説明

アルツハイマ病の治療および診断方法における使用のためのN末端切断型アミロイドβプロトフィブリル/オリゴマ

個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するためのワクチンは、N末端切断型Aβを含む生理的に許容されるプロトフィブリル/オリゴマの治療有効量を含有する。個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための抗体は、1またはそれ以上の切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合するが、完全長Aβモノマとは交差反応性を示さないかまたは実質的に交差反応性を示さず、および場合により、前記抗体はN末端切断型Aβモノマに交差反応性を示す。アルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための方法は、前記ワクチンまたは抗体を使用する。可溶性N末端切断型アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル/オリゴマおよびN末端切断型Aβモノマを検出する方法は、前記抗体を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患(neurodegenerative)、特にアルツハイマ病ならびにアルツハイマ関連障害および疾患の予防、治療および診断に関する。本発明は、N末端切断型(N-terminal truncated)アミロイドβタンパク質(Aβ)プロトフィブリル/オリゴマおよび完全長Aβモノマには結合しないかまたは実質的に結合しない、そのようなプロトフィブリル/オリゴマに選択的な抗体を提供する。1つの実施形態では、抗体はIgGクラス、特にIgG1もしくはIgG4サブクラスまたはそれらの組合せまたはそれらの変異体(mutations)であり、高いFc受容体結合(receptor binding)および低いC1(C1q)結合を保持し、Aβプロトフィブリルのクリアランスにおいて有効であり、炎症の危険度が低い。従って、本発明は、主たる態様として、能動免疫ならびに受動免疫(active and negative immunization)のための生成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマ病(AD)は、認知、記憶および行動の障害を引き起こす、進行性で不可逆的な神経変性障害(progressive and irreversible neurodegenerative disorder)である。高齢者集団における認知症の最も一般的な原因であり、おおよそ65歳以上の5%および80歳以上の20%が罹患する。ADは潜行性の発症および多数の認知機能の進行性低下(progressive deterioration)を特徴とする。神経病理学的には、細胞外および細胞内の両方の好銀性タンパク質様沈着物(argyrophillic proteineous deposits)を含む。老人斑(neuritic plaques)と称される細胞外沈着物は、主として異栄養性神経突起(腫脹し、変形した神経突起)に取り囲まれたアミロイドβタンパク質(Aβ)から成る。これらの細胞外沈着物内のAβは、βプリーツシート(pleated sheet)構造を有する原線維状(fibrillar)であることを特徴とする。これらの沈着物中のAβは、特定の色素、例えばコンゴレッドで染色することができ、原線維状の超微細構造(fibrillar ultra structure)を呈する。老人斑中のその原線維状構造のAβが備えるこれらの特徴がアミロイドという一般名の定義である。古典的な細胞内AD病変は神経原線維変化(NFT)であり、これは、高リン酸化微小管関連タンパク質タウ(τ)のねじれた鎖で構成される、ペアードヘリカルフィラメント(PHFs)と呼ばれる線維状構造から成る。脳における高頻度の老人斑および神経原線維変化(neurofibrillary tangle)の沈着物が、死後に実施された場合の、ADの診断基準である。ADの脳はまた、肉眼的な脳萎縮、神経細胞喪失、局所炎症(ミクログリオーシスおよび星状細胞増加症)ならびにしばしば脳血管壁における脳アミロイド血管症(CAA)も示す。
【0003】
ADを示唆する脳病変、例えばアミロイド斑および神経原線維変化(neurofibrillary tangle)は、いくつかの他の障害でも認められる。30歳以降では、ダウン症候群を有するほとんどすべての被験者が、沈着物とNFTを伴うADの典型的な神経病理学的特徴を発現している(Zigman 1996)。レビ小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies)を有する症例の約50%では、ADを示す神経病変が共存する。並行する病変の存在が2つの異なる疾患を意味するのか、または単にそれぞれの障害の変形であるのかは不明である。時として、共病変を有する症例はADのレビ小体型を有すると表される(Hansenら、1990)。混合型認知症はADと血管性脳症が合併したものを指すが、2つの障害の区別については意見が分かれる。混合型認知症の診断には、可能性のあるADプラス別個の実体としての脳血管疾患の臨床/神経画像検査基準が用いられるが、血管性脳病変(vascular brain)と認知症との因果関係は明らかではない。オーストリアのウィーンにおける1500名の認知症高齢被験者、そのうち830名は臨床的にADの可能性が高い、高齢被験者の連続的な剖検シリーズにおいて、41.5〜52.0%は「純粋な」ADを示し、7%は非定型AD、16〜20%はADプラス脳血管病変、そして9%はADプラスレビ小体病変を示した。これは、認知機能障害患者においてADと多数の脳血管病変が頻繁に共存することを示唆する(Jellinger 2007)。
【0004】
緑内障および加齢性黄斑変性(Age-Related Macular Degeneration)は世界的に失明の主要原因である。AD脳に関連する視力の喪失を導く、Aβが関与する同様の病的機構を裏付ける証拠が増えつつある。加齢性黄斑変性では、数多くのおよび/または融合性のドルーゼン(drusen)が、臨床的に網膜色素上皮の地図状萎縮(geographic atrophy)に結びつく。Aβはヒトドナーの眼のこれらのドルーゼンに沈着する(Johnson 2002)。C末端の線状エピトープ(linear epitope)を標的するモノクローナル抗体は、加齢性黄斑変性のマウスモデルにおいて潜在的治療能(therapeutic potential)を有することが明らかにされた(Ding 2008)。Aβは実験的緑内障(experimental glaucoma)において網膜神経節細胞(retinal ganglion cells)のアポトーシスに関与することが報告されている(Guo 2007)。この動物モデルでは、網膜神経節細胞のアポトーシス誘導を、線状エピトープを有する市販の抗体での治療によって救済することができる。
【0005】
封入体筋炎(inclusion body myositis)は高齢者における最も一般的な後天性筋疾患(muscle disease)である。典型的には、ADの顕著な特徴、すなわちAβ沈着物の存在、コンゴレッド色素で染まる封入体およびτ病変(tau pathology)が、この疾患を有する患者の筋生検で認められる(Needham 2008)。結論として、Aβ沈着物は神経変性障害ならびに眼および筋肉を侵す他の障害で認められ、疾患原因因子として関係づけることができる。
【0006】
Aβペプチドの2つの形態、Aβ40およびAβ42はAD老人斑(neuritic plaques)における主要な種であるが、ADに関連する脳血管(cerebrovascular)アミロイドではAβ40が著明な種である。酵素活性により、Aβは、健常被験者とAD罹患被験者の両方において身体のすべての細胞中でアミロイド前駆体タンパク質(APP)と呼ばれる大型タンパク質から継続的に形成される。β−およびγ−セクレターゼ活性を介した2つの主要なAPPプロセシング事象がAβの産生を可能にし、一方α−セクレターゼと呼ばれる第三の酵素がAβ配列を内側で切断することによってAβの生成を妨げる(Selkoe、1994;Ester 2001;米国特許第5604102号明細書)。Aβ42は42アミノ酸長のペプチドであり、すなわちAβ40と比較してC末端で2つのアミノ酸分だけ長い。Aβ42はより疎水性であり、且つAβ二量体、Aβ三量体、Aβ四量体、より大きなAβオリゴマ、例えばAβプロトフィブリルまたはAβフィブリルなどのより大型の構造のAβペプチドへとより容易に凝集する(Jarret 1993)。Aβフィブリルは疎水性で不溶性であるが、その他の構造はすべて疎水性が低く可溶性である。これらのより高度な分子構造のAβペプチドはすべて、例えば電子顕微鏡検査におけるそれらの生物物理学的および構造的外観、ならびに、例えばサイズ排除クロマトグラフィ/ウエスタンブロット法での分析によるそれらの生化学的特徴に基づき、個別に定義される。これらのAβペプチド、特にAβ42は、寿命の間に種々のより高度な分子構造のAβへと徐々に集合する。年齢に強く依存する障害であるADは、この集合過程がより急速に起こるほど生涯のより早期に発症する。これが、APPプロセシング、Aβ42レベルおよびより高度な分子構造へのこれらの集合がADの主要原因であると主張する、ADの「アミロイドカスケード仮説」の中核をなす。AD脳についての他のすべての神経病理および認知症などのADの症状は、何らかの形でAβまたはその集合形態によって引き起こされる。
【0007】
