説明

アルミ角形2次電池ケース

【課題】アルミ角形2次電池ケースの薄型化の際に、プレス一体成型で安全弁を形成した封口板を使えるようにするとともに、弱体化するケースの開口(口元)部分の剛性を増す。
【解決手段】封口板を取り付けるアルミ角形2次電池ケースのケース10の上方の開口12を絞り加工などによって広げ、封口板11との接合部を形成して薄肉化により弱体化するケースの開口(口元)部分の剛性を増す。一方、封口板は、広げたケース10の開口12と同じ幅(内寸)にすることで、有効受圧面積の大きな安全弁をプレス一体成型で作れるようにし、内圧の低い場合でも開裂が十分起きるようにして薄型化したケースの封口板として使用できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薄型化したアルミ角形2次電池ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミ製の角形2次電池ケースは、角形のケースとそのケース上方の開口に取り付ける封口板とで構成され、前記封口板に、安全弁を例えばコイニングなどのプレス成型で形成したものがある。
【0003】
このような電池ケースは、主に、リチウムイオン電池やキャパシタのケースとして用いられており、車載用として使用することが考えられている。そのため、省スペースを図り、エネルギー密度の向上を図るため、ケースの薄型化が求められている。
【0004】
ところが、このような薄型化に伴う第1の問題として、封口板に関するものがある。
【0005】
すなわち、封口板は、ケースの薄型化に伴って幅を細くすると、封口板に形成する安全弁の幅も狭くなり、有効受圧面が小さくなる。そのため、内圧上昇による弁部の開裂が十分に行なわれない問題があった。また、このとき、薄型化のためにケースを薄肉化するとケースの耐圧が低くなるため、弁の作動圧を低く設定して確実に開裂する必要があった。
【0006】
また、第2の問題として、ケースの薄肉化に関するものがある。すなわち、開口(口元)端の部分が、歪んだり、折れ曲がったりして、不安定に(弱く)なり、封口板の取り付けに問題を生じる恐れがあった。特に、薄肉化による強度不足のため、組み立ての最終工程(溶接前の)で行なわれる脱脂洗浄後の乾燥の際の加熱によって内在していた残留応力が解放されて、開口(口もと)に変形を来たすことが考えられる。
【0007】
このような第1の封口板に関する問題を解決する一つの方法として、例えば、(特許文献1)には、図9(a)、(b)に示すように、封口板1の安全弁2に帯状端子板3を取り付けて安全弁2が確実に開裂するようにしたものが記載されている。
【0008】
すなわち、この封口板1は、金属製のキャップ端子4の下に可撓性を有する金属製の安全弁2を設け、その安全弁2の下に絶縁リング5を設けて、前記リング5の下に金属製の有孔板6を配置し、その有孔板6の中央孔6aに、帯状端子板3を挿入して溶着した構造となっている。前記帯状端子板3は、リボン状の金属板を凸型に折り曲げて形成したもので、電池の内圧が上昇すると、上昇した内圧が前記端子板3の凸部に集まり、安全弁2の中央部を持ち上げて破断する。
【0009】
また、第2の薄肉化に関する問題を解決する応用可能な方法の一つとして、例えば、(特許文献2)には、リチウム2次電池などの2次電池ケースの変形を防止するため、補強板を用いる方法が記載されている。
【0010】
すなわち、この補強板を用いるものは、上方が開口した電池ケースの開口近傍の所定位置に、電池ケースの変形を防止する補強板をレーザ溶接により固定したもので、補強板の上に封口板を載置する。こうすることで、電池ケースを圧縮成型時の圧力によって、座屈させることなく、安定したカシメ金型による圧縮成型ができるというものである。
【特許文献1】特開平8−153510号公報
【特許文献2】特開平11−204131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の第1の問題を解決するために、封口板に帯状端子板を取り付けるものでは(特許文献1)、有効受圧面が小さくなっても確実に開裂が行われると考えられるが、凸型に折り曲げた端子板を溶着しなければならないので、プレスによる一体成型で製造することができない。そのため、部品コストや製造コストが余計に掛かる。また、用意した端子板を封口板に溶着しなければならないので作業工程も増える。しかも、帯状端子板の凸部と金属製の安全弁との溶着の仕方で、封口板の作動圧が変化したり、可撓性の金属製安全弁の厚みや溶着面積で封口板の作動圧が変化したりするため、全ての箇所を協調して調整しなければならず、調整が難しいと考えられるなどの課題がある。
