手可能である。アルギン酸塩パウダーの化学成分はフラクション(FまたはF)およびM/G比で記述される。たとえば、AG KELTONE(商標)LVCRプロダクトは約30,000EU/g〜約60,000EU/gの範囲のエンドトキシンレベルを有し、したがって100EU/gを越えないエンドトキシンレベル(より低いレベルが望ましいが)が要求される非経口的用途には不向きである。
【0006】
この結果として、AG KELTONE(商標)LVCRを非経口的投与するには、そのエンドトキシンレベルを劇的に減少させなければならない。
【0007】
20年以上に亘りAGは、ハイブリドーマ細胞を含有するマイクロカプセルの形成に用いて、モノクロナール抗体の製造(Damon Biotech, Inc.)や宿主拒絶反応から膵島移植片を保護すること(米国特許第4683092号)に供されてきた。糖尿病の齧歯動物およびより高度な哺乳動物において最初にマイクロカプセル化された移植プロトコルは、移植自体の成功のために必須とされる使用物質の純度を明確に強調するものであった。恐らくはマイクロカプセル移植を失敗に終わらせる要因となるであろう主な汚染物質は、細菌性のリポポリサッカライドエンドトキシンであり、グラム陰性細菌のメンブレンに存在する発熱性物質である。この種の物質はほとんどの滅菌システム(たとえばオートクレーブ)に対して抵抗性を示す。ガンマ線照射や感熱滅菌などの技術はエンドトキシンを死滅させることができるが、滅菌対象の材料やプロダクトにもダメージを与える可能性がある。さらに、これらは概して低分子量(10〜20Kd)であって、標準的なろ過プロセスによる除去を許容しない。いかなる場合においても、二次汚染のリスクを避けるために無菌でエンドトキシンフリーのプロダクトを取得すべき必要性を考慮に入れなければならない。最後に、人体に非経口摂取されるべき物質は100EU/gよりも低いエンドトキシン含量を有するものでなければならず、そのレベルは50EU/gよりさらに低いことが好ましい。移植目的において膵島含有マイクロカプセルの調整のためにAGが用いられる場合、エンドトキシンの存在は、カプセルによって発揮される免疫防御(capsule-provided immunoprotection)を無効化し、深刻な炎症反応の襲来を助長するおそれがある。
【0008】
超高純度に精製されたプロダクト(実質的にエンドトキシンフリー)を取得することの必要性により、近年において幾つかの精製法の開発が促進されてきたが、これらはすべての産業上および安全上の要求を満たすことができない。ポリミキシン−bの添加または不添加とともにイオン交換樹脂を使用し、あるいはセルロースアセテートフィルタでのろ過およびさらなるメンブレンダイアライザーション(membrane dialization)を行うある種の精製法は、エンドトキシンレベルを適切に(約70〜80EU/g)低減させることを許容せず、コストが嵩み、臨床用途のためのプロトコルのスタートに実質的に不可欠な出発プロダクトの質量が顕著に損失するためにAGを大量生産することに適用不能であり、また、クロロホルム使用の場合に微量であっても潜在的に毒性を持つ当該溶媒の除去が困難であるという不利欠点を有する。たとえば、AGをエタノールに沈降させた後にクロロホルムで抽出する技術では、1リットルの最終プロダクトを得るために約10リットルのAGからスタートする必要がある。さらに、製品歩留まりが低いことは、異なるAGのバッチが非均質な特徴を有することを示唆しており、大規模で再現可能な技術であることが必須とされる臨床プロトコルで使用されるプロダクトの調製には明らかに不適当である。
【0009】
米国特許第6451772号は原アルギン酸塩から出発して、ポリプロピレンフィルタ上で実質的にろ過(および/またはイオン交換樹脂の使用)を行い、次いで有機溶媒を用いてろ過物を沈殿させる。この方法の主な限界は以下によって表される。
1.製造されるアルギン酸塩として示される最終容積歩留まりに対して材料コストが過大であり、歩留まり自体も満足できるレベルに至っていないこと。
2.記述される方法論は多くのバリエーションを有し、場合によっては十分に低いエンドトキシン含量でアルギン酸塩を得ることができるものの、プロダクト自体のシステマチックな有用性が認められないこと。
3.溶媒使用に起因してアルギン酸塩構造を改変させる影響が生ずること。
【発明の概要】
【0010】
驚くべきことに、沈殿操作に代えて荷電−改質ろ膜カートリッジによるろ過を行うことによって、
1)きわめて高度で均一な純度(エンドトキシン含量≦20EU/g)を持ち、
2)大規模に超高純度精製され、
3)溶媒を使用せずに取得でき、したがって、
a.アルギン酸塩の化学構造を改変することがなく、
b.アルギン酸塩の汚染もないので非経口用途のためのプロトコルによっても容認される、
