説明

アレイアンテナのキャリブレーション用回路及びアレイアンテナのキャリブレーションの方法

【課題】装置内の定常スプリアス信号成分を相殺して、CAL特性の劣化を補償する。
【解決手段】キャリブレーション用の信号の極性を正極性と逆極性とにそれぞれ符号反転させるキャリブレーション信号極性制御回路22と、キャリブレーション信号極性制御回路22の符号反転に対応し、キャリブレーション用の信号が正極性の場合は、相関値を正極性とする符号パターンを、キャリブレーション用の信号が逆極性の場合は、相関値を逆極性とする符号パターンをそれぞれ出力するキャリブレーション信号符号パターン発生器21と、を備え、相関器18は、正極性のキャリブレーション用の信号が送信されている場合の正極性の相関値を求め、かつ逆極性の信号が送信されている場合の逆極性の相関値を求め、該逆極性の相関値に逆極性の符号パターンを適用した値と正極性の相関値との平均を真の相関値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
CAL(キャリブレーション)信号の極性を逆転した信号(符号)パターンを用いることによって、装置内に定常的に存在するスプリアス成分による相関値のみが逆極性となることを利用し、通常の相関値と極性反転した相関値を平均化することにより、装置内の定常スプリアス信号成分を相殺して、CAL特性の劣化を補償することを特徴とするアレイアンテナのキャリブレーション用回路及びアレイアンテナのキャリブレーションの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の需要増大に伴い、限られた無線資源の中で更なる大容量化、高速化が求められている。アレイアンテナは、そのような要求に応えるために用いられるアンテナであり、ビームフォーミングやMIMO(Multi Input Multi Output)を実現し大容量化高速化を行うことが可能である。
【0003】
図10に、アレイアンテナを用いたビームフォーミングの例を示す。各アンテナの送受信信号の特性(遅延/位相振幅)を調整することにより、干渉を用いて電波に指向性を持たせている。この技術により、別方向にいるユーザを分離して取り扱うことができ、干渉を抑えて高速大容量通信が可能となる。
【0004】
アレイアンテナを用いてビームフォーミングやMIMOを行うためには、各アンテナ間の特性が揃っている必要がある。しかし実際には、製造における誤差、回路やケーブルの特性差によるバラツキがあり、更には温度などの影響によっても変化していく。そのためビームフォーミングやMIMOを用いるためには、アンテナ間のキャリブレーションが必須であり、各アンテナ間、正確には、アンテナを含む伝送経路における遅延量や位相振幅変化を一致させて、アンテナで送受信される信号の特性を揃える必要がある。
【0005】
更に、このようなキャリブレーションは、アレイアンテナを製造したときに一度だけ行えばよいというものではなく、ある程度の間隔を置いて定期的に(温度変化や経年変化などに応じて)行う必要がある。
【0006】
アレイアンテナを有する装置の特性を高レベルで維持するためには、キャリブレーション機能や補正回路(位相振幅補正、遅延補正)を実装する必要がある。そのようにして特性を一致させたアレイアンテナにより、ビームフォーミングやMIMOを実現して高速大容量な通信を実現する。
【0007】
図10では、点線で囲まれたアンテナ校正部で遅延/振幅位相補正を行い、各アンテナ(送受信チャネル)の特性を一致させている。その上で、到来方向θにより生じている伝送路差(dk sinθ)を打ち消すように信号を制御することによりビームフォーミングを行っている。
【0008】
図11に、具体的なキャリブレーション機能の例を示す。図11は、キャリブレーション送受信回路(アナログ部)をチャネル1と共有する構成である。
【0009】
各アンテナ間(チャネル間)のキャリブレーションは、送信(TX)と受信(RX)についてそれぞれ行う必要がある。
【0010】
送信キャリブレーション(TX−CAL)機能では、送受信処理部1で生成された各チャネル1〜n(ch−1乃至ch−n)のTX−CAL送信信号を通常送信信号経路を通じて出力してカップラ7−1乃至7−nで折返し、キャリブレーション信号分配/合成器6で合成しCAL端子へ出力する。
【0011】
CAL端子から入力されたTX−CAL信号は、キャリブレーション信号送受信スイッチ16とキャリブレーション信号受信スイッチ15を通して受信される。各チャネルから送信されたTX−CAL送信信号の経路は、カップラ7−1乃至7−nとキャリブレーション信号分配/合成器6との間を除いた各チャネルの送信経路のみが異なっているため、送信チャネル毎のTX−CAL受信信号を比較することによって位相、振幅及び遅延差を求めることが出来る。
【0012】
受信キャリブレーション(RX−CAL)機能では逆に、送受信処理部1で生成された受信キャリブレーション(RX−CAL)送信信号を、ch−1の送受信回路4−1へ出力し、キャリブレーション信号送信スイッチ14とキャリブレーション信号送受信スイッチ16を経てCAL端子から出力させる。アンテナユニット5のCAL端子から入力されたRX−CAL信号は、キャリブレーション信号分配/合成器6とカップラ7−1乃至7−nを通して各アンテナ8−1乃至8−nに分配され、通常受信経路を通じて、各チャネルの送受信回路4−1乃至4−nで受信される。この場合、RX−CAL信号が送受信された経路は、各チャネルの受信経路のみが異なっているため、受信チャネルのRX−CAL受信信号を比較することにより、位相、振幅及び遅延差を求めることが出来る。
【0013】
図12は、キャリブレーション送受信回路(アナログ部)に専用回路(キャリブレーション信号送受信回路3)を用いた例である。TX−CAL信号の受信と、RX−CAL信号の送信をこのキャリブレーション信号送受信回路3で行っている。このようにして求めた位相、振幅及び遅延差は、補正係数を用いて送信/受信チャネルを校正し、チャネル間の特性を揃える。式11、12に具体的な校正方法を示す。送信/受信とも基本的な考え方は同じである。ここでは、全チャネル特性を第1チャネルに合せている。遅延補正における定数Cは、遅延方向がプラス方向しか制御できないため、正数化するために用いている。位相振幅補正は、I,Q平面(複素数)として計算している。
【0014】
キャリブレーション用送受信処理回路3で受信する。このキャリブレーション信号送受信回路3から
Dk=C−e1,k (式11)
Dk:遅延補正量、
C:最大遅延補正量(定数)、
e1,k:チャネル1に対するチャネルkの相対遅延量(測定値)
Mk=W1/Wk (式12)
Mk:位相振幅補正量、
W1:チャネル1の位相振幅(測定値、複素数(I、Q))、
Wk:チャネルkの位相振幅(測定値)。
【0015】
キャリブレーション用の信号(CAL信号)には、遅延差の測定と位相振幅差の測定で異なるパターンが用いられる。遅延差測定においては、タイミングが一致したときのみ最大相関値となり、少しでもタイミングがずれるとほとんどゼロとなるM系列が良く用いられる。TX遅延CALでは、1つの受信チャネルのみを使用するため、各送信チャネルに対して個別に遅延測定を行う必要があり同時測定はできない。これは、M系列信号の場合、複数の信号を合成して受信すると、信号を分離することができないためである。
【0016】
RX−CALでは、1つの送信信号を全チャネルへ分配しているので複数チャネルの同時受信が可能である。遅延差測定では、このようなTX/RX−CAL信号に対してタイミングをずらしながら、送信と同じM系列パターンとの相関値(I,Q)を計算し、相関値(絶対値)がピークとなるタイミングを検出する。この方法は、移動通信(W-CDMA等)における伝送路測定(パスサーチ)などに用いられている方法と基本的に同じ考え方である。
【0017】
一方、位相振幅差測定では、遅延補正によって遅延を一致させた複数アンテナにおいて同時測定を行う必要がある。RX−CALでは、同じ信号を複数のチャネルで同時に受信することが可能であるが、TX−CALでは、1つの受信器での複数チャネルからの信号を同時受信する必要がある。それらの信号を分離するために直交符号を用いる。直交符号はコード分離可能であるため、各送信チャネルからの信号に異なるコードを割り振ることにより信号を分離して、位相振幅差を求めることができる。
【0018】
