説明

アルコキシレート混合物界面活性剤

種油に由来する1つまたはそれ以上の非イオン性界面活性剤を含み、少なくとも8、10および12個の炭素原子直鎖状アルキル成分の混合物を有する界面活性剤組成物は、石油由来の界面活性剤のための代替物として多数の最終使用用途において利用が見いだされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシル化アルコールの混合物を含む界面活性剤組成物、ならびに洗剤、硬質表面洗浄剤、泡沫浮遊剤、および乳化剤中でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の傾向は、水をほとんどもしくは全く含有しない超濃縮調製物もしくは系の製造を促進する。そのような調製物もしくは濃縮物は、最終使用顧客へ供給され、次に彼らはこの濃縮物を水で希釈して最終作業溶液を生成する。濃縮物を使用する者は、水の輸送に関連する費用を削減し、包装のための材料要件を減少させるので、それが環境生態系に優しいアプローチであると考える。これらの濃縮物は、典型的には1つまたはそれ以上の非イオン性界面活性剤を含むが、それは非イオン性界面活性剤が他のすべてのタイプの界面活性剤(例えば、アニオン性、カチオン性および両性イオン性界面活性剤)と適合するからである。さらに、非イオン性界面活性剤は、硬水を使用した場合に沈降に抵抗し、優れた油や油脂の洗浄の利点を提供する。
【0003】
超濃縮物を使用する家庭用および工業用の用途には、洗濯洗剤、硬質表面洗浄剤、自動食洗機用洗剤、リンス助剤、乳化パッケージ(例えば、農業用乳化剤など)、および浮遊系(例えば紙の脱インキおよび浮遊選鉱などの用途)が含まれる。
【0004】
石けんおよび洗剤の製造業者は、固体の溶解および液体の濃度減少の両方を意味するために「希釈した」という用語を使用する。例えば、液体洗濯洗剤は、桶の水で希釈することができる。同様に、桶の水中に溶解される粉末状もしくはブロック状洗濯洗剤もまた、「希釈した」と言及される。
【0005】
界面活性剤を含有する濃縮処方物についての一般的問題は、固体もしくは液体界面活性剤が水で希釈された場合のゲルの形成である。例えば、主としてノニルフェノールの9モルのエトキシレートからなる調製物もしくは濃縮物(例えば、Tergitol(登録商標)NP−9)は、水と混合されると弾力性の緩徐溶解性ゲルを形成する。最終使用顧客(特に、一般顧客)のためには、これらの緩徐溶解性ゲルは強度の混合を必要とするので、最終使用または希釈調製物の便宜性および有効性を妨害することがある。
【0006】
界面活性剤がゲルを誘発する傾向を工業界が表示する1つの方法は、「ゲル範囲」である。典型的なゲル範囲は、各々が増加する界面活性剤濃度を有する多数のサンプルの中から、ゲルを形成するサンプルのパーセンテージを記載する。例えば、20%未満のゲル範囲は、9つのサンプル中2つ未満のサンプルがゲルを形成することを示す;9つのサンプルは、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、および90重量%の界面活性剤濃度を有しており、各重量パーセンテージ(重量%)は、界面活性剤と脱イオン水の結合重量に基づく。サンプルは、その容器を180°反転させたときに、したがって容器の開いている注ぎ口もしくは口が下を向いているときに、摂氏23度(℃)で少なくとも5秒間は流れ出ない場合にゲルを形成する。多数の用途のために、界面活性剤は、理想的にはゲル範囲を有していない。言い換えると、界面活性剤は、水と混合した場合にゲルを形成しない。
【0007】
一部の場合には、ゲルを形成する傾向は、抗ゲル化剤、例えば溶媒もしくはポリグリコールを調製物へ加えることによって克服できる。例えば、20重量%のノニルフェノールの9−モルのエトキシレート(Tergitol(登録商標)NP−9)および80重量%のプロピレングリコール(各重量%は、調製物の重量に基づく)を含有する単純な調製物は、水で希釈してもゲルを形成しない。しかし、抗ゲル化剤の添加は、調製物の全体的な複雑性およびコストを増加させる傾向があり、そのために望ましくない可能性がある。
【0008】
ゲル形成傾向に加えて、界面活性剤を選択する際に使用するために重要な物理的特性の考察は、温度が低下もしくは減少するにつれて粘度上昇を起こす傾向である。界面活性剤の使用者は、典型的には、低下した温度下での純粋界面活性剤の取扱い特性の一般指標として「流動点」もしくは「流動点温度」を選択する。彼らは、流動点を、それを下回る温度では液体界面活性剤を容器から移すのに失敗する温度であると見なす。
