説明

アルミン塩酸化合物蛍光体

【課題】斬新なアルミン塩酸化合物蛍光体とその調製方法を提供する。
【解決手段】Si/O元素を一部のAl/F元素に取り代わることにより、化学性質を改善することができる。このアルミン塩酸化合物蛍光体の一般式はCaaSrbBacAldSiefghである。そのうち、Rは、1種または2種以上は、ランタン系金属より選択される。このほか、本発明の蛍光体は、Si/O元素を一部のAl/F元素に取り代わり、構成の微調整を行い、蛍光体に含められたランタン系金属原子価の存在比率を改変することによって、発光性質を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体材料の配合式に関し、特に光学性質の改善を可能にするため、Si/O元素を一部のAl/F元素に取り代わるアルミン塩酸化合物蛍光体の配合式に関する。チップの波長は、200〜400nmの紫外光によって励起されるほか、Si/O元素を一部のAl/F元素に取り代わり、微調整を行い、蛍光体に含めるランタン系金属原子価の存在比率を改変することにより、発光性質を制御できるため、応用の潜在力と学術価値を有する。
【背景技術】
【0002】
文明の進展及び省エネ、カーボン排出減量などの環境保護意識に従い、世界各国とも発光ダイオード(Light Emitting Diode, LED)が従来の光源に取り代わりつつある。発光ダイオードの体積が小さい、消費電力が低い(白熱灯球の1/10、蛍光灯管の1/2)、寿命が長い、発光効率が極めて良い、稼動反応速度が速いなどの長所を備え、従来の光源が克服難しい問題を解決できる。よって、すでに交通信号灯、自動車のライト、表示装置などの素子に使用されている。さらに、現在で推進中の環境保護意識概念に符合していることから、21世紀の「緑の照明光源」と称賛されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chemistry of material誌(Chemistry Materials, dx.doi.org/10.1021/cm103495j)Duanら、2011年
【非特許文献2】Cement and Concrete Research誌(Cement Concrete Res, 1997, 27, 1439−1449)Yuら、1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日亜化学工業株式会社(以下は、日亜という)は1996年、青色LEDによって、セリウム添加イットリウムアルミニウムガーネット(Cerium−doped yttrium aluminum garnet;YAG:Ce)蛍光体を励起して黄色の蛍光を発生させ、青色光と混合した後、冷色白光を発生する。これが世界初めの白色LEDである。しかし、この種の白色光は、赤色を欠けるため、演色性が低いほか、その特許は、日亜に限られている。白色LEDは、全スペクトル帯域発光でなければ、高い演色性と理想な色温度を実現することはできない。しかし、青色LEDにYAGと、赤色蛍光体との組合せ方式のほか、青色LEDに緑色と青色蛍光体との組合せ方式、またはUV−LEDに青、緑、赤3色の蛍光体との組合せによる白色光がある。そのうち、理想な色温度(暖色の白光)を発光させるには、UV−LEDと3色の蛍光体との組合せ方式がより良い発光効率が得られる。よって、紫外光に励起されやすい、青色、緑色、赤色蛍光体を開発することは、現在の重要な研究課題である。
【0005】
現時点、蛍光体に関する研究は、新しいホスト格子の開発のほか、ホスト格子に他の元素をドープして、従来のホスト格子に取り代わり、発光性を改善することは、良く見かける研究方向である。一例として、Duanらは2011年に、Chemistry of material誌(Chemistry Materials, dx.doi.org/10.1021/cm103495j)において、Re2Si46C (RE=Lu, Y, Gd)シリーズ蛍光体の研究を発表し、すなわち、RE/Cを従来MRESi47に含まれるM/N (M=Ba, Sr, Ca)をC元素の共有結合性と、より剛性を持つ結合特性を利用し、ホスト格子の安定性改善も現時点の主な研究目標である。
【0006】
