説明

アルコール濃縮方法

【課題】希薄なアルコール水溶液から低エネルギーコストでアルコールを回収・濃縮する方法を提供する。
【解決手段】炭素数が8〜28の脂肪酸を用いてアルコール含有水溶液中のアルコールを疎水性エステル化合物に変換し、得られた疎水性エステル化合物を含む有機層をアルコールが溶解していた水層から分離・回収後、加水分解することにより、高濃度のアルコール水溶液を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール含有水溶液からのアルコール回収・濃縮方法およびプロセスに関する。更に詳しくは、アルコールが溶解している水溶液中のアルコールを炭素数が8〜28の脂肪酸と反応させて、疎水性エステル化合物に変換し、前記疎水性エステル化合物を含む有機層を水層から分離した後、当該疎水性エステル化合物を加水分解することによりアルコールを得ることを特徴とするアルコールの回収・濃縮方法および当該方法を適用したプロセスに関する。

【背景技術】
【0002】
アルコール含有水溶液から、アルコールを濃縮する方法としては、一般的には蒸留による濃縮方法が挙げられる。しかし、アルコール含有水溶液中のアルコールが低濃度である場合は、蒸留によるアルコール濃縮を行うためには多くのエネルギーを要してしまい、膨大なコストがかかってしまう。(特許文献1)
近年、バイオエタノールの普及に伴い、アルコール含有水溶液から、アルコールを低コストで回収・濃縮する方法について検討が行われている。
【0003】
バイオエタノールは、一般に穀物などを原料として発酵によりエタノールを得る方法であるが、本法によって得られるアルコール濃度は約10質量%と低濃度である。この粗エタノール水溶液のエタノールを濃縮し、純度を向上させて製品として利用するためには、数段の蒸留操作が必要となり、精製工程に多くのエネルギーを必要とする。そのようにしても得られるアルコールの濃度は約70〜80質量%である。さらに濃縮するため、その後の工程として、抽出工程を採用する場合、抽出剤の量も多くなるという欠点があり、さらに抽出剤の循環、調整に多大のエネルギーを必要とする。
【0004】
このような状況下、低エネルギーコストでアルコールを濃縮する試みとして、超臨界状態を利用したアルコール濃縮方法や、膜分離法が提案されている。しかしながら、これらの方法でも超臨界抽出装置のコストや分離膜の耐久性に課題があり、改善が望まれていた。(特許文献2、3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−56201号公報
【特許文献2】特開平4−193304号公報
【特許文献3】特開平7−777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エネルギーコストを低減させたアルコール含有水溶液からのアルコール回収・濃縮方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、炭素数が8〜28の脂肪酸を用いてアルコール含有水溶液中のアルコールを疎水性エステル化合物に変換し、得られた疎水性エステル化合物を含む有機層をアルコールが溶解していた水層から分離・回収後、加水分解することにより、アルコールを効率的に濃縮する方法を見出した。すなわち、本発明は、以下の[1]から[7]に関する。
【0008】
[1] アルコール含有水溶液中のアルコールを炭素数が8〜28の脂肪酸と反応させて、疎水性エステル化合物に変換し、前記疎水性エステル化合物を含む有機層を水層から分離した後、当該疎水性エステル化合物を加水分解することによりアルコールを得ることを特徴とするアルコール濃縮方法。
【0009】
[2] アルコールが、炭素数1〜4のアルコールである[1]に記載のアルコール濃縮方法。
[3] アルコールがメタノールまたはエタノールである[1]または[2]に記載のアルコール濃縮方法。
[4] 炭素数8〜28の脂肪酸が、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸である[1]〜[3]に記載のアルコール濃縮方法。
[5] アルコール含有水溶液中のアルコール濃度が、25質量%以下である[1]〜[4]のいずれかに記載のアルコール濃縮収方法。
[6] 前記疎水性エステル化合物と未反応の炭素数が8〜28の脂肪酸を含む有機層を水層と分離した後、有機層中の、炭素数が8〜28の脂肪酸を分離、回収し、繰り返しアルコールとの反応に使用することを特徴とする請求項[1]〜[5]のいずれかに記載のアルコール濃縮方法。
[7] 少なくとも、アルコール含有水溶液中のアルコールを炭素数が8〜28の脂肪酸との反応によって疎水性エステル化合物に変換する工程、前記疎水性エステル化合物を含む有機層を水層から分離する工程、分離された有機層中の疎水性エステル化合物を加水分解することによりアルコールを得る工程を有するアルコール濃縮プロセス。

