説明

アルコール化合物の製造方法

【課題】水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素化合物を用い、メタノールの存在下に反応を行うことにより、容易に還元反応が進行し、環状炭化水素を有するアルコール化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】取扱いが容易な試剤を用いて、式(1)


(式中、A1は架橋されていてもよい環状炭化水素基を、A2およびA3は、単結合等を表わす。Rは低級アルキル基を表わし、Yは水素原子または−CO2Rで示される基を表わす。)で示されるエステル化合物から式(2)


(式中、A1、A2およびA3は上記と同一の意味を表わし、Qは、Yが水素原子のときに水素原子を、Yが−CO2Rで示される基のときにヒドロキシメチル基を表わす。)で示されるアルコール化合物をより工業的に有利に製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−4−シクロヘキセン等の架橋されていてもよい環状炭化水素基を有するアルコール化合物は、例えば医薬合成中間体として有用であり(例えば特許文献1参照。)、その製造方法としては、式(1)

(式中、A1は架橋されていてもよい環状炭化水素基を表わし、A2およびA3は、それぞれ同一または相異なって、単結合または炭素数1〜2のアルキレン基を表わす。Rは低級アルキル基を表わし、Yは水素原子または−CO2Rで示される基を表わす。)
で示されるエステル化合物と水素化リチウムアルミニウムと反応させる方法が知られている(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。しかしながら、水素化リチウムアルミニウムは取扱いに注意を要する禁水性の試薬であるため、反応系内の水分管理を厳密に行う必要があり、また、反応後の後処理において副生するアルミニウム化合物の除去操作も煩雑であり、必ずしも工業的に十分満足し得る製造方法とは言えなかった。
【0003】
一方、水素化リチウムアルミニウムに比べて取扱いの容易な水素化ホウ素ナトリウムを、塩化アルミニウムとともに用いる方法も知られている(例えば非特許文献2参照。)が、反応後の後処理において、除去操作が煩雑なアルミニウム化合物を副生するため、必ずしも工業的に十分満足し得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2800953号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,75,4780(1953)
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,78,2582(1956)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況のもと、本発明者は、取扱いが容易な試剤を用いて、前記式(1)で示されるエステル化合物からアルコール化合物をより工業的に有利に製造する方法を開発すべく検討したところ、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素化合物を用い、メタノールの存在下に反応を行うことにより、容易に還元反応が進行し、目的とするアルコール化合物を得ることができることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、式(1)

(式中、A1は架橋されていてもよい環状炭化水素基を表わし、A2およびA3は、それぞれ同一または相異なって、単結合または炭素数1〜2のアルキレン基を表わす。Rは低級アルキル基を表わし、Yは水素原子または−CO2Rで示される基を表わす。)
で示されるエステル化合物と水素化ホウ素化合物とを、有機溶媒中、メタノールの存在下に反応させることを特徴とする式(2)

(式中、A1、A2およびA3は上記と同一の意味を表わし、Qは、Yが水素原子のときに水素原子を、Yが−CO2Rで示される基のときにヒドロキシメチル基を表わす。)
で示されるアルコール化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、取扱いが容易な水素化ホウ素化合物を用いて、簡便にアルコール化合物を製造することができ、また反応後の後処理も容易であるため、工業的により有利な製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
式(1)

