説明

アレイ撮像の方法およびシステム

本発明は、光退色の効果を最小化することによって、センサアレイの寿命を延長または最大化する、アレイ撮像の方法およびシステムに関する。この撮像システムは、光源、可変露出開口、および可変フィルタシステムを有する。このシステムは、(1)可変露出開口を使用して、代表的な数の各タイプのセンサを含むセンサアレイの区画を選択に露出させること、(2)可変フィルタシステムを使用して、励起光の強度を制御し、適当な励起を誘起するのに必要な強度だけを供給し、光退色の影響を相殺するのに必要なだけ、時間と共に強度を増大させることによって、センサの寿命を延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ撮像(array imaging)の方法およびシステムに関する。より具体的には、本発明は、光退色(photobleaching)の影響を最小化することによって、センサアレイの寿命を延長または最大化するアレイ撮像の方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
政府援助研究の声明
合衆国政府は、合衆国空軍のOffice of Scientific Researchによって授与された契約番号第F49620−01−1−0395に従って、本発明における一定の権利を保有することができる。
【0003】
蛍光式センサ寿命―センサが、分析物に露出されたときに再現可能な応答を示す期間―は限られている。センサは、時間経過により反復的に光に露出されるので、通常は光退色のせいで応答性が低下する。ある種のセンサアレイは、平均で約100回までの応答の間、または総露出時間が8分未満である間、応答性を維持する。
センサ耐用期間が限られていることは、センサアレイの使用において制約要因となり得る。場合によっては、非応答センサを交換することは、アレイ全体またはその一部分を交換しなければならないことを意味する。
【0004】
例えば、蒸気を分析するためのセンサアレイ(「電子ノーズ(electronic noses)」とも呼ばれる)は、センサ耐用年数によって制約される。電子ノーズは、蒸気に露出された不特定センサの応答パターンにおける変化を検出して、パターン認識ソフトウエアを使用することによりその蒸気を分類する。理想的には、電子ノーズは、多種多様な交差反応性(cross-reactive)センサを含む。これらのアレイは、通常、時間経過によるセンサの特性の変化から生じるパターンを生成する、電導性ポリマーセンサまたは蛍光センサで構成される。そのようなアレイは、パターン認識を用いて、応答パターンを大規模データベース内に格納し、その後に、このデータベースを使用して、広範囲の蒸気を特定することができる。すなわち、訓練工程の間に、既知の蒸気から応答を収集し、次いで、これらの応答を用いて未知の蒸気を分類する。1つのアレイ上で訓練データベースを収集して、時間経過と共に多数のアレイに応用することが可能であり、これによって繰返し訓練の必要性がなくなる。理想的には、データベースは、多数の蒸気からの多数の反復アレイ応答を含むべきである。蒸気パターンの大規模データベースを構築するための最も重要な要件の一つは、アレイ寿命である。事実、そのような応用の多くに対しては、長期間使用能力を有するとともに、交換および保守頻度の低いセンサアレイだけが受け入れられることになる。認識可能な分析物の数が増えるほど、アレイの効率は高くなり、それによって、訓練反復数の増加と、訓練データベースに追加の蒸気を含めることの必要性が強調されることがわかる。アレイの劣化が速すぎると、それを交換して、訓練を繰り返さなくてはならないことになる。したがって、ほとんどの蛍光センサアレイの寿命は、通常、個々のビーズ(beads)に取り付けられた蛍光染料の光退色速度によって制約されていた。
【0005】
蛍光染料および蛍光センサの光退色を克服または補償する、いくつかの解決法では、染料またはセンシング基材が注目されている。例えば、光退色効果に対して感度のない、ある種のレシオセンサ(ratiometric sensor)が導入されている。Kermis, H. R.;Kostov, Y.;Harms, P.;Rao, G.,Biotechnol. Progress 2002, 18, 1047-1053、Song, A.;Parus, S.;Kopelman, R.,Anal. Chem. 1997, 69, 863-867、およびXu, Z.;Rollins, A.;Alcala, R.;Marchant, R. E.、J. Biomed. Mater. Res. 1998, 39, 9-15を参照されたい。さらに、染料の光退色速度を化学的に低減するために、フェージング防止剤(anti-fading agent)が染料に添加されている。Berrios, M.;Conlon, K. A.;Colflesh, D. E. 、Methods in Enzymology 1999, 307, 55-79、Krenik, K. D.;Kephart, G. M.;Offord, K. P.;Dunnette, S. L.; Gleich, G. J.、Journal of Immunological Methods 1989, 117, 91-97を参照されたい。別の解決法は、πスタッキング(π-stacking)を防止する構造特性を備える蛍光ポリマー分子を処理することによって染料の光安定性を向上させ、それによって、そのようなπスタッキングによって生じる蛍光消光(fluorescence quenching)を回避している。Yang, J.-S.;Swager, T. M.、J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 5321-5322を参照されたい。いくぶん有効ではあるが、上記の方法のそれぞれは、指示薬染料(indicator dyes)もしくはセンシング基材の化学的修飾を必要とするか、またはレシオ測定(ratiometric measurement)の場合には、異なる指示薬を一緒に使用することが必要となる。
【0006】
その他の解決法は、センサ寿命を向上させるために、センサの物理的特性を利用している。そのような解法の一つでは、ポリマー母材中に蛍光染料を組み入れて、自由に拡散可能な染料分子を含有するポリマー層を得ている。Shortreed, M., Monson, E.、R. Kopelman,、Anal. Chem. 1996, 68, 4015-4019、Barnard, S.M.、D.R. Walt、“Chemical Sensors Based on Controlled-Release Polymer Systems,” Science, 1991, 251 (4996): 927-9、Agayn, V.、D.R. Walt、 “Fiber-Optic Immunosensors Based on Continuous Reagent Delivery,” Immunomethods, 1993, 3(2): 112-21、およびUttamlal, M.、D.R. Walt、“A Fiber-Optic Carbon Dioxide Sensor for Fermentation Monitoring,” Bio/Technology, 1995, 13 (6): 597-601を参照されたい。使用に際しては、層の小さい部分を選択的に照射するとともに、染料分子が光退色するにつれて、それらの染料分子を、容器から照射されたポリマーフィルム領域内に拡散する新しい染料分子で置換することによって、可能なセンサ計測の回数を増大させる。IR検出器を用いる別の解決法は、光学スリットでアレイを区画することに焦点をあわせるものであった。Takayama, R.;Tomita, Y.;Asayama, J.;Nomura, K.;H. Ogawa,、Sens. Actuators A: Physical 1990, A22, 508-512を参照されたい。すなわち、光学スリットは、マイクロアレイ内の個々のIR検出器を選択的に照射するための役割を果たし、照射中および照射後に各検出器の応答が監視される。
【0007】
しかしながら、上記のShortreedら、およびWaltらの方法は、拡散可能な分子を含有するポリマー層を使用する装置に限定される。すなわち、これらの方法は、拡散不能である任意公知のセンサを使用しては、実施することはできない。さらに、上記のTakayamaらの光学スリットは、1種類のセンサだけからなるアレイと一緒に使用されるものである。
当該技術分野においては、光退色の効果を最小化することによって、センサアレイの寿命を延長または最大化したいという、アレイ撮像の方法およびシステムに対する要求がある。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、一態様においては、少なくとも第1および第2のサンプル中の少なくとも1種の対象分析物の存在を検出する方法である。この方法は、第1のサンプルを、複数のセンサ素子タイプと各センサ素子タイプの複数のセンサ素子とを備える、センサアレイと接触させることを含む。この方法は、センサアレイの少なくとも第1の区画を、第1の強度で照射して、第1の組のデータを収集することをさらに含む。さらに、この方法は、第2のサンプルをセンサアレイと接触させること、およびセンサアレイの少なくとも第2の区画を、第2の強度で照射して、第2の組のデータを収集することを含む。さらに、この方法は、対象分析物の存在または不在を判定することを含む。この態様の一観点においては、第1および第2の区画は同一であるか、または代替的に、両者は異なる。一態様によれば、第2の強度は、第1の強度よりも大きいか、あるいは、実質的に第1の強度とほぼ同等である。センサアレイを照射することには、一態様によれば、可変露出開口を介してセンサアレイを照射することを含めることができる。可変露出開口は、位置設定可能にすることができる。それは、長方形スリットを含む、スリットとすることもできる。
【0009】
本発明は、別の態様においては、光源、アレイ受入れ構成要素、可変露出開口、および可変フィルタシステムを有する、アレイ撮像システムである。可変露出開口は、光源とアレイ受入れ構成要素との間に配置され、可変フィルタシステムは、光源とアレイ受入れ構成要素の間に配置される。システムは、一態様において、光源とアレイ受入れ構成要素の間に配置された拡大レンズを備えることができる。さらに、このシステムは、拡大レンズと関連づけられたアレイ検出器も備えることもできる。本発明の一観点による、可変フィルタシステムは、時間経過と共に光学濃度が低下するように、プログラム可能である。一態様において、可変フィルタシステムは、光源とアレイ受入れ構成要素との間に配置された1組のフィルタを含み、この1組のフィルタは、光学濃度を減少させるようにプログラムされている。この1組のフィルタは、可変光学濃度のフィルタを備えることができる。本発明の一観点において、可変露出開口は、光源と共に動作して露出エリアを制御するように構成された、位置設定可能な開口である。さらに別の態様においては、可変露出開口は、光源からセンサアレイへと光を通過させることができるように構成されたスリットを有する。
【0010】
複数の態様を開示したが、本発明の実証的な態様を示して説明する以下の詳細な説明から、本発明のさらに別の態様が、当業者には明白になるであろう。気づかれるように、本発明は、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、様々な明白な観点において修正を行うことができる。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に説明のためのものであり、制限するものではないとみなされるべきである。
【0011】
本発明は、光退色の影響を最小化することによってセンサアレイの寿命を延長または最大化する、アレイ撮像の方法およびシステムに関する。この撮像システムは、光源、可変露出開口、および可変フィルタシステムを有する。使用に際して、このシステムは、(1)可変露出開口を使用して、代表的数の各タイプのセンサを含む、センサアレイの区画を選択的に露出すること、および/または(2)可変フィルタシステムを使用して、励起光の強度を制御して、適当な励起を誘発するのに必要な強度だけを提供するとともに、光退色の影響を相殺する必要に応じて、時間と共にその強度を増大させる、可変フィルタシステムを使用することによって、センサの寿命を延長する。光強度を低減すること、および―アレイ全体ではなく―アレイの区画を選択的に照射することによって、(露出が制限されることによって、データ分析に使用されるセンサ数が減少することから)センサ寿命を増大させ、分析時間を短縮することができる。
【0012】
図1は、本発明の一態様によるアレイ撮像システム10を示す。システム10は、励起光源12、可変露出開口14、可変励起フィルタシステム16、およびセンサアレイ20を受け入れるように構成された、アレイ受入れ構成要素18を有する。露出開口14およびフィルタシステム16は、光源12とセンサアレイ20の間に配置されている。また、このシステムは、ダイクロイックミラー24を収納するダイクロイックハウジング22、放射フィルタシステム26、アレイ検出器28、レンズ30A、レンズ30B、およびレンズ30Cを備える。ダイクロイックハウジング22、ダイクロイックミラー24、および放射フィルタ26が、センサアレイ20とアレイ検出器28の間に配置されている。レンズ30Aは、センサアレイ20とダイクロイックハウジング22の間に配置され、これに対してレンズ30Bおよび30Cは、ダイクロイックミラー24とアレイ検出器28の間に配置されている。より具体的には、一態様によれば、レンズ30Bは、ダイクロイックハウジング22と放射フィルタホイール26の間に配置され、レンズ30Cは、放射フィルタホイール26とアレイ検出器28の間に配置されている。代替的に、これらのレンズは、任意公知の方法で配置してもよい。
【0013】
本発明の一観点において、システム10は、可変露出開口14と可変励起フィルタシステム16とが追加された、任意公知の蛍光顕微鏡である。例えば、この蛍光顕微鏡は、Olympus製の、BX Olympus水平型顕微鏡とすることができる。さらに別の態様においては、システム10は、システム10のある構成要素を自動的に制御することのできる撮像ソフトウエアを備える。例えば、本発明の一観点における撮像ソフトウエアは、少なくとも、光源12、可変露出開口14、フィルタシステム16、放射フィルタシステム26、およびアレイ検出器28の内のいくつかの部分を制御することができる。一実施例においては、撮像ソフトウエアは、バージニア州フェアファックス(Fairfax, VA)のScanalytics社より入手可能な、IPLab撮像ソフトウエアである。代替的に、撮像ソフトウエアは、上述で列記したような構成要素を制御するための、任意公知のソフトウエアである。
励起光源12は、蛍光顕微鏡に使用される任意公知の光源とすることができる。一実施例においては、励起光源は、ニューヨーク州ホーソーン(Hawthorne, NY)のLdul社から入手可能な75Wキセノン励起光源である。
