説明

アルドラーゼ陰性弱毒細菌生ワクチン

本発明は医薬用弱毒生菌に関する。本発明は微生物病の予防に有用な前記細菌に基づくワクチンと、ワクチンの製造における前記細菌の使用にも関する。更に、本発明は前記ワクチンの製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬用弱毒生菌、微生物病の予防に有用な前記細菌に基づくワクチン、ワクチンの製造における前記細菌の使用、及び前記ワクチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物病に対する免疫は温血動物の発病を回避するか又は病状を弱める1つの手段である。所与病原体に対する不完全な免疫は病原体に暴露された集団に罹病と死亡をもたらす。生きた弱毒微生物に基づくワクチン(弱毒生ワクチン)は非常に有効な型の免疫応答を誘導することが一般に認められている。このようなワクチンは動物宿主に接種すると、微生物病原体の宿主侵入により初期細胞性又は体液性免疫応答誘導が促進され、感染の程度が臨床的に有意になる前に微生物の増殖をくい止めることができるという利点がある。死滅病原体に基づくワクチン(死菌ワクチン)はこの型の応答を達成できないことが一般に認められている。しかし、生きた病原体を含むワクチンは弱毒化レベルによってはワクチン接種した宿主が接種の結果として防御対象疾病に感染する危険がある。
【0003】
例えば近縁群であるエシェリキア(Escherichia)属とサルモネラ(Salmonella)属に属する細菌に対するワクチンは上記一般原則に従う。これらの細菌群の多くのメンバーは消化管及び/又は膀胱に感染するという事実により病原性である。これらの細菌の病原作用は消化管及び/又は膀胱の粘膜層に定着する能力に密接な関係がある。定着現象の結果として病原体は消化管に持続的に存在し、病原体は粘膜層に非常に密接に接触し、その結果、更に他の組織に侵入することができる。即ち、同時に逆説的に言えば、免疫系が所定レベルの免疫応答を発生するように誘因されるのは、これらの細菌が消化管及び/又は膀胱に定着し、同時に疾病を誘発するためである。従って、この免疫応答の発生は定着細胞の病原作用を抑制するためには遅過ぎる。
【0004】
生きた微生物の免疫属性をもちながら、ワクチン接種の結果として望ましくない副作用を生じることのない腸内感染に対する弱毒生ワクチンが得られるならば望ましい。
【0005】
このようなワクチンの第1の前提条件は消化管に定着できることであると思われる。免疫系を確実に誘因するのは定着現象である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は野生型細菌感染に対する防御を提供する弱毒生菌を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、機能的Eda蛋白質の合成を防止する突然変異をeda遺伝子にもつエシェリキア属、サルモネラ属、及びエルシニア(Yersinia)属の細菌株は宿主動物で野生型毒性細菌に対して防御免疫応答を非常に良好に誘導できることが今回判明した。このような変異体は第1に弱毒生ワクチン株として使用する場合に安全である。更に、野生型株の定着を防止することが可能である。1例に過ぎないが、2週齢を過ぎたニワトリにこのようなワクチンを投与すると、攻撃(challenge)後のクロアカからワクチン株も攻撃株も再分離できないレベルまで免疫を誘導することが可能である。
【0008】
大腸菌(Escherichia coli)Edaマイナス突然変異体はマウス大腸に定着しないことが示されている(Sweeney,N.J.ら,in Infect.& Immun.64:3504−3511(1996))ので、これは実際に全く予想外である。マウスに予めストレプトマイシンを投与している場合にも同じ結果が得られる。このような治療は腸から全ての通性細菌を根絶するので、腸内の可能な全ニッチが原則として利用可能になる。しかし、Edaマイナス突然変異体はその対応する野生型と異なり、マウスで定着できないことが示された。従って、Edaマイナス突然変異体は他の哺乳動物や家禽の消化管にも定着しないであろうと予想され、従って、免疫系を誘因するために十分密接に免疫系と接触しないであろうと予想された。
【0009】
従って、本発明の1態様はeda遺伝子の変異の結果として機能的Eda蛋白質を発現することができないワクチン用弱毒生菌に関する。
【0010】
更に、本発明に記載するEda変異体は病原性が非常に低いため、ワクチン株として魅力的である。
【0011】
