説明

アルミニウム複合材を使用した配線板

【課題】LEDやパワー半導体を使用するに伴い、より小さな面積の中で熱をいかに効率良く逃がすかが、使用上の安全性や製品寿命を確保する上で重要に成ってきている。材料面でも、セラミックスやアルミニウム、銅などの金属に変わる材料として、適正な熱膨張率、熱伝導の速さ、比重の軽さなどの優れた性質を持つ材料が望まれている。
【解決手段】カーボンや炭化ケイ素、窒化ホウ素等とアルミニウムの複合材6を、今までのアルミを主体とする金属に置き換え、適合する熱膨張率、更に熱移動を最適にする構造とした、複合材ベースの配線板を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線基板のベース材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板の種類のうち、アルミニウム等のベース金属に絶縁層を介して銅箔を貼り付けた、メタルベース配線基板が熱移動の遅いこと、および熱膨張率の大きいことにより様々な制約がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
メタルベース配線板は、主としてアルミニウムをベース材料として、絶縁層を介して、配線としての銅箔を貼り付ける構造からなっている。(図−1)
アルミニウムは、その熱伝導度は200W/m・K程度であり、金属の中では熱移動の速い方ではなく、銅は、その熱伝導度は390W/m・Kと、熱移動は速いけれども、比重が大きく、LEDなどを照明として応用した場合、特に大きな面積を必要とする街灯などの照明器具として使用する場合、重量が重くなるという弊害がある。
【0004】
さらに、アルミニウムや銅は熱膨張率が大きく、LEDやパワー半導体の熱膨張率とは大きな差異が生じてしまう。このため、配線基板上の温度変化により、剥離、曲がり、反り等が起こり、良好に熱を移動させるには難点がある。
【0005】
又、図−1のような構造では、絶縁層の熱伝導度が、1〜8W/m・Kと低く、厚さが40〜80μmであることを考慮しても、絶縁層の伝熱抵抗が支配的となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に鑑み、本発明では、ベース基板をアルミニウムや銅と替えて、カーボン・アルミニウム複合材を採用することとした。
【0007】
カーボン・アルミニウム複合材は、黒鉛化した粒状の集合物の空隙にアルミニウムを圧入させて、黒鉛の体積比率が70〜95%で、残りの99%以上がアルミニウム又はアルミニウム合金よりなる複合材である。この複合材は、熱拡散率が2.0〜5.0cm/secと金属の0.8〜1.1cm/sceと比して格段に大きく、熱移動の速いことが知られている。
【0008】
又、この複合材の熱膨張率は6〜7ppm/℃であり、LEDの6.8ppm/℃や、その他の各種半導体の3〜8ppm/℃と適合している。これに対してアルミニウムの24ppm/℃や、銅の17ppm/℃では熱膨張率が大きく、低出力のものしか使用できないことは自明である。
【0009】
そこで、本発明は上記複合材をメタル配線基板のベース材料として、より熱移動の速い、かつ、適合性に優れた熱膨張率を有する配線基板を開発した。(図−2)
【0010】
複合材を利用することにより、伝熱抵抗の大きい絶縁層も、支配的な伝熱抵抗とはならなくなった。
【0011】
さらに、より速い伝熱構造を形成するために、回路を形成すると同時に、熱を集めるためにも銅箔を利用し、熱を集めた銅箔から、直接複合材に熱を伝える構造を、ハンダを流し込み、銅箔を一体化する方法(図−3)も完成させた。この時、熱膨張率が適合しているので、温度変化によるハンダ割れという問題も無くなった。
【0012】
又、さらに、より速い伝熱構造を形成するために、前記ハンダの替わりにネジを用いて、銅箔と複合材、更には、その先のヒートシンクと一体化する方法(図−4)も完成させた。この場合、ネジ用の穴は、複合材まででも良く、又、貫通させてヒートシンクに届くようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭素アルミニウム複合材をベースとするLEDや、半導体の放熱性に優れた配線基板を完成できる。これにより、高出力半導体や、高輝度LEDの長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
各図面のベース材料の下にはアルミニウム製ヒートシンクが配置されるが、省略してある。
【図1】一般的なメタルベース配線板の断面構造である。図1では、簡略化のために電気配線部分は省略してある。熱移動のために設計された配線部分を描いている。