【0014】
可変露出開口14(「スリット」とも呼ぶ)は、励起光フィールドの大きさおよび形状を制御し、それによって光源12によって露出されるセンサアレイのエリアの大きさおよび形状を制御する。本発明の一態様においては、スリット14は、調整可能な長方形フィールドストップ14であって、これは、調整可能部分を有する長方形ダイアフラムであって、この調整可能部分は、位置を変えることによって、フィールド全体の大きさだけによって制限される、任意の大きさの長方形または正方形の励起光フィールドを数十ミクロンの範囲内の精度で生成することができる。一代替例においては、スリット14はダイアフラムであって、このダイアフラムは位置を変えることによって、数十ミクロン範囲の精度で、任意の大きさの円形励起光フィールドを生成することができる。すなわち、この調整可能な長方形フィールドストップ14は、任意所定の大きさで、任意公知の長方形フィールドストップまたはダイアフラムによって生成することのできる任意所定の大きさおよび形状の照射フィールドで、センサアレイ20の任意の区画を照射することを可能にする。一態様によれば、フィールドストップ14は光学スリットを形成し、この光学スリットは、約60μm×約300μmの寸法の、アレイ上の露出エリアを生成する。代替的に、スリットの大きさは、約100μm×100μm(これは、一態様においては、20×の倍率において約5μm×5μmの、アレイ上の露出エリアを生成する)から約7mm×7mmまで変化させることができる。
【0015】
一実施例において、可変露出開口14は、オリンパス社から入手可能な長方形フィールドストップである。代替的に、可変露出開口14は、任意公知のダイアフラム、フィールドストップ、または励起光フィールドの大きさおよび形状を制御するための類似の装置であり、したがって、フィールドは、正方形、長方形、平行四辺形、および円形などの様々な幾何学形状の任意のものを有することができる。
可変露出開口14は、図1に示すように、励起光源12とダイクロイックミラー12の間に配置されているのに対して、開口14は、代替的に、光源12とセンサアレイ20の間の任意の焦点位置に配置することができる。
【0016】
図1に示すように、一態様による可変励起フィルタシステム16は、2つの構成要素:(1)単一中性濃度(ND(neutral density))フィルタ16A、および(2)可変フィルタ構成要素16Bを有する。本発明の一観点においては、フィルタシステム16は、可変フィルタ16Aおよび16Bの両方を収容する、自動化二重励起フィルタホイール16である。そのようなホイール16は、フィルタ16Aおよび16Bの任意の組合せを提供することを可能にする。本発明の一観点における単一NDフィルタ16Aは、光学濃度1.0を有する。代替的に、NDフィルタ16Aは、任意公知の光学濃度を有することができる。さらに別の代替案において、システム16は、可変フィルタ構成要素16Bだけを有する。
一態様によれば、可変フィルタ構成要素16Bは、異なる光学濃度を有する10個のフィルタを提供するフィルタホイール16Bであり、これらのフィルタのいずれかを使用して、照射強度における所望の減光をもたらすことができる。ホイール16Bは、照射経路内にフィルタが配置されないように、設定することもできる。代替的に、フィルタホイール16Bは、任意公知の数のフィルタを有することができる。一態様によれば、ホイール16Bは、0.2、0.4、0.6、0.8、および1.0の光学濃度(OD:optical density)の5個のフィルタを有する。それらのフィルタを備えるホイール16Bを、単一NDフィルタ16Aと組み合わせて使用することによって、1%、1.6%、2.5%、4%、6.3%、および10%の透過率にそれぞれ対応する、次のOD値:2.0、1.8、1.6、1.4、1.2、および1.0を有する、6つの異なるND設定が得られる。
【0017】
本発明の一観点において、可変フィルタシステム16は、約0から約4の範囲の光学濃度をもたらすフィルタを提供する。代替的に、システム16は、約1から約2の範囲の光学濃度をもたらす、フィルタを提供する。
本発明の一観点において、可変フィルタシステム16のフィルタは、0.2の増分で光学濃度が異なる(すなわち、それぞれのフィルタは、それより大きいまたは小さい光学濃度を有するそれぞれのフィルタから、光学濃度が0.2だけ異なっている)。代替的に、可変フィルタシステム16は、0.1の増分で光学濃度が異なる、フィルタを有する。さらに別の代替案では、システム16のフィルタは、0.1未満の増分で設けられる。
【0018】
一態様によれば、フィルタホイールは、自動化フィルタホイールである。本発明に使用することのできる自動化フィルタホイールの一例は、ニューヨーク州ホーソーン(Hawthorne, NY)のLudl Electronic Products Ltd.から入手可能な、MAC5000コントローラシステムを備える、LEPフィルタホイールである。一代替態様において、可変励起フィルタシステム16は、例えば、フィルタスライダまたは任意類似の装置などの、調整可能なフィルタ設定を可能にするように構成された任意公知の構成要素を備え、それによって任意公知の光学濃度を有するフィルタを提供することができる。本発明の一観点において、フィルタホイール16Bに配置されたフィルタは、カリフォルニア州アーバイン(Irvine, California)のNewport Optics社から入手可能な吸収型中性(ND)フィルタである。代替的に、フィルタは、蛍光顕微鏡に使用される任意公知のフィルタである。
アレイ受入れ構成要素18は、図1に示すように、システム10の残部に対して位置設定可能である。一態様において、構成要素18は、x−y方向に位置設定可能である。代替的に、構成要素18は、z方向において、またはx−y方向とz方向の両方において位置設定可能である。
【0019】
本発明のセンサアレイ20は、個々の部位を含む表面を備える、少なくとも第1の基材を有するアレイである。本明細書において「アレイ(array)」の用語は、アレイフォーマットの複数の候補物質(agent)を意味し、アレイの大きさはアレイの構成および最終用途に依存する。約2つから何百万までの異なる活性物質を含むアレイを製作することが可能であり、大規模光ファイバアレイを始めとする、非常に大規模なアレイが可能である。一般に、このアレイは、ビーズおよび基材の大きさに加えて、アレイの最終用途に応じて、2つから10億以上までを含み、超高密度、高密度、中密度、低密度、超低密度のアレイを製作することができる。一態様によれば、超高密度アレイの範囲は約10,000,000から約2,000,000であり(すべての数字は平方cm当りである)、これに対して、代替的には、この範囲は約100,000,000から約1,000,000,000である。高密度アレイは、約100,000から約10,000,000の範囲であり、これに対して、代替的には、これらは約1,000,000から約5,000,000である。中密度アレイは、約10,000から約100、000の範囲であり、代替的には、約20,000から約50,000である。低密度アレイは、一般に10,000未満である。一態様において、低密度アレイは、約1,000から約5,000の範囲である。超低密度アレイは1,000未満である。一態様によれば、超低密度アレイは、約10から1000の範囲であり、代替的には、約100から約500の範囲である。いくつかの態様において、本発明の構成物は、アレイフォーマットでなくてもよく、すなわち、いくつかの態様に対しては、単一能動機能体を含む構成物を同様に製作することもできる。さらに、いくつかのアレイにおいて、異なる組成または同一の組成の多数の基材を使用してもよい。すなわち、例えば、大規模アレイは、複数のより小規模の基材を含んでもよい。
【0020】
さらに、本発明の組成物の1つの利点は、特に光ファイバ技術の使用によって、極高密度アレイを製作することができることである。すなわち、例えば、200μm以下のビーズ(200nmのビーズが可能)を使用することができるとともに、非常に細いファイバが既知であるので、1mm光ファイバ束において40,000以上もの(場合によっては、100万の)異なるファイバおよびビーズを備えることが可能であり、0.5cm当り15,000,000個のビーズおよびファイバを超える密度(ここでも、場合によっては2500〜5000万)を得ることができる。
好適なアレイとしては、それに限定はされないが、米国特許第6,023,540号、第6,266,459号、第6,327,410号、第6,429,027号、第6,858,394号、および第6,859,570号、2001年12月4日出願の米国出願番号第10/005,201号、ならびにPCT出願公開WO00/60332があり、これらのすべてを参照によりその全文を本明細書に組み入れる。
【0021】
「核酸(nucleic acid)」または「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」の用語は、本明細書では、互いに共有結合した少なくとも2種のヌクレオチドを意味するものである。本発明の核酸は、一般に、ホスホジエステル結合を含むが、ある場合には、以下に概説するように、核酸類似物を含めてもよく、それらは代替の主鎖を有し、例えば、ホスホラミド(phosphoramide)(Beaucageら、Tetrahedron, 49(10):1925 (1993)およびその中の参照文献:Letsinger, J.、Org. Chem., 35:3800 (1970)、 Sprinzl ら、Eur. J. Biochem., 81:579 (1977)、Letsingerら、Nucl. Acids Res., 14:3487 (1986)、Sawaiら、Chem. Lett., 805 (1984)、Letsingerら、J. Am. Chem. Soc., 110:4470 (1988)、およびPauwelsら、Chemica Scripta, 26:141 (1986))、ホスホロチオネート(phosphorothioate)(Magら、Nucleic Acids Res., 19:1437 (1991)、および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジオチオネート(phosphorodithioate) (Briuら、J. Am. Chem. Soc., 111:2321 (1989))、O−メチルホスホロアミダイト結合(O-methylphophoroamidite linkages)(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、Oxford University Pressを参照)、およびペプチド核酸主鎖および結合(Egholm、J. Am. Chem. Soc., 114:1895 (1992)、Meierら、Chem. Int. Ed. Engl., 31:1008 (1992)、Nielsen、Nature, 365:566 (1993)、Carlssonら、Nature, 380:207 (1996)を参照、これらのすべてを参照により本明細書に組み入れる)である。
【0022】
その他の類似核酸としては、ポジティブ型主鎖を備えるもの(Denpcyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:6097 (1995));非イオン性主鎖(米国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号、および第4,469,863号;Kiedrowshiら、Angew. Chem. Intl. Ed. English, 30:423 (1991);Letsingerら、J. Am. Chem. Soc., 110:4470 (1988);Letsingerら、Nucleosides & Nucleotides, 13:1597 (1994);Chapters 2, 3, ASC Symposium Series 580, “Carbohydrate Modifications in Antisense Research”, Ed. Y.S. Sanghui、P. Dan Cook;Mesmaekerら、Bioorganic & Medicinal Chem. Lett., 4:395 (1994);Jeffsら、J. Biomolecular NMR, 34:17 (1994);Tetrahedron Lett., 37:743 (1996))、および米国特許第5,235,033号および第5,034,506号、ならびにChapters 6, 7、ASC Symposium Series 580, “Carbohydrate Modifications in Antisense Research”, Ed. Y.S. Sanghui and P. Dan Cookに記載されものを含む、非リボース主鎖などがある。1種または2種以上の炭素環式糖類を含む核酸も、核酸の定義に含まれる(Jenkins, et al., Chem. Soc. Rev., (1995) pp. 169-176を参照)。いくつかの核酸類似物が、Rawls, C & E News, June 2, 1997, page 35に記載されている。
【0023】
これらの参照文献のすべては、参照により本明細書に明記して組み入れられる。これらのリボースリン酸(ribose-phosphate)主鎖の修飾を行って、標識などの追加部分の添加を容易にするか、または生理学的環境におけるそのような分子の安定性および半減期を増大させてもよい。一例示態様によれば、本発明に有用な類似核酸はPNAである。さらに、天然核酸と類似物の混合物を作成することができる。代替的に、異なる核酸類似物の混合物、および天然核酸と類似物の混合物を作成してもよい。核酸は、指定に応じて、一本鎖または二重鎖であってもよく、または二重鎖配列もしくは一本鎖配列の両方の部分を含有してもよい。核酸は、DNA、ゲノムとcDNAの両方、RNAまたはハイブリッドとしてもよく、この場合に、核酸は、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの任意の組合せ、およびウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンタニン(xanthanine)、ヒポキサンタニン(hypoxanthanine)、イソシトシン、イソグアニンを含む、塩基類と、ニトロピロールやニトロインドールなどの塩基類似物の任意の組合せを含む。
【0024】
