説明

アルテミシニンの二量体誘導体、および抗癌療法における用途

本発明は、式(I)の10−トリフルオロメチル化アルテミシニンの二量体誘導体、またはその薬理学的に許容可能な塩、ならびに、癌の治療におけるそれらの使用およびそれらの製造方法に関する:
【化1】


(式中、BおよびBはC=O、CHOH、およびCHから選択される)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、16位の炭素を介して結合した10−トリフルオロメチルアルテミシニンの二量体誘導体、および癌の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1992年に[Acta Pharmacol. Sin., 13, 541-3, (1992)]でアルテミシニン誘導体の細胞傷害特性が論証され、それによって、それらの化合物を抗癌剤として利用できる可能性が生じた。これに続き、アルテミシニンの二量体誘導体が、場合によってはアルテミシニンの単量体よりも高い細胞傷害活性を有することが明らかになった[J. Nat. Prod., 56, 849-56, (1993)、J. Nat. Prod., 60, 325-30, (1997)]。
【0003】
このため、世界中のいくつかの研究チームが、新規なアルテミシニン二量体の調製を目的とする多くの研究を行った。これらの二量体の大半は、ジヒドロアルテミシニンのエーテル誘導体[Bioorg. Med. Chem., 5, 1257-65, (1997)]、または、代謝的により安定した非ケタールの類似体であって、ケタール官能基の環外の酸素原子がCH基(下式におけるX基)に置換された類似体[J. Med. Chem., 42, 4275-80, (1999)]のC−10二量体、すなわち、10位の炭素を介して結合した二量体である。C−16二量体も記載されている[J. Med. Chem., 44, 4688-95, (2001)]が、それらの一部は不安定であり、溶液中において、または室温での保管中において自然分解することが判明している。これらの種々のファミリーの式を以下に示す。
【0004】
【化1】

【0005】
アルテミシニンおよびその誘導体(特に知られているものとしてはアルテメテルまたはアルテスニン酸ナトリウムなど)は、マラリアの治療に広く用いられている。しかし、これらの誘導体の主な短所は、アルテミシニン母核の低いバイオアベイラビリティにあり、そのケタール官能基は生体内で急速に加水分解され、その結果、不活性な代謝産物をもたらす[J. Med. Chem., 47, 2945-64, (2004)]。
【0006】
【化2】

【0007】
マラリア治療用の新規な安定したアルテミシニン誘導体を探すという範囲内で、シャトネー・マラブリー(Chatenay-Malabry)の薬学部のバイオCIS研究所(BioCIS Laboratory)が行った研究によって、10−トリフルオロメチル化アルテミシニン誘導体の合成が実現された(国際公開第03/035651号)。トリフルオロメチル基の導入はケタール官能基を安定化させ、その結果、特にその化合物を経口投与した場合に、化合物の安定性がかなり有意に向上すると共に、その作用期間が延長される。
【0008】
最近のレビューには、アルテミシニンのトリフルオロメチル化誘導体の利点が、化学および薬理学の両方の面で正確に詳述されている[J.-P. Begue, D. Bonnet-Delpon, ChemMedChem, 2, 608-24, (2007)]。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、下式Iの10−トリフルオロメチル化アルテミシニンの二量体誘導体、またはその薬理学的に許容可能な塩をその目的としている:
【化3】

