説明

アルミニウム材用表面防汚剤、アルミニウム材の防汚処理方法及びアルミニウム材構造物

【課題】 アルミニウム材に対して優れた防汚性を付与することができると共に、アルミニウム材の変質及び変色を十分に防止することが可能なアルミニウム材用表面防汚剤を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと、ハロゲン原子を有しないアニオンと、からなる化合物を含有することを特徴とするアルミニウム材用表面防汚剤。



[式(1)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜24のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。なお、RとRとは互いに結合して窒素原子と共に環を形成していてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム材用表面防汚剤、アルミニウム材の防汚処理方法及びアルミニウム材構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは軽量で機械的性質に優れ、加工が容易であることから、各種の建築物や構造材などとして多く使用されている。しかし、各種の環境に暴露されたアルミニウムには、様々な作業に伴う皮脂や潤滑油、グリースなどの油性汚れ、金属表面の電気的な微粉体吸着によるオイルダストや粒子状物質(PM)などの大気汚れ、及び、降雨や地下水に含まれる無機塩などがアルミニウムの表面に付着して固着した汚れ等が発生しやすい。そして、こうした汚れに含まれる金属成分や陰イオン成分などの微量成分によって、汚れ部位のアルミニウムが周囲とは異なる酸化被膜となって形成され、色調の異なるシミ状の汚れが生じるなど、アルミニウムは外観変化の表面特性が他の金属と比べて劣っている。
【0003】
これらの汚れを除去するために、従来、硝酸などの酸や塩化メチレン、シンナー等が洗浄剤として使用されている。しかし、こうした洗浄剤を用いて汚れを除去する場合、アルミニウムの腐食が発生しやすいといった問題がある。また、近年、地球環境や生活環境の保護への関心が高まっており、環境負荷低減の観点からハロゲンフリーが必要となってきており、上述のような洗浄剤、特に塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素の使用は制限されつつある。
【0004】
そのため、汚れの付着や外観変化等を抑制するために、アルミニウムには各種の塗装が施されている。しかし、その場合、アルミニウム自身が有する元来の金属光沢が失われるばかりでなく、傷などの塗装欠陥を起点として塗膜の膨れや剥がれが発生し、かえって美観を損なうといった問題があった。
【0005】
これらの問題を解決するために、例えば、下記特許文献1には、アルミニウム表面にアルカリ珪酸塩を主成分とする組成物からなる防汚皮膜を形成させる方法が開示されている。また、下記特許文献2には、アルミニウム表面にCa、Ba、Mg、Mn、Ni、Co、Znの少なくとも1種以上の酸化物からなる皮膜を形成させる方法が開示されている。さらに、下記特許文献3には、金属アルコキシドの重縮合物、金属酸化物微粒子及びシラン化合物を含む処理液をアルミニウム基材に塗布し、乾燥、加熱して多孔質の金属酸化物層を表面に形成する方法が開示されている。また、下記特許文献4には、無孔質皮膜を有するアルミニウム上に光触媒作用を有する二酸化チタン薄膜を形成する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−93782号公報
【特許文献2】特開平8−74066号公報
【特許文献3】特開平11−172455号公報
【特許文献4】特開2002−285357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載のような従来の防汚処理方法を用いても、アルミニウムに対して高水準の防汚性を付与することは困難であると共に、汚れを落とすためには、洗浄剤などを使用して物理的に落とす工程が必要であるなど、汚れの除去作業が煩雑であるといった問題がある。
【0008】
また、上記文献5に記載のような光触媒作用を有する二酸化チタン薄膜による防汚処理方法では、光触媒の強い酸化還元作用によりアルミニウムの腐食が生じやすいと共に、二酸化チタン薄膜がアルミニウムとの十分な密着性が得られず剥離しやすいといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、アルミニウム材に対して洗浄剤などを使用して汚れを物理的に落とす必要のない優れた防汚性を付与することができると共に、アルミニウム材の変質及び変色を十分に防止することが可能なアルミニウム材用表面防汚剤、並びに、それを用いたアルミニウム材の防汚処理方法及びアルミニウム材構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のカチオン種とハロゲン原子を有しないアニオン種とからなる化合物を表面防汚剤の成分として用い、その表面防汚剤をアルミニウム材と接触させることにより、驚くべきことに洗浄剤などを使用して汚れを物理的に落とす必要のない優れた防汚性をアルミニウム材に付与することができると共に、アルミニウム材の変質及び変色を十分に防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと、ハロゲン原子を有しないアニオンと、からなる化合物を含有することを特徴とするアルミニウム材用表面防汚剤を提供する。
【化1】



[式(1)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜24のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。なお、RとRとは互いに結合して窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0012】
かかるアルミニウム材用表面防汚剤によれば、上記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと、ハロゲン原子を有しないアニオンとからなる化合物を含有することにより、アルミニウム材に対して、洗浄剤などを使用して汚れを物理的に落とす必要がなく、例えば降雨などの条件で十分に汚れを落とすことが可能な優れた防汚性を付与することができる。また、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤を用いてアルミニウム材表面を処理することにより、アルミニウム材の変質及び変色を十分に防止することが可能となる。また、上記アニオンがハロゲン原子を有しないことから、ハロゲンフリーなアルミニウム材用表面防汚剤を実現することが可能となる。更に、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤によれば、アルミニウム材に対して優れた耐変質性を付与することができるため、かかるアルミニウム材用表面防汚剤を接触させたアルミニウム材は、酸性雨に曝される等の過酷な環境下においても腐食の発生を十分に抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤において、上記アニオンは、炭素数4〜18のアルキルリン酸エステルアニオン、炭素数1〜18のアルキルスルホン酸アニオン、置換基を有していてもよいアリールスルホン酸アニオン、及び、炭素数4〜18のアルキルスルホコハク酸エステルアニオンからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0014】
これらのアニオンを用いることにより、アルミニウム材用表面防汚剤は、アルミニウム材に対してより優れた防汚性を付与することができると共に、アルミニウム材の変質及び変色をより十分に防止することが可能となる。
【0015】
本発明はまた、アルミニウム材に、上記本発明のアルミニウム材用表面防汚剤を接触させる処理工程を含むことを特徴とするアルミニウム材の防汚処理方法を提供する。
【0016】
