説明

アレルゲンの検出方法及び検出用キット

【課題】 卵白アレルゲン、乳アレルゲン、小麦アレルゲン、そばアレルゲン、又は落花生アレルゲンを含む食品等の被検試料から、SDSと2−メルカプトエタノールを用いて、これらアレルゲンを抽出し、これらアレルゲンがSDS変性/SDS未変性のいかなる状態にあっても検出できる高感度な免疫学的な検出方法及びそれに用いられる検出キット等を提供すること。
【解決手段】 SDS未変性及びSDS変性の、オボアルブミン、乳アレルゲンのαs1カゼイン、又はβ−ラクトグロブリン、小麦グリアジン、そばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)、落花生アレルゲンAra h1を認識する各2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体を用いると、これら特定原材料のSDS及び2−メルカプトエタノールの抽出液を用いて各アレルゲンを正確に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の試料中に含まれるSDS未変性及びSDS変性のオボアルブミン、αs1カゼイン、小麦グリアジン、そばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)、Ara h1又はβ−ラクトグロブリンを指標としたアレルゲンの検出方法や、それに用いられるアレルゲンの検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
自然環境の減少、車や工場などからの排気ガス、住宅事情等、或いは食べ物の変化など様々な因子により、現在では、3人に1人が何らかのアレルギー疾患をもつといわれている。特に、食物アレルギーは、食品中に含まれるアレルギー誘発物質(以下、食物アレルゲンという)の摂取が引き起こす有害な免疫反応であり、皮膚炎、喘息、消化管障害、アナフィラキシーショック等を引き起こし、このような食物アレルギーの患者が増加していることから、医学上及び食品産業上、深刻な問題を生じている。これらの危害は死に至らせることがあり、未然に処置を施す必要がある。そのためには、表示を通じて消費者へ情報提供の必要性も高まっており、FAO/WHO合同食品規格委員会は、アレルギー物質として知られている8種の原材料を含む食品にあっては、それを含む旨の表示について合意し、加盟国で各国の制度に適した表示方法を検討することとした(1999年6月)。日本では過去の健康危害などの程度、頻度を考慮して重篤なアレルギー症状を起した実績のある24品目の食品について、その表示方法が定められた(2002年4月より施行)。アレルギーを引き起こす食品としては、卵類、牛乳類、肉類、魚類、甲殻類及び軟体動物類、穀類、豆類及びナッツ類、果実類、野菜類、ビール酵母若しくはゼラチンなどが知られており、特に乳アレルゲンの主要成分としてのαs1カゼインや、ホエーアレルゲンの主要成分であるβ−ラクトグロブリンや、卵白アレルゲン成分としてはオボアルブミンとオボムコイドや、小麦アレルゲンの主要成分としてグリアジンや、そばの主要タンパク質である分子量24kDaと76kDaのタンパク質や、落花生の主要タンパク質であるAra h1が知られている。
【0003】
従来、アレルゲンの検出する方法としては、例えば、アレルゲンに特異的に反応するイムノグロブリンを定量する方法(例えば、特許文献1参照)や、抗原抗体複合体を含有する検体中の該抗原抗体複合体を酸処理等により解離させ、必要に応じてアルカリを用いて中和処理を行った後、該検体中のアレルゲン特異的IgE抗体を測定する方法(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0004】
また、現在、乳、卵、小麦、そば、落花生の特定原材料を検出するための公定法として、加熱・非加熱複合抗原より得られるポリクローナル抗体を用いた免疫学的な検出方法(例えば、特許文献3参照;以下「市販公定法A」という)、あるいは精製抗原より得られたポリクローナル抗体を用いた免疫学的な検出方法(以下「市販公定法B」という)が用いられている。これらは、特異的にアレルゲンを検出するために有効な方法であるが問題も多い。例えば、市販公定法Aでは複合抗原を用いているため、何に対する抗体なのかが不明で、交差性が高く、例えば、イムノブロット法などによる抗原の同定ができず、また非特異反応が増える可能性がある。また、市販公定法Bでは、抗原が精製されているため抗体の特異性は明確であるものの、未変性の抗原を用いて作製された抗体を使用しているため、変性/未変性により抗体が結合する程度に違いがあるため、同じ添加量であっても、加熱前、加熱後での定量値が異なるという問題があった。特に、小麦は他の特定原材料(卵、乳、そば、落花生)の中でも過酷な加熱処理が施される場合が多い(例えばパン、唐揚げ等)ため、小麦アレルゲンは未変性から加熱変性まで、広範囲な状態で存在する。そこで、小麦アレルゲンを検出するためには、どの様な状態のアレルゲンに対して結合するかを明らかにしたモノクローナル抗体を作製し、その特性に応じて利用する必要がある。
【0005】
さらに、卵の同定、定量に関しては、オボムコイドを指標として、すでにポリクローナル抗体を用いた方法(例えば、非特許文献1参照)あるいはモノクローナル抗体を用いた方法(例えば、非特許文献2参照)が知られている。また、オボムコイドを認識するモノクローナル抗体で、未変性オボムコイドと反応するが熱変性オボムコイドとは反応しないモノクローナル抗体、熱変性オボムコイドと反応するが未変性オボムコイドとは反応しないモノクローナル抗体、及び未変性オボムコイドと熱変性オボムコイドに反応するモノクローナル抗体を用いて、加熱変性状態をも識別してオボムコイドを定量し、卵アレルゲンの同定と正確な定量を可能とする免疫学的定量方法が報告されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平05−249111号公報
【特許文献2】特開平07−140144号公報
【特許文献3】特開2003−155297号公報
【特許文献4】特開2002−253230号公報
【非特許文献1】Int. Archs. Allergy appl. Immun., 75, 8-15, 1984
【非特許文献2】Nutr. Sci. Vitaminol. 45, 491-500, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、卵白アレルゲン、乳アレルゲン、小麦アレルゲン、そばアレルゲン又は落花生アレルゲンを含む食品等の被検試料から、SDSと2−メルカプトエタノールを用いて、卵白アレルゲン、乳アレルゲン、小麦アレルゲン、そばアレルゲン又は落花生アレルゲンを抽出し、上記アレルゲンがSDS変性/SDS未変性のいかなる状態にあっても検出できる高感度な免疫学的な検出方法及びそれに用いられる検出キット等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定原材料である卵白、乳、小麦、そば又は落花生の各アレルゲンを検出する方法について鋭意検討し、SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミン、SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼイン、SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジン、SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)、SDS未変性及びSDS変性のAra h1、又はSDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する各2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体を用いると、これら特定原材料のSDS及び2−メルカプトエタノールの抽出液を用いて各アレルゲンを正確に検出することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミン、SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼイン、SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジン、SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)、SDS未変性及びSDS変性のAra h1、又はSDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する各2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体を用いるアレルゲンの検出方法であって、アレルゲン含有又は未含有試料に、SDSと2−メルカプトエタノールを用いた抽出液を、前記各2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体を利用した免疫反応に供することを特徴とするアレルゲンの検出方法や、(2)SDSと2−メルカプトエタノールを用いた抽出液が、0.5%SDS及び0.5%2−メルカプトエタノールを含む緩衝液を加えて、少なくとも80℃で5分間以上加熱抽出し、冷却遠心後の上清であることを特徴とする前記(1)記載のアレルゲンの検出方法や、(3)SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミンを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20656)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA3及びハイブリドーマ(FERM P−20657)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA4であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のアレルゲンの検出方法や、(4)SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼインを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10263)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN1及びハイブリドーマ(FERM BP−10264)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN2であることを特徴とする前記(1)又は前記(2)記載のアレルゲンの検出方法や、(5)SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジンを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10267)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL1及びハイブリドーマ(FERM