【0009】
多数の非イオン性界面活性剤は、約8個以上の炭素(C8+)を含有する脂肪アルコールのアルコキシレートである。アルコキシレートは、典型的には、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、またはより高級なアルコキシ基のブロックもしくはランダムポリマーである。これらのアルコキシレートは、通常は「R」として表示されるアルキル基のサイズ、および同様に「アルコキシル化度」と呼ばれるポリマー鎖内のアルコキシ基の数において様々である。アルコキシレート基の数およびサイズは、様々な溶液中での分散性および安定性、洗浄力、発泡、および洗浄性能を含む界面活性剤の性能特性に影響を及ぼす。
【0010】
近年、グローバル化学産業(global chemical industry)は、石油および天然ガス原料への依存を減少させるために、再生可能資源、例えば植物油もしくは種油を使用することへの増大する関心を表してきた。種油は、公知の技術を用いてアルコールへ変換させることができる脂肪酸を含有する。アルコールは、順に、方法、例えば「Nonionic Surfactants」, Martin, J. Schick, Editor, 1967, Marcel Dekker, Inc.、または米国特許出願公開第2005/0170991(A1)号において考察された方法によってアルコールアルコキシレートへ変換させることができる。脂肪酸アルコールは、米国特許第6,429,342号に記載されるものを含む(がそれらに限定されない)金属シアン化物触媒を使用してアルコキシル化することもできる。
【0011】
天然原料に由来するアルコールは、半直鎖状もしくは分枝状と見なすことのできる石油および天然ガス生成物に由来するアルコールより直鎖状であり、分枝の少ない炭素鎖を有する傾向がある。さらに、脂肪酸の水素化によって生成した場合は、アルコールは、各々の鎖もしくは分子中に1つだけの反応性基および偶数の炭素原子を有する第1級アルコールとなる傾向がある。アルコキシル化されると、天然原料由来アルコールは、それらの石油および天然ガス類似物とはある程度相違して挙動する可能性のある界面活性剤を生成する。例えば、概して直鎖状の構造を備えるアルコキシレートは、自己会合して水中では半直鎖状もしくは分枝状構造を備えるアルコキシレートより高度にゲルを形成する傾向がある。したがって、アルコキシル化した天然油由来のアルコールをベースとする界面活性剤は、石油および天然ガス原料由来のアルコキシル化アルコールをベースとする界面活性剤の当座の代替としては機能しないことが多い。それらは当座の代替ではないので、調製物は様々な使用のための調製物を調製する際には、天然油をベースとする界面活性剤と石油もしくは天然ガスをベースとする界面活性剤との間の相違に適合させなければならない。
【0012】
石油もしくは天然ガスに由来する直鎖アルコールの比較的短鎖のアルコキシレート、すなわちRが6〜10個の炭素原子(C6−10またはC−C10)を含有するアルコキシレートは、典型的にはゲルを形成せず、ゲル形成を回避するための用途において使用されることが多い。例えば、アルコールのC−C10混合物のアルコキシレートをベースとするTriton(登録商標)XL−80Nは、狭いゲル範囲(0%〜100%希釈の範囲の20%未満)を示し、ゲルの不在下での迅速な溶解を必要とする硬質表面用調製物において使用されることが多い。ゲル範囲を有していないその他の短鎖アルコキシレートには、Plurafac(登録商標)SLF−62(C6−10アルコキシレート混合物をベースとする)、Alfonic(登録商標)810−60(C−C10エトキシレート)、およびSurfonic(登録商標)JL−80X(C8−10アルコキシレート)が含まれる。
【0013】
直鎖アルコールのこれらの比較的短鎖のアルコキシレートは、水で希釈した場合にはたとえあっても小量のゲルしか形成しないが、それらは一部の用途では十分には機能しない。例えば、直鎖アルコールのC−C10アルコキシレートは、一部の標準的な洗濯洗浄試験では良好には機能しない。これとは逆に、石油もしくは天然ガスに由来する直鎖アルコールの比較的長鎖のアルコキシレートの調製物、例えばC11−16アルコールエトキシレートは、直鎖アルコールのC−C10アルコキシレートより優れた洗剤性能を有するが、より多くのゲルを形成する傾向がある。ゲル形成は、C12−18の種油ベースのアルコールエトキシレートにとって一層大きな問題であるが、それはこれらの材料が100%直鎖状であり、水中に溶解させるには極めて困難なゲルを形成するからである。
