説明

アルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液及び透明複合体

【課題】高い屈折率及び高い透明性と、高い耐久性の維持とを両立させることが可能なアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液及び透明複合体を提供する。
【解決手段】本発明のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液は、アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、分散媒中に分散した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液及び透明複合体に関し、更に詳しくは、樹脂のフィラー材として好適に用いられ、樹脂との複合化における着色を抑制し、屈折率の向上及び透明性の向上とともに、機械的特性の向上及び熱的特性の向上を可能とするアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液、及び、このアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液を用いてアルミナドープジルコニアナノ粒子と樹脂とを複合化することでガラス代替品として利用可能な透明複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリカ等の無機酸化物からなるフィラーと樹脂とを複合化することにより、樹脂の機械的特性や熱的特性等を向上させる試みがなされている。このフィラーと樹脂とを複合化する方法としては、無機酸化物粒子を水または有機溶媒中に分散させた分散液と樹脂とを混合する方法が一般的であり、分散液と樹脂とを種々の方法により混合することにより、無機酸化物粒子を第2相として複合化した無機酸化物粒子複合化プラスチックを作製することができる。
【0003】
一方、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)、各種照明やレーザー発信装置に用いられる発光ダイオード(LED)等の発光デバイス、スキャナーやデジタルカメラ等に用いられるCCDやCMOS等のイメージングデバイス、光ピックアップ等の光学デバイス、等の様々な分野では、それぞれのデバイスの特性を向上させるために、基板材料、レンズ材料、封止材料及び接着材料に対して、高い透明性が要求され、しかも、同時に、高屈折率の制御性、機械的特性、熱的特性等を向上させることも要求されるようになってきている。
【0004】
例えば、樹脂の屈折率を向上させる無機酸化物フィラーとしては、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物粒子が高屈折率フィラーとして利用されている。
チタニアは、可視光線に対して透明な金属酸化物であり、しかも屈折率が大きいので、樹脂中に分散させた場合、得られた複合体は高い屈折率を示す。
ところで、このチタニアは、太陽光線や蛍光灯の発する光に含まれる紫外線により励起されて強酸化性のオゾンを生成し、このオゾンにより有機物を分解させる、いわゆる光触媒としての機能を有する物質であるから、樹脂中に分散させた場合、複合体の耐久性を著しく悪化させてしまうという大きな問題がある。
【0005】
一方、ジルコニアは、光触媒としての機能がなく、化学的に安定であり、しかも高屈折率の金属酸化物であるから、このジルコニアを用いて樹脂を高屈折率化する様々な試みがなされており、例えば、一次粒径が10nm〜100nmのジルコニア粒子と樹脂とを複合化した光硬化性組成物を、フィルム上に塗布して硬化させた厚み数μmの高屈折率かつ高透明性の硬化膜が提案されている(特許文献1)。
また、分散粒径が1nm〜20nmの正方晶ジルコニア粒子を用いることで、屈折率および機械的特性を向上させるとともに、透明性を維持することができるジルコニア透明分散液および透明複合体が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−161111号公報
【特許文献2】特開2007−99931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の金属酸化物粒子を樹脂中に分散させた透明複合体の透明性を評価する場合、透明複合体の厚みを光路長とし、この光路長における可視光線の透過率を求めているので、厚みが厚い方が、透明性を維持することが困難になる。
特許文献1に記載されている硬化膜は、高々数μm以下の厚みの膜であるから、上述した様々なデバイスで求められている数μm以上の厚みの高屈折率の透明複合体に対しては、対応することが困難であった。
【0008】
また、特許文献2に記載されている透明複合体では、ナノメートル級のジルコニア粒子を樹脂中に硬度に分散させることで、高い透明性と高屈折率を有する透明複合体を得ることができるものの、樹脂中に分散されたジルコニア粒子が極めて大きい比表面積を有しており、しかも、このジルコニア粒子の表面が高い強酸性や酸化性を有しているために、条件によっては使用中に変色してしまう等の不具合が生じる虞があるという問題点があった。さらには、このジルコニア粒子を樹脂中に分散させるためには、このジルコニア粒子の表面を多量の表面修飾剤で修飾する必要があるが、表面修飾剤で表面を修飾した場合、十分な屈折率向上効果が得られ難いという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高い屈折率及び高い透明性と、高い耐久性の維持とを両立させることが可能なアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液及び透明複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を分散媒中に分散してアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液とすれば、高い屈折率及び高い透明性を維持することはもちろんのこと、高い耐久性を維持することも可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液は、アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、分散媒中に分散してなることを特徴とする。