BP−10268)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL2であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のアレルゲンの検出方法や、(6)SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)を認識する2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10272)が産生する抗24kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW1、ハイブリドーマ(FERM BP−10273)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW2及びハイブリドーマ(FERM BP−10274)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW3であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のアレルゲンの検出方法や、(7)SDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20780)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG1、ハイブリドーマ(FERM P−20781)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG2、ハイブリドーマ(FERM P−20782)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG3、及びハイブリドーマ(FERM P−20783)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG4であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のアレルゲンの検出方法や、(8)SDS未変性及びSDS変性の落花生アレルゲンAra h1を認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20967)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−4及びハイブリドーマ(FERM P−20968)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のアレルゲンの検出方法に関する。
【0010】
また本発明は、(9)SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミン、SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼイン、SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジン、SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)、SDS未変性及びSDS変性のAra h1、又はSDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する各2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体を備えたことを特徴とするアレルゲンの検出用キットや、(10)2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体の少なくとも一つが、イムノクロマト用に用いられる金コロイドで標識されたモノクローナル抗体であることを特徴とする前記(9)記載のアレルゲンの検出用キットや、(11)SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミンを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20656)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA3及びハイブリドーマ(FERM P−20657)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA4であることを特徴とする前記(9)又は(10)記載のアレルゲンの検出用キットや、(12)SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼインを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10263)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN1及びハイブリドーマ(FERM BP−10264)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN2であることを特徴とする前記(9)又は(10)記載のアレルゲンの検出用キットや、(13)SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジンを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10267)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL1及びハイブリドーマ(FERM BP−10268)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL2であることを特徴とする前記(9)又は(10)記載のアレルゲンの検出用キットや、(14)SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)を認識する2種類以上のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10272)が産生する抗24kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW1、ハイブリドーマ(FERM BP−10273)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW2及びハイブリドーマ(FERM BP−10274)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW3であることを特徴とする前記(9)又は(10)記載のアレルゲンの検出用キットや、(15)SDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する2種類以上のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20780)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG1、ハイブリドーマ(FERM P−20781)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG2、ハイブリドーマ(FERM P−20782)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG3、及びハイブリドーマ(FERM P−20783)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG4であることを特徴とする前記(9)又は(10)記載のアレルゲンの検出用キットや、(16)SDS未変性及びSDS変性の落花生アレルゲンAra h1を認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20967)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−4及びハイブリドーマ(FERM P−20968)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5であることを特徴とする前記(9)又は(10)記載のアレルゲンの検出用キットに関する。
【0011】
さらに本発明は(17)ハイブリドーマ(FERM P−20656)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA3や、(18)ハイブリドーマ(FERM P−20657)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA4や、(19)ハイブリドーマ(FERM P−20780)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG1や、(20)ハイブリドーマ(FERM P−20781)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG2や、(21)ハイブリドーマ(FERM P−20782)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG3や、(22)ハイブリドーマ(FERM P−20783)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG4や、(23)ハイブリドーマ(FERM P−20967)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−4や、(24)ハイブリドーマ(FERM P−20968)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、食品等に含まれる卵白アレルゲン、乳アレルゲン、小麦アレルゲン、そばアレルゲン、落花生アレルゲンについての免疫学的な検出方法において、これらアレルゲンが、変性/未変性のいかなる状態にあっても、SDS及び2−メルカプトエタノールの抽出液として用いて、正確に定性かつ定量的に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアレルゲンの検出方法としては、SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミン、SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼイン、SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジン、SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)、SDS未変性及びSDS変性のAra h1、又はSDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する各2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体(以下、これらを総称して「本件モノクローナル抗体」ということがある)を用いるアレルゲンの検出方法であって、アレルゲン含有又は未含有試料に、SDSと2−メルカプトエタノールを用いた抽出液を、前記本件モノクローナル抗体を利用した免疫反応に供する方法であれば特に制限されず、上記SDSと2−メルカプトエタノールを用いた抽出液として、0.5%SDS及び0.5%2−メルカプトエタノールを含む緩衝液を加えて、少なくとも80℃で5分間以上加熱抽出し、冷却遠心後の上清を用いることが好ましい。