Eda蛋白質をコードするeda遺伝子は所謂Entner−Doudoroff経路において重要な役割を果たす。その遺伝子産物であるEdaはKDPG−アルドラーゼとしても知られる酵素である。この酵素はグルクロン酸、ガラクツロン酸及びグルコン酸の代謝で使用される。Fraenkel,D.G.は例えば大腸菌とサルモネラ菌におけるEntner−Doudoroff経路をF.C.Neidhardt,J.L.Ingraham,K.B.Low,B.Magasanik,M.Schaechter and H.E.Umbarger(ed.),Escherichia coli and Salmonella typhimurium:cellular and molecular biology.American Society for Microbiology,Washington D.C.(1987)の142−150頁に記載している。
【0012】
Eganらは大腸菌におけるEntner−Doudoroff経路を分析し、配列を分析し、edd−edaオペロンのプロモーターを位置決定している(Eganら,J.Bacteriology 174:4638−4646(1992))。
【0013】
サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)のEdaをコードするDNAの配列を配列番号1に示す。Eda蛋白質自体の配列を配列番号2に示す。
【0014】
eda変異体が消化管に定着しないと予想されている事実は、このような変異体が当分野で公知であったにも拘わらず、潜在的な弱毒生ワクチン候補として提案されていない理由を説明するものである。
【0015】
炭水化物代謝におけるその重要な位置により、eda遺伝子とその遺伝子産物Edaは細菌界で比較的広く存在している。Eda蛋白質は高度に保存された蛋白質である。例えば大腸菌、サルモネラ種、より特定的にはサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)種(例えばチフィムリウム(Typhimurium)、エンテリチジス(Enteritidis)及びデュプリン(Dublin)血清型)及びエルシニ(Yersinia)ア種(例えばペスト菌(Y.pestis))で検出することができる。
【0016】
変異は、変異が機能的Eda蛋白質を発現できなくするという条件で挿入、欠失、置換又はその組み合わせとすることができる。機能的Eda蛋白質とは、野生型蛋白質の調節特徴をもつ蛋白質とみなされる。従って、その機能の少なくとも1つを欠損するEda蛋白質は非機能的Eda蛋白質であるとみなされる。より具体的には、非機能的Eda蛋白質は、対応する野生型と比較してピルビン酸及びグリセルアルデヒド−3−リン酸からKDPGの合成又はその逆の合成を媒介できないか又はその程度が低い。その結果、非機能的Eda蛋白質をもつ株は対応する野生型と比較してグルクロン酸、ガラクツロン酸及びグルコン酸を利用できないか又はその程度が低い。
【0017】
本発明の用途における弱毒生菌は数種の方法で獲得することができる。このような細菌を獲得する1つの可能な方法はeda遺伝子をもつ野生型細菌を塩基類似体等の突然変異誘発物質で処理する方法、紫外線処理又は温度処理等の古典的方法である。
【0018】
機能的Eda蛋白質を生産しない株は容易にピックアップすることができる。このような変異体はグルクロン酸、ガラクツロン酸又はグルコン酸を利用することができないが、グルコースとガラクトン酸を利用することができる。
【0019】
従って、これらの特異性に基づき、非常に容易にインビトロ選択することができる。このような選択方法に関する詳細な記載はSweeney,N.J.らによりInfect.& Immun.64:3504−3511(1996)に記載されている。
【0020】
古典的突然変異技術により誘導される場合には変異の種類は不明である。点突然変異の場合もあり、その場合には確率は低いが、野生型に復帰する可能性がある。この小さな危険を回避するためには、トランスポゾン突然変異誘発が良好な代替方法であると思われる。トランスポゾン突然変異誘発による変異誘発も当分野で周知の突然変異誘発技術である。これは染色体中の局在部位で行われる変異である。トランスポゾン挿入は特定遺伝子を標的とすることができない。しかし、eda変異体はEda活性の欠損を補う栄養補充なしにはインビトロ増殖しないので非常に容易に選別することができる。従って、ランダムにトランスポゾン突然変異させた細菌のプールから容易に選択することができる。
【0021】