[式中、
およびBは同一かまたは異なっており、C=O、CHOH、およびCHから、有利にはC=OおよびCHから選択され、好ましくはそれぞれCH基を表し、
Aは、−S−、−S−S−、−SO−、−SO−、−Se−Se−、−O−P(O)(OR1)−O−、−NR2−、−O−R4−、および−O−NR2−から、好ましくは−S−、−S−S−、−SO−、−SO−、−Se−Se−、−O−P(O)(OR1)−O−、および−O−NR2−から選択される二価の基を表すか(ここで、
R1は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいアリール基を表し、
R2は、水素、NH基で置換されていてもよいC−Cのアルキル基、C−Cのアルケニル基、C−Cのアルキニル基、C−Cのシクロアルキル基、アリール−(C−C)−アルキレン基、置換されていてもよいアリール基、または、−COR3基、−COR3基、もしくは−SOR3基を表し、
R3は、水素、C−Cのアルキル基、C−Cのシクロアルキル基、アリール−(C−C)−アルキレン基、または置換されていてもよいアリール基を表し、
R4は、C−Cのアルキレン基、C−Cのアルケニレン基、またはC−Cのアルキニレン基を表す)、または
X−Y−Z基を表す(ここで、
XおよびZは同一かまたは異なっており、O、S、NR2(R2は上記定義のとおりである)、および、BまたはBに結合した窒素原子を少なくとも1つ含んでなる複素環から選択され、
Yは、C−Cのアルキレン基、C−Cのシクロアルキレン基、およびC−Cのアルケニレン基、
−CO−Y1−CO基(Y1は、NHR2基(R2は上記定義のとおりである)で置換されていてもよいC−Cのアルキレン基を表し、好ましくは、Y1は−(CH−基(qは1、2、3、または4の整数を表す)を表す)、
式−[(CH−NR2−(CH−のポリアミン基(R2は上記定義のとおりであり、n、m、およびpは互いに独立して1、2、3、または4の整数を表す)、ならびに
−(CO)r−(CH)s−Y2−(CH−(CO)−基(ここで、
rおよびuは互いに独立して0または1の整数を表し、
sおよびtは互いに独立して0、1、2、3、または4の整数を表し、r、uがそれぞれ0である場合には、s、tはそれぞれ0であることはできず(s, respectively t, cannot be equal to 0 if r, respectively u, is equal to 0)、
Y2は−S−、−S−S−、−SO−、−SO−、−Se−Se−、−O−P(O)(OR1)−O−(R1は上記定義のとおりである)、−NR2−(R2は上の定義のとおりである)、C−Cのシクロアルキレン基、および置換されていてもよい芳香族複素環または芳香族環から選択される)から選択される)]。
【0010】
本発明の二量体誘導体は、上記のようなフッ素化モノマーの利点を有する一方で、優れた抗腫瘍特性を有する。
【0011】
本発明において、「C−Cのアルキル」基とは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、または更にはペンチル基のように、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の一価の飽和炭化水素鎖を意味するものとされる。この基はメチル基であるのが有利である。
【0012】
本発明において、「C−Cのアルケニル」基とは、例えばビニル基およびアリル基等のように、1〜6個の炭素原子を含み、少なくとも1つの二重結合を含んでなる直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素鎖を意味する。
【0013】
本発明において、「C−Cのアルキニル」基とは、例えばプロピニル基のように、1〜6個の炭素原子を含み、少なくとも1つの三重結合を含んでなる直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素鎖を意味する。
【0014】
本発明において、「アリール基」または「芳香族環」とは、例えばフェニル基またはナフチル基(フェニル基が有利である)のように、好ましくは5〜10個の炭素原子を含み、1つ以上の縮合環を含んでなる一価または二価の芳香族基を意味する。この芳香族基は所望により、特にハロゲン、上で定義したようなC−Cのアルキル基、−OR基、−NRR’基、および/または−SOR基(RおよびR’は相いに独立して水素、または上で定義したようなC−Cのアルキル基を示す)で置換されていてよい。
【0015】
本発明において、「芳香族複素環」とは、例えばピリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、インドリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、フラニル基、チエニル基、または更にはピロリル基のように、上で定義したような芳香族基のうち、1つ以上、好ましくは1〜4個の炭素原子がヘテロ原子、具体的には酸素、窒素、または硫黄で置き換えられているものを意味する。芳香族複素環はピリジニル基またはチエニル基であるのが有利である。この芳香族複素環は所望により、特にハロゲン、上で定義したようなC−Cのアルキル基、−OR基、−NRR’基、および/または−SOR基(RおよびR’は互いに独立して水素、または上で定義したようなC−Cのアルキル基を示す)で置換されていてよい。
【0016】
本発明において、「複素環」とは、1つ以上の縮合環、好ましくは1つまたは2つの環、更に好ましくは単一の環を含んでなり、5〜10個の環原子を含んでなる芳香族の不飽和または飽和環式炭化水素化合物であって、1つ以上の環炭素原子が1つ以上のヘテロ原子、有利には1〜4個、更に有利には1〜3個のヘテロ原子、例えば硫黄原子、窒素原子、または酸素原子で置き換えられており、これらのヘテロ原子の少なくとも1つが窒素(BまたはBに結合していてよい)であるものを意味する。複素環は具体的には、モルホリニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、ピロリル基、インドリル基、テトラゾリル基、または更にはトリアゾリル基であってよい。複素環はピペラジニル基、または1,2,3−トリアゾリルのようなトリアゾリル基であるのが有利である。
【0017】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素、またはヨウ素を示す。
本発明において、「C−Cのシクロアルキル」基は、例えばシクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のように、3〜8個の炭素原子を含む飽和環式炭化水素基を意味する。
【0018】
本発明において、「C−Cのアルキレン」基は、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等のように、1〜6個の炭素原子を含んでなる直鎖または分岐鎖の二価の飽和炭化水素鎖を意味する。
【0019】
本発明において、「C−Cのアルケニレン」基は、例えばビニレン(エテニレン)基またはプロペニレン基のように、2〜6個の炭素原子と少なくとも1つの二重結合とを含んでなる直鎖または分岐鎖の二価の炭化水素鎖を意味する。
【0020】
本発明において、「C−Cのアルキニレン」基は、例えばプロピニレン基のように、2〜6個の炭化水素と少なくとも1つの三重結合とを含んでなる直鎖または分岐鎖の二価の炭化水素鎖を意味する。
【0021】
本発明において、「C−Cのシクロアルキレン」基は、例えばシクロプロピレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,2−シクロペンチレン基等のように、3〜8個の炭素原子を含んでなる二価の飽和環式炭化水素基を意味する。
【0022】
「アリール−(C−C)−アルキレン」基は、本発明の意味においては、上で定義したアリール基に、上で定義したC−Cのアルキレン基が結合したものを意味する。有利には、これはベンジル基であってよい。
【0023】
「薬理学的に許容可能な塩」は特に、薬理学的に許容可能な酸または塩基から得られる塩を意味する。
【0024】
薬理学的に許容可能な酸としては非限定的に、塩化水素酸および臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、もしくは更にはリン酸といった無機酸、または、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、もしくは更にはパルミチン酸といった有機酸を挙げてよい。
【0025】
薬理学的に許容可能な塩基としては非限定的に、例えばアンモニウム塩、または、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、または更にはカルシウム等)の塩を形成する無機塩基、または、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペリジン、または更にはモルホリンのような有機塩基を挙げてよい。
【0026】
本発明の化合物は、好ましくは式(I)の化合物(式中、BおよびBがCH基を表し、Aが、O−CH−CH−O、またはO−CH−CH=CH−CH−O(すなわちX−Y−Z基(X=Z=Oであり、Yはエチレン基またはブト−2−エチレン基を表す)を表す)を表さない。
好ましくは、YはC−Cのアルケニレン基を表さない。
【0027】
好ましくは、R2は水素、C−Cのアルキル基、C−Cのシクロアルキル基、アリール−(C−C)−アルキレン基、置換されていてもよいアリール基、または、−COR3基、−COR3基、もしくは−SOR3基(R3は上記定義のとおりである)を表す。更に好ましくは、R2は水素、メチル等のアルキル基、ベンジル等のアリール−(C−C)−アルキレン基、アセチル等の−CO−((C−C)−アルキル)基、またはベンゾイル等の−CO−アリール基を表す。
【0028】
XおよびZは独立して、O、S、およびNR2(R2は上記定義のとおりである)から選択するのが好ましく、それぞれ酸素原子を表さないのが有利である。
【0029】
