説明

アルコール類の製造方法

【課 題】 高い光学純度と高収率が可能なアルコール類の製造法の提供。
【解決手段】 式(1)
(C=O)R (1)
(式中、Rは炭化水素基、複素環基又はアルコキシカルボニル基を表す。Rは、水素原子又はCORを表す。)
で表される化合物を、成分(i)及び(ii)
(i)フッ化銅を含む触媒成分、又は銅化合物とフッ化物とを含む触媒成分、
(ii)二座ホスフィン化合物
の存在下、又は上記成分から得られた錯体の存在下、式(2)
【化1】


(式中、R、Rはアルキル基、アルコキシ基、アリール基を表し、Xはアリール基又は式(3)
【化2】


で表されるアルケニル基を表す。)
で表されるシラン類と反応させる式(4)
【化3】


(式中、R、R及びXは前記と同じ、Rは水素原子、シリル残基を表す。)
で表されるアルコール類の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅及び二座ホスフィン化合物を触媒成分とした、アルデヒド類又は2−オキソカルボン酸エステルとケイ素化合物とからのアルコール類の製造方法に関する。また、二座ホスフィン化合物として光学活性体を用いることによる光学活性アルコール類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリルアルコール類やスチラリルアルコール類などのアルコール類は、医薬、農薬などの中間体等として有用であり、アリルアルコール類においては二重結合部位に化学変換を行うことにより、更に種々の化合物へと誘導でき、またアルコール類を光学活性体とすることによって、更に用途は広がるものと考えられる。
このような光学活性アルコール類を合成する主な方法として2つの合成法が報告されており、一つ目はシャープレス(Sharpless)エポキシ化を用いる速度論的分割法、そしてもう一つはカルボニル化合物へのアルケニル亜鉛の不斉付加反応である。しかし、これら二つの方法は優れた方法であるものの、速度論的分割法は望まない立体配置の化合物の副生が避けられず、また、アルケニル亜鉛の不斉付加反応は、この試薬自体の大気や水に対する不安定さなどから、大量合成への適用や安全性において問題があり、新たな合成法の開発が求められている。
【0003】
近年、銅を触媒の金属種として用いる反応が盛んに研究されており、例えば銅触媒を用いたカルボニル基への不斉アリル基付加反応について報告されている。非特許文献1には、フッ化銅(II)/i-Pr-DuPHOSを触媒として用い、添加物としてランタノイド化合物を加えた、ケトンのアリルボレーションが記載されている。また、特許文献1には、塩化銅(I)/tol-BINAP/TBATを触媒として用いたアリルトリメトキシシランによるアセトフェノンのアリル化が記載されている。
また、触媒反応ではないが非特許文献2には、化学量論量の銅塩(I)を用いたアルケニルフルオロシランによるカルボニル化合物のアルケニル基の付加反応が記載されている。
【0004】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,2004,126,8910
【非特許文献2】Tetrahedron Lett.,1979,13,1141
【特許文献1】特開2003−311156号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、化学量論量の銅塩を用いる方法では、相当量の銅廃棄物が発生することなどから、有利な方法とは言えず、また、触媒量の銅を用いた反応ではアリル化は知られているものの、アルケニル化やアリール化によるアルコール類の合成法は報告されていない。そこで、本発明は、工業的に有利なアルコール類の製造方法を提供することを課題とする。特に、光学純度及び収率が優れた光学活性アルコール類の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、銅を触媒の金属種として、配位子として二座ホスフィン化合物が存在する条件下で、アルデヒド類又は2−オキソカルボン酸エステルとアルケニルシラン類又はアリールシラン類とを反応させることにより、2級又は3級アルコール類が工業的有利に得られることを見出し、更に配位子として光学活性体を用いることにより光学活性アルコール類が高い光学純度且つ収率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
[1]下記一般式(1)
【0008】
(C=O)R (1)
【0009】
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい複素環基又はアルコキシカルボニル基を表す。Rは、水素原子又はCOR(Rはアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。)を表す。)
で表される化合物を、下記成分(i)及び(ii)
(i)フッ化銅を含む触媒成分、又は銅化合物とフッ化物とを含む触媒成分、
(ii)二座ホスフィン化合物
の存在下、又は(i)と(ii)とから得られた錯体の存在下、下記一般式(2)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rはアルキル基又はアルコキシ基を表し、Rはアルキル基、アルコキシ基、アリール基を表し、Xはアリール基又は下記式(3)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基を表す。また、RとRとでメチレン鎖を形成してもよい。)
で表されるアルケニル基を表す。)
で表されるシラン類と反応させることを特徴とする下記一般式(4)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R、R及びXは前記と同じ意味を表し、Rは水素原子又は前記シラン類のシリル残基を表す。)
で表されるアルコール類の製造方法。
[2]二座ホスフィン化合物が光学活性であり、一般式(4)の化合物が光学活性体である[1]に記載の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2級又は3級アルコール類が工業的有利に、より詳しくは、高い光学純度と高収率で製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造法における一般式(1)で示される化合物において、Rで表される炭化水素基の一つとしてはアルキル基が挙げられ、該アルキル基は直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい。これらアルキル基としては例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0018】
また、これらアルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭化水素基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、置換アミノ基及びハロゲン原子等が挙げられる。
アルキル基に置換する炭化水素基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0019】
アルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0020】
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0021】
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記アリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0022】
脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環の脂肪族複素環基、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、ピロリジル−2−オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式ヘテロアリール基、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0023】
アルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、5−メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
アルキレンジオキシ基としては、例えば炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、具体的にはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基、イソプロピリデンジオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば炭素数6〜14のアリールオキシ基が挙げられ、具体的にはフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、例えば炭素数7〜12のアラルキルオキシ基が挙げられ、具体的にはベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、1−フェニルブトキシ基、2−フェニルブトキシ基、3−フェニルブトキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−フェニルペンチルオキシ基、2−フェニルペンチルオキシ基、3−フェニルペンチルオキシ基、4−フェニルペンチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、1−フェニルヘキシルオキシ基、2−フェニルヘキシルオキシ基、3−フェニルヘキシルオキシ基、4−フェニルヘキシルオキシ基、5−フェニルヘキシルオキシ基、6−フェニルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
ヘテロアリールオキシ基としては、例えば、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、炭素数2〜14のヘテロアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、2−ピリジルオキシ基、2−ピラジルオキシ基、2−ピリミジルオキシ基、2−キノリルオキシ基等が挙げられる。
【0026】
置換アミノ基としては、アミノ基の1個又は2個の水素原子がアルキル基またはアリール基等の置換基で置換されたアミノ基が挙げられる。
アルキル基で置換されたアミノ基、即ちアルキル基置換アミノ基の具体例としては、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基が挙げられる。
アリール基で置換されたアミノ基、即ちアリール基置換アミノ基の具体例としては、N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基が挙げられる。
アラルキル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキル基置換アミノ基の具体例としては、N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
これらの置換基の中でも、炭化水素基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基又は置換アミノ基は、上記で挙げられた置換基群の中から選ばれる基によってさらに置換されていてもよい。
【0027】
また、一般式(1)で表される化合物において、Rで表される炭化水素基の一つとしては鎖状又は環状の直鎖あるいは分岐してもよい、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。具体的なアルケニル基としてはビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−シクロヘキセニル基及び3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
また、これらアルケニル基は置換基を有していてもよく該置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基及び複素環基等が挙げられ、具体例としては前記したようなものが挙げられる。
【0028】
また、一般式(1)で表される化合物において、Rで表される炭化水素基の一つとしては直鎖又は分岐していてもよいアルキニル基が挙げられ、具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、4−ヘキシニル基及び5−ヘキシニル基等が挙げられる。
また、これらアルキニル基は置換基を有していてもよく該置換基としては、アルキル基、アリール基、複素環基、トリアルキルシリル基等が挙げられ、アルキル基、アリール基、複素環基の具体例としては前記したようなものが挙げられる。
【0029】
また、一般式(1)で表される化合物において、Rで表される炭化水素基の一つとしてはアリール基が挙げられ、具体的には前記したようなアリール基が挙げられる。また、これらアリール基は置換基を有してもよく該置換基としては、アルキル基、アリール基、複素環基等が挙げられ、具体例としては前記したようなものが挙げられる。
【0030】
一般式(1)で表される化合物において、Rで表される複素環基としては、脂肪族又は芳香族複素環基が挙げられ、具体的には前記したような複素環基が挙げられる。また、これら複素環基は置換基を有してもよく該置換基としては、アルキル基、アリール基、複素環基等が挙げられ、具体例としては前記したようなものが挙げられる。
【0031】
一般式(1)で表される化合物において、Rで表されるアルコキシカルボニル基としては、例えば炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基が挙げられ、具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ラウリルオキシカルボニル基、ステアリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基及びベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0032】