Aβは種々の長さで、例えば1〜38、1〜39、1〜40、1〜41、1〜42および1〜43の長さで、ならびに様々な大きさのそれらのフラグメントとして、例えば1〜28および25〜35のフラグメントとして存在し得る。また、ペプチドのN-末端で切断が起こり得る。N末端切断型単量体Aβは、AD脳組織(Sergeant 2003)およびCSFから純粋なギ酸として抽出された不溶性Aβから特徴づけられた。それらは種々の長さで存在し得る。一部の形態はまた、Met35で酸化され得る。これらのフラグメントの一部は、N-末端でメチル化され得るかまたはグルタミニルシクラーゼ(QC)によってN末端でピログルタミル残基を形成し得る。QC酵素は、N末端グルタミン酸およびグルタミンに作用して、N末端のピログルタミン酸(pE)修飾を生じさせる。そのようなピログルタミン酸修飾Aβフラグメントの1つがAβ3(pE)〜42であり、これも細胞内局在を有することが示された。Aβ3(pE)〜42形態はまた、高い安定性と凝集傾向を有することも示されている。これらのペプチドはすべて、凝集して可溶性中間体および不溶性フィブリルを形成することができ、各々の分子形態が固有の構造的立体配座および生物物理学的特性を有する。単量体Aβ1〜42は、例えば、42アミノ酸長の可溶性で非毒性のペプチドであり、正常なシナプス機能に関与することが示唆される。一定の条件下で、Aβ1〜42は二量体、三量体、四量体、五量体およびより大きなオリゴマ形態に凝集することができ、すべてが、異なる物理化学的特性、例えば分子の大きさ、EM構造およびAFM(原子間力顕微鏡検査)分子形状などを有する。より高い分子量の可溶性オリゴマAβ形態の一例がプロトフィブリルであり(Walsh 1997)、これは一般に100kDaより大きい見かけ分子量を有し、直径4〜11nmおよび長さ200nm未満の曲線線形構造を備える。近年、Aβプロトフィブリルなどの可溶性オリゴマAβが、海馬における記憶形成を反映すると考えられるシナプス可塑性の尺度である、長期増強(LTP)を低下させることが明らかにされた(Walsh 2002)。さらに、突然変異形態であるオリゴマ北極型(Arctic)Aβペプチド(下記参照)は野生型Aβよりもはるかに重大な阻害作用を示す(おそらくそれらのAβプロトフィブリルを形成するより強い傾向に起因して、脳におけるLTPに対しwtAβ<9(Klyubin 2003))。
【0008】
プロトフィブリルとは明らかに異なる他の可溶性オリゴマ形態も文献に記載されている。そのようなオリゴマ形態の1つはADDL(アミロイド由来拡散性リガンド)である(Lambert 1998)。ADDLのAFM分析は、主に、17〜42kDaの分子量を有するz軸に沿った4.7〜6.2nmの小さな球状種を明らかにした(Stine 1996)。もう1つの形態はASPD(アミロスフェロイド)と呼ばれるものである(Hoshi 2003)。ASPDはAβ1〜40の球状オリゴマである。毒性試験は、10nmより大きい球状ASPDは低分子形態よりも毒性であることを示した(Hoshi 2003)。この見解は、早期発症型ADを引き起こす北極型(E693)APP突然変異の最近の発見によって裏付けられた(米国特許出願公開第2002/0162129号明細書;Nilsberthら、2001)。この突然変異はAβペプチド配列の内側に位置する。突然変異のキャリアは、それにより、Aβペプチドの変異体、例えば北極型Aβ40および北極型Aβ42を生成する。北極型Aβ40および北極型Aβ42はどちらも、より高度な分子構造、すなわちプロトフィブリルへとはるかに容易に凝集する。
【0009】
アルツハイマ病(AD)の脳では、細胞外アミロイドプラークが実質および血管壁で典型的に認められる。プラークは、アミロイドAβ38〜43アミノ酸長の疎水性(long hydrophobic)で自己凝集性のペプチドから構成され、徐々に重合した後プラーク沈着する。可溶性Aβオリゴマ種はアミロイドプラーク自体よりも疾患相関性が高いと提案されてきた(McLeanら、1999;Naslundら、2000)。これらの前フィブリル中間体Aβ種の中で、オリゴマ形態はインビトロおよびインビボの両方で有害な生物学的作用を誘発することが示されており(Walshら、2002)、従って疾患の病因において中心的役割を果たすと考えられる。様々な分子サイズのいくつかのオリゴマAβ種が公知である。重要な点として、Aβの単量体、オリゴマおよびフィブリル形態の立体配座(conformation)は異なっており、立体配座選択的抗体による標的となり得る。主要なAβ病原体の同一性は明らかではないが、一部の証拠は、高分子量Aβオリゴマが特に神経毒性であることを示唆する(Hoshiら、2003)。
【0010】
早期発症型ADを引き起こす、アミロイド前駆体(precursor)タンパク質(APP)遺伝子における病原性突然変異(mutation)が記述されている。その1つであるスウェーデン型APP突然変異(Mullanら、1992)はAβレベルの上昇を生じさせる。Aβドメイン内に位置する北極型APP突然変異(E693G)は、大型Aβオリゴマであるプロトフィブリルの形成を促進することが認められ、これらのAβ中間体が特に病原性であることを示唆した(米国特許出願公開第2002/0162129号明細書;Nilsberthら、2001)。北極型APP突然変異の同定およびAβプロトフィブリルについての毒性作用の解明は、ADの病因におけるAβオリゴマへの注目を高めることになった。
【0011】
アルツハイマ病のための治療戦略としての能動免疫法は(Schenkら、1999)によって最初に報告された。免疫戦略のための標的は、アルツハイマ斑において認められるフィブリル形態のAβであった。フィブリル化Aβをワクチン(AN−1792)として使用する活性Aβワクチン接種の最近の第I/II相臨床試験は、少数の患者において髄膜脳炎(meningoenphalitis)が発症したため中止を余儀なくされた(Bayerら、2005)。この試験で見られた副作用は、おそらく血管壁の原線維性アミロイドに対して反応する抗Aβ抗体によって引き起こされたと考えられる。CAAにおける原線維性アミロイドは血液脳関門(BBB)にごく近接しており、従って抗原抗体反応がBBBに損傷を生じさせ、Tリンパ球のCNSへの浸潤をもたらした可能性がある(Pfeiferら、2002;Rackeら、2005)。さらに、参加した患者のうちの少数しかAβワクチンに対する免疫応答(immune response)を示さなかった。この試験は早期に終了されたが、活性Aβ免疫(immunization)はAD患者の小集団に対してしか有益であり得ないことを示唆すると思われる。
【0012】
ヒトAβプロトフィブリルに対して選択的なモノクローナル抗体が記述されている(国際公開第2005/123775号)。高度に純粋で安定なヒトAβプロトフィブリルを生成する方法は、北極型突然変異(Glu22Gly)を有する合成Aβ42ペプチドの使用を含む。この突然変異は、免疫およびAβプロトフィブリル選択的抗体についてのハイブリドーマスクリーニングを促進する。重要な点として、これらの抗体は野生型(wild type)AβプロトフィブリルとAβ−Arcプロトフィブリルの両方に結合する。
【0013】
Aβフィブリル(O’Nuallain 2002)、ミセルAβ(Kayed 2003)、ADDL(Lambert 2001)などのAβの他の立体配座に関して選択的な抗体が記述されている。しかしながら、これらのいずれもがAβプロトフィブリル選択的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、アルツハイマ病およびアルツハイマ関連障害の治療および/または診断方法において使用するための、1またはそれ以上のN切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合するが、完全長(full-length)Aβモノマとは交差反応性(cross-reactivity)を示さないかまたは実質的に交差反応性を示さず、場合によりN末端切断型Aβモノマに交差反応性を示す抗体を提供する。
【0015】
本発明はまた、アルツハイマ病およびアルツハイマ関連障害を治療するおよび/または診断するための、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを含有するワクチンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの実施形態では、本発明は、アルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するためのワクチンであって、N末端切断型Aβを含む生理的に許容されるプロトフィブリル/オリゴマの治療有効量を含有するワクチンを対象とする。もう1つの実施形態では、プロトフィブリル/オリゴマは、様々な比率での完全長AβペプチドとN末端切断型Aβペプチドの組合せを含む。さらなる実施形態では、本発明のワクチンは、非安定化形態のN末端切断型プロトフィブリル/オリゴマよりも不溶性凝集形態への形成率が低い、生理的に許容される安定化されたN末端切断型プロトフィブリル/オリゴマの治療有効量を含有する。
【0017】
さらにもう1つの実施形態では、本発明は、個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための方法であって、本発明によるワクチンを個体に投与することを含む方法を対象とする。さらなる実施形態では、本発明は、N末端切断型Aβを含むプロトフィブリル/オリゴマに対する抗体、すなわちインビボで形成されるプロトフィブリル/オリゴマにより効率的に結合する改善された抗体を作製するための、本発明によるワクチンの使用を対象とする。おそらく、完全長ならびにN末端切断型Aβペプチドによって構成されるプロトフィブリル/オリゴマの混合物が存在する。
【0018】
もう1つの実施形態では、本発明は、個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための抗体であって、1またはそれ以上のN切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合するが、完全長Aβモノマとは交差反応性を示さないかまたは実質的に交差反応性を示さず、場合によりN末端切断型Aβモノマに交差反応性を示す抗体を対象とする。もう1つの実施形態では、本発明は、個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための方法であって、本発明による抗体を個体に投与することを含む方法を対象とする。
【0019】
もう1つの実施形態では、本発明は、個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための抗体を作製する方法であって、抗体またはそのフラグメントが、1またはそれ以上のN切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合するが、完全長Aβモノマとは交差反応性を示さないかまたは実質的に交差反応性を示さない、抗体の作製方法を対象とする。前記方法は、抗原を非ヒト動物に投与し、抗原に対して形成された抗体を収集することを含み、前記抗原は、可溶性Aβ種である、安定化されたN末端切断型プロトフィブリル/オリゴマ、またはN末端切断型プロトフィブリル/オリゴマよりも不溶性凝集形態への形成率が低い安定化N末端切断型プロトフィブリル/オリゴマを含む。
【0020】
