説明

アルデヒド低減プラスチゾル系塗料

【目的】 自動車のシーリング材で、アルデヒド類の放散を低減可能なプラスチゾル系塗料を開発する。
【構成】 塩化ビニル系樹脂及びアクリル系樹脂、可塑剤、付着付与剤、硬化剤、フィラーからなるプラスチゾル系塗料であって、硬化剤成分に、アジピン酸ジヒドラジド及び/またはスルファミン酸グアニジンを含むことを特徴とするアルデヒド低減プラスチゾル系塗料。
塗装後に、120℃〜160℃の温度により10分〜30分加熱乾燥を行うことにより塗膜硬化させることを特徴とする自動車用アルデヒド低減プラスチゾル系塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形成された塗膜から放散するアルデヒドを低減したプラスチゾル系の塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒドに代表されるアルデヒド系の物質が人体に有害であり、シックハウス症候群の原因となるという理由から、住宅や教育、職場において、アルデヒド系物質の濃度を制限する指針が行政より示されるに至った。
このため、建築用塗料においては、塗膜を形成した後もアルデヒド系物質を放散させない塗料が開発される様になっている。
【特許文献1】特開2000−256424号
【特許文献2】特開2004−339291号
【0003】
本発明者らは、自動車の車室内という環境においても、アルデヒド系物質が除かれることが望ましいとの考えに立ち、自動車室内において従来使用されており、また将来的にも使用される可能性が高い、プラスチゾル系塗料から、アルデヒド系物質の放散を低減させた塗料の開発を行ったものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するため、本発明者は鋭意研究の結果、特定配合になるプラスチゾル塗料の開発に成功したものである。しかして、本発明の要旨は以下に存する。
【0005】
塩化ビニル系樹脂及びアクリル系樹脂、可塑剤、付着付与剤、硬化剤、フィラーからなるプラスチゾル系塗料であって、硬化剤成分に、アジピン酸ジヒドラジド及び/またはスルファミン酸グアニジンを含むことを特徴とするアルデヒド低減プラスチゾル系塗料。
【0006】
塗装後に、120℃〜160℃の温度により10分〜30分加熱乾燥を行うことにより塗膜硬化させることを特徴とする前記に記載された自動車用アルデヒド低減プラスチゾル系塗料。
【0007】
プラスチゾル系塗料は、主成分である樹脂を、適当な可塑剤によって可塑化し、その他の成分と混合分散してなる塗料であり、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体から選ばれる塩化ビニル樹脂系塗料、アクリル樹脂から選ばれるアクリル樹脂系塗料、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる酢酸ビニル樹脂系塗料を挙げることができる。本発明においては、この中でも特に塩化ビニル樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料を使用することができる。
【0008】
前記の樹脂を可塑化するための可塑剤としては、従来この種のプラスチゾル系塗料に使用されている各種の可塑剤を使用することができる。
すなわち、ジオクチルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、等のフタル酸系可塑剤、ジオクチルアジペート(DOA)等のアジピン酸系可塑剤、TEP、TCP等のリン酸エステル系可塑剤、その他、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、二価アルコールエステル等が例示できる。
【0009】
本願発明に必須の硬化剤は、アジピン酸ジヒドラジドまたはスルファミン酸グアニジンである。
アジピン酸ジヒドラジドまたはスルファミン酸グアニジンは、いずれか一方を使用することも、両方を併用することも、また他の硬化剤と併用することも可能である。これら成分は、プラスチゾル系塗料に含有されているホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、及びプラスチゾル系塗料が自動車メーカーのペイントラインにおいて塗装された後、加熱乾燥炉において熱分解により発生するホルムアルデヒドやアセトアルデヒドといったアルデヒド系の成分と速やかに反応し、メチロール化することにより、アルデヒド系成分の放散を低減させるものである。
【0010】
プラスチゾル系塗料への、アジピン酸ジヒドラジドまたはスルファミン酸グアニジンのいずれか1種、あるいは両方の配合割合としては、塗料全量に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。0.01質量%未満であると、アルデヒド系成分の放散を低減するための所望の効果が望めない。10質量%を超えて配合しても、アルデヒド系成分の放散を低減する効果は、配合量に比例して増大しないばかりか、コスト的にも不利となる。
【0011】