【0014】
また、本発明のアレルゲンの検出用キットとしては、本件モノクローナル抗体を備えたキットであれば特に制限されず、2種類のモノクローナル抗体の少なくとも一つが、イムノクロマト用に用いられる金コロイドで標識されたモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0015】
上記SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミンを認識する2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体として、具体的には、ハイブリドーマ(FERM P−20656)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA3、ハイブリドーマ(FERM P−20657)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA4等を好適に例示することができる。また、PDOA3とPDOA4を組み合わせることで、SDS及び2−メルカプトエタノールを用いた抽出液で、特に有利にサンドイッチELISAやイムノクロマトを行うことができる。
【0016】
上記SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼインを認識する2種類のモノクローナル抗体として、具体的には、ハイブリドーマ(FERM BP−10263)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN1、ハイブリドーマ(FERM BP−10264)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN2等を好適に例示することができる。また、Pas1CN1とPas1CN2を組み合わせることで、SDS及び2−メルカプトエタノールを用いた抽出液で、特に有利にサンドイッチELISAやイムノクロマトを行うことができる。
【0017】
上記SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジンを認識する2種類のモノクローナル抗体として、具体的には、ハイブリドーマ(FERM BP−10267)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL1、ハイブリドーマ(FERM BP−10268)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL2等を好適に例示することができる。また、PGL1とPGL2を組み合わせることで、SDS及び2−メルカプトエタノールを用いた抽出液で、特に有利にサンドイッチELISAやイムノクロマトを行うことができる。
【0018】
上記SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)を認識する2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体として、具体的には、ハイブリドーマ(FERM BP−10272)が産生する抗24kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW1、ハイブリドーマ(FERM BP−10273)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW2、ハイブリドーマ(FERM BP−10274)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW3等を好適に例示することができる。また、PBW1等の24Daタンパク質及び加熱変性そば粗タンパク質を認識する抗そば粗タンパク質モノクローナル抗体と、PBW2等の76kDaタンパク質及び未変性そば粗タンパク質を認識する抗そば粗タンパク質モノクローナル抗体との組合せや、PBW2とPBW3等の未変性そば粗タンパク質と加熱変性そば粗タンパク質を共に認識する抗そば粗タンパク質モノクローナル抗体との組み合わせ、中でも、これらのモノクローナル抗体の混合系として組み合わせることで、SDS及び2−メルカプトエタノールを用いた抽出液で、特に有利にサンドイッチELISAやイムノクロマトを行うことができる。
【0019】
上記SDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体として、具体的には、ハイブリドーマ(FERM P−20780)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG1、ハイブリドーマ(FERM P−20781)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG2、ハイブリドーマ(FERM P−20782)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG3、ハイブリドーマ(FERM P−20783)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG4等を好適に例示することができる。また、PβLG3やPβLG4等の加熱変性β−ラクトグロブリンを認識する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体と、PβLG1やPβLG2等の未変性β−ラクトグロブリンを認識する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体との組合せ、中でも、(PβLG1+PβLG3)と(PβLG2+PβLG4)などのこれらのモノクローナル抗体の混合系として組み合わせることで、SDS及び2−メルカプトエタノールを用いた抽出液で、特に有利にサンドイッチELISAやイムノクロマトを行うことができる。
【0020】
上記SDS未変性及びSDS変性の落花生アレルゲンAra h1を認識する2種類のモノクローナル抗体として、具体的には、ハイブリドーマ(FERM P−20967)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−4及びハイブリドーマ(FERM P−20968)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5等を好適に例示することができる。また、PAh1−4とPAh1−5を組み合わせることで、SDS及び2−メルカプトエタノールを用いた抽出液で、特に有利にサンドイッチELISAやイムノクロマトを行うことができる。
【0021】
以上の本発明の免疫学的なアレルゲンの検出方法は、未変性及び変性の卵白アレルゲン、未変性/変性の乳アレルゲン、未変性及び変性の小麦アレルゲン、未変性及び変性のそばアレルゲン又は未変性及び変性の落花生アレルゲンを含む試料を、標識化した前記本件モノクローナル抗体と接触させ、あるいは標識化した抗体の存在下に前記本件モノクローナル抗体と接触させ、抗原抗体反応により標識化免疫複合体として捕捉する免疫反応段階と、生成した該免疫複合体をその分子中に存在する標識物質を用いて分離・測定する検出段階とからなり、かかる免疫反応段階における抗原抗体反応の方法も特に制限されず、例えば、以下の方法を例示することができる。
【0022】
不溶性担体に結合した本件モノクローナル抗体に試料中の食物アレルゲンを捕捉させた後に標識化抗IgG抗体を反応させるサンドイッチ法や、不溶性担体に結合した本件モノクローナル抗体と異なるエピトープを認識する標識本件モノクローナル抗体(第二抗体)を用いるサンドイッチ二抗体法や、不溶性担体に結合した本件モノクローナル抗体に試料中の食物アレルゲンを標識化抗原の存在下で反応させる競合法や、食物アレルゲンを含有する試料にこれらと特異的に反応する磁気ビーズ結合標識本件モノクローナル抗体を作用させた後、磁力により分離した免疫複合体中の標識物質を検出する磁気ビーズ法や、食物アレルゲンを含有する試料にこれらと特異的に反応する標識本件モノクローナル抗体を作用させて凝集沈殿させた後、遠心分離により分離した免疫複合体中の標識物質を検出する凝集沈殿法や、金コロイド等で標識された本件モノクローナル抗体と食物アレルゲンであるタンパク質が結合した抗原抗体複合体が試験ストリップ上を毛管現象等により移動する途中に、食物アレルゲンと結合する本件モノクローナル抗体をあらかじめ固定しておき、抗原抗体複合体を捕捉させることで現れる着色ラインの有無によって定性分析するイムノクロマト法の他、二重免疫拡散法、放射免疫拡散法など公知の免疫測定法を利用することができるが、本件モノクローナル抗体として、それぞれ異なるエピトープを認識する2以上のモノクローナル抗体を用いる方法、例えば、食品中の未変性アレルゲン及び/又は変性アレルゲンが100〜1000ppbの濃度範囲においても定性的かつ定量的に分析しうる高感度の点でサンドイッチ二抗体法が、定性的には簡便性からイムノクロマト法が好ましい。
【0023】
上記抗原抗体反応において用いられる不溶性担体としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド等の高分子化合物、その他、ガラス、金属、磁性粒子及びこれらの組み合わせ等を挙げることができ、また、不溶性担体の形状としては、例えば、トレイ状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、マイクロプレート、試験管、ラテックスビーズ状等の種々の形状で用いることができる。更に、これら不溶性担体への抗原又は抗体の固定化方法は特に限定されるものでなく、物理的吸着法、共有結合法、イオン結合法等を用いることができる。
【0024】
本発明のアレルゲンの検出方法やアレルゲン検出用キットに用いられる本件モノクローナル抗体の免疫グロブリンのクラス及びタイプは特に制限されないが、本件モノクローナル抗体として、IgGクラス、タイプκの抗体が好適に用いられる。また、モノクローナル抗体の形態としては、全抗体又はF(ab’)、Fab等の断片を用いることもできる。抗体の由来は特に限定されるものではないが、マウス、ラット、ヒト、兎、鶏等を挙げることができるが、作製の簡便性からマウスに由来するモノクローナル抗体が好適に用いられる。また、本件モノクローナル抗体は、未変性又は還元カルボキシメチル化あるいは尿素変性のアレルゲンで免疫した動物から採取した抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合により調製されるハイブリドーマを培地上で培養するか、又は動物腹腔内に投与して腹水内で増殖させた後、該培養物又は腹水から採取することにより製造することができる。
【0025】
