説明

アルデヒド含分500ppm未満を有する1,6−ヘキサンジオールを用いたプラスチックの製造方法

本発明は、アルデヒド含分500ppm未満を有する1,6−ヘキサンジオールを用いたプラスチックの製造方法、アルデヒド含分500ppm未満を有する1,6−ヘキサンジオールの製造方法並びにアルデヒド含分500ppm未満を有する1,6−ヘキサンジオールに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、アルデヒド含分500ppm未満を有する1,6−ヘキサンジオールを用いたプラスチックの製造方法、アルデヒド含分500ppm未満を有する1,6−ヘキサンジオールの製造方法並びにアルデヒド含分500ppm未満を有する1,6−ヘキサンジオールに関する。
【0002】
1,6−ヘキサンジオールは、ポリエステル、アクリラート又はポリウレタンの製造のための有用な中間生成物である。1,6−ヘキサンジオールは、この場合に一般に、アジピン酸又はアジピン酸含有フィード流(これはアジピン酸を、例えば水中に又はエステル、例えばアジピン酸ジメチルエステルとして含有する)の水素化によって、又はヒドロキシカプロン酸又はそのエステルの水素化によって又はカプロラクトンの水素化によって入手可能である(例えば、K. Weissermel, H.-J. Arpe et al.がIndustrielle Organische Industrie、第5版(Wiley-VCH)、267及び269頁に記載する通り)。
【0003】
市販されている1,6−ヘキサンジオールは、例えばLanxess社のデータシートに示されるように、99.8面積%と高純度であるにもかかわらず、適用領域を制限しうる成分をなお有する。1,6−ヘキサンジオールは、白色からわずかに黄色までの固形物質又はその液体であって0.1質量%までの6−ヒドロキシヘキサナールを含有するものとして記載されている。アルデヒドの存在が、生成物の色数安定性を制限することが一般に知られている。このアルデヒドは、一方では自由に存在できるが、半アセタール又はアセタールとしても存在でき、そして、自体で、同様に不利な影響を、生成物、例えばポリエステルの色数に対して有する。さらに、そのような化合物は、適用技術的にも不所望であり、というのも、これはジオールでなく、かつ、例えばポリエステルの製造の際に、鎖中断又は分枝を生じるからである。
【0004】
大抵は、ポリエステル、特にポリエステルアルコールは、多価のカルボン酸/カルボン酸誘導体と多価のアルコール又はポリオールとを、特に150〜280℃の温度で、常圧及び/又はわずかな真空下で、触媒の存在下で重縮合反応させることにより製造される。この場合には、不所望な不純物として、6−ヒドロキシヘキサナールをベースとする後続成分又は6−ヒドロキシヘキサナールそれ自体が関連し、かつ、本発明では包摂語「アルデヒド」でまとめて理解されるものである:
【化1】

【0005】
ヒドロキシヘキサナールから形成でき、かつ、大量では同様に不所望である更なる成分は、6−ヒドロキシカプロン酸−1,6−ヘキサンジオールエステルであり、これを以下に示す:
【化2】

【0006】
このエステルは、6−ヒドロキシヘキサナールと同じ不所望な条件下で1,6−ヘキサンジオールから形成されることができる。このエステルは、いわゆる塩基数を用いて把握でき、この場合に、KOHを用いた滴定により測定される。塩基数が例えば8であり、これが前述のエステルによってのみ引き起こされる場合には、このエステル含有量は約33ppmである。このエステルは、原則としてジオールとして把握されることができ、500ppm未満、特に50ppm未満の含有量では一般にポリエステル適用で妨げにはならず、かつ、着色を引き起こすこともない。
【0007】
したがって、本発明の課題は、ISO 6271に応じて150未満のAPHAハーゼンの色数を有するプラスチックを製造することを可能にするプラスチックの製造方法を提供することである。本発明の更なる課題は、500ppm未満のアルデヒド含有量で、30未満のAPHAハーゼンの色数すらも、同時に97%超の純度と共に示す1,6−ヘキサンジオールを製造できる方法を提供することである。
【0008】