で示されるエステル化合物(以下、エステル化合物(1)と略記する。)の式中、A1は架橋されていてもよい環状炭化水素基を表わし、A2およびA3は、それぞれ同一または相異なって、単結合または炭素数1〜2のアルキレン基を表わす。Rは低級アルキル基を表わし、Yは水素原子または−CO2Rで示される基を表わす。
【0010】
架橋されていてもよい環状炭化水素基としては、例えばシクロプロパン−1,1−ジイル基、シクロプロパン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,1−ジイル基、シクロブタン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,3−ジイル基、シクロペンタン−1,1−ジイル基、シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロヘプタン−1,1−ジイル基、シクロへプタン−1,2−ジイル基、シクロへプタン−1,3−ジイル基、3−シクロペンテン−1,2−ジイル基、4−シクロヘキセン−1,2−ジイル基、4−シクロヘプテン−1,2−ジイル基等の二価の飽和もしくは不飽和の三〜七員環の環状炭化水素基、例えばビシクロ[1.1.1]ペンタン−2,2−ジイル基、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−2,4−ジイル基、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン−2,3−ジイル基、ビシクロ[2.1.1]ヘキサ−2−エン−5,5−ジイル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジイル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5,6−ジイル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3−ジイル基、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン−5,6−ジイル基、ビシクロ[4.1.1]オクタン−3,4−ジイル基、ビシクロ[4.1.1]オクタン−2,5−ジイル基、ビシクロ[4.1.1]オクタン−7,7−ジイル基、ビシクロ[4.1.1]オクタ−2−エン−7,7−ジイル基、ビシクロ[4.1.1]オクタ−3−エン−7,7−ジイル基、ビシクロ[3.2.1]オクタン−3,3−ジイル基、ビシクロ[3.2.1]オクタン−6,7−ジイル基、ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−エン−6,7−ジイル基、ビシクロ[3.2.1]オクタ−6−エン−2,3−ジイル基、ビシクロ[3.2.2]ノナン−3,3−ジイル基、ビシクロ[3.2.2]ノナン−2,4−ジイル基、ビシクロ[3.2.2]ノナン−6,7−ジイル基、ビシクロ[3.2.2]ノナ−2−エン−6,7−ジイル基、ビシクロ[3.2.2]ノナ−6−エン−2,3−ジイル基、5−オキサビシクロ[1.1.1]ペンタン−2,2−ジイル基、6−オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン−2,3−ジイル基、6−オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサ−2−エン−5,5−ジイル基、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジイル基、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5,6−ジイル基、8−オキサビシクロ[4.1.1]オクタン−3,4−ジイル基、8−オキサビシクロ[4.1.1]オクタン−2,5−ジイル基、8−オキサビシクロ[4.1.1]オクタン−7,7−ジイル基、8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−3,3−ジイル基、8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−6,7−ジイル基、8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタ−6−エン−2,3−ジイル基等の酸素原子、炭素数1〜3の低級アルキレン基等で架橋された二価の環状炭化水素基等が挙げられる。
【0011】
炭素数1〜2のアルキレン基としては、例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−エチレン基が挙げられる。低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。−CO2Rで示される基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0012】
かかるエステル化合物(1)としては、例えばシクロプロパン−1−カルボン酸メチル、シクロプロパン−1−カルボン酸エチル、シクロプロパン−1−カルボン酸イソプロピル、シクロプロパン−1−カルボン酸n−ブチル、シクロプロパン−1−カルボン酸n−ヘキシル、1−(メトキシカルボニルメチル)シクロプロパン、1−(1−メトキシカルボニルエチル)シクロプロパン、1−(2−メトキシカルボニルエチル)シクロプロパン、シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸メチル、シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸エチル、シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸イソプロピル、シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸n−ブチル、シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸n−ヘキシル、1,1−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロプロパン、シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸メチル、シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸エチル、シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸イソプロピル、シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸n−ブチル、シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸n−ヘキシル、1,2−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロプロパン、シクロブタン−1−カルボン酸メチル、1−(メトキシカルボニルメチル)シクロブタン、シクロブタン−1,1−ジカルボン酸メチル、シクロブタン−1,1−ジカルボン酸エチル、シクロブタン−1,2−ジカルボン酸メチル、1,2−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロブタン、シクロブタン−1,3−ジカルボン酸メチル、1,3−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロブタン、
【0013】
シクロペンタン−1−カルボン酸メチル、1−(メトキシカルボニルメチル)シクロペンタン、シクロペンタン−1,1−ジカルボン酸メチル、シクロペンタン−1,1−ジカルボン酸エチル、1,1−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロペンタン、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸メチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸エチル、1,2−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロペンタン、シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸メチル、シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸エチル、1,3−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロペンタン、シクロヘキサン−1−カルボン酸メチル、1−(メトキシカルボニルメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサン−1,1−ジカルボン酸メチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸メチル、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸メチル、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸メチル、1,2−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロヘキサン、シクロへプタン−1−カルボン酸メチル、1−(メトキシカルボニルメチル)シクロへプタン、シクロヘプタン−1,1−ジカルボン酸メチル、シクロへプタン−1,2−ジカルボン酸メチル、1,2−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロへプタン、シクロへプタン−1,3−ジカルボン酸メチル、1,3−ビス(メトキシカルボニルメチル)シクロへプタン、3−シクロペンテン−1−カルボン酸メチル、2−シクロペンテン−1−カルボン酸メチル、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸メチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸メチル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸メチル、
【0014】
ビシクロ[1.1.1]ペンタン−2,2−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−2,4−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン−2,3−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキサ−2−エン−5,5−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5,6−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン−5,6−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[4.1.1]オクタン−3,4−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[4.1.1]オクタン−2,5−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[4.1.1]オクタン−7,7−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[4.1.1]オクタ−2−エン−7,7−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[4.1.1]オクタ−3−エン−7,7−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[3.2.1]オクタン−3,3−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[3.2.1]オクタン−6,7−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−エン−6,7−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[3.2.1]オクタ−6−エン−2,3−ジカルボン酸メチル、
【0015】
ビシクロ[3.2.2]ノナン−3,3−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[3.2.2]ノナン−2,4−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[3.2.2]ノナン−6,7−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[3.2.2]ノナ−2−エン−6,7−ジカルボン酸メチル、ビシクロ[3.2.2]ノナ−6−エン−2,3−ジカルボン酸メチル、5−オキサビシクロ[1.1.1]ペンタン−2,2−ジカルボン酸メチル、6−オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン−2,3−ジカルボン酸メチル、6−オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサ−2−エン−5,5−ジカルボン酸メチル、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸メチル、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5,6−ジカルボン酸メチル、8−オキサビシクロ[4.1.1]オクタン−3,4−ジカルボン酸メチル、8−オキサビシクロ[4.1.1]オクタン−2,5−ジカルボン酸メチル、8−オキサビシクロ[4.1.1]オクタン−7,7−ジカルボン酸メチル、8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−3,3−ジカルボン酸メチル、8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−6,7−ジカルボン酸メチル、8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタ−6−エン−2,3−ジカルボン酸メチル等が挙げられる。
【0016】
かかるエステル化合物(1)の中には、不斉炭素を有し、光学異性体が存在する化合物も存在するが、光学異性体が存在するエステル化合物の場合、いずれかの光学異性体単独を用いてもよいし、光学異性体の任意の混合物を用いてもよい。
【0017】
水素化ホウ素化合物としては、例えば水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素アルカリ金属化合物、例えば水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素マグネシウム等の水素化ホウ素アルカリ土類金属化合物、例えば水素化ホウ素亜鉛等が挙げられ、水素化ホウ素アルカリ金属化合物が好ましく、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウムがより好ましい。
【0018】
かかる水素化ホウ素化合物は、通常市販されているものを用いてもよいし、例えばホウ酸エステルと水素化ナトリウムとの反応等の公知の方法に準じて製造したものを用いてもよい。
【0019】
かかる水素化ホウ素化合物の使用量は、Yが水素原子であるエステル化合物(1)の場合には、当該エステル化合物(1)に対して、通常0.5〜10モル倍、好ましくは0.5〜5モル倍、より好ましくは0.5〜2モル倍である。Yが−CO2Rで示される基であるエステル化合物(1)の場合は、当該エステル化合物(1)に対して、通常1〜20モル倍、好ましくは1〜10モル倍、より好ましくは1〜4モル倍である。
【0020】
有機溶媒としては、反応に不活性なものであればよく、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えばイソプロパノール、tert−ブタノール等の炭素数3以上のアルコール系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられ、その使用量は、エステル化合物(1)に対して、通常0.5〜50重量倍、好ましくは1〜20重量倍、より好ましくは1〜10重量倍である。かかる有機溶媒は、予めエステル化合物(1)、水素化ホウ素化合物およびメタノールから選ばれる少なくとも一つと混合しておいてもよい。
【0021】
エステル化合物(1)と水素化ホウ素化合物との反応は、メタノールの存在下に実施され、メタノールの使用量は、水素化ホウ素化合物に対して、通常1〜10モル倍、好ましくは1〜5モル倍、より好ましくは1.5〜3モル倍である。
【0022】
本反応は、例えば有機溶媒とエステル化合物(1)と水素化ホウ素化合物との混合物中に、メタノールを加える方法、有機溶媒と水素化ホウ素化合物との混合物中に、エステル化合物(1)とメタノールを別々に、もしくは混合して加える方法、エステル化合物(1)と有機溶媒とメタノールとの混合物中に、水素化ホウ素化合物を加える方法等により実施される。メタノールを加える際は、連続的もしくは間欠的に滴下することが好ましい。
【0023】
反応温度は、通常−10〜150℃の範囲、好ましくは0〜100℃の範囲、より好ましくは0〜80℃の範囲である。
【0024】
反応終了後、例えば得られた反応液と、例えば塩酸、硫酸等の鉱酸水溶液を混合した後、必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、式(2)