「基材(substrate)」または「固体担体(solid support)」またはその他の文法的同義語は、本明細書においては、ビーズの付着(attachment)または連結(association)を行うのに適当な、離散型個別部位(discrete individual site)を含むように修飾することが可能であり、少なくとも1つの検出方法に適用できる任意の物質を意味する。当業者であれば理解するように、可能な基材の数は非常に大きい。可能な基材としては、それに限定はされないが、ガラスおよび修飾または官能化されたガラス、プラスチック(アクリル類、ポリスチレン、およびスチレンとその他の材質のコポリマー類、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン類、Teflon(登録商標)などを含む)、多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、レジン類、シリカまたはシリコンおよび修飾シリコンを含むシリカ基材料、炭素、金属類、無機質ガラス、プラスチック類、光ファイバ束、および多種多様なその他のポリマー類が挙げられる。一般に、基材は、光学検出を可能とするとともに、それ自体は感知されるほどには発光しない。
【0025】
一般に基材は平坦(平板状)であるが、当業者は理解するように、その他の基材の構成も使用することが可能であり、例えば、3次元構成を、例えば、ビーズへのサンプルアクセスを可能にする、多孔質プラスチックのブロック中にビーズを埋め込み、検出用に共焦点顕微鏡を使用することによって、使用することができる。同様に、フロースルー(flow-through)サンプル分析のために、ビーズをチューブの内部表面に配置して、サンプル体積を最小化してもよい。一態様によれば、本発明に使用する基材は、以下で考察するように、光ファイバ束であるか、または代替的には、ガラス、ポリスチレン、およびその他のプラスチックやアクリル樹脂などの平板状基材である。
【0026】
一態様において、基材は、参照によりそのすべてを本明細書に明記して組み入れてある、米国特許出願第08/944,850号および第08/519,062号、PCT US98/05025およびPCT US98/09163に概説されているように、光ファイバ束またはアレイである。ある態様では、予備成形された一体型光ファイバアレイが使用される。「予備成形された一体型光ファイバアレイ(preformed unitary fiber optic array)」とは、本明細書においては、同軸に配置されて長さ方向に沿って接合された、離散型個別光ファイバストランドのアレイを意味する。ファイバストランドは、一般に、個別に被覆されている。しかしながら、予備成形された一体型アレイと、その他の光ファイバ構成とが異なる点は、ファイバを個別に物理的に取り扱うことができないこと、すなわち、一般に1つのストランドは、その長さ方向のいずれの位置においても別のファイバストランドと物理的に切り離すことができないことである。
【0027】
一般に、本発明のアレイ組成物のアレイは、いくつかの方法で構成することができる。例えば、本明細書に参照により明記して組み入れた、米国特許出願番号第09/473,904号を参照されたい。本発明の一観点においては、マイクロタイタープレートなどの、複数のアッセイ位置(本明細書においては、「アッセイウエル(assay wells)」とも呼ぶことがある)を含む第1の基材は、各アッセイ位置が個々のアレイを収容するように構成される。すなわち、アッセイ位置とアレイ位置は同一である。例えば、マイクロタイタープレートのプラスチック材料を、アッセイウエルのそれぞれの底部に複数の「ビーズウエル(bead wells)」を含むように、形成することができる。次いで、本発明の活性物質を含むビーズを、以下においてより詳細に説明するように、各アッセイ位置におけるビーズウエル中に装入することができる。
【0028】
基材が、各アッセイウエルの底部に複数のビーズウエルを備える複数のアッセイウエルを有する、一態様において、ビーズウエルは、各アッセイウエルの内部表面上に形成された、ビーズの付着または連結に適当な、離散型個別部位である。代替的に、ビーズウエルは、各アッセイウエル内に埋め込まれた光ファイバ束の個々のファイバ上に形成された離散型個別部位である。例えば、光ファイバ束は、マイクロタイターウエル中に埋め込むことができる。さらに別の代替案においては、ビーズウエルは、例えば、ウエルをエッチング加工もしくはドリル加工するか、またはスライド(slide)内に光ファイバ束を埋め込むか(例えば、これは光ファイバ束をガラスまたはプラスチック(またはその他の材料)のブロック中に埋め込み、次いで平らな断面を「スライス」することによって行うことができる)のいずれかによって、基材の平坦表面上に形成される。これらの態様においては、追加の基材層は、基材の上(ビーズウエルと同じ側)に配置され、この追加の基材層は、ビーズウエルの位置に対応する穴を有する。したがって、追加の基材層にある穴がアッセイウエルを生成して、基材の平坦表面に形成されたビーズウエルが、アッセイウエルのそれぞれの内部に位置している。例えば、シリコン層もしくはゴム層またはガスケットを応用するか、またはプラスチックまたはガラスの第2のシートを応用できる。さらに別の態様においては、ウエルは平坦表面上に収納されて、アッセイ位置は、第2の物理層の使用によるのではなく、化学的官能基の使用によって生成される。例えば、パターン内に疎水性溶媒を添加することによって、親水性サンプルの分離が可能となり、したがって、例えば、疎水性物質の「グリッド」を適用して、アレイ位置を流体的に分離することができる。代替的に、エッチングなどの、その他の物理的方法を使用してもよい。
【0029】
本発明の一観点において、基材はマイクロタイタープレートである。代替的に、基材は顕微鏡スライドである。さらなる代替案では、基材は任意公知の実質的に平面状の基材である。
基材の少なくとも1つの表面を、後にマイクロスフェア(microsphere)を連結させるための、離散型の個別位置を含むように改変する。これらの部位は、物理的に変更された部位、すなわち、マイクロスフェアがウエルの中で留まるように、ビーズを保持することのできる、基材内のウエルまたは小さい凹部や、その他の力(磁力または圧縮力)を使用することなどの、物理的コンフィギュレーション、化学的に機能化された部位などの化学的に改変された部位または活性な部位、静電気的に改変された部位、疎水性/親水性に機能化された部位、接着剤スポットなどを含むことができる。
【0030】
この部位は、パターン、すなわち規則的設計または構造とするか、あるいはランダムに分布させてもよい。一態様では、X−Y座標面内で部位をアドレス指定できるように、部位の規則パターンを使用する。この意味での「パターン」には、繰返しユニットセル、好ましくは基材上での高濃度のビーズを可能にするものが含まれる。しかしながら、これらの部位は、離散型部位でなくてもよいことに留意すべきである。すなわち、例えば、任意の位置でビーズの連結を可能にする、接着剤または化学官能基の均一表面を使用することができる。すなわち、基材の表面は、部位が他の部位と連続的であろうと非連続的であろうと、これらの個々の部位においてマイクロスフェアの連結を可能にするように修飾されている。したがって、基材の表面は、単一の連結ビーズだけを有することのできる、離散型部位が形成されるように改変されるか、または代替的に、基材の表面が修飾されて、どこにでもビーズを降ろすことできるが、最後には離散型部位で止まる。
【0031】
本発明の一観点では、基材の表面は、ウエル、すなわち基材の表面の凹部を含むように改変される。これは、当該技術において一般に知られているように、それに限定はされないが、フォトリソグラフィ、スタンピング技法、成型技法、およびマイクロエッチング技法を含む、様々な技法を使用して行うことができる。当業者には理解されるように、使用される技法は、基材の組成と形状によって左右される。
一態様において、部位を製造するために、基材の表面に物理的な変更が行われる。本発明の一観点によれば、本明細書に参照により明記して組み入れてある、米国特許出願番号第08/818,199号および第09/151,877号に概説されているように、基材は光ファイバ束であり、基材の表面はそのファイバ束の終端である。この態様において、ウエルは、個々のファイバを含む、光ファイバ束の終端または遠位端に作成される。この態様においては、小さなウエルまたは凹部がファイバの一端に形成されるように、個々のファイバの芯部が、被覆部(cladding)に対してエッチングされる。このウエルの必要な深さは、ウエルに付加されるビーズの大きさに依存することになる。
この態様においては一般に、マイクロスフェアが、非共有結合的にウエルと連結されており、ウエルは、以下に概説するように、さらに化学的に官能化させてもよいが、架橋剤を使用するか、または物理的バリヤ、すなわちビーズの上にフィルムまたは膜を使用してもよい。
【0032】
一態様によれば、基材の表面は、本発明のマイクロスフェアを、共有結合的または非共有結合的に、基材の離散型部位または位置に連結するのに使用することのできる、化学的に修飾された部位を含むように改変される。この文脈において「化学的に修飾された部位」とは、それに限定はされないが、一般的に対応する反応性官能基を含むマイクロスフェアを共有結合的に付着させるのに使用することができる、アミノ基、カルボキシ基、オクソ基およびチオール基を含む、化学官能基のパターンを付加すること;(接着剤の添加のための事前の化学的官能化によるか、または接着剤の直接添加によって)マイクロスフェアを結合するのに使用することのできる接着剤のパターンを付加すること;マイクロスフェアの静電連結のために、すなわち、マイクロスフェアが部位と反対の荷電基を含む場合に、(化学的官能基と類似の)荷電基のパターンを付加すること;好適な実験状況の下で同様に疎水性または親水性のマイクロスフェアを添加することによって、水親和性に基づいてマイクロスフェアの部位への連結が生ずるように、部位に疎水性または親水性を差別的に与える化学官能基のパターンを付加すること、が挙げられる。例えば、水系において、疎水性ビーズと一緒に疎水性部位を使用すると、それらの部位に優先的にビーズが連結される。上記で概説したように、この意味での「パターン」とは、離散型部位におけるビーズの連結を可能にする、均一な表面処理に加えて、離散型部位を生じる表面処理の使用を含むものである。このことは、当業者であれば理解するように、様々な方法で達成することができる。
【0033】
本明細書において、「マイクロスフェア(microspheres)」、「ビーズ(beads)」、「粒子(particles)」、または文法的同義語は、微小な離散型粒子を意味する。ビーズの組成は、活性物質の分類および合成方法に左右されることになる。好適なビーズ組成としては、ペプチド、核酸および有機部分合成に使用されるものを含み、それに限定はされないが、プラスチック、セラミック、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性材料、トリアゾル(thoria sol)、カーボングラファイト、二酸化チタン、ラテックスまたはSefarose(登録商標)などの架橋デキストラン類、セルロース、ナイロン、架橋ミセル類(cross-linked micelles)およびTeflon(登録商標)などが挙げられる。インディアナ州フィッシャーズ(Fishers IN)のBangs Laboratories社出版の「Microsphere Detection Guide」は役に立つ手引き書である。
【0034】
ビーズは、必ずしも球形である必要はなく、不規則粒子を使用してもよい。さらに、ビーズは多孔質とし、それによって活性物質付着またはIBL付着のいずれかに利用可能なビーズの表面積を増大させてもよい。ビーズ玉(bead)の大きさは、ナノメートル、すなわち100nmからミリメートル、すなわち1mmまでの範囲であり、ビーズ(beads)としては、約0.2ミクロンから約200ミクロンであり、代替的には約0.5〜5ミクロンであるが、態様によっては、より小さいビーズを使用してもよい。
本発明の主要構成要素は、アッセイの途中においてビーズが動かないように、基材の表面上の離散型部位において、ビーズの付着または連結を可能にする、基材/ビーズの対合(pairing)を使用することであることに留意すべきである。
【0035】
各マイクロスフェアは活性物質を含むが、当業者であれば理解するように、合成方法によっては、活性物質を含まないマイクロスフェアがいくらかあってもよい。本明細書において使用される場合には、「候補活性物質(candidate active agent)」、「活性物質(active agent)」、「化学官能基(chemical functionality)」、または「結合リガンド(binding ligand)」は、本発明のマイクロスフェアに付着させることが可能であって、生物学的および化学的な対象分析物の両方を含む、対象分析物の検出に一般的に使用される任意の分子を意味する。一態様によれば、活性物質は、たんぱく質類、オリゴペプチド、微小有機分子、錯化合物(coordination complex)、多糖、ポリヌクレオチドなどの生物活性物質(bioactive agent)である。代替的に、活性物質は、化学活性物質である。本発明の組成物は、2つの主要用途を有することを理解すべきである。一態様においては、以下においてより十分に概説するように、本組成物は、特定の対象分析物の存在、例えば、特定のヌクレオチド配列または酵素、抗体または抗原などの、特定のたんぱく質類の存在または不在を検出するために使用される。例えば、本組成物は、気相分析物(例えば、揮発性有機化合物、爆薬、化学兵器物質、バクテリアヘッドスペース(bacteria headspace)、食品芳香(food aroma)など)を検出するのに使用することができる。代替的に、本組成物は、特定の対象分析物に結合するための活性物質すなわち薬品候補を、スクリーニングするのに使用される。
【0036】
生物活性物質は、多数の化学的分類を包含するが、通常は、それらは有機質分子であり、好ましくは100ダルトンより上で、約2500ダルトン未満の分子量を有する、微小有機化合物である。生物活性物質は、たんぱく質類、特に水素結合との構造的相互作用に必要な官能基を含み、典型的には、少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルキシル基を含み、好ましくは、それらの官能化学基の内の少なくとも2種類を含む。生物活性物質は、環式カーボンまたは複素環式構造および/または1つまたは2つ以上の上記官能基で置換された、芳香族または環式芳香族構造を含むことが多い。生物活性物質は、ペプチド類、核酸類、蔗糖類、脂肪酸類、ステロイド類、プリン類、ピリミジン類、それらの誘導体類、構造的類似物または組合せを含む、生物分子の間でも発見される。一態様においては、生物活性物質は、核酸類およびたんぱく質類である。
【0037】
活性物質は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを始めとする、多種多様な源から得ることができる。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチド類の表現を含む、多様な有機化合物および生物分子のランダム合成(random synthesis)または定方向合成(directed synthesis)には、多数の手段が利用可能である。代替的に、バクテリア、黴、植物および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが、利用可能または容易に作成可能である。さらに、天然または合成的に製造されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生物学的な手段によって容易に改変される。公知の薬理学用剤を、アシル化、アルキル化、エステル化および/またはアミド化などの、定方向またはランダムな化学修飾に供して、構造的類似物を製造してもよい。