この課題は、少なくとも1の触媒の存在下での1,6−ヘキサンジオールとジカルボン酸又はジイソシアナートとの反応を包含するプラスチックの製造方法であって、その際、1,6−ヘキサンジオールが、水素化によるその製造後に、酸素対1,6−ヘキサンジオールのモル比が1:100より少ない少なくとも1の蒸留に供せられ、この蒸留の間に触媒作用成分≦5ppmが存在し、かつ、アルデヒド含分500ppm未満を示すものである方法により解決される。
【0009】
本発明の更なる主題は、以下の工程:
I)1,6−ヘキサンジオールを含有する混合物を調製する工程、
II)場合によって、触媒作用成分を残留含有量≦5ppmまで取り除く工程、
III)工程I)又は工程II)から得られる混合物を蒸留する工程、その際、酸素対1,6−ヘキサンジオールのモル比は蒸留の間に1:100より少なく、かつ触媒作用成分の含有量は≦5ppmである、
IV)工程III)から得られる1,6−ヘキサンジオール(アルデヒド含有量500ppm未満を有する)を捕集する工程、
を含む、<500ppmのアルデヒド含分を有する1,6−ヘキサンジオールの製造方法である。
【0010】
本発明の更なる主題は、本発明の方法により得られる500ppm未満のアルデヒド含分を有する1,6−ヘキサンジオールである。
【0011】
プラスチックの製造のための本発明の方法のためには、事前に可能な限り酸素排除下で蒸留され、かつ、蒸留の間に5ppm未満の触媒作用成分、特に脱水素作用成分を含有する1,6−ヘキサンジオールが使用されなくてはならない。得られる生成物の純度並びにアルデヒド含分及び触媒作用成分の量の記載は、ガスクロマトグラフィにより算出されており、かつ、本出願では面積パーセントとして表記されるか、又はそうであると理解されるべきである。
【0012】
本発明の方法の工程I)のための出発混合物は、この場合に、獲得すべき1,6−ヘキサンジオールを、工程I)の混合物に対して、好ましくは≧10質量%、特に好ましくは≧30質量%の量で含有する。
【0013】
本発明の方法の工程III)における1,6−ヘキサンジオールの蒸留の間に、酸素対1,6−ヘキサンジオールのモル比は、1:100の比を超えてはならない。好ましくは1:1000未満の比、特に好ましくは1:10000未満の比である。蒸留は、1又は複数の蒸留ユニット中で実施できる。好ましくは1の蒸留ユニットである。蒸留のための塔として、当業者に知られている塔全てが適する。好ましくは、充填塔、多孔板を備えた段塔、デュアルフロートレイを備えた塔、泡鐘段を備えた塔又はバルブトレイを備えた精留塔、分離壁塔又は薄層蒸発器及び落下式薄膜蒸発器であり、これは好ましくは真空で運転される。好ましくは、少なくとも1の蒸留ユニットを使用する。これは一般には、充填塔、多孔板を備えた段塔、デュアルフロートレイを備えた塔、泡鐘段を備えた塔又はバルブトレイを備えた精留塔、分離壁塔又は薄層蒸発器又は落下式薄膜蒸発器の群から選択された少なくとも1の塔であり、これは好ましくは真空中で高められた温度で運転される。この場合に、酸素対1,6−ヘキサンジオールのモル比は1:100より少なく、好ましくは1:1000より少なく、特に好ましくは1:10000より少ない。選択的に、本発明の方法の工程III)の前には、さらに、工程I)又は工程II)から得られる混合物(1,6−ヘキサンジオールを含有する)の一又は多工程の蒸発が実施されることもできる。
【0014】
蒸留圧力が低いほど、使用される蒸留装置の封止性により注意を払わなくてはならない。塔でのこの高められた封止性は、溶接リップシール、櫛形断面を有するシール、の群から選択した特殊なシールを用いて、及び、特に平滑なシール面の使用によって、また、塔中の多数のフランジ又は出入口の回避(例えば、圧力、温度又はゲージガラスの測定のための)によっても、達成されることができる。
【0015】
酸素回避のための更なる手段は、例えば窒素又はアルゴンを用いて不活性化される外側ジャケットを、蒸留ユニットに備えることである。
【0016】
酸素含有量を蒸留の間に減少させるための更なる処置は、フランジの閉鎖溶接である。
【0017】
蒸留の間に酸素含有量を測定できるためには、真空ユニットの排ガスを捕集し、この含有されるガス混合物をその組成についてさらに分析する手段がある。この場合に、塔への酸素導入に関する言及は、最適には、塔が好ましい条件下で、但しフィードなしに運転されることにより得られる。
【0018】