一般式(1)で表される化合物において、Rで表されるアルキル基としては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物において、Rで表されるアラルキル基としては、ベンジル基、4−メトキシフェニルメチル基、1−フェニルエチル基等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物において、Rで表されるアリール基としては、フェニル基、o−,m−又はp−トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0033】
本発明における一般式(2)で示されるシラン類において、R及びRで表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
本発明における一般式(2)で示されるシラン類において、R及びRで表されるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
本発明における一般式(2)で示されるシラン類において、Rで表されるアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。該アリール基は置換基を有していてもよく、置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、(置換)アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、具体的な例としては前記したような基が挙げられる。
【0034】
また、一般式(2)で表されるシラン類においてXで表されるアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。該アリール基は置換基を有していてもよく、置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、(置換)アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、具体的な例としては前記したような基が挙げられる。
【0035】
また、一般式(2)で表されるシラン類において、Xで表されるアルケニル基におけるR、R及びRで表されるアルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0036】
また、これらアルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アリール基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、置換アミノ基及びハロゲン原子等が挙げられ、これらの基の具体例としては前記したような基が挙げられる。
また、一般式(2)で表されるシラン類において、RとRとでメチレン鎖を形成する場合のメチレン鎖としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、プロピレン基及びイソプロピリデン基等のメチレン鎖が挙げられる。
【0037】
本発明の製造法において、原料として用いられる一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示されるシラン類は、市販品をそのまま用いても、必要に応じてこれを適宜精製して用いても、あるいは自体公知の一般的な製法で自製したものを用いてもよい。
【0038】
次に、本発明で用いられる触媒成分(i)及び(ii)について説明する。
成分(i)はフッ化銅を含む触媒成分、又は銅化合物とフッ化物とを含む触媒成分である。
フッ化銅を含む触媒成分としては、銅原子とフッ素原子との結合を有する化合物を含むものであればよく、フッ化銅とホスフィン化合物との錯体又はフッ化銅及びその水和物が好ましく、具体例としては例えばCuFnPR(nは1〜3の整数を表し、Rはアリール基又はアルキル基を表す。)、CuFxHO(xは整数を表す。)等が挙げられる。
また、銅化合物とフッ化物とを含む触媒成分において、銅化合物としては、一価の銅化合物が好ましく、具体例としては例えばCuCl、CuBr、CuI、CuCN、CuOBu−t等が挙げられる。
フッ化物としては例えば、BuNPhSi、BuNF、(MeN)SMeSiF、(EtO)SiF等が挙げられる。
【0039】
続いて本発明に用いられる二座ホスフィン化合物に関して説明する。
本発明で用いられる二座ホスフィン化合物としては例えば下記一般式(5)
【0040】
10P−Q−PR1112 (5)
【0041】
(式(5)中、R、R10、R11及びR12はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基又は複素環基を表し、Qはスペーサーを表す。)
で表されるホスフィン化合物が挙げられる。
【0042】
一般式(5)で表される二座配位性ホスフィン化合物におけるアルキル基としては直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロペンチル基及びメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0043】
また、一般式(5)で表される二座ホスフィン化合物におけるアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有してもよく該置換基としては、アルキル基、アリール基、複素環基等が挙げられ、置換基の具体例としては前記したようなものが挙げられる。
【0044】
また、一般式(5)で表される二座ホスフィン化合物における複素環基としては、脂肪族又は芳香族複素環基が挙げられ、脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環の脂肪族複素環基、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、ピロリジル−2−オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
【0045】
芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、異種原子として少なくとも1個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式ヘテロアリール基、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0046】
一般式(5)で表される二座ホスフィン化合物におけるQで表されるスペーサーとしては、アルキレン基、フェロセニル基等が挙げられる。アルキレン基としては例えば、炭素数1〜6の具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基及びヘキサメチレン基が挙げられる。フェロセニル基としては、1,1'−ビスフェロセン型の構造を有するものが好ましい。
【0047】
次に、本発明で用いられる光学活性二座ホスフィン化合物について説明する。
光学活性二座ホスフィン類としては,例えば本出願前公知の光学活性二座ホスフィン類が挙げられ、その一つとして軸不斉構造を有する一般式(6)
【0048】
【化4】