【0038】
本発明の一観点において、生物活性物質はたんぱく質類である。本明細書においては「たんぱく質」とは、少なくとも2種類の共有結合的に付着されたアミノ酸を意味し、たんぱく質類、ポリペプチド類、オリゴペプチド類およびペプチド類を含む。このたんぱく質は、天然のアミノ酸類およびペプチド結合剤(peptide bonds)または合成ペプチド模擬構造(synthetic peptidomimetic structures)で構成することができる。すなわち、本明細書において使用する「アミノ酸」または「ペプチド残基」とは、天然アミノ酸および合成アミノ酸の両方を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン(homo-phenylalanine)、シトルリン(citrulline)およびノルロイシン(norleucine)は、本発明の目的に対しては、アミノ酸であると考えられる。側鎖は、(R)配置または(S)配置のいずれでもよい。この態様において、アミノ酸は、(S)配置またはL配置である。非天然側鎖が使用される場合には、非アミノ酸置換基を使用して、例えば、in vivo劣化を防止または遅延させてもよい。
一態様において、生物活性物質は天然たんぱく質類または天然たんぱく質類の断片である。すなわち、例えば、たんぱく質類を含有する細胞抽出物、またはたんぱく質性細胞抽出物のランダム消化物(random digests)または定方向消化物(directed digests)を使用してもよい。このようにして、原核たんぱく質類(procaryotic proteins)および真核たんぱく質類(eukaryotic proteins)のライブラリーを、本明細書において説明した系におけるスクリーニング用に作成してもよい。一態様においては、生物活性物質は、バクテリアたんぱく質、黴たんぱく質、ウィルスたんぱく質、および、一態様によれば、人たんぱく質類を含む、哺乳類たんぱく質類のライブラリーである。
【0039】
本発明の一観点において、生物活性物質は、約5から約30のアミノ酸のペプチド類であるか、または代替的に、約5から約20のアミノ酸であり、さらに別の代替案では、約7から約15のアミノ酸である。ペプチド類は、上記に概説したように、天然たんぱく質類の消化物、ランダムペプチド類、または「偏向させた(biased)」ランダムペプチド類であってもよい。本明細書における「ランダム化された(randomized)」または文法的同義語は、それぞれの核酸およびペプチドは、それぞれ、主としてランダムヌクレオチド類とアミノ酸類とからなることを意味している。一般的にこれらのランダムペプチド類(または、以下で考察する核酸類)は、化学的に合成されるので、これらは任意のヌクレオチドまたはアミノ酸を任意の位置に組み入れることができる。この合成工程は、ランダム化されたたんぱく質類または核酸類を生成するように設計して、配列の長さにわたって可能な組合せのすべて、またはほとんどの形成を可能にし、それによってランダム化された生物活性たんぱく質物質のライブラリーを形成することができる。
【0040】
一態様によれば、活性物質のライブラリーが使用される。このライブラリーは、対象分析物への確率的に十分な範囲の結合をもたらすのに、十分なほど構造的に多様な集団を提供しなくてはならない。したがって、相互作用ライブラリーは十分に大きく、そのメンバーの少なくとも1つが、対象分析物に対する親和性を与える構造を有するようにしなくてはならない。相互作用ライブラリーに要求される絶対的大きさを測るのは難しいが、自然は免疫応答についてのヒントを与えており、それは、10〜10の異なる抗体類の多様性は、生物体が直面するほとんどの可能性のある抗原類と相互作用するのに十分な親和性のある、少なくとも1つの組合せを提供することである。刊行されているin vitro選択技法も、10から10のライブラリー規模は、対象に対する親和性を備える構造を発見するのに十分であることを示している。すなわち、本発明の一観点では、本方法においては、少なくとも10、代替的には少なくとも10、さらに別の代替案では少なくとも10、またさらに別の代替案では少なくとも10の異なる活性物質が同時に分析される。一態様によれば、本方法はライブラリー規模と多様性を最大化する。
【0041】
一態様においては、どの位置においても配列優先または一定配列なしに、ライブラリーは完全にランダム化される。代替的に、ライブラリーは偏向される。すなわち、配列内のある位置は、一定に保持されるか、または限られた数の可能性から選択される。例えば、本発明の一観点においては、ヌクレオチド類またはアミノ酸残基は、例えば、架橋用の疎水性アミノ酸類、親水性残基、システイン類の生成の方向に立体的に偏向された(小型または大型いずれかの)残基類、SH−3ドメイン用のプロリン類、リン酸化反応部位用のセリン類、スレオニン類(threonines)、チロシン類(tyrosines)またはヒスチジン類(histidines)などの定義された分類の範囲内で、あるいはプリン類などにランダム化される。
【0042】
本発明の一観点においては、生物活性物質は、核酸である(本明細書においては、一般的に「プローブ核酸(probe nucleic acids)」または「候補プローブ」と呼ぶ)。本明細書においては、「核酸」、「オリゴヌクレオチド」または文法的同義語は、互いに共有結合した、少なくとも2種類のヌクレオチドを意味する。
本発明の核酸は、一般に、ホスホジエステル結合を含むが、場合によっては以下に概説するように、代替主鎖を有する、核酸擬似物が含まれ、それには、例えば、ホスホラミド(Beaucageら、Tetrahedron, 49(10):1925 (1993)およびその中の文献、Letsinger, J. Org. Chem., 35:3800 (1970)、 Sprinzlら、Eur. J. Biochem., 81:579 (1977)、 Letsingerら、Nucl. Acids Res., 14:3487 (1986)、 Sawaiら、Chem. Lett., 805 (1984)、 Letsingerら、J. Am. Chem. Soc., 110:4470 (1988)、および Pauwelsら、Chemica Scripta, 26:141 (1986))、ホスホロチオネート(phosphorothioate)(Magら、Nucleic Acids Res., 19:1437 (1991)、および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(phosphorodithioate)(Briuら、J. Am. Chem. Soc., 111:2321 (1989))、O‐メチルホスホロアミダイト結合( O-methylphophoroamidite linkages)(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Pressを参照)、およびペプチド核酸主鎖および結合(Egholm, J. Am. Chem. Soc., 114:1895 (1992)、 Meierら、Chem. Int. Ed. Engl., 31:1008 (1992)、Nielsen, Nature, 365:566 (1993)、Carlssonら、Nature, 380:207 (1996)を参照のこと、これらのすべては参照により組み込まれる)が含まれる。
【0043】
その他の類似核酸としては、ポジティブ型主鎖を備えるもの(Denpcy, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:6097 (1995));非イオン主鎖(米国特許第 5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号、および第4,469,863号;Kiedrowshiら、Angew. Chem. Intl. Ed. English, 30:423 (1991);Letsingerら、J. Am. Chem. Soc., 110:4470 (1988);Letsingerら、Nucleosides & Nucleotides, 13:1597 (1994); Chapters 2 and 3, ASC Symposium Series 580, “Carbohydrate Modifications in Antisense Research”, Ed. Y.S. Sanghui and P. Dan Cook;Mesmaekerら、Bioorganic & Medicinal Chem. Lett., 4:395 (1994);Jeffsら、J. Biomolecular NMR, 34:17 (1994);Tetrahedron Lett., 37:743 (1996))、および米国特許第5,235,033および第5,034,506号、ならびにChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580, “Carbohydrate Modifications in Antisense Research”, Ed. Y.S. Sanghui and P. Dan Cookに記載されたものを含む、非リボース主鎖が挙げられる。1種または2種以上の炭素環式糖類を含む核酸も、核酸の定義の範囲に含まれる(Jenkinsら、Chem. Soc. Rev., (1995) pp. 169-176を参照のこと)。いくつかの核酸類似物が、Rawls, C & E News, June 2, 1997, page 35に記載されている。これらのすべての参考文献を、本明細書に参照により明記して組み入れてある。これらのリボース‐リン酸主鎖の修飾を行い、標識などの追加部分の付加を容易にするか、または生理学的環境におけるそのような分子の安定性および半減期を増大させてもよい。
【0044】
例えば、PNAは、本発明の一態様においては核酸類似物である。さらに、天然核酸と類似物との混合物を製造することができる。代替的に、異なる核酸類似物の混合物、および天然核酸と類似物との混合物を製造することもできる。核酸類は、指定に応じて、一本鎖または二重鎖であるか、または二重鎖または一本鎖配列の両方の部分を含有してもよい。核酸は、DNA、ゲノムとcDNAの両方、RNAまたはハイブリッドとしてもよく、この場合に、核酸は、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの任意の組合せ、およびウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンタニン(xanthanine)、ヒポキサンタニン(hypoxanthanine)、イソシトシン、イソグアニンを含む、塩基類と、ニトロピロールやニトロインドールなどの塩基類似物の任意の組合せを含む。
【0045】
一態様において、生物活性物質は、DNAおよびRNAを含む、クローン核酸のライブラリーである。この態様においては、個々の核酸は、一般に従来方法(それに限定はされないが、プラスミドまたは位相ベクトル内での伝播、PCRを含む増幅技法など)を用いて調製される。核酸類は、好ましくは、マイクロタイタープレート形式などの、なんらかの形式にアレイ化され、ライブラリーの付着のためにビーズが加えられる。
クローンライブラリー(または本明細書において概説した核酸のいずれか)の付着は、当業者であれば理解するように、様々な方法で行うことが可能であり、それに限定はされないが、(例えば、次いで核酸を表面に付着させるのに使用することのできる、AminoLink(登録商標)またはビチオン化ヌクレオチドなどの誘導体化ヌクレオチド類の組込みを含む)化学的捕捉または親和性捕捉、架橋、および静電付着などが挙げられる。
【0046】
本明細書において「標識された(labeled)」とは、化合物が、その化合物の検出を可能にするために付けられた、少なくとも1つの元素、同位体または化学化合物を有することを意味する。一般に、標識は3つの分類に分かれ、それはa)同位体標識類、これらは放射性同位体または重同位体であってもよい、b)磁気的、電気的、熱的なもの、およびc)着色または発光染料、であるが、標識には酵素および磁性粒子などの粒子類も含まれる。一態様によれば、本発明に使用される標識には、発光標識がある。好適な標識としては、それに限定はされないが、ユーロピウム(Europium)およびテルビウム(Terbium)のものを含む、発光ランタニド錯体、フルオレセイン(fluorescein)、ローダミン(rhodamine)、テトラメチルローダミン(tetramethylrhodamine)、エオシン(eosin)、エリトロシン(erythrosin)、クマリン(coumarin)、メチルクマリン類、ピレン(pyrene)、マラサイトグリーン(Malacite green)、スチルベン(stilbene)、ルシファーイエロー(Lucifer Yellow)、カスケードブルー(Cascade Blue(登録商標))、テキサスレッド(Texas Red)、FITC(フルオレッセイソチオシアネート)、PE、cy3、cy5、およびその他、本明細書に参照により明記して組み入れた、Richard P. Haugland、「the Molecular Probes Handbook」、第6版に記載されたものなどがある。
【0047】
本発明の一観点によれば、センサアレイ20は、マイクロビーズセンサアレイ20である。一態様において、基材/ビーズの対合の使用によって、アッセイの途中でビーズが動かないように、基材の表面の離散部位にビーズを付着または連結させることが可能となる。
アレイ20がビーズセンサアレイ20である特定の態様において、本発明は、マイクロスフェアの集団を含む。本明細書において「集団(population)」とは、上記で概説したアレイのための複数のセンサを意味する。アレイ20はビーズセンサアレイである場合には、この集団は複数のマイクロスフェアである。
この集団内には、別個の部分集団(subpopulation)があり(本明細書においては、「タイプ(types)」、「群(groups)」、または「部分集合(subsets)」とも呼ぶ)、これは単一センサまたは多数の同一センサであり得る。すなわち、態様によっては、以下により詳細に説明するように、アレイは、各活性物質に対して単一のセンサだけを収納し、一方で、他の態様では、各タイプのセンサを複数、使用する。
【0048】
