説明

アルミニウム還元セル用の、高電流密度で動作する酸素発生金属陽極

氷晶石をベースとした溶融電解質に溶けたアルミナの分解によってアルミニウムを電解採取するための、また、1.1から1.3A/cm2の陽極電流密度で動作可能な、酸素発生金属陽極であり、該金属陽極は、ニッケル、鉄、マンガン、任意に銅、およびシリコンの合金を含む。好ましくは、合金は、64〜66w%のNi、25〜27w%のFe、7〜9w%のMn、0〜0.7w%のCu、そして0.4〜0.6w%のSiから成る。Ni/Feの重量比は、2.1から2.89、好ましくは2.3から2.6の範囲であり、Ni/(Ni+Cu)の重量比は、0.98より大きく、Cu/Niの重量比は、0.01未満、そしてMn/Niの重量比は、0.09から0.15である。合金表面は、合金の予備酸化によって生み出されるニッケルフェライトを含むことができる。合金は、任意に予備酸化表面を伴うものであり、酸化コバルトCoOを含む外側コーティングで表面を覆われることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素発生金属陽極を利用する、フッ化物含有溶融電解質に溶けたアルミナの分解による、アルミニウムの電解採取に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融氷晶石に溶けたアルミナの分解によるアルミニウム電解採取工程において、炭素陽極を酸素発生陽極に置き換えることによって、金属1トンあたりおよそ1.5トンのCO2の産出を抑制することができる。しかしながら、熱力学的考察から、酸素発生陽極は、潜在的に、炭素陽極と比べて、陽極電位1.0ボルトの理論的な不利益を呈する。実際には、この理論的な不利益は、酸素発生陽極の適切な活性表面の酸素過電圧が低いおかげで、およそ0.65ボルトに減らすことができる。この0.65ボルトの不利益は、およそ15%のエネルギー消費の増加を意味し、セル電圧を減らすための、4cmよりも短い極間距離(ACD)での動作によって、補われなければならない。
【0003】
しかしながら、熱力学計算は、同じセル電圧とセル電流で、酸素発生陽極を利用するセルの熱バランスは、従来の炭素陽極を利用するセルの熱バランスのおよそ60%であることを示している。ACDを短くすれば、セルの熱平衡がもはや尊重されないため、熱バランスは、酸素発生陽極にとって、より好ましくないものとなり得る。
【0004】
これらのエネルギーの不利益を考慮すると、セル電流の大きな増加をともなう動作は、酸素発生陽極を有するアルミニウム還元セルを操作するときの容認可能な経済的条件およびエネルギー条件を達成するための、一つの解決法と考えることができる。陰極および陽極のための規定された空間を有する従来の市販されているセルに据え付ける場合には、酸素発生陽極は、炭素陽極に利用される値の30%から50%の増加に相当する1.1から1.2A/cm2の範囲の高電流密度で動作が可能でなければならない。
【0005】
アルミニウム還元セルに利用される酸素発生陽極は、セラミック、サーメット、あるいは金属合金製の本体から構成することができ、また陽極表面は、主要な電子伝導性を優先的に有する金属酸化物の単相あるいは混合物から成る活性層によって、全体的あるいは部分的に覆われることができる。一般的に、これらの活性金属酸化物層は、半導体の部類、好ましくはp型半導体に属しており、このp型半導体は、陽極の分極において、最低の活性化過電圧を伴って、電解質から電極への電子の移動を促すものである。
【0006】
高温(920〜970℃)での動作の間、酸素発生陽極の酸化物活性層の構成は、以下によって変更され得る:
・基板本体から表面に拡散する一つまたは複数の成分の化学的相互作用、
・氷晶石融液における、酸化物層の一つまたは複数の成分の選択的溶解、
および/または
・陽極表面で形成される発生期の酸素あるいは分子状の酸素による、一つまたは複数の成分の更なる酸化相互作用。
【0007】
高電流密度で生じる酸素活量の増加に伴う、酸化物層のさまざまな成分間の構成および/または比率の変化は、この活性金属酸化物層の半導体特性の変更をまねく可能性がある。
【0008】
p型半導体相のn型半導体相への局所変形は、陽極の活性化過電圧を増す可能性があるか、または更によくないケースでは、半導体のn−p接合によって形成される半導体ダイオードに起因する不安定な型を引き起こす可能性がある。
【0009】
活性酸化物層の半導体特性のこのような変更は、ある臨界値を超える電流密度での酸素発生陽極の動作を妨げる障害となる可能性がある。
【0010】
今までのところ、高電流密度での動作に耐えることができる酸素発生金属陽極を提供するすべての試みが、不成功に終わっている。
【0011】
先行技術文献
国際公開第2000/006803号(Duruz J.J.,De Nora V.& Crottaz O.)は、ニッケルと鉄の合金から作られている酸素発生陽極について記載しているが、該合金の推奨的な組成の範囲は、60〜70w%のFe、30〜40w%のNiおよび/またはCo、任意で15w%のCr、ならびに5w%までのTi、Cu、MOであり、また、他の元素を加えることもできる。活性層は、酸化性雰囲気における高温での陽極合金の熱処理によって得られた結果から生じる酸化物混合物から形成される。
【0012】
