説明

アルミノシリケートを含む新規な構造体、その製造方法およびその用途

【目的】 固体酸触媒として有効な結晶性多孔質アルミノシリケートを含む新規な構造体よなる芳香族化反応用触媒、および前記触媒を用いる芳香族炭化水素の製造方法を提供する。
【解決手段】 構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する構造体に亜鉛および/またはガリウムが担持した芳香族化反応用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミノシリケートを含む新規な構造体、その製造方法およびその用途に関する。さらに詳しくは、構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在するアルミノシリケートを含む構造体、その製造方法およびその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結晶性多孔質アルミノシリケートはゼオライトの一種であり、その組成は一般に下記式(1)で表される。
xM2/nO・Al・ySiO・zHO (1)
(ここで、nは陽イオンMの原子価、xは0.8〜2の範囲の数、yは2以上の数、zは
0以上の数である。)
その基本構造は、珪素を中心として4つの酸素がその頂点に配置したSiOで示される四面体構造と、この珪素の代わりにアルミニウムがその中心にあるAlOで示される四面体とが、酸素/(珪素+アルミニウム)の原子比が2となるようにお互いに酸素を共有して、規則性のある三次元的に結合したものである。
【0003】
その結果、この四面体の結合方式の違いによって大きさ、形の異なる細孔を有する三次元的骨格構造が形成される。
【0004】
また、結晶性多孔質アルミノシリケートは固体酸性を持つことが知られている。アルミニウムが中心にある四面体の電子価は負に帯電しており、プロトン、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の陽イオンと結合することで電気的に中和されている。特にプロトンと結合した場合では、ブレンステッド酸性を示すことから、結晶性多孔質アルミノシリケートは固体酸触媒として使用されている。即ち、接触分解、水素化分解、脂肪族や芳香族の異性化反応、オレフィンやパラフィンの芳香族化および不均化反応等の触媒として用いられる。
【0005】
結晶性多孔質アルミノシリケートは、珪素源、アルミニウム源、アルカリ金属成分、および含窒素または含リン化合物等の構造規定剤を用いて調製した水性スラリーを水熱合成して得られる。従来の製造方法では、得られる結晶性多孔質アルミノシリケートは粉体であり、アルミノシリケートを含む構造体を製造する場合には、結晶性多孔質アルミノシリケート単独では成型性が悪いために、得られた粉体に無機バインダー添加し、アルミノシリケートを含む構造体を製造する必要がある。
【0006】
ゼオライトをバインダーとしたアルミノシリケートを含む構造体の製造方法として、例えば、最初にゼオライトの第一結晶を製造し、この結晶体粉体をシリカゲルまたはゾルと混合・成型した後、添加したシリカゲルまたはゾルをゼオライト化する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
バインダーを含まない結晶性多孔質アルミノシリケート構造体の製造方法として、例えば、珪素源としてシリカ構造体を用い、アルミン酸塩、アルカリ金属成分、テトラアルキルアンモニウム成分をシリカ構造体に担持させ、飽和水蒸気と接触させることで、ZSM−5型構造を有する結晶性アルミノシリケートの製造方法が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
これらの方法では、アルミニウム原子は構造体全体に存在しており、その結果、酸点も構造体全体に存在する。
【0009】
ゼオライトを触媒構造体表層部に存在させる方法としては、例えば金属触媒、合金触媒、無機酸化物触媒等の粒状固体触媒の表層部に分子篩作用があり、実質的に不活性なゼオライト膜で表面全体がコーティングされている触媒が挙げられる(例えば、特許文献3参照)。この場合、構造体表面のゼオライト層は酸点を持たない不活性なシリカライトである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2001−504084号公報(例えば第10頁参照。)
【特許文献2】特許第3442348号公報(例えば第3頁参照。)
【特許文献3】特開2003−62466号公報(例えば第3頁参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の結晶性多孔質アルミノシリケートは、構造体全体または構造体内部に酸点等の活性点が存在するため、固体酸触媒反応における反応原料および反応生成物が、細孔を通り構造体内部まで進入する。したがって、反応原料および反応生成物の構造体内部の滞留時間が長くなり、活性点等で過剰反応が進行し、目的物の選択性が低下、コーク等の高沸物が触媒の活性点および細孔部に析出し、活性点の被毒や細孔の閉塞を生じ、結果的に触媒活性を低下させ、さらに触媒寿命の低下を招く等の問題が発生する。
【0012】
また、特許文献3の方法では、触媒の活性点の上に分子篩作用があり実質的に不活性なゼオライト膜で表面全体がコーティングされているため、反応における反応原料および反応生成物がゼオライト細孔を通り構造体内部に進入する必要がある。この場合も、反応原料および反応生成物の構造体内部の滞留時間が長くなり、目的物の選択性が低下、コーク等の高沸物が析出し、活性点の被毒や細孔の閉塞を生じ、結果的に触媒活性を低下させ、さらに触媒寿命の低下を招く等の問題が発生する。
【0013】
これらの問題点を解決するためには、反応生成物が酸点、すなわち、活性点のある場所から即座に離脱する構造体が必要となる。
【0014】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は固体酸触媒として有効な構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが、構造体内部に無機支持体が存在する構造体、その製造方法およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、アルミノシリケートを含有する新規な構造体を見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する構造体、その製造方法およびその用途に関するものである。
【0017】
本発明のアルミノシリケートを含有する新規な構造体は、構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する構造を有することを特徴とする。
【0018】
ここで、本発明における構造体とは、自重や外力などの荷重に抵抗できるように成形した物体のことをいう。
【0019】
本発明の結晶性多孔質アルミノシリケートは、ゼオライトおよびゼオライト類似物質の一種であり、特に限定するものではなく、その構造は国際ゼオライト学会が規定する構造コードでは、例えば、ABW、AFG、ANA、*BEA、BIK、BOG、BRE、CAN、CAS、CFI、CHA、DAC、DDR、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GME、GOO、HEU、IFR、ITE、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LTA、LTL、LTN、MAZ、MEI、MEL、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAT、NES、NON、OFF、−PAR、PAU、PHI、RHO、RTS、SFE、SFF、SFG、SOD、SST、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UFI、VET、VFI、−WEN、YUG等が挙げられる。固体酸触媒として有効なゼオライトおよびゼオライト類似物質であり、さらに後記のオレフィンの芳香族化における芳香族炭化水素の収率が高いことから、好ましくはANA、*BEA、CAS、CFI、DDR、EMT、EUO、FAU、FER、ITE、LEV、LTA、MAZ、MEI、MEL、MFI、MFS、MOR、MOS、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NES、NON、OFF、SFEl、SFF、SFG、SSY、STF、STT、TON、VFI等が挙げられ、さらに好ましくはMFIが挙げられる。
【0020】
本発明の無機支持体は、特に限定されるものではなく、例えば、結晶性多孔質シリケート、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、窒化珪素、活性炭、粘土鉱物等が挙げられる。これらのうち、構造体の安定性の面から結晶性多孔質シリケートが好ましく用いられる。