センサアレイがマイクロスフェアセンサアレイである態様においては、マイクロスフェアに付着した活性物質を特徴とする部分集団は、単一のマイクロスフェアであっても多数の同一マイクロスフェアであってもよい。本発明の一観点によれば、各部分集団が、同一の活性物質を含む複数のマイクロスフェアを含む、2つ以上の部分集団を使用することによって、システムに組み込まれる冗長性がもたらされる。すなわち、同一の活性物質を含む、多数のマイクロスフェアを有する、マイクロスフェアの部分集団または小群を備えることによって、本発明のどのアレイ内にも多数のマイクロスフェア複製(replicate)が存在することが確実になる。
【0049】
一態様によるアレイ20は、光撮像ファイバの一端にエッチングされたウエル内の、アレイ全体にランダムに分布した、24000個のマイクロビーズセンサの集団を有する。各センサは、4つのセンサ部分集団またはタイプ(「群」、または「部分集合」とも呼ぶ)の内の1つに分かれ、それによって統計的には、各センサタイプの複製が約6000個存在する。本発明においては、かなりの数の複製があることで、アレイの選択された部分の露出が、各タイプのセンサの統計的に有意義な数の露出が行われることが確実になる。代替的に、アレイ20は、約20個から約50,000個のマイクロビーズセンサと、約4から約15のセンサタイプとを有する。さらに別の代替案においては、アレイ20は、アレイ撮像システムにおいて対象分析物を識別するための、任意既知の数のマイクロビーズセンサと任意既知の数のセンサタイプとを有する。本発明に使用できるマイクロビーズセンサとしては、それに限定はされないが、Alltech(登録商標)、Chirex(登録商標)、Sel(登録商標)またはSnafl(登録商標)ビーズセンサが挙げられる。
【0050】
当該技術において理解されているように、マイクロビーズ/光学撮像ファイバアレイ20は、典型的には、光源12からの励起光がアレイ20内のファイバの近位面に当たって、ファイバを通過してファイバの遠位面に配置されたマイクロビーズセンサに至るように配置されている。本発明の特定の態様によれば、可変露出開口14は、近位ファイバ面の小部分だけに当たる励起光フィールドを生成し、光がそれらの特定のファイバを通過するときに、それらのファイバの遠位面に配置された、対応するマイクロビーズセンサの小さい部分だけに励起光が当たるようにする。その結果として、センサアレイ20におけるマイクロビーズセンサの一区画だけが、照射される。代替的に、ファイバアレイ20を単にビーズを保持する基材として使用して、励起光を遠位面に伝達するには使用しないことも可能である。
【0051】
本発明の一代替態様によれば、センサアレイ20は、それに限定はされないが、任意公知の非ビーズセンサ類を含む、任意公知の種類のセンサを有する。別の代替案においては、基材は、光ファイバ束または光ファイバアレイを含まない。
本発明の一態様による、図1に示すダイクロイックハウジング22は、ダイクロイックミラー24を含み、これは、蛍光顕微鏡に使用される任意公知のダイクロイックミラーとすることができる。一代替観点において、ハウジング22には、当該技術において知られているフィルタ「キューブ(cube)」として構成されることの多い、追加の励起フィルタおよび/または放射フィルタを含めることができる。
【0052】
本発明の一観点において、レンズ30Aは、10倍(0.30NA)対物レンズまたは20倍(0.50NA)対物レンズのいずれかである。代替的に、レンズ30Aは、任意既知の倍率を有することができる。一態様によれば、レンズ30Bおよび30Cは、1.6倍交換用映写レンズ30Bおよび0.5倍カメラアダプタ映写レンズ30Cであり、この両者は、一実施例においては、Olympus社から購入することができる。代替的に、レンズ30B、30Cは任意既知の倍率を有することができる。レンズ30A、30B、30Cのそれぞれは、蛍光顕微鏡に使用される、任意公知のレンズである。
放射フィルタシステム26は、蛍光顕微鏡で使用される、任意公知の放射フィルタシステムとすることができる。一実施例において、放射フィルタシステムは、自動フィルタホイールである。
【0053】
一態様によれば、アレイ検出器28は、CCDカメラである。代替的に、アレイ検出器28は、蛍光顕微鏡に使用される、任意公知のカメラを含む、任意公知のアレイ検出器とすることができる。一実施例において、アレイ検出器は、ミシガン州ロミュラス(Romulus, Michigan)のCooke Copr.製の、1376×1040ピクセルSensicam QE CCDカメラである。本発明の一観点において、CCDカメラの感度を向上させるために、ピクセルビニング(pixel binning)を利用することができる。ピクセルビニングは、正方形群のピクセルのピクセル電荷を、1つの「スーパーピクセル」に結合することによって、カメラのSN比を向上させ、フレームレートを増大させ、かつカメラによって収集されたデータを圧縮するための既知の方法である。一態様においては、4×4ビニングが本発明に使用される。4×4ビニングは、16個の隣接ピクセルの電荷値の加算を伴う。
【0054】
一態様によれば、図1に示すように、アレイ撮像システム10が、蒸気を分析するのに使用される。そのような態様において、システム10は、位置設定構成要素34に取り付けられた、蒸気供給構成要素32(「スパージャライン(sparge line)」とも呼ばれる)を有する。蒸気供給構成要素32は、試験しようとする蒸気を蒸気供給システム36から受け入れ、それをセンサアレイ20に供給する。一態様によれば、蒸気供給システム36は、一定の蒸気圧と分析物の濃度を維持するために、25℃に設定された温度制御オーブン内に設置された気密式のバブラー(bubbler)を有する。代替的に、蒸気供給システム36は、蒸気サンプルを顕微鏡に供給するための任意公知の装置とすることができる。一実施例において、蒸気供給システム36は、メイン州オロノ(Orono, Maine)のSensor Research and Development社製(www.srdcorp.com)の6チャネルシステムである、GDS6000 Gas Delivery Systemに類似の、8チャネル自動蒸気供給システムである。代替的に、アレイ撮像システム10は、液体、またはアレイ撮像システムで試験されることが知られている任意の物質を分析するのに使用される。
【0055】
本発明の一観点において、蒸気供給システム36は、試験しようとする蒸気のパルスまたは超純度窒素のいずれかを供給するように構成される。一態様におけるシステム36は、システム36が蒸気パルスと窒素の供給を交番させることを可能にする、トリガー機構(図示せず)を有する。一実施例において、トリガー機構は、ソレノイドトリガーである。システム36は、200mL/minの一定流量で窒素を供給する。代替的に、任意の有効な流量を使用することができる。
上記供給システム36は、本発明の一観点において、プログラムされた自動供給システム36とすることができる。一態様において、自動蒸気供給システムは、システム36を制御する蒸気供給ソフトウエアを有する。一実施例において、蒸気供給ソフトウエアは、Sensor Reseach and Development社によるカスタム開発ソフトウエアユーザインターフェイスを備える、公知の蒸気供給ソフトウエアである。代替的に、蒸気供給ソフトウエアは、センサアレイへの蒸気の供給を制御することのできる、任意公知のソフトウエアとすることができる。
【0056】
使用に際して、一態様によれば、本発明は、サンプル中での少なくとも1種の対象分析物の存在を検出する方法である。この方法は、サンプルをセンサアレイと接触させること、センサアレイの第1の区画を第1の強度で照射すること、およびデータを収集することを含む。一態様においては、この方法はまた、第2のサンプルをセンサアレイと接触させること、センサアレイの第2の区画を第2の強度で照射すること、およびデータを収集すること、ならびに対象分析物の存在または不在を判定することも含む。
本発明の一観点においては、第1の区画および第2の区画は、同一の区画とするか、または異なる区画とすることができる。すなわち、この方法には、第1のサンプルをアレイと接触させること、アレイの区画(本明細書においては、「部分」または「小区画」とも呼ばれる)を照射すること、第1のサンプルに関するデータを収集すること、次いで第2のサンプルをアレイと接触させること、アレイの同一の区画を照射すること、および第2のサンプルに関するデータを収集することを含めることができる。代替的に、この方法には、第1のサンプルをアレイと接触させること、アレイの第1の区画を照射すること、第1のサンプルに関するデータを収集すること、第2のサンプルをアレイと接触させること、アレイの第2の異なる区画を照射すること、および第2のサンプルに関するデータを収集することを含めることができる。
【0057】
本発明の一態様において、第1の強度および第2の強度は、同一でもよく、または異なってもよい。すなわち、この方法には、第1のサンプルをアレイと接触させること、第1の強度で区画を照射すること、第1のサンプルに関するデータを収集すること、次いで第2のサンプルをアレイと接触させること、第1の強度と同一である第2の強度で、同一の区画または異なる区画を照射すること、および第2のサンプルに関するデータを収集することを含めることができる。代替的に、この方法は、第1のサンプルをアレイと接触させること、第1の強度で区画を照射すること、第1のサンプルに関するデータを収集すること、次いで第2のサンプルをアレイと接触させること、第1の強度とは異なる第2の強度で、同一の区画または異なる区画を照射すること、および第2のサンプルに関するデータを収集することを含む。一態様によれば、第2の強度は第1の強度よりも大きい。本発明の一観点においては、第2の強度は第1の強度よりも、照射されているセンサにおける光退色の影響を補償する量だけ大きい。一態様によれば、第1の強度は、センサを励起して、観察可能な応答を生成するのに十分な、最小強度に制限される。
【0058】
一態様によれば、サンプルをセンサと接触させるステップは、少なくとも1つの活性物質に対象分析物を結合させるのに適当な条件下、すなわち一般的には生理学的条件下で、サンプルをアレイに付加することを含む。代替的に、センサアレイは、任意公知の方法によってサンプルと接触させることができる。サンプルが蒸気サンプルである一態様によれば、蒸気供給構成要素32は、蒸気供給システム36から試験しようとする蒸気を受け入れて、それをセンサアレイ20へと供給する。蒸気は、空気中に50%飽和するとともに、飽和水蒸気を含むことができる。代替的に、蒸気には、対象分析物の任意既知の混合物および水蒸気を含めることができる。一態様において、蒸気は、200mL/minで1.6秒蒸気パルスの間、センサアレイに供給される。代替的に、蒸気は、約10mL/minから約1900mL/min、および約0.02秒から約100秒の蒸気パルス時間の範囲の、量および速度でセンサアレイに供給される。さらに別の代替案においては、蒸気は、約10mL/minから約20mL/min、および約0.2秒から約3.0秒の蒸気パルス時間の範囲の、量および速度でセンサアレイに供給される。さらに別の代替案においては、蒸気は、任意既知の量と、任意既知のパルス時間の速度で供給される。
【0059】
一態様によれば、各蒸気パルスに続いてパージ(purge)があり、このパージにおいて、対象分析物を含まない空気が、本発明のシステムを介してポンピングされる。本発明の一観点においては、このパージは、200mL/minの流量で60秒間、続けられ、空気は、最初の45秒間は排出に導かれ、次の15秒間はセンサに導かれる。代替的に、パージは、任意既知の長さの時間だけ続けられるとともに、任意公知の方法で実行することができる。
本発明の一観点においては、アレイは、アレイを対象分析物と接触させる前に、「アレイ登録(array registration)」とも呼ばれる工程において、「復号(decoded)」される。特定の態様によるアレイは、ランダムに分布するセンサを含むので、アレイ登録または復号の工程は、アレイの各位置におけるセンサのタイプを識別する。一態様によれば、登録工程には、アレイを、センササブタイプがそれに対して既知の応答を有する、試験組成物と接触させることを伴う。すなわち、アレイは試験組成物を接触させられて、その応答が記録または「登録」される。この応答と、センサ部分集団のそれぞれの期待応答との比較とに基づいて、アレイ上の各位置の各ビーズが、特定の部分集団に属するものとして識別される。一態様によれば、試験組成物は、ジメチルメチルホスホナート(DMMP)である。代替的に、試験組成物は、各ビーズ部分集団で生じる応答が既知である、任意公知の物質である。
【0060】
一態様によれば、センサアレイの区画を照射するステップは、光源から光が放射されるように、(図1の光源12のような)励起光源を起動することを伴う。本発明の一観点では、光はアレイの所望のセンサに当たり、センサが励起されて、励起光に応答して蛍光を放射する。本発明の一態様によれば、対象分析物が、励起光に当たった任意所与のセンサ上の活性物質に結合している場合には、センサによって放射された蛍光の色および/または強度は、対象分析物の不在中に放射される色および/または強度とは異なる。照射(本明細書においては「励起照射」、「露出」または「励起露出」とも呼ぶ)は、2.5秒間続けることができる。代替的に、露出期間は、約0.02秒から約100秒まで範囲とすることができる。さらに別の代替案では、露出期間は任意既知の長さとすることができる。
【0061】
一態様によれば、この方法は、光がアレイの所望の小区画だけに当たるように、光のフィールドを制御することをさらに含む。一態様によれば、光フィールドの制御は、(図1の可変露出開口14のような)可変露出開口を介して光を通過させることによって達成され、この可変露出開口は、光のフィールドを所望の大きさと位置に制限し、それによって、光がアレイに当たるときに、所望の小区画だけに当たるように動作する。代替的に、光のフィールドは、光がアレイの所望の小区画だけに当たるように、任意公知の方法または装置によって制御することができる。アレイセンサの小区画だけに当たるように、この励起光フィールドを制約することは、アレイ全体にわたってセンサ部分集団が分布しているので、統計的に有意な結果をもたらす。すなわち、アレイの各小区画に、各センサタイプの多数の複製または部分集団があるゆえに、小区画内には、意味のある応答データを提供する、代表的な数の各タイプのセンサが常に存在する。一実施例において、アレイは、総計24000個のマイクロビーズセンサの集団を含み、それぞれのセンサは、4つの部分集団の1つとして特徴づけられる。すなわち、各部分集団には約6000個のセンサがあり、このセンサは、アレイ全体にわたって、アレイの任意の小区画が各部分集団の代表サンプルを有するように、分布している。代替的に、照射される任意の小区画における各部分集団からのビーズの数が、各部分集団からの代表的数のビーズで構成されている限り、アレイは、任意の数のセンサと任意の数の部分集団を有することができる。
【0062】
さらに、一態様による方法には、照射によって生じるセンサの励起に関係するデータを収集することも含めることができる。本発明の一観点において、データ収集には、所望のセンサの励起によって生じる蛍光の色および強度を記録することを伴う。データ収集には、(例えば、図1に示すカメラ28のような)カメラであるアレイ検出器で、センサ応答を記録すること含めることができる。