【発明の効果】
【0010】
本発明のアルコール濃縮方法によれば、アルコール濃度が10質量%前後の低濃度水溶液からエネルギーコストの少ない条件でアルコールの濃縮ができる。その結果、これまで回収が出来ずに活性汚泥による排水処理を行うことにより発生していた余剰汚泥も削減でき、産業廃棄物削減により環境への負荷を小さくすることが可能となる。

【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について以下の実施例および比較例を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その実施の範囲内において様々な応用が可能である。
【0012】
本発明では、アルコールが溶解している水溶液中のアルコールを炭素数が8〜28の脂肪酸と反応させて、疎水性エステル化合物に変換し、前記疎水性エステル化合物を含む有機層を水層から分離した後、当該疎水性エステル化合物を加水分解することによりアルコールを回収・濃縮する。

【0013】
[アルコール]
本発明において用いるアルコール含有水溶液に溶解しているアルコールは、炭素数が8〜28の脂肪酸と反応して疎水性エステル化合物となるアルコールであれば特に制限はない。一級アルコール、二級アルコール、三級アルコール、多価アルコールが挙げられる。ここで、これらアルコールは他の官能基を有していても良い。本発明で濃縮する対象となるアルコールは水への溶解度が比較的大きいアルコールが有効である。したがって、炭素数1〜4のアルコールに対してより効果的である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどが挙げられる。

【0014】
[脂肪酸]
本発明において用いる炭素数が8〜28の脂肪酸に、特に制限はない。脂肪酸の融点は好ましくは室温(20℃)〜100℃である。融点が100℃より高いと反応の際に融点以上に加熱をする必要があるため、エネルギーコストの観点で好ましくない。脂肪酸の20℃における水への溶解度は、好ましくは0.5質量%以下である。また、脂肪酸の炭素数は好ましくは9〜22、より好ましくは10〜18である。脂肪酸の20℃における水への溶解度が0.5質量%を超えると、水中への脂肪酸の分配が増え、分離の観点か好ましくない。また、当該脂肪酸は直鎖の飽和脂肪酸であることが、反応性の面で好ましい。当該脂肪酸は単官能でも多官能でもどちらでも良い。
【0015】
炭素数が8〜28の脂肪酸の具体例としてオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、オクタデカントリエン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラドコサン酸、ヘキサドコサン酸、オクタドコサン酸などが挙げられる。それらを単独であるいは組み合わせて使用することも可能である。
なかでも脂肪酸の融点や反応性の観点からオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸が好ましい。
【0016】
当該脂肪酸は回収および/または濃縮の対象となるアルコールとの反応性や、生成した疎水性エステル化合物の水への溶解度が十分に小さくなり、当該疎水性エステル化合物からなる有機層が、アルコールが溶解していた水層と分離するような物質を選択する必要がある。
従って、アルコールがメタノールの場合には特にデカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸が好ましい。エタノールの場合は特にデカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸が好ましい。プロパノールの場合は特にデカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸が好ましい。
【0017】
当該脂肪酸の使用量は、特に制限はない。使用するアルコールに対して、モル比で0.02〜100、好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.2〜10である。アルコールに対する脂肪酸のモル比が0.02より小さいとエタノールに対して、脂肪酸の量が十分でないため十分な反応速度が得られず好ましくない。また、アルコールに対する脂肪酸のモル比が100より大きいと、未反応の脂肪酸の分離にかかるコストが高くなり好ましくない。