【0021】
ここで、無機支持体に好ましく用いられる結晶性多孔質シリケートとはゼオライトおよびゼオライト類似物質の一種であり、その基本構造は、珪素を中心として4つの酸素がその頂点に配置したSiOで示される四面体構造からなる規則性のある三次元的に結合したものである。その結果、この四面体の結合方式の違いによって大きさ、形の異なる細孔を有する三次元的骨格構造が形成される。また、結晶性多孔質シリケートは固体酸性を持たないことが知られている。
【0022】
本発明の無機支持体に好ましく用いられる結晶性多孔質シリケートは、特に限定するものではなく、その構造は国際ゼオライト学会が規定する構造コードでは、例えば、AST、*BEA、CAS、CFI、CON、DDR、DOH、EUO、FAU、FER、GON、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、FER、GON、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、LEV、MAZ、MEI、MEL、MEP、MFI、MFS、MOS、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NES、NON、OFF、RTE、RTH、RUT、SFE、SFF、SFG、SGT、SSY、STF、STT、TON、VET、VFI、YUG等が挙げられる。本発明の構造体の合成が容易で、しかも構造体の安定性がさらに高いことから、好ましくは*BEA、CAS、CFI、DDR、EUO、FAU、FER、ITE、LEV、MAZ、MEI、MEL、MFI、MFS、MOS、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NES、NON、OFF、SFEl、SFF、SFG、SSY、STF、STT、TON、VFI等が挙げられ、より好ましくはMFIが挙げられる。
【0023】
本発明の構造体では、構造体表層部の結晶性多孔質アルミノシリケートが存在する層の厚さは、好ましくは構造体外表面から1〜1000μm、さらに好ましくは1〜500μmである。
【0024】
本発明の構造体では、構造体表層部の結晶性多孔質アルミノシリケートのアルミニウム/珪素比(原子比)は、結晶化度の高い構造体を得ることができることから、好ましくは0.0001〜1、さらに好ましくは0.0005〜0.5である。
【0025】
本発明の構造体では、構造体表層部を除く内部の層の無機支持体は、実質的にアルミニウムを含まない。
【0026】
本発明の構造体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、図1〜4で示されるような球状、楕円状、円柱状、中空円柱状、板状、シート状、ハニカム状等が挙げられる。これらのうち、十分な反応活性があり、副反応、および、コーキングを抑制することができることから、好ましくは球状、楕円状、円柱状、中空円柱状、さらに好ましくは球状が挙げられる。
【0027】
また、本発明の構造体の大きさには、特に制限されるものではなく、例えば、十分な反応活性があり、副反応およびコーキングを抑制することができることから、好ましくは0.1〜100mmの範囲、さらに好ましくは0.9〜10mmの範囲の構造体が挙げられる。
【0028】
本発明の構造体において、バインダーの有無に特に制限はないが、後記のオレフィンの芳香族化反応活性が維持できること、さらに副反応およびコーキングを抑制することができることから、バインダーを含まないことが好ましい。
【0029】
本発明の構造体はいかなる方法により製造されても差し支えはなく、例えば、(1)アルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物、必要に応じ含窒素または含リン化合物等の構造規定剤をシリカ構造体に含浸または担持させた後、アルミニウム源をシリカ構造体の表層部に担持させ、必要に応じ再度含窒素または含リン化合物等の構造規定剤をシリカ構造体に含浸または担持させた後、水蒸気、または必要に応じ含窒素若しくは含リン化合物等の構造規定剤を含んだ水蒸気に接触させ結晶化処理を行う方法、(2)無機支持体を、アルカリ金属、必要に応じ含窒素または含リン化合物等の構造規定剤を含んだシリカ−アルミナゾルの中に添加し、水熱処理により結晶化する方法、(3)無機支持体表層部にアルカリ金属、必要に応じ含窒素または含リン化合物等の構造規定剤を含んだシリカ−アルミナゾルを塗布し、水蒸気、または必要に応じ含窒素若しくは含リン化合物等の構造規定剤を含んだ水蒸気に接触させ結晶化処理を行う方法等の製造方法により製造することができる。構造体の表層部に担持されるアルミニウム源が内部に拡散しにくいことから、(1)の方法が好ましく用いられる。
【0030】
本発明において、(1)の方法をさらに詳しく説明すると、シリカ構造体にアルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物、必要に応じ含窒素または含リン化合物等の構造規定剤を含浸または担持させた後、アルミニウム源をシリカ構造体の表層部に担持させ、乾燥の後、必要に応じ含窒素または含リン化合物等の構造規定剤をシリカ構造体に含浸または担持させ、乾燥した後、水蒸気、または必要に応じ含窒素若しくは含リン化合物等の構造規定剤を含んだ水蒸気に接触させ結晶化処理を行い、構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在することからなる構造体を得る。さらに、必要に応じ、焼成、イオン交換を行っても良い。
【0031】
本発明の方法で使用される珪素源は、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ構造体を使用することができ、市販のシリカビーズを用いることができる。シリカ構造体としては、結晶化度の高い構造体を得ることができることから、好ましくは表面積が5〜1000m/g、さらに好ましくは10〜500m/gのものが使用される。
【0032】
また、シリカ構造体の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、球状、楕円状、円柱状、中空円柱状、板状、シート状、ハニカム状等が使用される。十分な反応活性があり、副反応、および、コーキングを抑制することができることから、好ましくは球状、楕円状、円柱状、中空円柱状、さらに好ましくは球状が使用される。
【0033】
また、シリカ構造体の粒子径の大きさは、特に制限されるものではなく、例えば、好ましくは0.1〜100mmの範囲、さらに好ましくは0.9〜10mmの範囲のものが使用される。
【0034】
本発明の方法で使用されるアルミニウム源は、特に限定されるものではないが、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム等のアルミニウム塩類;アルミン酸リチウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸ルビジウム、アルミン酸セシウム等のアルミン酸塩類;アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類等が使用される。構造体の表層部に担持されるアルミニウム源が内部に拡散しにくいことから、好ましくは、アルミニウム塩類が、さらに好ましくは、硝酸アルミニウムが使用される。
【0035】
本発明の方法で使用されるアルカリ金属は、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等の水酸化物類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等の炭酸塩類;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等類の酢酸塩類;塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム等の塩化物類;硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム等の硝酸塩類が使用される。水酸化物以外のアルカリ金属成分を使用する場合には、アルミニウム源をシリカ構造体に担持させる前に焼成を行い、酸化物にすることが好ましい。
【0036】
