説明

アルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法

【課題】高精度で、生産率が高いアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法は、鍛造用ブランク材を提供するステップと、鍛造金型は雄型及び雌型を備えており、該雄型及び雌型に加熱体と温度調整器とを設置するステップと、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材を前記鍛造金型に入れるステップと、を備えている。前記鍛造金型の雄型及び雌型はそれぞれ加熱されるが、その加熱方法は、鍛造品が前記雄型に形成される場合、前記雄型の温度は前記雌型の温度より低くなるようにし、前記鍛造品が前記雌型に形成される場合、前記雄型の温度は前記雌型の温度より高くなるようにし、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材の鍛造過程において、前記雄型と前記雌型との温度差を100度〜350度に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
恒温鍛造の加工方法は精密な鍛造方法であり、この恒温鍛造によって製造された鍛造品のサイズ及び精度は高い。しかし、サイズが小さく、且つ薄くて突出したピンが設けられた鍛造品、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金材料によって作られた携帯電話の部品などは、離型する際、突出レバーを使用して鍛造品を突出させなければならない。しかし、この際の鍛造品の温度は高く、且つ強度も低いので、前記突出レバーによって鍛造品を突出させると、鍛造品が変形する恐れがあり、さらに、鍛造品の精度及び生産率を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の問題点に鑑みて、本発明は、高精度で、且つ生産率が高いアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法は、鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材を提供するステップと、鍛造金型は雄型及び雌型を備えており、該雄型及び雌型に加熱体と温度調整器とを設置するステップと、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材を前記鍛造金型に入れるステップと、を備えている。次いで、前記鍛造金型の雄型及び雌型はそれぞれ加熱されるが、その加熱方法は、鍛造品が前記雄型に形成される場合、前記雄型の温度は前記雌型の温度より低くなるようにし、前記鍛造品が前記雌型に形成される場合、前記雄型の温度は前記雌型の温度より高くなるようにし、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材の鍛造過程において、前記雄型と前記雌型との温度差を100度〜350度に維持する。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法は、その鍛造の過程において、前記雄型及び前記雌型を制御して、前記雄型及び前記雌型に一定の温度差を維持させる。全ての鍛造過程は、一定の温度の条件下で行われ、離型する際は、温度が低い型の方に設置する。これにより、等温の鍛造品と比べて、全体の強度が高くなるので、離型する際に発生する変形を防ぎ、サイズの精密度を維持することができる。また、この鍛造方法によって製造されたアルミニウム合金の鍛造品の組織機能は良好で、高精度であり、生産効率も高いので、工業化の生産に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法に使用される鍛造用金型の構成を示す図である。
【図2】鍛造部品の構成を示す図である。
【図3】鍛造部品の鍛造加工前の内部の金属組織図である。
【図4】鍛造部品の鍛造加工後の内部の金属組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面に基づいて、本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法について詳細に説明する。
【0008】
本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法は、精密なサイズのアルミニウム又はアルミニウム合金を鍛造する方法である。もちろん、本発明の鍛造方法は、他の材料にも適用でき、例えば、マグネシウム或いはマグネシウム合金にも適用できる。
【0009】
図1を参照すると、本発明のアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法で使用される鍛造金型100は、雌型10及び雄型20を備える。前記雌型10には、第一加熱体11及び第一温度調整器13が設けられ、前記雄型20には、第二加熱体21及び第二温度調整器23が設けられている。前記鍛造金型100は、前記雌型10及び前記雄型20の温度を制御できる。また、前記雄型20は、鍛造品が突出した二つの突出レバー25をさらに備える。二つの前記突出レバー25は、必要に応じて、前記雌型10に設置することもでき、且つその数も増量させることができる。
【0010】
前記鍛造方法は、下記のステップを含む。第一ステップでは、鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材を提供し、前記アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材に対して予備切削を行う。前記予備切削方法は、フライス切削、切断加工、及びレーザー切断のいずれか一つの方法である。
【0011】
第二ステップでは、前記鍛造金型100の前記雌型10及び前記雄型20を加熱する。この時、鍛造品を前記雌型10に形成される場合、前記雌型10の温度は前記雄型20の温度より低くなるようにする(この場合、前記雌型10は100度〜350度の範囲であり、前記雄型20は300度〜420度の範囲である)。或いは前記鍛造品を前記雄型20に形成される場合、前記雌型10の温度は前記雄型20の温度より高くなるようにする(この場合、前記雌型10は300度〜420度の範囲であり、前記雄型20は100度〜350度の範囲である)。
【0012】
第三ステップでは、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材を、前記鍛造金型100の前記雄型20の中に入れる。前記雄型20の中に入れる前に、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材に対して予備加熱を行う。もしくは、直接に前記鍛造金型100に入れて加熱しても良い。