(式中、A1、A2およびA3は上記と同一の意味を表わし、Qは、Yが水素原子のときに水素原子を、Yが−CO2Rで示される基のときにヒドロキシメチル基を表わす。)
で示されるアルコール化合物(以下、アルコール化合物(2)と略記する。)を取り出すことができる。取り出したアルコール化合物(2)は、例えば再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段によりさらに精製してもよい。
【0025】
かくして得られるアルコール化合物(2)としては、例えば1−(ヒドロキシメチル)シクロプロパン、1−(2−ヒドロキシエチル)シクロプロパン、1−(3−ヒドロキシプロピル)シクロプロパン、1−(1−ヒドロキシ−2−プロピル)シクロプロパン、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロプロパン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロプロパン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロプロパン、1−(ヒドロキシメチル)シクロブタン、1−(2−ヒドロキシエチル)シクロブタン、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブタン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブタン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロブタン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブタン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロブタン、1−(ヒドロキシメチル)シクロペンタン、1−(2−ヒドロキシエチル)シクロペンタン、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロペンタン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロペンタン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロペンタン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロペンタン、
【0026】
1−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1−(ヒドロキシメチル)シクロへプタン、1−(2−ヒドロキシエチル)シクロへプタン、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘプタン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロへプタン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロへプタン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロへプタン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロへプタン、1−(ヒドロキシメチル)−3−シクロペンテン、1−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−シクロペンテン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−4−シクロヘキセン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−4−シクロヘプテン、
【0027】
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[1.1.1]ペンタン、2,4−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[1.1.1]ペンタン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、5,5−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.1.1]ヘキサ−2−エン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5,6−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.2]オクタン、5,6−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン、3,4−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[4.1.1]オクタン、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[4.1.1]オクタン、7,7−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[4.1.1]オクタン、7,7−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[4.1.1]オクタ−2−エン、7,7−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[4.1.1]オクタ−3−エン、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[3.2.1]オクタン、6,7−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[3.2.1]オクタン、6,7−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−エン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[3.2.1]オクタ−6−エン、
【0028】