本発明で使用される塩基性の含窒素化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、ピリジン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペプタン、ジアミンヘキサン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシシルアミン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチル−n−プロピルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル−n−ペンチルアミン、ジメチル−n−ヘキシルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルメチルアミン、ジ−n−プロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルメチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ペンチルメチルアミン、ジ−n−ヘキシルメチルアミン、ジフェニルメチルアミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、1−n−プロピルピロリジン、1−イソプロピルピロリジン、1−n−ブチルピロリジン、1−イソブチルピロリジン、1−n−ペンチルピロリジン、1−n−ヘキシルピロリジン、1−フェニルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、1−n−プロピルピペリジン、1−イソプロピルピペリジン、1−n−ブチルピペリジン、1−イソブチルピペリジン、1−n−ペンチルピペリジン、1−n−ヘキシルピペリジン、1−フェニルピペリジン、ピロール、1−メチルピロール、1−エチルピロール、1−n−プロピルピロール、1−イソプロピルピロール、1−n−ブチルピロール、1−イソブチルピロール、1−n−ペンチルピロール、1−n−ヘキシルピロール、1−フェニルピロール、ピリジン、1−メチルピリジン、1−エチルピリジン、1−n−プロピルピリジン、1−イソプロピルピリジン、1−n−ブチルピリジン、1−イソブチルピリジン、1−n−ペンチルピリジン、1−n−ヘキシルピリジン、1−フェニルピリジン等の有機アミン化合物類;テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−プロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトライソブチルアンモニウム、テトラ−n−ペンチルアンモニウム、テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリメチル−n−プロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、トリメチル−n−ブチルアンモニウム、トリメチルイソブチルアンモニウム、トリメチル−n−ペンチルアンモニウム、トリメチル−n−ヘキシルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、ジメチルジアンモニウム、ジメチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジメチルジイソプロピルアンモニウム、ジメチルジ−n−ブチルアンモニウム、ジメチルジイソブチルアンモニウム、ジメチルジ−n−ペンチルアンモニウム、ジメチルジ−n−ヘキシルアンモニウム、ジメチルジフェニルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、メチルトリアンモニウム、メチルトリ−n−プロピルアンモニウム、メチルトリイソプロピルアンモニウム、メチルトリ−n−ブチルアンモニウム、メチルトリイソブチルアンモニウム、メチルトリ−n−ペンチルアンモニウム、メチルトリ−n−ヘキシルアンモニウム、メチルトリフェニルアンモニウム、ヒドロキシメチルトリメチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、3−ヒドロキシ−n−プロピルトリメチルアンモニウム、4−ヒドロキシ−n−ブチルトリメチルアンモニウム、5−ヒドロキシ−n−ペンチルトリメチルアンモニウム、6−ヒドロキシ−n−ヘキシルトリメチルアンモニウム、3−ヒドロキシフェニルトリメチルアンモニウム等のアンモニウム塩の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等の塩類が使用される。構造体の表層部に担持されるアルミニウム源が内部に拡散しにくいことから、好ましくは、アンモニウム塩類の水酸化物が使用される。
【0037】
本発明で使用される構造規定剤は、特に限定されるものではないが、例えば、含窒素または含リン化合物が挙げられ、より具体的な含窒素または含リン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、ピリジン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペプタン、ジアミンヘキサン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシシルアミン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチル−n−プロピルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル−n−ペンチルアミン、ジメチル−n−ヘキシルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルメチルアミン、ジ−n−プロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルメチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ペンチルメチルアミン、ジ−n−ヘキシルメチルアミン、ジフェニルメチルアミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、1−n−プロピルピロリジン、1−イソプロピルピロリジン、1−n−ブチルピロリジン、1−イソブチルピロリジン、1−n−ペンチルピロリジン、1−n−ヘキシルピロリジン、1−フェニルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、1−n−プロピルピペリジン、1−イソプロピルピペリジン、1−n−ブチルピペリジン、1−イソブチルピペリジン、1−n−ペンチルピペリジン、1−n−ヘキシルピペリジン、1−フェニルピペリジン、ピロール、1−メチルピロール、1−エチルピロール、1−n−プロピルピロール、1−イソプロピルピロール、1−n−ブチルピロール、1−イソブチルピロール、1−n−ペンチルピロール、1−n−ヘキシルピロール、1−フェニルピロール、ピリジン、1−メチルピリジン、1−エチルピリジン、1−n−プロピルピリジン、1−イソプロピルピリジン、1−n−ブチルピリジン、1−イソブチルピリジン、1−n−ペンチルピリジン、1−n−ヘキシルピリジン、1−フェニルピリジン等の有機アミン化合物類;テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−プロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトライソブチルアンモニウム、テトラ−n−ペンチルアンモニウム、テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリメチル−n−プロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、トリメチル−n−ブチルアンモニウム、トリメチルイソブチルアンモニウム、トリメチル−n−ペンチルアンモニウム、トリメチル−n−ヘキシルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、ジメチルジアンモニウム、ジメチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジメチルジイソプロピルアンモニウム、ジメチルジ−n−ブチルアンモニウム、ジメチルジイソブチルアンモニウム、ジメチルジ−n−ペンチルアンモニウム、ジメチルジ−n−ヘキシルアンモニウム、ジメチルジフェニルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、メチルトリアンモニウム、メチルトリ−n−プロピルアンモニウム、メチルトリイソプロピルアンモニウム、メチルトリ−n−ブチルアンモニウム、メチルトリイソブチルアンモニウム、メチルトリ−n−ペンチルアンモニウム、メチルトリ−n−ヘキシルアンモニウム、メチルトリフェニルアンモニウム、ヒドロキシメチルトリメチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、3−ヒドロキシ−n−プロピルトリメチルアンモニウム、4−ヒドロキシ−n−ブチルトリメチルアンモニウム、5−ヒドロキシ−n−ペンチルトリメチルアンモニウム、6−ヒドロキシ−n−ヘキシルトリメチルアンモニウム、3−ヒドロキシフェニルトリメチルアンモニウム等のアンモニウム塩の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等の塩類;テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラ−n−プロピルホスホニウム、テトライソプロピルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム、テトライソブチルホスホニウム、テトラ−n−ペンチルホスホニウム、テトラ−n−ヘキシルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、トリメチルエチルホスホニウム、トリメチルエチルホスホニウム、トリメチル−n−プロピルホスホニウム、トリメチルイソプロピルホスホニウム、トリメチル−n−ブチルホスホニウム、トリメチルイソブチルホスホニウム、トリメチル−n−ペンチルホスホニウム、トリメチル−n−ヘキシルホスホニウム、トリメチルフェニルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウム、ジメチルジホスホニウム、ジメチルジ−n−プロピルホスホニウム、ジメチルジイソプロピルホスホニウム、ジメチルジ−n−ブチルホスホニウム、ジメチルジイソブチルホスホニウム、ジメチルジ−n−ペンチルホスホニウム、ジメチルジ−n−ヘキシルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、メチルトリホスホニウム、メチルトリ−n−プロピルホスホニウム、メチルトリイソプロピルホスホニウム、メチルトリ−n−ブチルホスホニウム、メチルトリイソブチルホスホニウム、メチルトリ−n−ペンチルホスホニウム、メチルトリ−n−ヘキシルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、ヒドロキシメチルトリメチルホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリメチルホスホニウム、3−ヒドロキシ−n−プロピルトリメチルホスホニウム、4−ヒドロキシ−n−ブチルトリメチルホスホニウム、5−ヒドロキシ−n−ペンチルトリメチルホスホニウム、6−ヒドロキシ−n−ヘキシルトリメチルホスホニウム、3−ヒドロキシフェニルトリメチルホスホニウム等のホスホニウム塩の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等の塩類が使用される。これらの構造規定剤の中でも結晶化度の高い構造体を得ることができることから、好ましくは、有機アミン化合物類、アンモニウム塩類が使用される。
【0038】
本発明において、珪素源であるシリカ構造体へのアルミニウム源、アルカリ成分、塩基性の含窒素化合物、構造規定剤の含浸または担持の順序は、特に限定されない。構造体の表層部に担持されるアルミニウム源が内部に拡散しにくいことから、アルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物、構造規定剤、アルミニウム源の順もしくはアルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物、アルミニウム源、構造規定剤の順が好ましい。アルカリ金属の担持は、アルミニウム源担持後に行っても良い。
【0039】
本発明において、珪素源であるシリカ構造体へのアルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物の担持方法は、特に限定されるものではないが、シリカ担体等に物質を担持させる従来公知の方法、例えば、含浸法、沈着法、イオン交換法等が用いられる。必要であれば、乾燥、焼成を行っても良い。珪素源であるシリカ構造体へのアルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物の担持量は、制限されるものではないが、結晶化度の高い構造体を得ることができることから、例えば、アルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物/珪素比(原子比)で0.00015〜1.5が好ましく、前記効果に加えてさらに構造体の表層部に担持されるアルミニウム源が内部に拡散しにくいことから、より好ましくは0.00075〜0.75の範囲である。
【0040】
本発明において、珪素源であるシリカ構造体への構造規定剤の担持方法は、特に限定されるものではないが、シリカ担体等に物質を担持させる従来公知の方法、例えば、含浸法、沈着法、イオン交換法等が用いられる。構造規定剤の含浸量、または、担持量は、構造規定剤/珪素比(モル比)で0〜1.0の範囲であることが好ましい。
【0041】
本発明において、珪素源であるシリカ構造体へのアルミニウム源の担持方法は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム源を溶媒に溶解させ、加温し、先に示したアルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物を含浸または担持したシリカ担体を瞬時に添加し、加熱攪拌する方法が挙げられる。該溶媒は、アルミニウム源が溶解すれば如何なる溶媒でもよく、例えば水、メタノール、エタノール等のアルコール類を用いることができる。該溶媒の量は、特に制限されるものではないが、例えば、構造体の表層部に担持されるアルミニウム源が内部に拡散しにくいことから、好ましくは、珪素源であるシリカ構造体の細孔容積以上であり、さらに好ましくは、珪素源であるシリカ構造体の細孔容積の1〜5倍量である。アルミニウム源を溶解した溶液の加熱温度は、特に制限されるものではないが、例えば、構造体の表層部に担持されるアルミニウム源が内部に拡散しにくいことから、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは60〜95℃である。加熱撹拌温度は、特に制限されるものではないが、例えば、構造体の表層部に担持されるアルミニウム源が内部に拡散しにくいことから、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは60〜95℃である。加熱撹拌時間は、特に制限されるものではないが、例えば、構造体の表層部に担持するアルミニウム源が内部に拡散しにくいことから、好ましくは1分から10時間、さらに好ましくは5分から5時間である。珪素源であるシリカ構造体に担持されたアルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物とアルミニウム源の比は、特に制限されるものではないが、例えば、構造体の表層部に担持されるアルミニウム源が内部に拡散しにくく、結晶化度の高い構造体を得ることができることから、好ましくは、アルカリ金属および/または塩基性の含窒素化合物/アルミニウム源比(元素比)で、1〜100、さらに好ましくは3〜50である。担持後は、デカンテーション、濾過、加熱または減圧加熱等の操作で溶媒を除去する。その後、乾燥、焼成を行っても良い。さらに、必要であれば、再度、構造規定剤を構造体に含浸、乾燥させても良い。
【0042】
本発明の方法では、珪素源であるシリカ構造体へのアルミニウム源の担持は、シリカ構造体外表面から1〜1000μmの位置に担持されることが好ましく、さらに1〜500μmの位置に担持されることが好ましい。
【0043】
本発明の方法では、構造体表層部の結晶性多孔質アルミノシリケートのアルミニウム/珪素比(原子比)は、結晶化度の高い構造体を得ることができることから、好ましくは0.0001〜1、さらに好ましくは0.0005〜0.5である。
【0044】
本発明において、構造体を結晶化させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、水蒸気と接触させ、結晶化させることが好ましい。水蒸気の温度は特に制限されるものではないが、結晶性多孔質アルミノシリケートが製造されればよく、結晶化度の高い構造体を得ることができることから、好ましくは80〜260℃、さらに好ましくは100〜230℃の範囲である。水蒸気との接触時間は、特に制限されるものではないが、結晶化度の高い構造体を得ることができることから、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは2時間〜80日の範囲である。
【0045】
飽和水蒸気と接触させる方法およびその装置は、構造体が製造されれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、耐圧容器の空中にアルミニウム源、アルカリ金属を担持させたシリカ構造体を設置し、容器下部に水を添加し、密封した後、恒温槽内で加熱することで製造することができる。添加する水の量は、特に制限されるものではないが、結晶化度の高い構造体を得ることができることから、珪素源であるシリカ構造体の重さに対し0.1wt%以上が好ましい。
【0046】
本発明で得られた構造体は、水洗した後、乾燥し、必要により焼成、イオン交換を行っても良い。
【0047】
本発明の構造体の用途としては、特に制限はなく、その中でも触媒の担体あるいは固体酸触媒で反応する系の触媒として用いることが好ましい。
