説明

アルミ建材又はアルミ加工品

【課題】 昇華染料の耐候性を高度に確保し、転写シートの紙の剥離ベース使用によっても紙の残存付着が生じず、美麗にして低コストに生産し得るアルミ建材又はアルミ加工品を提供する。
【解決手段】 アルミ押出材又は板材に、マット処理、陽極酸化を施し、陽極酸化皮膜に形成した15〜50μmのアクリル系水溶性塗料による熱硬化電着塗膜に対して、これを染料受容層とした昇華性インクの熱転写を施すことによって該熱硬化電着塗膜に受容した昇華染料によって模様乃至色調を表出するようにする。このとき熱硬化電着塗膜を、顔料濃度0.1〜5重量部含有する下層の着色塗膜と、上層のクリヤー塗膜の複層として、熱転写を行なうことによって、光沢ムラの発生や紙残りがなく、着色塗膜の顔料と昇華性インクの色調が調和して、美麗にして耐候性に優れたサッシ等のアルミ建材、キッチン部材等のアルミ加工品とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ、カーテンウオール、壁材等の各種建材や、例えば建築設備のシステムキッチン部材、ユニットバス壁面材等の加工品として好適に用いられるアルミ建材又はアルミ加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアルミ建材として、例えばアルミ素地に形成した合成樹脂塗膜に昇華性インクの熱転写を施すことによって、表面に、例えば木目等の模様や特定の色調を備えたものが知られており、このとき昇華性インクの染料受容層をなす塗膜は、一般に、アルミ素地に化成皮膜を形成し、該化成皮膜に粉体塗料または溶剤系塗料によって吹き付け塗装を施した後に、これを常温乾燥または焼付した、ポリエステル系やアクリル系、ウレタン樹脂系等の樹脂を用いた厚膜の合成樹脂塗膜とされ、その塗膜厚は、例えば30μm以上が一般的である。
【0003】
即ち、昇華性インクの熱転写は、アルミ素地に形成した陽極酸化皮膜に対して行なうことも可能であるが、この場合、その模様や色調が映えず、耐候性も確保できないといった問題があるために、昇華性インクの染料受容層として、厚膜の合成樹脂塗膜を用いるものとされている。
【0004】
昇華性インクの受容層を合成樹脂塗膜とするのは、外観、耐候性、耐食性、耐薬品性、塗膜硬度等に優れる合成樹脂を使用できるためと見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−144835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし乍ら、厚膜の合成樹脂塗膜を形成したアルミ建材は、粉体塗装などの吹き付け塗装を行なう必要があるため、電着塗装を行なう電着塗膜を形成したアルミ建材のように大量生産に適さない、従って製造コストが高く、充分な普及をなし得ない、合成樹脂塗膜に対して、剥離ベースを紙とした昇華性インクを印刷した転写シートを使用すると、熱転写後に速やかに剥離を行なわないと、模様や色調の光沢ムラを招き易いといった問題点がある。
【0007】
そこで昇華性インクの染料受容層を、陽極酸化皮膜上に形成した熱硬化の電着塗膜とすることができれば、既存のアルミ表面処理設備を使用し得るので、合成樹脂塗膜の場合より、効率的且つ安価に、多様な模様や色調の各種アルミ建材を提供することができるとともに該アルミ建材以外にも、システムキッチンの部材、ユニットバスの壁面といった、各種建築設備に使用するに適した材料を提供することができるが、電着塗膜を染料受容層とすると、昇華染料の耐候性が大きく低下する結果、この耐候性の低下が実用化の障害となる。
【0008】
本発明は係る事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、昇華染料の耐候性を可及的高度に確保するとともに転写シートの剥離ベースを紙としても光沢ムラの発生や紙の残存付着が生じることなく、美麗にして可及的低コストによって生産し得るようにしたアルミ建材又はアルミ加工品を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に沿って鋭意検討したところ、アクリル系熱硬化電着塗膜に対して昇華性インクの熱転写を施すと、転写シートの剥離ベースを紙としても、良好な剥離がなし得て、紙やその繊維が残存付着することがなく、また電着塗膜を可及的に厚膜化して染料受容層を厚くすると、昇華染料の耐候性を可及的高度に確保することができるとの事実を見出して、本発明をなすに至ったもので、即ち、請求項1に記載の発明を、アルミ素地に形成した陽極酸化皮膜と、該陽極酸化皮膜に形成した厚膜の熱硬化電着塗膜と、該熱硬化電着塗膜にこれを染料受容層とした昇華性インクの熱転写を施すことによって該熱硬化電着塗膜に受容した昇