3,3−ビス(ヒドロキシメチル)ビシクロ[3.2.2]ノナン、2,4−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[3.2.2]ノナン、6,7−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[3.2.2]ノナン、6,7−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[3.2.2]ノナ−2−エン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[3.2.2]ノナ−6−エン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−5−オキサビシクロ[1.1.1]ペンタン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−6−オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン、5,5−ビス(ヒドロキシメチル)−6−オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサ−2−エン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5,6−ビス(ヒドロキシメチル)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、3,4−ビス(ヒドロキシメチル)−8−オキサビシクロ[4.1.1]オクタン、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−8−オキサビシクロ[4.1.1]オクタン、7,7−ビス(ヒドロキシメチル)−8−オキサビシクロ[4.1.1]オクタン、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)−8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン、6,7−ビス(ヒドロキシメチル)−8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタ−6−エン等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0030】
実施例1
(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル14.9g、テトラヒドロフラン45gおよび水素化ホウ素ナトリウム5.6gを混合後、内温65℃に昇温した。同温度で、メタノール7.1gを1時間かけて滴下した後、内温67℃で2時間攪拌、反応させた。内温30℃に冷却した後、10重量%塩酸水溶液54.2gを滴下した。
27重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和処理した後、濃縮処理した。濃縮残渣に、メチルイソブチルケトン150gを加えて抽出処理し、得られた有機層を一部濃縮処理し、(1R,2R)−1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン10.4gを含むメチルイソブチルケトン溶液31.7gを得た。収率97%。
【0031】
実施例2
trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル5.1g、イソプロパノール25.3gおよび水素化ホウ素ナトリウム3.79gを混合後、内温35℃に調整した。同温度で、メタノール9.6gを2時間かけて滴下した後、同温度で5時間攪拌、反応させた。10重量%塩酸水溶液32.7gを滴下した後、2N水酸化ナトリウム水溶液1.7gを加え、濃縮処理した。濃縮残渣をメチルイソブチルケトン100gで2回抽出処理し、得られた有機層を合一した後、濃縮処理し、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの白色固体3.5gを得た。含量:98.9重量%、収率:94%。
【0032】
実施例3
trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル5.0g、tert−ブチルメチルエーテル25.3gおよび水素化ホウ素ナトリウム3.78gを混合後、内温35℃に調整した。同温度で、メタノール9.6gを2時間かけて滴下した後、同温度で4時間攪拌、反応させた。10重量%塩酸水溶液32.4gを滴下した後、2N水酸化ナトリウム水溶液6.5gを加え、濃縮処理した。濃縮残渣を酢酸エチル100gで2回抽出処理し、得られた有機層を合一した後、濃縮処理し、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの白色固体3.2gを得た。含量:94.7重量%、収率:84%。
【0033】
実施例4
trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル5.0g、tert−ブタノール25.2gおよび水素化ホウ素ナトリウム3.81gを混合後、内温35℃に調整した。同温度で、メタノール9.6gを2時間かけて滴下した後、同温度で3時間攪拌、反応させた。10重量%塩酸水溶液35.4gを滴下した後、水30.6gを加え、濃縮処理した。濃縮残渣をメチルイソブチルケトン30gで2回抽出処理し、得られた有機層を合一した後、濃縮処理し、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの白色固体3.1gを得た。含量:88.4重量%、収率:76%。
【0034】
実施例5
trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル5.0g、テトラヒドロフラン27gおよび水素化ホウ素ナトリウム3.3gを混合後、内温35℃に調整した。同温度で、メタノール8.4gを2時間かけて滴下した後、同温度で2時間、さらに内温50℃で1時間攪拌、反応させた。室温まで冷却した後、10重量%塩酸水溶液31.1gを滴下し、濃縮処理した。濃縮残渣に水50gを加え、メチルイソブチルケトン30gで2回抽出処理し、得られた有機層を合一した後、濃縮処理し、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの白色固体3.0gを得た。含量:68.9重量%、収率:65%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、Aは架橋されていてもよい環状炭化水素基を表わし、AおよびAは、それぞれ同一または相異なって、単結合または炭素数1〜2のアルキレン基を表わす。Rは低級アルキル基を表わし、Yは水素原子または−CORで示される基を表わす。)
で示されるエステル化合物と水素化ホウ素化合物とを、有機溶媒中、メタノールの存在下に反応させることを特徴とする式(2)

(式中、A、AおよびAは上記と同一の意味を表わし、Qは、Yが水素原子のときに水素原子を、Yが−CORで示される基のときにヒドロキシメチル基を表わす。)
で示されるアルコール化合物の製造方法。
【請求項2】
水素化ホウ素化合物が、水素化ホウ素アルカリ金属化合物または水素化ホウ素アルカリ土類金属化合物である請求項1に記載のアルコール化合物の製造方法。
【請求項3】
水素化ホウ素アルカリ金属化合物が、水素化ホウ素ナトリウムである請求項2に記載のアルコール化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−77152(P2010−77152A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274312(P2009−274312)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【分割の表示】特願2004−86382(P2004−86382)の分割
【原出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】