国際公開第2003/078695号(Nguyen T.T.& De Nora V.)は、ニッケル−鉄−銅−アルミニウムの合金から作られている酸素発生陽極について記載しているが、該合金の推奨的な組成の範囲は、35〜50w%のNi、35〜55w%のFe、6〜10w%のCu、3〜4w%のAlである。好ましいNi/Feの重量比は、0.7〜1.2の範囲内である。任意で、0.2〜0.6w%のMnを加えることができる。活性層は、酸化性雰囲気における高温での陽極合金の熱処理によって得られた結果から生じる酸化物混合物から形成される。
【0013】
国際公開第2004/074549号(De Nora,Nguyen T.T.& Duruz J.J.)は、外層あるいはコーティングによって包まれる金属合金コアから作られている酸素発生陽極について記載している。内側の金属合金コアは、推奨的には、55〜60w%のNiまたはCo、30〜35w%のFe、5〜9w%のCu、2〜3w%のAl、0〜1w%のNb、および0〜1w%のHfを含むことができる。金属製の外層あるいはコーティングは、推奨的には、50〜95w%のFe、5〜20w%のNiまたはCo、および0〜1.5w%の他の元素を含むことができる。活性層は、酸化性雰囲気における高温での陽極合金の熱処理によって得られる結果から生じる酸化物混合物から形成される。
【0014】
国際公開第2005/090643号および国際公開第2005/090641号(De Nora V.& Nguyen T.T.)は、金属基板にCoO活性コーティングが施されている、酸素発生陽極について記載している。外側コーティングの中のコバルト前駆体の組成および熱処理条件は、望ましくないCo34の相の形成を阻止するために明確に述べられている。
【0015】
国際公開第2005/090642号(Nguyen T.T.& De Nora V.)は、クロム、コバルト、ハフニウム、鉄、ニッケル、銅、プラチナ、シリコン、タングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ、チタニウム、タングステン、バナジウム、イットリウム、およびジルコニウムから選択される少なくとも一つの金属で作られている基板上に、コバルトに富んだ外表面を有する、酸素発生陽極について記載している。一例において、組成は、65〜85w%のニッケル、5〜25w%の鉄、1〜20w%の銅、および0〜10w%の追加的な構成物質である。例えば、基板の合金は、およそ、75w%のニッケル、15w%の鉄、および10w%の銅を含む。
【0016】
国際公開第2004/018082号(Meisner D.,Srivastava A.,Musat J.,Cheetham J.K.,& Bengali A.)は、金属基板上の鋳造ニッケル・フェライト・サーメットから成る複合材料製の酸素発生陽極について記載している。サーメットの膜は、5〜25w%のCuあるいはCu−Ag合金粉末と混ぜられた、75〜95w%のNiFe24から成る。金属ベースの基板は、Ni、Ag、Cu、Cu−AgあるいはCu−Ni−Ag合金で作られる。
【0017】
米国特許第4,871,438号明細書(Marschman S.C.&Davis N.C.)は、Ni酸化物およびFe酸化物とNiOとの混合物と、金属Ni+Cuの粉末20w%との焼結反応によって作られる、酸素発生サーメット陽極について記載している。
【0018】
国際公開第2004/082355号(Laurent V.,& Gabriel A.)は、化学式NiO−NiFe24−Mに相当するサーメット相で作られる酸素発生陽極について記載しており、Mは、3〜30%のNiを含むCu+Ni粉末の金属相である。金属相Mは、20w%を超えるサーメット材に相当する。
【0019】
本発明の根本にある先行技術および本発明は、以下、次のような添付の図面を参照して、例として説明される。
【0020】
図1は、アメリカ合衆国オハイオ州コロンバス、The American Ceramic Society編集のA.E.McHaleおよびR.S.Roth:Phase Equibria Diagrams−Vol.XII(1996)p.27‐Fig.9827に従ったものに基づいた、Ni−Cu−O2相図である。
図2は、アメリカ合衆国オハイオ州コロンバス、The American Ceramic Society編集のR.S.Roth:Phase Equilibria Diagrams−Vol.XI(1995)p.11‐Fig.9127に従ったものに基づいた、Ni−Mn−O2相図である。
図3は、それぞれ、本発明によるセルで用いる陽極の側面図および平面図を概略的に示す図である。
図4は、それぞれ、フッ化物含有電解質および本発明による酸素発生金属陽極を有するアルミニウム生産セルの、概略的な断面図および平面図である。
【0021】
本発明の根本にある先行技術の考察
ニッケル含有量が50w%より低い、Feに富んだ合金の酸化物活性層(国際公開第2000/006803号および国際公開第2003/078695号)は、主にヘマタイトFe23相を含み、該相は、多孔質であり、O2-のイオン移動を促す可能性がある亜酸化物(FeO、Fe34)の存在が原因で、酸化障壁とはなり得ない。高い動作温度では、これらのFeに富んだ陽極合金は、比較的短期間の後に完全に酸化する可能性がある。また、Feに富んだ合金で作られるこれらの酸素発生陽極は、氷晶石融液の中のフッ化物化合物によってひどく攻撃される可能性があり、このことにより、選択的なFe腐食による構造の深刻な損傷が結果的にまねかれる可能性がある。
