説明

アルミニウム除去装置

【課題】 アルマイト処理工程の二次電解着色液浴の老化液からアルミニウムを除去するアルミニウム除去装置において、濾過装置の洗浄やフィルターの交換が容易に行なえてメンテナンス性が高いアルミニウム除去装置を提供する。
【解決手段】 アルミニウム除去装置を液循環路4と、循環用ポンプ5と、フィルターハウジング7にカートリッジフィルター8を内装した濾過装置6とから構成し、アルミニウムが中和析出処理された老化液10を濾過装置6に導入し、老化液内に残留している余分なアルミニウムを濾過装置内のカートリッジフィルター8に通し、独立したフィルターハウジング7内に1つのカートリッジフィルター8を内装した複数の濾過装置6を、液循環路4中に並列に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム除去装置に関するものであって、詳しくは、アルマイト処理工程の二次電解着色液浴から析出したアルミニウムを回収、除去するアルミニウム除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材は、アルミサッシ等の建築材料、車両、機械等の種々の部品や、電気製品、事務用品等の多くの分野で利用されており、耐蝕性や意匠性を向上させるために、表面に皮膜を形成するアルマイト処理と称される表面処理が行われている。
【0003】
アルマイト処理工程は、特開2001−107293や、特開2002−256490に記載されているように皮膜形成工程として、陽極酸化処理(一次電解)と電解着色処理(二次電解)の2つの処理工程がある。陽極酸化処理は、耐蝕性を改善するために表面に陽極酸化皮膜を形成する処理であり、一方の電解着色処理は、意匠性を向上させるために表面に着色皮膜を形成する処理で、アルマイトの二次電解着色とも呼ばれている。
【0004】
上記電解着色処理においては、着色皮膜の品質に影響を及ぼさないように、Ni塩・Sn塩等の金属塩を溶解した溶液を浴(槽)に入れた二次電解着色液浴から、電解着色液中のアルミニウム濃度がある一定の値、通常はアルミニウム15〜35g/リットル程度に達した老化液を抜き出して老化液中のアルミニウムを中和析出し、製品品質に有害な蓄積不純物のアルミニウムを回収し除去する必要がある。
【0005】
溶液中から金属塩を回収する一般的な方法として、特開昭51−13161にアルミニウム加工工程から排出されるプロセス排水から、カートリッジフィルターを用いてアルミニウムを回収する方法が開示されている。これは、プロセス排水中のアルミニウムを中和析出し、カートリッジフィルターで濾過し、プロセス排水中に残留している余分なアルミニウムや有価金属をカートリッジフィルターに回収し、除去する技術である。
【0006】
尚、上記特許文献はアルミニウム材表面処理の美観向上に関する技術や、アルミニウム加工工程において排出されるプロセス排水から有価金属を効率よく回収する技術であり、本願発明とは目的や課題を異にしている。したがって明細書に記載すべき本願発明の先行技術文献はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3は、従来のアルミニウム除去装置1を含むアルマイト処理工程の構成ブロック図で、アルミニウム除去装置1は、主処理槽2に入った二次電解着色液浴9から、アルミニウムが析出装置12で中和析出処理された老化液10を溜める予備槽3に繋がった液循環路4と、循環用ポンプ5と、及びカートリッジフィルター8をフィルターハウジング7に内装した濾過装置6とから構成されている。予備槽3中の老化液10は、循環用ポンプ5によって矢印で示すように循環し、濾過装置6でアルミニウムが除去され再生液となって再び予備槽3に帰還し、再生液は、予備槽3から主処理槽2に戻され、再び二次電解着色液浴9となる。
【0008】
濾過装置6は、内部を洗浄して蓄積したアルミニウムを定期的に除去し、目詰まりする前にカートリッジフィルター8を洗浄、あるいは交換する必要がある。従来の濾過装置6は、図4に示すように1つのフィルターハウジング7内に、複数のカートリッジフィルター8を内装する構造であったので、カートリッジフィルター交換の際に、運転を停止する必要があった。また、カートリッジフィルター8がフィルターハウジング内に内装されているので、着脱が容易でないといった問題があった。このため、繁雑期などに上記メンテナンスが怠られることがあり、カートリッジフィルター8の目詰まりによるフィルターハウジング内の圧力変動によりカートリッジフィルター8が変形し、その都度、カートリッジフィルター8の交換が必要になっていた。