一態様によれば、サンプルをセンサアレイと接触させるステップ、アレイを照射するステップ、およびデータを収集するステップは、完全に自動化される。例えば、それらのステップの自動化は、システム10における撮像ソフトウエアと、蒸気供給システム36における蒸気供給ソフトウエアを統合することによって、達成することができる。
【0063】
一態様によれば、自動化された方法でサンプルをセンサアレイと接触させるステップは、蒸気供給ソフトウエアをトリガリングして、所望の組成物および所望の蒸気混合物の流れを構成要素32に、次いでアレイ20に供給する、センサアレイ撮像ソフトウエアを含む。一実施例においては、応答データを収集するのに必要なすべてのコマンドを収納する、主撮像ソフトウエアスクリプトが、蒸気供給ソフトウエアコマンドラインをトリガリングする。一態様において、各蒸気供給ソフトウエアコマンドラインは、所望の蒸気混合物の組成および流れについての情報を含み、そのようなコマンドラインはすべて、プログラムされてコマンドリストに記憶されている。蒸気供給ソフトウエアにおける適当なコマンドラインによってトリガリングされると、蒸気は、構成要素32へと導かれて、センサアレイ20へと供給される。一態様によれば、システム36の蒸気配管を新規蒸気でパージするために、蒸気を構成要素32に導く前に時間遅れがある。
【0064】
自動化された方法でアレイを照射するステップおよびデータを収集するステップは、本発明の一観点では、撮像ソフトウエアによって制御される。センサアレイ20に蒸気が供給される間に、撮像ソフトウエアは、システム10のある構成要素、例えば、フィルタ16A、16Bのシャッター26、カメラ28、および蒸気供給システム36のトリガー機構を制御して、応答データがカメラ28によって収集されて、CPUまたは類似の装置に自動的に保存されるようにする。
一態様によれば、自動的に、サンプルをセンサアレイと接触させるステップ、アレイを照射するステップ、およびデータを収集するステップは、すべての所望応答データが収集されるまで、接触、照射、および収集のサイクルで繰り返される。例えば、接触、照射、および収集の第1サイクルが完了し、応答が保存された後に、撮像ソフトウエアが、蒸気供給ソフトウエアをトリガリングして次の蒸気を生成することによって、次のサイクルを開始する。一態様によれば、この工程は、蒸気供給ソフトウエアにおける所定の数のコマンドラインを備えるリストが終了し、それぞれの蒸気応答が保存されるまで続く。このような撮像と蒸気供給ソフトウエアの統合によって、莫大な数の蒸気混合物を含むリストの準備、供給、および応答取得を制御することが可能になる。
【0065】
本発明の一態様によれば、第2のサンプルをセンサアレイと接触させる工程は、第1のサンプルをセンサアレイと接触させるものとほぼ同等である。上述のように、サンプルは、任意公知の方法で、センサアレイと接触させることができる。
本発明の一態様によれば、センサアレイの第2の区画を照射することは、上述のように、光が光源から放射されるように、(図1の光源12のような)励起光源を起動することを伴う。この照射するステップにはまた、露出された第1の区画とは異なる、アレイの所望の区画に励起光が当たるように、励起光のフィールドを制御すること、または「再位置設定すること(repositioning)」を含めることができる。本発明の一観点によれば、再位置設定することは、光のフィールドを所望の大きさと位置に制約する働きをする、(図1における可変露出開口14のような)可変露出開口を経由して光を通すことによって達成することができる。典型的には、再位置設定によって、前回の照射ステップにおいて照射されたアレイのいずれの部分にも光が当たらないように、励起光のフィールドが所定の位置に移動する。本発明の一観点においては、各小区画がアレイの異なる部分を構成するように、アレイの小区画が予め設定されるとともに、照射のサイクルを繰り返す以前に、各小区画が照射されるまで、各照射が別の小区画に当たるように、少なくとも2つの再位置設定ステップが連続して行われる。代替的には、光のフィールドは再位置設定する必要がない。すなわち、アレイの照射された区画は、前回に照射されたのと同一の区画のままとなる。
【0066】
本発明の一態様によれば、センサアレイの第2の区画を照射することには、第2の強度の励起光でその区画を照射することも含めることができる。一態様によれば、第2の強度は、第1の強度よりも大きい。本発明の特定の一観点では、第1の強度は、センサからの観察可能かつ収集可能な応答を提供するのに必要な最小強度である、所定の強度であり、第2の強度は、光退色の結果として(またはその他何らかの理由で)センサの応答性における低下があれば、それを補償するのに必要な量だけ、第1の強度よりも大きい強度である。本発明の一代替態様においては、第2の強度は、ソフトウエアによって事前設定される。
第2の区画の照射に関する第2の組のデータの収集は、上述の第1の組のデータの収集とほぼ同等である。
【0067】
本発明の一観点においては、引き続いてデータが分析される。このデータは、データ処理ソフトウエアを使用して分析することができる。
一実施例において、データは、各分析物に対する選択されたセンサの応答を、センサタイプによって正規化および平均化する、カスタム設計のデータ処理ソフトウエアを使用して、分析の前に前処理される。正規化には、各蒸気応答の強度を採取すること、すべての強度値から初期バックグラウンドレベルを減算すること、およびそれらの強度を、その特定の応答に対する最大信号によって除算することを伴う。このようにして、すべての蒸気応答が、1からマイナス1の間の正規化された強度を有する。一態様によれば、特定の小区画における、すべての同一センサの応答が結合されて、平均化されて、蒸気パルスに対する平均応答が得られる。この態様における、各蒸気露出は、アレイ小区画ごとに表わされた、4つのセンサタイプに対する4つの平均応答からなる。
【0068】
一態様によれば、データ分析は、パターン認識アルゴリズムを含む、パターン認識の公知の方法を使用して実施される。
一態様によれば、本発明の方法は、多数回、繰り返すことができる。励起光を減衰させることと、アレイの小区画を選択露出させることを組み合わせることによって、センサの光退色速度を最小化して、通常使用におけるよりも、センサを長くもたせることができる。寿命の増大に加えて、この技法のさらなる利点は、データ分析に使用されるセンサが少ないことから、分析時間が短いことである。
【0069】
実施例
以下の実施例は、本発明を限定するのではなく、実証するために提示するものである。特に示さない限り、以下の試験手順および装置が使用された。
方法および材料
センサおよびアレイ製作: Alltech、Chirex、Sel、およびSnaflのビーズセンサは、先に報告したもの(Stitzel, S. E.、Cowen, L. J.、 Albert, K. J.、Walt, D. R.;Anal. Chem., 2001; Vol. 73, pp 5266-5271 (“Stitzel”)を参照)と類似のものである。
材料に関しては、Nile Red染料を、Aldrich社(Milwaukee, WI)から購入した。スクシンイミドエステル官能基を備える、SNAFL染料を、Molecular Probes社(Eugene, OR)から購入した。プラチナEPS C4およびIBSil(NH)ビーズを、それぞれAlltech社(Deerfield, IL)およびPhenomenex社(Torrance, CA)から乾燥原料として購入した。Chirex3012およびSelectosil(SCX)ビーズは、Phenomenex液体クロマトグラフィカラムから抽出した。約24000個の4.5μm直径のウエルを備える、研磨、エッチングされた光ファイバ束を、Illumina社(San Diego, CA)から取得した。
【0070】
センサ製作に関しては、シリカビーズをクロマトグラフィカラムから除去し、トルエンで洗浄し、60℃で一晩乾燥させた。染料コーティングされたマイクロビーズセンサを調製するには、ビーズの表面にNile Redを吸着させること、またはSNAFL染料分子の共有結合付着させることが必要であった。染料溶液を、4mLガラス容器中でビーズ原材料と結合させて(1mgのビーズ当り0.1mL染料溶液)、1時間混合した。表1に、ビーズ材料仕様および使用した染料のタイプと濃度をリストした。混合の後に、ビーズ懸濁液は、フィルタリングされて、DMFまたはトルエンですすいだ。Alltech、Chirex、およびSnaflセンサ原料を60℃で16時間乾燥させ、Selビーズは3時間、乾燥させた。乾燥センサ原料は、使用までデシケータ内で貯蔵した。次いで、ランダム化されたビーズセンサアレイを製作するために、これらのセンサ原料の同重量の混合物を調製した。ファイバのエッチングされた表面の全体にわたって、高いパッキング密度と均一な分布を有するアレイを、エッチングされたファイバ端を乾燥ビーズ混合物で穏やかにタッピングすることによって調製した。次いで、無塵Texwipeクリーンルームスワブ(swab)(Fisher Scientific)を用いて、過剰のビーズをファイバ束の表面からぬぐい落とした。
【0071】
アレイ登録に使用される応答を取得した後に、センサ類は、10分間の飽和水蒸気パージ、次いで50分間の空気パージで予備調整した。水蒸気および空気は、センサに対して200mL/minで供給された。乾燥センサ原料から調製された新規アレイを撮像装置上に位置設定したときに、アレイ使用の開始において、Snaflセンサ応答の再現不可能性が観察されたので、予備調整プロトコルを開発した。この制御実験では、Snaflセンサは、加湿され、次いで直ちに空気中で乾燥された後に、再現可能に応答することが示された。SNAFLコーティングされたマイクロビーズセンサの放射バンドは、ずれを生じ、それらの強度は予備調整の後に変化し、表面pHが染料の蛍光特性に影響を与えた可能性を示した。2.0NDにおいて第1の小区画上のセンサで取得された、第1の組の蒸気応答も、蒸気に対するSnaflの応答の一部はやはり整合性がなかったために、廃棄した。寿命実験の残部の間に取得されたSnafl応答は、再現可能であり、したがってデータ分析に含めた。
【0072】
表1.センサ材料および製作条件
【表1】

【0073】
撮像システム: 撮像システムは、自動励起および放射フィルタホイールを装備した、BX Olympus水平型顕微鏡と、75W Xenon励起源(Ludl、Hawthorne、NY)と、1376×1040ピクセルSensicam QE CCDカメラ(Cooke Corp.、Auburn Hills、MI)で構成した。4×4ビニングを使用した。10倍(0.30NA)または20倍対物(0.50NA)を、マイクロビーズアレイとCCDカメラの間に配置された、1.6倍および0.5倍レンズと組み合わせて、拡大のために使用した。顕微鏡に使用した可変露出開口は、長方形フィールドストップ(Olympus)、視野を長方形の形状に収縮および拡大させる、ダイアフラムの長方形版である。顕微鏡に使用した可変フィルタシステムは、フィルタホイール内に配置された、吸収性の中性濃度(ND)フィルタ(Newport Optics、Irvine、CA)を含む。フィルタと1.0、0.8、0.6、0.4、および0.2光学密度(OD)の組合せを、ODの減少する順に、順番に変化させた。次のOD値を有する、6つの異なるND設定を使用した:それぞれ1%、1.6%、2.5%、4%、6.3%、および10%透過率に対応する、2.9、1.8、1.6、1.4、1.2、および1.0である。
【0074】
アレイ小区画の選択露出: アレイの区画の長方形境界を、水平および垂直移動を制御する調整ネジを用いて、視野全体にわたって制限して移動させた。要するに、図2に示すように、視野の左上側の、第1の長方形の少区画を選択した。第1の小区画上でのデータ収集が完了すると、境界を動かし長方形を閉止して、それが次の選択された小区画と重畳しないことを確実にした。第1の小区画を閉止した後に、第1と同等の大きさの、次の小区画を照射させた。フィールドストップを使用して、長方形の位置を、実験を通して順番に呼びかけられた、3つの小区画の間で交番させた。
【0075】
蒸気生成および供給: ファイバは、その面をスパージャライン(sparge line)に直角にして光経路に配置し、White, J.; Kauer, J. S.; Dickinson, T. A.; Walt, D. R. Anal. Chem. 1996, 68, 2191-2202 (“White”)において先に説明した、真空制御分散装置にわずかな修正を加えた。蒸気パルスの前後に、センサがその現在環境に露出される、以前の装置とは異なり、新規に設計された装置は、蒸気パルスの間に、センサに、超高純度の窒素を連続的に供給した。超高純度窒素流(200mL/minの一定流量に設定)および蒸気供給専用の配管を、通常のスパージャラインに導いた。ソレノイドトリガーを使用して、窒素の供給と蒸気パルスとの間を交番させた。蒸気は、8チャネル自動化蒸気供給システムGDS8(Sensor Research and Development(SRD)社、メイン州オロノ(Orono、 ME))を使用して調製した。システムは、分析物の蒸気圧と濃度が実験中を通して確実に一定となるように、25℃に設定された温度制御されたオーブン内に配置された、気密式のバブラーで構成した。ソレノイドバルブスイッチ類を含むハードウエア、質量流調整および読取り、ならびに一連の蒸気のプログラム化された自動供給は、SRDによってカスタム設計されたソフトウエアによって制御した。
【0076】
データ収集: 蒸気応答パターンは、上記で考察したWhiteに以前に記述されているように、蒸気パルスの以前、その間、およびその後にセンサの蛍光強度を記録することによって収集した。蒸気露出と名づけられた、蒸気に対する各応答は、10フレームの動画(各フレームは、100msec露出時間で取得した)に記録した。それは、2つのベースラインフレーム、続いて蒸気パルス中に記録される5フレーム、および蒸気パルス後の蛍光強度を記録した3フレームである。この調査において収集された応答のすべては、2.5秒の長さであり、1.3秒の蒸気パルスを含むものであった。蒸気(空気中で50%飽和、および飽和水蒸気)は、センサアレイに200mL/minで供給された。蒸気生成および応答収集は、IPLab撮像ソフトウエア(バージニア州フェアファックス(Fairfax, VA)のScanalytics社)とSRD製のカスタム設計の蒸気供給ソフトウエアとを統合することによって完全に自動化した。
【0077】
小区画上のアレイ露出: アレイ寿命の調査においては、2つの異なるタイプの露出が収集された。それは、2.5sec蒸気露出および2.5secブランク露出である。各蒸気露出の後に、ガス供給配管を、200mL/minの流れの空気流で60秒間パージして、空気は、最初の45秒の間は排出に導き、次の15秒の間にセンサに導いた。ブランク露出は、同一の2.5秒露光で構成したが、蒸気パルスは含めなかった。各ブランク露出に10秒の休止が続き、染料強度が光退色から部分的に回復することを可能にした。ブランク露出からのデータは、センサに対する光退色の影響を調査するために、励起光に対するアレイの露出をシミュレートするだけの役割を果たすものであるので、それらは保存しなかった。