無線送受信装置の送受信信号には、装置内外から様々な不要波(スプリアス信号)が入り込む。このようなスプリアス信号の影響は、通常送受信だけでなくキャリブレーション信号にも及ぶ。熱雑音のように白色ガウス雑音に近い場合や比較的小さいスプリアス信号の場合は、キャリブレーション測定における相関値計算の平均回数を増やすことや、キャリブレーション信号のパターン長を長くすること、更に、キャリブレーション信号出力レベル自体を挙げることにより、影響を小さくすることができる。
【0019】
しかし、送受信の同期回路から発生するスプリアス信号などの場合、キャリブレーション信号に対しても同期してしまい、定常的に同じ相関値が得られてしまうことがある。このような場合、平均回数を増やしても効果はなく、パターン長を伸ばすことや出力レベルを上げることにより改善するしかなかった。ただし、パターン延長や出力レベルアップは、装置構成や信号レベルダイヤ、データフォーマット仕様により変動可能な範囲が限られており、改善には限界があった。
【0020】
キャリブレーション機能では、送信回路のPA(パワーアンプ)や、受信回路のLNA(low noise amp)により大幅な増幅が行われるためCAL送信出力はできるだけ下げる必要があり、通常信号では問題にならないスプリアス信号の影響が現れやすい。
【0021】
更に、同じ周波数信号の送受信が同時に行われるので、送信側から受信側への漏れ信号の影響を最小限にするため(アイソレーション問題のため)に、CAL送信経路での信号レベルをできるだけ下げて、CAL受信レベルとの差が大きくならないようにしている。そのため、やはり基本的に通常送受信信号に比べて出力を低くする必要がある。
【0022】
そのため、特許文献1には、キャリブレーション信号が挿入された主信号が入力されるアナログ回路の位相特性を推定し、この位相特性と逆特性の位相調整を主信号に施す発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2005−286780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明は、位相補正動作の原理を示唆するものであり、発明の具体性に乏しく、上述の問題点を解決するものではないという問題点がある。
【0025】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、装置内の定常スプリアス信号成分を相殺して、CAL特性の劣化を補償するアレイアンテナのキャリブレーション用回路及びアレイアンテナのキャリブレーションの方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述の問題を解決するため、本発明に係るアレイアンテナのキャリブレーション用回路は、キャリブレーション用の信号を発生させる送受信信号処理部と、アレイアンテナの各アンテナ素子近傍にそれぞれ設けられ、前記キャリブレーション用の信号が入力された場合、該入力された信号を近傍の前記アンテナ素子に発信し、前記キャリブレーション用の信号が前記アンテナ素子に入力された場合、その信号を前記アンテナ素子から受信するカップラと、前記キャリブレーション用の信号を前記カップラのそれぞれに分配し、前記カップラがそれぞれ受信した信号を合成して一つの信号にするキャリブレーション信号分配/合成器と、前記合成による前記一つの信号と前記キャリブレーション用の信号とを比較することによって送信時の遅延差を、前記アンテナ素子が受信した信号と前記キャリブレーション用の信号とを比較することによって受信時の遅延差を、それぞれ相関値として求める相関器とを有する、アレイアンテナのキャリブレーション用回路であって、前記キャリブレーション用の信号の極性を正極性と逆極性とにそれぞれ符号反転させるキャリブレーション信号極性制御回路と、前記キャリブレーション信号極性制御回路の符号反転に対応し、前記キャリブレーション用の信号が正極性の場合は、前記相関値を正極性とする符号パターンを、前記キャリブレーション用の信号が逆極性の場合は、前記相関値を逆極性とする符号パターンをそれぞれ出力するキャリブレーション信号符号パターン発生器と、を備え、前記相関器は、前記キャリブレーション信号極性制御回路により正極性の前記キャリブレーション用の信号が送信されている場合の正極性の相関値を求め、かつ前記キャリブレーション信号極性制御回路により逆極性の信号が送信されている場合の逆極性の相関値を求め、該逆極性の相関値に前記逆極性の符号パターンを適用した値と前記正極性の相関値との平均を真の相関値とすることを特徴とする。
【0027】
上述の問題を解決するため、本発明に係るアレイアンテナのキャリブレーションの方法は、キャリブレーション用の信号を発生させる手順と、アレイアンテナの各アンテナ素子近傍にそれぞれ設けられたカップラに前記キャリブレーション用の信号が入力された場合、該入力された信号を近傍の前記アンテナ素子に発信する手順と、前記キャリブレーション用の信号が前記アンテナ素子に入力された場合、その信号を前記アンテナ素子から前期カップラが受信する手順と、前記カップラがそれぞれ受信した信号を合成して一つの信号にする手順と、前記合成による前記一つの信号と前記キャリブレーション用の信号とを比較することによって送信時の遅延差を、前記アンテナ素子が受信した信号と前記キャリブレーション用の信号とを比較することによって受信時の遅延差を、それぞれ相関値として求める手順とを有する、アレイアンテナのキャリブレーションの方法であって、前期キャリブレーション用の信号を発生させる手順の後に、前記キャリブレーション用の信号の極性を正極性と逆極性とにそれぞれ符号反転させるキャリブレーション信号極性制御手順と、前記キャリブレーション信号極性制御手順での符号反転に対応し、前記キャリブレーション用の信号が正極性の場合は、前記相関値を正極性とする符号パターンを、前記キャリブレーション用の信号が逆極性の場合は、前記相関値を逆極性とする符号パターンをそれぞれ出力するキャリブレーション信号符号パターン発生手順と、を備え、前記相関値として求める手順は、前記キャリブレーション信号極性制御手順により正極性の前記キャリブレーション用の信号が送信されている場合の正極性の相関値を求め、かつ前記キャリブレーション信号極性制御手順により逆極性の信号が送信されている場合の逆極性の相関値を求め、該逆極性の相関値に前記逆極性の符号パターンを適用した値と前記正極性の相関値との平均を真の相関値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、キャリブレーション用の信号を符号反転させることにより、装置内の定常スプリアス信号成分を相殺して、CAL特性の劣化を補償するアレイアンテナのキャリブレーション用回路及びアレイアンテナのキャリブレーションの方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態のCAL信号兼用回路構成における送信キャリブレーション機能を説明するブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のCAL信号兼用回路構成における受信キャリブレーション機能を説明するブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態のCAL信号専用回路構成における送信キャリブレーション機能を説明するブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態のCAL信号専用回路構成における受信キャリブレーション機能を説明するブロック図である。
【図5】本発明の第1及び第2の実施の形態における符号制御を示すブロック図である。
【図6】本発明の他の実施の形態における符号制御を示すブロック図である。
【図7】第1の実施の形態において、受信側でのタイミングシフトKによる遅延分布作成での定常スプリアス信号の影響を説明する図である。
【図8】第3の実施の形態において、送信側でのタイミングシフトLによる遅延分布作成での定常スプリアス信号の影響を説明する図である。
【図9】図7における定常スプリアスの影響による遅延分布の例と本発明における第1の実施の形態での補償方法を説明する図である。
【図10】関連技術におけるアレイアンテナによるビームフォーミングを説明する図である。
【図11】関連技術におけるアレイアンテナのキャリブレーション機能の概要を示すブロック図である(CAL信号兼用回路構成)。