【0049】
(式中、R13及びR14は、同一又は異なっていてもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基;アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
フェニル基上の置換基のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基等の直鎖又は分岐してもよい炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基等の直鎖又は分岐してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。具体的なR及びRとしては、例えばフェニル基、p−トリル基、m−トリル基、3,5−キシリル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、4−メトキシ−3,5−ジ(tert−ブチル)フェニル基、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル基、p−クロロフェニル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。また、一般式(6)で表される化合物のビナフチル環はメチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基及びトリフェニルシリル基等のトリアリールシリル基で置換されてもよい。
【0050】
前記一般式(6)で表される光学活性ビスホスフィンの具体例としては、これらに限定されるものではないが、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−ジ(tert−ブチル)フェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(4−メトキシ−3,5−ジ(tert−ブチル)フェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル等が挙げられる。
【0051】
さらに、軸不斉構造を有する光学活性ホスフィンの一つとしては下記一般式(7)
【0052】
【化5】

【0053】
(式中、R15及びR16は、同一又は異なっていてもよく、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基を示す。R17,R18,R19、R20,R21及びR22は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R17,R18及びR19の内の二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよいポリメチレンジオキシ基を形成していてもよく、R20,R21及びR22の内の二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよいポリメチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R19とR22は同時には水素原子ではない。)
で表されるホスフィン化合物が挙げられる。
【0054】
フェニル基の置換基としてのアルキル基としては例えば、メチル基、tert−ブチル基等の直鎖又は分岐してもよい炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、tert−ブトキシ基等の直鎖又は分岐してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子としては例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、これら置換基は該フェニル基上を複数置換してもよい。
具体的なR15又はR16としては、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0055】
また、R17〜R22における、アルキル基としては例えば、メチル基、tert−ブチル基等の直鎖又は分岐してもよい炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、tert−ブトキシ基等の直鎖又は分岐してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、アシルオキシ基としては例えば、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基及びベンゾイルオキシ基、ハロゲン原子としては例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、ハロアルキル基としては例えば、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のハロアルキル基が挙げられ、ジアルキルアミノ基としては例えば、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基等が挙げられる。
【0056】
17,R18及びR19の内の二つでメチレン鎖を形成する場合及び、R20,R21及びR22の内の二つでメチレン鎖を形成する場合のメチレン鎖としては炭素数3〜5のメチレン鎖が好ましく、具体的にはトリメチレン基、テトラメチレン基及びペンタメチレン基が挙げられる。また、置換基を有していてもよいメチレン鎖の置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、具体例としては炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
【0057】
17,R18及びR19の内の二つで置換基を有していてもよいポリメチレンジオキシ基を形成する場合及びR20、R21及びR22の内の二つで置換基を有していてもよいポリメチレンジオキシ基を形成する場合のメチレン鎖としては炭素数1〜3のメチレン鎖が好ましく、具体的にはメチレン基、エチレン基及びトリメチレン基が挙げられる。また、該ポリメチレンジオキシ基に置換する置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、具体例としては炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
【0058】
前記一般式(7)で表される光学活性ホスフィンの具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1、1'−ビナフチル(H−BINAPという)、2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1、1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1、1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−ターシャリーブチルフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、2,2'−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5',6,6',7,7',8,8'−オクタヒドロ−1,1'−ビナフチル、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(SEGPHOS)、(4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)(DM−SEGPHOS)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)(DTBM−SEGPHOS)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)(Cy−SEGPHOS)、((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5'−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4',6,6'−テトラメチル−5,5'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−4,4',6,6'−テトラメチル−5,5'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4',6,6'−テトラ(トリフルオロメチル)−5,5'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,6−ジ(トリフルオロメチル)−4',6'−ジメチル−5'−メトキシ−1,1'−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2'−ジフェニルホスフィノ−4,4',6,6'−テトラメチル−5,5'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4',6,6'−テトラメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3',6,6'−テトラメチル−1,1'−ビフェニル)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4'−ジフルオロ−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4'−ビス(ジメチルアミノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、1,11−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,7−ジヒドロベンゾ[c,e]オキセピン、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5',6,6'−テトラメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6'−ジメトキシ−1,1'−ビフェニル、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4',5,5',6,6'−ヘキサメトキシ−1,1'−ビフェニル等が挙げられる。
【0059】
さらに用いることのできる他の光学活性ホスフィン化合物としては、例えば、N,N−ジメチル−1−[1',2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス{(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ}エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジイソプロピルホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)エタン、1−(2,5−ジメチルホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、5,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−ノルボルネン、N,N'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N'−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン等が挙げられる。もちろん本発明に用いることのできる光学活性二座ホスフィン化合物はこれらに何ら限定されるものではない。
【0060】
本発明の製造法は、好ましくは触媒成分(i)及び(ii)を含む溶液、又は(i)と(ii)とから得られた錯体を含む溶液に、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表されるシラン類を順次加え、適当な反応温度及び反応時間で撹拌することにより目的物である一般式(4)で表されるアルコール類を製造することができる。または、逆に反応基質に触媒成分を加えてもよい。
【0061】
本発明で製造されるアルコール類は、光学活性であってよく、より具体的には、一般式(4')
【0062】
【化6】

【0063】
(式中、R、R、R及びXは、前記と同意義である。*は不斉炭素を表す。)
で示される光学活性化合物であってよい。
一般式(2)で表されるシラン類の使用量は、一般式(1)で示される化合物に対して、1倍モル〜10倍モル、好ましくは1.1倍モル〜5倍モル用いれば充分である。
【0064】
触媒成分(i)の使用量は、成分(i)の中に含まれる銅1モル原子あたり、一般式(1)で示される化合物に対して0.01モル%〜50モル%、好ましくは1モル%〜30モル%、より好ましくは3モル%〜20モル%用いれば充分である。
また、成分(i)で用いられるフッ化物の使用量は、使用する銅1モル原子量と同量が好ましい。
成分(ii)の二座ホスフィン化合物の使用量は、成分(i)として使用される銅1モル原子量に対して1倍モル〜3倍モル、好ましくは1.5倍モル〜2.5倍モル用いれば充分である。
【0065】
反応溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限は無いが、例えば、N,N
−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、
ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o−ジクロロベ
ンゼン等のハロゲン化炭化水素類、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デ
カン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の
芳香族炭化水素類、tert−ブタノール等の非求核性のアルコール類、ジエチルエーテ
ル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エ
チレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3
−ジオキソラン等のエーテル類及びジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げら
れる。より好ましい溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメ
チルアセトアミド等のアミド類及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。これら溶媒は
夫々単独で用いても二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0066】
反応温度は、使用する基質により自ずから異なるが、通常−30℃〜100℃、好ましくは−20℃〜80℃の範囲で行うことができる。
反応時間は、使用する基質により自ずから異なるが、通常10分〜100時間、好ましくは0.5時間〜80時間である。
反応終了後は、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)等の通常用いられる脱シリル化剤塩で処理することにより、水酸基からシリル基が脱離し、アルコール体として得ることができる。また、酢酸エチル等の適当な溶媒により抽出し、抽出液から溶媒を除去し、結晶化、蒸留又は各種クロマトグラフィー等の操作を単独又は組み合わせることにより目的のアルコール類を得ることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、光学純度(ee%)は、HPLC(カラム:キラルセルOJ−H、キラルセルOD−H又はキラルパックAD−H(ダイセル社製)、移動相:イソプロパノール/ヘキサン)にて決定した。
【0068】
〔実施例1〕
アリルアルコール類の合成
アルゴン雰囲気下、文献(Inorg. Chim. Acta 1981, 52, 153)記載の方法で合成されたCuF・3PPh3・2EtOH (20 mg, 0.02 mmol)と1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(以下、dppeと略す)(12 mg, 0.03 mmol)のTHF(0.3 mL)溶液に、室温でベンズアルデヒド(0.020 mL, 0.20 mmol)及びビニルトリメトキシシラン(62 μL, 0.40 mmol)を加えた後、60℃に昇温し3時間撹拌した。室温まで放冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(1M/THF, 0.5 mL)を加え10分間撹拌した。加水後、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/9〜1/4)を行うことによって目的とする1−フェニル−2−プロペン−1−オールを61%の収率で得た。
【0069】
[実施例2〜5]
配位子を変えて、実施例1と同様の操作を行った結果を表1に示す。略号は以下の意味を表す。
d(p-Cl)ppe=1,2-ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)エタン
d(p-MeO)ppe=1,2-ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)エタン
dppp=1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン
dppf=1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
【0070】
【表1】