本件モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、例えば、未変性又は還元カルボキシメチル化あるいは尿素変性の食物アレルゲンを用いてBALB/cマウスを免疫し、免疫されたマウスの抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞とを、常法により細胞融合させ、免疫蛍光染色パターンによりスクリーニングすることにより、本件モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作出することができる。上記の抗体産生細胞としては、例えばSDS未変性及び/若しくはSDS変性の食物アレルゲン又はこれを含有する組成物を投与して免疫した動物から得られる脾臓細胞、リンパ節細胞、B−リンパ球等を挙げることができる。免疫する動物としてはマウス、ラット、ウサギ、ウマ等が挙げられる。免疫は、例えば未変性又は還元カルボキシメチル化あるいは尿素変性の食物アレルゲンをそのまま又は適当なアジュバントと共に動物の皮下、筋肉内又は腹腔内に1〜2回/月、1〜6ケ月間投与することにより行なわれる。抗体産生細胞の分離は、最終免疫から2〜4日後に免疫動物から採取することにより行なわれる。ミエローマ細胞としては、マウス、ラット由来のもの等を使用することができる。抗体産生細胞とミエローマ細胞とは同種動物由来であることが好ましい。
【0026】
細胞融合は、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)等の培地中で抗体産生細胞とミエローマ細胞とをポリエチレングリコール等の融合促進剤の存在下で混合することにより行なうことができる。細胞融合終了後、DMEM等で適当に希釈し、遠心分離し、沈殿をHAT培地等の選択培地に懸濁して培養することによりハイブリドーマを選択し、次いで、培養上清を用いて酵素抗体法により抗体産生ハイブリドーマを検索し、限界希釈法等によりクローニングを行ない、本件モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。また、未変性の食物アレルゲンのみを用いて免疫した抗免疫動物から、有利に抗変性食物アレルゲンモノクローナル抗体を得ることができる場合もある。この場合、抗変性アレルゲンモノクローナル抗体等の本件モノクローナル抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングしてもよいし、あるいは、固相状態でのELISAで未変性の食物アレルゲンに対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを選択し、この抗体産生ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体から液相状態で未変性の食物アレルゲンに対してのみ特異的に反応する本件モノクローナル抗体を得ることができる。前記のように、抗体産生ハイブリドーマを培地中又は生体内で培養しモノクローナル抗体を培養物から採取することができるが、培養物又は腹水からのモノクローナル抗体の分離・精製方法としては、タンパク質の精製に一般的に用いられる方法であればどのような方法でもよく、例えば、IgG精製に通常使用される硫安分画法、陰イオン交換体又はプロテインA、G等のカラムによるクロマトグラフィーによって行なうことができる。
【0027】
また、標識化抗体作製に用いられる標識物質としては、単独でまたは他の物質と反応することにより検出可能なシグナルをもたらすことができる標識物質であればよく、酵素、蛍光物質、化学発光物質、放射性物質、金コロイド等を使用するのができ、酵素としてはペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼ等を、蛍光物質としては、フルオレスセインイソチオシアネート、フィコビリタンパク、希土類金属キレート、ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート等を、発光物質としては、ルミノール類、ジオキセタン類、アクリジニウム塩類等を、放射性物質としてはH、14C、125I若しくは131I等を例示することができる。標識物質が酵素である場合には、その活性を測定するために基質、必要により発色剤、蛍光剤、発光剤等が用いることができる。
【0028】
本発明のアレルゲン検出用キットには、有効成分としての本件モノクローナル抗体、好ましくはそれぞれ異なるエピトープを認識する2以上の本件モノクローナル抗体を含むが、これらは保存安定性の点から、溶液状態よりも凍結乾燥物として収容されていることが好ましく、検出用キットにはかかる本件モノクローナル抗体溶解する緩衝液や培養液の他、試料を調製するためのSDSと2−メルカプトエタノールを含む緩衝液等を含んでいてもよい。また、より好ましい別の態様の本発明のアレルゲン検出用キットとしては、前記イムノクロマト法における試験ストリップを挙げることができる。この場合、異なるエピトープを認識する2種類のモノクローナル抗体の少なくとも一つを、イムノクロマト用に用いられる金コロイドで標識されたモノクローナル抗体とすることが好ましい。
【0029】
本発明のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマ(FERM P−20656)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA3や、ハイブリドーマ(FERM P−20657)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA4、ハイブリドーマ(FERM P−20780)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG1、ハイブリドーマ(FERM P−20781)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG2、ハイブリドーマ(FERM P−20782)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG3、及びハイブリドーマ(FERM P−20783)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG4、ハイブリドーマ(FERM P−20967)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−4、ハイブリドーマ(FERM P−20968)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5を挙げることができる。これらハイブリドーマはそれぞれ、Mouse-Mouse Hybridoma PDOA3、Mouse-Mouse Hybridoma PDOA4の表示で平成17(2005)年9月6日(受託日)付で、Mouse-Mouse Hybridoma PβLG1、Mouse-Mouse Hybridoma PβLG2、Mouse-Mouse Hybridoma PβLG3、Mouse-Mouse Hybridoma PβLG4の表示で平成18年(2006)年2月2日(受託日)付で、PAh1−4、PAh1−5の表示で平成18(2006)年7月20日(受託日)付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−5466 日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に受託されている。
【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
1.材料及び方法
1)ニワトリオボアルブミン(以下「OA」という)の調製
新鮮なニワトリ卵より卵白のみを採取し、泡立てないように均質化後、等量の飽和硫酸アンモニウムを加え、濾紙No.1(アドバンテック東洋社製)で濾過した。そして、得られたろ液に0.5Mの硫酸を添加しpH4.6に調整後、一晩放置した。8,000rpm×20分の遠心分離により得られた沈殿を蒸留水に溶解し、同じ方法で再結晶化し、粗OA画分を得た。粗OAはさらに、TSK gel DEAE 650S(Tosoh)を用いたイオン交換クロマトグラフィにより精製した。移動相には50mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH6.4)を用い、NaClの0から0.3MのリニアグラジェントによりOAを分画し、透析による脱塩後、凍結乾燥を行った。この凍結乾燥OAを用い、生理食塩水で0.1%のOA溶液を作製し、1ml容エッペンドルフチューブに500μlずつ分注して抗原溶液とし、免疫に供するまで−20℃で凍結保管した。以後、未変性のOAをNOAとする。
【0032】
2)免疫
供試動物として、6週齢のBALB/cマウス(日本クレア社製)4尾を用いた。初回免疫には、完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のOAが500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。また、追加免疫は、3週間の間隔で2回行った。免疫には、不完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のOAが500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。なお、最終免疫のみに後述する還元カルボキシメチル化OA(以下「RCMOA」という)を用いた。
【0033】
3)血中抗体価の測定
初回あるいは追加免疫でOAを注射した1週間後に、各BALB/cマウスの尾部静脈より採血を行った。採血した血液は室温に2時間放置後、遠心分離を行い、血清を得た。これらの血清の10倍希釈段を作製し、非競合法ELISAによりマウス血中の抗OA抗体価を調べた。なお、二次抗体にはアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を用いた。
【0034】
4)ハイブリドーマの作製
ハイブリドーマの作製は、ケラーとミルシュタインの方法(1975)に従った。すなわち、十分に抗体価が上がったマウスに、0.1%RCMOA溶液100mlを尾部静脈より注射した。静脈注射から4日後、マウスより脾臓を無菌的に摘出した。脾臓を細切後、RPMI1640で洗浄して、滅菌ナイロンメッシュ(Cell Strainer, 70 mm, Becton Dickinson)を通し、脾臓細胞懸濁液を得た。1,000rpm×10分の遠心分離により脾臓細胞を集め、再度RPMI1640で再懸濁し細胞数をカウントした。この脾臓細胞懸濁液とマウスミエローマ細胞(P3X63Ag8.653)懸濁液を細胞数が10:1になるように混合し、再度1,000rpm×10分の遠心分離を行い、ペレットを得た。このペレットに平均分子量3,350の45%ポリエチレングリコールを滴下し細胞融合を行った。細胞溶液にRPMI1640を加え希釈後、遠心分離でペレットにした。このペレットに、ハイブリドーマ用培地(10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地)に100μMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、16μMのチミジンを含むHAT選択培地を加え、5×10cells/wellとなるように24ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に分注し、5%CO下37℃で培養した。
【0035】
5)限界希釈法によるクローニング