【0048】
本発明の構造体を触媒の担体としても使用する際の担持する元素としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどの周期表1族元素;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの周期表2族元素;スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、アクチノイドなどの周期表3族元素;チタニウム、ジルコニウム等の周期表4族元素;バナジウム、ニオブ、タンタル等の周期表5族元素;クロム、モリブデン、タングステン等の周期表6族元素;マンガン、レニウム等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム、オスニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム、イリジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム、白金などの周期表10族元素;銅、銀、金等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウムなどの周期表12族元素;ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表13族元素;ゲルマニウム、スズ、鉛等の周期表14族元素;アンチモン、ビスマス等の周期表15族元素;硫黄、テルル等の周期表16族元素等の一種類以上の元素が挙げられる。
【0049】
また、本発明の構造体を固体酸触媒で反応する系の触媒として使用する反応系としては、例えば、軽油および重質油などの接触分解反応;重質油の水素化分解反応;シクロヘキサンの脱水素、シクロペンテンの異性化脱水素、パラフィンの環化脱水素、パラフィンの異性化、パラフィンの水素化分解などの石油ナフサの重質留分の接触改質反応;ブタン、ペンタン、ヘキサン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、キシレンなどのアルカン、アルケンの異性化反応;メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等の芳香族化反応;ベンゼン、アルキルベンゼン、ナフタレン、フェノール、チオフェン、ピリジン等とエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチルクロリド、プロピルプロリド、ブチルクロリド等のオレフィン、アルコールハロゲン化アルキル等の芳香族のアルキル化反応;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリプロピルベンゼン、トリブチルベンゼン等のアルキル芳香族の異性化、不均化、トランスアルキル化、脱アルキル化反応;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等のオレフィン重合反応等が挙げられる。これらの系のなかでも、芳香族化反応用触媒に用いることが好ましい。
【0050】
本発明の構造体を芳香族化反応用触媒に用いる際には、亜鉛および/またはガリウムを担持することを特徴とする。
【0051】
その際に、構造体上に担持される亜鉛および/またはガリウムの量は特に制限されないが、好ましくは構造体の全重量に対して、0.01〜30重量%、さらに好ましくは1〜25重量%である。構造体に担持されている亜鉛またはガリウムの担持状態については、特に限定されず、例えば、酸化物、硝酸塩、塩化物等の状態で担持されている。本発明の芳香族反応用触媒に用いられる亜鉛またはガリウムは、それぞれ単独、または混合して用いても差し支えなく、特に原料の入手が容易であり、しかも構造体の調製が容易であることから、亜鉛が好ましく用いられる。
【0052】
本発明の芳香族化反応用触媒の調製法は特に制限はなく、本発明の芳香族化反応用触媒の調製が可能である限り、如何なる方法を用いても差し支えない。以下に、本発明の芳香族化反応用触媒の調製方法として、好ましい態様を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
本発明の芳香族化反応用触媒の調製方法は、例えば、あらかじめ構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する前記の構造体を調製し、この構造体に亜鉛および/またはガリウムを担持して調製する方法が挙げられる。
【0054】
結晶性多孔質アルミノシリケートの組成は一般に下記式(1)で表される。
【0055】
xM2/nO・Al・ySiO・zHO (1)
(ここで、nは陽イオンMの原子価、xは0.8〜2の範囲の数、yは2以上の数、zは0以上の数である。)
一方、上記の方法で調製される構造体は、構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在する。該結晶性多孔質アルミノシリケートの組成は下記式(2)で表され、陽イオンはナトリウムイオンである(以下、陽イオンがナトリウムイオンとなる組成を持つ構造体をナトリウム型と呼ぶ)。
【0056】
aNaO・Al・bSiO・cHO (2)
(ここで、aは0.8〜2の範囲の数、bは2以上の数、cは0以上の数である。)
本発明で用いる芳香族反応用触媒では触媒活性が高いことから、(1)式の陽イオンが水素イオン、すなわちプロトン(以下、陽イオンが水素イオンとなる組成を持つ構造体をプロトン型と呼ぶ)であることが好ましい。ナトリウム型をプロトン型に転換する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム型の構造体を塩化アンモニウムでイオン交換し、次いで空気中で焼成処理する方法が挙げられる。ここで、塩化アンモニウムでのイオン交換は常法に従って行えばよく、また焼成を行う場合には、酸素、または、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した酸素、あるいは、空気の雰囲気下100〜1000℃で行うと良い。
【0057】
上記の方法により、本発明で用いられる芳香族化反応用触媒の構造体が得られる。本発明の芳香族化反応用触媒は、前記の構造体に亜鉛および/またはガリウムを担持して調製される。ここで、亜鉛としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛金属、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛などの塩類;あるいはアルキル亜鉛などの有機亜鉛化合物類等が挙げられる。これらのうち、担持が容易であり、しかもオレフィンの芳香族化において芳香族炭化水素の収率が高いことから、塩類が好ましく用いられ、さらに好ましくは硝酸亜鉛が用いられる。また、ガリウムとしては、特に限定されないが、例えば、塩化ガリウム、臭化ガリウム、硝酸ガリウム、酸化ガリウムなどの塩類;あるいはアセチルアセトナトガリウム、ガリウムエトキシドなどの有機ガリウム化合物類等が挙げられる。これらのうち、担持が容易であり、しかもオレフィンの芳香族化において芳香族炭化水素の収率が高いことから、塩類が好ましく用いられ、さらに好ましくは硝酸ガリウムが用いられる。
【0058】
亜鉛および/またはガリウムを構造体に担持させる方法に特に制約はなく、通常の担持方法、例えば、含浸担持法、イオン交換法および共沈法を用いることができ、好ましくは含浸担持法がよい。含浸担持法で芳香族化反応用触媒を調製する場合、例えば、上記の亜鉛やガリウムを含む溶液を、構造体に含浸させ、乾燥、さらに焼成処理を行い、芳香族化反応用触媒を調製する方法が挙げられる。
【0059】
担持後は含浸法またはイオン交換法における常法に従って、デカンテーション、濾過、加熱または減圧加熱等の操作で溶媒を除去する。溶媒を除去後の乾燥は、加熱乾燥、減圧乾燥等を用いることができる。焼成を行う場合には、酸素、または、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した酸素、あるいは、空気の雰囲気下100〜1000℃で行うと良い。ここで、亜鉛および/またはガリウムを構造体に担持させる順序は、特に制限されず、前記のプロトン型の構造体に担持してもよいし、アンモニウム型の構造体に担持して、続いて焼成処理を行って調製しても良い。
【0060】