【0013】
第四ステップでは、前記雌型10と前記雄型20とを合わせた後、液圧プレス、或いは鍛造プレスによって、前記鍛造金型100に対して衝撃を与える、或いは押し出しを行う。これにより、前記鍛造金型100中の前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材の熱可塑性によって形状が変化して、予め設計された予備鍛造品のサイズとなる。また、この過程において、前記鍛造金型100の前記雌型10と前記雄型20との温度差は100度〜350度である。この時、鍛造品が薄く、且つ構造が複雑な場合は、鍛造時間を長くして前記雌型10と前記雄型20との温度差を大きくさせる。
【0014】
第五ステップでは、前記雌型10と前記雄型20とを離型させて、鍛造品を取り出す。前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材は、型番が5052のアルミニウム合金ブランク材であり、前記ブランク材のサイズは、50mm×43mm×5mmである。この時、前記雌型10の温度を360度〜380度に設定し、前記雄型20の温度を160度〜180度に設定し、前記雌型10と前記雄型20との温度差を100度〜200度に設定する。また、液圧プレスを利用して、前記鍛造金型100に対して衝撃を与える、或いは押し出しを行う際、鍛造時間は1分〜2分である。
【0015】
図2を参照すると、鍛造品200には、複数の円柱突出ピン210と、方柱突出ピン220と、補強リブ230と、が鍛造成形されている。前記円柱突出ピン210の最小のサイズは、1mm(底面の面積)×10mm(高さ)であり、前記補強リブ230のサイズは、1.3mm(横)×7mm(高さ)である。本実施形態において、型から取り出した後、前記鍛造品200の前記円柱突出ピン210及び前記方柱突出ピン220は変形しない。つまりサイズが高精密であることを意味している。また、前記鍛造品に対して機能テストを行った場合、前記鍛造品は、鍛造成形による裂け目は見られず、硬度テストを行った場合、前記鍛造品の成型前と成形後ではその硬度は変わらなかった。つまり前記鍛造品200の組織は、均一に分布していることを意味する。
【0016】
図3及び図4からもわかるように、鍛造品内の組織は均一に分布し、且つ鍛造前の組織と、鍛造後の組織の変化はみられない。つまり、応力集中の現象が行われなかったことを意味している。
【0017】
本発明のアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法は、その鍛造の過程において、前記雌型10及び前記雄型20を制御して、前記雌型10及び前記雄型20に一定の温度差を維持させる。全ての鍛造過程は、一定の温度の条件下で行われ、離型する際は、温度が低い型の方に設置する。これにより、等温の鍛造品と比べて、全体の強度が高くなるので、離型する際に発生する変形を避け、サイズの精密度を維持することができる。また、この鍛造方法によって製造されたアルミニウム合金の鍛造品の組織機能は良好で、高精度であり、生産効率も高いので、工業化の生産に最適である。
【0018】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、変形又は修正も又、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0019】
100 鍛造金型
10 雌型
11 第一加熱体
13 第一温度調整器
20 雄型
21 第二加熱体
23 第二温度調整器
25 突出レバー
200 鍛造品
210 円柱突出ピン
220 方柱突出ピン
230 補強リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法であって、
鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材を提供するステップと、
鍛造金型は、雄型及び雌型を備えており、前記雄型及び雌型に加熱体と温度調整器とを設置するステップと、
前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材を前記鍛造金型に入れるステップと、を備え、
前記鍛造金型の雄型及び雌型はそれぞれ加熱され、その加熱方法は、鍛造品を前記雄型に形成する場合、前記雄型の温度を前記雌型の温度より低くなるようにし、前記鍛造品を前記雌型に形成する場合、前記雄型の温度を前記雌型の温度より高くなるようにし、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材の鍛造過程において、前記雄型と前記雌型との温度差を100度〜350度に維持することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法。
【請求項2】
鍛造前に、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材に対して予備切削を行うことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法。
【請求項3】
前記予備切削の方法は、フライス切削、切断加工、及びレーザー切断のいずれか一つの方法であることを特徴とする請求項2に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法。
【請求項4】
前記雌型の中に入れる前に、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材に対して予備加熱を行うことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法。
【請求項5】
前記鍛造前に、前記鍛造用アルミニウム又はアルミニウム合金ブランク材を、直接に前記鍛造金型入れて加熱することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造方法。
【請求項6】
前記アルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造品に、突出ピンが形成されていることを特徴とする請求項5に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金。
【請求項7】
前記突出ピンの底面の面積は1mmであり、高さは10mmであることを特徴とする請求項6に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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