かかる処理方法により処理されたアルミニウム材は、洗浄剤などを使用して汚れを物理的に落とす必要のない優れた防汚性を得ることができると共に、変質及び変色を十分に防止することが可能となる。また、ハロゲン原子を有しないアルミニウム材用表面防汚剤を用いることで、ハロゲンフリーなアルミニウム材を得ることができる。更に、得られるアルミニウム材は、優れた耐変質性を示し、酸性雨に曝される等の過酷な環境下においても腐食の発生を十分に抑制することが可能となる。
【0017】
本発明は更に、アルミニウム材と、該アルミニウム材上に付着した上記本発明のアルミニウム材用表面防汚剤と、を備えることを特徴とするアルミニウム材構造物を提供する。
【0018】
かかるアルミニウム材構造物は、アルミニウム材の表面が上記本発明のアルミニウム材用表面防汚剤により処理されているため、洗浄剤などを使用して汚れを物理的に落とす必要のない優れた防汚性を得ることができると共に、変質及び変色を十分に防止することが可能となる。また、ハロゲン原子を有しないアルミニウム材用表面防汚剤を用いることで、ハロゲンフリーなアルミニウム材構造物とすることができる。更に、アルミニウム材構造物は、優れた耐変質性を示し、酸性雨に曝される等の過酷な環境下においても腐食の発生を十分に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アルミニウム材に対して洗浄剤などを使用して汚れを物理的に落とす必要のない優れた防汚性を付与することができると共に、アルミニウム材の変質及び変色を十分に防止することが可能なアルミニウム材用表面防汚剤、並びに、それを用いたアルミニウム材の防汚処理方法及びアルミニウム材構造物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
本発明のアルミニウム材用表面防汚剤は、下記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと、ハロゲン原子を有しないアニオンと、からなる化合物を含有することを特徴とするものである。
【化2】



【0022】
上記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンにおいて、R及びRは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して窒素原子と共に環を形成していてもよく、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基を示す。そして、炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、2−ブチルオクチル、2−ブチルデシル、2−ヘキシルオクチル、テトラデシル、ヘキサデシル、2−ヘキシルデシル、オクタデシル、2−ヘキシルドデシル、2−オクチルデシルなどが挙げられるが、化合物の粘性や取り扱い易さの観点から、それらの中でも炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。さらに、RとRとが互いに結合して窒素原子と共に環を形成している場合の構造としては、例えば、ピレリジル、ピロリジルなどの構造が挙げられる。
【0023】
また、Rは炭素数1〜24のアルキル基を示す。そして、炭素数1〜24のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、2−ブチルオクチル、2−ブチルデシル、2−ヘキシルオクチル、テトラデシル、ヘキサデシル、2−ヘキシルデシル、オクタデシル、2−ヘキシルドデシル、2−オクチルデシル、エイコシル、2−オクチルドデシル、ドコシル、テトラコシル、2−デシルテトラデシルなどが挙げられるが、防汚性をより高めることができるという観点から、それらの中でも炭素数8〜18のアルキル基が好ましい。
【0024】
さらに、Rは炭素数1〜10のアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。そして、炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシルなどが挙げられるが、化合物の粘性や取り扱い易さの観点から、それらの中でも炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。また、総炭素数2〜5のアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシプロピルなどが挙げられる。さらに、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、例えば、ベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、フェネチルなどが挙げられる。なお、アラルキル基の置換基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、メトキシ、フェニルなどが挙げられる。また、より優れた防汚性を得る観点から、Rは総炭素数2〜5のアルコキシアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であることが好ましく、置換基を有していてもよいアラルキル基であることがより好ましい。
【0025】
これらのアンモニウムカチオンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンの具体例としては、例えば、トリメチルオクチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクチルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクチルブチルアンモニウムカチオン、ジメチルジオクチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクチルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクチルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクチルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジメチルオクチルベンジルアンモニウムカチオン、ジメチルオクチル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、ジメチルデシルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルデシルベンジルアンモニウムカチオン、トリメチルドデシルアンモニウムカチオン、ジメチルドデシルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルドデシルブチルアンモニウムカチオン、ジメチルドデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジメチルドデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルドデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルドデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジメチルドデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジメチルデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、トリメチルテトラデシルアンモニウムカチオン、ジメチルテトラデシルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルテトラデシルブチルアンモニウムカチオン、ジメチルテトラデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジメチルテトラデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルテトラデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルテトラデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジメチルテトラデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジメチルテトラデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、トリメチルヘキサデシルアンモニウムカチオン、ジメチルヘキサデシルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルヘキサデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルヘキサデシルベンジルアンモニウムカチオン、トリメチルオクタデシルアンモニウムカチオン、ジメチルオクタデシルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクタデシルブチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクタデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクタデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクタデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルオクタデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジメチルオクタデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジメチルオクタデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジエチルオクチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルオクチルアンモニウムカチオン、ジエチルオクチルブチルアンモニウムカチオン、ジエチルジオクチルアンモニウムカチオン、ジエチルオクチルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルオクチルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルオクチルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジエチルオクチルベンジルアンモニウムカチオン、ジエチルオクチル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジエチルデシルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルデシルアンモニウムカチオン、ジエチルデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジエチルドデシルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルドデシルアンモニウムカチオン、ジエチルドデシルブチルアンモニウムカチオン、ジエチルドデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジエチルドデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルドデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルドデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジエチルドデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジエチルデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジエチルテトラデシルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルテトラデシルアンモニウムカチオン、ジエチルテトラデシルブチルアンモニウムカチオン、ジエチルテトラデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジエチルテトラデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルテトラデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルテトラデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジエチルテトラデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジエチルテトラデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジエチルヘキサデシルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘキサデシルアンモニウムカチオン、ジエチルヘキサデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルヘキサデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジエチルオクタデシルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルオクタデシルアンモニウムカチオン、ジエチルオクタデシルブチルアンモニウムカチオン、ジエチルオクタデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジエチルオクタデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルオクタデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジエチルオクタデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジエチルオクタデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジエチルオクタデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジブチルオクチルメチルアンモニウムカチオン、ジブチルオクチルエチルアンモニウムカチオン、トリブチルオクチルアンモニウムカチオン、ジブチルジオクチルアンモニウムカチオン、ジブチルオクチルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジブチルオクチルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジブチルオクチルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジブチルオクチルベンジルアンモニウムカチオン、ジブチルオクチル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジブチルドデシルメチルアンモニウムカチオン、ジブチルドデシルエチルアンモニウムカチオン、トリブチルドデシルアンモニウムカチオン、ジブチルドデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジブチルドデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジブチルドデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジブチルドデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジブチルドデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジブチルデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジブチルテトラデシルメチルアンモニウムカチオン、ジブチルテトラデシルエチルアンモニウムカチオン、トリブチルテトラデシルアンモニウムカチオン、ジブチルテトラデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジブチルテトラデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジブチルテトラデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジブチルテトラデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジブチルテトラデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジブチルテトラデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジブチルオクタデシルメチルアンモニウムカチオン、ジブチルオクタデシルエチルアンモニウムカチオン、トリブチルオクタデシルアンモニウムカチオン、ジブチルオクタデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジブチルオクタデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジブチルオクタデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジブチルオクタデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジブチルオクタデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジブチルオクタデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルエチルアンモニウムカチオン、トリオクチルブチルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクチルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクチルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクチルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクチルベンジルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクチル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジオクチルドデシルメチルアンモニウムカチオン、ジオクチルドデシルエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルドデシルブチルアンモニウムカチオン、トリオクチルドデシルアンモニウムカチオン、ジオクチルドデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルドデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルドデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジオクチルドデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジオクチルデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジオクチルテトラデシルメチルアンモニウムカチオン、ジオクチルテトラデシルエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルテトラデシルブチルアンモニウムカチオン、トリオクチルテトラデシルアンモニウムカチオン、ジオクチルテトラデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルテトラデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルテトラデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジオクチルテトラデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジオクチルテトラデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジオクチルオクタデシルメチルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクタデシルエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクタデシルブチルアンモニウムカチオン、トリオクチルオクタデシルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクタデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクタデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクタデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクタデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジオクチルオクタデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、トリドデシルメチルアンモニウムカチオン、トリドデシルエチルアンモニウムカチオン、トリドデシルブチルアンモニウムカチオン、トリドデシルオクチルアンモニウムカチオン、トリドデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、トリドデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、トリドデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、トリドデシルベンジルアンモニウムカチオン、トリドデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジドデシルテトラデシルメチルアンモニウムカチオン、ジドデシルテトラデシルエチルアンモニウムカチオン、ジドデシルテトラデシルブチルアンモニウムカチオン、ジドデシルテトラデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジドデシルテトラデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジドデシルテトラデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジドデシルテトラデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジドデシルテトラデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジドデシルテトラデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、ジドデシルオクタデシルメチルアンモニウムカチオン、ジドデシルオクタデシルエチルアンモニウムカチオン、ジドデシルオクタデシルブチルアンモニウムカチオン、ジドデシルオクタデシルオクチルアンモニウムカチオン、ジドデシルオクタデシルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジドデシルオクタデシルエトキシエチルアンモニウムカチオン、ジドデシルオクタデシルメトキシプロピルアンモニウムカチオン、ジドデシルオクタデシルベンジルアンモニウムカチオン、ジドデシルオクタデシル(メチルベンジル)アンモニウムカチオン、N−オクチル−N−メチルピペリジウムカチオン、N−デシル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−ドデシル−N−メチルピペリジウムカチオン、N−テトラデシル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−メトキシエチル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−ベンジル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N−オクチル−N−エチルピペリジニウムカチオン、N−デシル−N−エチルピペリジニウムカチオン、N−ドデシル−N−エチルピペリジニウムカチオン、N−テトラデシル−N−エチルピペリジニウムカチオン、N−オクタデシル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【0027】
ハロゲン原子を有しないアニオンとしては、例えば、炭素数4〜18のアルキルリン酸エステルアニオン、炭素数1〜18のアルキル硫酸アニオン、炭素数1〜18のアルキルスルホン酸アニオン、置換基を有していてもよいアリールスルホン酸アニオン、炭素数4〜18のアルキルスルホコハク酸エステルアニオンなどが挙げられる。これらのアニオンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
ここで、炭素数4〜18のアルキルリン酸エステルアニオンとしては、例えば、モノブチルリン酸エステルアニオン、モノヘキシルリン酸エステルアニオン、モノオクチルリン酸エステルアニオン、モノ(2−エチルヘキシル)リン酸エステルアニオン、モノデシルリン酸エステルアニオン、モノドデシルリン酸エステルアニオン、モノ(2−ブチルオクチル)リン酸エステルアニオン、モノテトラデシルリン酸エステルアニオン、モノ(2−ブチルデシル)リン酸エステルアニオン、モノ(2−ヘキシルオクチル)リン酸エステルアニオン、モノヘキサデシルリン酸エステルアニオン、モノ(2−ヘキシルデシル)リン酸エステルアニオン、モノオクタデシルリン酸エステルアニオン、モノ(2−オクチルデシル)リン酸エステルアニオン、モノ(2−ヘキシルドデシル)リン酸エステルアニオン、ジブチルリン酸エステルアニオン、ジヘキシルリン酸エステルアニオン、ジクチルリン酸エステルアニオン、ジ(2−エチルヘキシル)リン酸エステルアニオン、ジデシルリン酸エステルアニオン、ジドデシルリン酸エステルアニオン、ジ(2−ブチルオクチル)リン酸エステルアニオン、ジテトラデシルリン酸エステルアニオン、ジ(2−ブチルデシル)リン酸エステルアニオン、ジ(2−ヘキシルオクチル)リン酸エステルアニオン、ジヘキサデシルリン酸エステルアニオン、ジ(2−ヘキシルデシル)リン酸エステルアニオン、ジクタデシルリン酸エステルアニオン、ジ(2−オクチルデシル)リン酸エステルアニオン、ジ(2−ヘキシルドデシル)リン酸エステルアニオンなどが挙げられる。これらの中でも、化合物の粘性や取り扱い易さの観点から、炭素数8〜14のアルキルリン酸エステルアニオンが好ましい。
【0029】
また、炭素数1〜18のアルキル硫酸アニオンとしては、例えば、メチル硫酸、エチル硫酸、ブチル硫酸、ヘキシル硫酸、オクチル硫酸、(2−エチルへキル)硫酸、デシル硫酸、ドデシル硫酸、(2−ブチルオクチル)硫酸アニオン、テトラデシル硫酸アニオン、(2−ブチルデシル)硫酸アニオン、(2−ヘキシルオクチル)硫酸アニオン、ヘキサデシル硫酸アニオン、(2−ヘキシルデシル)硫酸アニオン、オクタデシル硫酸アニオン、(2−オクチルデシル)硫酸アニオンなどが挙げられる。これらの中でも、化合物の粘性や取り扱い易さの観点から、炭素数8〜14のアルキル硫酸アニオンが好ましい。
【0030】
また、炭素数1〜18のアルキルスルホン酸アニオンとしては、例えば、メチルスルホン酸アニオン、エチルスルホン酸アニオン、ヘキシルスルホン酸アニオン、オクチルスルホン酸アニオン、デシルスルホン酸アニオン、ドデシルスルホン酸アニオン、ヘキサイデシルスルホン酸アニオンなどが挙げられる。これらの中でも、化合物の粘性や取り扱い易さの観点から、炭素数8〜14のアルキルスルホン酸アニオンが好ましい。
【0031】
さらに、置換基を有していてもよいアリールスルホン酸アニオンとしては、例えば、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、デシルベンゼンスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸アニオンなどが挙げられる。なお、アリール基の置換基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル、メトキシ、フェニルなどが挙げられる。
【0032】
また、炭素数4〜18のアルキルスルホコハク酸エステルアニオンとしては、例えば、スルホコハク酸ジブチルアニオン、スルホコハク酸ジヘキシルアニオン、スルホコハク酸ジオクチルアニオン、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)アニオン、スルホコハク酸ジデシルアニオン、スルホコハク酸ジドデシルアニオン、スルホコハク酸ジ(2−ブチルオクチル)アニオン、スルホコハク酸ジテトラデシルアニオン、スルホコハク酸ジ(2−ブチルデシル)アニオン、スルホコハク酸ジ(2−ヘキシルオクチル)アニオン、スルホコハク酸ジヘキサデシルアニオンなどが挙げられる。これらの中でも、化合物の粘性や取り扱い易さの観点から、炭素数8〜14のアルキルスルホコハク酸エステルアニオンが好ましい。
【0033】
これらアニオン種の中でも、防汚性をより高めることができるという観点から、炭素数4〜18のアルキルリン酸エステルアニオン、炭素数1〜18のアルキルスルホン酸アニオン、炭素数4〜18のアルキルスルホコハク酸エステルアニオン、置換基を有していてもよいアリールスルホン酸アニオンが好ましく、炭素数8〜14のアルキルリン酸エステルアニオン、炭素数8〜14のアルキルスルホン酸アニオン、炭素数8〜14のアルキルスルホコハク酸エステルアニオン、置換基を有してもよいアリールスルホン酸アニオンが特に好ましい。
【0034】
本発明に用いる上記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンとハロゲン原子を有しない上記アニオンとからなる防汚性を有する化合物(以下、場合により「防汚性化合物」という)の製造方法に特に制限はなく、例えば以下の方法で製造することができる。
【0035】
まず、3級アミン類と、アルキルハライド、アラルキルハライド、アルコキシアルキルハライド又はジアルキル硫酸等とを、必要に応じて溶媒を用いて反応させることにより、4級アンモニウムハライド塩を得ることができる。ここで、反応条件は特に制限されないが、例えば、反応温度は室温以上かつ溶媒還流温度以下の温度であり、反応時間は30分〜24時間程度である。また、反応させる際の圧力は常圧下(大気圧下)でも加圧下でもよく、反応溶液を撹拌下に維持してもよい。
【0036】
必要に応じて使用される溶媒としては、例えば、水、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジクロロメタンなどが挙げられる。溶媒を用いた場合には、得られる反応混合物から溶媒および未反応原料を除去することで、4級アンモニウムハライド塩を得ることができる。
【0037】
次に、上記のようにして得られた4級アンモニウムハライド塩と、ホウフッ化水素酸、テトラフルオロリン酸、アルキルリン酸エステル、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸及びそれらのアルカリ金属塩などの必要とするアニオン種を発生させる化合物とを、必要に応じて溶媒に水又は水と有機溶媒との混合溶媒を用いて反応させてアニオン交換反応を行い、上記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンとハロゲン原子を有しないアニオンとからなる化合物(防汚性化合物)を得ることができる。
