説明

アルコキシピペリジン誘導体の製造法

【課題】 医薬品の合成中間体等として有用な、アルコキシピペリジン誘導体の安価で安全な製造法を提供すること。
【解決手段】 式(I)
【化15】


(式中、R1は置換もしくは非置換の低級アルキル等を表し、R2は水素原子または保護基を表す)で表される化合物を酸触媒存在下、減圧条件で処理し、式(II)
【化16】


(式中、R1は前記と同義であり、R3は前記R2が水素原子であるときは水素原子を表し、前記R2が保護基であるときは水素原子または前記R2を表す)で表される化合物またはその塩を得る工程、及び該式(II)で表される化合物またはその塩を接触水素添加に付す工程を含むことを特徴とする、式(III)
【化17】


(式中、R1は前記と同義であり、R4は前記R3が水素原子であるときは水素原子を表し、前記R3が保護基であるときは水素原子または前記R3を表す)で表されるアルコキシピペリジン誘導体またはその塩の製造法等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の合成中間体等として有用な、アルコキシピペリジン誘導体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシピペリジル基を側鎖に有するピロリジノン誘導体は、シグマ受容体作動薬として有用であることが知られている(特許文献1参照)。該ピロリジノン誘導体の製造過程等において、アルコキシピペリジン誘導体の効率的な製造法が必要であり、その製造法としては、例えばヒドロキシピペリジン誘導体の水酸基のアルキル化による方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、発火の危険性が高い水素化ナトリウム及び毒性の強いハロゲン化アルキルを用いている等の理由で、実用上、満足のいく方法ではない。また、アルコキシピペリジン誘導体の前駆体となりうるアルコキシテトラヒドロピリジン誘導体の製造法としてピリジニウム塩の還元による方法が知られているが(非特許文献1参照)、この方法では原料の入手が困難または高価である等の問題がある。同じくアルコキシテトラヒドロピリジン誘導体の製造法としては、ピペリドン誘導体のアセタール化及びアルコキシの脱離による方法が報告されている(非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平09-040667号公報
【非特許文献1】「ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)」、1969年、第34巻、第12号、p.4158-4160
【非特許文献2】「インディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Indian Journal of Chemistry)」、1994年、第33B巻、p.986-987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、医薬品の合成中間体等として有用な、アルコキシピペリジン誘導体の安価で安全な製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の(1)〜(16)に関する。
(1)式(I)
【0005】
【化7】

【0006】
(式中、R1は置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の低級シクロアルキルを表し、R2は水素原子または保護基を表す)で表される化合物を酸触媒存在下、減圧条件で処理し、式(II)
【0007】
【化8】

【0008】
(式中、R1は前記と同義であり、R3は前記R2が水素原子であるときは水素原子を表し、前記R2が保護基であるときは水素原子または前記R2を表す)で表される化合物またはその塩を得る工程、及び該式(II)で表される化合物またはその塩を接触水素添加に付す工程を含むことを特徴とする、式(III)
【0009】
【化9】

【0010】
(式中、R1は前記と同義であり、R4は前記R3が水素原子であるときは水素原子を表し、前記R3が保護基であるときは水素原子または前記R3を表す)で表されるアルコキシピペリジン誘導体またはその塩の製造法。
(2)式(I)で表される化合物を処理する際の温度を50〜250 ℃の間の温度とし、圧力を1〜200 mmHgの間の圧力とする前記(1)記載の製造法。
(3)式(I)で表される化合物を処理する際の温度を80〜200 ℃の間の温度とし、圧力を5〜100 mmHgの間の圧力とする前記(1)記載の製造法。
(4)式(I)で表される化合物を処理する際の温度を100〜150 ℃の間の温度とし、圧力を10〜50 mmHgの間の圧力とする前記(1)記載の製造法。
(5)式(II)で表される化合物またはその塩を接触水素添加に付す工程においてパラジウム触媒を用いる、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造法。
(6)式(II)で表される化合物またはその塩を得る工程において、式(I)で表される化合物を処理したときに得られる該式(II)で表される化合物の粗生成物をブレンステッド酸で処理し、該式(II)で表される化合物の塩をいったん単離する工程を含む、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造法。
(7)R2及びR3がベンジルである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造法。
(8)R2及びR3がベンジルオキシカルボニルである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造法。
(9)式(Ia)
【0011】
【化10】