なおさらなる実施形態では、本発明は、それぞれ、本発明による抗体またはワクチン、ならびにヒトおよび/または動物での使用に関して医薬的に許容される、例えば抗菌剤、アジュバント、緩衝剤、塩、pH調整剤、界面活性剤およびそれらの任意の組合せから成る群より選択される、1またはそれ以上の賦形剤を含有する、抗体組成物およびワクチン組成物を対象とする。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明は検出方法を対象とする。1つの実施形態では、単量体としてならびに可溶性凝集形態、すなわちオリゴマ/プロトフィブリルとしての可溶性N-末端切断型Aβペプチドをインビトロで検出する方法は、本発明による抗体を、そのような化合物を含有するまたは含有することが疑われる生物学的試料に添加し、抗体と化合物の間で形成される任意の複合体を検出して、その濃度を測定することを含む。もう1つの実施形態では、N末端切断型Aβ形態をインビボで検出する方法は、N末端切断型プロトフィブリル/オリゴマを担持することが疑われる個体に、検出可能なマーカで標識された本発明による抗体を投与し、標識抗体の検出によって、抗体と様々な可溶性N末端切断型Aβ化合物との間で形成される複合体の存在を検出することを含む。
【0022】
本発明のワクチン、抗体および方法は、アルツハイマ病およびアルツハイマ関連障害を対象とする診断および治療技術のために有益である。本発明のさらなる実施形態および態様は「発明を実施するための形態」で示され、本発明のさらなる利点がそれらから明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】SEC−HPLCによるAβ3(pE)〜42プロトフィブリルからのAβ3(pE)〜42モノマの分離を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、アルツハイマ病およびアルツハイマ関連障害の発症の遅延、治療および/または予防を含む、アルツハイマ病およびアルツハイマ関連障害を診断し、対処する(combating)ための様々な方法において使用するための抗体(受動免疫)およびワクチン(能動免疫)を提供する。
【0025】
前記抗体およびワクチンは、ダウン症候群、脳血管性アミロイドーシス、混合型認知症、緑内障、加齢性黄斑変性および/または封入体筋炎を含むがこれらに限定されない、アルツハイマ病およびアルツハイマ病関連障害(アルツハイマ関連障害)の発症の遅延、治療および/または予防において使用し得る。これらの障害はまた、他の神経変性障害、例えばα−シヌクレイン関連疾患と合併して発症し得る。
【0026】
抗体およびワクチンはまた、中でも特に、診断、観測または治療のための検出方法においても使用し得る。
【0027】
アルツハイマ病の主たる病理は、細胞外毒性型可溶性Aβオリゴマ形態のAβペプチド、特にプロトフィブリルと呼ばれる高分子量型オリゴマ形態のAβである。本開示において、「オリゴマ/プロトフィブリル」および「プロトフィブリル/オリゴマ」という用語は、プロトフィブリルを含むより高い分子量のオリゴマを指すために同義的に使用される。本発明は、N-末端切断型Aβを含むプロトフィブリル/オリゴマに結合する治療用抗体を対象とする。本発明はまた、N末端切断型Aβを含むプロトフィブリル/オリゴマを含有するワクチンを対象とする。
【0028】
本発明による使用のためのAβペプチドの群は、N-末端切断型であり、式Aβx〜y[式中、任意の組合せで、xは2、3、3(pE)、4、5、6、7、8、9、10、11、11(pE)または12であり、およびyは38、39、40、41、42または43である]である。例としては、例えばAβ2〜40、Aβ3〜40、Aβ3(pE)〜40、Aβ4〜40、Aβ5〜40、Aβ6〜40、Aβ7〜40、Aβ8〜40、Aβ9〜40、Aβ10〜40、Aβ11〜40、Aβ11(pE)〜40、Aβ12〜40、Aβ2〜42、Aβ3〜42、Aβ3(pE)〜42、Aβ4〜42、Aβ5〜42、Aβ6〜42、Aβ7〜42、Aβ8〜42、Aβ9〜42、Aβ10〜42、Aβ11〜42、Aβ11(pE)〜42およびAβ12〜42を含むが、これらに限定されない。
【0029】
Aβ3(pE)〜40/42およびAβ11(pE)〜40/42では、ペプチドは、それぞれ、そのN-末端で2または10個のアミノ酸を欠失しており、N末端アミノ酸であるグルタミン酸がグルタミン酸のピログルタミル誘導体に環化している。
【0030】
現在のところ、Aβ2〜42、Aβ3(pE)〜42、Aβ4〜42および/またはAβ11(pE)〜42は特に重要であると思われ、様々な組合せでこれらの1またはそれ以上を含むプロトフィブリル/オリゴマに結合する抗体は、重要な治療的役割を果たすと考えられている。
【0031】
本発明の1つの実施形態では、プロトフィブリル/オリゴマは、N-末端切断型Aβペプチドを含むが、完全長Aβペプチド、すなわち非N末端切断型Aβペプチドを含まない。本明細書において、「完全長Aβペプチド」および「非N末端切断型Aβペプチド」という用語は同義的に使用され、N末端切断を有さないが、C末端切断は有してもよいまたは有さなくてもよいAβペプチドを指す。
【0032】
本発明のもう1つの実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは、N末端切断型Aβと非N末端切断型Aβの両方をそれらの任意の組合せで含み得る。理論に拘束されるものではないが、現在のところ、これは臨床状況の良好な予測を提供すると考えられる。
【0033】
本発明のプロトフィブリル/オリゴマは、50%以上のN末端切断型Aβペプチド、例えば60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上または100%の、上記で開示されるN末端切断型ペプチドのいずれかを単独で、または2種類もしくはそれ以上のN-末端切断型の組合せとして含む。そのようなプロトフィブリル構築物中の完全長ペプチドは、Aβ1〜38、Aβ1〜39、Aβ1〜40、Aβ1〜41、Aβ1〜42またはAβ1〜43またはこれらの任意の組合せであり得る。現在のところ、Aβ1〜40および特にAβ1〜42がそのような構築物の最も重要な成分であると考えられている。
【0034】
本発明の抗体は、N末端切断型プロトフィブリル/オリゴマを含むプロトフィブリル/オリゴマに対して高い親和性を示し、これに結合することを特徴とする。この機能性は、Aβ系の様々な種に対して惹起される公知の抗体と比較して重要な利点を提供する。従って、本発明の1つの態様による抗体は、80%の、上記で定義されたN末端切断型Aβx〜yの少なくとも1つの種または1つの組合せを含むプロトフィブリル/オリゴマに対して25nM以下のIC50値、例えば15nM以下、10nM以下、さらには5nM以下のIC50値を有する。IC50値を決定するための方法は、参照により本明細書に組み込まれる、Englund H. et al. in J. of Neurochemistry, 2007, 103, 334-345によって記述されている。阻害ELISA法において最大シグナルの半分を阻害するために必要な抗原(Aβプロトフィブリル/オリゴマまたはモノマ)濃度がIC50値と定義され、抗原に対する抗体の親和性の評価として使用できる。プロトフィブリル/オリゴマ濃度は単量体サブユニット(〜4kD)のモル濃度として表される。
【0035】
本発明の1つの実施形態によれば、プロトフィブリル/オリゴマは80%のAβ3(pE)〜42および20%のAβ1〜42を含む。
【0036】
本発明の1つの実施形態では、抗体は、90%の、N末端切断型Aβx〜yの少なくとも1つの種または1つの組合せを含むプロトフィブリル/オリゴマに対して50nM以下のIC50値、特に100%の、上記で定義されたN末端切断型Aβペプチドの少なくとも1つの種または1つの組合せを含むプロトフィブリル/オリゴマ、特に100%のAβ3(pE)−42を含むプロトフィブリル/オリゴマに対して100nM以下、例えば50nM以下、25nM以下、10nM以下、さらには5nM以下ののIC50値を示す。
【0037】
本発明の重要で且つ現在のところ好ましい実施形態によれば、N末端切断型Aβモノマにも結合する抗体が提供される。本発明による抗体のさらなる特徴は、非切断型Aβモノマへの結合を示さないかまたは実質的に結合を示さないことであり、これは、標準的なELISAで測定した場合、1nM未満の濃度で検出可能な結合が存在しないことを意味する。
【0038】
本発明のさらにもう1つの実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは北極型突然変異(mutation)(E22G)を含む。
【0039】
本発明のさらにもう1つの実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは、オランダ型突然変異(E22Q)またはイタリア型突然変異(E22K)またはアイオワ型突然変異(D23N)またはフランドル型突然変異(A21G)またはこれらの突然変異の2もしくはそれ以上の組合せを含む。
【0040】
本発明のさらにもう1つの実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは、北極型、オランダ型、イタリア型、アイオワ型およびフランドル型突然変異を含む2またはそれ以上の突然変異の任意の組合せを含む。
【0041】
これらのN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマのレベルを低下させることが免疫治療アプローチにとっての課題である。しかし、能動的に誘導されたまたは受動的に投与された抗体の画分は、脳におけるミクログリアの食作用プロセスによってそれらの標的に結合し、それを低減することができる。
【0042】
本発明はまた、本発明による抗体または他の生成物の設計および開発を大きく促進する安定化されたN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマの作製のための方法を提供する。ヒトAβモノマの分子量は約4kDaである。2またはそれ以上のAβモノマは、凝集して、広範囲の分子量を有する可溶性N末端切断型プロトフィブリル/オリゴマを形成することができる。支配的なオリゴマは、一般にプロトフィブリルと称される。しかし、これらのN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは不安定であり、自然に重合して不溶性フィブリルになる。本発明は、抗体およびワクチンの開発のために、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを安定化し、安定化されたN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを、好ましくは高度に精製された形態で、単離する方法を提供する。本発明による安定化されたN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは、非安定化N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマよりも低い不溶性凝集形態、すなわちフィブリルへの形成率を示す。これらの形態は高い毒性を示すため、特に興味深い。