【0071】
[実施例6]
アルコール類の合成
アルゴン雰囲気下、文献記載の方法で合成されたCuF・3PPh3・2EtOH (10 mg, 0.01 mmol)とdppf(8 mg, 0.014 mmol)のDMF(0.2 mL)溶液に(この触媒調製法をAとする、以下同様)、室温でベンズアルデヒド(0.020 mL, 0.20 mmol)及びビニルトリメトキシシラン(62 μL, 0.40 mmol)を加えた後、60℃に昇温し3時間撹拌した。室温まで放冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(1M/THF, 0.5 mL)を加え10分間撹拌した。加水後、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/9〜1/4)を行うことによって目的とする1−フェニル−2−プロペン−1−オールを100%の収率で得た。
【0072】
〔実施例7〜14〕
基質を変えて実施例6と同様に行った結果を以下の表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
〔実施例15〕
光学活性アリルアルコール類の合成
アルゴン雰囲気下、CuF2・2H2O (3 mg, 0.020 mmol)及び(R)-DTBM-SEGPHOS (47 mg, 0.04 mmol)をメタノール(0.7 mL)に加え2時間還流した後、室温まで放冷し真空下で揮発分を除去した。得られた残渣にトルエン(0.5 mL)を加え、再度減圧下で揮発分除去の操作を2回行った(この触媒調製法をBとする、以下同様)。得られたCuF-ホスフィン錯体をDMF(1 mL)に溶解し、ベンズアルデヒド(67 μL, 0.67 mmol)及びビニルトリメトキシシラン(206 μL, 1.34 mmol)を室温で加えた後、40℃で30分間撹拌した。室温まで放冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(1M/THF, 0.5 mL)を加え10分間撹拌した。加水後、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/9〜1/4)を行うことによって目的とする1−フェニル−2−プロペン−1−オールを99%の収率で得た。HPLCで光学純度を測定したところ、94%eeであった。また、絶対配置は旋光度により既報値との比較で決定したところ、(S)体であった。
DTBM-SEGPHOSは((4,4'−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5,5'−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)を意味する。
【0075】
[実施例16〜20]
配位子を変えて、実施例15と同様の操作を行った結果を表3に示す。略号は以下の意味を表す。なお、得られた生成物の立体配置を旋光度による既報値との比較で確認したところ、全て(S)体であった。
(R)-p-tol-BINAP =2,2'-ビス[ジ(p−トリル)ホスフィノ]-1,1‘-ビナフチル
(R,R)-CHIRAPHOS =(2R,3R)-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン
(R,R)-EtDuPHOS =1,2-ビス((2R,5R)-2,5-ジエチルホスホラノ)ベンゼン
(S,S)-iPr-DuPHOS =1,2-ビス((2S,5S)-2,5-ジイソプロピルホスホラノ)ベンゼン
【0076】
【表3】