本発明においては、上記の芳香族化用反応触媒に、オレフィンの芳香族化に差し支えない範囲で、亜鉛およびガリウム以外の金属がさらに担持されていてもよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどの周期表1族元素;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの周期表2族元素;スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、アクチノイドなどの周期表3族元素;チタニウム、ジルコニウム等の周期表4族元素;バナジウム、ニオブ、タンタル等の周期表5族元素;クロム、モリブデン、タングステン等の周期表6族元素;マンガン、レニウム等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム、オスニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム、イリジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム、白金などの周期表10族元素;銅、銀、金等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウムなどの周期表12族元素;ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表13族元素;ゲルマニウム、スズ、鉛等の周期表14族元素;アンチモン、ビスマス等の周期表15族元素;硫黄、テルル等の周期表16族元素などの金属が挙げられる。
【0061】
本発明の構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する構造体に亜鉛および/またはガリウムが担持した芳香族化反応用触媒は、オレフィンの芳香族化による芳香族炭化水素の製造方法にも用いられる。
【0062】
前記オレフィンは、該化合物中に二重結合が含まれれば特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等が挙げられる。
【0063】
本発明においては、上記オレフィンにさらにエタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等のパラフィン類;および/またシクロペンタン、シクロペンテン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロヘキサジエン等のナフテン類が混合していても差し支えない。これらパラフィン類とナフテン類は芳香族化の原料に成り得るが、オレフィンに比べ芳香族化の速度が遅いため、パラフィン類とナフテン類を混合する量は、好ましくは全重量に対して50重量%未満、さらに好ましくは30重量%未満にコントロールされる。これらのオレフィンは単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。混合物としては、上記のそれぞれの混合物、あるいはナフサなどの熱分解生成物のC留分、前記C留分よりブタジエンを除いた留分(S(以下、スペントと略称する)−C4またはラフィネート1と呼ばれる)、前記C留分よりブタジエンとi−ブテンを除いた留分(SS−C4またはラフィネート2と呼ばれる)、ナフサなどの熱分解生成物のC留分、前記C留分からジエン類を除いた留分(S−C5と呼ばれる)、熱分解ガソリン、熱分解ガソリンよりBTX抽出を行ったラフィネート、FCC分解ガス、FCC分解ガソリン、リフォメートよりBTXを抽出したラフィネート等が挙げられる。
【0064】
本発明のオレフィンの芳香族化による芳香族炭化水素の製造における反応形式は特に制限されず、任意の反応形式で行うことが可能である。例えば、固定床気相流通式、固定床液相流通式、または懸濁床回分式で行うことができる。これらのうち、芳香族炭化水素が効率的に得られること、さらに温和な条件で芳香族化反応を行うことができることから固定床液相流通式が好ましい。反応温度は特に制限はされないが、芳香族炭化水素へ効率的に変換できることから、好ましくは300〜700℃、さらに好ましくは400〜600℃である。反応圧力は特に制限されないが、通常、好ましくは絶対圧で0.01〜50MPaであり、さらに好ましくは0.05〜30MPaである。また、固定床液相流通式反応の際の液時間空間速度(LHSV)は、芳香族炭化水素へ効率的に変換できることから、好ましくは0.01〜100hr−1、さらに好ましくは0.5〜20hr−1である。ここで、液時間空間速度(LHSV)とは、単位触媒体積当たりの単位時間(hr)に対するオレフィン、パラフィンおよびナフテンの供給量の合計体積を表すものである。
【0065】
なお、オレフィン原料は、そのまま用いても、不活性ガスで希釈して用いても良い。不活性ガスとしては特に制限されるものではないが、例えば、窒素、ヘリウムまたはアルゴン等が挙げられ、これらの不活性ガスは単独で使用するのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0066】
ここで、生成する芳香族炭化水素は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、キュメン、プロピルベンゼン、トリメチルベンゼン、インデン、ナフタレン、ジイソプロピルベンゼン、ビフェニル等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素は公知の分離方法により分離され、石油化学、医薬、農薬原料として用いられる。また、炭素数1〜12のオレフィン、パラフィンおよびナフテン類が未反応原料として、また副反応性生物として生成するが、これら化合物は本発明のオレフィンの芳香族反応にリサイクルしてオレフィンの原料の一部としても用いてもよい。
【発明の効果】
【0067】
本発明の構造体は、構造体表層部に固体酸触媒として有効な結晶性多孔質アルミノシリケートが存在するため、反応原料および反応生成物の構造体中の滞留時間が短く、目的物の選択性が高く、また活性点の被毒や細孔の閉塞を生じにくいため、触媒活性が低下しにくく、さらに触媒寿命の長いという効果を有する。特に、本発明の構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する構造体に亜鉛および/またはガリウムが担持したことを特徴とする芳香族化反応用触媒は、構造体表層部に固体酸触媒として有効な結晶性多孔質アルミノシリケートが存在するため、オレフィン原料および反応生成物の触媒中の滞留時間が短くなる。したがって、コーク様物質の蓄積が少なくなり、高い触媒活性を長い時間維持できるという効果を有する。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
以下の実施例に用いた測定法を示す。
【0070】
(構造体の結晶状態の確認)
得られた構造体の結晶状態は、粉末X線回折測定装置(XRD)(マックサイエンス社製、商品名M18XHF)を用い、電圧40kV、電流200mAで測定した。
【0071】
(アルミニウムの深さ方向の担持分布および珪素/アルミニウム比の測定)
得られた構造体を、Poly/Bed(R)812(Polysciences,Inc.社製)、Nadic Methyl Anhydride(Polysciences,Inc.社製)、Dodecenylsuccinic Anhydride(Polysciences,Inc.社製)、2,4,6Tris(dimethylaminomethyl)phenol(Polysciences,Inc.社製)を原料とした樹脂に包埋し、ウルトラミクロトームで切削して得られた試料を、エックス線マイクロアナライザー(EPMA)(島津製作所製、商品名EPM−810)を用い電圧20kV、電流10nAにて粒子断面の深さ方向の線分析、面分析を行い、強度比から担持割合を算出した。
【0072】
(ゼオライト骨格構造内のアルミニウムの確認)
27Al固体NMR(日本電子社製、商品名GSX−270)で測定し、ゼオライト骨格構造内の4配位アルミニウムに帰属する化学シフト(σ)=50〜70ppmの範囲に測定されるピークと、骨格構造から外れた格子外の6配位アルミニウムに帰属する化学シフト(σ)=0〜10ppmの範囲に測定されるピークで確認した。
【0073】
(アルミニウム量の測定)
アルミニウム量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)(京都光研製、商品名ICP−AES UOP−1 markII)にて定量分析し、算出した。
【0074】
(コーク生成量の測定)
反応終了後の触媒を熱天秤(SEIKO製SSC/5200)に約10mg乗せ、空気雰囲気下、10℃/分で800℃まで昇温させた。700℃での触媒重量に対し、300℃から700℃までの減少重量をコーク生成量とした。
【0075】
実施例1
20wt%テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液12.2g(テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド/珪素=0.07(モル比))に水酸化ナトリウム0.3g(ナトリウム/珪素比=0.04(原子比))を添加し溶解した。この水溶液にシリカビーズ(富士シリシア化学社製 「キャリアクトQ−50」、粒子形状:球状、粒子径:1.7〜4.0mm、表面積:80m/g、平均細孔径50nm)11gを添加し、シリカビ−ズに水溶液を含浸した。
【0076】