【0012】
(式中、R1a及びR2aはそれぞれ前記R1及びR2と同義である)で表される化合物を酸触媒存在下、減圧条件で処理し、式(IIa)
【0013】
【化11】

【0014】
(式中、R1aは前記と同義であり、R3aは前記R2aが水素原子であるときは水素原子を表し、前記R2aが保護基であるときは水素原子または前記R2aを表す)で表される化合物またはその塩を得る工程、及び該(IIa)で表される化合物またはその塩を接触水素添加に付す工程を含むことを特徴とする、式(IIIa)
【0015】
【化12】

【0016】
(式中、R1aは前記と同義であり、R4aは前記R3aが水素原子であるときは水素原子を表し、前記R3aが保護基であるときは水素原子または前記R3aを表す)で表されるアルコキシピペリジン誘導体またはその塩の製造法。
(10)式(Ia)で表される化合物を処理する際の温度を50〜250 ℃の間の温度とし、圧力を1〜200 mmHgの間の圧力とする前記(9)記載の製造法。
(11)式(Ia)で表される化合物を処理する際の温度を80〜200 ℃の間の温度とし、圧力を5〜100 mmHgの間の圧力とする前記(9)記載の製造法。
(12)式(Ia)で表される化合物を処理する際の温度を100〜150 ℃の間の温度とし、圧力を10〜50 mmHgの間の圧力とする前記(9)記載の製造法。
(13)式(IIa)で表される化合物またはその塩を接触水素添加に付す工程においてパラジウム触媒を用いる、前記(9)〜(12)のいずれかに記載の製造法。
(14)式(IIa)で表される化合物またはその塩を得る工程において、式(Ia)で表される化合物を処理したときに得られる該式(IIa)で表される化合物の粗生成物をブレンステッド酸で処理し、該式(IIa)で表される化合物の塩をいったん単離する工程を含む、前記(9)〜(13)のいずれかに記載の製造法。
(15)R2a及びR3aがベンジルである前記(9)〜(14)のいずれかに記載の製造法。
(16)R2a及びR3aがベンジルオキシカルボニルである前記(9)〜(14)のいずれかに記載の製造法。
【0017】
以下、式(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)及び(IIIa)で表される化合物を、それぞれ化合物(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)及び(IIIa)という。他の式番号の化合物についても同様である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、医薬品の合成中間体等として有用な、アルコキシピペリジン誘導体の安価で安全な製造法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
化合物(I)、(II)、(III)、(Ia)、(IIa)及び(IIIa)の各基の定義において、
低級アルキルとしては、例えば、直鎖または分枝状の炭素数1〜8のアルキル、より具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等が挙げられる。
【0020】
低級シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキル、より具体的にはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
保護基としては、アミノ基の保護基として用いられる保護基であればいずれでもよく、例えばアラルキル、アラルキルオキシカルボニル、低級アルキルオキシカルボニル、低級アルケニルオキシカルボニル等、より具体的にはベンジル、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル等が挙げられる。保護基の導入、その脱保護には有機合成化学の分野で通常用いられる方法が用いられる[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第三版(Protective Groups in Organic Synthesis 3rd Edition)、グリーン(T. W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons, Inc.)、1999年等参照]。
【0021】
前記保護基の定義において、低級アルキルオキシカルボニルにおける低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義である。
アラルキル及びアラルキルオキシカルボニルにおけるアラルキル部分としては、例えば炭素数7〜15のアラルキル、より具体的にはベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、ジフェニルメチル等のフェニルが置換した低級アルキル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル等のナフチルが置換した低級アルキル、インデニルが置換した低級アルキル、アントリルが置換した低級アルキル等が挙げられる。フェニルが置換した低級アルキル、ナフチルが置換した低級アルキル、インデニルが置換した低級アルキル及びアントリルが置換した低級アルキルにおける低級アルキレン部分は前記低級アルキルから水素原子を1つ除去した基と同義である。
【0022】
低級アルケニルオキシカルボニルにおける低級アルケニル部分としては、例えば直鎖状、分枝状もしくは環状の、またはこれらの組み合わせからなる炭素数2〜8のアルケニル、より具体的にはビニル、アリル、2-ブテニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、1-シクロヘキセニル、6-オクテニル、2,6-オクタジエニル等が挙げられる。
置換低級アルキル及び置換低級シクロアルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば同一または異なって置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリール等である)、置換もしくは非置換の低級アルカノイル(該置換低級アルカノイルにおける置換基は、例えば同一または異なって、置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリール等である)、低級アルコキシカルボニル、アラルキル、置換もしくは非置換のアリール[該置換アリールにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、アリール、アリールオキシ、アラルキル、芳香族複素環基、カルボキシ、カルバモイル、ホルミル、低級アルカノイル、アロイル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、ホルミル及びその等価体(該等価体としては1,3-ジオキソラン-2-イル等が挙げられる)等が挙げられる]、アリールオキシ、アロイル、置換もしくは非置換の芳香族複素環基[該置換芳香族複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、アリール、アリールオキシ、アラルキル、芳香族複素環基、カルボキシ、カルバモイル、ホルミル、低級アルカノイル、アロイル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、ホルミル及びその等価体(該等価体としては1,3-ジオキソラン-2-イル等が挙げられる)等が挙げられる]、トリフルオロメチル、ビニル、スチリル、フェニルエチニル、シアノ等が挙げられる。
【0023】
上記の置換低級アルキル及び置換低級シクロアルキルにおける置換基の定義において、低級シクロアルキル及びアラルキルは前記と同義であり、低級アルコキシ、低級アルカノイル及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義である。
ヒドロキシ置換低級アルキル及びハロゲノ低級アルキルにおける低級アルキレン部分は前記低級アルキルから水素原子を1つ除去したものと同義である。
【0024】
アリール、アリールオキシ及びアロイルのアリール部分としては、例えばフェニル、ナフチル、インデニル、アントリル等が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えばフリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリミジニル、トリアジニル、インドリル、キノリル、プリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリドニル等が挙げられる。
【0025】
ハロゲン及びハロゲノ低級アルキルのハロゲン部分としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を包含する。
化合物(II)、(III)、(IIa)及び(IIIa)の塩としては、例えばそれらの酸付加塩等が挙げられ、より具体的には塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0026】
次に、化合物(III)及び(IIIa)の製造法について説明する。
化合物(III)は、例えば以下の工程により製造することができる。
【0027】
【化13】