Aは、−SO−基もしくは−SO−基、または更には−NMe−(C−C)−アルキレン−NMe−基を表さないのが好ましい。
【0030】
本発明の第1の有利な態様によれば、本発明の二量体誘導体は、少なくとも1つの酸化されていない硫黄原子を含み(すなわち、Aは−S−、−S−S−、または−X−Y−Z−を表し、−X−Y−Z−の場合、少なくともXまたはZはSを表し、および/または、Yは−(CO)−(CH−Y2−(CH−(CO)−を表し、この場合のY2はS、S−S、または、チエニルのように硫黄原子を含む芳香族複素環である)、有利には、そのA基に2つの硫黄原子を含む(すなわち、Aは−S−S−または−X−Y−Z−を表し、−X−Y−Z−の場合、XおよびZはSを表し、Yは上記定義のとおりであるか、または、XまたはZはSを表し、Yは−(CO)−(CH−Y2−(CH−(CO)−を表し、この場合のY2はS、S−S、もしくは、チエニルのように硫黄原子を含む芳香族複素環、または、好ましくはS−Sもしくはチエニルである)。
【0031】
AはX−Y−Z基を表すことになるのが好ましく、この場合、Xおよび/またはZ、有利にはXおよびZは硫黄原子を表し、Yは上記定義のとおりである。
【0032】
本発明の第2の有利な態様によれば、AはX−Y−Z基を表し、この場合、Yは、
−CO−Y1−CO−基(Y1は上記定義のとおりである)、または
−CO−(CH−Y2−(CH−CO−基(s、t、およびY2は上記定義のとおりである)
を表す。
【0033】
この特定の態様では、XおよびZは同一であるのが好ましく、それぞれOまたはNR2を表すのが有利であり、この場合のR2は上記定義のとおりで、水素原子を表すのが好ましい。
【0034】
Y2は−SO−または−SO−を表さないのが有利である。Y2は−S−、−S−S−、−Se−Se−、−NR2−、炭素数3〜8のシクロアルキレン基、または置換されていてもよい芳香族環もしくは芳香族複素環を表すのが好ましい。Y2は、置換されていてもよい芳香族環または芳香族複素環を表すのが更に好ましい。
およびBは同一であり、それぞれCH基を表すのが好ましい。
【0035】
本発明の第3の有利な態様によれば、Aは、少なくとも1つの芳香族複素環または複素環を含み、この複素環は、少なくとも1つの窒素環原子を含む。
【0036】
窒素原子が存在した状態では、本発明の分子の溶解性を向上させる目的で、本発明の分子によって酸付加塩を形成してよい。
【0037】
すなわち、AはX−Y−Z鎖を表すのが好ましく、この場合、
Xおよび/またはZは複素環を表し、および/または、
Yは−(CO)−(CH−Y2−(CH−(CO)−基を表し、この場合のr、s、t、およびuは上記定義のとおりであり、Y2は、置換されていてもよい芳香族複素環を表す。
【0038】
この芳香族複素環および/または複素環は、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、チアゾール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、テトラゾール、または更にはピロールから選択するのが有利である。これらの環はピリジンまたはピペラジンであるのが好ましい。
【0039】
本発明の第4の有利な態様によれば、Bおよび/またはBはCHOH基を表す。
すなわち、溶解性を向上させることができる塩基付加塩を本発明の分子によって得てよい。
【0040】
具体的には、本発明の二量体誘導体は、下記の分子から選択してよい。
【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
有利には、本発明の二量体誘導体は、医薬として、具体的には癌の治療に用いてよい。
【0046】
本発明の目的はまた、上記のような10−トリフルオロメチル化アルテミシニンの二量体誘導体を医薬、特に癌の治療を意図する医薬の製造に使用することにある。
【0047】
本発明はまた、上で定義したような式(I)の化合物のうちの少なくとも1種類を、その化合物を必要としている患者に有効量投与することを含んでなる、癌の治療法にも関する。
【0048】
本発明の目的はまた、上記のような10−トリフルオロメチル化アルテミシニンの二量体誘導体のうちの少なくとも1種類を、薬理学的に許容可能な担体と共に含んでなる医薬組成物である。
【0049】
本発明による化合物は、経口投与、舌下投与、非経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、局所投与、または直腸投与してよく、経口投与、静脈内投与、または皮下投与するのが好ましい。
【0050】
経口投与、舌下投与、非経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、局所投与、または直腸投与用の本発明の医薬組成物では、投与単位形態として、その有効成分を標準的な製剤用担体と混合して、動物またはヒトに投与してよい。好適な投与単位形態は、錠剤、ゼラチンカプセル、散剤、顆粒剤、経口液剤、または懸濁剤のような経口形態、舌下および口腔投与形態、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内、または眼内投与形態、ならびに、直腸投与形態を含んでなる。
【0051】
固体組成物を錠剤として調製するときには、主要有効成分を、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはアカシアゴム等のような製剤用担体と混合する。この錠剤は、サッカロースまたはその他の好適な物質でコーティングしてよく、または、更に、持続性または遅効性作用を有するように、かつ、所定量の有効成分を連続的に放出するように処理してもよい。
【0052】
ゼラチンカプセル調製物は、有効成分を希釈剤と混合し、得られた混合物を軟または硬ゼラチンカプセル中に注入することによって得られる。
【0053】
シロップ剤またはエリキシル剤としての調製物は、有効成分と共に、甘味剤、防腐剤、更には、味覚剤および好適な着色剤を含んでよい。
【0054】
水分散性の散剤または顆粒剤は、分散剤もしくは湿潤剤、または懸濁剤に加えて、矯味剤または甘味剤と混合させた有効成分を含んでよい。
【0055】
直腸投与では、直腸温で溶解する結合剤、例えばカカオ脂またはポリエチレングリコール類と共に調製した座剤が使われる。
【0056】
非経口投与、鼻腔内投与、または眼内投与では、水性懸濁液、等張食塩水、または無菌注射用溶液が使われ、これらは、薬理学的に相溶性の分散剤および/または湿潤剤を含む。
【0057】
また、有効成分は、所望により1種類以上の添加担体と共に、ミクロカプセルとして調合してもよい。
【0058】
本発明の化合物は、1日に1回投与するか、または1日に数回、例えば1日に2回同じ用量で投与する場合、1日当たり0.01mg〜1,000mgを含んでなる用量で使用してよい。1日の投与量は5mg〜500mgを含んでなることが有益であり、10mg〜200mgが更に有利である。これらの範囲を上回る用量を用いる必要がある場合もあり、これについては、当業者自身が考慮することができる。
【0059】
特定の態様では、本組成物は、少なくとも1種類の他の有効成分、有利には抗癌剤から選択した他の有効成分を更に含んでなってもよい。
【0060】
抗癌剤としては非限定的に、6−メルカプトプリン、フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキセート、ラルチトレキセド、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、カルムスチン、フォテムスチン、ストレプトゾシン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ダカルバジン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、L−アスパラギナーゼ、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン、トリプトレリン、リュープロレリン、ゴセレリン、ブセレリン、フォルメスタン、アミノグルテチミド、アナストラゾール、レトロゾール、タモキシフェン、オクトレオチド、およびランレオチドを挙げてよい。
【0061】
本発明の目的はまた、
(i)上記定義した式(I)の化合物のうち少なくとも1種類と、
(ii)癌の治療に特に有用な有効成分の少なくとも1種類と、
を含んでなる、同時に、別々に、または時間的に間隔を置いて使用する(spread out over time use)ための合剤としての医薬組成物である。
【0062】
特筆すべき上記の有効成分としては限定的に、6−メルカプトプリン、フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキセート、ラルチトレキセド、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、カルムスチン、フォテムスチン、ストレプトゾシン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ダカルバジン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、L−アスパラギナーゼ、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン、トリプトレリン、リュープロレリン、ゴセレリン、ブセレリン、フォルメスタン、アミノグルテチミド、アナストラゾール、レトロゾール、タモキシフェン、オクトレオチド、およびランレオチドが挙げられる。
【0063】
上記のような医薬組成物は具体的には、医薬、特に癌治療用の医薬として用いてよい。
また、本発明は、医薬、具体的には癌の治療を目的とした医薬を作るための上記組成物として、ある組成物を使用することにも関する。
【0064】
本発明の化合物は特に、アルテミシニンのブロモ−トリフルオロメチル化中間体誘導体Aからと、ヒドロキシル化誘導体Bから製造してよく、これらの合成については、[J. Med. Chem., 47, 1423-33, (2004)]、国際公開第03/035651号に記載されている。
【0065】
【化8】