細胞培養用プレートの各ウェルの培養上清について、ELISAの一次抗体として供試し、抗RCMOA抗体を産生しているハイブリドーマの存在を調べた。ELISAによりRCMOAに対して陽性を示したウェルのハイブリドーマについて、0.9 cell/wellとなるように96ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に移し、限界希釈法によるクローニングを行った。なお、フィーダー細胞として、4週齢BALB/cマウス胸腺細胞を5×10cells/wellとなるように96ウェル細胞培養用プレートの各ウェルに加えた。クローニングされたハイブリドーマの培養には、10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地を用いた。
【0036】
6)抗体のスクリーニング
モノクローナル抗体のスクリーニングは、未変性OA(NOA)あるいは還元カルボキシメチル化OA(RCMOA)に対する反応性の違いを調べることで特異性の異なるクローンを得ることとした。RCMOAは、精製OA(上記凍結乾燥物)を10mg量り、1.4Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.6)1ml、5%のEDTA100μl、1.2gの尿素、33μlの2−メルカプトエタノールを加え2.5mlに定容した後、窒素ガス置換を行い、37℃、1時間の還元処理を行った。さらに、1MのNaOH300μlに溶解した89mgのモノヨード酢酸を加え窒素ガス置換した後、室温で1時間のカルボキシメチル化を行い、RCMOAとした。培養上清のNOAあるいはRCMOAに対する反応性を非競合法ELISAにより調べた。
【0037】
7)腹水の採取及びMAbの精製
Jonesら(1990)に従い、まず、BALB/cマウスに不完全フロイントアジュバントを0.2ml腹腔内に注射した。1週間後、一尾当たり5×10cellsのクローニングされたハイブリドーマを接種した。腹水貯留後、シリンジにより腹水を採取した。採種した腹水をProtein G カラム(アマシャム ファルマシア)により精製した。
【0038】
8)MAbの特性とMAbのクラス、サブクラス及びタイプ
MAbの特性を決定するために、固相法と液相法を用いた。固相法として、NOA又はRCMOAをあらかじめ細胞培養用プレートのウェル内に固定し、この固定化された抗原(NOA又はRCMOA)に抗未変性/変性アレルゲンMAbを作用させる方法を用い、また、液相法として、ウサギ抗アレルゲンポリクロナール抗体をあらかじめ細胞培養用プレートのウェル内に固定し、このポリクロナール抗体にNOA(液相NOA)又はRCMOA(液相RCMOA)を結合させた状態で、抗未変性/変性アレルゲンMAbを作用させる方法を用いた。また、MAbのクラス及びサブクラスについては、Monoclonal mouse
immunoglobulin isotyping kit(Pharmingen)により、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgA、IgL(κ)及びIgL(γ)を決定した。
【0039】
9)MAbのビオチン化
精製したMAbについて、サンドイッチELISAに供試するため、それぞれビオチン化処理を行った。50mMの炭酸緩衝液(pH8.5)を用いて20mg/mlとなるよう調製し、DMSOに3mg/100μlで溶解したNHS−ビオチン溶液を10μl加え、撹拌後、氷冷しながら2時間静置した。その後、20mg/mlとなるようにPBSで置換した。
【0040】
2.結果
1)抗OAMAbの特性とクラス、サブクラス
RCMOAに対する特異性を持つMAb8種類を得た。それぞれ液相あるいは固相の抗原に対する特異性を表1に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
2)組合せ条件
変性OAを検出するためのMAbの組合せは、サンドイッチELISAにおける検出感度の点から選出した。用いた抗原には、尿素及び2−メルカプトエタノールで処理したOA(UDOA)、並びにSDS及び2−メルカプトエタノールで処理したOA(SDSOA)を使用した。その結果を表2に示した。この組合わせの中から、UDOAおよびSDSOAをはさむことのできるMAbの組合わせを選択した。
【0043】
【表2】

【実施例2】
【0044】
食品中のOAを検出するために、食肉に全卵粉を加え、実施例1で選択したMAbの組合せについて、下記のサンプルの評価を実施した。
1)肉に200ppmの乾燥全卵粉加え混合したものを1g量り取り、そこに0.5%SDS及び0.5%2−メルカプトエタノールを含むPBSを19ml加え撹拌し、沸騰水中で1時間加熱後、PBSTで10倍に希釈した。乾燥全卵粉を加えないものを対照とした。
2)肉に200ppmの乾燥全卵粉加え混合したものを0.5g量り取り、10M尿素7.6ml、0.2ml、2−メルカプトエタノール、1mlの50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.6)、1.5mlの蒸留水を加え、アルミフォイルで蓋をした後、100℃で1時間オイルバスで加熱、変性処理を行った。冷却後、100ml容メスフラスコに移し、PBSで100mlにメスアップした。乾燥全卵粉を加えないものを対照とした。
表3に、サンドイッチELISAの吸光値の結果を示した。その結果、SDSOAを検出することのできる65F2(FERM P−20656)と962H2(FERM P−20657)の組合せが最も適していると考えられた。一方、UDOAでは対照の吸光値が高く、食肉製品を尿素で変性することは不適当と考えられた。
【0045】
【表3】

【実施例3】
【0046】
[イムノクロマトによる変性OAの検出]
1.材料及び方法
1)金コロイド標識及びコンジュゲートパッドの作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるように962H2のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を625μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。ガラスウール製コンジュゲートパッド(Schleicher & Schuell社製)に68μl/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。
【0047】
2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるように65F2のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%BSA、0.1%Tween20を含むPBSで37℃、2時間ブロッキング後、PBSで洗浄し乾燥させた。
【0048】
3)イムノクロマトストリップの組立
上記で作製したコンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。検出用サンプルには、以下のモデル食肉製品を供試した。
・卵たんぱく質の調製
穐山ら(特定原材料(卵)測定の厚生労働省通知ELISA法の複数機関による評価研究.食品衛生学雑誌, 44, 2003, 213-219)に従い、市販鶏卵より卵たんぱく質を調製した。
・モデル食肉製品
定量試験のためのモデル食品として食肉製品を選択し、表4「モデル食肉製品の配合表」に示す配合にて各濃度の卵たんぱく質を含むモデル食肉製品を作製した。豚赤肉は、豚ロース肉より脂、スジを除去し、5mmで挽肉にしたものを使用した。各配合に従い添加物を計量し、フードプロセッサーにて混合後、塩ビチューブに充填を行った。
【0049】
【表4】

【0050】
1)加熱温度
加熱温度は、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で行った。
2)サンプルの前処理及び評価
各加熱温度で処理後、フードプロセッサーにて均一としたものを検出用サンプルとした。検出用サンプル1gを量り取り、それに0.5%SDS及び0.5%2−メルカプトエタノールを含むPBSを19ml加え撹拌し、80℃で5分、15分、30分あるいは沸騰水中で1時間加熱抽出し、冷却遠心後、上清をイムノクロマトキットに供試した。
【0051】
2.結果
PDOA3及び金コロイド標識のPDOA4組合せにより、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で加熱したモデル食肉製品全てで、全ての抽出条件で2ppmまで検出することができた。このことから、SDSによる抽出が食肉製品では推奨されるが、PDOA3及びPDOA4はUDOAも検出可能なことから、対象食品の特性にあわせ、たんぱく変性剤を選択してOAを抽出し、イムノクロマトキットにより迅速に検出することが可能となった。
【実施例4】
【0052】
1.材料及び方法
1)αs1カゼイン(以下「αCN」という)の調製
新鮮な牛乳よりZittle(1959)に従い、αCNの粗画分を得た。この粗画分をさらにTSK gel DEAE 650S(TOSOH)を用いて、50mMのイミダゾール−HCl緩衝液(pH6.4)、4Mの尿素を含むNaClのリニアグラジエント(0から0.3M)により精製を行った。精製したαCN画分を蒸留水による透析後、凍結乾燥を行った。生理食塩水でこの凍結乾燥物の0.1%溶液を調製し、1ml容エッペンドルフチューブに500μlずつ分注し、免疫に供するまで−20℃で凍結保管し、抗原溶液とした。
【0053】
2)免疫
供試動物として、6週齢のBALB/cマウス(日本クレア株式会社製)5尾を用いた。初回免疫には、完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のαCNが500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。また、追加免疫は、3週間の間隔で2回行った。免疫には、不完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のαCNが500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。
【0054】
3)血中抗体価の測定
初回あるいは追加免疫でαCNを注射した1週間後に、各BALB/cマウスの尾部静脈より採血を行った。採血した血液は室温に2時間放置後、遠心分離を行い、血清を得た。これらの血清の10倍希釈段を作製し、非競合法ELISAによりマウス血中の抗αCN抗体価を調べた。なお、二次抗体にはアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoReserch Laboratories Inc.製)を用いた。
【0055】
4)ハイブリドーマの作製
ハイブリドーマの作製は、ケラーとミルシュタインの方法(1975)に従った。すなわち、十分に抗体価が上がったマウスに、0.1%αCN溶液100μlを尾部静脈より注射した。静脈注射から4日後、マウスより脾臓を無菌的に摘出した。脾臓を細切後、RPMI1640で洗浄して、滅菌ナイロンメッシュ(Cell Strainer, 70 mm, Becton Dickinson)を通し、脾臓細胞懸濁液を得た。1,000rpm×10分の遠心分離により脾臓細胞を集め、再度RPMI1640で再懸濁し細胞数をカウントした。この脾臓細胞懸濁液とマウスミエローマ細胞(P3X63Ag8.653)懸濁液を細胞数が10:1になるように混合し、再度1,000rpm×10分の遠心分離を行い、ペレットを得た。このペレットに平均分子量3,350の45%ポリエチレングリコールを滴下し細胞融合を行った。細胞溶液にRPMI1640を加え希釈後、遠心分離でペレットにした。このペレットに、ハイブリドーマ用培地(10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地)に100μMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、16μMのチミジンを含むHAT選択培地を加え、5×10cell/wellとなるように24ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に分注し、5%CO下37℃で培養した。
