説明

アルコール処理されたキーウイーフルーツ

【課題】 キーウイーフルーツの酸味成分の生成を極力押さえ、出荷に合わせながら酸度を抑え、甘味感が増強されたキーウイーフルーツ及びキーウイーフルーツの処理方法を提供する
【解決手段】樹木からもいで収穫した固くて、すっぱく、糖度も低い未熟果のキーウイーフルーツに、追熟室内で30〜50重量%濃度のエチルアルコール水溶液をキーウイーフルーツ重量当たり1000分の1〜500分の1量噴霧することによって、約三日後には、酸味の増加が抑えられ、甘味感が大きく増強されたキーウイーフルーツ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルコール処理することによって甘味が増強されたキーウイーフルーツ及びキーウイーフルーツの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キーウイーフルーツは、その気持ちのいい淡緑色と寒天状で水分に富み、味と香りが上品で近年需要が伸びているフルーツの一つである。キーウイーフルーツの多くはニュージーランドから輸入され、一部愛媛県を含めて国内産品も出回っている。樹木からもいで収穫した固くて、すっぱく、糖度も低い未熟果のキーウイーフルーツは、バナナと同様、エチレン含有環境下に追熟させて甘味の増強を図っているが、元々澱粉含有量が少ないので、追熟によって、バナナのように甘味が大きく増加することは無い。また、バナナと異なり、渋み成分も含有しないので、渋みのマスキングによる甘味増強の効果も期待できない。
【0003】
バナナはフィリピン、インドネシア、台湾、中国、エクアドル等より船便にて輸入され、日本に着いた時点では未熟果(緑色)であるが、加工業者によってエチレン処理を施すことによって追熟させ、小売店に出荷される。バナナの追熟の進み具合は、温度に大きく影響されるため、出荷に合わせて追熟時の温度をコントロールする方法や(特開2000−210011)、亜酸化窒素、アルゴン、酸素、窒素、二酸化炭素および不活性ガスを組み合わせる種々の手順を用いて、果物を保存する方法が公知である(特表2006−525012)。そのような手段の目的はすべて、エチレンの合成を遅延させ、それによって果実の熟成過程の開始を遅延させることである。
【0004】
一方、キーウイーフルーツは、元々酸度が比較的高く、そのすっぱさが魅力でもあるが、糖度はエチレン追熟によっても、自然熟成と大きくは変わらないのが難点である。そして、渋み成分も含有しないので、渋み成分を含有する果物の追熟手段として一般的な温熱処理もキーウイーフルーツには効果は無い。
【特許文献1】特開2000−210011公報
【特許文献2】特表2006−525012公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記の如き問題点に鑑みてなされたものであり、キーウイーフルーツの酸味成分の生成を極力押さえつつ、出荷に合わせながら甘味感の増強を高進する、甘味が増強されたキーウイーフルーツ及びキーウイーフルーツの処理方法を提供するところに在る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、樹木からもいで収穫した固くて、すっぱく、糖度も低い未熟果のキーウイーフルーツに、追熟室内でエチルアルコール水溶液を噴霧することによって、約三日後には、酸味が抑えられ、甘味が大きく増強された食感のあるキーウイーフルーツが得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、キーウイーフルーツの酸度の生成が抑えられ、甘味度が大幅に向上するが、極めて容易且つ短時間でこれらの効果が上がり、従来酸味が強く、甘味感において劣るとされていた国内産のキーウイーフルーツでも、その酸度の増加を抑制しつつ、甘味度の強い製品が得られるという大きな効果が有る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施することによって甘味が増強され、酸味成分の生成が抑制されたキーウイーフルーツを調製するに当たっては、木からもいで収穫された、固くて、酸度が高く、糖度も低い未熟果のキーウイーフルーツに、追熟室内でエチルアルコール水溶液を直接噴霧するのが好ましい。このエチルアルコール水溶液の濃度は、20〜50重量%が好ましく、30〜40重量%のものが一層好ましい。
【0009】
使用するエチルアルコール水溶液の量は、30〜50重量%濃度のエチルアルコール水溶液を処理するキーウイーフルーツ重量あたり、2000分の1乃至100分の1、より好ましくは1000分の1乃至500分の1倍量が適当である。追熟室の温度は摂氏15度乃至25度、より好ましくは18度乃至20度が適当である。
エチルアルコール水溶液を噴霧されたキーウイーフルーツは、処理後5日程度で食べごろとなるので、処理終了後3日で出荷するようスケジュール管理することが好ましい。
【実施例】
【0010】
実施例1
追熟室にて室温で、未熟キーウイーフルーツ(平均重量100g/個)各10個ずつに33重量%濃度のエチルアルコール水溶液を等重量当たり1000分の1等重量を噴霧器を用いて噴霧してそのまま放置した。処理5日後に常法により、酸度及び糖度を測定した。結果を表1に示す。表1に示したごとく、エチルアルコール処理したキーウイーフルーツは明らかに、その酸度は低下していた。
【0011】
【表1】

【0012】
実施例2
平成19年11月23日に、神戸市西区の団地自治会集会所にて無作為に集めた団地内居住の主婦26名のパネルに実施例1と同様にして処理、無処理のキーウイーフルーツを試食させ、食味を聞いた。結果を表2に示した。表2に示した如く、有意にエチルアルコール処理したキーウイーフルーツの酸味度低下及び甘味感向上の返答が多かった。
【0013】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固くて、酸度が高く、糖度も低い未熟果のキーウイーフルーツに、追熟室内でエチルアルコール水溶液を噴霧することを特徴とする甘味が増強されたキーウイーフルーツ。
【請求項2】
エチルアルコール水溶液の濃度が30〜50重量%である、請求項1に記載の甘味が増強されたキーウイーフルーツ。
【請求項3】
30〜50重量%濃度のエチルアルコール水溶液をキーウイーフルーツの重量の1000分の1ないし500分の1倍量噴霧することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の甘味が増強されたキーウイーフルーツ。

【公開番号】特開2009−148166(P2009−148166A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326252(P2007−326252)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(399098750)伊藤忠フレッシュ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】