【0018】
[疎水性エステル化合物]
疎水性エステル化合物とは、水への溶解度が低く、疎水性エステル化合物を含む有機層が、アルコールが溶解していた水層と二層分離する物質のことである。具体的には20℃での水への溶解度が0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下となるエステル化合物である。

【0019】
[アルコールと炭素数が8〜28の脂肪酸との反応]
本発明では、アルコール含有水溶液のアルコールと炭素数が8〜28の脂肪酸との反応(以下、「エステル化反応」ということがある。)により、アルコールを疎水性エステル化合物に変換する。アルコールは水に分配しているが、炭素数が8〜28の脂肪酸は水への溶解度が低いため、反応は二層不均一系で行われる。ただし、脂肪酸の種類によっては一層の均一系で行われることもある。
【0020】
エステル化反応の際には触媒を用いてもよい。本発明において用いる触媒は、アルコールと炭素数が8〜28の脂肪酸が反応するためのものであれば、特に制限はない。例えば、p−ドデシルベンゼンスルホン酸のような有機酸、硫酸やリン酸のような無機酸を用いる均一系触媒、スルホン酸型イオン交換樹脂、シリカゲル、セライト、アルミナ、ジルコニアなどの担体にリン酸、硫酸などを担持させた担持酸などを用いる不均一系触媒のいずれも使用できる。
【0021】
本反応に使用される触媒としては、特に界面活性剤型構造を有する触媒が好ましい。界面活性剤型構造を有する触媒とは、極性の小さい溶媒に対して親和性のある疎水基と、水などの極性の大きい溶媒に対して親和性の大きい親水基を有し、後者の親水基部分が本発明の触媒作用を持つ。疎水基構造としては、炭化水素系、炭化フッ素系、有機金属系、高分子系などが挙げられる。触媒作用を示す親水基構造としては、スルホン酸、カルボン酸、燐酸などのブレンステッド酸、金属などのルイス酸が挙げられ、特にブレンステッド酸が好ましい。本発明に使用される界面活性剤型触媒の具体例を挙げると、p−ドデシルベンゼンスルホン酸を始めとするアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、3−トリメチルシリル−1−プロパンスルホン酸、CH(CHSOH(n=6〜25)、CF(CFCOOH(n=3〜20)、CHF(CFCOOH(n=1〜4)、HOCO−(CF−COOH(n=2〜8)などが挙げられる。また、これらを樹脂などに固定化してもよい。
【0022】
均一系触媒は反応速度が速いという利点があるが、分離に工夫が必要である。一方で不均一系触媒では、分離は容易であるが、反応速度が遅いという欠点がある。目的の反応に合わせてどちらも使用できる。
【0023】
触媒を使用する場合の触媒量は、アルコールが溶解している水溶液に対して0.01%〜10質量%の範囲が好ましい。0.01質量%より少ない量で行うと、好ましい反応速度が得られず、10質量%より多くしても収率が頭打ちとなり、それ以上大きくは向上しない。
【0024】
また、反応方式としては、撹拌、ラインミキサーを用いる方法、向流接触法などが挙げられる。水と炭素数が8〜28の脂肪酸は分離しやすいので、回分式で反応を行う場合、接触効率を高める反応方式を取るのが好ましい。向流接触法による連続式で反応を行う場合は、変換された疎水性物質と未反応の炭素数が8〜28の脂肪酸を含む有機層と水層を連続的に分離することで経済的に有利なプロセスとなる。
【0025】
本発明のエステル化反応の温度には特に制限はない。目的に応じた反応温度を設定することができるが、室温〜150℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、40℃〜120℃の範囲である。温度が低すぎると反応速度が遅く、150℃を超えるとエネルギーコストがかかり、好ましくない。また、使用する脂肪酸に応じて融点以上など適切な反応温度を設定する必要がある。
【0026】
また、反応圧力は特に制限はなく、どのような条件も選択できる。常圧から0.4MPaGの範囲が好ましい。さらに好ましくは常圧から0.1MPaGの範囲である。圧力が0.4MPaGより大きくなるとエネルギーコスト、設備費の観点から好ましくない。
【0027】
反応時間は特に制限はない。反応時間と共に反応率の増加がゆるやかになるため、目的の反応率に応じた反応時間を選択することができるが、好ましくは0.5から12時間、さらに好ましくは1〜8時間である。
【0028】
エステル化反応後の、疎水性エステル化合物と未反応の炭素数が8〜28のアルコールを含む有機層とアルコールが溶解していた水層を分離する方法としては、特に制限はなく、工業的に用いられている公知の方法から選択することができる。例えば、炭素数が8〜28のアルコールを含む有機層とアルコールが溶解していた水層は二層分離するため、ある一定時間静置することにより分離できる。また、蒸留や抽出、ガス吸収、吸着、膜分離などの手法を用いることができる。