【図12】関連技術におけるアレイアンテナのキャリブレーション機能の概要を示すブロック図である(CAL信号専用回路構成)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態の概略は、図1に基づくと、以下の通りである。
【0031】
キャリブレーション用の信号を発生させる送受信信号処理部1と、アレイアンテナの各アンテナ素子8−1乃至8−n近傍にそれぞれ設けられ、キャリブレーション用の信号が入力された場合、この入力された信号を近傍のアンテナ素子8−1乃至8−nに発信し、キャリブレーション用の信号がアンテナ素子8−1乃至8−nに入力された場合、その信号をアンテナ素子8−1乃至8−nから受信するカップラ7−1乃至7−nと、キャリブレーション用の信号をカップラ7−1乃至7−nのそれぞれに分配し、カップラ7−1乃至7−nがそれぞれ受信した信号を合成して一つの信号にするキャリブレーション信号分配/合成器6と、合成による一つの信号とキャリブレーション用の信号とを比較することによって送信時の遅延差を、アンテナ素子8−1乃至8−nが受信した信号とキャリブレーション用の信号とを比較することによって受信時の遅延差を、それぞれ相関値として求める相関器18とを有する、アレイアンテナのキャリブレーション用回路であって、キャリブレーション用の信号の極性を正極性と逆極性とにそれぞれ符号反転させるキャリブレーション信号極性制御回路22と、キャリブレーション信号極性制御回路22の符号反転に対応し、キャリブレーション用の信号が正極性の場合は、相関値を正極性とする符号パターンを、キャリブレーション用の信号が逆極性の場合は、相関値を逆極性とする符号パターンをそれぞれ出力するキャリブレーション信号符号パターン発生器21と、を備え、相関器18は、キャリブレーション信号極性制御回路22により正極性のキャリブレーション用の信号が送信されている場合の正極性の相関値を求め、かつキャリブレーション信号極性制御回路22により逆極性の信号が送信されている場合の逆極性の相関値を求め、該逆極性の相関値に逆極性の符号パターンを適用した値と正極性の相関値との平均を真の相関値とする。
【0032】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態として、キャリブレーション信号(以下、CAL信号)の送受信(アナログ部)を通常信号送受信回路と兼用した場合について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで、図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態のCAL信号兼用回路構成における送信キャリブレーション機能を説明するブロック図である。
【0033】
この図1及び図2では、チャネル1(以下、ch−1)の送受信回路4−1が、CAL信号の送受信回路と兼用になっており、送信キャリブレーション(TX−CAL)における受信経路と、受信キャリブレーション(RX−CAL)における送信経路設定において、信号経路を切り換えCAL専用端子からCAL信号の入出力を行うことができる(図11参照)。
【0034】
更に、デジタル部の送受信処理部1において、全チャネルに対して、CAL信号の生成送受信行う回路及び相関計算を行う回路を備えている。又、アンテナ8−1乃至8−nの手前にはCAL信号をアンテナ部手前で折り返すためのカップラ7−1乃至7−nとCAL信号の分配/合成器であるキャリブレーション信号分配/合成器6とを有している。なお、図1、図2では、説明を簡略化するために周波数コンバータ、アンプ、フィルタ、アッテネータなどの回路は省略されている。
【0035】
続いて、図1、図2を参照しながらCAL信号経路について説明する。ここで、図1は、TX−CALにおける信号経路について示している。各チャネルの通常送信経路(デジタル部)から出力されたTX−CAL信号は、D/Aコンバータ11を経てそのまま通常送信経路でアンテナ8−1乃至8−n端手前のカップラ7−1乃至7−nまで伝送される。
【0036】
カップラ7−1乃至7−nで折り返されたTX−CAL信号は、キャリブレーション信号分配/合成器6で合成され、ch−1の送受信回路4−1内のキャリブレーション信号送受信スイッチ16とキャリブレーション信号受信スイッチ15によってch−1の通常受信経路に入力されてA/Dコンバータ12を経て相関器18へ送られる。
【0037】
図2は、RX−CALにおける信号経路について示している。ch−1の送受信回路4−1へ出力されたRX−CAL信号は、D/Aコンバータ11から、キャリブレーション信号送信スイッチ14とキャリブレーション信号送受信スイッチ16を経てCAL端子へ出力される。そして、キャリブレーション信号分配/合成器6で各アンテナへ分配され、カップラ7−1乃至7−nで折り返されて、そのままアンテナ8−1乃至8−n端手前から通常受信経路へ入力される。その後、各チャネルの送受信回路4−1内のA/Dコンバータ12を経て相関器18へ送られる。
【0038】
図1、図2に示したTX/RX−CAL信号経路のアナログ部において、様々な不要波(スプリアス信号)が入り込み、相関値測定の精度を悪化させる。このようなスプリアス信号が、熱雑音のような白色ガウス雑音的な成分であれば、相関計算において単純に平均回数を増やすことにより精度を上げることができる。
【0039】
しかし定常的なスプリアス信号(常に同じ値が観測される不要波)の場合には、毎回同じ不要波が加わっているため平均化によって抑圧することができない。対応策としては、キャリブレーション符号パターン長を伸ばすことやCAL出力レベルを上げることによる改善しかなかった。ただし、キャリブレーション符号パターンの延長やCAL出力のレベルアップは、装置構成や信号レベルダイヤ、データフォーマット仕様により変更できる範囲に限りがあり、CAL特性改善には限界があった。
【0040】
本実施の形態では、CAL信号の極性を逆転したCAL送信信号と相関計算のキャリブレーション符号パターンを用いることによって、装置内に定常的に存在するスプリアス信号成分を相殺し、CAL特性の劣化を補償することを特徴とする。
【0041】
図1を用いて、第1の実施の形態におけるTX−CAL機能を説明する。キャリブレーション信号極性制御回路22により、各チャネルのキャリブレーション信号送信回路20から通常(正極性)のTX−CAL送信信号が送信され、ch−1の受信部では、キャリブレーション信号符号パターン発生器21からTX−CAL送信信号に対応する通常(正極性)のキャリブレーション符号パターンが出力されているとき、相関器18では、キャリブレーション符号パターン出力と同期してTX−CAL受信信号との相関値が計算され、通常の相関値が得られる。次に、キャリブレーション信号極性制御回路22により、各チャネルのキャリブレーション信号送信回路20から逆極性の(符号反転された)TX−CAL送信信号が送信され、同様に、ch−1の受信部では、キャリブレーション信号符号パターン発生器21から通常とは逆極性のキャリブレーション符号パターンが出力されているときには、相関器18では、定常的なスプリアス信号による相関値成分のみ逆符号となった相関値が得られる。
【0042】
図2を用いて、第1の実施の形態におけるRX−CAL機能を説明する。この図2では、キャリブレーション信号極性制御回路22により、ch−1のキャリブレーション信号送信回路20から通常のTX−CAL送信信号が送信され、各チャネルの受信部では、キャリブレーション信号符号パターン発生器21からRX−CAL送信信号に対応する通常のキャリブレーション符号パターンが出力されているとき、相関器18では、キャリブレーション符号パターン出力と同期してRX−CAL受信信号との相関値が計算され、通常の相関値が得られる。次に、キャリブレーション信号極性制御回路22により、ch−1のキャリブレーション信号送信回路20から逆極性の(符号反転された)TX−CAL送信信号が送信され、同様に、各チャネルの受信部では、キャリブレーション信号符号パターン発生器21から通常とは逆極性のキャリブレーション符号パターンが出力されているときには、相関器18では、定常的なスプリアス信号による相関値成分のみ逆符号となった相関値が得られる。
【0043】