【0028】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ前記と同義である)
化合物(I)は、市販品として入手可能な4-ピペリドン誘導体から、文献[ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサイアテイ・パーキン・トランザクションズ I(Journal of the Chemical Society Perkin Transactions I)、1988年、p.2881-2885]に記載の方法またはそれに準じて得ることができる。
(工程1)
化合物(II)は、化合物(I)を、酸触媒存在下、減圧条件で、好ましくは1〜200 mmHg、より好ましくは5〜100 mmHg、さらに好ましくは10〜30 mmHgの間の圧力で、好ましくは50〜250 ℃、より好ましくは80〜200 ℃、さらに好ましくは100〜150 ℃の間の温度に加熱して反応させることにより得ることができる。
【0029】
酸触媒としては、例えばp-トルエンスルホン酸一水和物、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸、塩酸等の無機酸、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等のルイス酸等が挙げられ、中でもp-トルエンスルホン酸一水和物、カンファースルホン酸等が好ましく、化合物(I)に対して好ましくは0.01〜2当量、より好ましくは0.05〜0.2当量用いられる。
【0030】
また、化合物(II)を得る際に、化合物(II)の粗生成物を例えば塩酸、硫酸、リン酸等のブレンステッド酸で処理し、対応する塩に変換し単離することもできる。
(工程2)
化合物(III)は、工程1で得られる化合物(II)を、触媒及び水素の存在下、無溶媒もしくは溶媒中で、0〜80 ℃、好ましくは20〜80 ℃の間の温度で反応させることにより得ることができる。
【0031】
触媒としては、例えばパラジウム触媒等、より具体的にはパラジウム・カーボン、酢酸パラジウム、水酸化パラジウム等が挙げられ、好ましくはパラジウム・カーボンが用いられる。触媒は、化合物(I)に対して0.01〜1当量、好ましくは0.05〜0.1当量用いられる。溶媒としては、特に限定されないが、例えばアルコール、特にメタノール、エタノール等が好ましく用いられる。反応に用いる水素の使用量に特に制限はなく、常圧下でも加圧下でもよい。また、窒素、アルゴン等の、反応に不活性なガスが共存していてもよい。また、水素ガス以外にも、例えばギ酸、ギ酸アンモニウム等のギ酸塩、シクロヘキサジエン等を水素源として用いることもできる。
【0032】
本工程において、化合物(III)としてR4が水素原子であるアルコキシピペリジン誘導体を合成する場合、例えばR3がベンジルまたはベンジルオキシカルボニルである化合物(II)を用いると、二重結合の還元と窒素原子の脱保護とを同時に行うことができる。さらにこの反応は、終了後に濾過、濃縮を行うことで化合物(III)を容易に単離することができ、簡便である。
【0033】
化合物(IIIa)は、化合物(Ia)として市販の3-ピペリドン誘導体を用い、上記の工程1及び2と同様の方法により合成することができる。
上記各製造法における目的化合物は、有機合成化学で常用される分離精製法、例えば、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。
【0034】
化合物(II)、化合物(III)、化合物(IIa)または化合物(IIIa)の塩を取得したいとき、化合物(II)、化合物(III)、化合物(IIa)または化合物(IIIa)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(II)、化合物(III)、化合物(IIa)または化合物(IIIa)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸を加えて単離、精製すればよい。
【0035】
本発明によって得られる化合物(III)の具体例を第1表に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
化合物(III)から、例えば特開平9-40667に記載の方法に準じて、シグマ受容体作動薬として有用な下記のピロリジノン誘導体等を製造することができる。
【0038】
【化14】