華染料とを備えてなることを特徴とするアルミ建材又はアルミ加工品としたものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記熱硬化電着塗膜の塗膜厚下限を12μmとすることによって、屋外使用のアルミ建材を含めて、受容層における昇華染料の耐候性を実用的に確保することが可能となる一方、塗膜厚上限が50μmを上回ると、昇華染料の耐候性確保の面から厚すぎ、使用塗料の無駄を招来することから、これを、上記厚膜の熱硬化電着塗膜の膜厚を、15〜50μmとしてなることを特徴とする請求項1に記載のアルミ建材又はアルミ加工品としたものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、熱硬化電着塗膜を顔料による着色塗膜とすることによって、顔料と昇華染料の色の調和による好ましい模様や色調を得られる上、塗膜中の顔料濃度が0.1重量部を下回ると顔料が過小となる一方、5重量部を上回ると、顔料が過大となって、いずれも昇華染料の変調を有効になし得なくなることから、これを、上記熱硬化電着塗膜を、顔料濃度を0.1〜5重量部含有する着色塗膜としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の又はアルミ加工品としたものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記着色塗膜を用いることによる模様は色の調和を行なうにつき、該着色塗膜を下層に、クリヤー塗膜を上層に配置して、このクリヤー塗膜を染料受容層とすると、顔料と昇華染料の色の調和を更に有効に行なって美麗な模様や色調を得ることが可能となることから、これを、上記熱硬化電着塗膜を、下層の着色塗膜と、上層のクリヤー塗膜の複層とし、該上層のクリヤー塗膜を上記染料受容層としてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のアルミ建材又はアルミ加工品としたものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、陽極酸化皮膜を形成するアルミ素地にマット処理を施すと、一般に、アルミ製のものに転写を施すことによって模様や色調に感じられるアルミの金属感を減少又は解消して、アルミ製の印象のない高品位の模様や色調のものとすることが可能となることから、これを、上記アルミ素地を、マット処理を施したアルミ素地としてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のアルミ建材又はアルミ加工品としたものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、アルミ素地に形成した陽極酸化皮膜を二次電解着色皮膜とすることによって、該着色皮膜と昇華染料の色の調和による好ましい模様や色調を得られることから、これを、上記アルミ素地に形成した陽極酸化皮膜を、二次電解着色皮膜としてなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載のアルミ建材又はアルミ加工品としたものである。
【0015】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、昇華染料の耐候性を可及的高度に確保するとともに転写シートの剥離ベースを紙としても光沢ムラの発生や紙の残存付着が生じることなく、美麗にして可及的低コストによって生産し得るようにしたアルミ建材又はアルミ加工品を提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、屋外使用のアルミ建材を含めて、受容層における昇華染料の耐候性を実用的に確保したものとすることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、熱硬化電着塗膜を顔料による着色塗膜とすることによって、顔料と昇華染料の色の調和による好ましい模様や色調のものとすることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、下層の着色塗膜と上層のクリヤー塗膜が、顔料と昇華染料の色の調和を更に有効に行なって美麗な模様や色調を得ることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、一般に、アルミ製のものに転写を施すことによって模様や色調に感じられるアルミの金属感を減少又は解消して、アルミ製の印象のない高品位の模様や色調のものとすることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、アルミ素地に形成した陽極酸化皮膜を二次電解着色皮膜とすることによって、該着色皮膜と昇華染料の色の調和による好ましい模様や色調のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】アクリル系熱硬化電着塗膜とポリエステル系熱硬化電着塗膜の転写ベース剥離状態を示す対比写真である。
【図2】サンシャインウエザーメーター試験による熱硬化電着塗膜の膜厚と石目模様の色差の関係を示す折れ線グラフである。
【図3】石目模様の表出状態を示す対比写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を更に具体的に説明すれば、本発明のアルミ建材、即ち、アルミ製のサッシ、カーテンウオール、壁材、ドア、引戸等又はアルミ加工品、即ち、アルミ製のシステムキッチンの部材やドア、ユニットバスの壁面の表面材等は、アルミ素地に形成した陽極酸化皮膜と、該陽極酸化皮膜に形成した厚膜の熱硬化電着塗膜と、該熱硬化電着塗膜にこれを染料受容層とした昇華性インクの熱転写を施すことによって該熱硬化電着塗膜に受容した昇華染料とを備えたものとしてある。
【0024】
即ち、アルミ建材又はアルミ加工品は、アルミニウム合金の押出材や板材を用い、これに陽極酸化を施して陽極酸化皮膜を形成した後に、電着塗装による電着塗膜を形成して、焼付による電着塗膜の架橋による熱硬化を施し、該熱硬化電着塗膜の表面に、これを染料受容層として昇華性インクによる模様又は色調の転写シートの熱転写を行ったものとしてあり、このとき該熱転写の事前又は事後に建材として、また加工品として切断、穴あけ等の所定の加工を施すことによって形成したものとしてある。
【0025】
このとき本例の転写ベースをなす押出材や板材は、押出材、板材段階で、そのアルミ素地を、例えば、マット処理を施したアルミ素地としたものとし、該マット処理後に上記陽極酸化皮膜を形成して、これに電着塗装、焼付、転写を施したものとしてあり、これによってアルミ建材又はアルミ加工品におけるアルミ金属感を解消した模様や色調を呈するものとしてある。
【0026】
マット処理は、押出材、板材表面に物理的乃至化学的処理を施すことによって行なうことが可能である。
【0027】
陽極酸化皮膜は、例えば、5〜20μm程度の膜厚とするように、硫酸濃度10〜30%程度の水溶液による酸性液の処理槽中に押出材、板材を浸漬することによって陽極酸化処理を施して、これを形成するものとしてあり、該陽極酸化皮膜を形成することにより押出材、板材に対する電着塗装を可能とするとともにアルミ建材乃至アルミ加工品としての耐候性、耐食性を良好に確保するものとしてある。
【0028】
熱硬化電着塗膜は、その塗膜を可及的に厚膜化、例えば12μm以上の厚膜のものとすることが、アルミ建材乃至アルミ加工品としての外観を良好に確保するとともに後述の転写によって受容した昇華染料の耐候性を高度化する上で有効であり、該熱硬化電着塗膜の膜厚は、これを、15〜50μmとすることが好ましく、20μm以上、特に30〜50μmとすることが、後述の実施例及び図2に示すように長期に亘る昇華染料の耐候性を確保する上で、更に好ましい。
【0029】
熱硬化電着塗膜は、厚膜化した単層の、例えばクリヤー塗膜又は顔料を添加した着色塗膜によることが可能であるが、これに代えて、該熱硬化電着塗膜を、下層の着色塗膜と、上層のクリヤー塗膜の複層とし、該上層のクリヤー塗膜を上記染料受容層とすることができる。熱硬化電着塗膜を複層のものとするとき、押出材、板材に下層の電着塗膜を形成した後に、更に上層の電着塗膜を形成して焼付硬化するように、2回の電着塗装と1回の焼付処理を行なうようにすればよい。
【0030】
熱硬化電着塗膜は、例えばアクリル樹脂系水溶性電着塗料を用いて形成するのが好ましく、アクリル樹脂系水溶性電着塗料を用いることによって、アルミ建材又はアルミ加工品としての外観、耐候性を確保することができるとともに、例えばポリエステル系水溶性電着塗料を用いて形成したとき、転写シートの剥離ベースを紙とした場合に生じ易い光沢ムラの発生や紙残りによる外観不良が生じるのを防止し、従ってインクジェットプリンターを用いた転写シートによる熱転写の歩留りを可及的高度に確保することが可能となる。
【0031】