このように定常スプリアス成分による相関値のみが符号反転するのは、送信信号と相関計算において2回極性を反転して得られた相関値は通常CAL信号による測定結果と同じになるが、定常的に存在するスプリアス成分に対しては、相関計算における符号反転のみが影響するためである。この2つの相関値測定結果を加算すると相関値のスプリアス成分が相殺され、求めたいCAL信号に対する相関値のみを得ることができる。
【0044】
図7及び図9を用いて、本発明の第1の実施の形態における相関値の計算方法について詳細に説明する。ここで、図7は、第1の実施の形態での受信側でのタイミングシフトKによる遅延分布作成での定常スプリアス信号の影響を説明する図であり、図9は、図7における定常スプリアスの影響による遅延分布の例と本発明における第1の実施の形態での補償方法を説明する図である。
【0045】
ここでは、M系列を用いた遅延補正の場合を想定している。TX−CAL/RX−CALは区別していない。送信されたCAL信号は、アンテナ部手前で折り返され、信号S(t)として受信される。更に定常的なスプリアス信号成分が存在する場合は、S(t)とスプリアス成分H(t)の合計S(t)+H(t)として受信される。それぞれの成分について、サンプリング後の信号を、S(k)、H(k)とする。
【0046】
又、サンプリング間隔を、1/Uチップ(U:サンプリングにおけるチップ分割数)とし、k=0で相関計算を行ったときにピーク値となるとする。
【0047】
なお、サンプリングされた値は位相振幅成分からなり、(I,Q)平面上の点(複素数)として示される。以下に信号や変数、定数の定義を示す。
S(t)、H(t)→ サンプリング(変数の置き換え)
→ S(k)、H(k)(I,Q)値
S(t)、S(k):キャリブレーション受信信号波形(不要波を含まない純粋な波形、(I,Q)値)
H(t)、H(k):定常スプリアス信号の受信波形、(I,Q)値
k:サンプリングタイミング(チップ間隔の1/U、k=0で相関計算を行うときピーク値となる)
U:サンプリングにおけるチップ分割数(1chip間隔にU個のサンプリング)。
【0048】
以上より、相関値計算タイミングk=Kにおける相関値(I,Q)は、式1で示される。そして、Kをシフトさせながら相関値を測定することにより遅延分布が得られる。ここで、定常的なスプリアス信号成分がなければ、図7の点線で示された遅延分布が得られる。しかし、定常的なスプリアス成分が存在する場合は、実線で示された遅延分布となり誤差を生じる。この誤差は、相関値測定の平均回数を増やしても低減することができない。そこで本発明では、CAL送信信号の符号を反転させると共に、相関計算で用いるキャリブレーション符号パターン(±1)も同時に反転させる。そのようにして求めた相関値を式2に示す。
【0049】
S(k)とPiが逆符号となるため、定常スプリアス信号成分のみ符号が反転する。ゆえに、式1と式2の平均を取ることにより、定常スプリアス成分を相殺することができる(式5)。つまり、相関値の平均計算において、半数を式2で求めて平均化することにより定常スプリアスの影響を除去することができる。図9に本発明におけるそれぞれの遅延分布の例を示す。定常スプリアス成分の分布は、Kに依存するため式1、2それぞれの遅延分布には歪を生じている。これらの式1と式2を加えて平均化することにより真の遅延分布が得られる。
【0050】
このようにして求めた各チャネルの遅延分布(遅延量)からピーク検出を行い、遅延量を求め、遅延補正を行うことができる。
R1(K)=Σi{S(iU+K)+H(iU+K)}・Pi
=Σi S(iU+K)・Pi+ΣiH(iU+K)・Pi (式1)
R2(K)=Σi{-S(iU+K)+H(iU+K)}・(-Pi)
=Σi S(iU+K)・Pi-Σi H(iU+K)・Pi (式2)
i:シンボル番号(chip間隔)
Pi:キャリブレーション符号パターン(m個のシンボル(±1)、i=0〜m-1)(実数)
Σi:i=0〜m-1の合計(chip間隔での合計、又は、シンボル毎の合計)
K:相関値計算の開始先頭位置(k=K=0から相関計算を行うときピーク値となる)
iU+K:相関値がピークとなる位置(時刻)からKサンプルずれた位置からchip間隔で信号(I,Q)値を参照
R1(K):Kサンプルずれた位置における実測される相関値(遅延分布、正極性CAL信号における値、(I,Q)値)
R2(K):Kサンプルずれた位置における実測される相関値(遅延分布、逆極性CAL信号における値、(I,Q)値)
(式1+式2)/2より
[R1(K)+R2(K)]/2=Σi S(iU+K)・Pi=R0(K) (式5)
R0(K):定常スプリアス信号の影響の無い相関値(遅延分布、(I,Q)値)。
【0051】
位相振幅補正の場合について説明する。位相振幅補正では、遅延素子10によって遅延補正された複数のチャネルについて、相関値を同時測定する必要がある(図11参照)。図1に示したTX−CALの場合、ch−1において同時測定を行う必要があるため、キャリブレーション符号パターンとして直交符号を用いる。測定する各チャネルから直交するRX−CAL送信信号を送信し、ch−1の受信部で合成波として受信し、同一タイミングでそれぞれのチャネルに対応するキャリブレーション符号パターンとの相関値(I,Q)を計算する。図2に示したRX−CALの場合は、ch−1から送信されたRX−CAL送信信号を各チャネルへ分配し、同一タイミングで相関値(I,Q)を計算する。CAL符号には特別な制約条件はない。このようにして求めた各チャネルの相関値(I,Q)を用いて、各チャネルの位相振幅補正を行うことができる。
【0052】
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の第2の実施の形態について、図3、4を用いて説明する。ここで、図3は、本発明の第2の実施の形態のCAL信号専用回路構成における送信キャリブレーション機能を説明するブロック図であり、図4は、本発明の第2の実施の形態のCAL信号専用回路構成における受信キャリブレーション機能を説明するブロック図である。
【0053】
図3では、チャネル1〜nの送受信回路4−1乃至4−nとキャリブレーション信号送受信回路3が分離され専用となっている。キャリブレーション信号送受信回路3には、CAL信号の送受信を制御するキャリブレーション信号送受信スイッチ16がある。
【0054】
図3のTX−CALでは、各チャネルから送信されたTX−CAL信号が、キャリブレーション信号送受信回路3で受信され、A/D変換された後に相関値が計算されている。
【0055】
図4のRX−CALでは、キャリブレーション信号送受信回路3を経て送信されたRX−CAL信号が各チャネルの送受信回路4−1乃至4−nで受信されA/D変換されて相関計算が行われている。本発明の第2の実施の形態における相関値の計算方法については、第1の実施の形態と同様である。
【0056】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ここで、図8は、第3の実施の形態として、遅延補正においてキャリブレーション信号送信回路20からのCAL信号送信タイミングLをシフトさせることによって遅延分布を求めた場合を示している。
【0057】
相関計算は式3によって行われる。この式3に対して、CAL送信信号と相関計算のキャリブレーション符号パターンを反転することにより式4が得られる。
【0058】
式5と同様に式3と式4を平均化することにより式6が得られる。送信側と受信側でタイミングシフトの符号が反転することから、L=-Kとなることを考慮すると、式6は式5と同じになるので、真の相関値(遅延分布)を得ることができる。
【0059】
ちなみに式3、4では、遅延分布におけるスプリアス成分がLに依存しない定数となるためピーク位置は移動しない。ゆえに、遅延補正については式3を用いても問題は無いが、位相振幅補正では誤差を生じるため式6は有効である。
R3(L)=Σi{S(iU-L)+H(iU)}・Pi
=Σi S(iU-L)・Pi+Σi H(iU)・Pi (式3)
R4(L)=Σi{-S(iU-L)+H(iU)}・(-Pi)
=Σi S(iU-L)・Pi−Σi H(iU)・Pi (式4)
L:CAL信号送信の開始先頭位置(L=0から相関計算を行うときピーク値となる。L=-K、Kに対して軸反転)
R3(L):Lサンプルずれた位置における実測される相関値(遅延分布、正極性CAL信号における値、(I,Q)値)
R4(L):Lサンプルずれた位置における実測される相関値(遅延分布、逆極性CAL信号における値、(I,Q)値)
(式3+式4)/2より