【0014】
一般的特性、例えば洗浄力、油除去または金属洗浄を改善させるための1つのアプローチは、2つまたはそれ以上の非イオン性界面活性剤の混合物を使用することである。しかし、特別の特性(例えば、所定の流動点、低もしくは減少させたゲル範囲、および所望の洗浄力)を備える界面活性剤を得るためのアルコキシレートの混合物、特にC10−16アルコールアルコキシレートは、超濃縮調製物中で使用した場合には公知ではないと思われる。
【0015】
米国特許第3,983,078号は、長鎖酸化アルキレン界面活性剤と短鎖酸化アルキレン共界面活性剤との混合物の使用を教示する。この混合物は、約10.8〜12.0の範囲内にある親水性−親油性平衡(HLB)を有する。これらの界面活性剤混合物は、ビルダー(トリポリリン酸ナトリウム)、ハイドロトロープ(トルエンスルホン酸ナトリウム)、増粘剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、およびその他の添加物を組み込む複合体調製物または混合物の一部であると主張される。この場合には、「長鎖」は、式:R−O−(C2yO)−(C2zO)−C2WOH、(式中、RはC8−15の範囲に及び、a=0〜11;b=0〜11;a+b=4〜11;y=2〜3;z=2〜3;w=2〜3である)を意味する;および「短鎖」は、式:R−O−(C−COH(式中、R=C8−11およびx=3.5〜5である)を含む。例示的な混合物には、60〜80重量%の「長鎖」成分」および20〜40重量%の「短鎖」成分が含まれ、このとき重量パーセンテージは混合物の重量に基づいており、計100重量%である。
【0016】
米国特許第4,965,014号は、一般式:R−O−(PO)1−2(EO)6−8(H)(式中、POは酸化プロピレンを意味し、EOは酸化エチレンを意味し、Oは酸素を表し、そしてHは水素を表す)を有する液体非イオン性界面活性剤混合物について記載する。これらの混合物は、C=0〜5%、C9−10=75〜90%、C11−12=5〜15%、C13−14=4〜10%、C15−16=0〜3%であるように選択されたRを含む成分を有する。
【0017】
国際公開第94/10278号は、4:1〜10:1の範囲内の重量比で成分Aと成分Bとの混合物(80重量%〜91重量%の成分A)をベースとする界面活性剤の混合物について記載する。成分AはR−(OC−(OC−OH(式中、Rは6〜10個の炭素原子を含むアルキル残基であり、nは0.5〜8の数であり、pは4〜10の数である)であると規定される。成分Bは、R−(OC−OH(式中、Rは10〜22個の炭素原子を含むアルキル残基であり、qは4〜10の数である)であると規定される。この例は、85%のCアルコキシレートと15%のC12−14エトキシレートとの混合物について教示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0170991(A1)号
【特許文献2】米国特許第6,429,342号
【特許文献3】米国特許第3,983,078号
【特許文献4】米国特許第4,965,014号
【特許文献5】国際公開第94/10278号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】「Nonionic Surfactants」, Martin, J. Schick, Editor, 1967, Marcel Dekker, Inc.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の1つの態様は、式(I):
R−O−(CO)(CO)−H (I)
[式中、xは0.5〜3の範囲内の実数であり、yは2〜10の範囲内の実数であり、およびRは以下のアルキル成分分布:
成分中の炭素原子 量
0重量%〜40重量%
20重量%〜40重量%
10 20重量%〜45重量%
12 10重量%〜45重量%
14 0重量%〜40重量%
16−C18 0重量%〜15重量%
(ここで、各重量%は分布中に存在する全アルキル成分の重量に基づいており、各分布についての全重量%は計100重量%である。)を備える種油ベースの直鎖状アルキル成分の混合物である]で示される少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤組成物である。
【0021】
本発明の界面活性剤組成物は、好ましくは、典型的にはゲル範囲、およびより好ましくは流動点、および一層より好ましくは水中溶解特性を備える石油由来のC11−C16分枝状もしく半分枝状のアルキルアルコキシレートの、典型的には石油由来のC−C10分枝状もしくは半分枝状のアルキルアルコキシレートの洗浄力もしくは洗浄性能を結合する。