【0012】
前記アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率は、1質量%以上かつ70質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の透明複合体は、アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、樹脂中に分散してなることを特徴とする。
【0014】
前記アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率は、1質量%以上かつ80質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液によれば、アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、分散媒中に分散させたので、高い屈折率及び高い透明性の両立だけではなく、耐久性の向上も図ることができる。
したがって、このアルミナドープジルコニアナノ粒子を樹脂中に分散させれば、屈折率が高く、透明性に優れ、しかも耐久性に優れた透明複合体を容易に得ることができる。
【0016】
本発明の透明複合体によれば、アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、樹脂中に分散したので、屈折率、透明性及び耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液の分散粒子を示す透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液及び透明複合体を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0019】
[アルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液]
本実施形態のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液は、アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、分散媒中に分散した透明分散液である。
【0020】
このアルミナドープジルコニアナノ粒子は、ジルコニア(ZrO)ナノ粒子中にアルミナ(Al)を固溶させたナノ粒子である。
ジルコニアとしては、正方晶(tetragonal)ジルコニア、立方晶(cubic)ジルコニア及び単斜晶(monoclinic)ジルコニアがあるが、高屈折率及び高透明性を確保するためには、結晶軸に対して対称性を有する正方晶ジルコニアまたは立方晶ジルコニアが好ましい。
また、正方晶ジルコニアは、単斜晶ジルコニアと比べてマルテンサイト変態による靭性値の向上が期待でき、しかも、靭性及び硬度が高く、樹脂中に分散させて得られた透明複合体の機械的特性の向上に適している。
【0021】
ここで、アルミナをジルコニアナノ粒子中に固溶させた理由について説明する。
アルミナ(Al)は、両性金属からなる酸化物で、その表面が塩基性を示している。一方、ジルコニア(ZrO)は、その表面が強酸性で、この表面の水酸基は極めて多く、この表面をカップリング剤等の表面修飾剤で表面処理する場合には、多量の表面修飾剤を必要とする。ところで、この表面修飾剤は、その屈折率がジルコニアと比較して概ね0.7程度も小さいので、この表面修飾剤にて表面処理されたジルコニア粒子は、その屈折率が大きく低下してしまうこととなる。
【0022】
本実施形態では、ジルコニアナノ粒子の表面の強酸性を低下させるために、ジルコニアナノ粒子中にアルミナを固溶させるとともに、この固溶させたアルミナの一部をジルコニアナノ粒子の表面に露出させている。このアルミナの屈折率は概ね1.7程度であるから、ジルコニアナノ粒子の屈折率を大きく低下させる虞もない。
これにより、ジルコニアナノ粒子の表面の強酸性は低下し、このジルコニアナノ粒子の屈折率も大きく低下する虞がなくなる。
【0023】
このアルミナドープジルコニアナノ粒子におけるアルミナの含有率は、アルミナ及びジルコニアの合計量に対して1mol%以上かつ15mol%以下が好ましく、より好ましくは2mol%以上かつ10mol%以下である。
ここで、アルミナの含有率が1mol%未満では、ジルコニアナノ粒子の表面の強酸性を抑制するのに不十分だからであり、また、15mol%を超えると、アルミナが過剰となるために、ジルコニアナノ粒子中に固溶せずに結晶化したアルミナが混在する虞があり、また、過剰なアルミナによりジルコニアナノ粒子自体の屈折率が低下するので好ましくない。
【0024】
この透明分散液中のアルミナドープジルコニアナノ粒子の分散粒径は、1nm以上かつ20nm以下が好ましく、より好ましくは3nm以上かつ15nm以下、さらに好ましくは3nm以上かつ10nm以下である。
ここで、アルミナドープジルコニアナノ粒子の分散粒径を上記の範囲に限定した理由は、分散粒径が1nm未満では、ナノ粒子の結晶性が乏しくなり、屈折率も低下し、したがって、ナノ粒子の特徴的な特性を発現することが難しくなるからであり、一方、分散粒径が20nmを超えると、透明分散液の状態で、あるいは透明複合体とした場合に、透明性が低下するからである。
このように、アルミナドープジルコニアナノ粒子はナノメートル級の粒子であるから、このアルミナドープジルコニアナノ粒子を樹脂中に分散させて透明複合体とした場合においても、光散乱が小さく、透明複合体の透明性を維持することが可能である。
【0025】
この透明分散液におけるアルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率は、1質量%以上かつ70質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上かつ50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上かつ30質量%以下である。
アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率を上記の範囲に限定した理由は、この範囲がアルミナドープジルコニアナノ粒子が良好な分散状態を取り得るからである。ここで、含有率が1質量%未満であると、アルミナドープジルコニアナノ粒子としての効果が低下することとなり、また、70質量%を超えると、透明分散液がゲル化したり、あるいは凝集して沈殿物が生じることとなり、分散液としての特徴を消失するので好ましくない。
【0026】
分散媒は、基本的には、水、有機溶媒、液状の樹脂モノマー、液状の樹脂オリゴマーのうち1種または2種以上を含有したものである。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミノアルコール類、流動パラフィン、シリコーンオイル等のオイル類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
上記の液状の樹脂モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系またはメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー等が好適に用いられる。
また、上記の液状の樹脂オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等が好適に用いられる。
【0028】
この透明分散液は、その特性を損なわない範囲において、上記以外の無機微粒子や有機顔料、分散剤、カップリング剤、染料等を含有してもよい。
アルミナドープジルコニアナノ粒子以外の無機微粒子の例としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ニオブ、チタン酸バリウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム等の比較的屈折率の高い無機酸化物微粒子;硫化カドミウム等の化合物半導体微粒子;カーボンブラック等の有機顔料からなる微粒子等が挙げられる。
分散剤としては、リン酸エステル系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤等が挙げられる。
【0029】
上記の分散媒が水以外の分散媒の場合には、アルミナドープジルコニアナノ粒子の分散粒径を1nm以上かつ20n以下の範囲に経時的に維持させるために、このアルミナドープジルコニアナノ粒子や上記の無機微粒子は、その表面が表面処理剤により処理された粒子であることが好ましい。
【0030】
表面処理剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、ヒドロキシアクリル酸等のオキシカルボン酸類およびそれらのエステル類、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の脂式カルボン酸類、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプロル酸等の脂肪族カルボン酸類、リノレン酸、リノール酸、オレイン酸等の不飽和カルボン酸類、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、没子食酸、メリト酸、ケイ皮酸等の芳香族カルボン酸類、カテコール、ピロガロール等のオキシフェノール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、グリコールアルデヒド等のオキシアルデヒド類、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ステアロイルアセトン、ステアロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン等のβ−ケトン類およびそれらのエステル類(β−ジカルボニル化合物)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヒドロキノン等のグリコール類、グリシン、アラニン等のアミノ酸類等が挙げられる。
【0031】
上記の表面処理剤の他、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤も有効な表面処理剤である。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ホスフェートチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルジルコネート等が挙げられる。
【0033】
上記の表面修飾剤を用いてアルミナドープジルコニアナノ粒子の表面を修飾する方法としては、湿式法、乾式法が挙げられる。
湿式法とは、表面修飾剤とアルミナドープジルコニアナノ粒子を溶媒中に投入し混合することにより、このアルミナドープジルコニアナノ粒子の表面を修飾する方法である。
乾式法とは、表面修飾剤と乾燥したアルミナドープジルコニアナノ粒子をミキサー等の乾式混合機に投入し混合することにより、このアルミナドープジルコニアナノ粒子の表面を修飾する方法である。
【0034】
この表面修飾されたアルミナドープジルコニアナノ粒子の修飾部分の質量比は、粒子全体の5質量%以上かつ100質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上かつ60質量%以下である。
ここで、修飾部分の質量比を5質量%以上かつ100質量%以下と限定した理由は、修飾部分の質量比が5質量%未満では、アルミナドープジルコニアナノ粒子の溶媒や樹脂との相溶が困難となり、樹脂と複合化した場合に、透明性が失われる虞があるからであり、一方、修飾部分の質量比が100質量%を超えると、樹脂と複合化した場合に、表面処理剤が樹脂特性ヘ及ぼす影響が大きくなり、屈折率や機械的特性が低下するからである。
【0035】
この透明分散液は、アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率を5質量%に調整した場合、光路長を10mmとしたときの可視光線透過率が90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0036】
[透明複合体]
本実施形態の透明複合体は、上記のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、樹脂中に分散してなる透明性を有する複合体である。