【0039】
以下に、本発明の態様を実施例及び参考例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
4-メトキシピペリジン塩酸塩(化合物1)の合成
(工程1)
参考例1で得られた1-ベンジル-4,4-ジメトキシピペリジン(11.8 g)及びカンファースルホン酸(1.2 g)を酢酸エチル(12 mL)に溶解した後、濃縮した。残渣を120 ℃、20 mmHgで2時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル(30 mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過、濃縮することにより1-ベンジル-4-メトキシ-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン(9.9 g, 98%)を橙色油状物として得た。
1H-NMR (CDCl3,δ, ppm) 7.37-7.22 (m, 5H), 4.57 (t, J = 3.5 Hz, 1H), 3.59 (s, 2H), 3.51 (s, 3H), 3.04 (dt, J = 2.2, 3.5 Hz, 2H), 2.61 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 2.23-2.18 (m, 2H)
(工程2)
工程1で得られた1-ベンジル-4-メトキシ-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン(92 mg)を、エタノール(1.0 mL)に溶解し、5%パラジウム・カーボン(46 mg)を加え、水素充填バルーン装着下、室温で19時間撹拌した。セライトろ過によりパラジウム・カーボンを除去した後、有機層を濃縮した。酢酸エチル(1.0 mL)及び4 mol/L塩化水素−酢酸エチル溶液(0.12 mL)を加え、ろ過、乾燥することにより化合物1(55 mg, 80%)を白色結晶として得た。
1H-NMR (CD3OD,δ, ppm) 3.52-3.43 (m, 1H), 3.38 (s, 3H), 3.27-2.98 (m, 4H), 2.00-1.88 (m, 2H), 1.82-1.72 (m, 2H)
【実施例2】
【0041】
化合物1の合成
(工程1)
実施例1の工程1で得られた1-ベンジル-4-メトキシ-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン(9.9 g)に、酢酸エチル(40 mL)及び4 mol/L塩化水素−酢酸エチル溶液(12.2 mL)を加え、ろ過、乾燥することにより1-ベンジル-4-メトキシ-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(8.3 g, 71%)を薄黄色結晶として得た。
1H-NMR (CD3OD,δ, ppm) 7.37-7.22 (m, 5H), 4.69 (t, J = 3.5 Hz, 1H), 4.39 (s, 2H), 3.73 (dt, J = 1.7, 3.5 Hz, 2H), 3.57 (s, 3H), 3.46 (brt, J = 6.2 Hz, 2H), 2.50 (brt, J = 6.2 Hz, 2H)
(工程2)
工程1で得られた1-ベンジル-4-メトキシ-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(8.0 g)を、メタノール(40 mL)に溶解し、5%パラジウム・カーボン(7.9 g)を加え、水素充填バルーン装着下40 ℃で5時間撹拌した。室温まで冷却した後、セライトろ過によりパラジウム・カーボンを除去した。有機層を濃縮し、酢酸エチル(16 mL)を加え室温で撹拌した後、ろ過、乾燥することにより化合物1(4.7 g, 93%)を白色結晶として得た。
【実施例3】
【0042】
4−エトキシピペリジン塩酸塩(化合物2)の合成
(工程1)
参考例2で得られた1-ベンジル-4,4-ジエトキシピペリジン(0.53 g)及びカンファースルホン酸(46 mg)を酢酸エチル(2.0 mL)に溶解した後、濃縮した。この残渣を120 ℃、20 mmHgで4時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル(10 mL)を加え、炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過、濃縮した。残渣に酢酸エチル(3.0 mL)及び4 mol/L塩酸−酢酸エチル溶液(0.50 mL)を加え、ろ過、乾燥することにより1-ベンジル-4-エトキシ-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(0.34 g, 67%)を取得した。
1H-NMR (CDCl3,δ, ppm) 7.37-7.22 (m, 5H), 4.55 (t, J = 3.5 Hz, 1H), 3.70 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 3.59 (s, 2H), 3.02 (dt, J= 2.2, 3.5 Hz, 2H), 2.60 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 2.24-2.19 (m, 2H), 1.28 (t, J = 7.0 Hz, 3H)
(工程2)
工程1で得られた1-ベンジル-4-エトキシ-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(307 mg)を、エタノール(3.1 mL)に溶解し、5%パラジウムカーボン(299 mg)を加え、水素充填バルーン装着下40 ℃で6時間撹拌した。室温まで冷却した後、セライトろ過によりパラジウム・カーボンを除去した。有機層を濃縮し、酢酸エチル(3.0 mL)を加え室温で撹拌した後、ろ過、乾燥することにより化合物2(92 mg, 46%)を取得した。
1H-NMR (CD3OD,δ, ppm) 3.68-3.62 (m, 1H), 3.54 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 3.34-3.26 (m, 2H), 3.14-3.06 (m, 2H), 2.07-1.95 (m, 2H), 1.89-1.77 (m, 2H), 1.19 (t, J = 7.0 Hz, 3H)
【実施例4】
【0043】
4-(1-プロピルオキシ)ピペリジン塩酸塩(化合物3)の合成
(工程1)
実施例3の工程1と同様な方法にて、1-ベンジル-4,4-ジエトキシピペリジンの代わりに、参考例3で得られた1-ベンジル-4,4-ジ(1-プロピルオキシ)ピペリジン(0.57 g)を用いて反応を行なうことにより、1-ベンジル-4-(1-プロピルオキシ)-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(0.38 g, 73%)を取得した。
1H-NMR (CDCl3,δ, ppm) 7.37-7.22 (m, 5H), 4.55 (t, J = 3.5 Hz, 1H), 3.59 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.58 (s, 2H), 3.02 (dt, J= 2.2, 3.5 Hz, 2H), 2.60 (t, J = 5.9 Hz, 4H), 2.24-2.19 (m, 2H), 1.67 (tq, J = 6.6, 7.3 Hz, 2H), 0.94 (t, J = 7.3 Hz, 3H)