【0078】
アレイ登録(array registration): アレイは、ランダムに分布したセンサを含むので、各アレイは、アレイ登録と呼ばれる工程において復号しなくてはならない(Dickinson, T. A.; Michael, K. L.; Kauer, J. S.; Walt, D. R. Anal. Chem., 1999; Vol. 71, pp 2192-2198、およびStitzel(上記で考察)を参照のこと)。それぞれの新規のランダム化されたアレイは、2.0NDフィルタによってマスキングして、センサは、3種の蒸気(ジメチルメチルホスホナート(DMMP)、エタノール、およびヘプタン)に3重に露出させた。蒸気は、蒸気供給ソフトウエアに組み込まれたランダムな順序で、アレイにパルスにして送り、そのパターンを、登録の目的で記憶させた。登録のために取得された30フレーム動画は、4つのベースラインフレーム、蒸気パルスの間に収集される8フレーム、およびパルス後に収集される追加の18フレームで構成した。50%飽和DMMP蒸気応答は、センサビーズの位置を登録するのに十分な多様性があった。DMMP蒸気パターン(ランダム化されたアレイで取得)を、データベースに記憶されたDMMPパターンと比較した。データベース内の4つのセンサタイプのそれぞれの正規化DMMPパターン応答を、50ビーズの正規化かつ平均化された単独応答の3つの複製を平均化することによって求めた。ランダム化されたアレイにおけるビーズは、未知のビーズのそれぞれの正規化DMMP応答を、データベースに記憶された個々のビーズタイプの真正DMMP応答と比較することによって復号した。登録工程は、カスタム設計のソフトウエアを使用して、Stitzelにおいて前述したように実施した。DMMP応答だけを、登録プロセスにおいて使用したが、残りの蒸気応答は、登録精度を正当化するのに使用される追加の情報を含む。ビーズ復号が完了した後に、登録ビーズのエタノールおよびヘプタン応答が、センサタイプによって平均化されて、データベース内の個々のセンサタイプの応答と比較した。応答間の類似性を視覚評価することによって、登録がビーズを正しく復号したことが確証された。
【0079】
データ分析: センサ位置が登録された後に、カスタム設計のデータ処理ソフトウエア(Department of Computer Science、 Tufts University)を使用して、選択されたセンサの各蒸気に対する応答を、センタタイプによって正規化かつ平均化した。正規化には、各蒸気応答の強度を採取し、すべての強度値から初期バックグラウンドレベルを減算し、かつ強度をその特定の応答に対する最高信号によって除算することを伴う。このようにして、すべての蒸気応答が、1とマイナス1の間の正規化強度を有するようにした。この手順は、絶対強度の使用を避けて、所与のセンサビーズタイプに対して、実質的に同一形状の蒸気応答プロファイルを得るために使用される。特定の小区画における、すべての同一センサの応答を結合して、平均化することによって、蒸気パルスに対する平均応答を得た。したがって、各蒸気露出は、アレイ小区画ごとに表わされる、4つのセンサタイプに対する4つの平均応答によって構成される。平均応答パターンは、Albert, K. J.; Walt, D. R. Anal. Chem. 2003, 75, 4161-4167 (“Albert 1”)に記載されているように、特異値分解(SVD:singular value decomposition)によって応答記述子を圧縮する、MATLABソフトウエアを使用して主成分(PC:principal component)空間において可視化した。分類スコアは、Cover, T. M.; Hart, P. E. IEEE Transactions on Information Theory 1967, 13, 21-27 (“Cover”)に記載され、Weka 3 Data Mining Software (University of Waikato, New Zealand)に含まれる、k‐ニアレストネイバー分類子(KNN:k-nearest neighbor classifier)(k=1)を使用して計算した。
【0080】
センサアレイの組成: 光学センサアレイは、光撮像ファイバの端部上のエッチングウエル中に、数千のマイクロビーズセンサをランダムに分布させることによって製作した。このアレイには、Dickinson, T. A.; Michael, K. L.; Kauer, J. S.; Walt, D. R. Anal. Chem., 1999; Vol. 71, pp 2192-2198に記載されるように、光ファイバ束の端部にエッチングされたウエル中にランダムに分布する、約24000個のセンサビーズが含まれた。この実施例においては、4つの異なるマイクロビーズセンサタイプが含まれ、アレイ内に平均6000個の各センサタイプの複製が得られた。
【0081】
アレイ細分割: 調整可能な長方形フィールドストップによって、センサアレイの小区画への呼びかけ(interrogation)が可能となった。アレイは、本発明者らの予備報告(Bencic, S.; Walt, D. R. Proc. SPIE-Intl. Soc. Opt. Eng. 2004, 5269, 83-88 (“Bencic”)を参照)で使用した方法と同様に細分割され、この場合に照射は、50μm光学スリットを近位ファイバ面を横断して移動させることによって、同寸法の少区画に制限した。本技法においては、フィールドストップによって選択される長方形小区画は、入射光を図2に示すような長方形に制限する。近位ファイバ面上の照射される長方形は、次いで、アレイ化されたファイバを超えて、遠位面のマイクロビーズセンサの小区画に伝達される。アレイのランダム性によって、各センサタイプが、アレイの各小区画における多数の複製によって表わされることが保証される。新規のアレイが最初に撮像システムに接続されると、アレイ全体がセンサ登録のために調べられる。このセンサ位置の「マップ」が記憶され、その結果、スリットが動かされるときに、アレイの視野内の新規のセンサがすでに登録されている。照射されたセンサの領域のCCD画像を、図2の右側に示してある。図3は、寿命実験中の様々な時点における、それぞれがマイクロビーズセンサの統計的な分布を含む、3つの小区画を含むアレイのCCD画像を示している。寿命実験の開始点(A)においてファイバ全体を観察し、次いで、センサの3つの小区画が選択され(Bにおいて異なる色でマークされている)。励起光に繰返し露出させた後に、小区画に光退色が現れている(C)。
【0082】
本明細書に提示する実施例は、アレイ寿命を延長して、延長期間にわたる蒸気の認識と識別を行うための、センサアレイ性能を評価するように設計されている。アレイは、毎日1800回の露出で14日間、試験した。試験は夜には中断し、アレイは、完全暗所で、超高純度窒素に連続的に暴露させて維持した。大気温度および相対湿度は、それぞれ19.8℃〜30℃および14%〜21%の範囲であった。
【0083】
7種の飽和蒸気(DMMP、エタノール、ヘプタン、イソプロペニルアセテート、p−シメン、トルエン、および水)を、(飽和水蒸気を除き)50%空気または50%水蒸気と混合し、得られた13種の蒸気混合物を、実験全体を通して様々な時点で、アレイに供給した。7種の蒸気‐空気混合物は、応答の再現性を評価して、アレイ寿命を測定するのに使用したのに対して、残りの6種の蒸気‐水混合物は、さらなる蒸気分類問題に対処するために使用し、本明細書においては考察しない。13種の蒸気は、二通りでアレイにパルスにして送られて、これから、一時に取得される、26種の蒸気露出の組が得られた。蒸気調製およびパージには時間がかかるので、蒸気露出の組に加えて、アレイを追加の励起光に露出させる、ある数のブランク露出を取得した。アレイのそれぞれの小区画は、各ND設定おいて、少なくとも300回露出させた(26回の2.5秒蒸気露出に続いて、274回の2.5秒ブランク露出)。
【0084】
蒸気露出およびブランク露出という用語は、本明細書においては、それぞれ蒸気応答および蒸気パルスなしのアレイ露出に言及するときに使用する。表2は、各ND設定において、取得された露出の数を詳細にまとめている。
表2.3つのアレイ小区画上の各ND設定において、適用される露出組の数で、実験し使用されるND設定に対する、対応する透過率値(%T)を有するOD値(v−蒸気露出、b−ブランク露出、S−小区画)
【表2】

ND2.0においてS1上で取得した応答は、センサ事前調整の一部であり、廃棄された。
【0085】
各ND設定におけるアレイの露出は、視野の左上隅の第1の小区画から開始して、下方の区画へと続けた。予備調査においては、同タイプのセンサは、固定された小区画が、(NDフィルタの除去による、透過率の向上の結果)増大する光パワーに露出されると、隣接する露出されない領域における、ファイバへの光の漏洩によって、周辺領域に大幅な光退色が発生した。そのような光退色を避けるために、次に低いND設定でデータを取得する前に、3つの小区画のすべてを、高いND設定において露出させた。透過した入射光は、2.0NDにおいて1%だけであり、最初のND設定において小さな増分で増加した。使用された2つの最も低いND設定において、透過がより急激に増大するにつれて(表2の%T値を参照)、これらの低い設定においては、より大きい露出が得られた。総計754蒸気露出(蒸気‐空気および蒸気‐水)および16,946回のブランク露出が、3つの少区画上で1〜10%透過光の間で得られた。406回の蒸気露出(蒸気‐空気混合物のみ)を使用して、応答再現性を評価した。
【0086】
結果
3つの小区画は、全アレイ表面積の8%未満を表わし、17,750回(2.5sec)の露出を受け、先に報告したアレイよりも90倍(737.5分対8分)の総露出時間の増加であった。(全アレイ表面領域上に投射された適当な数の小区画を数えることによって求められる)40のアレイ小区画に同じ実験方式を適用し、かつ同じ6つのNDフィルタ設定を使用する場合には、その結果として得られる236,000回の露出は、先のアレイに対して、2,000倍を越える向上を表わす(Stitzel; and Albert, K. J.; Walt, D. R.; Gill, D. S.; Pearce, T. C. Anal. Chem. 2001, 73, 2501-2508 (“Albert 2”)を参照)。透過率を(10%より上に)増大させることによって、より高い強度の光を使用した場合には、露出の数はさらに増加することになる。したがって、本明細書に説明する例は、適応露出によって達成することのできる、全アレイ寿命の一部分だけを表わすものである。
【0087】
特異値分解(SVD:singular value decomposition)などの教師なしのパターン認識技法は、応答全体に基づくのではなく、減少された数の応答特徴に基づいて蒸気応答を分類してグループ化する。応答特徴は、主成分(PC)とも呼ばれ、高次の応答時間列を圧縮することによって得られる(Otto, M. Chemometrics: Statistics and Computer Application in Analytical Chemistry; Wiley-VCH: Weinheim, Federal Republic of Germany, 1999を参照)。SVDによって得られる最初の3つのPCを、14日実験の間に収集された蒸気パターン間の類似性を確認した応答再現性を、3次元可視化のために使用した。
【0088】
図4は、蛍光パターン(a,cおよびe)のプロット、およびアレイ内の4つのセンサタイプの内の3つ(Alltech、Chirex、およびSnafl)について得られた、それぞれのSVD応答プロット(b、d、およびf)を含む。これらの応答は、それぞれが各センサタイプの、代表的数のマイクロビーズ複製を含む、3つの小区画によって得られた。それぞれのプロットは、全実験を通して各センサタイプについて得られた、3つの異なる蒸気に対する応答(各蒸気について得られた52の応答)を表わす。小さな応答パターンの組が2次元応答プロットにおいて容易に可視化されるので、センサタイプ毎に3つの蒸気だけが提示されている。蒸気応答は、異なるアレイ小区画からのセンサで収集したが、応答形状のほとんどは再現可能であった。個々のビーズセンサのいくつかにおいて、いくぶんスプリアス応答を生じたが、ここで重要なことは、所与の小区画におけるすべてのビーズ複製からの信号が処理の前に合算され、それによって高度に再現性のある信号を生成していることに留意することである。さらに、蛍光応答プロットに示された、特定の蒸発に対応する応答の群が、PC空間において緊密に適合するクラスタを形成し、14日の間に収集された蒸気パターンの再現性が確認された。
【0089】
アレイの個々の小区画とアレイ全体との間の再現性の数値評価は、KNN分類を使用して、分類スコアを計算することによって実施した。本発明者らの以前の研究から、ニアレストネイバー法に基づく分類子は、光学ノーズプラットフォーム(nose platform)で得られる蒸気応答パターンの分析に適していることがわかった(上記のStitzelを参照)。KNN分類は、データの一部を使用して、残りのデータを分類するのに使用されるモデルを計算する。KNN分類子は、最小ユークリッド距離(上記のCoverを参照)に基づいて、未知の蒸気パターンに対するニアレストネイバーを見出し、その未知の蒸気パターンをそのニアレストネイバーの分類に割り当てる。この研究において、1‐ニアレストネイバー分類子は、最初に、n倍leave−one−out交差検定(n=各データセットにおける応答数)に基づくモデルを構築した。要するに、1つの応答を除くすべての応答から計算される、nモデルのそれぞれを使用して、残された応答を分類した。
【0090】
本願発明者らの目標は、上記の大規模データベースの分類精度を特定することではなく、異なる時点において収集された蒸気パターンの再現性を評価することにあるので、7種の蒸気の分類スコアを、連結センサ応答と比較した(Stitzelを参照)。7種の蒸気分類に対して計算されたスコアを表3に示してある。
表3.7種の蒸気の分類に対して、n倍交差検証(n=応答数)を使用して計算された、k‐ニアレストネイバースコア(k=1)
【表3】

【0091】
KNNは、単一小区画(S1、S2、またはS3)およびセンサのすべての小区画(S1〜S3)によって、取得されるデータからモデルを計算した。それによって、応答再現性は、より大きな群の蒸気応答の範囲内で、交差検証された。小区画S1から第1のND設定において取得された第1の組の応答は、センサがまだ予備調整されていないので廃棄された(補助情報を参照)。表3にリストされた高い分類精度(95.2〜99.8%)から、3つの小区画によって取得された7種の蒸気に対するアレイ応答は、非常に再現性が高いことが確認された。S1に対して計算された精度は、126の蒸気応答の内の6つの間違って分類された蒸気の結果であった。同様に、140応答からの6つの誤りの結果として、小区画S2およびS3上のセンサによって得られた精度となった。最高分類スコア(99.8%正解)は、KNNモデルを構築するのに3つの小区画すべて(S1〜S3)からのデータが使用されるときに得られた。