なお、プラスチゾル系塗料の硬化剤として、上記した配合物以外に、従来公知のポリアミン、ポリアミド、ポリオール等、ブロック化剤が熱により解離して発生したNCO基と反応する成分の使用を排除するものではなく、併用も可能である。
【0012】
プラスチゾル系塗料の付着付与剤としては、適当なブロック化剤により末端のNCO基がブロックされたポリイソシアネートプレポリマーが使用できる。イソシアネートとしては、芳香族または脂肪族のジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタンメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、メチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等から選ばれる1種以上が使用できる。末端NCO基をブロックするブロック化剤としては、フェノール、アミン、ラクタム、アルコール、カプロラクタム、オキシム類が使用できるが、本発明のプラスチゾル系塗料が自動車用途であり、上記したように120〜160℃の加熱乾燥により塗膜化されるため、100℃以上の温度でブロック化剤が解離するものが適当である。
【0013】
本発明になるプラスチゾル系塗料には、上記の他、充填材として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレイ、タルク等の粉状充填材、マイカ、グラファイト等のリン片状充填材、針状カルシウムメタシリケート、ゾノライト、チタン酸カリ、ロックウール短繊維、ガラスファイバー短繊維、アルミニウムシリケート、カーボンファイバー短繊維、アラミドファイバー短繊維等の針状充填材、ガラスバルーン、シリカバルーン、炭素無機中空充填材等の無機中空充填材、塩化ビニリデン、アクリルニトリル等の有機合成樹脂からなるプラスチックバルーン等の有機中空充填材、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤が使用できる。その他必要に応じて、溶剤、架橋助剤、発泡剤、消泡剤、分散剤、増粘剤等各種の添加剤を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を説明する。言うまでもないが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
パウダー状アクリル樹脂22質量%、可塑剤としてDINP30質量%、充填材として炭酸カルシウム40質量%、付着付与剤として、オキシムブロック化イソホロンジイソシアネート5質量%を含む配合物を用意して、この配合物に対して、(1)アジピン酸ジヒドラジド3質量%(実施例1)、(2)スルファミン酸グアニジン3質量%(実施例2)、(3)従来使用されているダイマー酸系ポリアミドアミン3質量%(比較例)を各々配合し、混合分散を行ってプラスチゾル塗料を得た。
【0016】
[試験方法]
プラスチゾル塗料を、ヘラ引きによりガラス板に100mm×100mmサイズにて、塗膜厚3mmにて塗布して、これを140℃で25分加熱し、塗膜を乾燥硬化させ、これを試験片とした。
容量10Lのテドラーバッグに、上記試験片を入れ、入り口を密封し、バッグ内部の空気を脱気して、純窒素を5L封入し、バッグをヒーターにて60℃で2時間加熱した。
加熱を終了したテドラーバッグに、チューブとDNPH捕集管を接続し、内部の気体、2Lを捕集した。内部気体を捕集したDNPH捕集管を5mlのアセトニトリルにて抽出し、該サンプルをHPLC(高速液体クロマトグラフ)で分析することにより、放散したアルデヒド成分量を測定した。
【0017】
[結果]
各塗料のアセトアルデヒド量は以下の通りである。

なお、ホルムアルデヒドは各塗料とも検出されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によるプラスチゾル系塗料は、アルデヒド系成分を塗料内部の反応によりメチロール化してしまうことで、従来と比較してアルデヒド系成分を激減させる効果がある。このため、自動車室内のアルデヒド類の濃度を低減させることが可能であり、人体への影響を軽減できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂及びアクリル系樹脂、可塑剤、付着付与剤、硬化剤、フィラーからなるプラスチゾル系塗料であって、硬化剤成分に、アジピン酸ジヒドラジド及び/またはスルファミン酸グアニジンを含むことを特徴とするアルデヒド低減プラスチゾル系塗料。
【請求項2】
塗装後に、120℃〜160℃の温度により10分〜30分加熱乾燥を行うことにより塗膜硬化させることを特徴とする請求項1に記載された自動車用アルデヒド低減プラスチゾル系塗料。

【公開番号】特開2007−131662(P2007−131662A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323368(P2005−323368)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000232542)日本特殊塗料株式会社 (35)
【Fターム(参考)】