【0077】
〔実施例21〜31〕
【0078】
【化7】

【0079】
基質及びシラン類を変えて実施例15と同様に行った結果を以下の表4及び表5に示す。
【0080】
【表4】

【0081】
実施例29は10 mol%のジフルオロトリフェニルケイ酸テトラブチルアンモニウムを添加した。
【0082】
【表5】

【0083】
[実施例33]
(S)−1−フェニル−2−プロペン−1−オールの合成
アルゴン雰囲気下、文献(Inorg. Chem. Acta 1981, 20, 2728)記載の方法で合成されたCu(O-Bu-t) (20 mg, 0.02 mmol)、(R)-DTBM-SEGPHOS(35 mg, 0.03 mmol)及びフッ化トリエトキシシラン(4.0 μL, 0.02 mmol)のDMF(0.3 mL)溶液に、室温でベンズアルデヒド(0.020 mL, 0.20 mmol)及びビニルトリメトキシシラン(62 μL, 0.40 mmol)を加えた後、40℃に昇温し30分撹拌した。室温まで放冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(1M/THF, 0.5 mL)を加え10分間撹拌した。加水後、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/9〜1/4)を行うことによって目的とする1−フェニル−2−プロペン−1−オールを(S)体として65%の収率、94%eeで得た。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の目的化合物は、例えば医薬、農薬等の中間体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
(C=O)R (1)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい複素環基又はアルコキシカルボニル基を表す。Rは、水素原子又はCOR(Rはアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。)を表す。)
で表される化合物を、下記成分(i)及び(ii)
(i)フッ化銅を含む触媒成分、又は銅化合物とフッ化物とを含む触媒成分、
(ii)二座ホスフィン化合物
の存在下、又は(i)と(ii)とから得られた錯体の存在下、下記一般式(2)
【化1】

(式中、Rはアルキル基又はアルコキシ基を表し、Rはアルキル基、アルコキシ基、アリール基を表し、Xはアリール基又は下記式(3)
【化2】

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基を表す。また、RとRとでメチレン鎖を形成してもよい。)
で表されるアルケニル基を表す。)
で表されるシラン類と反応させることを特徴とする下記一般式(4)
【化3】

(式中、R、R及びXは前記と同じ意味を表し、Rは水素原子又は前記シラン類のシリル残基を表す。)
で表されるアルコール類の製造方法。
【請求項2】
二座ホスフィン化合物が光学活性であり、一般式(4)の化合物が光学活性体である請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−241049(P2006−241049A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57618(P2005−57618)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】