(工程2)
実施例3の工程2と同様な方法にて、1-ベンジル-4-エトキシ-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩の代わりに、工程1で得られた1-ベンジル-4-(1-プロピルオキシ)-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(320 mg)を用いて反応を行なうことにより、化合物3(122 mg, 58%)を取得した。
1H-NMR (CD3OD,δ, ppm) 3.66-3.62 (m, 1H), 3.45 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.39-3.05 (m, 4H), 2.05-1.77 (m, 4H), 1.59 (dt, J = 6.5, 7.5 Hz, 2H), 0.94 (t, J = 7.5 Hz, 3H)
【実施例5】
【0044】
4-(イソブチルオキシ)ピペリジン塩酸塩(化合物4)の合成
(工程1)
実施例3の工程1と同様な方法にて、1-ベンジル-4,4-ジエトキシピペリジンの代わりに、参考例4で得られた1-ベンジル-4,4-ジ(イソブチルオキシ)ピペリジン(1.10 g)を用いて反応を行なうことにより、1-ベンジル-4-(イソブチルオキシ)-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(0.63 g, 65%)を取得した。
1H-NMR (CDCl3,δ, ppm) 7.37-7.22 (m, 5H), 4.53 (t, J = 3.5 Hz, 1H), 3.58 (s, 2H), 3.39 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 3.01 (dt, J = 2.2, 3.5 Hz, 2H), 2.60 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 2.25-2.17 (m, 2H), 2.01-1.80 (m, 1H), 0.92 (d, J = 6.8 Hz, 6H)
(工程2)
実施例3の工程2と同様な方法にて、1-ベンジル-4-エトキシ-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩の代わりに、工程1で得られた1-ベンジル-4-(イソブチルオキシ)-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(400 mg)を用いて反応を行なうことにより、化合物4(240 mg, 87%)を取得した。
1H-NMR (CD3OD,δ, ppm) 3.71-3.64 (m, 1H), 3.41-3.12 (m, 4H), 3.31 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 2.10-1.82 (m, 5H), 0.98 (d, J = 6.6 Hz, 6H)
【0045】
参考例1:1-ベンジル-4,4-ジメトキシピペリジンの合成
1-ベンジル-4-ピペリドン(10.0 g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(11.1 g)及びオルトギ酸メチル(12.4 g)をメタノール(25 mL)に溶解し、40 ℃で1.5時間撹拌した。反応混合物に28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液(12.9 mL)を加えて1時間撹拌し、析出した塩をろ過で除去した後、酢酸エチルで洗浄した。このろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過、濃縮することにより1-ベンジル-4,4-ジメトキシピペリジン(11.8 g, 95%)を黄色油状物として得た。
1H-NMR (CDCl3,δ, ppm) 7.36-7.06 (m, 5H), 3.51 (s, 2H), 3.18 (s, 6H), 2.43 (t, J = 5.6 Hz, 4H), 1.78 (t, J = 5.6 Hz, 4H)
【0046】
参考例2:1-ベンジル-4,4-ジエトキシピペリジンの合成
1-ベンジル-4-ピペリドン(1.0 g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.1 g)及びモレキュラーシーブス4A(1.35 g)をエタノール(3.0 mL)に溶解または懸濁し、80 ℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチル 5.0 mLを加えろ過した。ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することで1-ベンジル-4,4-ジエトキシピペリジン(0.69 g, 49%)を取得した。
1H-NMR (CDCl3,δ, ppm) 7.36-7.21 (m, 5H), 3.50 (s, 2H), 3.46 (q, J = 7.1 Hz, 4H), 2.44 (brt, J= 5.4 Hz, 4H), 1.79 (t, J = 5.4 Hz, 4H), 1.18 (t, J = 7.1 Hz, 6H)
【0047】
参考例3:1-ベンジル-4,4-ジ(1-プロピルオキシ)ピペリジンの合成
参考例2と同様な方法にて、エタノールの代わりに1-プロピルアルコールを用いて反応を行った。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することで1-ベンジル-4,4-ジ(1-プロピルオキシ)ピペリジン(0.89 g, 52%)を取得した。
1H-NMR (CDCl3,δ, ppm) 7.34-7.21 (m, 5H), 3.50 (s, 2H), 3.34 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 2.44 (brt, J= 5.5 Hz, 4H), 1.80 (t, J = 5.5 Hz, 4H), 1.56 (tq, J = 6.8, 7.4 Hz, 4H), 0.93 (t, J = 7.4 Hz, 6H)
【0048】
参考例4:1-ベンジル-4,4-ジ(イソブチルオキシ)ピペリジンの合成
参考例2と同様な方法にて、エタノールの代わりにイソブチルアルコールを用いて反応を行った。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することで1-ベンジル-4,4-ジ(イソブチルオキシ)ピペリジン(1.35 g, 73%)を取得した。
1H-NMR (CDCl3,δ, ppm) 7.36-7.06 (m, 5H), 3.49 (s, 2H), 3.14 (d, J = 6.6 Hz, 4H), 2.43 (brt, J= 5.0 Hz, 4H), 1.93-1.70 (m, 6H), 0.91 (d, J = 6.6 Hz, 12H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、R1は置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の低級シクロアルキルを表し、R2は水素原子または保護基を表す)で表される化合物を酸触媒存在下、減圧条件で処理し、式(II)
【化2】