【0022】
Feに富んだ外側部分あるいはコーティングを有する、ニッケルの含有量がより多い合金(国際公開第2004/074549号)を利用することによって、酸化耐性の改善が得られる可能性がある。この場合もやはり、ヘマタイトFe23外層は、効果的なフッ素添加障壁にはなれない可能性があり、このことにより陽極基板合金の中のNiとFeの含有量は、それぞれ、55〜60w%と30〜35w%に制限されるであろう。平衡は、5〜9w%の範囲のCuによって補われる。合金におけるCuの高い含有量、またはより正確にはCu/Niの高い割合は、しかしながら、高電流密度での不安定な動作をまねく可能性がある(以下参照)。
【0023】
アルミニウム還元セルで動作する酸素発生陽極のフッ素添加耐性を改善するために、CoO外側コーティングを利用することができる(国際公開第2005/090641号、国際公開第2005/090642号、および国際公開2005/090643号)。下部のニッケルフェライト酸化障壁は、65〜85w%のNi、5〜25w%のFe、1〜20w%のCu、0〜10w%の(Si+Al+Mn)を含む陽極合金基板の、in situ酸化によって得られる可能性がある。コバルト酸化物は、二つの可逆的な形態の存在によって特徴付けられ、すなわち、p型半導体の形態であるCoOは、900℃を超える温度および/または低い酸素圧下で優勢であり、それより低い温度および/または高い酸素圧下では、n型半導体の形態であるCo34が優勢である。外層のCo前駆体の特有の構成と予備酸化条件は、所望のp型半導体形態であるCoOを得るために利用することができる。しかしながら、高電流密度(>1.0A/cm2)によって発生する高い酸素活量では、CoOの、n型半導体形態であるCo34への部分的な変換は、回避できない可能性がある。他方では、Cu酸化物の外方拡散の結果生ずる、Cu酸化物の蓄積も、以下の反応にしたがったn型半導体相Co34の形成をまねく可能性がある。
3CoO+2CuO=Co34+Cu2
【0024】
CoOとCo34の混合物の存在は、半導体ダイオードのポテンシャル障壁に起因する不安定な型を引き起こす(ショットキ効果)、半導体のn‐p接合形成をまねく可能性がある。
【0025】
ニッケルフェライトNiFe34の記号表示で周知である、NiとFeの混合酸化物は、氷晶石融液において最も安定しているセラミック相のうちの一つを構成する。ニッケルフェライトは、適切な金属陽極基板合金上に形成されるコーティングとして(国際公開第2005/090642号)、あるいは鋳造物の膜の形状でのサーメットマトリックスとして(国際公開第2004/018082号)、あるいは巨大な本体として(国際公開第2004/082355号および米国特許第4,871,438号明細書)利用することができる。通常、ニッケルフェライトコーティングあるいはサーメット材の前駆体として利用される金属合金は、常に、一定量のCuおよび/またはCu合金を含む(Cuをおよそ25w%まで)。(Ni、Cu)O固溶体の形成は、NiF2および/またはNiOの形成に起因する陽極不動態化を阻止し、また(Ni、Cu)O固溶体は、ニッケルフェライトマトリックスの緻密化を改善する結合剤の役割を果たす可能性がある。しかしながら、高電流密度で発生する酸素活量の増加に伴う銅の外方拡散に起因する銅の濃縮は、(Ni、Cu)O固溶体の分離によるCuO相の形成をもたらす可能性があり、これは図1で示される通りである。
【0026】
Ni‐Cu‐Oの相図:
ニッケル、銅、酸素の三成分系の相図は、図1に示されるが、合金の(Ni/Ni+Cu)原子比率に応じた、そしてさまざまな酸素圧での、さまざまな相の存在を示している。
【0027】
65w%のNi−10w%のCu−25w%のFeの組成の、Cuに富んだ陽極合金A1を根幹とすると、空気中での予備酸化(0.2バールpO2−log pO2=−0.7)は、(Nl、Cu)Oの固溶体と過剰なCu2Oとから成る外側の酸化層をもたらし(B1点)、双方ともp型半導体である。Cuの外方拡散により、酸化物成分は、ベース合金のものよりもCu含有量が多い。
【0028】
陽極が高電流密度(>1.0A/cm2)で動作するとき、活性酸化物構造内に吸着される酸素の活量は、1バール(log pO2=0)まで上がる可能性があり、また、Cuの優先的拡散により、酸化物成分は左に移動するであろう(C1点)。C1点は、(Ni、Cu)O固溶体が部分的に分解する領域に位置しており、それにはn型半導体であるCuOの形成が伴う。
【0029】
活性酸化物層は、そのとき、p型半導体マトリックスと、n型半導体CuOの局部領域から成るであろう。半導体のn‐p接合は、帯電電位障壁が原因で不安定なセル電圧型をもたらす、ダイオードを形成することが推測される。
【0030】
Cuの含有量が少ない陽極合金A2(例えば65w%のNi−2w%のCu−33%のFe)を根幹とすると、空気中での予備酸化(0.2バールpO2−log pO2=−0.7)は、p型半導体である(Nl、Cu)Oの固溶体から成る外側の酸化物層をもたらす(B2点)。Cuの外方拡散により、酸化物成分は、ベース合金のものよりもCu含有量が多い。
【0031】