【0066】
注:TMSはトリメチルシリル、TBAFはフッ化テトラブチルアンモニウム、THFはテトラヒドロフラン、NBSはN−ブロモスクシンイミド、Acはアセチル、Meはメチル、DMFはジメチルホルムアミドである。
【0067】
中間体の単量体CおよびDも、本発明の化合物を製造するための出発生成物として用いてよく、これらは、下記の合成ルートによって得られる。
【0068】
中間体Cの合成:
【化9】

【0069】
中間体A(0.800g、1.94mモル)をアセトニトリル(20mL)に溶かした溶液に、ベンジルトリエチルアンモニウムテトラチオモリブデート[(PhCHNEt][MoS](1.24g、2mモル、1.03eq.)(一般にモリー(Moly)と呼ばれており、その合成については、Synth. Commun., 22, 3277-84 (1992)に記載されている)を加える。この反応混合物を45分間、室温で攪拌してから、モリブデン酸塩を沈殿させる目的で、100mLのジエチルエーテルを加える。セライトで濾過後、残渣をジエチルエーテル/ジクロルメタン混合物(5:1、2×60mL)で抽出する。有機相を再度セライトで濾過してから、溶媒を減圧下で蒸発させる。この粗反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、8:2)で精製し、中間体のチオールCを単離する(収率60%、0.426g)。
【0070】
中間体Dの合成:
【化10】

【0071】
ピリジン(1.4mL)に中間体B(0.282g、0.72mモル)を溶かした溶液に、トシルクロリド[TsCl](0.206g、1.08mモル、1.5eq.)をアルゴン下、0℃で加える。反応混合物を18時間、室温で攪拌する。ジクロロメタン(10mL)で希釈後、有機相を20%塩酸溶液(10mL)で洗浄し、続いて水(10mL)で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。粗反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、7:3)で精製し、中間体のトシラートDを単離する(収率80%、無色油、0.316g)。
【0072】
中間体の単量体E、F、G、H、I、およびJも、本発明の化合物を調製するための出発生成物として用いてよく、これらは、下記の方法によって中間体Aから得られる。
【0073】
中間体Eの合成:
【化11】

【0074】
中間体A(1.03g、2.5mモル)をアンモニアメタノール溶液(7N、10mL)に溶解させる。反応混合物を室温で3時間攪拌してから、減圧下で蒸発を行う。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール、95:5の後、90:10)で精製し、中間体Eを単離する(収率59%、黄白色粉末、0.52g)。
【0075】
中間体Fの合成:
【化12】

【0076】
ジメチルスルホキシド(DMSO)(4mL)にNaH(60%油性、0.04g、1.0mモル、1eq.)を懸濁させた懸濁液に、プロパルギルアルコール(64μL、1.0mモル、1eq.)を加え、5分攪拌後、中間体A(0.41g、1.0mモル)をジメチルスルホキシド(2mL)に溶かした溶液をこの混合物に加える。反応媒質を室温で1.5時間攪拌してから、酢酸エチルで希釈する。この有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄してから、 硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、95:5)で精製し、中間体Fを単離する(収率80%、無色油、0.31g)。
【0077】
中間体Gの合成:
【化13】

【0078】
中間体A(0.83g、2.0mモル)をアセトニトリル(20mL)に溶かした溶液に、N−メチル−モルホリンオキシド(NMO)(1.08g、8.0mモル、4eq.)を加える。この反応混合物を1時間、室温で攪拌してから、減圧下で濃縮する。残渣をジクロロメタンに溶かし、水洗する。続いて、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、減圧下で蒸発させる。これによって得られた中間体アルデヒドG(白色粉末、0.68g、98%)を直接、追加の精製工程なしに、後掲の反応に供する。
【0079】
中間体Hの合成:
【化14】

【0080】
中間体A(0.07g、0.15mモル)をジメチルスルホキシド(2mL)に溶かした溶液に、窒化ナトリウム(0.02g、0.3mモル、2eq.)を加える。反応混合物を室温で1時間攪拌する。酢酸エチルで希釈後、有機相を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させ、定量的に得られた中間体H(白色粉末)を直接、追加の精製作業なしに、次の工程に供する。
【0081】
中間体Iの合成:
【化15】

【0082】
中間体A(1g、2.4mモル)をテトラヒドロフラン(15mL)に溶かした溶液に、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(1.19mL、9.7mモル、4eq.)を0℃で加える。反応媒質を0℃で4時間攪拌する。水を加えた後、混合物をジエチルエーテルで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール、97:3〜94:6)で精製し、中間体Iを単離する(収率84%、黄色粉末、0.92g)。
【0083】
中間体Jの合成:
【化16】

【0084】
中間体G(2.10g、6.0mモル)をアセトン/水混合物(1.5/1、75mL)に溶かした溶液に、2−メチル−2−ブテン(3.2mL、30.1mモル、5eq.)、リン酸ナトリウム一水和物(2.50g、18.1mモル、3eq.)、続いて亜塩素酸ナトリウム(1.64g、18.1mモル、3eq.)を順に加える。反応混合物を18時間、室温で攪拌してから、減圧下で濃縮する。酢酸エチルで希釈後、有機相を水洗してから、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、80:20)で精製し、中間体Jを単離する(収率54%、白色粉末、1.2g)。
【0085】
すなわち、本発明の化合物は特に、中間体A、B、C、D、E、F、G、H、I、および/またはJからカップリング反応によって製造してよい。このカップリング反応は一般に、合成される分子が対称的である(2モル当量の中間体を用いる)ときには特に、単一の工程を含んでなるが、複数の反応工程を含んでなってもよく、非対称の分子の場合には、2つの異なる中間体を用いることができる。これらのカップリング反応工程は、当業者に周知の技法によって行う。
【0086】
カップリングによって得られる式(I)の化合物は、当業者に周知の方法によって、例えば、抽出、溶媒の蒸発、または更には、沈殿および濾過等によって、反応媒質から分離してよい。
【0087】
この化合物は更には、必要に応じて、当業者に周知の技法によって、例えば、結晶化(化合物が結晶である場合)、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、または更には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等によって精製してよい。
【0088】
更に具体的には、本発明の化合物のBおよび/またはB基のうち、CHを表す基は、中間体A〜F、H、またはIから得られる。
【0089】
また、更に具体的には、本発明の化合物のBおよび/またはB基のうち、CHOHを表す基は、中間体Gのアルデヒド官能基に好適なアニオンを付加することによって、中間体Gから得られる。
【0090】
さらに、更に具体的には、本発明の化合物のBおよび/またはB基のうち、C=O基を表す基は、当業者に周知の技法に従って、好適なカップリング反応によって、例えば、アミド官能基を形成させるペプチドカップリング、または更には、エステル官能基を形成させるエステル化反応等によって、中間体Jから得られる。
【0091】
すなわち、第1の特定の態様によれば、本発明の目的はまた、上記定義したような、式(I)(式中、
およびBはそれぞれCH基を表し、
AはX−Y−Z基を表し、この場合のX、Y、およびZは上記定義のとおりである)の化合物の製造方法であって、
2モル当量の下式(II)の化合物と、少なくとも1モル当量の下式(III)の化合物とをカップリングすることを含んでなる方法である:
【化17】