【0009】
本発明は、従来技術における上記問題点を解決するもので、濾過装置の洗浄や、フィルターの交換が容易に行なえてメンテナンス性が高いアルミニウム除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、アルマイト処理工程の二次電解着色液浴の老化液からアルミニウムを除去する装置であって、該装置を液循環路と、循環用ポンプと、ハウジングにフィルターを内装した濾過装置とから構成し、アルミニウムが中和析出処理された老化液を濾過装置に導入し、老化液内に残留している余分なアルミニウムを濾過装置内のフィルターに通して除去するアルミニウム除去装置において、前記濾過装置を独立したハウジング内に単独のフィルターを内装した複数の濾過装置で構成し、これらの濾過装置を液循環路中に並列に配設したことを特徴とする。
【0011】
上記発明において、より具体的には、前記ハウジングは透明な樹脂製で、前記フィルターは円筒状のカートリッジフィルターであることを特徴とする。さらに、前記液循環路の濾過装置の前後に止水弁を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルミニウム除去装置によれば、フィルターの着脱が容易で、濾過装置内部の洗浄が容易に行なえることができてメンテナンス性が高い。また、アルマイト化装置の運転を停止することなく洗浄、フィルター交換が行なえるので作業効率がよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のアルミニウム除去装置を含むアルマイト処理工程の構成ブロック図である。
【図2】本発明のアルミニウム除去装置の濾過装置の模式図である。
【図3】従来のアルミニウム除去装置を含むアルマイト処理工程の構成ブロック図である。
【図4】従来のアルミニウム除去装置の濾過装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアルミニウム除去装置の実施形態を説明する。まず、アルマイト処理工程及びアルミニウム除去装置の構成について図1,2を参照しながら説明する。
【0015】
アルミニウム除去装置1は、アルマイト処理工程の二次電解着色液浴9の老化液10からアルミニウムを除去する装置であり、従来の装置と同様に、主処理槽2入った二次電解着色液浴9からアルミニウムを中和析出処理した老化液10を溜める予備槽3に繋がった液循環路4と、循環用ポンプ5と、フィルターハウジング7にカートリッジフィルター8を内装した濾過装置6とから構成されている。そして、老化液10を濾過装置6に導入し、老化液10内に残留している余分なアルミニウムを濾過装置6内のカートリッジフィルター8に通して除去する装置である。ここで、主処理槽2と予備槽3の間にある装置12は、老化液10からアルミニウムを中和析出処理する析出装置である。
【0016】
アルミニウム除去装置1には、循環用ポンプ5の作用で予備槽3を出た老化液10が、矢印で示すように、循環用ポンプ5から濾過装置6を経由して循環し、予備槽3に戻るように配管された液循環路4が形成されている。濾過装置6は、独立したフィルターハウジング7内に単独のカートリッジフィルター8を内装しており、アルミニウム除去装置1は、この複数の濾過装置6を、液循環路4中に並列に配設してある。
【0017】
アルミニウム除去装置1は、濾過装置6を独立したフィルターハウジング7内に単独のカートリッジフィルター8を内装した複数の濾過装置6で構成し、これらの濾過装置6を液循環路4中に並列に配設している。
【0018】
本実施形態では、液循環路4の濾過装置6の前後に夫々止水弁11を備えている。これらは、濾過装置6内部の洗浄時や、カートリッジフィルター8の交換時に閉めて、濾過装置6への老化液10の循環を停止させるためのものである。
【0019】
また、本実施形態では、フィルターハウジング7は透明な樹脂製であり、より具体的には、ABS樹脂で成型されたヘッド部と、ABS樹脂で成形のシェル部を、ネジ込みで取り付けるフィルターハウジングである。さらに、カートリッジフィルター8は、ポリプロピレン製の円筒状フィルターである。より具体的には、ワインドカートリッジフィルター(商品名)などを、洗浄して再使用する。