【0056】
5)限界希釈法によるクローニング
細胞培養用プレートの各ウェルの培養上清について、ELISAの一次抗体として供試し、抗αCN抗体を産生しているハイブリドーマの存在を調べた。ELISAによりαCNに対して陽性を示したウェルのハイブリドーマについて、0.9 cell/wellとなるように96ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に移し、限界希釈法によるクローニングを行った。なお、フィーダー細胞として、4週齢BALB/cマウス胸腺細胞を5×10cells/wellとなるように96ウェル細胞培養用プレートの各ウェルに加えた。クローニングされたハイブリドーマの培養には、10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地を用いた。
【0057】
6)抗体のスクリーニング
モノクローナル抗体のスクリーニングは、未変性αCN(以下「N−αCN」という)、尿素処理αCN(以下「D−αCN」という)、市販のカゼインナトリウムの未変性物(以下「N−CN」という)又は市販のカゼインナトリウムの尿素処理物(以下「D−CN」という)の4種類のたんぱく質に対する反応性の違いを調べることで特異性の異なるクローンを得ることとした。D−αCNは、精製αCNを1mg量り、5%EDTA100μl、尿素6.0g、2−メルカプトエタノール0.2ml、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.6)1ml、蒸留水1.5mlを加え、アルミフォイルで蓋をした後、100℃で1時間オイルバスで加熱、変性処理を行った。培養上清のN−αCN、D−αCN、N−CNあるいはD−CNに対する反応性を非競合法ELISAにて調べた。
【0058】
7)腹水の採取及びMAbの精製
Jonesら(1990)に従い、まず、BALB/cマウスに不完全フロイントアジュバントを0.2ml腹腔内に注射した。1週間後、1尾当たり5×10cellsのクローニングされたハイブリドーマを接種した。腹水貯留後、シリンジにより腹水を採取した。採取した腹水をProtein Gカラム(アマシャム ファルマシア)により精製した。
【0059】
8)MAbのクラス、サブクラス及びタイプ
MAbのクラス及びサブクラスについては、Monoclonal mouse immunoαCNobulin isotyping kit(Pharmingen)により、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgA、IgL(κ)及びIgL(γ)を決定した。
【0060】
9)MAbのビオチン化
精製したMAbについて、サンドイッチELISAに供試するため、それぞれビオチン化処理を行った。50mMの炭酸緩衝液(pH8.5)を用いて20mg/mlとなるよう調製し、DMSOに3mg/100μlで溶解したNHS−ビオチン溶液を10μl加え、撹拌後、氷冷しながら2時間静置した。その後、20mg/mlとなるようにPBSで置換した。
【0061】
2 結果
1)MAbの選択
乳の主要アレルゲンであるαs1カゼイン(αCN)を特異的に認識する6種類のMAbが得られた。これら6種類のMAbにおける、それぞれ固相とした各抗原N−αCN、D−αCN、N−CN、又はD−CNに対する特異性をダイレクトELISAにより調べた。また、これらMAbのクラス、サブクラスについても調べた。結果を表5に示す。表5中、+は各固相抗原に対し陽性であることを、−は陰性であることを示す。表5に示されるように、全ての状態の抗原に結合するMAbであるPas1CN1、Pas1CN2、Pas1CN3を選択した。
【0062】
【表5】

【0063】
2)サンドイッチELISAにおける組合せ条件
ダイレクトELISAで選択したPas1CN1、Pas1CN2、Pas1CN3を用いて、全てのMAbの組合せについてサンドイッチELISAを行った。Pas1CN1、Pas1CN2、Pas1CN3をそれぞれ固相あるいはビオチン化抗体として、αCNあるいはCNを検出するためのMAbの組合せを、サンドイッチELISAにより選出した。さらに、精製αCNを1mg量り、SDSを0.5%及び2-メルカプトエタノールを0.5%含むPBSで100℃で1時間オイルバスで加熱、変性処理を行ったSDS−αCNの検出の可能性も検討した。その結果、N−αCN、D−αCN、N−CN、D−CN、SDS−αCNを検出できる組合せとしてPas1CN1(FERM BP−10263)とPas1CN2(FERM BP−10264)を選択した。
【実施例5】
【0064】
[イムノクロマトによる変性SDS−CNの検出]
1.材料及び方法
1)金コロイド標識及びコンジュゲートパッドの作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPas1CN1のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を625μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。ガラスウール製コンジュゲートパッド(Schleicher & Schuell社製)に68μl/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。
【0065】
2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるようにPas1CN2のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%BSA、0.1%Tween20を含むPBSで37℃、2時間ブロッキング後、PBSで洗浄し乾燥させた。
【0066】
3)イムノクロマトストリップの組立
上記で作製したコンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。検出用サンプルには、以下のモデル食肉製品を供試した。
・乳たんぱく質の調製
穐山ら(特定原材料(牛乳)測定の厚生労働省通知ELISA法の複数機関による評価研究.食品衛生学雑誌, 45, 2004, 120-127)に従い、ホルスタイン種の新鮮乳より乳たんぱく質を調製した。
・モデル食肉製品
定量試験のためのモデル食品として食肉製品を選択し、表6「モデル食肉製品の配合表」に示す配合にて各濃度の乳たんぱく質を含むモデル食肉製品を作製した。豚赤肉は、豚ロース肉より脂、スジを除去し、5mmで挽肉にしたものを使用した。各配合に従い添加物を計量し、フードプロセッサーにて混合後、塩ビチューブに充填を行った。
【0067】
【表6】

【0068】
1)加熱温度
加熱温度は、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で行った。
2)サンプルの前処理及び評価
各加熱温度で処理後、フードプロセッサーにて均一としたものを検出用サンプルとした。検出用サンプル1gを量り取り、それに0.5%SDS及び0.5%2−メルカプトエタノールを含むPBSを19ml加え撹拌し、80℃で5分、15分、30分あるいは沸騰水中で1時間加熱抽出し、冷却遠心後、上清をイムノクロマトキットに供試した。
【0069】
2.結果
Pas1CN1及び金コロイド標識のPas1CN2組合せにより、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で加熱したモデル食肉製品全てで、80℃で5分の抽出で2ppmまで検出することができた。このことから、Pas1CN1及びPas1CN2はD−CNも検出可能なことから、対象食品の特性にあわせ、たんぱく変性剤を選択してαCNを抽出し、イムノクロマトキットにより迅速に検出することが可能となった。
【実施例6】
【0070】
1.材料及び方法
小麦粉に2倍量のn−ブタノールを加え脱脂を行い、一晩風乾した。得られた脱脂小麦粉に0.1%塩化ナトリウム溶液を2倍量加え、10,000rpm×15分遠心分離した。得られた沈殿に20倍量の0.01N酢酸を加え、撹拌後、10,000rpm×15分遠心分離した。得られた上清を蒸留水で透析し、凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥物に70%となるようにエタノールを加え、10,000rpm×15分遠心分離した。得られた上清を蒸留水で透析し、粗GL画分を得た。粗GL画分はさらに、Sephacryl S-200HR(Amersham Biosciences)を用いたゲルろ過により精製した。移動相には0.1N酢酸を用いてGLを分画し、蒸留水に透析後、凍結乾燥を行った。生理食塩水でこの凍結乾燥物の0.1%溶液を調製し、1ml容エッペンドルフチューブに500μlずつ分注し、免疫に供するまで−20℃で凍結保管し、抗原溶液とした。
【0071】
2)免疫
供試動物として、5週齢のBALB/cマウス(日本クレア株式会社製)5尾を用いた。初回免疫には、完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のGLが500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。また、追加免疫は、3週間の間隔で2回行った。免疫には、不完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のGLが500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。
【0072】
3)血中抗体価の測定
初回あるいは追加免疫でGLを注射した1週間後に、各BALB/cマウスの尾部静脈より採血を行った。採血した血液は室温に2時間放置後、遠心分離を行い、血清を得た。これらの血清の10倍希釈段を作製し、非競合法ELISAによりマウス血中の抗GL抗体価を調べた。なお、二次抗体にはアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoReserch Laboratories Inc.製)を用いた。
【0073】
4)ハイブリドーマの作製