つぎに、硝酸アルミニウム・9水和物0.4g(ナトリウム/アルミニウム=6.7(原子比))を水12mlに溶解させ、75℃に加温した後、先の水酸化ナトリウム、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを含浸したシリカビーズを添加し、30分攪拌した。撹拌後、減圧乾燥し、80℃窒素雰囲気下で5時間乾燥した。
【0077】
得られた球状のシリカ構造体のアルミニウムのライン分析の結果を図5に示す。担持したアルミニウムはシリカビーズ外表面から230μm以内に存在していることが解った。
【0078】
テフロン(登録商標)の耐圧容器に0.5gの水を入れ、水に触れないようにテフロン(登録商標)の皿を起き、その上に水酸化ナトリウム、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、アルミニウム源を担持したシリカビーズ11gを入れ、耐圧容器を密閉し、耐圧容器を180℃で8時間加熱し、結晶化処理を行った。
【0079】
その後、蒸留水で洗浄後、110℃で一晩乾燥後、空気中540℃で焼成した。
【0080】
得られた構造体の粉末X線回折測定の結果(図6)、MFI構造であることが解った。また、アルミニウムの面分析、ライン分析の結果(図7,8)より、アルミニウムは得られた構造体外表面から230μm以内に存在し、また、EPMAによる局所部分の成分分析の結果、得られた構造体の表層部のアルミニウム/珪素比(原子比)=0.020であり、構造体外表面から250μm付近、中心付近からはアルミニウムは検出限界以下であった。
【0081】
27Alの固体NMR測定の結果(図9)、化学シフト(σ)50〜70ppm範囲のピークのみが確認され、アルミニウムはゼオライト骨格構造内に存在していることがわかった。
【0082】
このことから、構造体表層部230μmの厚さでMFI構造を持つ結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層がMFI構造を持つ結晶性多孔質シリケートの無機支持体であり、粒子径1.7〜4.0mmの球状の構造体であることがわかった。
【0083】
実施例2
20wt%テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液12.2g(テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド/珪素=0.07(モル比))に水酸化ナトリウム0.5g(ナトリウム/珪素比=0.07(原子比))を添加し溶解した。この水溶液にシリカビーズ(富士シリシア化学社製 「キャリアクトQ−50」、粒子形状:球状、粒子径:1.7〜4.0mm、表面積:80m/g、平均細孔径50nm)11gを添加し、シリカビ−ズに水溶液を含浸した。
【0084】
つぎに、硝酸アルミニウム・9水和物0.4g(ナトリウム/アルミニウム=11.7(原子比))を水12mlに溶解させ、75℃に加温した後、水酸化ナトリウム、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを含浸したシリカビーズを添加し、30分攪拌した。撹拌後、上澄みを除去し、減圧乾燥した後、80℃窒素雰囲気下で5時間乾燥した。得られたシリカ構造体のアルミニウムのライン分析の結果を図10に示す。担持したアルミニウムはシリカビーズ外表面から20μm以内に存在していることが解った。
【0085】
テフロン(登録商標)の耐圧容器に0.5gの水を入れ、水に触れないようにテフロン(登録商標)の皿を起き、その上に水酸化ナトリウム、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、アルミニウム源を担持したシリカビーズ11gを入れ、耐圧容器を密閉し、耐圧容器を180℃で8時間加熱し、結晶化処理を行った。
【0086】
その後、蒸留水で洗浄後、110℃で一晩乾燥後、空気中540℃で焼成した。
【0087】
得られた構造体の粉末X線回折測定の結果(図11)、MFI構造であることが解った。また、アルミニウムの面分析、ライン分析の結果(図12,13)より、アルミニウムは得られた構造体外表面から20μm以内に存在し、また、EPMAによる局所部分の成分分析の結果、得られた構造体の表層部のアルミニウム/珪素比(原子比)=0.016であり、構造体外表面から200μm付近、中心付近からはアルミニウムは検出限界以下であった。
【0088】
27Alの固体NMR測定の結果、化学シフト(σ)50〜70ppm範囲のピークのみが確認され、アルミニウムはゼオライト骨格構造内に存在していることがわかった。
【0089】
このことから、構造体表層部20μmの厚さでMFI構造をもつ結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層がMFI構造をもつ結晶性多孔質シリケートの無機支持体である、粒子径1.7〜4.0mmの球状の構造体であることがわかった。
【0090】
比較例1
硝酸アルミニウム・9水和物0.4g(ナトリウム/アルミニウム=6.7(原子比))を水12mlに溶解させた水溶液に、シリカビーズ(富士シリシア化学社製 「キャリアクトQ−50」、粒子形状:球状、粒子径:1.7〜4.0mm、表面積:80m/g、平均細孔径50nm)11gを添加し、シリカビ−ズに水溶液を含浸し、2時間撹拌した後、蒸発乾固し、110℃で乾燥した。
【0091】
つぎに、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド12.2g(テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド/珪素=0.07(モル比))、水酸化ナトリウム0.3g(ナトリウム/珪素比=0.04(原子比))を溶解した水溶液にアルミニウム源を担持したシリカビーズを添加し、2時間攪拌した後、蒸発乾固した。80℃窒素雰囲気下で5時間乾燥した。得られたシリカ構造体のアルミニウムのライン分析の結果を図14に示す。担持したアルミニウムはシリカビーズに均一に担持していた。
【0092】
テフロン(登録商標)の耐圧容器に0.5gの水を入れ、水に触れないようにテフロン(登録商標)の皿を起き、その上に水酸化ナトリウム、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、アルミニウム源を担持したシリカビーズ11gを入れ、耐圧容器を密閉し、耐圧容器を180℃で8時間加熱し、結晶化処理を行った。
【0093】
その後、蒸留水で洗浄後、110℃で一晩乾燥後、540℃で焼成した。
【0094】
得られた構造体の粉末X線回折測定の結果(図15)、MFI構造であることが解った。また、ライン分析の結果(図16)より、アルミニウムは構造体全体に存在していた。
【0095】
実施例3
実施例1で得た構造体を、20倍重量の1mol/Lの塩化アンモニウム水溶液に浸漬し、80℃で1.5時間放置した。次いで、該構造体をろ別し、塩化アンモニウム水溶液から取り出した。この操作をさらに3回繰り返した後、得られた構造体を水洗し、120℃で一晩乾燥し、アンモニウム型の構造体を得た。
【0096】
硝酸亜鉛六水和物4.4gを11gの水に溶解した水溶液を乾燥したアンモニウム型構造体10gにふりかけた後、真空中50℃で水を蒸発させて硝酸亜鉛を含浸担持した。硝酸亜鉛を担持した構造体は、電気炉にて空気流通下500℃で5時間焼成し、亜鉛が9.0重量%担持され、さらにプロトン型になった構造体を得た。
【0097】
該構造体10mlを反応管に充填し、温度を530℃に、内圧を0.5MPa−Gに設定し、1−ブテンをLHSV=2.7h−1で供給し、芳香族化反応を実施した。結果を表1に示す。コークの生成量は1.1%と少なかった。
【0098】
比較例2
特公昭46−10064号公報に準拠してナトリウム型のZSM−5を調製した。30重量%シリカゾル(日産化学製、商品名コロイダルシリカN)76gを2.2mol/lのテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液108gと混合した。次いで、3.2gのアルミン酸ナトリウムを水54mlに溶かし、この水溶液と前記溶液をSUS製オートクレーブに入れた。この混合物を自圧で150℃、6日間攪拌しながら加熱された。冷却後、生成したスラリーをろ別し、蒸留水100mlを用い洗浄し、この洗浄操作を5回繰り返した。次いで、110℃で一晩乾燥後、空気中540℃で焼成し、白色のナトリウム型のZSM−5を得た。粉末X線回折測定の結果、MFI型すなわちZSM−5形構造を有することがわかった。得られたZSM−5のアルミニウム/珪素比(原子比)=0.051であった。
【0099】