熱硬化電着塗膜を形成する電着塗装及び焼付処理は、それぞれ常法に従って行なうようにすればよいが、熱硬化電着塗膜を着色塗膜とするとき、熱硬化電着塗膜中に含有する顔料濃度は、これを0.1〜5重量部とするのがよく、該顔料濃度が0.1重量部を下回ると、顔料が過小となり着色塗膜の色調が薄くなって昇華染料の変調を有効になし得なくなる傾向を招き易くなり、また5重量部を上回ると、顔料が過大となり着色塗膜の色調が濃くなって同じく昇華染料による模様又は色調が着色塗膜に消されるように埋没する傾向を招き易くなる。従って、顔料濃度は、上記0.1〜5重量部とするのがよいが、昇華染料の着色皮膜による有効な変調を行なう上で、0.3〜2重量部とするのが特に好ましい。図3は、クリヤーの熱硬化性電着塗膜に熱転写によって昇華性インクによる石目模様を表出したとき、顔料濃度0、0.5及び5重量部としたときの外観比較の写真であるが、顔料濃度0のとき、アルミ素地が透過するように見られるとともに石目模様が筋目状に見られる程度に、その表出が不完全となり、0.5重量部、即ち、顔料濃度を、上記特に好ましい範囲の重量部としたとき、良好な外観が得られる一方、5重量部としたとき、顔料濃度が過剰にして、石目模様が薄れ、その表出が同じく不完全となる。
【0032】
昇華性インクの熱転写は、剥離ベースに昇華性インクによる反転模様乃至色調を印刷した転写シートを用いて、その印刷面を、押出材、板材の熱硬化電着塗膜に対面するように配置し、減圧吸引、例えば真空吸引によって、印刷面を熱硬化電着塗膜に密着させた状態で加熱を行なうようにすればよく、該加熱は、例えば転写シートを押圧するプレス板の加熱とするか、雰囲気加熱とすればよい。加熱は、その温度を、例えば180〜230℃、時間を1〜20分として、これを行なうようにすれば、熱硬化電着塗膜に対する熱転写を完了する。
【0033】
該熱転写によって、転写シートの昇華性インクは、熱硬化電着塗膜を染料受容層として、該熱硬化電着塗膜中にその昇華染料を分散浸透させる結果、該昇華染料による模様又は色調を表出する。このとき熱硬化電着塗膜をクリヤー塗膜としたとき、模様又は色調は該昇華染料によるものとなる一方、陽極酸化皮膜に二次電解着色を行い着色皮膜とするか、塗膜中に顔料を含んだ着色塗膜とするか、下層を着色塗膜、上層をクリヤー塗膜としたとき、該着色塗膜の顔料色と昇華染料色の複合色を呈したものとなり、従って顔料色の種類や顔料濃度を変更することによって、同一の転写シートを用いても、模様又は色調を多様なバリエーションの複合色のものとすることができ、また逆に転写シートの模様や色調を変更することによって、同一の顔料濃度の着色塗膜を用いても着色皮膜の色調を調整したりすることで、模様又は色調を多様なバリエーションの複合色のものとすることができる。
【0034】
このようにアルミ素地、特にマット処理したアルミ素地に形成した陽極酸化皮膜上の厚膜の熱硬化電着塗膜、特にアクリル樹脂系の熱硬化電着塗膜に昇華性インクの熱転写を施すことによって該熱硬化電着塗膜を染料受容層としてこれに昇華染料を受容した押出材乃至板材は、転写シートに紙の剥離ベースを用いても光沢ムラの発生や紙残りが全くなく、金属感を解消した極めて美麗な外観の模様乃至色調を呈して、耐候性に優れたものとすることができる。図1は、該熱硬化電着塗膜とポリエステル系熱硬化粉体塗膜にそれぞれ青、赤、黄3色の昇華性インクの熱転写を施して剥離ベースの剥離後の状態を示す写真であるところ、後者、即ち熱硬化粉体塗膜の場合は、剥離ベースの紙がその厚さ方向中間で破断し、塗膜に著しい紙残りが付着し、転写商品として使用に耐えるものとなし得ないが、前者、即ち熱硬化電着塗膜に対する熱転写のものは、光沢ムラの発生や紙残りが全く見られず、美麗な転写面(この場合アルミ素地にマット処理を施していないので、転写面にアルミの金属感が残っている)が得られている。従ってアルミ建材として、また各種アルミ加工品として好適なものとし得るとともに既存設備を用いて可及的簡易にその生産を行なうことができる。
【実施例1】
【0035】
6cm×12cmのアルミ押出平板(JIS6063T5)に、常法による陽極酸化を施し、膜厚10μmの陽極酸化皮膜を形成した後、アクリル樹脂系の水溶性熱硬化電着塗料(神東塗料株式会社製)に浸漬して電圧200Vで電着塗装を施して電着塗膜を形成し、200℃、30分の焼付を施すことによって、膜厚20μm、クリヤーの熱硬化電着塗膜を形成した。次いで、紙の剥離ベースに昇華性染料(ジャパンネットワークサービス社製)で石目模様を印刷した転写シートを用い、その印刷面をサンプル板の熱硬化塗膜の表面に重合して、設定温度230℃の転写炉でアルミ板が190℃になるまで昇温させ、190℃にて5秒間保持するように真空熱転写を施した。転写炉から取り出したアルミ押出平板の表面から剥離ベースを剥離し、転写面の光沢ムラの発生有無を含めた外観及び紙残りの有無を肉視によって◎、○、△、×の4段階で評価し、またカーボンアーク灯式促進耐候性試験機サンシャインウエザーメーターによる2000時間の耐候性試験を行い、試験前、500時間、1000時間、1500時間、2000時間経過後の色調の色差(ΔE)を算出した。色調測定には、JIS K 5600−4−5準拠の色彩色差計(コニカミノルタ社製)を使用し、色差の算出はJIS K 5600−4−6に準拠した。結果を表1、図2に示す。