陽極が高電流密度(>1.0A/cm2)で動作するとき、活性酸化物構造内に吸着される酸素の活量は、1バール(log pO2=0)まで上がる可能性があり、また、Cuの優先的拡散により、酸化物成分は左に移動するであろう(C2点)。このC2点は、(Ni、Cu)O固溶体の安定した領域に位置しており、活性酸化物層のp型半導体特性は保持されると推測され、そうなると高電流密度でのセル電圧振動はない。しかしながら、FeによるCuの単純な置き換えは、陽極の寿命を短くする、Feの優先的な酸化/腐食をまねくであろう。
【0032】
Ni‐Mn−O相図:
ニッケル、マンガン、酸素の三成分系の相図は、図2に示されるが、合金の(Ni/Ni+Mn)原子比率に応じた、そしてさまざまな酸素圧での、さまざまな相の存在を示している。
【0033】
65w%のNi−8w%のMn−27w%のFeの組成の陽極合金Mを根幹とすると、空気中での予備酸化(0.2バールpO2−log pO2=−0.7)は、スピネル相(Mn原子が挿入されたNiO構造)とNiXMn1-XOの固溶体とから成る外側の酸化物層をもたらし(O点)、双方ともp型半導体である。Mnの優先的拡散により、酸化物成分は、ベース合金のものよりもMn含有量が多い可能性がある。
【0034】
陽極が高電流密度(>1.0A/cm2)で動作するとき、活性酸化物構造内に吸着される酸素の活量は、1バール(log pO2=0)まで上がる可能性があり、また、Mnの優先的拡散により、酸化物成分は左に移動するであろう(A点)。
【0035】
スピネル相およびNiXMn1-XOの固溶体の領域は、広範囲の(Ni/Ni+Mn)比率で安定している。それゆえ、活性酸化物層のp型半導体特性は保持されるはずであり、ひいてはセル電圧は、高電流密度型で安定を保つはずである。
【0036】
陽極動作条件下での活性酸化物層の半導体特性の変更の可能性を考慮すると、相図は、Ni−Cu−Fe合金を上回る、Ni−Mn−Fe(および低いCu)合金の利点を明確に示している。合金におけるCuの、Mnによる全体的あるいは部分的な置き換えは、NiとFeの含有量を、Ni不動態化(Niの高すぎる含有量)および/またはFeの優先的な酸化/腐食(Feの高すぎる含有量)を避ける最適な値で保持することを可能にするはずである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明の目的は、実質上不活性の酸素発生金属陽極を提供することであり、該陽極は、半導体のn‐p接合のない活性金属酸化物層を有し、また、例えば1.1から1.3A/cm2の範囲の高電流密度で生じる高い酸素活量で動作することができる。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明による陽極は、主にニッケル−鉄−マンガン−銅を含む合金で作られる。
【0039】
本発明によると、氷晶石をベースとした溶融電解質に溶けたアルミナの分解によってアルミニウムを電解採取するための、酸素発生金属陽極が提供されるが、該陽極は、基本的にニッケル、鉄、マンガン、任意に銅、そしてシリコンから成る合金を含み、以下のような構成および相対的な比率を特徴とするものであり:
ニッケル(Ni) 62〜68w%
鉄(Fe) 24〜28w%
マンガン(Mn) 6〜10w%
銅(Cu) 0〜0.9w%
シリコン(Si) 0.3〜0.7w%
そして場合により他の微量な元素、例えば炭素などを、総量で0.5w%まで、また好ましくはわずか0.2w%あるいはさらには0.1w%、
ここで、Ni/Feの重量比は、2.1から2.89、好ましくは2.3から2.6の範囲であり、
Ni/(Ni+Cu)の重量比は、0.98より大きく、
Cu/Niの重量比は、0.01未満であり、
そしてMn/Niの重量比は、0.09から0.15である。
【0040】
銅が存在するとき、その量は、好ましくは、少なくとも0.1w%であり、場合によっては少なくとも1w%または2w%または3w%であり、その上限は0.9w%または好ましくは0.7w%である。最適な銅の量は、およそ0.5w%である。
【0041】
好ましくは、合金は、64〜66w%のNi、25〜27w%のFe、7〜9w%のMn、0〜0.7w%のCu、そして0.4〜0.6w%のSiから成る。最も好ましい組成は、およそ65w%のNi、26.5w%のFe、7.5w%のMn、0.5w%のCu、そして0.5w%のSiである。
【0042】
合金表面は、合金の予備酸化によって生み出される、ニッケルとマンガンの酸化物の固溶体(Ni、Mn)Oxおよび/またはニッケルフェライトを含む酸化物層を有することができる。合金は、任意に、予備酸化表面を伴うものであるが、有利には、酸化コバルトCoOを含む外側コーティングで表面を覆われることができる。
【0043】
本発明はまた、上で定義されるような、少なくとも一つの陽極を含むアルミニウム電解採取セルも提供するが、該陽極は、典型的には870〜970℃、とりわけ910〜950℃の温度の、フッ化物含有溶融電解質に浸すことが可能なものである。
【0044】
本発明の他の態様は、このようなセルの中でアルミニウムを生産するための方法であり、該方法は、陽極表面に酸素を発生させ、また、陰極でアルミニウムを還元するために、フッ化物含有溶融電解質の中に浸される陽極と陰極の間に電解電流を流すことを含む。この方法において、電流は、少なくとも1A/cm2、とりわけ少なくとも1.1あるいは少なくとも1.2A/cm2の、陽極電流密度で流れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】Ni−Cu−O2相図である。