樹脂としては、可視光線あるいは近赤外線等の所定の波長帯域の光に対して透明性を有する樹脂であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0037】
このような樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリシクロヘキシルメタクリレート等のアクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、フェノール−ホルムアルデヒド(フェノール樹脂)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクレート・スチレン共重合体(MS樹脂)、ポリ−4−メチルペンテン、ノルボルネン系ポリマー、ポリウレタン、エポキシ、シリコーン等が挙げられ、特に好ましくは、シリコーン、エポキシ、アクリレートである。
【0038】
シリコーン樹脂は、少なくとも下記の(a)〜(c)の成分から構成されることが好ましい。
(a)1分子中のケイ素原子に結合した官能基のうち少なくとも2つがアルケニル基であるオルガノポリシロキサン
(b)1分子中のケイ素原子に結合した官能基のうち少なくとも2つが水素原子であるか、または分子鎖の両端が水素原子で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサン
(c)ヒドロシリル化反応用触媒
【0039】
(a)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、特に、ビニル基が好ましい。
また、このアルケニル基以外のケイ素原子に結合した官能基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、特に、メチル基が好ましい。
【0040】
(b)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合した官能基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、特に、メチル基が好ましい。
また、(b)成分の含有量は、(a)成分に含まれている合計アルケニル基1モルに対して水素原子が0.1〜10モルの範囲内となる量であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5モルの範囲内となる量であり、さらに好ましくは0.5〜2モルの範囲内となる量である。
【0041】
(c)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(a)成分中のアルケニル基と、(b)成分中のケイ素原子に結合した水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。この様な触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等が挙げられ、特に、白金系触媒が好ましい。
この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金カルボニル錯体等が挙げられ、特に、塩化白金酸が好ましい。
【0042】
また、(c)成分の含有量は、本組成物の硬化を促進させることのできる量、すなわち(a)成分中のアルケニル基と(b)成分中のケイ素原子に結合した水素原子とのヒドロシリル化反応を促進させることのできる量であればよく、特に限定されることはないが、具体的には、本組成物に対して本成分中の金属原子が重量単位で0.01〜500ppmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.01〜50ppmの範囲内である。
【0043】
本成分中の金属原子の含有量を上記のように限定した理由は、含有量が0.01ppm未満であると、本組成物が十分に硬化しない虞があるからであり、一方、含有量が500ppmを超えると、得られた硬化物に着色等の問題が生じる虞があるからである。
このシリコーン樹脂については、本発明の目的を損なわないかぎり、その他任意の成分として、耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤等を含有してもよい。
【0044】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミニジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、トルイジン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂等が好適に用いられる。
【0045】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、重付加型、触媒型、縮合型のいずれのタイプのものでも使用可能であり、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド、ジシアンジアミド、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0046】
アクリレート樹脂としては、単官能アクリレートおよび/または多官能アクリレートが用いられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
単官能アクリレート及び多官能アクリレートそれぞれの具体例について次に挙げる。
(a)脂肪族単官能(メタ)アクリレートとしては、
ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート
メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート
(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換アクリルアミド等が挙げられる。
【0047】
(b)脂肪族多官能(メタ)アクリレートとしては、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1.4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート
ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート
ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート
等が挙げられる。
【0048】
(c)脂環式(メタ)アクリレートのうち、単官能型としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が、また、多官能型としては、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(d)芳香族(メタ)アクリレートのうち、単官能型としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が、また、多官能型としては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジアクリレート類、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
(e)ポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリウレタンエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(f)エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0050】
ラジカル重合開始剤としては、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等の過酸化物系重合開始剤、あるいは2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。
【0051】
また、上記のシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂等に対しては、その特性を損なわない範囲において、酸化防止剤、離型剤、カップリング剤、無機充填剤等を添加してもよい。
【0052】
この透明複合体では、アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率は、1質量%以上かつ80質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上かつ80質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上かつ50質量%以下である。
ここで、アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率を1質量%以上かつ80質量%以下と限定した理由は、下限値の1質量%は、屈折率、弾性率等の機械的特性、耐熱性や熱膨張率等の熱的特性の向上が可能となる添加率の最小値であるからであり、一方、上限値の80質量%は、樹脂自体の特性(柔軟性、形状保持等)を維持することができる添加率の最大値であるからである。
【0053】
この透明複合体では、アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率を25質量%とした場合、光路長を1mmとしたときの可視光線透過率は90%以上が好ましく、より好ましくは92%以上である。
この可視光線透過率は、透明複合体におけるアルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率により異なり、アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率が1質量%では95%以上、アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率が40質量%では80%以上である。
【0054】
このアルミナドープジルコニアナノ粒子の屈折率は、ジルコニア粒子の屈折率と同等の2.15であるから、このアルミナドープジルコニアナノ粒子を樹脂中に分散させることにより、各種樹脂の屈折率を樹脂自体の屈折率よりも大きく向上させることが可能である。
【0055】
本実施形態の透明複合体は、上記のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液と、上記の樹脂のモノマーやオリゴマーを、ミキサー等を用いて混合し、流動し易い状態の樹脂組成物とし、次いで、この樹脂組成物を金型を用いて成形、または金型あるいは容器内に充填し、次いで、この成形体もしくは充填物に加熱、あるいは紫外線や赤外線等の照射を施し、この成形体もしくは充填物を硬化させることで、得ることができる。
【0056】
上記のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液に含まれる分散媒のうち、水や有機溶媒については、通常、アルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液と樹脂とを混合後、揮発等により除去することが好ましい。除去方法としては、真空(常温)乾燥、加熱乾燥等の方法がある。ここで分散媒の除去が不十分な場合、樹脂硬化時に気泡が発生する等の問題が生じることがある。一方、液状の樹脂モノマーやオリゴマーを分散媒とした場合には、分散媒自体を樹脂成分として使用することができるので好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0058】
「実施例1」
(アルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液の作製及び評価)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩水溶液に、炭酸水素アンモニウム896gを純水11Lに溶解させた炭酸水素アンモニウム水溶液を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体ゾルを作製した。このジルコニア前駆体ゾルのpHは2.4であった。
次いで、このジルコニア前駆体ゾルに硝酸アルミニウム61.5gを加えて溶解させ、アルミニウムイオンを含むジルコニア前駆体ゾルを作製した。
【0059】