【0043】
加えて、N末端切断型のAβは、組換え技術または固相ペプチド合成によって作製できる。さらに、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは、アルツハイマ病を有する症例からの死後剖検されたヒト脳組織中の脳抽出物から直接誘導することができる。N末端切断型ペプチドから作製されたN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマの標本を種々の生理的緩衝液中で精製する。これらの試料標本を、モノクローナル抗体の発現のためにそのままマウスに注射するかまたはクロマトグラフィ法によって分画した後マウスに注射する。生成された抗体をヒト化した後、本明細書でさらに詳細に説明する受動ワクチン接種スキーム(passive vaccination scheme)においてまたは診断免疫測定法(diagnostic immunoassays)において患者を治療するために使用する。
【0044】
さらに、マウスの免疫およびモノクローナル抗体の発現のために使用されるN-末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマはまた、健常個体またはアルツハイマ病および/もしくはアルツハイマ関連障害を有する患者からの生体組織または血液、脳脊髄液、尿もしくは唾液などの体液から単離し得る。N-末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマの安定化は、例えば構造修飾などの、様々な方法で実施し得る。1つの実施形態では、安定化剤に結合することによって構造修飾が達成される。結合は架橋の形態であり得る。特定の実施形態では、安定化剤は疎水性有機物質である。様々な実施形態において、疎水性有機物質は、飽和、不飽和もしくは多不飽和脂肪酸、またはそれらの誘導体、またはそれらの任意の組合せ、例えばそれらの任意の2つまたはそれ以上の組合せを含む。さらなる実施形態では、疎水性有機物質は反応性アルデヒドを含む。アルデヒドは、例えば、α,β−不飽和アルデヒドなどのアルケナールであり得る。適切な反応性アルデヒドは、4−ヒドロキシ−2−ノネナール、4−オキソ−2−ノネナール(ONE)、マロンジアルデヒドおよびアクロレインを含むが、これらに限定されない。アルデヒドはまた、アルデヒド基を連結する2〜25個の炭素原子のモノ不飽和または多不飽和炭素鎖を有するジアルデヒドであり得る。疎水性有機物質はN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ立体配座を安定化するので、不溶性フィブリル立体配座へのさらなる凝集が防止される。
【0045】
さらなる実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを、非イオン性および両性イオン性界面活性剤などの、しかしこれらに限定されない疎水性界面活性剤によって修飾することができる。そのような界面活性剤の例は、Triton X−100 (ポリエチレングリコールp−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)、Tween−20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween−80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)およびBrij界面活性剤(脂肪アルコールのポリオキシエチレンエーテル)などの非イオン性界面活性剤、ならびにCHAPS(3−[(3−コルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)などの両性イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。
【0046】
他の適切な安定化剤は胆汁酸誘導体を含み、その例は、コール酸塩、デオキシコール酸塩およびタウロコール酸塩ならびにそれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0047】
安定化剤はまた、天然の生物学的分子の群から選択することができ、その例は、トリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ガングリオシド、コレステロール、コレステロールエステル、長鎖(例えば約6〜30個の炭素原子を含む)アルコール、および上記物質の任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0048】
安定化はまた、酒石酸ジスクシンイミジル、スベルイミド酸ビススルホスクシンイミジル、3,3−ジチオビス−スルホスクシンイミジルプロピオネートおよびそれらの任意の組み合わせなどの、しかしこれらに限定されないタンパク質架橋剤を使用して実施し得る。
【0049】
もう1つの実施形態では、安定化N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは1−α−ヒドロキシ−セコステロールを安定化剤として含む。
【0050】
安定化剤は、架橋によるものを含めて、N末端切断型Aβのモノマおよび/もしくはプロトフィブリル/オリゴマまたはそれらの組合せに結合して、安定化N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを形成し得る。例えば、HNEおよびONEなどの不飽和脂肪酸に基づく反応性アルデヒドは、アルデヒド基または二重結合またはその両方によってオリゴマに結合し得る。後者はその後オリゴマの架橋を生じさせる。HNEは、例えば、オリゴマのヒスチジンおよびリシンに共有結合し得る。同様に、ONEはヒスチジンおよびリシンに共有結合し得る。アルデヒドはシッフ塩基を介してリシンに結合することができ、またはヒスチジンは、不飽和炭素鎖中の二重結合の炭素原子への求核攻撃(nucleophilic attack)を介して結合し得る。安定化剤、例えばHNEおよびONEなどの反応性アルデヒドとN-末端切断型Aβペプチドとの間の化学量論は、2:1〜50:1またはそれ以上の広い範囲内で変動し得る。特定の実施形態では、20:1を上回る、例えば25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1およびそれ以上のHNE修飾値は、望ましい高いプロトフィブリル形成を有する生成物を提供する。加えて、ONEに関しては、さらに低い比率、例えば5:1から、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1およびそれ以上が使用できる。
【0051】
特に明記されない限り、上記で挙げた安定化剤はすべて、N末端切断型Aβに結合することによってそれらの安定化作用をもたらし、安定化反応は、例えば、実施例で説明するようにインキュベーションによって実施し得る。安定化剤はまた、所望に応じて2またはそれ以上の組合せで使用し得る。
【0052】
本発明のさらにもう1つの実施形態では、安定化N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは、以下のタンパク質:α−シヌクレイン、タウ(tau)またはホスホタウの1またはそれ以上を任意の組合せで含み得る。これらの混合物は、付加的な成分が認知症、例えば、限定されることなく、アルツハイマ病およびまたレビ小体型アルツハイマ病を有する患者において認められ、従ってこれらの障害の抗体またはワクチン治療のための治療上重要なネオエピトープを提供するという点で有利である(Tsigelnyら、2008)。もう1つの利点は、付加的な成分がN-末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマの安定性を高めることである。
【0053】
1つの実施形態では、本発明は、アルツハイマ病および/またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するためのワクチンを対象とする。本開示において、ワクチンという用語は、能動免疫のためにヒトまたは動物に投与するための生理的に許容される形態の組成物を指すのに使用される。ワクチンは、治療有効量のN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ、例えば単離されたN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを含有する。単離されたという用語は、可溶性N-末端切断型Aβペプチドを含む、標本媒質、反応物等から分離されたN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを指す。特定の実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは、可溶性N末端切断型Aβペプチドを含む、標本媒質、反応物等から分離されている、上記で論じた安定化N-末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマである。さらなる特定実施形態では、ワクチンは、約10〜500μg/用量(dose)のN-末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマまたは安定化N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを含有する。より特定の実施形態では、ワクチンは、約50〜250μg/用量のN-末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマまたは安定化N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを含有する。
【0054】