【図2】ベース金属を複合材に変更したもので、複合材部分に伝わった熱は、銅を超える425W/m・Kという熱伝導度でベース材料の下側に接触するヒートシンクに伝えられる。ただ、このままでは、一定の効果は得られたものの、有機系の材料では熱伝導度の大きい性質のものとは言え、絶縁層の1〜8W/m・Kによってもたらされる熱抵抗が熱移動の阻害要因に成ってしまった。
【図3】図2から部分的に銅箔と絶縁層を除去してキャビティーを作った構造で、加工はルーター又はドリルないしは、レーザー加工で行う。銅箔と複合材をつなぐために、薄く複合材にメッキをした後、実装時にハンダを流し込み銅箔と複合材を接合する。絶縁層が薄い場合は、銅メッキを表面銅箔と同じ高さになるまで行っても良い。これらの構造により、ハンダでもその熱伝導度は40〜60W/m・Kなので熱の移動が著しく速くなることが確認された。絶縁層が20〜40μmと薄い場合は、銅メッキを銅箔と同じ高さになるまで行うことで、銅の熱伝導度は390W/m・Kと非常に速いので、更に効果があることが確認された。
【図4】貫通穴にして、熱伝導度の大きい高いネジで銅箔と複合材に機械的に接触させる方法で、図3よりも経済的に熱移動を速くする構造を実現できた。この場合は、複合材にもめねじを切って、導電性グリスを併用して締め付けるとバラツキが無く、効果的であった。
【符号の説明】
【0015】
1.4.7.13. 銅箔(18〜105μm)
2.5.8.14. 絶縁層(40〜200μm)
3. ベース金属(アルミニウム・銅)
6.9.15. ベース材料複合材
10. ハンダ
11. 銅メッキ
12. 貫通穴
16. ネジ
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明をより具体的に説明するための実施例を示す。
【実施例1】
【0017】
黒鉛化された粉体を、鉄製の容器に体積率が85%になるように詰め込み、これを700℃に予熱した後、溶湯鍛造法により、JISAC4Bのアルミニウム合金溶湯を、90MPaの圧力にて含浸し、冷却後、比重2.30の複合材を得た。これから、厚さ1.5mmで、20mm平方の板を得た。その後、40μmの5重量%窒化アルミニウム(平均粒径7μm)を配合したポリイミドを接合し、その上に、70μmの銅箔を貼り付けて、10WのLEDチップの配線基板を完成させた。LEDチップを配して、330mAで30Vの電圧をかけて100日間点灯したが、光束は1500lmのまま、変化が無かった。又、LED上部の温度は60℃であった。
【実施例2】
【0018】
実施例1と同様の複合材より、厚さ3.2mmで、80mm×40mmの板材をとり出し、80μmの高熱伝導性フィラー入りのポリイミドを接合し、その上に140μmの銅箔を貼り付けて、出力167Wのパワー半導体基板の回路を形成した後に図−4の方法を用いて、アルミニウム製ヒートシンクの上に配置した。この時、ネジは、ヒートシンクにまで到達させた。
これを複合材の替わりに同じ大きさの銅板を用いた時と比較した温度を表1に示す。
表1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンとアルミニウムの複合材(以下複合材と言う)に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂にアルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなど(以下高熱伝導性フィラーと言う)を分散させた絶縁層(以下絶縁層と言う)を介し銅箔を貼り付け、配線板とする構造。
【請求項2】
前記複合材ベース配線板に熱を集めるように配した銅箔および絶縁層を部分的に除去し、露出した複合材にニッケルメッキ及び金メッキ、銀メッキ、又は銅メッキを行うことで複合材にハンダ付けができるようにする構造。
【請求項3】
前記複合材にハンダ付けができるようにした金属面にハンダを流し込み、絶縁層上の銅箔と接続した構造。
【請求項4】
請求項2の銅箔および絶縁層を除去した後に、銅メッキを行い、絶縁層上の銅箔と同じ高さになるようにした構造。
【請求項5】
請求項1の複合材ベース配線板に熱を集めるように配した銅箔および絶縁層に穴を開け、熱伝導度の大きいネジで銅箔表面と、複合材をつなぎ合わせる構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−69816(P2012−69816A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214401(P2010−214401)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(595068195)株式会社アイン (9)
【出願人】(000127592)株式会社エー・エム・テクノロジー (9)
【Fターム(参考)】