変異を実施する著しく魅力的な方法即ちランダムではなく故意に既定部位に変異を導入する方法が組換えDNA技術により提供される。このような変異は変異した遺伝子が機能的Edaをコードしなくなるという条件で挿入、欠失、ヌクレオチド置換又はその組み合わせとすることができる。このような変異は例えば多数の塩基対の欠失により実施することができる。10塩基対等の非常に小さな欠失であってもEdaを非機能的にすることができる。1塩基対の欠失であっても、このような変異の結果として他の塩基対は正しい読み枠に配置されなくなるので非機能的Edaが得られる。3で割り切れない多数の塩基対の挿入の各欠失はこのようなフレームシフトを生じる。より長い配列(例えば100塩基対)を除去することがより好ましい。完全なeda遺伝子を欠失させることが更に好ましい。
【0022】
特にオープンリーディングフレームに終止コドンを導入する変異、又はオープンリーディングフレームにフレームシフトを生じる変異は機能的Edaをコードしない株を獲得するのに非常に適していることが容易に理解されよう。
【0023】
Eda陰性変異体を構築するための全技術は周知標準技術である。これらの技術はEda遺伝子をクローニングし、遺伝子配列を部位特異的変異誘発により改変し、制限酵素消化後に再連結又はPCRアプローチを適用した後に野生型eda遺伝子を変異体遺伝子で置換する(対立遺伝子交換又は対立遺伝子置換)。eda遺伝子のプラスミドクローニング、遺伝子の制限酵素消化とその後のエンドヌクレアーゼ処理、再連結及び宿主株における相同組換え等の標準組換えDNA技術はいずれも当分野で公知であり、例えばManiatis/Sambrook(Sambrook,J.ら,Molecular cloning:a laboratory manual.ISBN 0−87969−309−6)に記載されている。部位特異的変異は例えばClontechから市販されているTransformer(登録商標)キットを使用してin vitro部位特異的変異誘発により実施することができる。PCR技術はDieffenbach & Dreksler;PCR primers,a laboratory manual.ISBN 0−87969−447−3及びISBN 0−87969−447−5に詳細に記載されている。
【0024】
eda遺伝子はEda蛋白質をコードするコーディング配列以外に、プロモーター等の調節配列も含む。前記遺伝子はリボソーム結合部位等のEda mRNAの正確な翻訳に必須の部位も含む。
【0025】
従って、コーディング領域の変異に加え、正確な転写と翻訳に必須の配列の変異も本発明の範囲に含むものとする。
【0026】
一好適態様では、本発明はエシェリキア、サルモネラ及びエルシニア属のワクチン用弱毒生菌に関する。
【0027】
本発明のより好ましい形態では、本発明の弱毒生菌はS.エンテリカ(S.enterica)血清型チフィムリウム(typhimurium)、エンテリチジス(enteritidis)、コレラエスイス(choleraesuis)、デュブリン(dublin)、チフィ(typhi)、ガリナルム(gallinarum)、アボルツソビ(abortusovi)、アボルツス−エクイ(abortus−equi)、プロルム(pullorum)、大腸菌又はペスト菌から構成される群から選択される。これらの細菌属はヒトと各種動物の両者に対して病原性の多数の種を含む。
【0028】
更に好ましい形態では、本発明の弱毒生菌はS.エンテリカ血清型チフィムリウム、エンテリチジス、ガリナルム、プロルム、大腸菌又はペスト菌から構成される群から選択される。
【0029】
eda遺伝子のフラグメントもしくは完全遺伝子の欠失又は異種DNAフラグメントの挿入又はその両者を含む明確に既定され、故意に実施される変異は古典的に誘導される変異に比較して野生型状態に復帰しないという利点がある。
【0030】
従って、更に好ましい形態では、本発明の本態様はeda遺伝子が挿入及び/又は欠失を含む弱毒生菌に関する。
【0031】
現在多量のワクチンが愛玩動物と家畜の両者に投与されていることを考慮すると、単にワクチン接種費用の削減という理由だけでも数種のワクチンを併用投与することが望ましいと思われる。従って、他の病原性微生物又はウイルスから選択される抗原をコードする異種遺伝子の組換えキャリヤーとして弱毒生菌を使用することは非常に魅力的である。このような組換えキャリヤーを投与すると、同時に2種以上の疾病に対して免疫を誘導するという利点がある。本発明のワクチン用弱毒生菌はEda蛋白質をコードする遺伝子をこのような異種遺伝子の挿入部位として使用することができるので異種遺伝子の非常に適切なキャリヤーとなる。eda遺伝子を挿入部位として使用すると、eda遺伝子が不活化されると同時に新たに導入した異種遺伝子を(同種細菌遺伝子と呼応して)発現させることができるという利点がある。このような組換えキャリヤーの構築は対立遺伝子交換等の標準分子生物学技術を使用して日常的に実施することができる。