【0038】
なお、上記アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などが挙げられる。また、上記ハライドとしては、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、上記4級アンモニウムハライド塩としては、4級アンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物などが挙げられる。また、上記混合溶媒を用いる場合、有機溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。混合溶媒において水と有機溶媒との混合比率は特に制限されないが、水:有機溶媒の比率(体積比)が1:0.5〜1:2であることが好ましい。
【0039】
また、アニオン種を発生させる化合物と4級アンモニウムハライド塩との混合比率(モル比)は、1:0.8〜1:1.2であることが好ましく、1:1(等モル)程度であることが特に好ましい。さらに、混合溶媒中における、アニオン種を発生させる化合物及び4級アンモニウムハライド塩の濃度は特に制限されないが、一般的には各化合物の濃度が0.1〜2mol/リットル程度であることが好ましい。
【0040】
アニオン種を発生させる化合物としてアルカリ金属塩を用いる場合、当該アルカリ金属塩と4級アンモニウムハライド塩とを上記混合溶媒中に溶解せしめて混合することでイオン交換反応が進行し、混合溶媒(反応液)中に、目的とする上記防汚性化合物、及び、ハロゲン化金属塩が生成することとなる。或いは、アニオン種を発生させる化合物と4級アンモニウムハライド塩とを上記混合溶媒中に溶解せしめて混合し、アルカリ金属を塩基とするアルカリ水溶液を添加していくことで、混合溶媒(反応液)中に、目的とする上記防汚性化合物、及び、ハロゲン化金属塩が生成することとなる。
【0041】
その際の反応条件は特に制限されないが、一般的に、反応温度は室温以上かつ溶媒還流温度以下の温度であり、反応時間は30分〜14日間程度であることが好ましい。また、反応させる際の圧力は常圧下(大気圧下)でも加圧下でもよく、反応溶液を撹拌下に維持しても静置してもよい。
【0042】
そして、上記防汚性化合物を製造する方法においては、反応終了後、目的とする上記化合物が生成した反応液から有機溶媒及び水を除去することが好ましい。その際、目的とする化合物は有機溶媒に優先的に溶解して水には溶解しないことから、有機溶媒が除去されるに従って、上記反応液は油層(目的物)と水層とに分離することとなる。また、ハロゲン化金属塩及び未反応の原料化合物は水に優先的に溶解することから、上記反応液から水層を除去することによって、ハロゲン化金属塩及び未反応の原料化合物も水と共に除去され、目的とする上記防汚性化合物が得られることとなる。
【0043】
なお、上記反応液から有機溶媒及び水を除去する方法は特に限定されず、例えば、反応液から先ず有機溶媒を揮発させて除去した後に水を分離除去する方法、或いは、反応液から先ず水層を分離除去した後に有機溶媒を揮発させて除去する方法などを採用することができる。また、より純度の高い目的化合物を得るために、必要に応じて精製工程、乾燥工程(例えば、減圧下(約40mmHg以下)、80〜100℃で数時間減圧乾燥)を更に実施してもよい。このような精製工程としては、例えば、純水により洗浄を行うことで精製する工程や、更にジクロロエタンなどの溶媒にて希釈することで洗浄効率を上げて精製する工程などが挙げられる。
【0044】
本発明のアルミニウム材用表面防汚剤には、上記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンとハロゲン原子を有しないアニオンとからなる上記化合物に加え、さらに、溶剤を含有させることができる。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、エチレングリコールノモブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノールなどのグリコール系溶剤、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。溶剤を使用する場合、アルミニウム材用表面防汚剤中の上記防汚性化合物の濃度は、アルミニウム材の防汚性が十分に得られる濃度であれば特に制限されないが、上記防汚性化合物の濃度が1〜99質量%となるようにすることが好ましく、2〜80質量%となるようにすることがより好ましい。
【0045】
また、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤には、従来から用いられているアルミニウム材用加工剤を、防汚性を損なわない程度に添加することができる。かかる加工剤としては、例えば、PH調整剤、滑剤、キレート剤、着色剤、レベリング剤、防菌・防カビ剤などが挙げられる。
【0046】
次に、本発明のアルミニウム材の防汚処理方法、すなわち本発明のアルミニウム材構造物を得る方法について説明する。
【0047】
本発明の防汚処理方法は、アルミニウム材に、上述した本発明のアルミニウム材用表面防汚剤を接触させる処理工程を含むことを特徴とする方法である。かかる処理工程を行うことにより、アルミニウム材の防汚性を向上させることができる。
【0048】
ここで、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤を用いて防汚性を向上させることができるアルミニウム材としては、特に制限されるものではないが、アルミニウム、アルミニウムを含む合金などが挙げられる。アルミニウムを含む合金としては、例えば、アルミニウム−マンガン合金、アルミニウム−マグネシウム合金、アルミニウム−マンガン−マグネシウム合金、アルミニウム−マグネシウム−シリカ合金、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム合金などが挙げられる。
【0049】
本発明の防汚処理方法において、アルミニウム材に付着させるアルミニウム材用表面防汚剤の付着量としては特に制限されないが、通常は、アルミニウム材に対して0.01〜3g/mであることが好ましい。アルミニウム材用表面防汚剤の付着量が上記範囲内であることにより、防汚性が効果的に発揮されるという利点がある。
【0050】
また、上記処理工程において、アルミニウム材にアルミニウム材用表面防汚剤を接触させて付着させる方法としては特に制限されないが、例えば、浸漬、スプレー、フォローコーティング、ロールコート、キャストコート、ナイフコート、グラビアコート、スクリーンコート、フレキソコート、刷毛塗り、スポンジ塗りなどの塗布方法によって表面防汚剤をアルミニウム材に付着させる方法を用いることができる。これらの方法で処理されたアルミニウム材は、自然乾燥や加熱乾燥などの従来公知の方法によって乾燥することできる。
【0051】
本発明のアルミニウム材構造物は、アルミニウム材と、該アルミニウム材上に付着した上記本発明のアルミニウム材用表面防汚剤と、を備えることを特徴とするものである。
【0052】
図1は、本発明のアルミニウム材構造物の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、アルミニウム材構造物1は、アルミニウム材10と、該アルミニウム材10上に形成されたアルミニウム材用表面防汚剤20からなる防汚皮膜とを有するものである。ここで、防汚皮膜は、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤20がアルミニウム材10表面に付着してなるものであり、例えば、上述した本発明のアルミニウム材の防汚処理方法により形成することができる。
【0053】
かかるアルミニウム材構造物1は、アルミニウム材10の表面が上記本発明のアルミニウム材用表面防汚剤20により処理されているため、優れた防汚性を得ることができると共に、変質及び変色を十分に防止することが可能である。