【0012】
また、上記の第2の問題を解決するために、補強板を用いる方法では(特許文献2)、補強板を新たに準備しなければならず、組立の際には、補強板を溶接する工程が増えるため、部品コストや製造コストが余計に掛かる。さらに、補強板を追加した分だけ、電池が重くなるなどの課題がある。
【0013】
そこで、この発明の課題は、先ず、第1に、薄型化の際に、帯状端子板などを用いなくても十分に開裂できるようにして、プレス一体成型で安全弁を形成した封口板を使えるようにすることである。次に、補強板を使わずに、その薄肉化により弱体化するケースの開口(口元)部分の剛性を増すことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、プレス成型で安全弁を形成した封口板を、ケース上方の開口にレーザ溶接で取り付けるアルミ角形2次電池ケースにおいて、上記ケースの材厚を薄くして容量を変えずにケース幅を縮小するとともに、ケースの開口を広げて、その広げた開口に、安全弁の受圧面積を大きくした封口板を取り付けるようにした構成を採用したのである。
【0015】
このような構成を採用することにより、ケースの開口(口元)を広げて、幅の広い封口板を取り付けられるようにする。このような幅の広い封口板は、安全弁を形成するための十分なスペースを確保できるので、有効受圧面積の大きな安全弁をプレス一体成型で作ることができる。このとき、安全弁の有効受圧面積を大きくしたので、低い内圧でも開裂が十分起きるようにできる。また、開裂時の開放面積を大きくして解放量を多くできるので安全性の向上も図れる。さらに、プレス一体成型で封口板を形成するので組み立て後に作動圧を調整する必要はない。また、このとき、ケースの開口のみを広げたので、広げたケースの開口に封口板を溶接する場合、溶接位置をケース内の電池材料よりも外側にできるので、溶接のパワーを最大限にする事ができる。
【0016】
また、このとき、請求項2の発明では、開口は端部を外向きに折り曲げて広げたものとし、その先端を立ち上げて封口板を取り付け、取り付けた封口板とその下方に形成されたケース内への入口との間に隙間を形成した構成を採用したのである。
【0017】
このような構成を採用することにより、上記請求項1の作用効果に加え、開口の折り曲げた端部は、折り曲げにより補強板を用いなくても強度を増すことができる。また、ケースの内圧は、隙間を介して封口板の安全弁に加わるので、安全弁の幅がケース内の入り口よりも大きな場合でも作動させることができる。このように、安全弁の大きさを大きくして作動圧を設定できるので、作動圧の設定範囲を広げられる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、上記のように構成したことにより、プレス一体成型で形成した封口板を用いて、ケースの薄型化ができる。その際、封口板の構造も簡単なので組み立ても容易にできる。しかも、構造が簡単なので、信頼性も高く安価にできる。さらに、開口を折り曲げ加工で広げるようにすれば、薄肉化した開口(口元)も強化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、この形態のアルミ角形2次電池ケースは、角形ケース(以下、ケース)10とケース10上方の開口12に取り付ける封口板11とで構成されている。
【0021】
ケース10は、幅aを薄くして薄型化を図ったもので、その際、薄肉化により内容量の低下を抑えたものである。また、ケース10上方の開口(口元)12は、図2のように広げてある。
【0022】
すなわち、ケース10の上方の開口12は、図2のように、例えば、絞り加工などによって外向きに90度折り曲げ、その先端を垂直に立ち上げて封口板11との接合部を形成してある。このように、この開口12の部分は、折り曲げたことによって剛性を増すようにしており、封口板11の取り付けの際に、歪みや折れ曲がりなどが起き難いようにして、組み立てが容易にできるようにしてある。このとき、立ち上げた垂直部分の高さは封口板11の厚さと同じにして封口板11が突出しないようにしてある。