触媒作用成分、特に脱水素作用成分は、一方では、塔内の触媒作用する表面、例えば、蒸発器、塔ボディ部又は内部構造体、錆又は他の腐食部位の表面、他方では、例えば、1,6−ヘキサンジオールへのカルボニル化合物の前接続した水素化からの触媒残分による、1,6−ヘキサンジオール製造からの触媒作用する残分である。好ましい触媒作用成分、特に脱水素作用成分は、Cu、Co、Ni、Pd、Fe及びRuの、金属、合金、酸化物及び/又はハロゲン化物及び/又はカルボキシラート、例えばアジパート及び/又は6−ヒドロキシカプロナート及びCu、Co、Ni、Pd、Fe及びRuの純粋な金属、合金、酸化物及び/又はハロゲン化物を含有する混合物の群から選択されている。金属として算出する場合には、単独成分としても混合物としても、触媒作用成分の含有量は1,6−ヘキサンジオール塔への供給流中で、特に1,6−ヘキサンジオール塔へと、≦5ppm、好ましくは≦3ppm、特に好ましくは≦1ppmである。この場合に、相応する量の金属及び/又は金属混合物を、1,6−ヘキサンジオール塔中での蓄積の回避の目的で、塔から塔底流と同時に排出することが好ましく、この結果、例えばフィード中の1g/時間の金属の量では、塔の塔底流中の1g/時間の金属も排出される。
【0019】
1,6−ヘキサンジオール塔へのフィード中の金属痕跡物の影響を可能な限り少なく維持するためには、このフィード場所を塔の可能な限り低い高さに、すなわち、塔の中央より下に、特に好ましくは塔の1/3より下に備えることが好ましく、これによって、塔内には金属痕跡物の可能な限り短い滞留時間が支配する。このことは、酸素が塔内へと導入される場合にも当てはまる。理想的には、塔の塔底又は塔底循環へのフィードが行われる。但し、分離目的によっては、このフィードをより高く、例えば塔の中央1/3内に取り付けねばならないことを必要とする場合がある。このことは、最終的に、蒸留すべき1,6−ヘキサンジオール中のその他の成分、例えば高沸性物質、例えば、1,6−ヘキサンジオールよりも高い沸点を有するエーテル及びエステルの程度を決定する。これとは対照的に、1,6−ヘキサンジオールよりも低い沸点を有し、いわゆる易沸性物質に属するエーテル及びエステルは、この場合に、ペンタンジオール、例えば1,5−ペンタンジオール又はヘキサンジオール、例えば1,2−及び/又は1,4−シクロヘキサンジオール又は1,5−ヘキサンジオールの群から選択される。
【0020】
この場合に、その沸点が所定の蒸留条件下で当初の1,6−ヘキサンジオールの沸点よりも50℃より高い高沸性副成分が多く含有されているほど、この塔でのフィード部はより高く取り付けられていなくてはならないことが当てはまる。分離壁塔が使用される場合には、このフィード部は常に分離壁の高さにあり、好ましくは分離壁の真ん中1/3の高さにある。同じことは、同様に分離壁の中央1/3の高さにあり、好ましくはフィード部の反対にある側方排出部にも当てはまる。この側方排出部は、しかし、正確にフィード部の反対に存在しなくてはならないわけでなく、分離壁の中央1/3の範囲でこの箇所の上方又は下方に存在してもよい。
【0021】
触媒作用成分として、触媒作用する表面も該当し、これは例えば、塔全体をステンレス鋼製の内部構造体を用いて製造することにより、又は、開始前に全ての存在する腐食部位を入念に取り除くことに注意することにより回避される。次第に発生する腐食部位を回避するために、例えば、酸価(mg KOH/100g 試料)は、蒸留へのフィード中で10未満であり、好ましくは5未満、特に好ましくは1未満であることが望ましい。
【0022】
更なる触媒作用成分は、触媒残分であり、これは例えば本発明の方法において使用される1,6−ヘキサンジオールの製造の際に含有されている。特に1,6−ヘキサンジオール製造の際には、水素化触媒の存在下で作業され、その触媒残分は得られる終生成物中になお含有されていることもある。化学的及び機械的に安定な触媒の開発は、確かに非常に進歩しているが、この触媒は、この触媒が含まれている設備部分の始動若しくは停止の際に又は洗浄の際に、触媒搬出残分が1,6−ヘキサンジオールへと飛沫同伴されることを妨げることはできない。したがって、本発明の方法において使用される1,6−ヘキサンジオールから蒸留前に触媒搬出残分を取り除く場合に好ましく、これによって初めて前記残分は蒸留塔中へ全く導入されない。触媒成分は、1,6−ヘキサンジオールの製造工程からの生成物流と不均一に又は均一にも共に導通されることができる。