(式中、Zはハロゲン原子、好ましくは臭素原子を表す)
−Y−Z (III)
(式中、ZおよびZは互いに独立してOH基、SH基、もしくはNHR2基、または、NH基を含む複素環を表し、YおよびR2は、上記定義のとおりである)。
【0092】
本発明において、「少なくとも1モル当量」とは、カップリング反応において、化合物(II)2モルに対して化合物(III)を少なくとも1モル用いることを意味する。有利には化合物(III)を1〜1.5モル当量、好ましくは約1モル当量用いる。
【0093】
このカップリング反応は、塩基性媒質中で、特にNaHまたはKCOの存在下で、好ましくは室温で行うのが有利である。ジメチルスルホキシドまたはアセトニトリルのような溶媒を用いてよい。
【0094】
Yは、好ましくは、−CO−Y1−CO−基、または−CO−(CH−Y2−(CH−CO−基を表さない。
【0095】
XおよびZは互いに独立してO、S、またはNR2(R2は上で定義したようなものである)を表すのが有利である。このケースでは、ZおよびZは互いに独立してOH基、SH基、またはNHR2基を表す。
【0096】
第2の特定の態様によれば、本発明の目的はまた、上で定義したような、式(I)(式中、
およびBはそれぞれCH基を表し、
AはX−Y−Z基を表し、
XおよびZは同一であり、O、S、NR2(R2は上記定義のとおりである)から選択され、
Yは上記定義のとおりである)の化合物の製造方法であって、
2モル当量の下式(IV)の化合物と、少なくとも1モル当量の下式(V)の化合物とをカップリングすることを含んでなる方法である:
【化18】

(式中、ZはOH基、SH基、またはNHR2基(R2は上記定義のとおりである)を表す)、
−Y−Z (V)
(式中、ZおよびZは互いに独立して、塩素または臭素のようなハロゲン原子、好ましくは塩素を表し、Yは上記定義のとおりである)。
【0097】
また、「少なくとも1モル当量」とは、特に、1〜1.5、好ましくは約1モル当量の化合物(V)を意味する。
【0098】
このカップリング反応は、溶媒としてのジクロロメタンまたはジメチルスルホキシド(DMSO)中で、特に4−ジメチルアミノピリジン、またはNaHのような塩基の存在下で行ってよい。
【0099】
第3の特定の態様によれば、本発明の目的はまた、上記定義したような、式(I)(式中、BおよびBはそれぞれCH基を表し、
AはX−Y−Z基を表し、
XおよびZは同一であり、O、S、およびNR2(R2は上記定義のとおりである)から選択され、
Yは−CO−Y1−CO−または−CO−(CH−Y2−(CH−CO−(Y1、Y2、s、およびtは上記定義のとおりである)を表す) の化合物の製造方法であって、
2モル当量の下式(IV)の化合物と、少なくとも1モル当量の下式(VI)の化合物とをカップリングすることを含んでなる方法である:
【化19】

(式中、ZはOH基、SH基、またはNHR2基(R2は上記定義のとおりである)を表す)、
HO−Y−OH (VI)
(式中、Yは上記定義のとおりである)。
【0100】
また、「少なくとも1モル当量」とは、特に、1〜1.5、好ましくは約1モル当量の化合物(VI)を意味する。
【0101】
このカップリング反応は、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、2−(H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、または更にはO−(7−アゾベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)のようなカップリング剤を、所望によりN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアゾール(HOOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HAt)、またはN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホNHS)のようなカップリング助剤と併せたものの存在下で、実現させるのが好ましい。EDCI/HOBtという組み合わせを用いるのが有利である。
この反応は、溶媒としてのジクロロメタン中にて、特に室温で行ってよい。
【0102】
第4の特定の態様によれば、本発明の目的は、上記定義したような、式(I)(式中、BおよびBはそれぞれC=O基を表し、
AはX−Y−Z基(X、Y、およびZは上で定義したようなものである)を表す)の化合の製造方法であって、
2モル当量の下式(VII)の化合物と、少なくとも1モル当量の下式(III)の化合物とをカップリングすることを含んでなる方法である:
【化20】

(式中、Zは、所望により活性化形態であるCOH基を表す)、
−Y−Z (III)
(式中、ZおよびZは互いに独立してOH基、SH基、もしくはNHR2基、またはNH基を含む複素環を表し、YおよびR2は上記定義のとおりである)。
【0103】
「活性化形態」とは、本発明の意味においては、求核基という点でその活性が向上するように修飾されたカルボン酸官能基を意味する。これらの活性化形態は当業者には周知であり、具体的には、酸塩化物(すなわちZ=COCl)であってよい。
【0104】
また、「少なくとも1モル当量」とは特に、1〜1.5、好ましくは約1モル当量の化合物(III)を意味する。
【0105】
がCOHである化合物(VII)(これによって中間体Jと一致する)を出発材料としてカップリング反応を行うときには、その反応は、上で定義したように、カップリング剤を所望によりカップリング助剤と併せたものの存在下で、具体的にはEDCI/HOBtという組み合わせの存在下で行うのが有利である。この反応は室温で、特にジクロロメタンのような溶媒中で行ってよい。
【0106】
化合物(VII)のカルボン酸の活性化形態、例えば酸塩化物(Z=COCl)を出発材料としてカップリング反応を行うときには、その反応は塩基の存在下で行ってよい。
【0107】
Yは、好ましくは−CO−Y1−CO基、または−CO−(CH−Y2−(CH−CO−基を表さない。
【0108】
XおよびZは互いに独立してO、S、またはNR2(R2は上記定義のとおりである)を表すのが有利である。このケースでは、ZおよびZは互いに独立してOH基、SH基、またはNHR2基を表す。
【実施例】
【0109】
本発明による10−トリフルオロメチル化アルテミシニンの二量体誘導体の実施例を下記の手順に従って合成した。これらの実施例は、本発明を例示するために用いるに過ぎず、本発明の範囲を限定するために用いるのではない。
【0110】
化合物1の合成
【化21】

【0111】
ジクロロメタン(1mL)にNaH(60%油性、0.033g、0.83mモル、1.6eq.)を懸濁させた−78℃の懸濁液に、チオールC(0.189g、0.52mモル)をジクロロメタン(1mL)に溶かした溶液を加える。−78℃で30分間攪拌後、臭素化誘導体A(0.256g、0.62mモル、1.2eq.)とヨウ化カリウム(0.1eq.)とをジクロロメタンに溶かした溶液を加える。反応混合物を1時間、−78℃で攪拌し、続いて1時間、室温で攪拌してから、ジクロロメタンで希釈する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。得られた黄色固体をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、9:1)で精製し、白色粉末として生成物1を得る(0.301g、83%)。
【0112】
化合物2の合成
【化22】

【0113】
化合物1(0.128g、0.18mモル)をヘキサフルオロイソプロパノール(1.3mL)[HFIP]に溶かした溶液に、30%のH(42μL、0.36mモル、2eq.)を加える。室温で1時間攪拌後、反応媒質を飽和NaSO溶液中に入れ、酢酸エチルで抽出する。有機相を水洗してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。得られた黄色油をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、1:1)で精製し、分離不能な2つのジアステレオ異性体の1:1の混合物として生成物2を得る(白色固体、0.109g、85%)。
【0114】
化合物3の合成
【化23】

【0115】
化合物1(0.140g、0.2mモル)を酢酸エチル(2mL)に溶かした溶液に、m−クロロ過安息香酸[m−CPBA](0.087g、0.5mモル、2.5eq.)を加えてから、攪拌作業を室温で3時間維持する。酢酸エチルで希釈後、反応媒質をアルミナで濾過する。溶媒を減圧下で蒸発させる。得られた白色固体をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、6:4)で精製し、生成物3を単離する(収率85%、白色粉末、0.124g)。
【0116】
化合物4の合成
【化24】