[R3(L)+R4(L)]/2=Σi S(iU-L)・Pi
=R0(K)(L=-K) (式6)。
【0060】
図5は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態(図1、2、3、4)における極性制御部の一般的処理を示した図である。ある送信部から送信されるCAL信号と、ある受信部で受信されたCAL信号との相関計算に用いるCAL送信信号とキャリブレーション符号パターンの極性をキャリブレーション信号極性制御回路22で制御しており、相関値の平均化回数の半分について逆極性で計算する。
【0061】
図6は、第3の実施の形態における極性制御部の一般的な処理を示した図である。式7、式8に示すように、相関計算において、キャリブレーション符号パターンではなく計算結果の符号を反転させることによって式2、式4と全く同じ効果が得られる。制御信号は、±1であり、正極性の場合は+1、逆極性(符号反転)の場合は−1となり、CAL送信信号と相関計算結果に乗算される。
【0062】
送信信号は一般的には(I,Q)で示されるが、CAL送信信号及び相関計算で用いるキャリブレーション符号パターンは、I成分のみとしても一般性を失わない。故に、極性制御も実数のみの制御でよい。
【0063】
ただし、受信されるCAL受信信号S(k)は、伝送路の影響を受けて位相、振幅が変化するため一般に(I,Q)成分を持つ。H(k)も同様である。相関器18では、キャリブレーション符号パターンがI成分(実数部)のみであるため一般の複素乗算ではなく、実数部と虚数部それぞれに対してキャリブレーション符号パターン(±1)を乗算する。
R7(K)=(-1)・Σi{-S(iU+K)+H(iU+K)}・Pi
=Σi S(iU+K)・Pi−Σi H(iU+K)・Pi
=R2(K) (式7)
R8(L)=(-1)・Σi{-S(iU-L)+H(iU)}・Pi
=Σi S(iU-L)・Pi−Σi H(iU)・Pi
=R4(L) (式8)
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、TDD(Time Division Duplex)を想定し、送受信で同じ周波数を用いる場合について示したが、本発明の第3の実施の形態は、FDD(Frequency Division Duplex)に対しても適応可能である。FDDシステムの場合には、送受信で周波数が異なるため、TX−CAL機能において、受信部の周波数を送信周波数に変更する必要がある。同様に、RX−CAL機能においては、送信周波数を受信周波数に合わせることが必要となる。これらの周波数を一致させる回路を別途備えることで、FDDにも対応できる。
【0064】
[第1の実施の形態の具体例]
第1の実施の形態のより具体的な例を、図1、2、11を用いて説明する。ここで、図11は、関連技術のキャリブレーション(CAL)機能の全体構成ブロック図を示している。
【0065】
この図11では、CAL送受信機能(アナログ部)はch−1の送受信機能と兼用となっており、CAL信号の送受信を行うときは、送受信信号処理部1で生成されたCAL信号に対して、キャリブレーション信号送信スイッチ14、キャリブレーション信号受信スイッチ15、キャリブレーション信号送受信スイッチ16を切り換えて信号経路を制御している。
【0066】
送信されたCAL信号は、アンテナユニット5のカップラ7−1乃至7−nによりアンテナ8−1乃至8−n端手前で折り返えされており、送受信信号処理部1で相関計算が行われる。又、各チャネルに対して求められた送受信それぞれに対する遅延補正量と位相振幅補正量は、それぞれ遅延素子10と複素乗算器9によって設定される。なお、図1、2、11において、第1の実施の形態の説明と直接関係のない、周波数コンバータや、アンプ、フィルタ、アッテネータなどの素子は省略されている。
【0067】
図1は、本発明の第1の実施の形態で用いるCAL機能における、送信キャリブレーション(TX−CAL)の場合、図2は受信キャリブレーション(RX−CAL)の場合のCAL信号経路をそれぞれ示している。図11に示した遅延素子10と複素演算子複素乗算器9は省略されている。本発明の第1の実施の形態のCAL機能は、送信及び受信補正用キャリブレーション(CAL)信号を発生するキャリブレーション信号送信回路20と、アナログ/デジタル相互変換を行う、A/Dコンバータ11とD/Aコンバータ12、送受信制御を行う送受信制御回路13、CAL信号の折り返しを行うカップラ7−1乃至7−n、通常信号の無線送受信を行うアンテナ8−1乃至8−n、折り返されるCAL信号の分配合成を行うキャリブレーション信号分配/合成器6、受信したCAL信号に対して相関値や遅延分布を求めるための相関器18と、相関器18へキャリブレーション符号パターンを出力するキャリブレーション信号符号パターン発生器21と、CAL送信信号及びキャリブレーション符号パターンの極性を制御するキャリブレーション信号極性制御回路22を有している。
【0068】
更に、ch−1の送受信回路には、RX−CAL信号をCAL信号送信経路へバイパスするためのキャリブレーション信号送信スイッチ14、TX−CAL信号をCAL信号受信経路から入力するためのキャリブレーション信号受信スイッチ15、CAL信号送受信方向を切り換えるためのキャリブレーション信号送受信スイッチ16を有している。
【0069】
本発明の第1の実施の形態は、相関値測定を規定回数行い、平均化することによって遅延及び位相振幅補正量を求めるCAL機能において、平均化回数の半数に対してキャリブレーション信号極性制御回路22によりCAL送信信号とキャリブレーション符号パターンの極性を同時に反転させて相関値を求め、平均化することによって高精度の遅延及び位相振幅補正量を求めることを特徴とする。
【0070】
[第2の実施の形態の具体例]
第2の実施の形態のより具体的な例を、図3、4、12を用いて説明する。ここで、図12は、関連技術のCAL機能の全体構成ブロック図を示している。
【0071】
CAL機能には専用のキャリブレーション信号送受信回路3が用いられており、CAL信号の送受信を行うときは、送受信信号処理部1で生成されたCAL信号に対して、キャリブレーション信号送受信スイッチ16を切り換えて信号経路を制御している。
【0072】
送信されたCAL信号は、アンテナユニット5のカップラ7−1乃至7−nによりアンテナ8−1乃至8−n端手前で折り返えされており、送受信信号処理部1で相関計算が行われる。又、各チャネルに対して求められた送受信それぞれに対する遅延補正量と位相振幅補正量は、それぞれ遅延素子10と複素乗算器9とによって設定される。なお、図3、4、12において、本発明の説明と直接関係のない、周波数コンバータや、アンプ、フィルタ、アッテネータなどの素子は省略されている。
【0073】
図3は、本発明の第2の実施の形態で用いるCAL機能における、TX−CALの場合、図4はRX−CALの場合のCAL信号経路をそれぞれ示している。図12に示した遅延素子10と複素乗算器9とは省略されている。
【0074】
本発明の第2の実施の形態のCAL機能は、送信及び受信補正用CAL信号を発生するキャリブレーション信号送信回路20と、アナログ/デジタル相互変換を行う、A/Dコンバータ11とD/Aコンバータ12、送受信制御を行う送受信制御回路13、CAL信号の折り返しを行うカップラ7−i、通常信号の無線送受信を行うアンテナ8−1乃至8−n、折り返されるCAL信号の分配合成を行うキャリブレーション信号分配/合成器6、受信したCAL信号に対して相関値や遅延分布を求めるための相関器18と、相関器18へキャリブレーション符号パターンを出力するキャリブレーション信号符号パターン発生器21と、CAL送信信号及びキャリブレーション符号パターンの極性を制御するキャリブレーション信号極性制御回路22を有している。更に、キャリブレーション信号送受信回路3には、CAL信号送受信方向を切り換えるためのキャリブレーション信号送受信スイッチ16を有している。
【0075】
[第3の実施の形態の具体例]
第3の実施の形態のより具体的な例について説明する。ここで、図8は、第3の実施の形態として、遅延補正においてキャリブレーション信号送信回路20からのCAL信号送信タイミングLをシフトさせることによって遅延分布を求めた場合を示している。