【0029】
[加水分解]
アルコールと炭素数が8〜28の脂肪酸を反応させることによって得られる疎水性エステル化合物の加水分解の方法としては、特に制限はない。水層から分離された、疎水性エステル化合物と未反応の炭素数が8〜28の脂肪酸を含む有機層に水を添加して加水分解を行う。このとき、疎水性エステルは水への溶解度が低いため、反応は二層不均一系で行われる。ただし、脂肪酸の種類によっては一層均一系で行われることもある。
【0030】
添加する水の量は、回収したアルコールの濃度を高めるという観点から少ないほうが好ましい。好ましくは、得られた疎水性エステル化合物に対して0.1倍〜5倍モルの水を添加する。より好ましくは、得られた疎水性エステル化合物に対して、0.2倍〜3倍モルである。0.1倍モルより少ないと十分な反応速度が得られず好ましくない。また、5倍モルより多いと得られたアルコールの純度が低くなり好ましくない。
【0031】
加水分解反応には触媒を用いてもよい。触媒としてはアルコールと炭素数が8〜28の脂肪酸を反応させるエステル化反応の項で例示した触媒を用いることができる。
【0032】
加水分解の際の温度に制限はない。目的に応じた反応温度を設定することができるが、室温〜150℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、20℃〜120℃の範囲である。温度が室温より低いと反応速度が遅く、120℃を超えるとエネルギーコストがかかり好ましくない。
【0033】
加水分解の際の圧力は特に制限はなく、どのような条件も選択できる。常圧から0.4MPaGの範囲が好ましい。さらに好ましくは常圧から0.1MPaGの範囲である。圧力が0.4MPaGより大きくなるとエネルギーコスト、設備費の観点から好ましくない。
【0034】
加水分解の際の反応時間は特に制限はない。目的に応じた反応時間を選択することができる。反応時間と共に反応率の増加がゆるやかになるため、目的の反応率に応じた反応時間を選択することができるが、好ましくは0.5から12時間、さらに好ましくは1〜8時間である。
【0035】
エステル化反応後の、アルコールを含む水層と炭素数が8〜28の脂肪酸を含む有機層を分離する方法としては、特に制限はなく、工業的に用いられている方法から選択することができる。例えば、炭素数が8〜28の脂肪酸を含む有機層とアルコールが溶解していた水層は二層分離するため、ある一定時間静置することにより分離できる。また、蒸留や抽出、ガス吸収、吸着、膜分離などの手法を用いることができる。このとき、アルコールは水層に移るため、濃縮されたアルコールが得られる。
【0036】
加水分解後、有機層に多く含まれる炭素数が8〜28の脂肪酸を回収し、繰り返しアルコール回収に使用する方法としても特に制限はなく、工業的に用いられている方法を使用することができる。例えば、未反応脂肪酸の蒸留による回収、変換された疎水性物質の例えば加水分解やエステル交換反応による回収などが挙げられる。