【図2】Ni−Mn−O2相図である。
【図3a】本発明によるセルで用いる陽極の側面図を概略的に示す図である。
【図3b】本発明によるセルで用いる陽極の平面図を概略的に示す図である。
【図4a】フッ化物含有電解質および本発明による酸素発生金属陽極を有するアルミニウム生産セルの概略的な断面図である。
【図4b】フッ化物含有電解質および本発明による酸素発生金属陽極を有するアルミニウム生産セルの概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
従来の合金における銅の、マンガンによる部分的または全体またはほぼ全体の置き換えは、図2に由来し得る次の利点をもたらすはずである:Mnは、(Ni、Mn)O固溶体あるいはスピネル相の形成により、NiF2および/またはNiOに起因する陽極不動態化を阻止するはずである。
・高い酸素活量で安定であるp半導体(Ni、Mn)O固溶体あるいはスピネルは、高電流密度でn半導体相の形成を伴ういかなる分離ももたらさないはずである。
本発明による、陽極合金の組成の範囲および比率は、次の基準にしがたって決定される:
・(Ni/Fe)質量比は、Niフェライトタイプの混合酸化物の形成を促すために、2.10より高くなければならない。この質量比は、NiF2および/またはNiO形成による陽極不動態化を阻止するために、2.89より低くなければならない。好ましい(Ni/Fe)質量比は、およそ2.45である。
・Cu含有量は、高い酸素活量での(Ni、Cu)O固溶体の分離によるCuOの形成を抑制するために、0.98より高い(Ni/(Nl+Cu))比率または0.01より低い(Cu/Ni)質量比によって、定義される(図1参照)。
・(Mn/Ni)質量比は、Niベース合金の耐酸化性を維持するために、0.09より高く、そして0.15より低くなければならない。
・Niの絶対量は、62から68w%の範囲でなければならない。
・陽極合金の組成範囲は、62〜68w%のNi、24〜28w%のFe、6〜10w%のMn、0.01〜0.9w%のCu、0.3〜0.7w%のSiでなければならない。好ましい合金組成は、およそ65w%のNi、26.5w%のFe、7.5w%のMn、0.5w%のCu、0.5w%のSiである。・酸化性雰囲気における930〜980℃での陽極構造の直接の予備酸化処理は、Niフェライトタイプの活性混合酸化物層の形成をもたらすはずのものである。
・陽極は、合金成分の望ましくない拡散−化学的相互作用を伴うことなく、外側のCo酸化物コーティングとともに利用されることもできる。
【0047】
図3aおよび図3bは、本発明によるアルミニウムの電解採取のためにセルにおいて利用されることができる陽極10を概略的に示しており、その構造は国際公開第2004/074549号において既知である。
【0048】
この実施例において、陽極10は、プラス側ブスバーへの接続のための、鋳造物あるいは輪郭を描かれた支持物14に接続された、一連の長い一直線の陽極部材15を含んでいる。鋳造物あるいは輪郭を描かれた支持物14は、陽極部材15を電気的および機械的に接続するための下側の水平に広がる底部14aと、陽極10をプラス側ブスバーに接続するための細長い部分14bと、底部14aと細長い部分14bとの間の一対の側面の補強フランジ14cとを含む。
【0049】
陽極部材15は、底部14aを圧力ばめあるいは溶接によって陽極部材15の平らな部分15cに固定することができる。別の方法として、陽極部材15と、底部14aの対応する受け入れスロットとの間の接続は、陽極部材の縦運動のみを許可するために、例えば蟻継ぎのように、形作られることができる。
【0050】
陽極部材15は、例えば、その高さにわたり一定の幅のおおむね長方形の横断面を有する下部15aを有しており、この下部15aはまた大まかに三角形の横断面をもつテーパー上部15bによって上方へ広がるものである。それぞれの陽極部材15は、セルの動作の間の陽極の酸素発生のために電気化学的に活性である、平らな下側の酸化物表面16を有している。
【0051】
この発明によると、陽極部材15、とりわけそれらの下部15aは、本明細書に説明されている通り、ニッケル、鉄、マンガン、銅、およびシリコンの合金で作られている。陽極の寿命は、セリウム化合物、とりわけセリウムオキシフルオリドで作られる保護コーティングによって、増す可能性がある。
【0052】
この実施例において、陽極部材15は、部材間の隙間17によって互いに横方向に間隔があいている、同一平面状の配列の平行な棒の形状をしている。部材間の隙間17は、電解質の循環のため、そして、電気化学的に活性である表面16において放出される、陽極によって発生したガスの排出のために、流入穴を構成する。
【0053】
図2aおよび2bは、国際公開第2004/074549号からでも既知である、アルミニウム電解採取セルを示しており、該セルは、溶解アルミナを含む、氷晶石をベースとしたフッ化物含有溶融電解質5の中に、金属をベースとした一連の陽極10を有するものである。
【0054】
電解質5は、例えば、国際公開第2004/074549号で既知である、以下の表1から選択される組成を有することができる。
【0055】
【表1】

【0056】