【0117】
中間体A(0.100g、0.24mモル)をアセトニトリル(2.5mL)に溶かした溶液に、モリー(Moly)(0.177g、0.3mモル、1.25eq.)を加える。反応混合物を20時間、室温で攪拌してから、モリブデン酸塩を沈殿させる目的で、12.5mLのジエチルエーテルを加える。セライトで濾過後、残渣をジエチルエーテル/ジクロロメタン混合物(5:1、4×12mL)で抽出する。溶媒を減圧下で蒸発後、有機相を再びセライトで濾過する。粗反応性生物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、8:2)で精製し、目的の生成物4を単離する(収率85%、白色粉末、0.149g)。
【0118】
化合物5の合成
【化25】

【0119】
中間体D(0.310g、0.56mモル)をアセトニトリル(3mL)に溶かした溶液に、モリー(Moly)(0.413g、0.68mモル、1.2eq.)を加える。反応混合物を24時間、室温で攪拌してから、モリブデン酸塩を沈殿させるために、40mLのジエチルエーテルを加える。セライトで濾過後、残渣をジエチルエーテル/ジクロロメタン混合物(5:1、3×30mL)で抽出する。有機相を再びセライトで濾過してから、溶媒を減圧下で蒸発させる。粗反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、95:5(100mL)、90:10(100mL)、80:20(100mL)、70:30(100mL))で精製し、目的の生成物5を単離する(収率65%、無色油、0.298g)。
【0120】
化合物6、7、8、9、10、14、および15の合成
共通の方法A:ジメチルスルホキシド(c=0.25)にNaH(60%油性、1eq.)を懸濁させた懸濁液に、リンカー(0.5eq.)をジメチルスルホキシド(c=0.5)に溶かした溶液を加える。30分、室温で攪拌後、臭素化誘導体A(1eq.)とヨウ化カリウム(0.1eq.)を加える。反応混合物を室温で(0.5〜3時間)攪拌してから、酢酸エチルで希釈する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、90:10)で精製する。
【0121】
実施例6:共通の方法Aによって、リンカーである1,2−エタンジチオールから収率34%で白色粉末として得られる。
【0122】
実施例7:共通の方法Aによって、リンカーである1,3−プロパンジチオールから収率48%で白色粉末として得られる。
【0123】
実施例8:共通の方法Aによって、リンカーである1,4−ブタンジチオールから収率34%で白色粉末として得られる。
【0124】
実施例9:共通の方法Aによって、リンカーである2−メルカプトエタノールから収率12%で白色粉末として得られる。
【0125】
実施例10:共通の方法Aによって、リンカーである2−(メチルアミノ)エタノールから得られる。
【0126】
実施例14:共通の方法Aによって、リンカーであるN−メチルジエタノールアミンから得られる。
【0127】
実施例15:共通の方法Aによって、リンカーであるN−メチルヒドロキシルアミンから得られる。
【0128】
化合物11、12、13、16、および23の合成
共通の方法B:アセトニトリル(c=1)にKCO(0.5eq.)を懸濁させた懸濁液に、ジアミンリンカー(0.5eq.)を加える。5分間、室温で攪拌後、臭素化誘導体A(1eq.)を加える。反応混合物を室温で(18〜48時間)攪拌してから、ジクロロメタンで希釈する。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、75:25)で精製する。
【0129】
実施例11:共通の方法Bによって、ジアミンリンカーであるN,N’−ジメチルエチレンジアミンから収率85%で白色粉末として得られる。
【0130】
実施例12:共通の方法Bによって、ジアミンリンカーであるN,N’−ジメチルエチル−1,3−プロパンジアミンから収率36%で白色粉末として得られる。
【0131】
実施例13:共通の方法Bによって、ジアミンリンカーであるN,N’−ジベンジルエチレンジアミンから収率66%で白色粉末として得られる。
【0132】
実施例16:共通の方法Bによって、ジアミンリンカーである3,3’−ビス(メチルアミノ)−N−メチルジプロピルアミンから収率10%で黄白色フォームとして得られる。
【0133】
実施例23:共通の方法Bによって、ジアミンリンカーであるセレノシスタミンジヒドロクロリドから得られる。
【0134】
化合物17、18、19、20、24、25、26、および27の合成
共通の方法C:ジクロロメタン(c=0.04)に中間体B(1eq.)を溶かした溶液に、4−ジメチルアミノピリジン(1.15eq.)を加える。この混合物を0℃まで冷却してから、アシルビス−クロリド(0.5eq.)を加える。室温に戻した後、反応混合物を16時間攪拌してから、溶媒を減圧下で蒸発させる。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、90:10)で精製する。
【0135】
実施例17:共通の方法Cによって、アシルビス−クロリドであるオルト−フタロイルジクロリドから収率46%で白色粉末として得られる。
【0136】
実施例18:共通の方法Cによって、アシルビス−クロリドであるマロニルジクロリドから収率28%で白色フォームとして得られる。
【0137】
実施例19:共通の方法Cによって、アシルビス−クロリドであるエタノイルジクロリドから収率41%で白色フォームとして得られる。
【0138】
実施例20:共通の方法Cによって、アシルビス−クロリドであるプロパノイルジクロリドから収率40%で黄色固体として得られる。
【0139】
実施例24:共通の方法Cによって、アシルビス−クロリドであるパラ−フタロイルジクロリドから収率15%で白色フォームとして得られる。
【0140】
実施例25:共通の方法Cによって、アシルビス−クロリドであるピリジン−2,6−ジカルボキシレートジクロリドから収率6%で白色フォームとして得られる。
【0141】
実施例26:共通の方法Cによって、アシルビス−クロリドであるメタ−フタロイルジクロリドから収率38%で黄白色粉末として得られる。
【0142】
実施例27:共通の方法Cによって、アシルビス−クロリドであるチオフェン−2,5−ジカルボキシレートジクロリドから収率36%で黄白色粉末として得られる。
【0143】
化合物21および22の合成
共通の方法D:テトラヒドロフラン(c=0.045)に中間体B(1eq.)を溶かした0℃の溶液に、ヘキサメチルジシラザンナトリウム(2M THF溶液、1eq.)を加える。混合物を0℃で10分間、攪拌してから、ジクロロホスフェート(0.5eq.)を加える。0℃で1時間後、反応混合物を加水分解させてから、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過してから、減圧下で濃縮する。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シキロヘキサン/酢酸エチル、勾配:90:10〜80:20)で精製する。
【0144】
実施例21:共通の方法Dによって、フェニルジクロロホスフェートから収率13%で白色粉末として得られる。
【0145】
実施例22:共通の方法Dによって、メチルジクロロホスフェートから得られる。
【0146】
化合物28および29の合成
共通の方法E:臭素化誘導体A(1eq.)をアセトニトリル(c=1)に溶かした溶液に、アミノ試薬(0.5eq.)を加えてから、KCO(1eq.)を加える。反応混合物を室温で(18〜48時間)攪拌してから、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で希釈し、続いて、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル 75:25)で精製する。