【0076】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、図7に示したように、CAL信号送信タイミングを固定し、受信側でキャリブレーション符号パターンと相関計算のタイミングKを同時に制御することにより、式1、2によって相関計算が行われている。
【0077】
それに対して図8では、受信側のキャリブレーション符号パターン発生と相関計算のタイミングを固定し、送信側のCAL信号送信タイミングLを制御する。相関計算は、式3によって行われる。
【0078】
この式3に対して、CAL送信信号と相関計算のキャリブレーション符号パターンを反転することにより式4が得られる。式5と同様に式3と式4を平均化することにより式6が得られる。L=-Kを考慮すると、式6は式5と同じなので、真の相関値(遅延分布)を得ることができる。ちなみに遅延分布におけるスプリアス成分がLに依存しない定数となるためピーク位置は移動しない。ゆえに、遅延補正については式3を用いても問題は無いが、位相振幅補正では誤差を生じるため式6は有効である。
【0079】
図5は、図1、2、3、4における極性(符号)制御部の一般的処理を示した図である。CAL信号送信を行うチャネルのキャリブレーション信号送信回路20と、CAL信号の受信を行うチャネルのキャリブレーション信号符号パターン発生器21に対してキャリブレーション信号極性制御回路22で極性(符号)制御を行っており、相関値の平均化回数の半分について逆極性(符号)で相関値測定を行う。
【0080】
図6は、本発明の第3の実施の形態における極性制御部の一般的な処理を示した図である。キャリブレーション信号極性制御回路22からの制御信号は、±1であり、正極性の場合は+1、逆符号(符号反転)の場合は−1となり、CAL送信信号と相関器出力(I,Q)値に乗算される。
【0081】
送受信信号は一般的には(I,Q)(複素数)で示されるが、CAL送信信号及び、相関計算で用いるキャリブレーション符号パターンは、I成分(実数)のみとしても一般性を失わない。故に極性(符号)制御も実数のみの制御でよく、図6の相関器出力(I,Q)値に対しても、±1(実数)演算のみで良い。
【0082】
ただし、受信されるCAL受信信号は、伝送路の影響を受けて位相、振幅が変化するため一般に(I,Q)成分を持つ。相関器18では、キャリブレーション符号パターンがI成分(実数部)のみであるため一般の複素乗算ではなく、実数部と虚数部それぞれに対してキャリブレーション符号パターン(±1)を乗算する。
【0083】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、TDDを想定し、送受信で同じ周波数を用いる場合について示したが、本発明の第3の実施の形態は、FDDに対しても適応可能である。FDDシステムの場合には、送受信で周波数が異なるため、TX−CAL機能において、受信部の周波数を送信周波数に変更する必要がある。同様に、RX−CAL機能においては、送信周波数を受信周波数に合わせることが必要となる。
【0084】
[第1の実施の形態の動作]
図1(図11参照)を用いて、第1の実施の形態における送信キャリブレーション(TX−CAL)機能の動作を説明する。
【0085】
図1において、キャリブレーション信号極性制御回路22によって極性を定められた、測定すべきチャネルのキャリブレーション信号送信回路20から送信されたTX−CAL送信信号は、図11の送受信回路4−1乃至4−n内で、D/Aコンバータ11によってアナログ信号に変換され、送受信制御回路13を経てアンテナ端子からアンテナユニット5へ出力される。
【0086】
アンテナユニット5では、カップラ7−1乃至7−nで折り返されてキャリブレーション信号分配/合成器6を経由してCAL端子から出力される。CAL端子から出力されたCAL信号は、ch−1のキャリブレーション信号送受信スイッチ16を経由してキャリブレーション信号受信スイッチ15によってch−1の通常受信経路へ入力される。
【0087】
その後、A/Dコンバータ12によってデジタル信号に変換され、送受信信号処理部1内のch−1の相関器18に入力される。相関器18では、キャリブレーション信号極性制御回路22によって極性を定められたキャリブレーション信号符号パターン発生器21からのキャリブレーション符号パターンとの間で、定められたタイミングで相関計算が行われる。
【0088】
図2(図11参照)を用いて、受信キャリブレーション(RX−CAL)機能における第1の実施の形態の動作を説明する。
【0089】
図2において、キャリブレーション信号極性制御回路22によって極性を定められた、ch−1のキャリブレーション信号送信回路20から送信されたRX−CAL送信信号は、図11の送受信回路4−1内で、D/Aコンバータ11によってアナログ信号に変換され、キャリブレーション信号送信スイッチ14でCAL信号送信経路へ切り換えられ、キャリブレーション信号送受信スイッチ16を経てCAL端子から出力されて、アンテナユニット5へ入力される。
【0090】
アンテナユニット5では、キャリブレーション信号分配/合成器6により各アンテナへ分配され、各チャネルのカップラ7で折り返されて各アンテナ端子から出力される。
【0091】
各アンテナ端子から出力されたCAL信号は、各アンテナ(チャネル)の送受信制御回路13を経由してA/Dコンバータ12によってデジタル信号に変換され、送受信信号処理部1内の各チャネルの相関器18に入力される。相関器18では、キャリブレーション信号極性制御回路22によって極性を定められたキャリブレーション信号符号パターン発生器21からのキャリブレーション符号パターンとの間で、定められたタイミングで相関計算が行われる。
【0092】
図7及び図9を用いて、本発明における相関計算の動作を説明する。送受信経路は異なるが、TX−CAL/RX−CALどちらでも相関計算の基本的動作は同じである。
【0093】
図7に相関計算方法を示す。キャリブレーション符号パターンPi(i=0〜m-1)(I成分のみ)を変調して生成されたCAL送信信号(連続波形)は、送受信経路を経て、CAL受信信号S(t)として受信される。
【0094】
そのとき、様々な外乱が加わってくる。ここでは簡単のため、定常的なスプリアス信号H(t)についてのみ考える。
【0095】
受信された信号は、サンプリングされてS(k)+H(k)となる。この受信信号に対して定められたタイミングKにおいて、キャリブレーション符号パターンPi(i=0〜m-1)とシンボル単位の乗算を行い合計することによって相関値を得る(式1)。
【0096】
CAL受信信号や相関値は、一般に(I,Q)成分を持ち位相と振幅で示される。式1をKの関数としてグラフ化することにより遅延分布が得られる。
【0097】
式1には、相関値の真値(第1項)と定常スプリアスによる歪成分(第2項)があるため遅延分布にも歪を生じ、遅延及び位相振幅補正値の計算にずれを生じて、CAL精度が劣化する。
【0098】
ここで、CAL送信信号とキャリブレーション符号パターンを同時に逆極性に変更して相関値を求めるとすると、式1は、式2に変更される。定常スプリアス成分はCAL送信信号の極性(符号)反転の影響を受けないため、式2の相関値の第2項のみ符号が反転する。
【0099】
図9に、式1及び式2それぞれにおける遅延分布の例を示す。どちらも定常スプリアス成分により歪んでおり、相関値そのものもピーク位置も真値からずれるため遅延、位相振幅補正精度は劣化する。ここで、式1と式2とを平均化すると式5となり、真値のみが残る。ゆえに、本発明では、相関値平均計算において平均化を、式1と式2との、半々で行うことにより、式5で示された相関値の真値を得ることができる。
【0100】
[第2の実施の形態の動作]
図3(図12参照)を用いて、TX−CAL機能における本発明の第2の実施の形態の動作を説明する。
【0101】
図3において、キャリブレーション信号極性制御回路22によって極性を定められた、測定すべきチャネルのキャリブレーション信号送信回路20から送信されたTX−CAL送信信号は、図12の送受信回路4−1乃至4−n内で、D/Aコンバータ11によってアナログ信号に変換され、送受信制御回路13を経てアンテナ端子からアンテナユニット5へ出力される。アンテナユニット5では、カップラ7−1乃至7−nで折り返されてキャリブレーション信号分配/合成器6を経由してCAL端子から出力される。CAL端子から出力されたCAL信号は、キャリブレーション信号送受信回路3のキャリブレーション信号送受信スイッチ16を経由してA/Dコンバータ12によってデジタル信号に変換され、送受信信号処理部1内の相関器18に入力される。相関器18では、キャリブレーション信号極性制御回路22によって極性を定められたキャリブレーション信号符号パターン発生器21からのキャリブレーション符号パターンとの間で、定められたタイミングで相関計算が行われる。