例えば、電解質は次から成るものである:7から10重量%の溶解アルミナ、36から42重量%の、とりわけ36から38重量%のフッ化アルミニウム、39から43重量%のフッ化ナトリウム、3から10重量%、例えば5から7重量%のフッ化カリウム、2から4重量%のフッ化カルシウム、そして全体で0から3重量%の、もう一つあるいはそれ以上の構成物質。これは、電解質のおよそ8から15重量%とりわけおよそ8から10重量%の範囲である過剰なフッ化アルミニウム(AlF3)と、添加物とを含む、氷晶石をベースとした(Na3AlF6)溶融電解質に相当し、該添加物は、上記の量のフッ化カリウムとフッ化カルシウムを含むことができる。
【0057】
陽極10は、図1aと図1bで示される陽極と類似であることができる。代替的に、陽極は、垂直あるいは傾いていてよい。適切な代替的な陽極の設計は、上記の参考文献の中で開示されている。陽極はまた、ガス排出穴のない巨大な本体であることもできる。
【0058】
この実施例において、乾燥された陰極表面20は、上面が、アルミニウムに湿潤可能な層でコーティングされている、タイル21Aによって形成されている。それぞれの陽極10は、対応するタイル21Aと向かい合っている。適切なタイルは、国際公開第02/096830号(Duruz/Nguyen/de Nora)においてより詳細に開示されている。
【0059】
タイル21Aは、二つ一組で、セルを端から端へと横切るように広がって配置される一連の炭素陰極ブロック25のアルミニウムに湿潤可能な上面22上に置かれる。図2aと図2bで示されるように、二つ一組のタイル21Aは、中心のアルミニウム回収溝30に通じているアルミニウム回収路36を形成するために、間隔があいている。
【0060】
中心のアルミニウム回収溝30は、セルを端から端へと横切るように広がって配置される、二つ一組の陰極ブロック25の中あるいは間に位置付けられる。タイル21Aは、好ましくは、アルミニウムに湿潤可能な陰極表面20の表面領域を最大にするために、溝30の一部を覆う。
【0061】
セルは、突起やクラストのない稼働を可能にするために、十分に断熱されることができる。
【0062】
示されるセルは、断熱性耐火れんが製の外側の層と、炭素質材料製の内側の層とによって作られた側壁40を含んでおり、該内側の層は溶融電解質5およびその上の環境にさらされる。これらの側壁40は、タイル21Aと同じタイプのタイル21Bによって、溶融電解質5およびその上の環境に対して保護されている。陰極ブロック25は、溶融電解質5に耐性のある周囲のくさび41によって、側壁40に接続される。
【0063】
さらに、セルの電解質5上に、断熱カバー45が取り付けられる。このカバーは、熱損失を避けて、電解質の表面を融解状態に保持する。適切なカバーのさらなる詳細は、例えば国際公開第2003/02277号で開示される。
【0064】
図4aおよび図4bで示されるセルの動作において、例えば880℃から940℃の温度で溶融電解質5に溶けたアルミナは、陽極10と陰極表面20の間で電解され、稼動する陽極表面16上で酸素ガスを生み出し、またアルミニウムに湿潤可能な乾燥された陰極タイル21A上で溶融アルミニウムを生じさせる。陰極で生み出された溶融アルミニウムは、乾燥された陰極表面20上に流れて、アルミニウム回収路36に流れ出て、そして次に、その後のタッピングのために中心のアルミニウム回収溝30に流れ出る。
【0065】
本発明は、続く実施例において、および比較実施例を参照して、より詳細に説明されるであろう。
【実施例1】
【0066】
組成が、65.0+/−0.5w%のニッケル、7.5+/−0.5w%のマンガン、0.5+/−0.1w%の銅、0.5+/−0.1w%のシリコン、<0.01w%の炭素、および残りの均衡をとる鉄である、金属合金が、次のようなインベストメント鋳造によって準備された。
−指示される組成式にしたがって、(炭素を除く)さまざまな金属成分を混ぜることによって、およそ5kgの重さの合金が準備される。
−混合物は、およそ50℃のオーバーヒートに相当する1500℃で、セラミックライニングの施された黒鉛坩堝の中で真空下で溶融される。溶融された金属の塊は、ガス抜きを完了するために、この温度で、真空下でおよそ10分の間保たれた。
−セラミック混合物で作られた複数の鋳型は、直径が20mmで長さが250mmの一方が行き詰っている円筒形の形状を有するものであるが、同じ真空室において700℃で予熱された。
−鋳型は、液体金属で完全に満たされた。鋳込み操作が、真空室において、10分以内に行われた。
−鋳造物見本は、数時間の間の自然冷却を達成するために周囲の雰囲気に移す前に、真空下で固めることが可能であった。
【0067】
金属合金の冷却の後、棒は、鋳型から移動させられた。鋳込みの端に、漏斗が、金属の収縮によってシリンダー軸に沿って形成された。鋳込みの端に相当するサンプル部分は、いくばくかの多孔性を呈する可能性があるため、リサイクルのために除去された。合金棒は、それから、セラミック鋳型の痕跡を取り除くために、サンドブラストで仕上げられた。
【0068】
最終的な合金棒サンプルは、いかなる酸化の痕跡や欠陥もない、均一の灰色の金属表面を呈する。エッチングされた横断面の検査により、いかなる分離沈殿もない、高密度で均一の固溶体構造が示され、結晶粒の大きさは0.5から1.0cmの範囲であった。SEM(scanning electronic microscope:走査型電子顕微鏡)による、定量分析により、合金の所望の組成式が確認され、実験的密度は8.5g/cm3であった。
【実施例2】
【0069】