【0054】
なお、アルミニウム材構造物1において、アルミニウム材10表面のアルミニウム材用表面防汚剤20は、必ずしも図1に示すような均一な皮膜を形成していなくてもよく、アルミニウム材10に十分な防汚性を付与し得る程度に付着していればよい。アルミニウム材10に付着させるアルミニウム材用表面防汚剤20の付着量としては特に制限されないが、通常は、アルミニウム材10に対して0.01〜3g/mであることが好ましい。アルミニウム材用表面防汚剤の付着量が上記範囲内であることにより、防汚性が効果的に発揮されるという利点がある。また、アルミニウム材用表面防汚剤20は、アルミニウム材10の両面に付着していてもよく、アルミニウム材10表面の所定の領域にのみ付着していてもよい。
【0055】
本発明のアルミニウム材構造物は、アルミニウム材表面が本発明のアルミニウム材用表面防汚剤により処理された部分を有するものであれば、その形状等は特に限定されない。本発明のアルミニウム材構造物の具体例としては、例えば、自動車、鉄道などの車輌及び構成部品、船舶、航空の船体及び構成部品、並びに、ビル、家屋などの外装や内装部などが挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0057】
(試験用アルミ板の作製)
アルミ板テストピースA6061(25mm×50mm、太佑機材(株)製)に対し、電気ドリルにステンレス線ワイヤーブラシを装着して切削加工(ヘアーライン加工)を行い、アルミ板テストピースの酸化被膜を除去した。その後、20℃で1時間放置して、試験用アルミ板を作製した。
【0058】
[実施例1]
ビス(2−エチルヘキシル)リン酸16.1g(0.05mol)と、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド19.2g(0.05mol)と、蒸留水30gとを200mLのビーカー中で撹拌混合し、48質量%水酸化ナトリウム水溶液4.2g(0.05mol)を撹拌しながら少量ずつ添加した。得られた混合溶液(反応液)を25℃で1時間撹拌した後、蒸留水30gを加えて1時間撹拌し、12時間放置したところ、この反応液は水層と油層とに分離した。反応終了後、分液ロートを用いて水層を除去した。次いで、得られた油層を、1MのNaCO水溶液100mLを添加して水洗した後、水層を除去し、さらに、蒸留水100mLを添加して水洗した後、水層を除去した。この精製操作を3回行った後、得られた油層に対して減圧下(約40mmHg)、90℃で4時間減圧乾燥処理を施し、液状化合物25gを得た。
【0059】
得られた液状化合物をアルミニウム材用表面防汚剤として用い、これを試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0060】
[実施例2]
実施例1で得られた液状化合物3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0061】
[実施例3]
実施例1で得られた液状化合物3gとプロピレングリコール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0062】
[実施例4]
実施例1で使用したベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド19.2g(0.05mol)の代わりに、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド・2水和物20.2g(0.05mol)を用いた以外は実施例1と同様にして、液状化合物27gを得た。
【0063】
得られた液状化合物3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0064】
[実施例5]
実施例1で使用したビス(2−エチルヘキシル)リン酸16.1g(0.05mol)の代わりに、ビス(2−ブチルオクチル)リン酸21.7g(0.05mol)を用いた以外は実施例1と同様にして、液状化合物29gを得た。
【0065】
得られた液状化合物3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0066】
[実施例6]
実施例1で使用したベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド19.2g(0.05mol)の代わりに、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロライド15.4g(0.04mol)及びベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド・2水和物4.0g(0.01mol)を用い、且つ、実施例1で使用したビス(2−エチルヘキシル)リン酸16.1g(0.05mol)の代わりに、ビス(2−エチルヘキシル)リン酸12.9g(0.04mol)及び(2−エチルヘキシル)リン酸2.1g(0.01mol)を用いた以外は実施例1と同様にして、液状化合物24gを得た。
【0067】
得られた液状化合物3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0068】
[実施例7]
実施例1で使用したベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド19.2g(0.05mol)の代わりに、メトキシエチルジメチルドデシルアンモニウムクロライド15.4g(0.05mol)を用いた以外は実施例1と同様にして、液状化合物25gを得た。
【0069】
得られた液状化合物3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0070】
[実施例8]
ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム22.2g(0.05mol)と、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド19.2g(0.05mol)と、蒸留水30gとを200mLのビーカー中で撹拌混合した。得られた混合溶液(反応液)を50℃で1時間撹拌した後、蒸留水30gを加えて1時間撹拌し、12時間放置したところ、この反応液は水層と油層とに分離した。反応終了後、分液ロートを用いて水層を除去した。次いで、得られた油層を、1MのNaCO水溶液100mLを添加して水洗した後、水層を除去し、さらに、蒸留水100mLを添加して水洗した後、水層を除去した。この精製操作を3回行った後、得られた油層に対して減圧下(約40mmHg)、90℃で4時間減圧乾燥処理を施し、液状化合物32gを得た。
【0071】
得られた液状化合物3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0072】
[実施例9]
実施例8で使用したジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム22.2g(0.05mol)の代わりに、オクタンスルホン酸10.8g(0.05mol)を用いた以外は実施例8と同様にして、液状化合物21gを得た。
【0073】
得られた液状化合物3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0074】
[実施例10]
実施例8で使用したベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド19.2g(0.05mol)の代わりに、テトラオクチルアンモニウムブロマイド27.3g(0.05mol)を用い、且つ、実施例8で使用したジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム22.2g(0.05mol)の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸17.4g(0.04mol)を用いた以外は実施例8と同様にして、液状化合物31gを得た。
【0075】