【0023】
封口板11は、プレス一体成型にて形成したもので、アルミニウム合金製の基材をケース10の開口12に合わせた角形に形成し、その周囲にフランジを設けて前記ケース10の開口12に接合するようにしたものである。また、この封口板11の中央に、基材を薄膜に形成して安全弁13を設け、その安全弁13の両側に、後工程によって端子を取り付けるための貫通孔16を設けた構造としてある。なお、符号9は注液孔である。
【0024】
安全弁13は、例えば、コイニングによる補助成型により、刻印を成型したしたもので、その幅は、図2のように、ケース10の幅近くにまで広げてある。このように、安全弁13の幅を広げられるのは、ケース10の開口12を広げて、その広げた部分で封口板11のフランジ部分を支持するようにしたことによるものである。
【0025】
また、こうして開口12の幅を広げることで、安全弁13を大きくできるので、内圧の上昇が低い場合でも、開裂するのに十分な受圧面積にできる。このように、開口12を広げることで、調整作業を難しくする帯状端子板3などを用いなくても規定の圧力で開裂するようにしたのである。
【0026】
このように構成されるケース10と封口板11は、脱脂洗浄して乾燥後に、ケース10に電池材料を収容したのち、開口12に封口板11を嵌め、図2のように、周囲をレーザ溶接でもって溶着15する。
【0027】
このとき、ケース10の開口(口もと)12は、折り曲げたことによって剛性を増しているので、乾燥の際に加えられた熱により残留応力が生じても歪みや折れ曲がりなどを起こさない。そのため、ケース10の開口12へ容易に封口板11を嵌めることができる。また、補強板を用いないので軽量化が図れ、部品や工程数の増加がないので、低コストにできる。
【0028】
こうして組み立てた2次電池のケース10の内圧が、いま、何らかの原因で高くなると、その圧力は、開口12に取り付けた封口板11の安全弁13に加わる。このとき、安全弁13は、有効な受圧面積を有しているので、内圧の上昇に応じた変形量を生じて規定の圧力(薄肉化により低下したケースの耐圧以下)に達すると、開裂(破断)して内圧を低下させることができる。
【0029】
このように安全弁13の受圧面積を大きくできるので、開裂を低圧で行なえる。そのため、薄型化(薄肉化)によって耐圧の低くなったケースに使用できる。また、開裂面積を大きくできるので、圧力の解放量を大きくして、安全弁13の開裂性能を安定させることも可能である。
【実施例1】
【0030】
この実施例1は、ケース10の開口12の他の態様を示すもので、図3の断面図に示すように、例えば、絞り加工などにより、端部を外向きに広げて傾斜させ、ラッパ状(上向き)にして、その先端を垂直に立ち上げ、封口板11の接合部を形成したもので、開口12の周囲をケース10の幅よりも広くしてある。
【0031】
そのため、このラッパ状の開口12に封口板11を取り付けると、図3のように、封口板11と、封口板11の下方に形成されたケース10内への入り口17との間に隙間dを形成するようにしてある。このようにして設けた隙間dは、ケース10内からの急激な圧力の増加を分散して上方の安全弁13全体に均一に加えることができる。例えば、図3の破線19で示すように、安全弁13の大きさがケース10の入り口17よりも大きな場合でも作動させることができる。したがって、安全弁13の大きさをケース10の入り口17の大きさに関わらずに変えられるので、作動圧の設定範囲を広げられる。他の構成及び作用効果は実施形態と同じなので、図面に同一符号を付して説明は省略する。
【実施例2】
【0032】
実施例2は、ケース10と封口板11の嵌合隙間を極小として、レーザ溶接を強固にできるようにしたもので、図4の断面図に示すように、ケース10の開口の先端を外向きに折り曲げて、周囲に溶着用のフランジを設け、そのフランジと当接するフランジを封口板11の周囲を延長して形成したものである。
【0033】
このように構成される封口板11とケース10は、ケース10に電池材料を収容したのち、開口12に封口板11を嵌め、図4のように、フランジ同士を当接させて周囲をレーザ溶接でもって溶着15する。このため、レーザ溶接の深度を深くできるので、接合強度を向上して、アルミ角形2次電池ケースの耐圧性能を飛躍的に向上できる。他の構成及び作用効果は実施形態及び実施例1と同じなので、図面に同一符号を付して説明は省略する。