(式中、R1は前記と同義であり、R3は前記R2が水素原子であるときは水素原子を表し、前記R2が保護基であるときは水素原子または前記R2を表す)で表される化合物またはその塩を得る工程、及び該式(II)で表される化合物またはその塩を接触水素添加に付す工程を含むことを特徴とする、式(III)
【化3】

(式中、R1は前記と同義であり、R4は前記R3が水素原子であるときは水素原子を表し、前記R3が保護基であるときは水素原子または前記R3を表す)で表されるアルコキシピペリジン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項2】
式(I)で表される化合物を処理する際の温度を50〜250 ℃の間の温度とし、圧力を1〜200 mmHgの間の圧力とする請求項1記載の製造法。
【請求項3】
式(I)で表される化合物を処理する際の温度を80〜200 ℃の間の温度とし、圧力を5〜100 mmHgの間の圧力とする請求項1記載の製造法。
【請求項4】
式(I)で表される化合物を処理する際の温度を100〜150 ℃の間の温度とし、圧力を10〜50 mmHgの間の圧力とする請求項1記載の製造法。
【請求項5】
式(II)で表される化合物またはその塩を接触水素添加に付す工程においてパラジウム触媒を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の製造法。
【請求項6】
式(II)で表される化合物またはその塩を得る工程において、式(I)で表される化合物を処理したときに得られる該式(II)で表される化合物の粗生成物をブレンステッド酸で処理し、該式(II)で表される化合物の塩をいったん単離する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の製造法。
【請求項7】
R2及びR3がベンジルである請求項1〜6のいずれかに記載の製造法。
【請求項8】
R2及びR3がベンジルオキシカルボニルである請求項1〜6のいずれかに記載の製造法。
【請求項9】
式(Ia)
【化4】