次いで、このジルコニア前駆体ゾルに炭酸カリウム1000gを35Lの純水に溶解させた炭酸カリウム水溶液を攪拌しながら加え、混合物を得た。このときの炭酸カリウムの添加量は、ジルコニア前駆体ゾル中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して100質量%であった。また、炭酸カリウム添加後のpHは11.5であった。
次いで、この混合物を乾燥機を用いて、大気中、130℃にて24時間乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢を用いて粉砕し、次いで、電気炉を用いて、大気中、450℃にて2時間、焼成(加熱)し、焼成物を得た。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した炭酸カリウムを十分に除去した後、乾燥させて、アルミナドープジルコニアナノ粒子を得た。
【0060】
次いで、このアルミナドープジルコニアナノ粒子100gに、分散媒としてトルエンを870g、分散剤(シランカップリング剤)として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30gを加え、その後分散処理を行い、実施例1のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液(Z1)を作製した。
【0061】
次いで、このアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液(Z1)の分散粒径及び可視光線透過率を下記の方法により測定した。
(1)分散粒径
動的光散乱式粒径分布測定装置(Malvern社製)を用い、上記の透明分散液(Z1)中のアルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率をトルエンを用いて1質量%に調整したものを測定用試料とした。また、データ解析条件としては、粒子径基準を体積基準とし、分散粒子であるアルミナドープジルコニアナノ粒子の屈折率を2.15、分散媒であるトルエンの屈折率を1.49とした。
【0062】
(2)可視光線透過率
上記の透明分散液(Z1)中のアルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率をトルエンを用いて5質量%に調整した試料を石英セル(10mm×10mm)に入れ、この試料の光路長を10mmとしたときの可視光線透過率を分光光度計(日本分光社製)を用いて測定した。ここでは、透過率が80%以上を「○」、80%未満を「×」とした。
【0063】
(透明複合体の作製及び評価)
上記の透明分散液(Z1)100gに、エポキシレジン:ビスフェノールA型エポキシレジン j ER806(ジャパンエポキシレジン(株)社製)8gを加え、真空乾燥により脱分散媒し、透明な樹脂組成物を得た。
次いで、この樹脂組成物に硬化剤j ER LV11(ジャパンエポキシレジン(株)社製)2gを加え、混練し、次いで、ガラス板で組み上げた型の中に厚みが1mmになるように注型し、150℃にて30分間加熱して硬化させ、実施例1の透明複合体を得た。
この透明複合体におけるアルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率は50質量%であった。
【0064】
この透明複合体について、可視光線透過率、屈折率及び耐久性の3点について、下記の装置または方法により評価を行った。
(1)可視光線透過率
分光光度計(日本分光社製)を用いて可視光線の透過率を測定した。
ここでは、測定用試料を100×100×1mmの大きさのバルク体とし、透過率が80%以上を「○」、80%未満を「×」とした。
【0065】
(2)屈折率
日本工業規格:JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法」に準拠し、アッベ屈折計により測定した。
ここでは、ジルコニア粒子を添加していない樹脂を基準として、屈折率が0.05以上向上した場合を「○」、屈折率が0.05未満しか向上しなかった場合を「×」とした。
(3)耐久性
透明複合体を乾燥機中に120℃にて100時間静置させた後の変色度、すなわち色差(ΔE)を測色色差計 ZE600(日本電色工業(株)社製)を用いて測定した。これらの評価結果を表1に示す。
また、このアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液(Z1)の分散粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像を図1に示す。
【0066】
「実施例2」
(アルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液の作製及び評価)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩水溶液に、炭酸水素アンモニウム896gを純水11Lに溶解させた炭酸水素アンモニウム水溶液を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体ゾルを作製した。このジルコニア前駆体ゾルのpHは2.4であった。
次いで、このジルコニア前駆体ゾルに硝酸アルミニウム676.5gを加えて溶解させ、アルミニウムイオンを含むジルコニア前駆体ゾルを作製した。
【0067】
次いで、このジルコニア前駆体ゾルに炭酸カリウム1000gを35Lの純水に溶解させた炭酸カリウム水溶液を攪拌しながら加え、混合物を得た。このときの炭酸カリウムの添加量は、ジルコニア前駆体ゾル中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して100質量%であった。また、炭酸カリウム添加後のpHは11.5であった。
次いで、この混合物を乾燥機を用いて、大気中、130℃にて24時間乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢を用いて粉砕し、次いで、電気炉を用いて、大気中、550℃にて2時間、焼成(加熱)し、焼成物を得た。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した炭酸カリウムを十分に除去した後、乾燥させて、アルミナドープジルコニアナノ粒子を得た。