【0032】
従って、本発明の別の態様は機能的Eda蛋白質を生産せず、異種遺伝子が挿入された好ましくはエシェリキア、サルモネラ及びエルシニア属のワクチン用組換え弱毒生菌に関する。このような異種遺伝子は上述したように例えば他の病原性微生物又はウイルスから選択される抗原をコードする遺伝子とすることができる。このような遺伝子は例えば病原性ヘルペスウイルス(例えばヘルペスウイルスの構造蛋白質をコードする遺伝子)、レトロウイルス(例えばgp160エンベロープ蛋白質)、アデノウイルス等に由来することができる。
【0033】
病原性細菌から異種遺伝子を得ることもできる。1例として、細菌毒素(例えばアクチノバチルス・プリューロニューモニアエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)毒素、クロストリジウム(Clostridium)毒素)、外膜蛋白質等をコードする遺伝子が非常に適切な細菌異種遺伝子である。また、インターロイキン又はインターフェロン等の免疫系の誘因に関与する蛋白質をコードする遺伝子や、免疫調節に関与する別の遺伝子を挿入することも考えられる。
【0034】
異種遺伝子をeda遺伝子に挿入すると、異種遺伝子に適した新規挿入部位を見出す必要がないと同時にeda遺伝子が破壊されるので有利である。
【0035】
従って、本態様の1好適形態では、異種遺伝子をeda遺伝子に挿入する。異種遺伝子はeda遺伝子の所定部位に挿入することもできるし、eda遺伝子の一部又は全部を欠失させてこの遺伝子の部位に挿入することもできる。
【0036】
予想外のインビボ弱毒免疫原性により、本発明のワクチン用細菌は弱毒生ワクチンの基盤として非常に適切である。従って、本発明の更に別の態様は野生型形態がeda遺伝子を含む細菌による感染に対して動物及びヒトを防御するための弱毒生ワクチンに関する。
【0037】
このようなワクチンは免疫原として有効な量の本発明のワクチン用弱毒生菌又は本発明の組換えキャリヤー生菌と、医薬的に許容可能なキャリヤーを含む。
【0038】
ワクチンはエシェリキア、サルモネラ、及びエルシニアの群から選択される本発明の弱毒生菌を含むことが好ましい。
【0039】
免疫原として有効とは、ワクチン接種時の弱毒生菌の投与量が毒性形態の細菌に対して有効な免疫応答を宿主に誘導するために十分であることを意味する。
【0040】
免疫原として有効な量の上記弱毒生菌に加え、本発明のワクチンは医薬的に許容可能なキャリヤーも含む。このようなキャリヤーは水等の単純なものでもよいが、例えば細菌を培養した培養液も含むことができる。別の適切なキャリヤーは例えば生理的塩濃度の溶液である。
【0041】
有用な投与用量は年齢、体重及びワクチン接種する動物、投与方法並びにワクチン接種の対象となる病原体の種類により異なる。
【0042】
ワクチンは免疫応答を誘発するために十分な任意用量の細菌を含むことができる。例えば細菌10〜1010個の用量が非常に適切な用量である。
【0043】
場合により、アジュバント活性をもつ1種以上の化合物をワクチンに添加してもよい。アジュバントは免疫系の非特異的刺激剤である。アジュバントはワクチンに対する宿主の免疫応答を強化する。当分野で公知のアジュバントのレイはフロイント完全及び不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、ISCOM(免疫刺激複合体、例えばヨーロッパ特許EP109942号参照)、サポニン、鉱油、植物油及びカルボポールである。
【0044】
粘膜塗布に特に適したアジュバントは例えば大腸菌易熱性毒素(LT)又はコレラ毒素(CT)である。
【0045】
他の適切なアジュバントは例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム又は酸化アルミニウム、油−エマルション(例えばBayol F(登録商標)又はMarcol 52(登録商標))、サポニン又はビタミンE可溶化物である。
【0046】
従って、1好適形態では、本発明のワクチンはアジュバントを含む。
【0047】
本発明で有用な医薬的に許容可能なキャリヤー又は希釈剤の他の例としては、SPGA、炭水化物(例えばソルビトール、マンニトール、澱粉、スクロース、グルコース、デキストラン)、蛋白質(例えばアルブミン又はカゼイン)、蛋白質含有物質(例えばウシ血清又は脱脂乳)及び緩衝液(例えばリン酸緩衝液)等の安定剤が挙げられる。
【0048】
特にこのような安定剤をワクチンに添加する場合には、ワクチンは凍結乾燥に非常に適している。従って、より好ましい形態では、ワクチンは凍結乾燥形態である。
【0049】