(式中、R1a及びR2aはそれぞれ前記R1及びR2と同義である)で表される化合物を酸触媒存在下、減圧条件で処理し、式(IIa)
【化5】

(式中、R1aは前記と同義であり、R3aは前記R2aが水素原子であるときは水素原子を表し、前記R2aが保護基であるときは水素原子または前記R2aを表す)で表される化合物またはその塩を得る工程、及び該(IIa)で表される化合物またはその塩を接触水素添加に付す工程を含むことを特徴とする、式(IIIa)
【化6】

(式中、R1aは前記と同義であり、R4aは前記R3aが水素原子であるときは水素原子を表し、前記R3aが保護基であるときは水素原子または前記R3aを表す)で表されるアルコキシピペリジン誘導体の製造法。
【請求項10】
式(Ia)で表される化合物を処理する際の温度を50〜250 ℃の間の温度とし、圧力を1〜200 mmHgの間の圧力とする請求項9記載の製造法。
【請求項11】
式(Ia)で表される化合物を処理する際の温度を80〜200 ℃の間の温度とし、圧力を5〜100 mmHgの間の圧力とする請求項9記載の製造法。
【請求項12】
式(Ia)で表される化合物を処理する際の温度を100〜150 ℃の間の温度とし、圧力を10〜50 mmHgの間の圧力とする請求項9記載の製造法。
【請求項13】
式(IIa)で表される化合物またはその塩を接触水素添加に付す工程においてパラジウム触媒を用いる、請求項9〜12のいずれかに記載の製造法。
【請求項14】
式(IIa)で表される化合物またはその塩を得る工程において、式(Ia)で表される化合物を処理したときに得られる該式(IIa)で表される化合物の粗生成物をブレンステッド酸で処理し、該式(IIa)で表される化合物の塩をいったん単離する工程を含む、請求項9〜13のいずれかに記載の製造法。
【請求項15】
R2a及びR3aがベンジルである請求項9〜14のいずれかに記載の製造法。
【請求項16】
R2a及びR3aがベンジルオキシカルボニルである請求項9〜14のいずれかに記載の製造法。

【公開番号】特開2006−199600(P2006−199600A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10652(P2005−10652)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】