ハイブリドーマの作製は、ケラーとミルシュタインの方法(1975)に従った。すなわち、十分に抗体価が上がったマウスに、0.1%GL溶液100μlを尾部静脈より注射した。静脈注射から4日後、マウスより脾臓を無菌的に摘出した。脾臓を細切後、RPMI1640で洗浄して、滅菌ナイロンメッシュ(Cell Strainer, 70 mm, Becton Dickinson)を通し、脾臓細胞懸濁液を得た。1,000rpm×10分の遠心分離により脾臓細胞を集め、再度RPMI1640で再懸濁し細胞数をカウントした。この脾臓細胞懸濁液とマウスミエローマ細胞(P3X63Ag8.653)懸濁液を細胞数が10:1になるように混合し、再度1,000rpm×10分の遠心分離を行い、ペレットを得た。このペレットに平均分子量3,350の45%ポリエチレングリコールを滴下し細胞融合を行った。細胞溶液にRPMI1640を加え希釈後、遠心分離でペレットにした。このペレットに、ハイブリドーマ用培地(10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地)に100μMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、16μMのチミジンを含むHAT選択培地を加え、5×10cells/wellとなるように24ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に分注し、5%CO下37℃で培養した。
【0074】
5)限界希釈法によるクローニング
細胞培養用プレートの各ウェルの培養上清について、ELISAの一次抗体として供試し、抗GL抗体を産生しているハイブリドーマの存在を調べた。ELISAによりGLに対して陽性を示したウェルのハイブリドーマについて、0.9cell/wellとなるように96ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に移し、限界希釈法によるクローニングを行った。なお、フィーダー細胞として、4週齢BALB/cマウス胸腺細胞を5×10cell/wellとなるように96ウェル細胞培養用プレートの各ウェルに加えた。クローニングされたハイブリドーマの培養には、10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地を用いた。
【0075】
6)抗体のスクリーニング
モノクローナル抗体のスクリーニングは、未変性GL(以下「NGL」という)あるいは還元カルボキシメチル化GL(以下「RCMGL」という)、0.1M酢酸可溶化GL(以下「AGL」という)、70%エタノール可溶化GL(以下「EGL」という)、変性剤で可溶化したGL(以下「DGL」という)に対する反応性の違いを調べることで特異性の異なるクローンを得ることとした。RCMGLは、精製GLを10mg量り、1.4Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.6)1ml、5%EDTA100μl、1.2g尿素、33μlの2−メルカプトエタノールを加え2.5mlに定容した後、窒素ガス置換を行い、37℃、1時間の還元処理を行った。さらに、1MのNaOH300μlに溶解した89mgのモノヨード酢酸を加え窒素ガス置換した後、室温で1時間のカルボキシメチル化を行い、RCMGLとした。培養上清のNGL、RCMGL、AGL、EGL及びDGLに対する反応性を非競合法ELISAにより調べた。
【0076】
7)腹水の採取及びMAbの精製
Jonesら(1990)に従い、まず、BALB/cマウスに不完全フロイントアジュバントを0.2ml腹腔内に注射した。1週間後、1尾当たり5×10cellsのクローニングされたハイブリドーマを接種した。腹水貯留後、シリンジにより腹水を採取した。採取した腹水をProtein G カラム(アマシャム ファルマシア)により精製した。
【0077】
8)MAbのクラス、サブクラス及びタイプ
MAbのクラス及びサブクラスについては、Monoclonal mouse immunoαCNobulin isotyping kit(Pharmingen)により、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgA、IgL(κ)及びIgL(γ)を決定した。
【0078】
9)MAbのビオチン化
精製したMAbについて、サンドイッチELISAに供試するため、それぞれビオチン化処理を行った。50mMの炭酸緩衝液(pH8.5)を用いて20mg/mlとなるよう調製し、DMSOに3mg/100μlで溶解したNHS−ビオチン溶液を10μl加え、撹拌後、氷冷しながら2時間静置した。その後、20mg/mlとなるようにPBSで置換した。
【0079】
2 結果
1)MAbの選択
小麦の主要アレルゲンであるグリアジン(GL)は、水に不溶性で、酢酸やエタノールに溶けるタンパク質である。そこで、PBSに溶かしたGL(NGL)、還元カルボキシメチル化GL(RCMGL)、0.1M酢酸可溶化GL(AGL)、70%エタノール可溶化GL(EGL)、変性剤で可溶化したGL(DGL)を調製し、どの状態のGLに特異的に結合するMAbであるかを検証した。抗GLMAbの各状態のGLに対するダイレクトELISAの結果を表7に示す。表1に示されるように、全ての状態のGLに結合するMAbであるPGL1(FERM BP−10267)、PGL2(FERM BP−10268)、PGL4、PGL7を選択した。
【0080】
【表7】

【0081】
2)サンドイッチELISAにおける組合せ条件
ダイレクトELISAで選択したPGL1、PGL2、PGL4、PGL7を用いて、全てのMAbの組合わせについてサンドイッチELISAを行った。グリアジンはNGL、RCMGL、AGL、EGL、DGLを用いた。さらに、グリアジンを1mg量り、SDSを1%及び2−メルカプトエタノールを1%含むPBSで100℃で1時間オイルバスで加熱、変性処理を行ったSDSGLの検出の可能性も検討した。その結果、いずれの状態のGLでも最も高く検出できたのは、PGL1とPGL2の組合わせであった。その他の組合せについてはサンドイッチELISAにて全てのGLを検出できない、または検出感度が極めて低かった。以上の結果から、食品に様々な状態で含まれるGLを検出するMAbとしてPGL1とPGL2を選択した。
【実施例7】
【0082】
[イムノクロマトによる変性SDSGLの検出]
1.材料及び方法
1)金コロイド標識及びコンジュゲートパッドの作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPGL1のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を625μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。ガラスウール製コンジュゲートパッド(Schleicher & Schuell社製)に68μl/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。
【0083】
2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるようにPGL2のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%BSA、0.1%Tween20を含むPBSで37℃、2時間ブロッキング後、PBSで洗浄し乾燥させた。
【0084】
3)イムノクロマトストリップの組立
上記で作製したコンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。検出用サンプルには、以下のモデル食肉製品を供試した。
・小麦たんぱく質の調製
穐山ら(特定原材料(小麦)測定の厚生労働省通知ELISA法の複数機関による評価研究.食品衛生学雑誌, 45, 2004, 128-134)に従い、市販小麦粉末より小麦たんぱく質を調製した。
・モデル食肉製品
定量試験のためのモデル食品として食肉製品を選択し、表8「モデル食肉製品の配合表」に示す配合にて各濃度の小麦たんぱく質を含むモデル食肉製品を作製した。豚赤肉は、豚ロース肉より脂、スジを除去し、5mmで挽肉にしたものを使用した。各配合に従い添加物を計量し、フードプロセッサーにて混合後、塩ビチューブに充填を行った。
【0085】
【表8】

【0086】
1)加熱温度
加熱温度は、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で行った。
2)サンプルの前処理及び評価
各加熱温度で処理後、フードプロセッサーにて均一としたものを検出用サンプルとした。検出用サンプル1gを量り取り、それに0.5%SDS及び0.5%2−メルカプトエタノールを含むPBSを19ml加え撹拌し、80℃で5分、15分、30分あるいは沸騰水中で1時間加熱抽出し、冷却遠心後、上清をイムノクロマトキットに供試した。
【0087】
2.結果
PGL1及び金コロイド標識のPGL2組合わせにより、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で加熱したモデル食肉製品全てで、全ての抽出条件で2ppmまで検出することができた。このことから、PGL1及びPGL2はDGLも検出可能なことから、対象食品の特性にあわせ、たんぱく変性剤を選択してGLを抽出し、イムノクロマトキットにより迅速に検出することが可能となった。
【実施例8】
【0088】
1.抗24kDaタンパク質MAb及び抗76kDaタンパク質MAbの確立
1 材料及び方法
1)そば24kDaタンパク質MAb及び抗76kDaタンパク質の調製
市販そば粉に5倍量の精製水を加え、攪拌後12000rpmで遠心分離を行い沈殿を得た。得られた沈殿に1M塩化ナトリウムを5倍量加え、攪拌後12000rpmで遠心分離を行い、上清を得た。上清を透析により脱塩し、凍結乾燥を行って得られた画分をそば粗タンパク質画分とした。このそば粗タンパク質画分をさらにプレップセル960(BioRad)を用いて精製を行った。24kDaタンパク質の精製は、そば粗タンパク質画分を2.0%SDSと5%2−メルカプトエタノールが含まれるサンプルバッファーに溶解後、95℃で4分間加熱したものをサンプルとして供試し、アクリルアミド12%分離ゲルを用いたプレップセル960にて分画し、24kDaタンパク質を得た。76kDaタンパク質の精製は、そば粗タンパク質画分を2.0%SDSが含まれ、2−メルカプトエタノールが含まれないサンプルバッファーに溶解したものをサンプルとして供試し、アクリルアミド12%分離ゲルを用いたプレップセル960にて分画し、76kDaタンパク質を得た。得られた各画分は透析後、凍結乾燥を行った。これらの凍結乾燥を用い、生理食塩水で0.1%の24kDaタンパク質溶液及び0.1%の76kDaタンパク質溶液それぞれを作製し、1ml容エッペンドルフチューブに500μlずつ分注して抗原溶液とし、免疫に供するまで−20℃で凍結保管した。
【0089】
2)免疫
供試動物として、5週齢のBALB/cマウス(日本クレア株式会社製)5尾を用いた。初回免疫には、完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%の24kDaタンパク質溶液及び0.1%の76kDaタンパク質溶液がそれぞれ500μl入ったエッペンドルフチューブに等量ずつ加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。また、追加免疫は、3週間の間隔で2回行った。免疫には、不完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%の24kDaタンパク質溶液及び0.1%の76kDaタンパク質溶液がそれぞれ500μl入ったエッペンドルフチューブに等量ずつ加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。
【0090】
3)血中抗体価の測定