ようなAGを取得できることが分かった。
【0011】
したがって、本発明の主題であるところの、構造的に変化がなくエンドトキシン含量が20EU/gを越えないアルギン酸塩の溶液を取得する方法は、
a)1.6〜2.0重量%の範囲の濃度および7.4〜7.6の範囲のpH調整値を有するアルギン酸塩溶液が得られるまで、市販アルギン酸パウダーを塩溶液に添加するステップと、
b)ステップa)で得られた溶液を少なくとも一の親水性フィルタでろ過した後に、得られた溶液を回収するステップとを有し、
ステップb)で得られた溶液を疎水性フィルタでのろ過に投じ、得られた溶液を回収することを特徴とする。
【0012】
この記述には2つの図面テーブルが付属しており、図1:製造されたアルギン酸塩の炭素NMRスペクトル、図2:製造されたアルギン酸塩の重水素NMRスペクトルである。
【0013】
本発明によれば、用いられるアルギン酸塩はM:52.26%とG:47.74%とからなる組成を有するアルギン酸ナトリウムであり、これは1.093のM/G比に相当する。好ましくはアルギン酸塩としてKELTONE(商標)LVCRの製品が用いられる。
【0014】
ステップb)のろ過は好ましくは3つのセルロースアセテート親水性フィルタを用いて実行されることが好ましく、たとえば有意には第一のフィルタは医薬品等級30で公称孔径が2μmであり、第二のフィルタは医薬品等級60で公称孔径が2μmであり、第三のフィルタは医薬品等級90で公称孔径が2μmである。
【0015】
第二のろ過では疎水性フィルタを用いる。荷電−改質ナイロンフィルタ、とりわけ正電荷を有するナイロン66フィルタが有意に好適である。
【0016】
本発明によれば、医薬品等級のAGパウダーから、分子希釈および複合的ろ過を経て、エンドトキシン含量が20EU/gを越えない最終製品が(溶液およびパウダーの両方の形態で)得られる。これは、前述の品質管理標準に完全に適合している。本発明の最終製品は、通常は1.8%(w/v)溶液において入手可能であり、光保護雰囲気において4〜6℃の温度で適切に保存され、実質的にプロテイン含量不存在(<0.4%−別の米国FDA インビジビリティ標準)の条件下で約5年間に亘って安定している。
【0017】
本発明は2つの部分すなわち親水性(ポリサッカライド)と疎水性(リピッド)とからなるリポポリサッカライドエンドトキシン(LPS)の化学構造を与える。本発明によれば、超ろ過プロセス(正荷電)の最後にナイロンフィルタが用いられ、エンドトキシンの(疎水性)リピッド部分を選択的にバインドすることができ、AG構造を変更および/または損傷させることなく保持する。第四のフィルタを加えると、従来技術では必要とされていたさらなる処理を不要にするだけでなく、再現可能でシンプルな結果を保証する。さらに、前述の米国特許において強調された観点であるが、この製品の化学構造は変更されない。このことはこの明細書に添付の本製品のNMRスペクトルによって明白に実証されている。これらNMRスペクトルは、重水素の場合も炭素の場合も、(未精製の)出発製品と(高純度精製された臨床グレードの)最終製品との間に構造的にも分子的にもわずかな相違さえ全く存在しないことを示している。
【0018】
本発明による方法は出発物質の約50%を取得することを許容する。これは、他の方法による回収量が10%と算出されることと対照的である。
【0019】
本発明の方法はマニュアルの介在が限定的であるので実行容易であり、したがって既知の方法より汚染リスクが少ない。本発明では衛生的な容器(ハウジング)内に適当なフィルタを組み付け、これをポンプシステムおよび下方の回収システムに接続することを必要とするだけである。全般的な方法はクラス2の層流(laminar-flow)バイオロジカルフードの下で容易に実施することができる。これらサンプルのプロテイン含量は0〜0.016mg/mlの範囲である。これらのデータは、2年間に亘って行った21の異なるろ過処理において得られた値に基づいて算出したものであり、表1に記載の通りである。
【0020】
本発明方法によって得た様々なサンプルにおけるプロテイン含量−平均0.090846
【表1】

【0021】
本発明方法は次の2つのステップを含む。
1)AGパウダーを塩化ナトリウムに溶解し、そのpHを調整し、3つの親水性フィルタに通過させる。好ましくは、親水性フィルタ材料としてセルロースアセテートが用いられる。他の市場入手可能なフィルタで好適に用いられるものとしては、たとえばゼータプラス(zetaplus)等級のCuno(商標)フィルタがある。このフィルタは1ミクロン〜0.1ミクロンの孔径を有し、本発明で用いられるものと同様に広いろ過面積を有し、製品に変質を与えないようにろ過圧力を低減させることができるとともに細胞フラグメントおよびいわゆる「不活性」な微小粒を除去させる利点を発揮する。このようにして得られる製品は無菌であり、エンドトキシン含量はいかなる場合であっても100EU/gより高い。