【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。
【0038】
[実施例1]
15.5質量%エタノール水溶液 29.6gとドデカン酸 20.03gを内筒入りの120mlの耐圧容器に仕込み、p−ドデシルベンゼンスルホン酸を0.123g添加し、常時250rpmで攪拌を行いながら、60℃で5時間反応を行ったところ、ドデカン酸エチルが6.16g得られた。反応液を静置し、ドデカン酸エチルと未反応のドデカン酸を含む有機層を分離したところ、20.81gであった。この有機層に水を0.49g添加し、90℃で6時間加水分解反応を行った。加水分解反応後の反応液を静置したところ、エタノールと未反応の水を含む水層が0.7g得られた。ドデカン酸エチル基準のエタノール収率は30%であり、水層の分析を行ったところ、エタノール濃度は52.3%であった。

【0039】
[実施例2]
15.5質量%エタノール水溶液 29.6gとドデカン酸 20.03gを内筒入りの120mlの耐圧容器に仕込み、p−ドデシルベンゼンスルホン酸を0.123g添加し、常時250rpmで攪拌を行いながら、90℃で5時間反応を行ったところ、ドデカン酸エチルが7.84g得られた。反応液を静置し、ドデカン酸エチルと未反応のドデカン酸を含む有機層を分離したところ、21.02gであった。この有機層に水を1.249g添加し、90℃で6時間加水分解反応を行った。加水分解反応後の反応液を静置したところ、エタノールと未反応の水を含む水層が1.4g得られた。ドデカン酸エチル基準のエタノール収率は50%であり、水層の分析を行ったところ、エタノール濃度は33.8%であった。

【0040】
[実施例3]
11.4質量%エタノール水溶液 28.22gとドデカン酸 20.03gを内筒入りの120mlの耐圧容器に仕込み、p−ドデシルベンゼンスルホン酸を0.116gを添加し、常時250rpmで攪拌を行いながら、60℃で5時間反応を行ったところ、ドデカン酸エチルが5.01g得られた。反応液を静置し、ドデカン酸エチルと未反応のドデカン酸を含む有機層を分離したところ、20.56gであった。この有機層に水を0.79g添加し、90℃で6時間加水分解反応を行った。加水分解反応後の反応液を静置したところ、エタノールと未反応の水を含む水層が0.94g得られた。ドデカン酸エチル基準のエタノール収率は30%であり、水層の分析を行ったところ、エタノール濃度は32.4%であった。

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明はエネルギーコストの少ない条件でアルコールの回収ができる。また、従来困難であった低濃度のアルコール回収にも応用可能であるので、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール含有水溶液中のアルコールを炭素数が8〜28の脂肪酸と反応させて、疎水性エステル化合物に変換し、前記疎水性エステル化合物を含む有機層を水層から分離した後、当該疎水性エステル化合物を加水分解することによりアルコールを得ることを特徴とするアルコール濃縮方法。
【請求項2】
アルコールが、炭素数1〜4のアルコールである請求項1に記載のアルコール濃縮方法。
【請求項3】
アルコールがメタノールまたはエタノールである請求項1または2に記載のアルコール濃縮方法。
【請求項4】
炭素数8〜28の脂肪酸が、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸である請求項1〜3に記載のアルコール濃縮方法。
【請求項5】
アルコール含有水溶液中のアルコール濃度が、25質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のアルコール濃縮収方法。
【請求項6】
前記疎水性エステル化合物と未反応の炭素数が8〜28の脂肪酸を含む有機層を水層と分離した後、有機層中の、炭素数が8〜28の脂肪酸を分離、回収し、繰り返しアルコールとの反応に使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアルコール濃縮方法。
【請求項7】
少なくとも、アルコール含有水溶液中のアルコールを炭素数が8〜28の脂肪酸との反応によって疎水性エステル化合物に変換する工程、前記疎水性エステル化合物を含む有機層を水層から分離する工程、分離された有機層中の疎水性エステル化合物を加水分解することによりアルコールを得る工程を有するアルコール濃縮プロセス。

【公開番号】特開2010−235505(P2010−235505A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84881(P2009−84881)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】