【0092】
表4は、すべてのデータ(S1〜S3)から得られるモデルを使用して、7‐蒸気分類に対して計算された、コンフュージョンマトリックス(confusion matrix)である。

表4.蒸気‐空気混合物による調査全体を通して得られた、406個の連結センサ応答による、7蒸気分類に対して得られたコンフュージョンマトリックス。 記号:tol‐トルエン、DMMP‐ジメチルメチルホスホナート、etoh‐エタノール、hept‐ヘプタン、ipea‐イソプロペニルアセテート、pcm‐p‐シメン。
【表4】

【0093】
コンフュージョンマトリックスの対角線上に配置された値は、それぞれの蒸気が正しく分類された回数である。寿命実験全体において、1回だけの分類誤りが生じた。エタノールに対する応答が、イソプロペニルアセテート応答として分類された。このような分類誤りは、これらの2種の極性(polar)蒸気が、マイクロビーズセンサに付着した染料のソルバトクロミズム(solvatochromism)に対して類似の影響を有することから、予測可能であった。分類を誤った蒸気応答は、実験の終りではなく、6日目に得られたことを考慮すると、エタノール応答パターンにおける逸脱は、長期間のセンサ使用による性能における変化の結果ではない可能性が高い。
【0094】
個々の小区画に対して得られたKNN分類スコアは、すべての小区画からのデータを使用して得られた、ほぼ100%精度よりも低かった。センサの3つの異なる小区画によってトレーニングされた分類子は、理論的には、アレイ間変動(array-to-array variability)を導入し、結果として、分類精度が低下することが予期された。全データセットによって生成された、KNNモデルは、多数の集団(これは分類子を改善することができる)を含むとともに、各蒸気分類内で、より大きい応答の変動を含むことから、精度が向上したものと推測される。これらの応答は、2週間の実験を通して、様々な時刻に3つの異なる群のセンサを用いて収集された。各蒸気分類における高い応答変動性は、分類された応答とそのニアレストネイバーとが同一の蒸気分類に属する確率を増大させた可能性が高い。将来の蒸気分類子、特に、変動する大気条件において何ヶ月または何年にもわたって取得される、蒸気応答の識別に意図されているものは、したがって、より長い期間にわたってセンサの多数の小区画(または多数のアレイ)で得られた蒸気応答の高い代表を必要とするはずである。
【0095】
考察
蛍光マイクロビーズセンサの寿命は、アレイを小分割するとともに、照射強度を徐々に増加させ、それによってセンサ光退色効果を軽減することによって延長された。これらの2つの改良の結果として、センサアレイが多様な蒸気群に再現性を有して応答する時間において、90倍の増加が得られた。時間経過と共に得られる、センサ応答のわずかな差異は、4つのセンサタイプが、アレイ使用全体の間に、7種の分析物分類問題を解くことを妨げなかった。蒸気応答は、小分割されたアレイが17,700回の2.5sec露光を受けた後でも、再現性があった。これらの結果を、アレイ全体に外挿すると、40の小区画が、連続露光によって160時間にわたって呼びかけることが可能であり、先に報告したStizelにおける8分間露出時間と比較して、アレイ寿命において大幅な向上を表わす。本願発明者らは、この調査において2.5秒露出を使用したが、1秒以下の露出が、蒸気の小群を識別するには適当であることが先に実証されている(Albert, K. J.; Walt, D. R. Anal. Chem. 2000, 72, 1947-1955を参照)。2.5sec露出が毎分収集される場合には、単一アレイの予測寿命は160日を超え、1秒以下の露出が使用される場合には、さらに延長することも可能である。さらに、この寿命は、透過範囲全体を使用する適応照射が行われる場合には、年の単位となるであろう。
【0096】
さらに、ビーズタイプによって変化を示す、高い分類スコアが得られたことから、励起光を制御してアレイのより小さな区画を露出させることによって、アレイ使用の延長は可能であることが確認された。本明細書において提示したアレイ寿命延長手法は、蛍光ベースセンサのアレイを供することのできる、露出時間において90倍の増加をもたらした。この解決法は、蒸気感応性センサを用いるものに限られることなく、高密度光学アレイシステム中に組み込まれる、酵素ベース、セルベース、およびその他の蛍光ベースセンサ類を用いる連続監視のための、新技法を提供する可能性がある。
【0097】
さらに、実験は異なる湿度および温度において数週間にわたり実施されたが、そのことは、センサについて観察されることの多い、日々の再現性の低さにもかかわらず、蒸気応答は同等のままであったことを意味している。本方法を実証するために、限られた組のセンサタイプおよび分析物を使用したが、同じ解決法を、より多くのセンサ分類を含む、より大きな分析物データセットに適用することもできる。本願発明者らの実験室では、データベース情報を多様化および増大させて、それをより複雑な認識問題に使用できるようにすることに注目して、新規の解決法を開発中である。そのような大規模データベースの収集と、長期試験は、この研究から便益を受けるであろう。
本発明を、特定の実施態様を参照して説明したが、当業者であれば、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、形態および詳細において変更を行うことができることに気付くであろう。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一態様による、アレイ撮像システムを示す概略図である。
【図2】本発明の一態様による、アレイの選択的照射を示す概略図である。図に示すように、長方形フィールドストップを移動させると、視野の狭い区画を露呈させることになる。励起光は、長方形フィールドストップを介してマスキングされて、長方形を生成して、この長方形が次いで、ダイクロイックミラーから反射される。照射された長方形は、ファイバを通過して、蛍光ビーズセンサへと移動して、ダイクロイックミラーを介してCCDカメラ上に戻り、選択的に照射された視野の像を生成する。この概略図においては、構成要素は一定比では描かれておらず、長方形運動の機構は単純化されている。
【図3】本発明の一態様による、一視野のCCD画像を示す図である。この視野は、(A)において時間=0において取り込まれ、次いで、3つの区画に細分割されて、ここで区画は異なる色でマークされ、インサート(B)において明確に見ることができる。これらの区画は、左上部の第1の照射された長方形から開始して、右方向に下降して、検査された。耐久寿命調査の終りにおける光退色エリアの小さな領域を、ファイバ全体上とともに、インサート(C)内に示してある。
【0099】
【図4】図4aは一態様による本発明のシステムを使用して照射したときの、Alltechセンサの蒸気応答に対応する蛍光応答のグラフ表現を示す図である。それぞれの平均化されたセンサ応答は、各小区画に位置する個々のセンサの、正規化された応答を平均化することによって得られた。これらの応答は、SVDを用いて処理し、その最初の3つの主要構成要素がグラフにされている。記号:DMMP―マゼンタ、ヘプテン―緑、酢酸イソプロペニル―赤、pシメン―紫、水―黒。図4bは一態様による本発明のシステムを使用して照射したときの、Alltechセンサの蒸気応答に対応するSVDプロットを示すグラフ表現である。各平均化センサ応答は、各小区画に位置する個々のセンサの正規化された応答を平均化することによって得られた。この応答は、SVDを使用して処理され、それらの最初の3つの主要構成要素がグラフ化されている。記号:DMMP−マゼンタ、ヘプテン―緑、酢酸イソプロペニル―赤、pシメン―紫、水―黒。図4cは一態様による本発明のシステムを使用して照射したときの、Chirexセンサの蒸気応答に対応する蛍光応答を示すグラフ表現である。各平均化センサ応答は、各小区画に位置する個々のセンサの正規化された応答を平均化することによって得られた。この応答は、SVDを使用して処理されて、それらの最初の3つの主要要素がグラフ化されている。記号:DMMP−マゼンタ、ヘプテン―緑、酢酸イソプロペニル―赤、pシメン―紫、水―黒。
【0100】
図4dは一態様による本発明のシステムを使用して照射したときの、Chirexセンサの蒸気応答に対応するSVDプロットを示すグラフ表現である。各平均センサ応答は、各小区画に位置する個々のセンサの正規化された応答を平均化することによって得られた。この応答は、SVDを使用して処理され、それらの最初の3つの主要構成要素がグラフ化されている。記号:DMMP−マゼンタ、ヘプテン―緑、酢酸イソプロペニル―赤、pシメン―紫、水―黒。
図4eは一態様による本発明のシステムを使用して照射したときの、Snaflセンサの蒸気応答に対応する蛍光応答を示すグラフ表現である。各平均センサ応答は、各サブセクションに位置する個々のセンサの正規化された応答を平均化することによって得られた。この応答は、SVDを使用して処理され、それらの最初の3つの主要構成要素がグラフ化されている。記号:DMMP−マゼンタ、ヘプテン―緑、酢酸イソプロペニル―赤、pシメン―紫、水―黒。
図4fは一態様による本発明のシステムを使用して照射したときの、Snaflセンサの蒸気応答に対応するSVDプロットを示すグラフ表現である。各平均化センサ応答は、各サブセクションに位置する個々のセンサの正規化された応答を平均化することによって得られた。この応答は、SVDを使用して処理され、それらの最初の3つの主要構成要素がグラフ化されている。記号:DMMP−マゼンタ、ヘプテン―緑、酢酸イソプロペニル―赤、pシメン―紫、水―黒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1および第2のサンプル中の少なくとも1種の対象分析物の存在を検出する方法であって、
前記第1のサンプルを、複数のセンサ素子タイプと各センサ素子タイプの複数のセンサ素子とを備える、センサアレイと接触させること、
前記センサアレイの少なくとも第1の区画を、第1の強度で照射し、第1組のデータを収集すること、
前記第2のサンプルを、前記センサアレイと接触させること、
前記センサアレイの少なくとも第2の区画を、第2の強度で照射して、第2組のデータを収集すること、および
前記対象分析物の存在または不在を判定すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
第1および第2の区画が同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1および第2の区画が異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2の強度が、第1の強度よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2の強度が、第1の強度と実質的にほぼ同等である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
センサアレイを照射することは、可変露出開口を介して前記センサアレイを照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
可変露出開口が位置設定可能である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
可変露出開口がスリットである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
スリットが長方形スリットである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも第1および第2のサンプル内に存在する少なくとも1種の対象分析物の量を特定する方法であって、
前記第1のサンプルを、複数のセンサ素子タイプと各センサ素子タイプの複数のセンサ素子とを備える、センサアレイと接触させること、
前記センサアレイの少なくとも第1の区画を、第1の強度で照射し、第1組のデータを収集すること、
前記第2のサンプルを、前記センサアレイと接触させること、
前記センサアレイの少なくとも第2の区画を、第2の強度で照射し、第2組のデータを収集すること、および
存在する前記対象分析物の量を特定すること
を含む、前記方法。
【請求項11】
(a)光源、
(b)アレイ受入れ構成要素、
(b)前記光源と前記アレイ受入れ構成要素の間に配置された可変露出開口、および
(c)前記光源と前記アレイ受入れ構成要素の間に配置された可変フィルタシステム
を含む、アレイ撮像システム。
【請求項12】
光源とアレイ受入れ構成要素の間に配置された拡大レンズをさらに含む、請求項11に記載のアレイ撮像システム。
【請求項13】
拡大レンズと関連づけたアレイ検出器をさらに含む、請求項12に記載のアレイ撮像システム。
【請求項14】
可変フィルタシステムが、時間経過と共に光学濃度が低下するようにプログラム可能である、請求項11に記載のアレイ撮像システム。
【請求項15】
可変フィルタシステムが、光源とアレイ受入れ構成要素の間に配置された1組のフィルタを含み、該1組のフィルタは、光学濃度が低下するようにプログラムされている、請求項11に記載のアレイ撮像システム。
【請求項16】
1組のフィルタが、異なる光学濃度のフィルタを含む、請求項15に記載のアレイ撮像システム。
【請求項17】
1組のフィルタが、約0.2〜約1.0の範囲の光学濃度を有する、フィルタを含む、請求項15に記載のアレイ撮像システム。
【請求項18】
1組のフィルタが、約1.0〜約2.0の範囲の光学濃度値を提供する、請求項15に記載のアレイ撮像システム。
【請求項19】
可変露出開口が、光源と共に動作して露出エリアを制御するように構成された、位置設定可能な開口である、請求項11に記載のアレイ撮像システム。
【請求項20】
可変露出開口が、光源からセンサアレイまで光を通過させるように構成されたスリットを含む、請求項11に記載のアレイ撮像システム。
【請求項21】
可変露出開口が、長方形スリットを含む、請求項11に記載のアレイ撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−505115(P2009−505115A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541155(P2008−541155)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/032608
【国際公開番号】WO2008/051189
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(508053795)タフツ ユニバーシティ (3)
【出願人】(508054057)
【Fターム(参考)】