【0020】
次に本実施形態の作用効果について説明する。電解着色処理(二次電解)工程では、主処理槽2内の二次電解着色液浴9中のアルミニウム濃度がアルミニウム15〜35g/リットル程度に達すると、老化液10は主処理槽2から一旦予備槽3に溜められる。この時、予備槽3には、アルミニウムが析出装置12で中和析出処理された老化液10が溜められる。アルミニウム除去装置1は、この老化液10を循環用ポンプ5の作用によって液循環路4に導入し、独立したフィルターハウジング7を持つ濾過装置6に順次送り込む。この時、図4に矢印で示したように、濾過装置6に入った老化液10は、カートリッジフィルター8の外周から浸透し、カートリッジフィルター8の中心の通孔から排出されて濾過される。アルミニウムが除去された再生液は、再び液循環路3に入って予備槽3に戻される。この再生液は、予備槽3から主処理槽2に戻され、再び二次電解着色液浴9となり、再利用される。
このようにしてアルミニウム除去装置1は、主処理槽2内の二次電解着色液浴9のアルミニウム濃度を一定に保っている。
【0021】
濾過装置6は、個々に独立したハウジングなので、カートリッジフィルター8の着脱が容易で、ハウジング内部の洗浄やカートリッジフィルター8の着脱が容易に行なえる効果がある。よってカートリッジフィルター8が目詰まりし、変形するまで使用されることが無くなり、カートリッジフィルター8を洗浄して再使用が可能で経済的である。
【0022】
濾過装置6の内部に蓄積したアルミニウムを洗浄、あるいはフィルター交換する際には、当該濾過装置8の前後の止水弁11を閉めて、当該濾過装置6の老化液10の循環のみを止めて洗浄、フィルター交換を行なう。この時、他の濾過装置6の循環は保たれ、老化液10の濾過が行なわれるため、アルミニウム除去装置1の運転を停止することなく洗浄、フィルター交換が行なえるので作業効率がよい。また、フィルターハウジング7は透明な樹脂製で、内部の視認性に優れメンテナンス時期が判りやすい。さらに、カートリッジフィルター8は、ポリプロピレン製の円筒状フィルターであるので、安価であり、洗浄して再使用が可能であるので経済的で、フィルターのランニングコストを抑えることができる。
【0023】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施することができる。
例えば、本発明の実施形態でカートリッジフィルター8は、ポリプロピレン製の円筒状フィルターであるが、多層構造の円筒状フィルターでもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 アルミニウム除去装置
4 液循環路
5 循環用ポンプ
6 濾過装置
7 フィルターハウジング
8 カートリッジフィルター
9 二次電解着色液浴
10 老化液
11 止水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルマイト処理工程の二次電解着色液浴の老化液からアルミニウムを除去する装置であって、該装置を液循環路と、循環用ポンプと、ハウジングにフィルターを内装した濾過装置とから構成し、アルミニウムが中和析出処理された老化液を濾過装置に導入し、老化液内に残留している余分なアルミニウムを濾過装置内のフィルターに通して除去するアルミニウム除去装置において、
前記濾過装置を独立したハウジング内に単独のフィルターを内装した複数の濾過装置で構成し、これらの濾過装置を液循環路中に並列に配設したことを特徴とするアルミニウム除去装置。
【請求項2】
前記ハウジングは透明な樹脂製で、前記フィルターは円筒状のカートリッジフィルターであることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム除去装置。
【請求項3】
前記液循環路の前記濾過装置の前後に止水弁を備えていることを特徴とする請求項1または2記載のアルミニウム除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−80112(P2011−80112A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233177(P2009−233177)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】