【0023】
不均一系触媒成分を減少させるために可能な処置の1つは、本発明の方法の工程III)における1,6−ヘキサンジオールの蒸留前のフィルターである。フィルターが水素化直後に使用されることが特に好ましい。このフィルターは、この場合に、キャンドルフィルター、メンブランフィルター及びフィルター助剤、例えば活性炭及び珪藻土の群から選択されている。キャンドルフィルター及びメンブランフィルターは、この場合に、触媒搬出粒子よりも小さいメッシュサイズを有し、好ましくはこのメッシュサイズは0.1mm未満、特に好ましくは0.05mm未満である。キャンドルフィルター及びメンブランフィルターは、この場合に、金属又はセラミック製であってよく、その際、このフィルターの金属は、1,6−ヘキサンジオールの後続の蒸留のために触媒作用する表面を有してはならない。このような使用されるフィルターユニットは、クロスフロー濾過として、又はフィルター助剤の場合には、深層濾過として構成されていることができ、この場合に、フィルターケークは、蒸留へと不均一系触媒成分が全く到達しないか又は極めてわずかにだけ到達するように配慮する。選択的に、相次いで実施される場合には、固定のフィルターユニットがフィルター助剤と組み合わされることもできる。
【0024】
均一に溶解した触媒成分は、化学的に誘発された沈殿により又はイオン交換体により取り除かれることができる。好ましくはイオン交換体の使用である。本発明の方法にとっては、蒸留すべき1,6−ヘキサンジオールが蒸留への導入前に触媒作用成分含分≦5ppmを有することが好ましい。
【0025】
触媒作用成分、例えば触媒搬出成分が、本発明の1,6−ヘキサンジオールの製造プロセスにおいて早期に取り除かれる場合に好ましい。このことは、本発明の方法の工程II)が、本発明の方法の工程I)からの混合物(1,6−ヘキサンジオールを含有する)の一又は多工程の蒸発前又は後に行われることによって行われることができる。好ましくは、触媒作用成分は、一又は多工程の蒸発前に取り除かれる。一又は多工程の蒸発の使用は、500ppm未満のアルデヒド含分を有する1,6−ヘキサンジオールの製造が連続的な方法に応じて行われることが望ましい場合に好ましい。一又は多工程の蒸発の実施の場合には、この蒸発が200mbar未満、好ましくは100mbar未満の圧力及び230℃未満、好ましくは180℃未満の温度で、かつ60分未満、好ましくは40分未満の滞留時間で起こる場合に好ましく、というのも、さもなければ、この蒸発工程で既に不所望な脱水素反応が進行し得るからである。
【0026】
このように前処理した1,6−ヘキサンジオールは、引き続き、蒸留塔中で、酸素/ジオール比1:100未満である本発明の方法の工程III)に応じて蒸留でき、この結果、1,6−ヘキサンジオールは500ppm未満のアルデヒド含分を有する。
【0027】
1,6−ヘキサンジオールの製造の際に、相応するフィルターの使用にもかかわらず、なお、アルデヒド含分を500ppm超とするのに量的に十分な触媒作用成分が本方法の工程III)の蒸留塔へと到達している場合には、この塔は清浄化されることが望ましい。これは、例えば水及び/又は酸を用いた強力な洗浄によって、好ましくはHNO3を用いた洗浄によって行われることができる。HNO3洗浄によって、例えばCu及び/又はCoの痕跡量もが取り除かれることができる。好ましくは、この場合に、水中で1〜20質量%のHNO3濃度である。
【0028】
酸素及び/又は触媒作用成分の減少のための回避を講じることができない場合、又はこの処置が不十分である場合には、なお原則的に、極めて低圧で1,6−ヘキサンジオールの蒸留を実施する可能性が存在し、というのも、これによって、蒸留温度が低下され、化学反応、例えば酸化及び/又は脱水素化がよりゆっくりと進行するからである。但し、この欠点は、圧力が低いほど、真空機器及び塔の出費がより多くなることである。極めて低圧では、例えば、塔を通過する材料流量が低下し、そのため、塔を比較的大きな直径でもって構築しなくてはならず、このことは、顕著な追加コストを引き起こす。したがって、酸素/1,6−ヘキサンジオール比1:100未満で作業すること及び/又は触媒による脱水素を回避すること、を可能にする方法がより好ましい。本発明の方法の工程III)における好ましい蒸留圧は、したがって、25mbar超、好ましくは40mbar超、特に好ましくは75mbar超である。この上限は500mbar、好ましくは300mbarである。