【実施例2】
【0036】
熱硬化電着塗膜の膜厚を30μmとした以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【実施例3】
【0037】
熱硬化電着塗膜の膜厚を40μmとした以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【実施例4】
【0038】
熱硬化電着塗膜の膜厚を20μmとするとともに該熱硬化電着塗膜を、顔料濃度0.5重量部を含有した白色の着色塗膜とした以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【実施例5】
【0039】
陽極酸化皮膜を形成した後、Ni浴中で二次電解着色を施し、陽極酸化皮膜を茶色の着色皮膜とした以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【実施例6】
【0040】
陽極酸化皮膜形成前のアルミ素地に酸エッチングによるマット処理を施した以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【実施例7】
【0041】
電着塗装を2回施した後焼付した熱硬化電着塗膜を、白色顔料30重量部含有した下層10μmの白色塗膜と、上層10μmのクリヤー塗膜の2層とした以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【比較例1】
【0042】
熱硬化電着塗膜の膜厚を10μmとした以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【比較例2】
【0043】
熱硬化電着塗膜を、顔料濃度10重量部を含有した白色の着色塗膜とした以外、比較例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【比較例3】
【0044】
ポリエステル樹脂系の水溶性熱硬化電着塗料(神東塗料株式会社製)を用いて、膜厚10μmの熱硬化電着塗膜とした以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【比較例4】
【0045】
ポリエステル樹脂系の粉体塗料(デコラル社(イタリア)製)を用いて、静電塗装を施して、膜厚40μmの熱硬化粉体塗膜とした以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【比較例5】
【0046】
アクリル樹脂系の溶剤型吹付け塗料(大宝化学工業株式会社製)を用いて、スプレー塗装を施して、膜厚30μmの熱硬化スプレー塗膜とした以外、実施例1と同様とした。結果を表1、図2に示す。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ素地に形成した陽極酸化皮膜と、該陽極酸化皮膜に形成した厚膜の熱硬化電着塗膜と、該熱硬化電着塗膜にこれを染料受容層とした昇華性インクの熱転写を施すことによって該熱硬化電着塗膜に受容した昇華染料とを備えてなることを特徴とするアルミ建材又はアルミ加工品。
【請求項2】
上記厚膜の熱硬化電着塗膜の膜厚を、15〜50μmとしてなることを特徴とする請求項1に記載のアルミ建材又はアルミ加工品。
【請求項3】
上記熱硬化電着塗膜を、顔料濃度を0.1〜5重量部含有する着色塗膜としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミ建材又はアルミ加工品。
【請求項4】
上記熱硬化電着塗膜を、下層の着色塗膜と、上層のクリヤー塗膜の複層とし、該上層のクリヤー塗膜を上記染料受容層としてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のアルミ建材又はアルミ加工品。
【請求項5】
上記アルミ素地を、マット処理を施したアルミ素地としてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のアルミ建材又はアルミ加工品。
【請求項6】
上記アルミ素地に形成した陽極酸化皮膜を、二次電解着色皮膜としてなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載のアルミ建材又はアルミ加工品。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−222821(P2010−222821A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70449(P2009−70449)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】