2)オリジナリティを支持するところの第二のステップは、リポポリサッカライドのネガティブ部分をバインドして溶媒上への沈殿を防止しあるいは他の技術のネガティブ部分をバインドするために、正電荷を有する疎水性ナイロンフィルタにより残余エンドトキシンを除去して、エンドトキシン含量が常に30EU/g未満であって様々な用途にすぐに使える製品を得る。
【0022】
本発明は移植バイオテクノロジーの分野における適用を見い出し、特にポリアミノ酸と希釈AGで好適にコーティングされたAGマイクロカプセルの製造に適用され、これは宿主免疫系細胞からの島移植を免疫保護するものとして実証されている。数年に亘って本発明者らは、1型糖尿病(インスリン依存型またはT1DM)の治療のために、マイクロカプセル化された膵島の移植について研究してきた。この研究活動はほとんどが国際的である科学刊行物によって詳細に文献化されている。さらに、用いられる材料の純度および高度のバイオコンパチビリティのおかげで、本発明者らはイタリア国立高等衛生研究所からの授権を得て、薬理学的に免疫抑制されていないT1DM患者にヒト膵島マイクロカプセルを移植することについてフェーズ1の臨床研究を開始したところである。得られた結果から、本発明によって得られるマイクロカプセルは高度にバイオコンパチブルであり、その製品の効用は様々な国際的リサーチラボラトリで実証されてきた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
超高純度であって20EU/gを越えないエンドトキシンレベルを有するアルギン酸ナトリウム溶液の調製のために、以下の材料が必要とされる。
・Pyrex(商標)ビーカー
・Pyrex(商標)メスシリンダー
・マグネチックスターラー
・シリコンチューブHW155(内径5、外径8)
・蠕動ポンプ
・滅菌ピペット
・証明済のエンドトキシンフリー滅菌ボトル
・ジアトマイトおよびパーライトからなるろ過コアジュバント(filtration coadjuvant)を有する医薬品等級30、60および90のセルロースアセテートフィルタ(高さ20インチ、径12インチ)
・電荷−改質されたナイロン66ろ膜を有するフィルタ(孔径0.2μm、高さ20インチ、径8インチ)
・20インチろ過カートリッジ(径12インチ)用のAISI316ステンレススチール製衛生容器
・20インチろ過カートリッジ(径8インチ)用のAISI316ステンレススチール製衛生容器
【0024】
超高純度であって20EU/gを越えないエンドトキシンレベルを有するアルギン酸ナトリウム溶液の調製法は、次のステップを提供する。
【0025】
<使用する「ハウジング」、フィルタおよび材料の滅菌>
ガラス容器(メスビーカー、メスシリンダー、ボトルなど)、接続シリコンチューブ、AISI316ステンレススチール衛生容器(「ハウジング」と言う。)ならびにアルギン酸塩溶液の調製およびろ過ステップで用いる他の材料(マグネチックアンカー、ガラスロッドなど)を、1%エトキセート溶液(E-Toxa-Clean(商標)、カタログ番号E9029、Sigma-Aldrich、イタリア国ミラノ市)で24時間処理した後、脱イオン水でしっかり洗浄し、最後に120℃で1時間オートクレーブ処理する。いずれも孔径0.2μmである医薬品等級30、60および90のセルロースフィルタと、孔径0.2μmである電荷−改質ナイロン66ろ膜を備えたカートリッジを、ハウジングとは別に、120℃で1時間オートクレーブ処理する。
【0026】
<1.8%AG溶液の調製>
用いたAG(アルギン酸(E400)のナトリウム塩)は、製造社Monsato-Kelco(20N Wacker Dr, Chikago IL USA)から超高純度パウダーとして提供される低粘性Keltone(商標)LVCR(Kelco)である。アルギン酸塩パウダーの化学成分はフラクション(FまたはF)およびM/G比で記述され、本発明で用いられるアルギン酸塩は、NMR(核磁気共鳴)分析を通じて決定されるところによれば、M比率:52.26%、G比率:47.74%であって、M/G比が1.093である。1.8%アルギン酸塩溶液の調製のためのすべての手順はクラス2層流バイオロジカルフードの下で行われる。計量の後、アルギン酸塩パウダーをビーカー内に配置し、生理溶液(0.9%NaCl)をゆっくり添加し、マグネチックスターラーとマグネチックアンカーを用いて行う穏やかな撹拌の下で凝固しないようにして(用いられる生理溶液は無菌且つ非発熱性であって注入可能な調製用に特化されている)、最終的に均質な溶液を得る。
【0027】
<ろ過システム(ハウジング)アセンブリ>