能動免疫のためのワクチンは、ワクチン技術分野において従来使用される1またはそれ以上の賦形剤を含有してよく、その例は、賦形剤がヒトおよび動物での使用に関して医薬的に許容されることを条件として、1またはそれ以上の抗菌剤、アジュバント、緩衝剤、塩、pH調整剤、界面活性剤またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。ワクチンはまた、例えば凍結乾燥の間および/または凍結乾燥後のワクチンの安定を高める1またはそれ以上の賦形剤と共に、凍結乾燥し得る。適切な賦形剤の具体的な例は、マンニトールおよび/またはトレハロースを含むが、これらに限定されない。
【0055】
本発明はまた、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合し、および好ましくはN末端切断型Aβモノマにも結合する抗体を対象とする。そのような抗体を作製し、毒性形態のN末端切断型Aβプロトフィブリルに対する特異的抗体の発現を最適化するために、安定化形態を含むN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを抗原として使用し得る。そのような方法では、抗原を非ヒト動物に投与し、前記抗原に対して生成された抗体を収集する。治療効果を最大化するため、本発明によるN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ抗原に対して惹起される抗体は、好都合には、天然形態のN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマおよび好ましくは体内に存在するN末端切断型モノマ、特に凝集した可溶性形態のAβにも高い結合を示す。特定の実施形態では、抗体は、完全長モノマ、特にAβ1〜42モノマおよび/またはアミロイド前駆体タンパク質(APP)および/または他のアミロイドへの結合を示さないかまたは実質的に結合を示さない。そのような抗体を選択する1つの方法は、段階的に選択を行うことであり、最初に少なくとも1つのN-末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合する抗体をスクリーニングし、これらの中で完全長Aβモノマ、特にAβ1〜42モノマ、APPおよび他のアミロイドに結合しないかまたは実質的に結合しない、他の重要な特徴を満たす種を選択して、その後、これらの抗体の中で野生型ヒトN末端切断型Aβプロトフィブリルまたはインビボでの状況を反映するプロトフィブリルの混合物に良好に結合する抗体をスクリーニングする。
【0056】
本発明の1つの態様によれば、本明細書で定義されるプロトフィブリル/オリゴマは、アルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための医薬組成物の製造に使用される。
【0057】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義される抗体は、アルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための医薬組成物の製造に使用される。
【0058】
本発明のさらにもう1つの実施形態では、本明細書で述べる抗体は、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマおよび主として非N-末端切断型Aβペプチドを含むAβプロトフィブリル/オリゴマの両方に結合する。そのような抗体は、1つの抗体を使用することによって、これらのAβプロトフィブリル/オリゴマ形態ならびに脳内の完全長AβとN末端切断型Aβの混合物を含むプロトフィブリルの両方を低下させるのに有利である。従って、Aβ系の2つのエピトープを認識する二重特異性抗体が本発明の1つの態様として提供される。本発明はさらに、そのような二重特異性抗体ならびに有効量の抗体を含有する医薬組成物の投与によってアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるおよび/または治療するための方法を提供する。
【0059】
あるいは、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに対して、および場合によりN末端切断型モノマに対しても特異的な抗体は、非N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ(非切断型)に結合する抗体と組み合わせて治療において使用でき、それによりN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマおよびAβプロトフィブリル/オリゴマ(非切断型)の両方の治療的に重要な低減を達成する。本発明は、抗体のそのような組合せの投与によってアルツハイマ病またはアルツハイマ関連疾患の発症を遅延させるおよび/または治療するための方法を提供する。そのような投与は、両方の抗体を含有する単一医薬製剤を使用して、もしくは2つの組成物として同時に行うことができ、または2つの組成物を連続的に投与することもできる。従って、本発明は、有効量の2つの抗体を含有する医薬組成物、または2つの抗体の各々について1つずつ2つの別個の組成物を含むキットを提供する。
【0060】
生じる抗体は、AβがAβフィブリルに凝集する前にN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合し、潜在的に、既に形成されたフィブリルの量も低減することができるモノクローナルもしくはポリクローナル抗体またはそれらの活性フラグメントであり得る。特定の実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル抗原を、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体またはそれらの活性フラグメントを作製するおよび/または進化させる(evolving)ために、ハイブリドーマ技術、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、哺乳動物細胞ディスプレイおよび細菌ディスプレイなどの方法において使用し得る。より具体的には、モノクローナル抗体の作製のために、ハイブリドーマ技術および/またはファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、哺乳動物細胞ディスプレイもしくは細菌ディスプレイなどの従来技術を使用し得る。そのような抗体は、マウス、ハムスターまたはラットなどのげっ歯動物(rodents)において作製し得る。ひとたび作製されれば、クローンを単離し、それらのそれぞれの抗原特異性に関してスクリーニングする。スクリーニングのために、2つの原則を用いる。第一に、抗体を精製N-末端切断型Aβモノマ、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマおよびフィブリルに対してプローブする。これらの異なる立体配座(conformational)形態のN-末端切断型Aβは、N末端切断型Aβペプチドまたは安定化N末端切断型Aβプロトフィブリル、例えばHNE修飾型および/もしくはONE修飾型をインキュベートし、その後HPLCによってまたは遠心ろ過装置を用いて分画することによって作製できる。N末端切断型Aβフィブリルは、インキュベーション混合物の遠心分離によって単離できる(実施例1)。スクリーニングは、固相酵素免疫検定法(ELISA)によってまたは同様の方法によって実施し得る。第二に、トランスジェニック動物からの組織切片および/または病的アルツハイマヒト脳組織切片に関して抗体を評価する。
【0061】
さらなる実施形態では、抗体は、変異型または野生型であるが、完全長Aβモノマ形態、特にAβ1〜42、APPまたはいかなる他のアミロイドにも結合しないかまたは実質的に結合しない、安定化ならびに非安定化ヒトN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマの両方と反応する。
【0062】
抗体は、ヒト、ヒト化であり得るか、または当業者に公知の方法に従ってヒトにおける抗原性を低減するように改変され得る。抗原性の低減は、例えば抗体のT細胞エピトープを修飾するまたは除去することによって実施し得る。1つの実施形態では、抗体はIgGクラスから、またはより好ましくはIgG1またはIgG4サブクラスから(ヒト抗体)選択される。
【0063】
さらなる実施形態では、抗体はまた、低い補体活性および/または変化したFc受容体結合特性を有し得る。これは、例えば、重鎖(ヒト)のアミノ酸配列の297、322もしくは331位で抗体のFc部分を変異させる、または、例えばマウスIgGにおける対応するアミノ酸を変異させることによって達成され得る(Duncan & Winter, Nature 1988, 332: 738-470およびIdusogie et al, Journal of Immunology, 2000, 164: 4178-84; 前記資料は参照により本明細書に組み込まれる)。低い補体活性はまた、当技術分野で公知の技術に従って、酵素的にまたは他の手段により抗体を脱グリコシル化することによっても達成され得る。抗体の変化したFc受容体結合特性は、糖タンパク質に結合しているオリゴ糖構造を変化させることによって達成され得る(Jeffries, Nature, 2009, 8: 226-234)。抗体は、例えば血液脳関門透過性および神経細胞取り込みを改善するために、例えばF(ab)、F(ab)およびダイアボディ(DiFabody)から選択されるFabフラグメントまたは、例えばscFv−FcおよびscFabから選択される一本鎖抗体であり得る。それ故本明細書で使用される抗体が、抗原によって惹起される完全長タンパク質またはその活性フラグメントを指すことは明白である。
【0064】
より具体的な実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ抗原をSEC−HPLCによって分画し、単離する。画分を細胞培養モデルにおいてそれらのそれぞれの毒性に関して評価し、最も強い毒性を有する抗原画分を抗体作製のための抗原としてまたは能動免疫用の抗原として選択する。試料標本はまた、毒性を評価するために直接使用することもでき、最も顕著な毒性を示す試料を、抗体の選択および/もしくは作製のための抗原としてまたは能動免疫用の抗原として、好都合に使用し得る。
【0065】
N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ抗体は、本発明によるN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを直接患者に投与すること(能動免疫)、または抗原に対するモノクローナルもしくはポリクローナル抗体を惹起するためにげっ歯動物、例えばマウスもしくはウサギを免疫することによる投与に応答して形成され、それらをアルツハイマ病およびアルツハイマ関連障害などの神経変性障害を治療するための受動免疫プロトコールにおいて適用する。受動免疫の場合、特定の実施形態では、患者に投与する前に抗体をヒト化する。