直径20mmで長さが20mmの陽極サンプルが、実施例1で説明されるように65w%のNi、26.5w%のFe、7.5w%のMn、0.5w%のCu、0.5w%のSiの組成式の合金棒から準備された。サンドブラスト仕上げの後、サンプルは、930℃で12時間の間、空気中で予備酸化され、加熱速度は300℃/時間に制御された。予備酸化の後、サンプルは、12時間にわたって炉の中で室温に冷却することが可能であった。
【0070】
最終的な酸化サンプルは、いかなる亀裂もない、均一の灰黒色の表面を呈した。横断面の検査により、45から55ミクロンの厚みの、付着性で均一の酸化物スケールが示された。酸化物スケールのSEM分析により、化学式Ni0.73Mn0.27Fe24の(Ni、Mn)フェライトに相当すべきものである、25w%のNi、9w%のMn、60w%のFe(Cu、Si検出不可)の平均金属組成が示された。酸化物相におけるMnとFeのより高い含有量は、Mnの外方拡散およびFeの優先的な酸化に起因するはずのものである。
【実施例3】
【0071】
水系めっき浴が、以下の組成にしたがって準備された:
−CoSO4・7H2O: 80g/リットル
−NiSO4・6H2O: 40g/リットル
−HBO3: 15g/リットル
−KCl: 15g/リットル
−pH: 4.5(H2SO4を用いて調節)
【0072】
めっき溶液は、冷却回路によって18〜20℃に保持された。純粋なCoおよび10%のNi−Sで作られた二つの離れた対電極は、2つの整流器に接続された。
【0073】
65w%のNi、26.5w%のFe、7.5w%のMn、0.5w%のCu、0.5w%のSiの組成式の陽極サンプルが、実施例2のように準備されサンドブラストで仕上げられた。めっき浴への浸水の直前に、陽極は、20%のHCI溶液の中で6分間エッチング処理が行われ、それから脱イオン水を用いてすすがれた。見本は、めっき槽の中に置かれた。2つの整流器の負出力は、サンプル接点に接続された。0.64Aと0.16Aの電流は、それぞれCo陽極およびNi陽極の整流器を用いて調整された。これは、コーティングされるべき合金サンプルでの0.8A、あるいは40mA/cm2の全電流、また80%のCo−20%のNi(所望のコーティング組成)の陽極溶解率に相当した。めっき操作は、一定の電流と温度で3時間の間、十分な撹拌下で行われた。
【0074】
めっきの後、全増量は2.5gで、99%の沈着効率に相当するものであり、平均の厚みは150〜160ミクロンであった。沈殿物のSEM分析は、18〜20w%のNiおよび80〜82w%のCoの組成範囲を確認した。
【0075】
コーティングされた陽極は、930℃で8時間の間、空気中で予備酸化され、加熱速度は300℃/時間に制御された。酸化の後、サンプルは、室温に瞬間冷却することを可能にするために、炉から930℃の温度で取り出された。酸化されたサンプルは、いかなる亀裂も気泡もない、均一の濃い灰色の表面を呈する。横断面の検査により、最初のコーティングの厚みのおよそ1/2の酸化深さが示された。SEM分析により、78から80w%のCo、18から20w%のNi、2から2.5w%のMn、そしてFeおよびCuは検出不可の、酸化物スケールの平均金属組成が示された。
【実施例4】
【0076】
実施例2で示されるように65w%のNi、26.5w%のFe、7.5w%のMn、0.5w%のCu、0.5w%のSiの合金組成式の予備酸化されるサンプルは、11w%の過剰なAlF3、7w%のKFおよび9.5w%のAl23を有する、氷晶石をベースとした融液を1.5kg含む、アルミニウム還元試験セルにおいて、酸素発生不活性陽極として利用された。高密度のアルミナ管で作られる側面のライニングが施された、円筒形の黒鉛坩堝が、電解セルとして利用された。陰極は、およそ2cmの深さの液体アルミニウムプールによって構成され、セル底部に置かれた。浴の温度は、外部の電気炉によって、930+/−5℃に保持および制御された。Al23の消費は、理論上の値の65%に相当する自動給送によって補われた。試験電流は、10.8Aで一定に保たれたが、これは1.2A/cm2の平均電流密度に相当するものあり、これは、試験陽極の効果的な活性表面(底表面+1/2の外側面)に基づくものである。
【0077】
200時間の試験期間の間のセル電圧記録は、浴の化学調整のための新たな粉末の付加が原因である温度損失の短い時間は除いて、4.1+/−0.1ボルトの安定した型を示した。
【0078】
200時間の後、陽極は、検査のためにセルから取り出された。陽極は、いくらかの固体の浴含有物をともなう、およそ1mmの厚みの酸化物スケールによって覆われていた。酸化物スケールは、直径2〜4mmの分散した小さなこぶを伴って多少でこぼこしていたが、亀裂や欠陥は一切観察されなかった。
【実施例5】
【0079】
(比較実施例)
直径20mmで長さ20mmの陽極サンプルが、65w%のNi、24.5w%のFe、10w%のCu、1.5w%の(Mn+Si)の組成式をもつ合金棒から準備された。サンプルは、実施例2のようにサンドブラストで仕上げられ、また予備酸化された。
【0080】
予備酸化されたサンプルは、実施例4で示されるように、アルミニウム還元セルにおいて、酸素発生不活性陽極として利用された。試験電流は、9.0Aで一定に保たれたが、これは1.0A/cm2の平均電流密度に相当するものであり、これは、試験陽極の効果的な活性表面(底表面+1/2の外側面)に基づくものである。