使用時に適当なフィルタをハウジングに挿入し、すべての手順をバイオロジカルフードの下で行い、該フィルタを閉じて専用の支持体上に組み付ける。シリコンチューブをハウジングの出口と入口に締結する。ろ過装置の入口におけるチューブを蠕動ポンプに係止するとともに、その自由端をアルギン酸溶液含有ビーカーに浸す。ろ過システムの出口側のシリコンチューブの自由端は滅菌回収ボトル内に配置する。
【0028】
<ろ過>
溶液は4回の異なるろ過ステップを経る。これらはすべて「ハウジング」ろ過システムを用いて中断することなく行われる。
【0029】
第一のステップは、医薬品等級30のセルロースファイバー(公称孔径2μm)カプセルで溶液をろ過する。蠕動ポンプを用いることによりハウジングは約7リットルの製品で満たされ、ろ過回収が開始される。ポンプレートはきわめて低い値にセットして材料とフィルタとの間により大きな相互作用を与えるようにする。実際のところハウジング内の圧力は1.5バールの値の近辺に維持される。大雑把に2リットルと計量されるろ過物の第一画分は抽出可能物質(extractables)リッチであるので廃棄する。無菌でエンドトキシン不存在が証明されているプラスチックボトルに残余物を回収する。
【0030】
第二のろ過ステップは、医薬品等級60のセルロースファイバーカプセル(公称孔径2μm)を用いる。この場合においても同様にポンプがセットされるレートはろ過システムに1.5バールの圧力を生成させる程度である。回収は上述と同タイプのプラスチックボトル内に行う。
【0031】
セルロースファイバーカプセルによる第三のステップは、医薬品等級90のカプセル(公称孔径2μm)を用いる。この場合においても同様にポンプがセットされるレートはろ過システムに1.5バールの圧力を生成させる程度である。回収は上述と同タイプのプラスチックボトル内に行う。
【0032】
第四および最後のろ過ステップは、孔径0.2μmである電荷−改質ナイロン66ろ過膜を備えたカートリッジを用いる。この最後の場合において、蠕動ポンプによって生成される圧力は、該ポンプ自体のレートを制御する動作によって0.3〜0.5バール近辺に維持される。ろ過物は、エンドトキシン用に予備処理されオートクレーブで120℃、1時間滅菌処理されたガラスボトルに回収される。
【0033】
<最終製品の評価>
<実施例2>
得られた製品を等分して試験を行う。エンドトキシンの存在を確認するための試験は、適当な等分物を得てこれをLimulus法(Lonza Verviers, SPRL)によるエンドトキシン検出を行う専門会社に送り、プロテイン含量についてはBradford法によって行い、pH値については+4℃および+20℃でマイクロメータ法によって行い、NMR分析によってその化学成分および関連するモノマー画分を確認する。エンドトキシン含量は20EU/g未満であることが分かる。重金属の存在と製品の無菌性が標準プロトコルを通じて評定される。
【0034】
本発明は移植バイオテクノロジーの分野における適用可能性を見い出す。特に、本発明者らによって、ポリアミノ酸と希釈AGとで好適にコーティングされたAGマイクロカプセルは、移植先の免疫系から細胞を免役保護することが実証されている。本発明者らは彼らの研究室において数年に亘って、1型(インスリン依存型)糖尿病の治療のために、マイクロカプセル化された膵島の移植について研究してきた。この研究活動は主に国際的である科学刊行物によって詳細に文献化されている。さらに、用いられる材料の純度および高度のバイオコンパチビリティのおかげで、本発明者らはイタリア国立高等衛生研究所からの授権を得て、薬理学的に免疫抑制されていない移植先の糖尿病患者にヒト膵島マイクロカプセルを移植することについてフェーズ1の臨床研究を開始したところである。得られた結果から、本発明者らのマイクロカプセルは高度にバイオコンパチブルであり、その製品の効用は様々な国際的リサーチラボラトリで実証されている。
様々な細胞株の成長と区別のためのカプセルと人工細胞外マトリックス
本発明によって製造されたアルギン酸ナトリウムを用いてアルギン酸塩/ポリオルニチン(AG/PLO)を調製するための標準作業手順書(SOP)
【0035】
<試薬>
・無菌且つ非発熱性の生理溶液
・蒸留水中の1.2%CaCl溶液
・蒸留水中の55mMクエン酸ナトリウム溶液
・生理溶液中の0.12%および0.06%ポリオルニチン溶液
(これら溶液はろ過によって滅菌される)
・前述のろ過処理によって得られる1.6%NAG
・上記の1:10希釈による生理溶液中の0.05%NAG
【0036】
<方法>
島細胞を生理溶液で洗浄してあらゆるプロテインを除去する。次いで、生理溶液のペレット0.5mlの各mlに1.6%NAG10mlを加えて、懸濁液を均質にする。蠕動ポンプを15ml/分および空気流速5リットル/分に調整し、生理溶液流をシステムに流し始める。