【0066】
能動免疫プロトコールに従って、選択されたN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ抗原を投与し、顕著な毒性を有するN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ種、特にプロトフィブリル/オリゴマ種に対する立体配座特異的抗体を生成する。受動免疫プロトコールに従って、そのようなN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ種に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体は、抗体の反復注射後にそれらの作用を及ぼす。
【0067】
選択的な実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合する抗体は、対照ヒト被験者またはアルツハイマ病を有する患者からの白血球に由来するヒト抗体であり得る。確立された技術に従って白血球からハイブリドーマを作製し、N末端切断型Aβプロトフィブリル/モノマおよび安定化N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合するものをスクリーニングする。N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに対するヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト抗体ライブラリをN末端切断型Aβプロトフィブリル/モノマへの結合に関してスクリーニングすることによって得られる。ヒト対照被験者またはアルツハイマ病もしくはアルツハイマ関連疾患を有する患者からの血液中に存在するN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに対する自己抗体も、使用のために単離し得る。前記自己抗体は、例えば収率および経済性を改善するためにCHO細胞において、組換え(recombinant)DNA技術によって配列決定し、作製することができる。
【0068】
特定の実施形態では、前述した抗体は、例えば投与に適する、組成物中で提供される。そのような組成物は、本明細書で述べる抗体、および医薬組成物中で従来使用される1またはそれ以上の賦形剤を含有し得る。抗体は治療有効量で含有される。特定の実施形態では、組成物は、意図される受容者の体重kg当たり約0.1〜5mg、またはより具体的には約0.5〜2mgの量の抗体を含有する。
【0069】
適切な賦形剤としては、そのような賦形剤がヒトおよび/または動物での使用に関して医薬的に許容されることを条件として、1またはそれ以上の抗菌剤、アジュバント、緩衝剤、塩、pH調整剤、界面活性剤またはそれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。組成物は、例えば凍結乾燥の間および/または凍結乾燥後の抗体の安定を高める賦形剤と共に、凍結乾燥された組成物であり得る。マンニトールおよび/またはトレハロースは凍結乾燥に適する賦形剤の非限定的な例である。
【0070】
本明細書で述べるワクチンおよび抗体は、個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害を予防する、その発症を遅延させるまたは治療するための1またはそれ以上の方法において使用し得る。そのような方法は、本明細書で述べる抗体またはワクチンを個体に投与することを含む。個体は、例えば、アルツハイマ病に罹患していることが疑われるまたは罹患する危険度が高い被験者である。
【0071】
被験者は、以下の特徴のいずれかを呈することによってそのような障害を有することが疑われ得る:早期疾患症状、陽性脳画像検査結果およびτまたはP−τのレベル上昇。脳画像検査方法の例としては、DaTscan(123I−イオフルパン)または本明細書で述べるモノクローナル抗体を使用することによる陽電子放射断層撮影法(PET)を含むが、これらに限定されない。
【0072】
アルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の危険度が高いまたは前記疾患を有することが疑われる被験者を同定することにより、本明細書で述べる本発明の治療によって、例えばワクチン/抗原または抗体での能動または受動免疫を使用することによって、障害のさらなる発現が予防されるまたは発症もしくは進行が遅延される。
【0073】
本明細書で述べる本発明の抗体はまた、検出方法においても使用でき、その具体的な例は、抗体を使用して、インビトロおよびインビボでN-末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマおよび/またはN-末端切断型Aβモノマ種の変化したレベルを検出する診断免疫測定法を含む。標的形態のN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマは、種々のアルツハイマ関連障害または他の神経変性障害を有する患者からの種々の組織および体液において特異的に変化していることがあり、従ってアルツハイマ病およびアルツハイマ関連障害、特に上記で挙げたものについての早期生化学的マーカとして役立ち得る。
【0074】
より具体的には、可溶性N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマをインビトロで検出する方法は、本発明による抗体を、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマおよび/または非N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを含有するまたは含有することが疑われる生物学的試料に添加し、抗体とN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマおよび/または非N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマとの間で形成される任意の複合体を検出して、その濃度を測定することを含む。生物学的試料は、例えば血漿、脳脊髄液(CSF)または脳生検であり得る。もう1つの実施形態では、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマおよび/または非N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマをインビボで検出する方法は、脳内にN末端切断型プロトフィブリル/オリゴマおよび/または非N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマの病的なレベルまたは種を担持することが疑われる個体に、検出可能なマーカで標識された本発明による抗体を投与し、マーカの検出によって抗体とN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマおよび/または非N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマとの間で形成される任意の複合体の存在を検出することを含む。
【0075】
N末端切断型Aβ種に対する抗体を標識するために、当業者は、検出方法の選択に依存して、様々な選択肢、例えば、少し例を挙げるだけでも、131I、14C、Hまたは58Gaなどの放射性リガンドが利用可能である。特に、放射性標識オリゴマ特異的抗体によるPETは、診断、治療観測等のために極めて重要であると考えられる。従って、本発明は、診断および治療観測のための様々な方法において使用するための、当業者によって容易に標識される抗体を提供する。
【0076】
前述した方法および技術に従って、本明細書で述べる抗原および抗体を、アルツハイマ病理についての細胞培養モデルおよび/またはトランスジェニック動物モデルにおいてそれらの潜在的治療能に関して評価し得る。
【0077】
本発明によるN末端切断型Aβ形態に対する抗体はまた、アルツハイマ病を診断する患者試料におけるN末端切断型Aβレベルの測定のための免疫検定法においても利用される。診断アッセイにおいて適用される検出方法は、主として固相酵素免疫検定法(ELISA)および/またはウエスタンブロット法などの免疫測定法に基づく。アルツハイマ病の初期徴候を有する患者またはこれらの障害を発現する危険度が高い個体からの広い範囲の組織が、それらのN-末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ/モノマのレベルに関して検討され、そのような組織は、血漿、脳脊髄液(CSF)および脳生検を含むが、これらに限定されない。
【実施例】
【0078】
本発明の様々な態様を以下の実施例において説明する。
【0079】
[実施例1]Aβ3(pE)〜42切断型プロトフィブリル/オリゴマの作製
凍結乾燥Aβ3(pE)〜42を、100μMの最終濃度になるように10mM NaOHに溶解する。リン酸緩衝食塩水、pH7.4を、50μMの最終ペプチド濃度になるように添加する。ペプチド溶液を室温または37℃で5〜15分間インキュベートする。凝集プロセスがロットごとにおよびまたバイアルごとに大きく異なるので、より大きな反応容量の設定の前に、小規模なパイロット反応速度実験において最適プロトフィブリル収率のためのインキュベーション時間を決定する。インキュベーション後、試料を16000×g、+4℃で5分間遠心分離して原線維状物質を除去し、その後前記物質をペレット化する。上清は、プロトフィブリル/オリゴマおよび様々な量のAβ3(pE)〜42モノマを含有する。上清100μlを、0.1〜0.6%Tween−20を含むPBSで平衡させたSuperdex 75カラムに注入する。80μl/分の流速でモノマからのプロトフィブリルの分離を実施する。UV吸光度を214および280nmの波長によって観測する。12〜13分で溶出する空隙ピークはAβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマを含む(図1参照)。12〜13分で溶出する画分を収集することにより、モノクローナルおよび/またはワクチン開発のための高度に純粋なAβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマを単離する。
【0080】
[実施例2]Aβ3〜42切断型プロトフィブリル/オリゴマの作製
凍結乾燥Aβ3〜42を、100μMの最終濃度になるように10mM NaOHに溶解する。リン酸緩衝食塩水、pH7.4を、50μMの最終ペプチド濃度になるように添加する。ペプチド溶液を室温または37℃で5〜15分間インキュベートする。凝集プロセスがロットごとにおよびまたバイアルごとに大きく異なるので、より大きな反応容量の設定の前に、小規模なパイロット反応速度実験で最適プロトフィブリル収率のためのインキュベーション時間を決定する。+37℃でのインキュベーション後、試料を16000×g、+4℃で5分間遠心分離して原線維状物質を除去し、その後前記物質をペレット化する。上清は、プロトフィブリル/オリゴマおよび様々な量のAβ3〜42モノマを含有する。上清100μlを、0.1〜0.6%Tween−20を含むPBSで平衡させたSuperdex 75カラムに注入する。80μl/分の流速でモノマからのプロトフィブリル/オリゴマの分離を実施する。UV吸光度を214および280nmの波長によって観測する。12〜13分で溶出する空隙ピークは、Aβ3〜42プロトフィブリル/オリゴマを含む。12〜13分で溶出する画分を収集することにより、モノクローナルおよび/またはワクチン開発のための高度に純粋なAβ3〜42プロトフィブリル/オリゴマを単離する。
【0081】
[実施例3]安定化されたAβ3(pE)〜42切断型プロトフィブリル/オリゴマの合成
N末端切断型Aβプロトフィブリル抗原(すなわちプロトフィブリルおよび他のオリゴマを含む抗原)を生成するため、上述したヒト野生型N末端切断型Aβ3(pE)〜42を35〜750μMの濃度で使用する。α−シヌクレインがHNEおよび/またはONE(Cayman Chemical社、Ann Arbor、ミシガン州、米国)に結合している試料中で、これらの化合物を0.01〜65mMの濃度で使用する。典型的な実験では、HNEおよび/またはONEとα−シヌクレインの間のモル比は1:1から100:1の範囲であるが、それぞれの化合物の割合はこの化学量論に限定されない。特定の実験では、HNE修飾および/またはONE修飾試料を還元するために水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を0.1〜100mMの濃度で使用する。一部の場合には、α−シヌクレインアミノ酸は、前記HNE修飾の間に、HNEと結合する不安定で可逆的なシッフ塩基を形成するアミノ酸(リシンなど)を含み得る。別の場合には、α−シヌクレインアミノ酸は、前記ONE修飾の間に、ONEと結合する不安定で可逆的なシッフ塩基を形成するアミノ酸(リシンなど)を含み得る。水素化ホウ素ナトリウムでの還元は、前記シッフ塩基結合を安定化する。試料を、撹拌しながらまたは撹拌せずに37℃で30分間から30日間インキュベートする。試料の分子組成を確認するため、いくつかの方法を利用する。非修飾Aβ3(pE)〜42またはHNE修飾および/もしくはONE修飾Aβ3(pE)〜42または他の反応性アルデヒドで修飾したAβ3(pE)〜42を16,900×g、21℃で5分間遠心分離して、任意の不溶性フィブリルを除去する。その後、SEC−HPLCシステムと214nm〜280nmのUV検出を用いて上清を分画し(以下で詳細に述べる)、α−シヌクレインプロトフィブリル/オリゴマおよびモノマを単離する。別の実験では、5〜1000kDaの分子カットオフ値で遠心ろ過装置を使用してα−シヌクレインプロトフィブリル/オリゴマおよびモノマを分離する。典型的な実験では、試料であるHNEおよび/またはONE修飾Aβp3〜42 500μlを、Microcon遠心ろ過装置(Millipore社、Billerica、マサチューセッツ州)またはVivaspin500遠心装置(Sartorius社、Goettingen、ドイツ)のいずれかを100kDaのカットオフ値で使用して遠心分離する。試料を1000〜15000×gにわたる速度で5〜30分間遠心分離し、保持液を収集して、この保持液はN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマの大部分を含む。
【0082】
−HNE修飾N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマ
典型的な実験では、ヒト野生型N末端切断型Aβ3(pE)〜42 140μMを5.6mM HNEと共に(例えばHNEとAβ3(pE)〜42を40:1の比率で)37℃で20時間インキュベートし、その後、Zeba脱塩スピンカラム(Pierce Biotechnology社、Rockford、イリノイ州、米国)、Vivaspin500遠心装置(Sartorius社、Goettingen、ドイツ)またはMicrocon遠心ろ過装置(Millipore社、Billerica、マサチューセッツ州)のいずれかを製造者の指示に従って使用して過剰の非結合HNEを除去する。この初期HNE修飾段階後、試料を直接分析する。SEC−HPLC分析の前に、すべての試料を16,900×g、22℃で5分間の遠心分離に供し、可溶性画分だけを、Superose 6 PC3.2/30カラムを用いたSEC−HPLCによって分析する。HNE安定化Aβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマは約10〜15分にピーク溶出する。
【0083】
−ONE修飾Aβ3(pE)〜42
典型的な実験では、ヒト野生型Aβ3(pE)〜42(140μM)を4.2mM ONEと共に(例えばONEとAβ3(pE)〜42を40:1の比率で)37℃で20時間インキュベートし、Zeba脱塩スピンカラム(Pierce Biotechnology社、Rockford、イリノイ州、米国)、Vivaspin500遠心装置(Sartorius社、Goettingen、ドイツ)またはMicrocon遠心ろ過装置(Millipore社、Billerica、マサチューセッツ州)を製造者の指示に従って使用して過剰の非結合ONEを除去する。SEC−HPLC分析の前に、すべての試料を16,900×g、22℃で5分間の遠心分離に供し、可溶性画分だけを、Superose 6 PC3.2/30カラムを用いたSEC−HPLCによって分析する。ONE安定化Aβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマは約10〜15分に主要ピークとして溶出する。
【0084】
−HNEおよびONE修飾Aβ3(pE)〜42
典型的な実験では、ヒト野生型Aβ3(pE)〜42(140μM)を4.2mM HNEおよび4.2mM ONEと共に37℃で20時間インキュベートし、Zeba脱塩スピンカラム(Pierce Biotechnology社、Rockford、イリノイ州、米国)、Vivaspin500遠心装置(Sartorius社、Goettingen、ドイツ)またはMicrocon遠心ろ過装置(Millipore社、Billerica、マサチューセッツ州)を製造者の指示に従って使用して過剰の非結合HNEおよびONEを除去する。すべての試料を16,900×g、22℃で5分間の遠心分離に供し、可溶性画分だけを、Superose 6 PC3.2/30カラムを用いたSEC−HPLCによって分析する。HNEおよびONE安定化Aβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマは約10〜15分に主要ピークとして溶出する。
【0085】
[実施例4]N末端切断型プロトフィブリル/オリゴマで免疫したマウスにおけるAβ3(pE)〜42抗体
−免疫/ポリクローナル抗体
免疫スキームにおいてBALB/cマウスを使用する。初期免疫(例えば3〜6回)のために、リン酸緩衝食塩水(PBS)+0.1%Tween 20に希釈したAβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマ製剤30〜50μgをISCOM 5μlと共にマウスに注射する。最終免疫のために、Aβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマ製剤30〜50μgをISCOMなしでマウスに注射する。免疫したマウスからの血漿をAβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマに対する反応性に関して分析する。ポリクローナル抗体応答の特異性をELISAによって分析する。典型的な実験では、平底高結合96穴ポリスチレンマイクロタイタプレートをAβ反応性抗体で被覆し、ウエルをPBS+0.05%Tween−20でブロックして、その後Aβ3(pE)〜42モノマまたはAβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマをPBS/0.1%BSA/0.05%Tween−20に希釈し、1ng/穴の最終濃度で添加する。免疫マウスからの血漿試料(免疫スケジュールの間に種々の時点で採取する)をPBS/0.1%BSA/0.05%Tween−20に希釈し、ウエルに添加する。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウスIgG抗体(Southern Biotech)を1/10000の希釈で二次抗体として使用する。TMB(Neogen Corp.)を用いて免疫反応性を視覚化する。
【0086】
血清中で、Aβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマを特異的に認識する抗体を検出する。上述したのと同様のELISA試験を他の切断型または非切断型のAβ42に関して、モノマとしておよびプロトフィブリル/オリゴマとしての両方で実施し、ポリクローナル応答の特異性を評価する。
【0087】
−ハイブリドーマ/モノクローナル抗体
脾細胞を単離し、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)中で摩砕して、1200×gで10分間遠心分離し、細胞富化ペレットを収集する。細胞をPBSでさらに洗浄し、1200×gで10分間遠心分離する。細胞ペレットを、1%抗生物質を添加したダルベッコ最小必須培地(DMEM、Invitrogen社、La Jolla、カリフォルニア州、米国)に再懸濁する。脾細胞をDMEM中でSp2/0細胞(マウス骨髄腫細胞株)と1:2の比率で混合する。細胞融合を促進するため、ポリエチレングリコール(Sigma-Aldrich社、St. Louis、ミズーリ州、米国)1mlを細胞混合物に添加し、DMEMを添加して反応を停止させる。細胞を採集し、ペレットを、10%(v/v)ウシ胎仔血清(Cambrex社、Charles City、アイオワ州、米国)を添加した、同時にHAT培地添加物Hybri−Max(商標)(Sigma-Aldrich社、St. Louis、ミズーリ州、米国)、10%(v/v)BM馴化培地(Roche Diagnostics Scandinavia社、Bromma、スウェーデン)、1%(v/v)ピルビン酸ナトリウム(Cambrex社、Charles City、アイオワ州、米国)、1%(v/v)抗生物質(Sigma-Aldrich社、St. Louis、ミズーリ州、米国)および1%(v/v)L−グルタミン(Cambrex社、Charles City、アイオワ州、米国)も含有するDMEMに再懸濁して、細胞を96穴細胞培養プレートに塗布する。