【0068】
次いで、このアルミナドープジルコニアナノ粒子100gに、分散媒としてトルエンを870g、分散剤(シランカップリング剤)として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30gを加え、その後分散処理を行い、実施例2のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液(Z2)を作製した。
【0069】
次いで、このアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液(Z2)の分散粒径及び可視光線透過率を、実施例1に準じて測定した。
さらに、このアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液(Z2)を用いて、実施例1に準じて、実施例2の透明複合体を得た。
この透明複合体におけるアルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率は50質量%であった。
この透明複合体の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0070】
「比較例1」
(ジルコニアナノ粒子透明分散液の作製及び評価)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩水溶液に、炭酸水素アンモニウム896gを純水11Lに溶解させた炭酸水素アンモニウム水溶液を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体ゾルを作製した。このジルコニア前駆体ゾルのpHは2.4であった。
【0071】
次いで、このジルコニア前駆体ゾルに炭酸カリウム1000gを35Lの純水に溶解させた炭酸カリウム水溶液を攪拌しながら加え、混合物を得た。このときの炭酸カリウムの添加量は、ジルコニア前駆体ゾル中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して100質量%であった。また、炭酸カリウム添加後のpHは11.5であった。
次いで、この混合物を乾燥機を用いて、大気中、130℃にて24時間乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢を用いて粉砕し、次いで、電気炉を用いて、大気中、550℃にて2時間、焼成(加熱)し、焼成物を得た。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した炭酸カリウムを十分に除去した後、乾燥させて、ジルコニアナノ粒子を得た。
【0072】
次いで、このジルコニアナノ粒子100gに、分散媒としてトルエンを870g、分散剤(シランカップリング剤)として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30gを加え、その後分散処理を行い、比較例1のジルコニアナノ粒子透明分散液(Z3)を作成した。
【0073】
次いで、このジルコニアナノ粒子透明分散液(Z3)の分散粒径及び可視光線透過率を、実施例1に準じて測定した。
さらに、このジルコニアナノ粒子透明分散液(Z3)を用いて、実施例1に準じて、比較例1の透明複合体を得た。
この透明複合体におけるジルコニアナノ粒子の含有率は50質量%であった。
この透明複合体の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
これらの評価結果によれば、実施例1、2では、可視光線透過率、屈折率及び耐久性ともに良好であることが分かった。
一方、比較例1では、可視光線透過率及び屈折率は、実施例1、2と遜色がないものの、耐久性は、色差(ΔE)が8.3と実施例1、2と比べて高く、しかも、目視により明らかに黄変していることが認められ、実施例1、2と比べて劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液は、アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、分散媒中に分散したことにより、高い屈折率及び高い透明性の両立だけではなく、耐久性の向上も図ることができるものであるから、樹脂のフィラー材としてはもちろんのこと、この透明分散液を用いて作製された透明複合体が、半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)の封止材、液晶表示装置用基板、有機EL表示装置用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板等の光学シート、透明板、光学レンズ、光学素子、光導波路等として有用であり、その工業的効果は大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、分散媒中に分散してなることを特徴とするアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液。
【請求項2】
前記アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率は、1質量%以上かつ70質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のアルミナドープジルコニアナノ粒子透明分散液。
【請求項3】
アルミナをジルコニアに固溶してなる分散粒径が1nm以上かつ20nm以下のアルミナドープジルコニアナノ粒子を、樹脂中に分散してなることを特徴とする透明複合体。
【請求項4】
前記アルミナドープジルコニアナノ粒子の含有率は、1質量%以上かつ80質量%以下であることを特徴とする請求項3記載の透明複合体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−57530(P2011−57530A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212119(P2009−212119)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】