Yuらは、1997年、Cement and Concrete Research誌(Cement Concrete Res, 1997, 27, 1439−1449)において、Ca12Al14322の調製方法と単結晶構造を発表し、その構造は、[AlO4]の四面体構成であり、単位格子は正方晶系に属し、空間群はI43dである。四面体の間は、酸素原子をブリッジングとし、酸素原子と6つの酸素と一つのフッ素原子配位、合計7配位である。さらに、構造を形成するの欠け格子は、フッ素原子によって補う。この結晶質は、Ca127の構造に比べ、より安定性を有し、蛍光体に適している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一目的は、より安定性を有する蛍光体を提供する。
【0008】
本発明の次の目的は、演色性を向上できる蛍光体を提供する。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、生産プロセスの簡素化及び原価を低減できる蛍光体を提供する。
【0010】
前述目的を達成するため、本発明のアルミン酸塩化合物蛍光体は、焼結温度Tと焼結圧力Pの条件において、固相反応によって合成される。その化学式は、CaaSrbBacAldSiefghである。そのうち、10≦a+b+c+h≦12(0≦a<12;0≦b<12;0≦c<12;0<h≦1)、12<d+e≦14(12≦d<14;0<e≦2)、30≦f≦34;、0<g≦2,Rは、ランタン系金属の元素であり、蛍光体の発光主体である。そのうち、この固相反応法に使用する焼結温度Tは、1000〜1400℃であり、焼結圧力Yは、0.1〜0.9MPaである。本発明の蛍光体は、波長が200〜400nmの発光ダイオードによって、励起することができ、かつ出射の波長は、400−700nmである。そのうち、ランタン系金属Rは、Ce、Eu、Pr、Nd、Sm、Tb、Er、Yb、Dyのいずれかである、様々な領域において発光できる。本発明の蛍光体は、Si/Oを一部のAl/Fに取り代わり、微調整を行い、発光中心の配位環境の改変により、ランタン系金属が結晶格子におけるそれぞれの価数の存在比率を調節し、光学性質を制御する。その発光領域は青色光、緑色光と赤色光を同時にカーバーし、UV−LEDと組合せて、白色光を合成し、演色性を向上できるほか、少ない種類の粉体を使用するため、生産プロセスを簡素化すると共に、コストを低減でき、応用の潜在力と学術価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい実施例(A)〜(E)のX線粉末のスペクトル図である。
【図2】本発明の好ましい実施例(A)〜(E)の出射光スペクトル図である。
【図3A】本発明の好ましい実施例(A)〜(E)の励起光スペクトル図(その1)である。
【図3B】本発明の好ましい実施例(A)〜(E)の励起光スペクトル図(その2)である。
【図4】本発明の好ましい実施例(A)〜(E)の色度座標図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の内容のさらなる理解を図るため、以下にて図面と合わせて説明する。
【実施例】
【0013】
本発明のアルミン酸塩化合物蛍光体は、固相反応法によって調製される。焼結温度Tは1000〜1400℃であり、焼結圧力Pは、0.1〜0.9 MPaである。化学式CaaSrbBacAldSiefghで表すことができる。そのうち、10≦a+b+c+h≦12 ( 0≦a<12;0≦b<12;0≦c<12;0<h≦1 )、12<d+e≦14 ( 12≦d<14;0<e≦2 )、30≦f≦34;、0<g≦2。そのうち、Rはランタン系金属元素Ce、Eu、Pr、Nd、Sm、Tb、Er、Yb、Dyのいずれかである。本発明の好ましい実施例(A) 〜(E)はCa11.9Al14-xSix32+X2-x:Eu0.1 (x=0.1、0.2、0.3、0.5、0.6)サンプルであり、配合方法は、下表に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
図1、本発明の好ましい実施例(A)〜(E)のX線粉末回折スペクトル図を参照する。本発明の好ましい実施例(A) 〜(E)に基づいて調製されたCa11.9Al14-xSix32+X2-x:Eu0.1(x=0.1、0.2、0.3、0.5、0.6)サンプルをX線粉末回折スペクトル図によって、結晶相の純度を鑑定したところ、本発明によって、合成された蛍光体が純相(pure phase)であることを観察できる。
【0016】