【0022】
本発明の界面活性剤組成物は、数種の物理的もしくは性能特性のうちの少なくとも1つ、好ましくは1つを超える、および一層より好ましくは全部を示す。これらの特性は:a)水と混合した場合に20%未満のゲル範囲;b)10℃未満の流動点、c)洗濯のための洗浄力;d)Tergitol NP−9界面活性剤に類似する動的表面湿潤および繊維湿潤;e)欧州洗剤指令(European Detergent Directive)(OECD 301試験)によって規定された生分解性;f)Ross−Miles気泡試験(初期気泡>100mm、5分後の気泡<50mm)に基づく望ましい気泡特性;g)2分未満の水中溶解時間;h)界面活性剤および水の総重量に基づいて、0.05重量%の水中界面活性剤濃度での50秒未満の湿潤時間、およびi)500ppm未満の臨界的ミセル濃度である。
【0023】
本発明の界面活性剤組成物は、超濃縮物中で、特に、例えば洗濯、硬質表面洗浄、乳化、および気泡浮遊プロセスなどの用途において使用される超濃縮物中において有用性がある。詳細には、本発明の界面活性剤組成物は、洗濯洗剤、硬質表面洗浄剤、塗料、コーティング剤、浮遊処理、乳化、一般湿潤化、農薬用アジュバント、繊維洗浄、繊維加工、パルプ加工、紙加工、選鉱、ポリウレタンフォーム加工、パーソナルケア、および油田回収を含む(がそれらに限定されない)多数の用途における従来型の石油由来ノニルフェノールエトキシレート、アルコールエトキシレートもしくはアルコールアルコキシレートに取って代わることができる。
【0024】
以下に記載するように、本発明の界面活性剤組成物は、少なくとも3つの相違する長さのアルキル基を、少なくとも4つの相違する長さのアルキル基を含む好ましいサブセットとともに有するアルコキシレートを含む。本発明の界面活性剤組成物は、アルキル基内に同一数の炭素原子を有するが石油もしくは天然ガスに由来する界面活性剤組成物と比較して向上した洗浄力、溶解および取扱い特性を有する。本発明の界面活性剤組成物は、調製物総重量に基づいて2重量%〜90重量%の調製物を構成する超濃縮物調製物中において特に有用性がある。本発明の界面活性剤組成物は、そのような超濃縮物を調製する際に抗ゲル化剤、例えば溶媒もしくはポリグリコールの使用を最小限に抑える、好ましくは排除することを許容する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この用途における範囲の各出現は、他に規定しない限りその範囲を確定する両エンドポイントを含む。言い換えると、2〜10の範囲は、他に提示しない限り必ず2および10の両方を含む。
【0026】
本発明の界面活性剤組成物は、少なくとも1つ、好ましくは1つを超える、式(I):
R−O−(CO)(CO)−H (I)
によって表される非イオン性界面活性剤を含む。
【0027】
式(I)では、各CO成分は、ポリ(オキシプロピレン)もしくはPO成分と呼ぶこともでき、そして各CO成分もまたポリ(オキシエチレン)もしくはEO成分と呼ぶこともできる。さらに、xは0.5〜3の範囲内の実数であり、およびyは2〜10の範囲内の実数である。最後に、Rは、直鎖状アルキル成分の混合物、最も好ましくは種油由来アルコールのアルコキシレートである直鎖状アルキル成分の混合物を表す。一層より好ましくは、Rは、下記の表Iに示した範囲にしたがったアルキル成分分布を有する。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示したように、Rは、ちょうど3つのアルキル成分C、C10およびC12の混合物であってよい。C、C14およびC16アルキル成分の任意の1つまたはそれ以上は、本発明の界面活性剤組成物中に存在していてよいが、存在していなくてもよい。存在する場合は、C、C14およびC16アルキル成分の量は、全重量パーセンテージが計100重量%となる限りは、表1に示したそれらの各範囲のいずれかを満たすことができる。
【0030】
本発明の界面活性剤は、時に総称的にアルコキシレートと呼ばれるが、好ましくはPOブロックを形成するためのアルコールもしくはアルコールの混合物の成分のプロポキシル化(POもしくはポリ(オキシプロピレン)を加える)、その後のPOブロックに結合するが、アルコールもしくはアルコールの混合物からのアルキル成分を表すRからは間隔があいたEOブロックを形成するための成分のエトキシル化(EOもしくはポリ(オキシエチレン)を加える)を含む連続方法で調製される。アルキル成分の分布を提供するアルコールの混合物から開始し、次に混合物を連続的にプロポキシル化およびエトキシル化してもよく、または選択したアルコールを個別にプロポキシル化およびエトキシル化し、次にそのようなアルコキシレート(プロポキシル化およびエトキシル化アルコール)を上記の表1に示したような分布を提供するために十分な比率で結合してもよい。