【0081】
200時間の試験期間の間のセル電圧記録は、4.0+/−0.1ボルトの比較的安定した間隔を示した。しかしながら6時間から24時間の短い断続的なセル電圧振動型が、15時間後、55時間後および90時間後などに観察された。電圧振動の振り幅は、4ボルトと8ボルトの間であり、2分から4分の頻度であった。
【0082】
セル電圧振動は、半導体ダイオードのn‐p接合の充放電サイクルに相応すると推定され、これは高電流密度で発生するCu拡散および高い酸素活量の結果生じる、n半導体相CuOの形成に起因するものである(図1参照)。
【符号の説明】
【0083】
5 フッ化物含有溶融電解質
10 陽極

14 支持物
14a 下側の水平に広がる底部
14b 細長い部分
14c 側面の補強フランジ

15 一連の長い一直線の陽極部材
15a 下部
15b テーパー上部
15c 平らな部分
16 平らな下側の酸化物表面、電気化学的に活性である表面、稼動する陽極表面

17 部材間の隙間
20 陰極表面
21A タイル
21B タイル
22 アルミニウムに湿潤可能な上面
25 炭素陰極ブロック
30 アルミニウム回収溝
36アルミニウム回収路
40 側壁
41周囲のくさび
45断熱カバー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】国際公開第2000/006803号
【特許文献2】国際公開第2003/078695号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物含有溶融電解質に溶けたアルミナの分解によってアルミニウムを電解採取するための、酸素発生金属陽極であり、基本的にニッケル、鉄、マンガン、選択自由に銅、およびシリコンから成る合金を含み、以下のような構成および相対的な比率を特徴とする、酸素発生金属陽極:
ニッケル(Ni) 62〜68w%
鉄(Fe) 24〜28w%
マンガン(Mn) 6〜10w%
銅(Cu) 0〜0.9w%
シリコン(Si) 0.3〜0.7w%、
そして場合により他の微量な元素を総量で0.5w%まで、ここで:
Ni/Feの重量比は、2.1から2.89、好ましくは2.3から2.6の範囲であり、
Ni/(Ni+Cu)の重量比は、0.98より大きく、
Cu/Niの重量比は、0.01未満であり、
そしてMn/Niの重量比は、0.09から0.15である。
【請求項2】
合金が以下から成ることを特徴とする、請求項1に記載の陽極:
ニッケル(Ni) 64〜66w%
鉄(Fe) 25〜27w%
マンガン(Mn) 7〜9w%
銅(Cu) 0〜0.7w%
シリコン(Si) 0.4〜0.6w%。
【請求項3】
合金がおよそ以下から成ることを特徴とする、請求項2に記載の陽極:
ニッケル(Ni) 65w%
鉄(Fe) 26.5w%
マンガン(Mn) 7.5w%
銅(Cu) 0.5w%
シリコン(Si) 0.5w%。
【請求項4】
合金表面が、ニッケルとマンガンの酸化物の固溶体(Ni、Mn)Oxを含む酸化物層を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の陽極。
【請求項5】
合金表面が、ニッケルフェライトを含む酸化物層を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の陽極。
【請求項6】
合金が、任意に予備酸化表面を伴うものであり、酸化コバルトCoOを含む外側コーティングで表面を覆われることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の陽極。
【請求項7】
セルに含有されるフッ化物含有溶融電解質に浸水可能であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載の少なくとも一つの陽極を含む、アルミニウム電解採取セル。
【請求項8】
溶融電解質が、870〜970℃、とりわけ910〜950℃の温度であることを特徴とする、請求項7に記載のセル。
【請求項9】
陽極表面に酸素を発生させ、また、陰極でアルミニウムを還元するために、フッ化物含有溶融電解質の中に浸される陽極と陰極の間に電解電流を流すことを含むことを特徴とする、請求項7または8に記載のセルの中でアルミニウムを生産するための方法。
【請求項10】
電流が、少なくとも1A/cm2、とりわけ少なくとも1.1あるいは少なくとも1.2A/cm2の陽極電流密度で流れることを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2012−506485(P2012−506485A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525522(P2011−525522)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061257
【国際公開番号】WO2010/026131
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(511025400)リオ ティント アルカン インターナショナル リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】RIO TINTO ALCAN INTERNATIONAL LIMITED
【Fターム(参考)】