【0102】
図4(図12参照)を用いて、RX−CAL機能における本発明の動作を説明する。図4において、キャリブレーション信号極性制御回路22によって極性を定められた、キャリブレーション信号送信回路20から送信されたRX−CAL送信信号は、図12のキャリブレーション信号送受信回路3内で、D/Aコンバータ11によってアナログ信号に変換され、キャリブレーション信号送受信スイッチ16を経てCAL端子から出力されて、アンテナユニット5へ入力される。
【0103】
アンテナユニット5では、キャリブレーション信号分配/合成器6により各アンテナへ分配され、カップラ7で折り返されてアンテナユニットの各アンテナ端子から出力される。
【0104】
各アンテナ端子から出力されたCAL信号は、各アンテナ(チャネル)の送受信制御回路13を経由してA/Dコンバータ12によってデジタル信号に変換され、送受信信号処理部1内の各チャネルの相関器18に入力される。
【0105】
相関器18では、キャリブレーション信号極性制御回路22によって極性を定められたキャリブレーション信号符号パターン発生器21からのキャリブレーション符号パターンとの間で、定められたタイミングで相関計算が行われる。なお、相関計算の動作については、第1の実施の形態と同様である。
【0106】
[第3の実施の形態の動作]
第3の実施の形態の動作について説明する。図8は、本発明の第3の実施の形態として、遅延補正においてキャリブレーション信号送信回路20からのCAL信号送信タイミングLをシフトさせることによって遅延分布を求めた場合を示している。
【0107】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、図7に示したように、CAL信号送信タイミングを固定し、受信側でキャリブレーション符号パターンと相関計算のタイミングKを同時に制御することにより、式1、2によって相関計算が行われている。
【0108】
それに対して、図8では、相関計算は受信側のキャリブレーション符号パターン発生と相関計算のタイミングを固定し、送信側のCAL信号送信タイミングLを制御する。CAL受信波形は、LシフトするためS(k−L)となる。
【0109】
相関計算は、式3によって行われる。この式3に対して、CAL送信信号と相関計算のキャリブレーション符号パターンを反転することにより式4が得られる。式5と同様に式3と式4を平均化することにより式6が得られる。送信と受信でのタイミングシフトは逆符号となるため、L=-Kとなることを考慮すると、式6は式5と同じであるので、真の相関値(遅延分布)を得ることができる。ちなみに式3、4による遅延分布におけるスプリアス成分はLに依存しない定数となるため、ピーク位置は移動しない。ゆえに、遅延補正については式3を用いても問題は無いが、位相振幅補正では誤差を生じるため式6は有効である。
【0110】
図6は、本発明の他の実施の形態における極性制御部の一般的な処理を示した図である。キャリブレーション信号極性制御回路22からの制御信号は、±1であり、正極性の場合は+1、逆符号(符号反転)の場合は−1となり、CAL送信信号と相関器出力に乗算される。送受信信号は一般的には(I,Q)で示されるが、CAL送信信号及び、相関計算で用いるキャリブレーション符号パターンは、I成分のみとしても構わない。
【0111】
故に、極性(符号)制御も実数のみの制御でよく、図6の相関器出力(I,Q)値に対しても、±1(実数)演算のみで良い。第1の実施の形態及び第2の実施の形態のそれぞれに対して適応した場合の相関値計算式を、式7、式8に示す。相関計算において、キャリブレーション符号パターンではなく相関器18での計算結果の符号を反転させることによって、式2、式4と全く同じ効果が得られる。
【0112】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、キャリブレーション信号極性制御回路22によって、実数であるCAL信号波形とキャリブレーション符号パターンの極性を反転させていた。
【0113】
[第4の実施の形態]
ここで、第4の実施の形態として、CAL送信波形とキャリブレーション符号パターンを実数部だけでなく虚数部も持つ(I,Q)値とする場合における例について説明する。
【0114】
これまでの実施の形態は、(I,Q)平面において180度回転して相関値を計算し平均したことに相当する。相関器18は、この平面上で所望の角度だけ回転させて、相関値を計算し、計算した各相関値の平均を求めてもよい。
【0115】
ここで、回転角を120度毎として、0、120、240度での3個の相関値計算結果を平均することにより定常スプリアスを相殺する。同様にして、90度毎(4個)や72度毎(5個)などとしても良い。相関器18での相関計算における乗算も一般に複素乗算となる。又、図6における極性制御信号も複素数となる。例えば90度毎の場合、(1,j,-1,-j、j:虚数単位)となり、それぞれの乗算も複素乗算となる。
【0116】
第4の実施の形態は、TDDに対しても、FDDに対しても適応可能である。送受信が同じ周波数であり時分割されているTDDシステムの場合には、第3の実施の形態をそのまま適応可能であるが、FDDシステムの場合には、送受信で周波数が異なるため、TX−CAL機能において、受信部の周波数を送信周波数に変更する必要がある。同様に、RX−CAL機能においては、送信周波数を受信周波数に合わせることが必要となる。
【0117】
なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、図1、2、3、4において、デジタル部にあるキャリブレーション信号送信回路20、キャリブレーション信号符号パターン発生器21、相関器18などは、各チャネルやCAL専用チャネルに付随する形で示されているが、相関値測定で必要とされる回路をそのつど信号線を切り換えることにより自由に組み合わせて使用しても構わない。同時測定チャネル数が全アンテナ数よりも少ない場合などは、測定するチャネルにのみCAL信号送信回路やキャリブレーション符号パターン発生器、相関器を接続して回路を有効活用することにより全体の回路規模を縮小することができる。例えば、チャネル(アンテナ)数が8であっても、CAL機能における相関値測定を同時に2個のチャネルでしか行わない場合には、CAL信号送信回路、キャリブレーション符号パターン発生器、相関器は、2個ずつあればよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、無線通信分野、特に複数のアンテナを協調させて送受信を行うアレイアンテナに利用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 送受信信号処理部
3 キャリブレーション信号送受信回路
4−1乃至4−n 送受信回路
5 アンテナユニット
6 キャリブレーション信号分配/合成器
7−1乃至7−n カップラ
8−1乃至8−n アンテナ素子
9 複素乗算器
10 遅延素子
11 D/Aコンバータ
12 A/Dコンバータ
13 送受信制御回路
14 キャリブレーション信号送信スイッチ
15 キャリブレーション信号受信スイッチ
16 キャリブレーション信号送受信スイッチ
18 相関器
19 対向アンテナ
20 キャリブレーション信号送信回路
21 キャリブレーション信号符号パターン発生器
22 キャリブレーション信号極性制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリブレーション用の信号を発生させる送受信信号処理部と、アレイアンテナの各アンテナ素子近傍にそれぞれ設けられ、前記キャリブレーション用の信号が入力された場合、該入力された信号を近傍の前記アンテナ素子に発信し、前記キャリブレーション用の信号が前記アンテナ素子に入力された場合、その信号を前記アンテナ素子から受信するカップラと、前記キャリブレーション用の信号を前記カップラのそれぞれに分配し、前記カップラがそれぞれ受信した信号を合成して一つの信号にするキャリブレーション信号分配/合成器と、前記合成による前記一つの信号と前記キャリブレーション用の信号とを比較することによって送信時の遅延差を、前記アンテナ素子が受信した信号と前記キャリブレーション用の信号とを比較することによって受信時の遅延差を、それぞれ相関値として求める相関器とを有する、アレイアンテナのキャリブレーション用回路であって、