【0147】
実施例28:共通の方法Eによって、アミノ試薬であるプロパルギルアミンから収率69%で白色粉末として得られる。
【0148】
実施例29:共通の方法Eによって、12時間、HCl(4N)をジオキサンに溶かした溶液の作用によってカルバメート保護基を加水分解した後のアミノ試薬tert−ブチルN−(4−アミノブチル)カルバメートから、収率52%で白色粉末として得られる。
【0149】
化合物30および31の合成
共通の方法F:中間体E(1eq.)をジクロロメタン(c=0.04)に溶かした溶液に、トリエチルアミン(1eq.)を加える。5分間、室温で攪拌後、アシルビス−クロリド(0.5eq.)を加える。反応混合物を20時間攪拌してから、水洗し、酢酸エチルで抽出する。有機相をデカンテーションし、硫酸マグネシウムで乾燥してから、減圧下で蒸発させる。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、65:35)で精製する。
【0150】
実施例30:共通の方法Fによって、アシルビス−クロリドであるピリジン−2,6−ジカルボキシレートジクロリドから収率60%で白色粉末として得られる。
【0151】
実施例31:共通の方法Fによって、アシルビス−クロリドであるチオフェン−2,5−ジカルボキシレートジクロリドから収率38%で白色粉末として得られる。
【0152】
化合物32および33の合成
中間体F(0.103g、0.25mモル、1eq.)と中間体H(0.094g、0.25mモル、1eq.)との混合物を900℃で4時間、封管中で加熱する。室温に戻した後、反応媒質をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、90:10〜75:25)で精製し、低極性化合物32および化合物33を単離する(合計収率48%、白色粉末、化合物32は0.032g、化合物33は0.060g)。
【0153】
化合物34、35、および36の合成
共通の方法G:カルボン二酸試薬(0.12mモル、0.5eq.)をジクロロメタン(5mL)に溶かした溶液に、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドクロルハイドレート(EDCI)(0.067g、0.91mモル、3eq.)とヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(0.047g、0.91mモル、3eq.)を加える。30分間、室温で攪拌後、中間体E(0.087g、0.25mモル、1eq.)をジクロロメタン(5mL)に溶かした溶液を加える。反応混合物を2時間、室温で攪拌する。水を加えた後、混合物をジクロロメタンで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール、96:4)で精製する。
【0154】
実施例34:共通の方法Gによって、カルボン二酸試薬であるN−アセチルアスパラギン酸から収率38%で黄白色粉末として得られる。
【0155】
実施例35:共通の方法Gによって、カルボン二酸試薬であるN−メチルアミノジ酢酸から収率15%で黄白色粉末として得られる。
【0156】
実施例36:共通の方法Gによって、カルボン二酸試薬である2,2−ジメチルコハク酸から収率25%で黄白色粉末として得られる。
【0157】
化合物37の合成
中間体B(0.13g、0.37mモル)をDMSO(3mL)に溶かした溶液に、0.022g(0.55mモル、2.2eq.)のNaH(60%油性懸濁液)を加える。10分間、室温で攪拌後、2,6−ビス(クロロメチル)ピリジン(0.044g、0.025mモル)を加える。反応媒質を6時間攪拌してから水洗し、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、95:5)で精製する。化合物37を単離する(収率13%)。
【0158】
化合物38の合成
中間体I(0.179g、0.38mモル、0.8eq.)をアセトニトリル(1mL)に溶かした0℃の溶液に、NaH(0.048g、1.21mモル、2.5eq)を加える。10分間攪拌し、室温に戻した後、中間体A(0.200g、0.48mモル、1eq.)をアセトニトリル(0.5mL)に溶かした溶液を加える。反応媒質を16時間、室温で攪拌する。水を加えた後、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール/アンモニア、97.5:2.25:0.25)で精製する。化合物38を黄白色粉末として単離する(収率19%)。
【0159】
化合物39の合成
中間体F(0.048g、0.12mモル)をテトラヒドロフラン(1mL)に溶かした−78℃の溶液に、n−ブチル−リチウム(n−BuLi)(1.6Mヘキサン溶液、100μL、0.16mモル、1.3eq.)を滴下する。20分間、−78℃で攪拌後、中間体G(0.043g、0.12mモル、1eq.)をテトラヒドロフラン(1mL)に溶かした溶液を加える。続いて、反応混合物を室温に戻し、16時間攪拌する。飽和塩化アンモニウム溶液を加えた後、混合物をジクロロメタンで抽出する。続いて、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過してから、減圧下で濃縮する。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル、85:15)で精製する。化合物39を白色粉末として単離する(収率13%)。
【0160】
化合物40の合成
中間体J(0.11g、0.30mモル)をジクロロメタン(5mL)に溶かした溶液に、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドクロルハイドレート(EDCI)(0.085g、0.45mモル、1.5eq.)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(0.06g、0.45mモル、1.5eq.)を加える。30分間、室温で攪拌後、ジアミノ−1,3−プロパン(0.011g、0.15mモル、0.5eq.)をジクロロメタン(1mL)に溶かした溶液を加える。反応混合物を6時間、室温で攪拌する。水を加えた後、混合物をジクロロメタンで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させる。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル、98:2〜95:5)で精製し、化合物40を単離する(収率9%、白っぽい粉末、0.010g)。
【0161】
上記の手順に従って合成される、本発明の化合物の種々の実施例の化学構造を下記の表に示す。
【0162】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【0163】
細胞障害活性
A549細胞株(肺)、およびナマルバ細胞株(リンパ腫)のようなヒト由来の腫瘍細胞株の細胞増殖の阻害性を測定することによって、本発明に従って調製した化合物の細胞障害活性を評価した。この活性は、IC50(細胞増殖を50%阻害できる試験生成物の濃度)によって表す。用いた方法は、パーキン・エルマーから市販されている「ATPLite」キットを用いて、インキュベーションの72時間後にルミネセンスによって残存ATPを測定するものである。
【0164】
例として、本発明のいくつかの化合物(化合物番号1、4、5、6、8、2、9、3、7、11、12、33、26、25、30、31、27、32、37、および39)の細胞障害特性を細胞株A549およびナマルバで評価したものを下記の表に示す。
【0165】
【表2−1】