【0031】
上記の式(I)は、一緒になって、オリゴマー分布におけるアルコキシル化度を確立する変数「x」および「y」を含む。個別に、「x」および「y」は、平均的なプロポキシル化度およびエトキシル化度の各々を表す。プロポキシル化度もしくは「x」は、好ましくは0.5〜4未満の範囲内、より好ましくは0.5〜3の範囲内、さらにより好ましくは2〜3の範囲内、および一層より好ましくは2.5〜3の範囲内に含まれる。エトキシル化度もしくは「y」は、好ましくは2〜10の範囲内、より好ましくは2〜8の範囲内、さらにより好ましくは4〜8の範囲内、および一層より好ましくは6〜8の範囲内に含まれる。
【0032】
プロポキシル化度およびエトキシル化度を選択する際の一般的ルールとして、石油由来の従来型C界面活性剤のプロポキシル化が増加するにつれて、同様に界面活性剤の洗浄力も増加するが、プロポキシル化または約3の過剰にある「x」値は典型的には生分解性の減少をもたらすという点でトレードオフが発生する。
【0033】
式(I)によって表される本発明の活性剤組成物の好ましいサブセットは、xが2.5〜3の範囲内にあり、yは2〜10の範囲内にとどまっており、そしてRは以下の表2に示したアルキル成分分布を有することを含む。
【0034】
【表2】

【0035】
言い換えると、表2に示したような界面活性剤組成物は、少なくとも4つのアルキル成分、C、C10、C12およびC14の混合物を含まなければならない。CおよびC16アルキル成分のいずれかもしくは両方は、本発明のこの好ましいサブセットの界面活性剤組成物中に存在していてよいが、存在していなくてもよい。存在する場合は、CおよびC16アルキル成分の量は、全重量パーセンテージが計100重量%となる限りは、表1に示したそれらの各範囲のいずれかを満たす可能性がある。
【0036】
以下の実施例は、本発明を例示するが、限定はしない。すべての部およびパーセンテージは、他に特に提示しない限り、重量に基づく。すべての温度は、℃で示される。本発明の実施例(Ex)はアラビア数字で指名されており、比較例(Comp Ex)は、アルファベットの大文字で指名される。
【0037】
比較例A
8−10O(PO)(EO)5.5Hの調製
等量(各1,000g(グラム))の1−オクタノール(99%)(Aldrich社、カタログ番号47232−8)(CAS番号111−87−5)および1−デカノール(デシルアルコール)Aldrich社、カタログ番号12−058−4(CAS番号112−30−1)を結合してアルコール混合物を形成する。3gのフレーク状水酸化カリウム(KOH)を1,000gのアルコール混合物へ加えて、触媒混合物を形成する。部分真空(50mmHg(mmの水銀))下で触媒混合物を45分間にわたり100℃の温度で、または触媒混合物が触媒混合物の100万分の1重量部で500ppm未満の含水量を有するまで、窒素パージにより蒸留する。
【0038】
蒸留した触媒混合物へ攪拌しながら1,210gの酸化プロピレン(PO)を加え、第1結合混合物を得、この第1結合混合物を130℃の温度へ加熱する。持続的に攪拌しながら、第1結合混合物を4時間にわたり130℃の温度で維持し、プロポキシル化が実質的に完了してプロポキシル化中間産物を産生するまで進行させる。
【0039】
持続的に攪拌して130℃の温度を維持しながら、第2結合混合物を提供するために、1,685gの酸化エチレンをプロポキシル化中間産物へ加える。1,685gの酸化エチレン(EO)の添加中、およびその後に2時間にわたり攪拌および130℃の温度を維持し、第2結合混合物の重量に基づいて10ppm未満の残留EO含量によって証明されるようにエトキシル化が実質的に完了し、そして粗生成物を産生するまで進行させる。
【0040】
粗生成物を70℃の温度へ冷却し、次に2.4gの酢酸を用いて中和すると、プロポキシル化およびエトキシル化界面活性剤が産生する。界面活性剤は、ASTM(米国材料試験協会)D2024にしたがうと、1重量%の水溶液として測定した46.3℃の最終曇り点を有する。
【0041】
比較例B
12−14O(PO)(EO)Hの調製
12およびC14アルコールの混合物を形成するために、等量(各1,000g)の1−ドデカノール(98%)(Aldrich社、44381−6)(CAS番号112−53−8)と1−テトラデカノ−ル(Aldrich社、T−960−5)(CAS番号112−72−1)を結合する。2gのフレーク状KOHを900gの混合物に加えて実施例1に記載の触媒混合物を形成する。
【0042】
最初に540gのPOを用いてプロポキシル化し、次に1,540gのEOを用いてエトキシル化し、1.5gの酢酸を用いて中和に変更し実施例1を繰り返す。結果として生じたプロポキシル化およびエトキシル化界面活性剤は、51℃の最終曇り点を有する。
【実施例1】
【0043】
事前に混合したアルコールを用いたC6−16アルコキシレートの調製
混合アルコール流を生成するために、約386のヒドロキシル数を備える500gの種油由来C8−10アルコール(約55%のn−デカノールおよび約45%のn−オクタノールからなる混合物に対応する)を、約288のヒドロキシル値を有する500gの種油由来C12−16混合物(約70%のn−ドデカノール、25%のn−テトラデカノ−ルおよび5%のn−ヘキサデカノールからなる混合物に対応する)を合わせる。混合アルコール流は、以下のようなアルキル成分の重量パーセンテージ分布を提供する:C=22.5%、C10=27.5%、C12=35%、C14=12.5およびC16=2.5%。
【0044】
3gのフレーク状KOHを混合アルコール流に加えて実施例1と同様に触媒混合物を形成する。実施例1と同様に633.57gの触媒混合物を蒸留するが、その温度での時間を45分間から10分間へ減少させる。蒸留した触媒混合物を最初に540gのPOを用いてプロポキシル化し、次に820gのEOを用いてエトキシル化に変更し実施例1を繰り返す。2.2gの酢酸を用いて粗生成物の中和を実行する。
【0045】
プロポキシル化およびエトキシル化した界面活性剤は、34.4℃の最終曇り点および(供給原料に基づいて)C8−16O(PO)2.5(EO)Hの構造を有する。
【0046】
比較例C
8−10O(PO)2.5(EO)6.5
1,035gの種油由来C8−10アルコールをプロポキシル化およびエトキシル化した界面活性剤へ転換する変更を加えて実施例1を繰り返す。アルコールは、約386(約55%のn−デカノールおよび約45%のn−オクタノールからなる混合物に対応する)のヒドロキシル数を有する。この変更は、200ppm未満の含水量を達成するために、比較例Aにおけるような50mmHgで45分間ではなく5mmHgで30分間にわたる蒸留を含む。この変更はさらに、1,050gのPO、1,590gのEO、残留もしくは未反応POが50ppm未満のレベルに達する点までプロポキシル化が進行する前のEOの添加および2.7gへの酢酸の量の増加も含む。
【0047】
プロポキシル化およびエトキシル化した界面活性剤は、51.2℃の最終曇り点および(供給原料に基づいて)C8−10O(PO)2.5(EO)6.5Hの構造を有する。
【0048】
比較例D
12−14O(PO)2.5(EO)
約288のヒドロキシル値(約70%のn−ドデカノール、25%のn−テトラデカノールおよび5%のn−ヘキサデカノールからなる混合物に対応する)を備える998gの種油由来C12−16混合物からプロポキシル化およびエトキシル化した界面活性剤を調製するための変更を加えて比較例Cを繰り返す。この変更は、蒸留時間を15分間に短縮すること、750gのPOを用いたプロポキシル化、1,815gのEOを用いたエトキシル化、および2.6gの酢酸を用いた中和を含む。
【0049】
プロポキシル化およびエトキシル化した界面活性剤は、54.5℃の最終曇り点および(供給原料に基づいて)C12−14O(PO)2.5(EO)Hの構造を有する。
【0050】
比較例E
比較例A(C8−10O(PO)(EO)5.5H)および比較例B(C12−14O(PO)(EO)H)の50:50混合物
100gの比較例Aの界面活性剤を100gの比較例Bの界面活性剤と混合することによって、2つの別個に調製した界面活性剤の単純混合物を生成する。
【実施例2】
【0051】
比較例C(C8−10O(PO)2.5(EO)5.8H)および比較例D(C12−14O(PO)2.5(EO)H)の65:35混合物
130gの比較例Cの界面活性剤および70gの比較例Dの界面活性剤混合物を用いて比較例Eを繰り返す。結果として生じる種油ベースの界面活性剤の混合物は、以下のようなR基分布を有する:C=28.09重量%、C10=34.34重量%;C12=26.30重量%;C14=9.39重量%およびC16=1.88重量%、各重量%は、総分布量に基づく。
【実施例3】