ナトリウム型のZSM−5を20倍重量の1mol/Lの塩化アンモニウム水溶液中で攪拌し、80℃で1.5時間放置した。次いで、該構造体をろ別し、塩化アンモニウム水溶液から取り出した。この操作をさらに3回繰り返した後、得られたZSM−5を水洗し、120℃で一晩乾燥し、アンモニウム型ZSM−5の粉体を得た。該粉体2.0g、硝酸亜鉛六水和物4.4g、および30重量%シリカゾル(日産化学製、商品名コロイダルシリカN)27.3gを混合し、次いで80℃で水を蒸発させながら混練し、白色の粘調物をシリンジを用い押し出し成形した。成形体を粉砕し、ふるいを用い、約3mmの柱状のサイズにそろえた後、120℃で乾燥し、電気炉にて空気流通下500℃で5時間焼成し、亜鉛が9.0重量%担持され、さらにプロトン型になったZSM−5を得た。
【0100】
アルミニウムのライン分析の結果、アルミニウムが構造体内部に均一に分散していることから、得られた構造体は結晶性アルミのシリケートが均一に構造体内部に分散したものであった。
【0101】
該ZSM−5 10mlを反応管に充填し、温度を530℃に、内圧を0.5MPa−Gに設定し、1−ブテンをLHSV=2.7h−1で供給し、芳香族化反応を実施した。結果を表1に示す。コークの生成量は27.1%と非常に多く、ブテン転化率も急速に低下した。
【0102】
【表1】

実施例4
シリカビーズ(富士シリシア化学社製 「キャリアクトQ−40C」、粒子形状:球状、粒子径:1.7〜4.0mm、表面積:73m/g、平均細孔径40nm)13gに、1Nのテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液21.0g(テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド/珪素=0.10(モル比))水溶液を減圧下でシリカビ−ズに含浸した。10分撹拌した後、減圧下、70℃で3時間溶媒を蒸発させた。
【0103】
つぎに、硝酸アルミニウム・9水和物1.3g(テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド/アルミニウム=6(原子比))をエタノール10mlに溶解させ、50℃に加温した後、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを含浸したシリカビーズを添加し、20分攪拌した。撹拌後、減圧乾燥し、空気中540℃で5時間焼成した。
【0104】
得られたシリカ構造体のアルミニウムのライン分析の結果を図17に示す。担持したアルミニウムはシリカビーズ外表面から400μm以内に存在していることが解った。
【0105】
次に、先に得られたアルミニウムを担持したシリカビーズ12.2gに、1Nのテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液14.2g(テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド/珪素=0.07(モル比))に水酸化ナトリウム0.3g(ナトリウム/珪素比=0.04(原子比))を溶解した水溶液を減圧下で含浸させ、常圧で20時間撹拌した。撹拌後、減圧下50℃で1時間溶媒を蒸発させた後、80℃窒素雰囲気下で5時間乾燥した。
【0106】
テフロン(登録商標)の耐圧容器に0.5gの水を入れ、水に触れないようにテフロン(登録商標)の皿を起き、その上に水酸化ナトリウム、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、アルミニウム源を担持したシリカビーズを入れ、耐圧容器を密閉し、耐圧容器を180℃で20時間加熱し、結晶化処理を行った。
【0107】
その後、蒸留水で洗浄後、110℃で一晩乾燥後、空気中540℃で焼成した。
【0108】
得られた構造体の粉末X線回折測定の結果、MFI構造であることが解った。また、ライン分析の結果(図18)より、アルミニウムは得られた構造体外表面から400μm以内に存在し、また、EPMAによる局所部分の成分分析の結果、得られた構造体の表層部のアルミニウム/珪素比(原子比)=0.02であり、中心付近からはアルミニウムは検出限界以下であった。
【0109】
このことから、構造体表層部400μmの厚さでMFI構造をもつ結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層がMFI構造を持つ結晶性多孔質シリケートの無機支持体である、粒子径1.7〜4.0mmの球状の構造体であることがわかった。
【0110】
実施例5
実施例4で得た構造体を、20倍重量の1mol/Lの塩化アンモニウム水溶液に浸漬し、80℃で1.5時間放置した。次いで、該構造体を塩化アンモニウム水溶液から取り出した。この操作をさらに3回繰り返した後、得られた構造体を水洗し、120℃で一晩乾燥し、アンモニウム型の構造体を得た。
【0111】
硝酸亜鉛六水和物3.5gを7.7gの水に溶解した水溶液を乾燥したアンモニウム型構造体8.0gに含浸後、減圧下50℃で水を蒸発させて硝酸亜鉛を含浸担持した。硝酸亜鉛を担持した構造体は、電気炉にて空気流通下540℃で5時間焼成し、亜鉛が9.0重量%担持され、さらにプロトン型になった構造体を得た。
【0112】
該構造体10mlを反応管に充填し、温度を530℃に、内圧を0.5MPa−Gに設定し、1−ブテンをLHSV=2.7h−1で供給し、芳香族化反応を実施した。結果を表2に示す。
【0113】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の芳香族化反応用触媒は、構造体表層部に固体酸触媒として有効な結晶性多孔質アルミノシリケートが存在する構造体からなるため、反応原料および反応生成物の構造体中の滞留時間が短く、目的物の選択性が高く、また活性点の被毒や細孔の閉塞を生じにくいため、触媒活性が低下しにくく、さらに触媒寿命の長いという効果が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の球状の構造体の断面図
【図2】本発明の円柱状の構造体の断面図
【図3】本発明の中空円柱状の構造体の断面図
【図4】本発明の板状の構造体の断面図
【図5】実施例1のシリカ構造体のアルミニウムのライン分析の結果
【図6】実施例1の構造体の粉末X線回折測定の結果
【図7】実施例1の構造体のアルミニウムの面分析の結果
【図8】実施例1の構造体のアルミニウムのライン分析の結果
【図9】実施例1の構造体の27Alの固体NMR測定の結果
【図10】実施例2のシリカ構造体のアルミニウムのライン分析の結果
【図11】実施例2の構造体の粉末X線回折測定の結果
【図12】実施例2の構造体のアルミニウムの面分析の結果
【図13】実施例2の構造体のアルミニウムのライン分析の結果
【図14】比較例1のシリカ構造体のアルミニウムのライン分析の結果
【図15】比較例1の構造体の粉末X線回折測定の結果
【図16】比較例1の構造体のアルミニウムのライン分析の結果
【図17】実施例4のシリカ構造体のアルミニウムのライン分析の結果
【図18】実施例4の構造体のアルミニウムのライン分析の結果
【符号の説明】
【0116】
1 結晶性多孔質アルミノシリケート
2 結晶性多孔質シリケート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する構造体に亜鉛および/またはガリウムが担持したことを特徴とする芳香族化反応用触媒。
【請求項2】
無機支持体が結晶性多孔質シリケートであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族化反応用触媒。
【請求項3】
結晶性多孔質アルミノシリケートがMFI型の結晶構造であり、無機支持体がMFI型の結晶構造の結晶性多孔質シリケートであることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族化反応用触媒。
【請求項4】
結晶性多孔質アルミノシリケートが構造体の外表面から1〜1000μmの深さまでの表層部に存在する構造体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の芳香族化反応用触媒。
【請求項5】
結晶性多孔質アルミノシリケートのアルミニウム/珪素比(原子比)が0.0001〜1であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の芳香族化反応用触媒。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の芳香族化反応用触媒を用いて、オレフィンを芳香族化することを特徴とする芳香族炭化水素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−30228(P2012−30228A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203564(P2011−203564)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【分割の表示】特願2005−238648(P2005−238648)の分割
【原出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】