【表2−2】

【0166】
これらの細胞障害特性を踏まえると、本発明の化合物は、ヒトの治療において、ガンの病状の治療に用いることができる。これらの有効成分を含む製剤は、投与用に、特に経口投与、静脈内投与、または皮下投与用に調合してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の10−トリフルオロメチル化アルテミシニンの二量体誘導体、またはその薬理学的に許容可能な塩:
【化1】

[式中、
およびBは、同一かまたは異なっており、C=O、CHOH、およびCH、有利にはC=OおよびCHから選択され、好ましくはそれぞれCH基を表し、
Aは、−S−、−S−S−、−SO−、−SO−、−Se−Se−、−O−P(O)(OR1)−O−、−NR2−、−O−R4−、および−O−NR2−から選択される二価の基を表すか(ここで、
R1は、水素、C−Cのアルキル基、または置換されていてもよいアリール基を表し、
R2は、水素、NH基で置換されていてもよいC−Cのアルキル基、C−Cのアルケニル基、C−Cのアルキニル基、C−Cのシクロアルキル基、アリール−(C−C)−アルキレン基、置換されていてもよいアリール基、または、−COR3基、−COR3基、もしくは−SOR3基を表し、
R3は、水素、C−Cのアルキル基、C−Cのシクロアルキル基、アリール−(C−C)−アルキレン基、または置換されていてもよいアリール基を表し、かつ
R4は、C−Cのアルキレン基、C−Cのアルケニレン基、またはC−Cのアルキニレン基を表す)、または
X−Y−Z基を表す(ここで、
XおよびZは、同一かまたは異なっており、O、S、NR2(R2は上記定義のとおりである)、および、BまたはBに結合した窒素原子を少なくとも1つ含んでなる複素環から選択され、
Yは、C−Cのアルキレン基、およびC−Cのシクロアルキレン基、
−CO−Y1−CO基(Y1は、NHR2で置換されていてもよいC−Cのアルキレン基(R2は上記定義のとおりである)を表す)、
式−[(CH−NR2−(CH−のポリアミン基(R2は上記定義のとおりであり、n、m、およびpは互いに独立して1、2、3、または4の整数を表す)、ならびに
−(CO)r−(CH)s−Y2−(CH−(CO)−基
(ここで、rおよびuは互いに独立して0または1の整数を表し、
sおよびtは互いに独立して0、1、2、3、または4の整数を表し、
r、uがそれぞれ0である場合には、s、tはそれぞれ0であることはできず、
Y2は−S−、−S−S−、−SO−、−SO−、−Se−Se−、−O−P(O)(OR1)−O−(R1は上記定義のとおりである)、−NR2−(R2は上記定義のとおりである)、C−Cのシクロアルキレン基、および置換されていてもよい芳香族複素環または芳香族環から選択される)
から選択される)]。
【請求項2】
前記AがX−Y−Z基を表し、XおよびZが硫黄原子を表し、Yが請求項1の定義のとおりであることを特徴とする、請求項1に記載の二量体誘導体。
【請求項3】
前記AがX−Y−Z基を表し、XおよびZが請求項1の定義のとおりであり、Yが−CO−Y1−CO−基、または−CO−(CH−Y2−(CH−CO−基を表し、s、t、Y1、およびY2が請求項1の定義のとおりであることを特徴とする、請求項1または2に記載の二量体誘導体。
【請求項4】
前記Bおよび/またはBがCHOH基を表し、および/または、
前記AがX−Y−Z基を表し、
Xおよび/またはZが複素環基を表し、および/または、
Yが−(CO)−(CH−Y2−(CH−(CO)−基を表し、Y2が、置換されていてもよい芳香族複素環を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二量体誘導体。
【請求項5】
下記の化合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二量体誘導体:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】


【請求項6】
医薬として用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二量体誘導体。
【請求項7】
癌治療用の医薬として用いられる、請求項6に記載の二量体誘導体。
【請求項8】
医薬、特に、癌治療を意図する医薬を製造するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二量体誘導体の使用。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の少なくとも1種類の二量体誘導体と、少なくとも1種類の薬理学的に許容可能な担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
特に、6−メルカプトプリン、フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキセート、ラルチトレキセド、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、カルムスチン、フォテムスチン、ストレプトゾシン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ダカルバジン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、L−アスパラギナーゼ、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン、トリプトレリン、リュープロレリン、ゴセレリン、ブセレリン、フォルメスタン、アミノグルテチミド、アナストラゾール、レトロゾール、タモキシフェン、オクトレオチド、およびランレオチドから選択される別の有効成分を更に含んでなることを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
(i)請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)のうち、少なくとも1種類の化合物と、
(ii)癌の治療に特に有用である、少なくとも1種類の他の有効成分と
を含んでなる、同時に、別々に、または時間的に間隔を置いて使用する合剤としての医薬組成物。
【請求項12】
前記有効成分が、6−メルカプトプリン、フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキセート、ラルチトレキセド、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、ミトキサントロン、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、カルムスチン、フォテムスチン、ストレプトゾシン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ダカルバジン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、L−アスパラギナーゼ、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン、トリプトレリン、リュープロレリン、ゴセレリン、ブセレリン、フォルメスタン、アミノグルテチミド、アナストラゾール、レトロゾール、タモキシフェン、オクトレオチド、およびランレオチドから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
癌治療を意図する医薬として用いられる、請求項9〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の式(I)の化合物(式中、
およびBはそれぞれCH基を表し、
AはX−Y−Z基を表し、X、YおよびZは請求項1の定義のとおりである)の製造方法であって、
2モル当量の下式(II)の化合物と、少なくとも1モル当量の下式(III)の化合物とをカップリングすること
を含んでなる、方法:
【化6】

(式中、Zはハロゲン原子、好ましくは臭素原子を表す)
−Y−Z (III)
[式中、ZおよびZは互いに独立してOH基、SH基、もしくはNHR2基(R2は請求項1の定義のとおりである)、または、NH基を含む複素環を表し、Yは、請求項1の定義のとおりである]。
【請求項15】
請求項1に記載の式(I)の化合物(式中、
およびBはそれぞれCH基を表し、
AはX−Y−Z基を表し、
XおよびZは同一であり、O、S、NR2(R2は請求項1の定義のとおりである)から選択され、
Yは請求項1の定義のとおりである)の製造方法であって、
2モル当量の下式(IV)の化合物と、少なくとも1モル当量の下式(V)の化合物とをカップリングすること
を含んでなる、方法:
【化7】

(式中、ZはOH基、SH基、またはNHR2基(R2は請求項1の定義のとおりである)を表す)
−Y−Z (V)
(式中、ZおよびZは互いに独立して、塩素または臭素のようなハロゲン原子、好ましくは塩素を表し、Yは請求項1の定義のとおりである)。
【請求項16】
請求項1に記載の式(I)の化合物(式中、
およびBはそれぞれCH基を表し、
AはX−Y−Z基を表し、
XおよびZは同一であり、O、S、NR2(R2は請求項1の定義のとおりである)から選択され、
Yは−CO−Y1−CO−基、または−CO−(CH−Y2−(CH−CO−基(Y1、Y2、s、およびtは、請求項1の定義のとおりである)を表す)の製造方法であって、
2モル当量の請求項15に記載の式(IV)の化合物と、少なくとも1モル当量の下式(VI)の化合物とをカップリングすること
を含んでなる、方法:
HO−Y−OH (VI)
(式中、Yは上記の定義のとおりである)。
【請求項17】
請求項1に記載の式(I)(式中、
およびBはそれぞれC=O基を表し、
AはX−Y−Z基(X、Y、Zは、請求項1の定義のとおりである)を表す)の化合物を製造方法であって、
2モル当量の下式(VII)の化合物と、少なくとも1モル当量の請求項14に記載の式(III)の化合物とをカップリングすること
を含んでなる、方法:
【化8】

(式中、Zは、所望により活性化形態であるCOH基を表す)。

【公表番号】特表2011−506580(P2011−506580A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538786(P2010−538786)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068133
【国際公開番号】WO2009/080805
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(509003298)ユニヴェルシテ パリ−シュド 11 (6)
【Fターム(参考)】