【実施例3】
【0034】
実施例3は、図5に示すように、ケース10の開口12の他の態様を示すもので、開口12の中央部分を両端の部分より広くしたものである。このとき、開口12の形状(中央部分の幅を広くした部分)は、実施形態のように90°広げたものや実施例1のラッパ状のどちらでも良い。また、これ以外の形状であっても開口12を広げたものであればよい。
【0035】
一方、封口板11は、開口12に合わせて安全弁13を形成する中央部分の幅を広くして、その機能に支障が無いようにしたもので、強度の向上と小型化を図ることができるというものである。他の構成及び作用効果は実施形態及び実施例1、2と同じなので、図面に同一符号を付して説明は省略する。
【実施例4】
【0036】
この実施例4は、図6に示すように、本願の2次電池を一つのセル20として複数個のセル20を並列に配置したもので、各セル20は、電気的には直列に接続されている。そして、このように配置することにより、図6の矢印のような冷却用の風をセル20間に通すようにしたものである。
【0037】
すなわち、セル20は、図7のように、開口12同士を並列に並べるだけで、ケース10の広げた開口12が当接して、スペーサを使用することなく間隙bを形成できる。そのため、設置や取替えを容易に行なえるというものである。他の構成及び作用効果は実施形態及び実施例1〜3と同じなので、図面に同一符号を付して説明は省略する。
【実施例5】
【0038】
この実施例5は、図8に示すように、図7の間隔bを調整できるようにしたものである。すなわち、セル20を上下に段差を設けて立体的に配置することにより、間隔bを小さくできるというものである。そのため、図8のように、クランクを形成したバスバー25を接続して段差の付いた電極を接続できるようにしてある。他の構成及び作用効果は実施形態及び実施例1〜4と同じなので、図面に同一符号を付して説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明は、2次電池ケースのスリム化を複雑な機構を用いないで実現できる。そのため、調整作業も不要で、安価にできるので、例えばリチウム電池ケース、キャパシタ用ケース、燃料電池ケースとして、自動車、船舶、家庭用・・・の電源として利用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態の分解斜視図
【図2】実施形態の断面図
【図3】実施例1の断面図
【図4】実施例2の断面図
【図5】実施例3の分解斜視図
【図6】実施例4の斜視図
【図7】実施例4の作用説明図
【図8】実施例5の作用説明図
【図9】(a)従来例の断面図、(b)(a)の分解斜視図
【符号の説明】
【0041】
10 角形ケース
11 封口板
12 開口
13 安全弁
15 溶着
17 入り口
a 幅
b 間隙
d 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成型で安全弁を形成した封口板を、ケース上方の開口にレーザ溶接で取り付けるアルミ角形2次電池ケースにおいて、
上記ケースの材厚を薄くして容量を変えずにケース幅を縮小するとともに、ケースの開口を広げて、その広げた開口に、安全弁の受圧面積を大きくした封口板を取り付けるようにしたアルミ角形2次電池ケース。
【請求項2】
上記開口は、端部を外向きに折り曲げて広げたものとし、その先端を立ち上げて封口板を取り付け、取り付けた封口板とその下方に形成されたケース内への入口との間に隙間を形成した請求項1に記載のアルミ角形2次電池ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−140753(P2009−140753A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315771(P2007−315771)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(592204886)冨士発條株式会社 (11)
【Fターム(参考)】