動物又はヒトに投与する場合には、本発明のワクチンは特に鼻腔内、皮内、皮下、経口、エアゾール又は筋肉内投与することができる。家禽に投与する場合には、羽板及び点眼投与が非常に適切である。
【0050】
本発明のワクチンの投与方法は既存の細菌ワクチンの接種に適用する方法と殆ど変わらないので当業者に公知である。本発明のワクチンは特に大腸菌、サルモネラ、又はエルシニア群に属する細菌を含む場合には経口投与することが好ましい。
【0051】
更に別の態様は野生型細菌感染又は感染の病原作用に対する動物及びヒトの防御用ワクチンの製造における本発明の細菌又は組換え細菌の使用に関する。
【0052】
本発明の更に別の態様は本発明のワクチンの製造方法に関する。このような方法は本発明の弱毒生菌又は本発明の組換えキャリヤー生菌と医薬的に許容可能なキャリヤーを混合する段階を含む。
【実施例1】
【0053】
Eda陰性変異体の構築
Wanner法(PNAS June 6,2000.97(12):6640−45)の変法を使用してeda欠失を実施した。PstI部位を含むS.enteritidis SE5609の5’及び3’edaフランキング配列のプライマー(PstI eda 5’:cta gct gca ggt gct aag cgg taa tct ggg及びPstI eda 3’:cta gct gca gaa gag att gct cgt cat gtg g)を設計し、PCR産物をpBluescript SKII+(pBSeda)にクローニングした。BglIIを含むedaプロモーター領域(ctag aga tct ctcgcctgattacta gtgtg)と3’末端(ctag agatct aag ccg ttaaatgcccgatgg)のプライマーを使用してpBSedaからのフランキング配列とベクター配列をリバースPCR増幅した。BglII消化とそれに続く連結によりeda欠失クローンを作製し、pBSedaΔと命名した。BamHIで消化した1.2kbクロラムフェニコール耐性遺伝子をpBSedaΔのBglII部位に挿入し、pBSedaΔcamを作製した。pBSedaΔcamをPstIで消化し、インサートをベクター配列から分離し、PCRの鋳型として使用した。反応液を100μlずつ8本貯留し、5μlをゲル上にて調べ、直線性PCR産物をエタノール沈殿させ、水2〜4μlに再懸濁した。
【0054】
S.enteritidis SE5609細胞に温度感受性プラスミドpKD46をエレクトロポレーション導入した。これらの細胞をアラビノースの存在下に30℃で増殖させると、プラスミドはλRedリコンビナーゼを発現する。細胞(A600=0.6)を遠心分離と冷10%グリセロールで3〜4回洗浄することによりエレクトロポレーション導入に対しコンピテントにした。次に直線性PCR産物をコンピテント細胞にエレクトロポレーション導入した。リコンビナーゼはクロラムフェニコールカセットを含む欠失eda遺伝子で野生型eda遺伝子を置換するように作用する。クロラムフェニコール(30μg/ml)を添加したLuria寒天プレートで37℃にて一晩増殖させることにより、クロラムフェニコールカセットを含む欠失eda遺伝子を含むSE5609クローンを選択すると共に、温度感受性pKD46プラスミドを脱落させた。
【0055】
別の組のフランキングeda 5’(ctagctgca gcc tca tat tcc gga cct gag c)及びeda 3’(cta gct gca ggt gac ggt aaa agg cta atg cg)プライマーを使用し、SE5609−eda(−)eda変異体の1個を確認した。野生型SE5609 eda遺伝子を含む増幅フラグメントは予想通り927bpバンドを生じ、eda欠失/クロラムフェニコール変異体は予想された1677bp産物を生じた。1.8mM MgClとFinnzyme DyNAzymellポリメラーゼを反応で使用した。サイクル条件は94℃で4分を1サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、72℃で130秒を30サイクル;72℃で7分を1サイクルとした。更に、0.2%(w/w)グルコン酸を単一炭素源として含有する液体M9最少培地での増殖不能により、同一SE5609−eda(−)eda変異体を確認した。
【実施例2】
【0056】
安全性、ワクチン接種及び攻撃試験。
【0057】
実験デザイン
安全性と効力の両者を試験するために、SE5609−eda(−)1.1×10CFUと4.1×10CFUをニワトリに夫々6週齢と14週齢で経口接種した。
【0058】