【0029】
したがって、本発明の主題は、ポリエステル、ポリウレタン及びアクリラートの製造のためこのようにして製造された1,6−ヘキサンジオールの使用のみでなく、500ppm未満、好ましくは400ppm未満、特にとりわけ好ましくは100ppm未満、とりわけ特に好ましくは50ppm未満のアルデヒド含分を有する1,6−ヘキサンジオールの製造方法でもある。したがって、本発明の更なる主題は、500ppm未満のアルデヒド含分を有する、この方法に応じて製造された1,6−ヘキサンジオールでもある。このようにして製造された1,6−ヘキサンジオールは、この場合に、少ない含分のアルデヒドのみによって特徴付けられるのでなく、ISO 6271に応じて算出された色数30APHAハーゼンによっても特徴付けられる。このような1,6−ヘキサンジオールは、従って、例えば触媒の存在下でカルボン酸との反応の際に、ISO 6271に応じて算出された色数(ハーゼン色数)150APHAハーゼン未満、好ましくは120APHAハーゼン未満、特にとりわけ好ましくは100APHAハーゼン未満を有するポリエステルを生じる。
【0030】
ポリエステルの製造には、このようにして製造した1,6−ヘキサンジオールは、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸の群から選択したカルボン酸、特に好ましくはコハク酸及びアジピン酸の存在下で反応させられる。ポリウレタンの製造には、前記1,6−ヘキサンジオールは、ヘキサメチレンジイソシアナート、トルエン−2,4−ジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート及び4,4′−ジイソシアナートジシクロヘキシルメタンの群から選択したイソシアナートの存在下で反応させられる。ポリエステルの製造にもポリウレタンの製造にも、更なる触媒が使用できる。触媒は、この場合に、酸、塩基、ルイス酸及びルイス塩基の群から選択されている。
【0031】
実施例:
アルデヒド含有量の測定をガスクロマトグラフィにより行う。このために、長さ60m、内径0.32mm及びフィルム厚1μmを有する塔DB5を使用する。測定のために、温度プロファイルを経過させ、この場合に、開始時に温度90℃を5分間等温で維持し、引き続き加熱速度5℃/分で150℃に達するように調節し、次いで、加熱速度1℃/分で160℃まで調節し、この後に200℃まで加熱速度5℃/分、引き続き300℃まで加熱速度20℃/分に調節し、この後に20分間の等温相が続く。インジェクター温度は250℃であり、その一方で、FID温度は320℃であった。1,6−ヘキサンジオール中のアルデヒド含有量の記載は、GC面積%として決定され、好ましくは、1,6−ヘキサンジオールの含有量が>97%であり、アルデヒドの含有量が<1000ppmである場合である。
【0032】
以下の実施例は、どのようにして500ppm未満のアルデヒド含分を有する1,6−ヘキサンジオールを獲得するかを、さらに、高められたアルデヒド含有量がどのように作用するかを詳説するものである。
【0033】
比較例1:
ヘキサンジオールの製造:
アジピン酸ジメチルエステルを気相中で60bar及び195〜210℃で銅含有触媒に対して水素化する。回収した搬出物(メタノール約36%、1,6−ヘキサンジオール約67%、残分は主として6−ヒドロキシカプロン酸エステル、ヘキサノール並びに500ppm未満の量含分にある更なる化合物、特に6−ヒドロキシヘキサナール及び約15ppmのCu(ダスト混入によると推測される))を蒸留により後処理する。この場合に、まず主としてメタノールを塔底温度110℃までで圧力1013mbar absolut〜500mbarで取り除く。残留する塔底物を、蒸留塔(1mの充填物塔、還流比5、空気進入なし)中で50mbar absolutで不連続的に分別し、約180℃の塔底温度で分留する。易沸性物質、例えば残存メタノール及びヘキサノールの分離後に、蒸留収率約90%で、純度99.9%でもって1,6−ヘキサンジオールを獲得する。この6−ヒドロキシヘキサナール含有量は500ppmであった。
【0034】
ポリエステルの製造:
アジピン酸1325.3g、6−ヒドロキシヘキサナール含有量500ppmを有するヘキサンジオール−1,6 396.6g、ブタンジオール−1,4 623.0g及びオクタン酸スズ10ppmを、4リットルの容積を有する丸底フラスコ中に充填した。この混合物を撹拌しながら180℃に加熱し、3時間この温度で放置した。この場合に、発生する水を蒸留により取り除いた。
【0035】
この後で、この混合物を240℃に加熱し、1mg KOH/g未満の酸価が達成されるまで、この温度で40mbarの真空下で放置した。この発生した液状ポリエステルアルコールは次の特性値を有した:
ヒドロキシル価:54.1mg KOH/g
酸価:0.1mg KOH/g
粘度:690mPa.s 75℃で
水含有量:0.01%
色数:210 APHAハーゼン。
【0036】
実施例1:
ヘキサンジオールの製造:
比較例1を繰り返し、但し、この生成物流から、メタノール分離後に薄層蒸発器(Sambay)を用いて高沸性成分を取り除いた(50mbar)点で異なる。この蒸留後に得られる1,6−ヘキサンジオールは、99.9%超の純度を有し、この6−ヒドロキシヘキサノール含有量は50ppm未満であった。
【0037】
ポリエステルの製造:
アジピン酸1325.3g、6−ヒドロキシヘキサナール含有量50ppm未満を有するヘキサンジオール−1,6 396.6g、ブタンジオール−1,4 623.0g及びオクタン酸スズ10ppmを、4リットルの容積を有する丸底フラスコ中に充填した。この混合物を撹拌しながら180℃に加熱し、3時間この温度で放置した。この場合に、発生する水を蒸留により取り除いた。
【0038】
この後で、この混合物を240℃に加熱し、1mg KOH/g未満の酸価が達成されるまで、この温度で40mbarの真空下で放置した。この発生した液状ポリエステルアルコールは次の特性値を有した:
ヒドロキシル価:56.8mg KOH/g
酸価:0.2mg KOH/g
粘度:530mPa.s 75℃で
水含有量:0.01%
色数:68 APHAハーゼン。
【0039】
比較例2:
W097/31882、例1(変法A)と同様に製造した、アジピン酸ジメチルエステル、6−ヒドロキシカプロン酸メチルエステルからの混合物を、記載のように水素化する。始動直後に、メタノール及び1,6−ヘキサンジオールの他になお触媒痕跡量を含有する混合物が得られるが、GC分析は6−ヒドロキシヘキサナールを示さなかった。この混合物からメタノールを留去した。この生じる粗製ヘキサンジオールは、約150ppmのCu触媒を不純物として含有した。この混合物のうち135gを150mbar及び塔底温度約195℃で塔を介して分留し、この場合に、空気は蒸留システムへと到達しなかった。主たる量の1,6−ヘキサンジオールを含有し、但し、1,6−ヘキサンジオール 93.7%の他に、なお6−ヒドロキシヘキサナール5.6%が存在している分画が得られた。この他に、1,5−ペンタンジオール0.2%並びに複数のそれぞれ1000ppm未満である成分、特に1,4−シクロヘキサンジオール約500ppmが見出された。
【0040】
2日間の水素化運転時間後に、粗製ヘキサンジオール中になお16ppmのCu触媒を見出すことができた。粗製ヘキサンジオールの引き続く蒸留において、大抵のヘキサンジオールを含有する分画中に、1,6−ヘキサンジオール99.25%の他になお6−ヒドロキシヘキサナール2100ppmが見出された。
【0041】
実施例2:
比較例2を繰り返し、この水素化搬出物をフィルター(5μmのメッシュサイズ)を介して濾過した。粗製ヘキサンジオール中に2ppmのみのCu触媒が見出された。粗製ヘキサンジオールの引き続く蒸留において、大抵のヘキサンジオールを含有する分画中に、1,6−ヘキサンジオール99.64%の他に6−ヒドロキシヘキサナール450ppmのみが見出された。
【0042】
実施例3:
実施例2を繰り返したが、粗製ヘキサンジオール中にCu触媒はもはや検出可能でなく(検出限度2ppm)、というのも、この水素化搬出物をフィルター(0.5μmメッシュサイズ)を介して濾過していたからである。粗製ヘキサンジオールの引き続く蒸留において、大抵のヘキサンジオールを含有する分画中に、1,6−ヘキサンジオール99.7%の他に6−ヒドロキシヘキサナール40ppmのみが見出された。
【0043】
比較例3