【0052】
適用試験
Draves湿潤試験、米国繊維化学技術・染色技術協会(AATCC)試験17(ASTM D2281)−脱イオン水中で界面活性剤の0.05重量%、0.10重量%および0.15重量%溶液を調製する。各溶液中に綿かせ糸(Testfabrics社製の40/2コーマピーラーヤーン)を配置し、かせ糸が崩壊するまでの経過時間を測定する。さらに、0.05重量%、0.10重量%および0.15重量%溶液試験からのデータに基づいて構築された対数時間体対数濃度プロットの線形回帰に基づいて20秒間にわたる湿潤のために必要な界面活性剤の濃度を計算する。
Ross−Miles気泡高さ試験−ASTM D1173
【0053】
表面張力および臨界ミセル濃度(CMC)測定−脱イオン水へ界面活性剤を徐々に加えながら界面活性剤水溶液の表面張力(ウィルヘミルプレートを使用するダイン/センチメートル(dyne/cm))を測定し、試験結果対界面活性剤濃度をプロットする。臨界ミセル濃度は、界面活性剤濃度の増加がもはや表面張力における変化を生じさせない点である。
【0054】
流動点試験−ASTM試験D97
溶解時間試験−50gの界面活性剤を1分間当たり500回転(rpm)の攪拌速度で作動するオーバーヘッドスターラーを用いて攪拌しながら、20℃で1リットル(L)の水中へ溶解させるために必要とした時間を測定する。
【0055】
比較例A〜E、実施例1〜2、2種の市販界面活性剤(比較例F=TERGITOL(登録商標)NP−9、Dow Chemical社から入手可能;比較例G=NEODOL(登録商標)25−7、Shell Chemicals社から入手可能)およびプロポキシル化とエトキシル化の順序を逆転させることを除いて比較例Aと同一組成を有する実験的界面活性剤(比較例H)からの界面活性剤にDraves湿潤試験、表面張力試験、臨界ミセル濃度試験およびRoss Miles気泡高さ試験(初期および最終(5分後))を受けさせ、試験結果を以下の表3にまとめる。参照の目的で、脱イオン水は73dyne/cmの表面張力を有する。さらに、比較例A〜Gおよび実施例1〜2からの界面活性剤には、流動試験、溶解時間試験およびゲル範囲試験を受けさせ、試験結果を以下の表4にまとめる。このときゲル範囲試験については、L=液体、G=ゲルおよびS=固体である。
【0056】
【表3】

【0057】
表3のデータは、比較例A(プロポキシル化後にエトキシル化)および比較例H(エトキシル化後にプロポキシル化)を比較することによって示されるように、少なくとも0.05重量%の界面活性剤濃度に対するDraves湿潤試験、CMCおよびRoss Miles気泡高さ試験の結果に関しては、アルコキシル化の順序が重要であることを証明する。表3のデータは、本発明の種油ベースの界面活性剤がDravesおよびRoss Miles気泡試験において良好に機能し、望ましいCMCを有することをさらに証明する。以下の表4に示すように、そのような界面活性剤は、さらに低ゲル範囲も有する。
【0058】
【表4】

【0059】
表4のデータは、上記に規定したR基分布を備える本発明の種油ベースの界面活性剤は、高速の溶解時間(2分間未満)および低流動点(10℃未満)と結合した、狭いゲル範囲(0%〜100%の希釈範囲の20%未満)の組み合わせを有することを証明する。C8−10画分が欠如する界面活性剤、例えば比較例Bおよび比較例Dは、許容できないほど広いゲル範囲、過度に長い溶解時間、および許容できないほど高い流動点を有する傾向がある。
【実施例4】
【0060】
界面活性剤混合物の洗剤性能特性
洗濯試験は、以下のとおりの試験条件を備えるTerg−O−Meterを用いて実施する:攪拌速度=100サイクル/分;洗浄温度=40℃;洗浄浴サイズ=1L;Testrabrics(登録商標)からのSebum/Pigment(STC EMPA 119)を用いて、ピンキング切断した辺縁を備える3インチ×3インチ(7.5cm×7.5cm)の正方形ポリエステル/綿材料見本。織物材料見本は、300ppmの界面活性剤を含む脱イオン水を用いて洗浄する。デルタ反射率は、Hunter比色計を「反射率」モードで使用して測定する。試験結果は以下の表5にまとめる。比較例A〜Eおよび実施例1〜2からの界面活性剤ならびに市販の界面活性剤(比較例Fおよび比較例G)を使用することに加えて、比較例Iは脱イオン水だけを含むコントロールを表す。
【0061】
【表5】

【0062】