【0037】
200mlの1.2%CaClを収容する250mlビーカーにアルギン酸塩の微小液滴(マイクロドロップ)が収集され、これはゲル化によって島細胞含有アルギン酸マイクロカプセルを形成する。CaCl溶液のメニスカスからのニードル距離は約3cmに等しく、これはクリティカルな重要性を思わせる。カプセルをCaCl内で5分間放置した後、100mlの1.2%CaClを生理溶液に替えて再び5分間放置する。次いで、生理溶液での洗浄を繰り返し行った後に、カプセルを50mlファルコンに移す。次いで、カプセルに吸収された容量の2倍に等しい量の下記リアクタントを、先に添加したものをその都度除去しながら順次に添加し、撹拌し、リアクタントと生理溶液を有する他の適当な洗浄剤との間で洗浄する。
・0.12%ポリオルニチン、10分間
・0.06%ポリオルニチン、5分間
・0.1%NAG、6分間
・55mMクエン酸ナトリウム、2分間
【0038】
繰り返し行われる洗浄は2つの側面を実行する。すなわち、一面においては細胞デブリ(破片)を除去し、他面においてはエンプティであったり破壊されていたりする過小カプセルの大半を除去する。これらは重量がより軽いのでより緩慢に沈下していく。これらの処理の終了に際して、カプセルをCMRL−1066培地に再懸濁する。移植前にカプセルを生理溶液で洗浄し、その中で移植の際にも再懸濁されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造的に変化がなくエンドトキシン含量が20EU/gを越えないアルギン酸塩の溶液を取得する方法であって、
a)1.6〜2.0重量%の範囲の濃度および7.4〜7.6の範囲のpH調整値を有するアルギン酸塩溶液が得られるまで、市販アルギン酸パウダーを塩溶液に添加するステップと、
b)ステップa)で得られた溶液を少なくとも一の親水性フィルタでろ過し、得られた溶液を回収するステップと、
c)ステップb)で得られた溶液を疎水性フィルタでろ過し、得られた溶液を回収するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アルギン酸塩パウダーがアルギン酸ナトリウムパウダーである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルギン酸塩がM:52.26%およびG:47.74%からなる組成を有し、M/G比1.093に相当するものである、先行請求項のいずれか記載の方法。
【請求項4】
用いられる前記アルギン酸塩がKELTONE(商標) LVCRである、先行請求項のいずれか記載の方法。
【請求項5】
前記ろ過を3つのセルロースアセテート親水性フィルタで行う、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記3つのフィルタのうち第一のフィルタは医薬品等級30で公称孔径が2μmであり、前記3つのフィルタのうち第二のフィルタは医薬品等級60で公称孔径が2μmであり、前記3つのフィルタのうち第三のフィルタは医薬品等級90で公称孔径が2μmである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記親水性フィルタは電荷―改質ナイロンフィルタである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記親水性フィルタは正電荷を有するナイロン66フィルタである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1ないし8記載の方法によって得られるアルギン酸塩溶液。
【請求項10】
請求項9記載の溶液によって得られるアルギン酸ナトリウム。
【請求項11】
請求項9記載のアルギン酸ナトリウム溶液および/または請求項10記載のアルギン酸ナトリウムをヒト移植において非経口用途に用いる医療装置の製造に用いる用途。
【請求項12】
前記装置はヒト細胞移植に用いるアルギン酸塩/ポリオルニチンのマイクロカプセルである、請求項11記載の用途。

【公表番号】特表2011−510150(P2011−510150A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543602(P2010−543602)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050221
【国際公開番号】WO2009/093184
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510274924)ジーエイチ・ケア・インク・ディービーエイ・アルトユーセル (1)
【氏名又は名称原語表記】GH Care Inc. d/b/a AltUCell
【Fターム(参考)】