図3A、3B、本発明の好ましい実施例(A) 〜(E)の発光すベクトル図その1、その2である。本発明の好ましい実施例(A) 〜(E)によって調製されたCa11.9Al14-xSix32+X2-x:Eu0.1(x=0.1、0.2、0.3、0.5、0.6)サンプルは、波長が200〜400nmの発光ダイオードによって励起される。特に、Si/O量の増加に従い、波長が250nmおよび325nm付近の光スペクトルの励起効果がより顕著的である。
【0017】
図2および4、本発明の好ましい実施例(A) 〜(E)の出射スペクトル図と色度座標図を参照する。図に示すように、本発明の好ましい実施例(A) 〜(E)によって、調製されたCa11.9Al14-xSix32+X2-x:Eu0.1(x=0.1、0.2、0.3、0.5、0.6)サンプルの出射波長は、400〜700nmであり、かつSi/Oを一部のAl/Fに取り代わる量の改変に従い、Eu2+/Eu3+比例の構造微調整を行うことによって、青緑光と赤色光領域の光出射強度を調節し、Si/Oの微量増に対して、Al/Fが相対的に減少し、青緑光の強度が大幅な増を示すと共に、赤色光の強度が相対に減少される。引き続き、出射スペクトルの数値を国際照明委員会が制定した色度座標図に従って、公式換算した各蛍光体の色度座標を、それぞれ座標図に表す。本発明の好ましい実施例によって、合成されたCa11.9Al14-xSix32+X2-x:Eu0.1は、x値の上昇に従い、出射光を赤色光領域から青色光領域に調節することができる。
【0018】
よって、本発明の蛍光体は、Si/Oを一部のAl/Fに取り替え、構造の微調整を行い、光出射中心の配位環境の改変によって、ランタン系金属が結晶格子におけるそれぞれの価数の存在比率を調節することによって、光学性質を制御する。その光出射領域は、青緑光と赤色光を同時にカーバーし、UV−LEDと組み合わせて、白色光を合成した場合、演色性を向上できる。本好ましい実施例のアルミン酸塩化合物蛍光体Ca11.9Al14-xSix32+X2-x:Eu0.1の使用原料は、CaCO3、Al23、SiO2、CaF2、Eu23を含み、化学式に従い、所定の原料を乳鉢に入れ、均一に混合し、すりつぶした後、温度1250℃、水素(5%)−窒素(95%)の雰囲気において、6時間を焼結した後、製品が得られる。製造プロセスが簡単であり、大量生産に向き、少ない種類の粉体を使用することは、生産プロセスの簡素化並びにコスト低減できるほか、応用の潜在力と学術価値を有する。
【0019】
以上に説明された各実施例は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の特許請求範囲を制限するものではない。本発明の精神を逸脱されない範囲による修飾または変更は、本発明の特許請求範囲に含める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結温度Tと焼結圧力Pの条件において、固相反応によって合成され、その化学式は、CaaSrbBacAldSiefghであり、そのうち、10≦a+b+c+h≦12(0≦a<12;0≦b<12;0≦c<12;0<h≦1)、12<d+e≦14(12≦d<14;0<e≦2)、30≦f≦34;0<g≦2,Rは、ランタン系金属の元素であり、蛍光体の発光主体であることを特徴とする、アルミン塩酸化合物蛍光体。
【請求項2】
前記固相反応法の焼結温度Tは、1000〜1400℃であることを特徴とする、請求項1記載のアルミン酸塩化合物蛍光体。
【請求項3】
前記固相反応法の焼結圧力Pは、0.1〜0.9MPaであることを特徴とする、請求項1記載のアルミン酸塩化合物蛍光体。
【請求項4】
前記蛍光体は、波長が200〜400nmの発光ダイオードによって励起されることを特徴とする、請求項1記載のアルミン酸塩化合物蛍光体。
【請求項5】
前記蛍光体の出射波長は、400〜700nmであることを特徴とする、請求項1記載のアルミン酸塩化合物蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−40318(P2013−40318A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246358(P2011−246358)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(598109154)東貝光電科技股▲ふん▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】