表5のデータは、所定の界面活性剤が、洗濯洗浄力の観点から他の界面活性剤より良好に機能することを示す。C8−C10アルコールをベースとする界面活性剤(比較例A、比較例C)は、不良な洗剤性能(このとき「不良」は、表5に示したように、<5のデルタ反射率単位であると規定される)を示すが、(表4に示したように)優れた溶解時間、流動点、およびゲル範囲を示す。C12+アルコールをベースとする界面活性剤(比較例F、比較例G、比較例B、比較例D)は、良好な洗濯性能を示すが(このとき「良好な」は、表5に示したように>9のデルタ反射率単位であると規定される)、(表4に示したように)不良な溶解時間およびゲル範囲を示す。臨界的C8−C10およびC12−C14混合物をベースとする界面活性剤(比較例E、石油をベースとする界面活性剤および実施例2の種油ベースの界面活性剤)だけが、中等度から良好な洗濯性能(このとき中等度から良好は、>5のデルタ反射率単位であると規定される)ならびに優れた溶解時間、流動点、およびゲル範囲の両方を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
R−O−(CO)(CO)−H (I)
[式中、xは0.5〜4未満の範囲内の実数であり、yは2〜10の範囲内の実数であり、およびRは、以下のアルキル成分分布:
アルキル成分中の炭素原子 量
0重量%〜40重量%
20重量%〜40重量%
10 20重量%〜45重量%
12 10重量%〜45重量%
14 0重量%〜40重量%
16−C18 0重量%〜15重量%
(ここで、各重量%は分布中に存在する全アルキル成分の重量に基づいており、各分布についての全重量%は計100重量%である。)を備える種油ベースの直鎖状アルキル成分の混合物である。]で示される少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤組成物。
【請求項2】
xが、3以下の実数である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
xが、2〜3の範囲内の実数である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
xが、yより小さい、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
yが、xの2倍以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
xが、2.5〜3であり、およびアルキル成分が、以下の
アルキル成分中の炭素原子 量
0〜36%
22〜40%
10 27〜44%
12 14〜35%
14 5〜13%
16−C18 0〜5%
のとおりである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、15℃未満の流動点を有することによる、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、約200ppm未満の脱イオン水中の臨界ミセル濃度を有することによる、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
脱イオン水中の前記組成物の0.05重量%溶液が、約50秒間未満の湿潤時間を有する、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
脱イオン水中の前記組成物の0.1%溶液が、31dyne/cm未満の表面張力を有する、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、20%未満のゲル範囲を有する、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
各場合において洗剤もしくは洗浄剤の総重量に基づいて、1重量%〜99.1重量%の範囲内の量で請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物を含む、洗剤もしくは洗浄剤。
【請求項13】
添加物および脱イオン水をさらに含む、請求項12に記載の洗剤もしくは洗浄剤。

【公表番号】特表2010−515805(P2010−515805A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545554(P2009−545554)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/088023
【国際公開番号】WO2008/088647
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】