前記キャリブレーション用の信号の極性を正極性と逆極性とにそれぞれ符号反転させるキャリブレーション信号極性制御回路と、
前記キャリブレーション信号極性制御回路の符号反転に対応し、前記キャリブレーション用の信号が正極性の場合は、前記相関値を正極性とする符号パターンを、前記キャリブレーション用の信号が逆極性の場合は、前記相関値を逆極性とする符号パターンをそれぞれ出力するキャリブレーション信号符号パターン発生器と、
を備え、
前記相関器は、前記キャリブレーション信号極性制御回路により正極性の前記キャリブレーション用の信号が送信されている場合の正極性の相関値を求め、かつ前記キャリブレーション信号極性制御回路により逆極性の信号が送信されている場合の逆極性の相関値を求め、該逆極性の相関値に前記逆極性の符号パターンを適用した値と前記正極性の相関値との平均を真の相関値とすることを特徴とするアレイアンテナのキャリブレーション用回路。
【請求項2】
デジタル信号である前記キャリブレーション用の信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータと、
アナログ信号である前記一つの信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
を更に備え、
前記D/Aコンバータによるアナログ信号は前記キャリブレーション信号分配/合成器及び前記アンテナ素子に分配され、
前記相関器は、前記A/Dコンバータによるデジタル信号から前記相関値を求めることを特徴とする請求項1に記載のアレイアンテナのキャリブレーション用回路。
【請求項3】
前記アンテナ素子への送受信を制御する送受信制御回路と、
前記キャリブレーション信号極性制御回路に応じて正極性及び逆極性の前記キャリブレーション用の信号を出力するキャリブレーション信号送信回路と、
該キャリブレーション信号送信回路の直後に存する前記D/Aコンバータと、
前記D/Aコンバータの直後に存し前記キャリブレーション用の信号を前記キャリブレーション信号分配/合成器又は前記送受信制御回路に切り替えるスイッチと、
前記キャリブレーション信号分配/合成器と前記送受信制御回路からの信号とを切り替えるスイッチと、
該スイッチの直後に存する前記A/Dコンバータと、
前記A/Dコンバータの直後に存する前記相関器と、
前記相関器に接続される前記キャリブレーション信号符号パターン発生器と、
を有し、
前記各アンテナ素子のそれぞれに対応して設けられ、かつ前記各アンテナ素子を通じて送受信を行うチャネルを兼ねることを特徴とする請求項2に記載のアレイアンテナのキャリブレーション用回路。
【請求項4】
前記キャリブレーション信号極性制御回路に応じて正極性及び逆極性の前記キャリブレーション用の信号を出力するキャリブレーション信号送信回路と、
該キャリブレーション信号送信回路の直後に存するスイッチと、
該スイッチの直後に存する前記A/Dコンバータと、
前記A/Dコンバータの直後に存する前記相関器と、
前記相関器に接続される前記キャリブレーション信号符号パターン発生器と、
を有し、
前記チャネルとは別個の回路であることを特徴とする請求項2に記載のアレイアンテナのキャリブレーション用回路。
【請求項5】
前記キャリブレーション信号極性制御回路は、前記キャリブレーション用の信号及び前記相関値の符号反転を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアレイアンテナのキャリブレーション用回路。
【請求項6】
前記キャリブレーション用の信号の周波数と、前記アンテナ素子又は前記カップラから受信した信号の周波数とを一致させる回路を更に備えることにより、TDD(Time Division Duplex)とFDD(Frequency Division Duplex)とに対応する請求項5に記載のアレイアンテナのキャリブレーション用回路。
【請求項7】
前記キャリブレーション用の信号の波形と前記キャリブレーション符号パターンとを実数部だけでなく虚数部も持つ(I,Q)値とし、
前記相関器は、前記(I,Q)値を平面上で、所望の角度分回転させて相関値を計算し、前記相関値の平均値を求める請求項1に記載のアレイアンテナのキャリブレーション用回路。
【請求項8】
キャリブレーション用の信号を発生させる手順と、アレイアンテナの各アンテナ素子近傍にそれぞれ設けられたカップラに前記キャリブレーション用の信号が入力された場合、該入力された信号を近傍の前記アンテナ素子に発信する手順と、前記キャリブレーション用の信号が前記アンテナ素子に入力された場合、その信号を前記アンテナ素子から前期カップラが受信する手順と、前記カップラがそれぞれ受信した信号を合成して一つの信号にする手順と、前記合成による前記一つの信号と前記キャリブレーション用の信号とを比較することによって送信時の遅延差を、前記アンテナ素子が受信した信号と前記キャリブレーション用の信号とを比較することによって受信時の遅延差を、それぞれ相関値として求める手順とを有する、アレイアンテナのキャリブレーションの方法であって、
前期キャリブレーション用の信号を発生させる手順の後に、前記キャリブレーション用の信号の極性を正極性と逆極性とにそれぞれ符号反転させるキャリブレーション信号極性制御手順と、
前記キャリブレーション信号極性制御手順での符号反転に対応し、前記キャリブレーション用の信号が正極性の場合は、前記相関値を正極性とする符号パターンを、前記キャリブレーション用の信号が逆極性の場合は、前記相関値を逆極性とする符号パターンをそれぞれ出力するキャリブレーション信号符号パターン発生手順と、
を備え、
前記相関値として求める手順は、前記キャリブレーション信号極性制御手順により正極性の前記キャリブレーション用の信号が送信されている場合の正極性の相関値を求め、かつ前記キャリブレーション信号極性制御手順により逆極性の信号が送信されている場合の逆極性の相関値を求め、該逆極性の相関値に前記逆極性の符号パターンを適用した値と前記正極性の相関値との平均を真の相関値とすることを特徴とするアレイアンテナのキャリブレーションの方法。
【請求項9】
デジタル信号である前記キャリブレーション用の信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータ手順と、
アナログ信号である前記一つの信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ手順と、
を更に備え、
前記D/Aコンバータ手順によるアナログ信号は前記カップラ及び前記アンテナ素子に分配され、
相関値として求める手順は、前記A/Dコンバータ手順によるデジタル信号から前記相関値を求めることを特徴とする請求項8に記載のアレイアンテナのキャリブレーションの方法。
【請求項10】
前記キャリブレーション信号極性制御手順は、前記キャリブレーション用の信号及び前記相関値の符号反転を行うことを特徴とする請求項8又は9のいずれか1項に記載のアレイアンテナのキャリブレーションの方法。
【請求項11】
前記キャリブレーション用の信号の周波数と、前記アンテナ素子又は前記カップラから受信した信号の周波数とを一致させる手順を更に備えることにより、TDD(Time Division Duplex)とFDD(Frequency Division Duplex)とに対応する請求項10に記載のアレイアンテナのキャリブレーションの方法。
【請求項12】
前記キャリブレーション用の信号の波形と前記キャリブレーション符号パターンとを実数部だけでなく虚数部も持つ(I,Q)値とし、
前期相関値として求める手順は、前記(I,Q)値を平面上で、所望の角度分回転させて相関値を計算し、前記相関値の平均値を求める請求項8に記載のアレイアンテナのキャリブレーションの方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−283732(P2010−283732A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137190(P2009−137190)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】