【0088】
生成したハイブリドーマによって産生されたAβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマ反応性抗体をスクリーニングするため、ELISAプロトコールを使用する。典型的な実験では、平底高結合96穴ポリスチレンマイクロタイタプレートをAβ反応性抗体で被覆し、ウエルをPBS+0.05%Tween−20でブロックして、その後Aβ3(pE)〜42モノマまたはAβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマをPBS/0.1%BSA/0.05%Tween−20に希釈し、1ng/穴の最終濃度で添加する。ハイブリドーマからの細胞培養上清をウエルに添加する。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウスIgG抗体(Southern Biotech)を1/10000の希釈で二次抗体として使用する。強化K−Blue(登録商標)基質(TMB)を用いて免疫反応性を視覚化する。Aβ3(pE)〜42反応性ハイブリドーマクローンを選択し、限界希釈アッセイ(LDA)を用いてさらにサブクローニングする。
【0089】
上述したのと同様のELISAを他の切断型または非切断型のAβ42に関して、モノマとしておよびプロトフィブリル/オリゴマとしての両方で実施し、ハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体の特異性を評価する。
【0090】
Aβ3(pE)〜42プロトフィブリル/オリゴマ製剤を先に述べたように注射することによってハイブリドーマを生成する。他の形態の切断型Aβ42プロトフィブリル/オリゴマならびにHNEおよび/もしくはONEまたは他のアルデヒドで修飾した切断型Aβ42プロトフィブリル/オリゴマ製剤も、他の形態の切断型Aβ42プロトフィブリル/オリゴマに結合するモノクローナル抗体を開発するための抗原として使用し、上述したようにELISAスクリーニングを用いて試験する。
【0091】
本発明による抗体に関する試験からの結合データは、Aβ3(pE)〜42モノマならびに100%Aβ3(pE)〜42を含むプロトフィブリル/オリゴマに対する高い親和性、および完全長Aβ1〜42モノマには実質的に結合しないことを明らかにする。これは、これらすべての種に対して高い親和性を示し得るまたは完全長Aβだけを含むプロトフィブリルに効率的に結合し得るが、N末端切断型Aβ形態には実質的に親和性を示さない、先行技術の抗体とは明確に異なる。
【0092】
本明細書で述べる特定の実施例および実施形態は、事実上単なる例示であり、特許請求の範囲によって定義される本発明の限定を意図するものではない。さらなる実施形態および実施例ならびにそれらの利点は、本明細書を考慮して当業者に明らかであり、特許請求される本発明の範囲内である。
【0093】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するためのワクチンであって、N末端切断型Aβを含む生理的に許容されるプロトフィブリル/オリゴマの治療有効量を含有する、ワクチン。
【請求項2】
プロトフィブリル/オリゴマが少なくとも50%のN末端切断型Aβを含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
プロトフィブリル/オリゴマがAβx−yの1またはそれ以上を含み、前記式中、任意の組合せで、xは2、3、3(pE)、4、5、6、7、8、9、10、11、11(pE)または12であり、およびyは38、39、40、41、42または43である、請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項4】
プロトフィブリル/オリゴマが、任意の組合せでAβ2〜42、Aβ3(pE)〜42、Aβ4〜42またはAβ11(pE)〜42の1またはそれ以上を含む、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
プロトフィブリル/オリゴマがAβ3(pE)〜42を含む、請求項4に記載のワクチン。
【請求項6】
N末端切断型プロトフィブリル/オリゴマが疎水性有機物質で安定化されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項7】
個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための方法であって、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のワクチンを個体に投与することを含む方法。
【請求項8】
個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための抗体であって、1またはそれ以上の切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに結合するが、完全長Aβモノマとは交差反応性を示さないかまたは実質的に交差反応性を示さず、場合によりN末端切断型Aβモノマに交差反応性を示す、抗体。
【請求項9】
25nMまたはそれ以下のIC50値を有する、1種類のAβx−yを少なくとも80%含む、または2種類もしくはそれ以上のAβx〜yの1つの組合せを少なくとも80%含むプロトフィブリル/オリゴマに結合し、前記式中、xが2、3、3(pE)、4、5、6、7、8、9、10、11、11(pE)または12であり、およびyが38、39、40、41、42または43である、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
プロトフィブリル/オリゴマが、任意の組合せでAβ2〜42、Aβ3(pE)〜42、Aβ4〜42またはAβ11(pE)〜42の1またはそれ以上を含む、請求項8または9に記載の抗体。
【請求項11】
100nMまたはそれ以下のIC50値を有する、100%Aβ3(pE)〜42を含むプロトフィブリル/オリゴマに結合する抗体。
【請求項12】
モノクローナルである、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
抗体がヒト、ヒト化であるか、またはヒトにおける抗原性を低減するように改変されている、請求項8乃至12のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
抗体がIgGクラス、例えばIgG1またはIgG4サブクラスである、請求項8乃至13のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
抗体が低い補体活性を有する、請求項8乃至14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項16】
抗体がFabフラグメント、例えばF(ab)、F(ab)またはダイアボディである、請求項8乃至15のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項17】
請求項8乃至16のいずれか1項に記載の抗体を、プロトフィブリル/オリゴマを含有するまたは含有することが疑われる生物学的試料に添加し、抗体とプロトフィブリル/オリゴマの間で形成される複合体の濃度を測定することを含む、N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマを検出するための方法。
【請求項18】
抗体がN末端切断型Aβモノマに交差反応性を示し、ならびに該方法が、抗体とN末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマの間で形成される複合体、および抗体とN末端切断型Aβモノマの間で形成される複合体の濃度を測定する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項8乃至16のいずれか1項に記載の抗体および医薬的に許容される緩衝剤を含有する組成物。
【請求項20】
アルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の治療において使用するための、請求項8乃至16のいずれか1項に記載の抗体または請求項19に記載の組成物の使用。
【請求項21】
個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための方法であって、非N末端切断型Aβプロトフィブリル/オリゴマに特異的な抗体と組み合わせて、請求項8乃至16のいずれか1項に記載の抗体を個体に投与することを含む方法。
【請求項22】
個体においてアルツハイマ病またはアルツハイマ関連障害の発症を遅延させるためまたは治療するための方法であって、N末端切断型Aβを含むプロトフィブリル/オリゴマ上の1つのエピトープおよび非N末端切断型Aβを含むプロトフィブリル/オリゴマ上の1つのエピトープに結合する抗体を個体に投与することを含む方法。
【請求項23】
アルツハイマ病またはアルツハイマ関連疾患の発症を遅延させるためまたは治療するための医薬組成物を製造するための、請求項8乃至16のいずれか1項に記載の抗体の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532094(P2012−532094A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516964(P2012−516964)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052947
【国際公開番号】WO2011/001366
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(505164081)バイオアークティック ニューロサイエンス アーベー (2)
【Fターム(参考)】