実施例1を繰り返したが、いくばくかも漏れ空気(Leckluft)がヘキサンジオール蒸留の間にシステムへと到達した(酸素対ヘキサンジオールのモル比約1:90)点で異なる。大抵のヘキサンジオールを含有する分画中に、1,6−ヘキサンジオール99.3%の他に、6−ヒドロキシヘキサナール3000ppmが見出された。
【0044】
酸素対ヘキサンジオールのモル比を1:1000へと低下させると、その他は同じ条件下で、この6−ヒドロキシヘキサナール含有量は350ppmのみであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,6−ヘキサンジオールを少なくとも1の触媒の存在下でジカルボン酸又はジイソシアナートと反応させることを含むプラスチックの製造方法であって、前記1,6−ヘキサンジオールは、水素化によるその製造後に酸素対1,6−ヘキサンジオールのモル比が1:100より小さい少なくとも1の蒸留に供せられ、≦5ppmの触媒作用成分を含有し、かつ500ppm未満のアルデヒド含分を有するものである、プラスチックの製造方法。
【請求項2】
前記プラスチックが、ポリエステル、ポリウレタン及びポリアクリラートの群から選択されている請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記蒸留前に一工程又は多工程の蒸発を圧力≦200mbar及び温度≦230℃で実施する請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記1,6−ヘキサンジオールから前記蒸留前に触媒作用成分を取り除く請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記触媒作用成分が、金属性Cu、Co、Ni、Pd、Fe及びRu、その合金及び/又は酸化物及び/又はハロゲン化物及び/又はカルボキシラートのその化合物及び/又は前記成分の混合物の群から選択されている請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記触媒作用成分を、濾過、沈殿及び/又はイオン交換体によって取り除く請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
フィルターとしてメッシュサイズ<0.1mmを有する機械的フィルターを使用する請求項4又は5記載の方法。
【請求項8】
以下の工程:
I)1,6−ヘキサンジオールを含有する混合物を調製する工程、
II)場合によって、触媒作用成分を残留含有量≦5ppmまで取り除く工程、
III)工程I)又は工程II)から得られる混合物を蒸留する工程、その際、酸素対1,6−ヘキサンジオールの比は蒸留の間に1:100より少なく、かつ触媒作用成分の含有量は≦5ppmである、
IV)工程III)から得られる、アルデヒド含有量500ppm未満を有する1,6−ヘキサンジオールを捕集する工程、
を含む、<500ppmのアルデヒド含分を有する1,6−ヘキサンジオールの製造方法。
【請求項9】
工程II)を一工程又は多工程の蒸発前又は後に圧力≦200mbar及び温度≦230℃で実施する請求項8記載の方法。
【請求項10】
工程II)を一工程又は多工程の蒸発前に圧力≦200mbar及び温度≦230℃で実施する請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記触媒作用成分が、金属性Cu、Co、Ni、Pd、Fe及びRu、その合金及び/又は酸化物及び/又はハロゲン化物及び/又はカルボキシラートのその化合物及び/又は前記成分の混合物の群から選択されている請求項8から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1項記載の方法により得られる500ppm未満のアルデヒド含分を有する1.6−ヘキサンジオール。

【公表番号】特表2013−512293(P2013−512293A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540392(P2012−540392)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067976
【国際公開番号】WO2011/064184
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】