ワクチン接種後に臨床観察により安全性を評価した。更に、各ワクチン接種から7日後と14日後にクロアカスワブを採取し、腸管におけるワクチン株の有無を調べた。スワブを使用してブリリアントグリーン寒天(BGA)に直接及びRappaport Vassiliadisブロスで増菌後に接種した。
【0059】
効力を試験するために、ワクチン接種したニワトリとワクチン接種していない対照にナリジキシン酸耐性野生型S.e.株1.3×10CFUを16週齢で経口攻撃感染させた。攻撃から3日後、7日後及び14日後にクロアカスワブを採取し、攻撃株による定着率を調べた。ナリジキシン酸を添加したBGA(BGAnal)に直接及び増菌培地(nalを添加した緩衝ペプトン水)でインキュベーション後にスワブを接種した。
【0060】
動物
サルモネラ菌に汚染されていない集団から商業用産卵鶏を入手した。
【0061】
結果
どちらの経口ワクチン接種後も臨床異常は観察されなかった。
【0062】
まず、SE5609−eda(−)株はワクチン接種動物の7日と14日のクロアカスワブから培養されず、この株がニワトリ消化管への定着能が低下していることを示した。
【0063】
更に、表1に示すように、SE5609−eda(−)のワクチン接種の結果、攻撃株による消化管の定着は非常に有意に低下した。
【0064】
【表1】

【0065】
結果:eda(−)を単一弱毒化とする野生型株であるサルモネラ・エンテリチジスeda(−)株に基づくワクチンは安全である。更に、サルモネラ・エンテリチジスeda(−)株をワクチン接種すると、ワクチン株と攻撃株の両者による消化管の定着が完全に防止された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
eda遺伝子の変異の結果として機能的Eda蛋白質を発現することができないエシェリキア(Escherichia)属、サルモネラ(Salmonella)属又はエルシニア(Yersinia)属のワクチン用弱毒生菌。
【請求項2】
前記細菌が大腸菌(E.coli)、ペスト菌(Y.pestis)、S.エンテリカ(S.enterica)血清型チフィムリウム(typhimurium)、エンテリチジス(enteritidis)、コレラエスイス(choleraesuis)、デュブリン(dublin)、チフィ(typhi)、ガリナルム(gallinarum)、アボルツソビ(abortusovi)、アボルツス−エクイ(abortus−equi)、プロルム(pullorum)から構成される群から選択される請求項1に記載のワクチン用弱毒生菌。
【請求項3】
前記変異が挿入及び/又は欠失を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のワクチン用弱毒生菌。
【請求項4】
前記細菌が異種遺伝子をもつことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のワクチン用弱毒生菌。
【請求項5】
前記異種遺伝子がeda遺伝子に挿入されていることを特徴とする請求項4に記載のワクチン用弱毒生菌。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の細菌と医薬的に許容可能なキャリヤーを含有することを特徴とする、病原細菌感染又はその病原作用に対する動物又はヒトの防御用弱毒生ワクチン。
【請求項7】
アジュバントを含有することを特徴とする請求項6に記載の弱毒生ワクチン。
【請求項8】
凍結乾燥形態であることを特徴とする請求項6又は7に記載の弱毒生ワクチン。
【請求項9】
病原細菌感染又は感染の病原作用に対する動物の防御用ワクチンの製造における請求項1から5のいずれか一項に記載の弱毒生菌の使用。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の弱毒生菌と医薬的に許容可能なキャリヤーを混合することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のワクチンの製造方法。

【公表番号】特表2007−504156(P2007−504156A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524883(P2006−524883)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/027897
【国際公開番号】WO2005/021032
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506066939)ザ・ボード・オブ・ガバナーズ・フオー・ハイヤー・エデユケーシヨン、ステート・オブ・ロード・アイランド・アンド・プロビデンス・プランテーシヨンズ (2)
【Fターム(参考)】