得られた液状化合物3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0076】
[比較例1]
ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウクロライド3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0077】
[比較例2]
ビス(2−エチルヘキシル)リン酸エステルの水酸化ナトリウム中和物3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0078】
[比較例3]
スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0079】
[比較例4]
蒸留水3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0080】
[比較例5]
金属アルコキシド重縮合物[日本曹達(株)製、アトロンNSi−500]41.7gと、二酸化珪素微粒子[日本アエロジル(株)製、AEROSIL300]41.7gと、2質量%ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン溶液[東芝シリコーン(株)製、XC98−A5382]16.6gとを均一に混合し、混合液を調製した。
【0081】
得られた混合液をアルミニウム材用表面防汚剤として用い、これを試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、250℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0082】
[比較例6]
ラウリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムのリン酸ブチルエステル(モノエステル/ジエステル=50/50モル%)塩3gとイソプロパノール97gとを均一に混合し、それをアルミニウム材用表面防汚剤とした。得られたアルミニウム材用表面防汚剤を、試験用アルミ板上に、付着量が固形分基準で0.1g/mとなるように、アルミニウム材用表面防汚剤を含浸させたミラクルクロス(大和紡績(株)製)により均一に塗布した後、25℃で1時間乾燥してアルミニウム材構造物を得た。
【0083】
(防汚性の評価)
実施例1〜10及び比較例1〜5で得られたアルミニウム材構造物に、汚染成分として二硫化モリブテン配合グリース[モリLGグリースNo.1、住鉱杭潤滑剤(株)製]を15g/m付着させた。次いで、自然環境の降雨を想定し、汚染成分を付着させたアルミニウム材構造物に水を毎分450mLで2時間、4時間及び6時間スプレー噴霧し、スプレー噴霧後、目視によりアルミニウム材構造物表面の汚染成分の除去程度(防汚性)を以下の評価基準に従って5段階で評価した。その結果を表1に示す。
1:全く汚れが除去されていない、
2:ほぼ全面に汚れが残っている、
3:一部に汚れが認められる、
4:僅かに汚れが認められる、
5:全く汚れが認められない。
【0084】
(耐変質性の評価)
実施例1〜10及び比較例1〜5で得られたアルミニウム材構造物を、25℃で24時間放置した。その後、目視により、アルミニウム材構造物表面の腐食の程度(耐変質性)を以下の評価基準に従って3段階で評価した。その結果を表1に示す。
1:明らかな腐食が認められる、
2:やや腐食が認められる、
3:腐食が認められない。
【0085】
(耐酸性雨性の評価)
酸性雨の模擬液として、0.002Nの硫酸水溶液を用意した。この模擬液に、実施例1〜10及び比較例1〜5で得られたアルミニウム材構造物を、20℃で15時間浸漬した。その後、アルミニウム材構造物を取り出し、20℃で1時間乾燥して、目視により、アルミニウム材構造物表面の腐食の程度(耐酸性雨性)を以下の評価基準に従って3段階で評価した。その結果を表1に示す。
1:明らかな腐食が認められる、
2:やや腐食が認められる、
3:腐食が認められない。
【0086】
(耐変色性の評価)
実施例1〜10及び比較例1〜5で得られたアルミニウム材構造物を、25℃で24時間放置した。その後、目視により、アルミニウム材構造物表面の変色の程度(耐変色性)を以下の評価基準に従って3段階で評価した。その結果を表1に示す。
1:明らかな変色が認められる、
2:やや変色が認められる、
3:変色が認められない。
【0087】
【表1】



【0088】
表1に示した結果から明らかなように、特定のカチオン種とハロゲン原子を有しないアニオン種とからなる化合物を表面防汚剤の成分として用いた本発明のアルミニウム材用表面防汚剤は、アルミニウム材に対して優れた防汚性を有していると共に、変質及び変色を十分に抑制することができ、さらにアルミニウム材に対して酸性雨の影響を低減できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤は、アルミニウム材に対して洗浄剤などを使用して汚れを物理的に落とす必要がなく、降雨などの条件で十分に汚れを落とすことが可能な優れた防汚性を付与することができる。また、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤を用いてアルミニウム材表面を処理することにより、アルミニウム材の変質及び変色を十分に防止することが可能となる。また、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤は、ハロゲンフリーなアルミニウム材用表面防汚剤として非常に有用である。
【0090】
したがって、本発明のアルミニウム材用表面防汚剤を用いることにより、アルミニウム材が使用されている自動車、鉄道などの車輌及び構成部品、船舶、航空の船体及び構成部品、並びに、ビル、家屋などの外装や内装部など、環境に暴露されるアルミニウム材の分野において、優れた防汚性を有する本発明のアルミニウム材構造物のような各種アルミニウム材構造物を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のアルミニウム材構造物の一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1…アルミニウム材構造物、10…アルミニウム材、20…アルミニウム材用表面防汚剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと、ハロゲン原子を有しないアニオンと、からなる化合物を含有することを特徴とするアルミニウム材用表面防汚剤。
【化1】



[式(1)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜24のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。なお、RとRとは互いに結合して窒素原子と共に環を形成していてもよい。]
【請求項2】
前記アニオンが、炭素数4〜18のアルキルリン酸エステルアニオン、炭素数1〜18のアルキルスルホン酸アニオン、置換基を有していてもよいアリールスルホン酸アニオン、及び、炭素数4〜18のアルキルスルホコハク酸エステルアニオンからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材用表面防汚剤。
【請求項3】
アルミニウム材に、請求項1又は2に記載のアルミニウム材用表面防汚剤を接触させる処理工程を含むことを特徴とするアルミニウム材の防汚処理方法。
【請求項4】
アルミニウム材と、該アルミニウム材上に付着した請求項1又は2に記載のアルミニウム材用表面防汚剤と、を備えることを特徴とするアルミニウム材構造物。


【図1】
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【公開番号】特開2008−50409(P2008−50409A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225712(P2006−225712)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】