初回あるいは追加免疫で24kDaタンパク質溶液又は76kDaタンパク質溶液を注射した1週間後に、各BALB/cマウスの尾部静脈より採血を行った。採血した血液は室温に2時間放置後、遠心分離を行い、血清を得た。これらの血清の10倍希釈段を作製し、非競合法ELISAによりマウス血中の抗24kDaタンパク質抗体価及び抗76kDaタンパク質抗体価を調べた。なお、二次抗体にはアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoReserch Laboratories Inc.製)を用いた。
【0091】
4)ハイブリドーマの作製
ハイブリドーマの作製は、ケラーとミルシュタインの方法(1975)に従った。すなわち、十分に抗体価が上がったマウスに、0.1%の24kDaタンパク質溶液又は0.1%の76kDaタンパク質溶液それぞれ100μlを尾部静脈より注射した。静脈注射から4日後、マウスより脾臓を無菌的に摘出した。脾臓を細切後、RPMI1640で洗浄して、滅菌ナイロンメッシュ(Cell Strainer, 70 mm, Becton Dickinson)を通し、脾臓細胞懸濁液を得た。1,000rpm×10分の遠心分離により脾臓細胞を集め、再度RPMI1640で再懸濁し細胞数をカウントした。この脾臓細胞懸濁液とマウスミエローマ細胞(P3X63Ag8.653)懸濁液を細胞数が10:1になるように混合し、再度1,000rpm×10分の遠心分離を行い、ペレットを得た。このペレットに平均分子量3,350の45%ポリエチレングリコールを滴下し細胞融合を行った。細胞溶液にRPMI1640を加え希釈後、遠心分離でペレットにした。このペレットに、ハイブリドーマ用培地(10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地)に100μMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、16μMのチミジンを含むHAT選択培地を加え、5×10cells/wellとなるように24ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に分注し、5%CO下37℃で培養した。
【0092】
5)限界希釈法によるクローニング
細胞培養用プレートの各ウェルの培養上清について、ELISAの一次抗体として供試し、抗24kDaタンパク質抗体又は76kDaタンパク質抗体を産生しているハイブリドーマの存在を調べた。ELISAにより24kDaタンパク質又は76kDaタンパク質に対して陽性を示したウェルのハイブリドーマについて、0.9cell/wellとなるように96ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に移し、限界希釈法によるクローニングを行った。なお、フィーダー細胞として、4週齢BALB/cマウス胸腺細胞を5×10cells/wellとなるように96ウェル細胞培養用プレートの各ウェルに加えた。クローニングされたハイブリドーマの培養には、10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100g/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地を用いた。
【0093】
6)抗体のスクリーニング
モノクローナル抗体のスクリーニングは、24kDaタンパク質、76kDaタンパク質、PBSで希釈したそば粗タンパク質(以下「NBW」ということがある)、あるいは変性剤により可溶化したそば粗タンパク質(以下「DBW」ということがある)に対する反応性の違いを調べることで特異性の異なるクローンを得ることとした。そば粗タンパク質は、そば粉に20倍量のPBSTを加え4℃で一晩撹拌し、遠心分離後に脱脂処理した上清を回収し、透析後、凍結乾燥したものをそば粉抽出物として調製した。変性剤による可溶化は、そば粗タンパク質を10mg量り、尿素6g、2−メルカプトエタノール0.2ml、50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.6)1ml、蒸留水1.5mlを加え、アルミフォイルで蓋をした後、100℃で1時間オイルバスで加熱、変性処理を行い、これをDBWとした。培養上清の24kDaタンパク質、76kDaタンパク質、NBW、及びDBWに対する反応性を非競合法ELISAにて調べた。
【0094】
7)腹水の採取及びMAbの精製
Jonesら(1990)に従い、まず、BALB/cマウスに不完全フロイントアジュバントを0.2ml腹腔内に注射した。1週間後、1尾当たり5×10cellsのクローニングされたハイブリドーマを接種した。腹水貯留後、シリンジにより腹水を採取した。採取した腹水をProtein G カラム(アマシャム ファルマシア)により精製した。
【0095】
8)MAbのクラス、サブクラス及びタイプ
MAbのクラス及びサブクラスについては、Monoclonal mouse immunoαCNobulin isotyping kit(Pharmingen)により、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgA、IgL(κ)及びIgL(γ)を決定した。
【0096】
9)MAbのビオチン化
精製したMAbについて、サンドイッチELISAに供試するため、それぞれビオチン化処理を行った。50mMの炭酸緩衝液(pH8.5)を用いて20mg/mlとなるよう調製し、DMSOに3mg/100μlで溶解したNHS−ビオチン溶液を10μl加え、撹拌後、氷冷しながら2時間静置した。その後、20mg/mlとなるようにPBSで置換した。
【0097】
2 結果
1)抗24kDaタンパク質MAbと76kDaタンパク質MAbの特性とクラス、サブクラス
24kDaタンパク質に対する特異性を持つMAb5種類、及び、76kDaタンパク質に対する特異性を持つMAb4種類を得た。それぞれ固相の抗原に対する特異性を表9及び表10に示した。
【0098】
【表9】

【0099】
【表10】

【0100】
2)組合せ条件
固相の抗原に対し陽性反応を示した各MAbをそれぞれ固相あるいはビオチン化抗体として、NBW及びDBWを検出するためのMAbの組合せを、サンドイッチELISAにおける検出感度の点から選出した。さらに、BWを1mg量り、SDSを0.5%及び2-メルカプトエタノールを0.5%含むPBSで100℃で1時間オイルバスで加熱、変性処理を行ったSDSBWの検出の可能性も検討した。その結果、NBWを検出できる組合せとして、プレート固定化抗体PBW2(FERM BP−10273)とビオチン化抗体PBW3(FERM BP−10274)を、また、DBW及びSDSBWを検出できる組合せとして、プレート固定化抗体PBW1(FERM BP−10272)とビオチン化抗体PBW2を選択した。
【実施例9】
【0101】
[イムノクロマトによる変性SDSDBWの検出]
1.材料及び方法
1)金コロイド標識及びコンジュゲートパッドの作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPBW3のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を625μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。ガラスウール製コンジュゲートパッド(Schleicher & Schuell社製)に68μl/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。
【0102】
2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで各8mg/mlとなるようにPBW1及びPBW2のMAb溶液を棟梁混合し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%BSA、0.1%Tween20を含むPBSで37℃、2時間ブロッキング後、PBSで洗浄し乾燥させた。
【0103】
3)イムノクロマトストリップの組立
上記で作製したコンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。検出用サンプルには、以下のモデル食肉製品を供試した。
・そばたんぱく質の調製
穐山ら(特定原材料(そば)測定の厚生労働省通知ELISA法の複数機関による評価研究.食品衛生学雑誌, 45, 2004, 313-318)に従い、市販小麦粉末よりそばたんぱく質を調製した。
・モデル食肉製品
定量試験のためのモデル食品として食肉製品を選択し、表11「モデル食肉製品の配合表」に示す配合にて各濃度の小麦たんぱく質を含むモデル食肉製品を作製した。豚赤肉は、豚ロース肉より脂、スジを除去し、5mmで挽肉にしたものを使用した。各配合に従い添加物を計量し、フードプロセッサーにて混合後、塩ビチューブに充填を行った。
【0104】
【表11】

【0105】
1)加熱温度
加熱温度は、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で行った。
・サンプルの前処理及び評価
各加熱温度で処理後、フードプロセッサーにて均一としたものを検出用サンプルとした。検出用サンプル1gを量り取り、それに0.5%SDS及び0.5%2−メルカプトエタノールを含むPBSを19ml加え撹拌し、80℃で5分、15分、30分あるいは沸騰水中で1時間加熱抽出し、冷却遠心後、上清をイムノクロマトキットに供試した。
【0106】
2.結果
PBW1、PBW2及び金コロイド標識のPBW3の組合せにより、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で加熱したモデル食肉製品全てで、全ての抽出条件でまで検出することができた。このことから、PBW1、PBW2及びPBW3を組み合わせることではDBWも検出可能なことから、対象食品の特性にあわせ、たんぱく変性剤を選択してBWを抽出し、イムノクロマトキットにより迅速に検出することが可能となった。
【実施例10】
【0107】
1.材料及び方法
1)β−ラクトグロブリン(以下「βLG」という)の調製
新鮮な牛乳よりZittle(1959)に従い、ホエーの粗画分を得た。この粗画分をさらにTSK gel DEAE 650S(TOSOH)を用いて、50mMのトリス−HCl緩衝液(pH6.5)、NaClのリニアグラジエント(0から0.4M)により精製を行った。精製したβLG画分を蒸留水による透析後、凍結乾燥を行い、未変性βLG(以下「N−βLG」ということがある)とした。このN−βLGを10mg量り、1.4Mのトリス−HCl緩衝液(pH8.6)1ml、5%のEDTA100μl、尿素1.2g、2−メルカプトエタノール33μlを加え2.5mlに定容した後、窒素ガス置換を行い、37℃、1時間の還元処理を行い、さらに、1MのNaOH300μlに溶解した89mgのモノヨード酢酸を加え窒素ガス置換した後、室温で1時間のカルボキシメチル化を行い、還元カルボキシメチル化βLG(以下「R−βLG」ということがある)とした。生理食塩水でこれらの凍結乾燥物の0.1%溶液を調製し、1ml容エッペンドルフチューブに500μlずつ分注し、免疫に供するまで−20℃で凍結保管し、抗原溶液とした。
【0108】
2)免疫
供試動物として、6週齢のBALB/cマウス(日本クレア社製)4尾を用いた。初回免疫には、完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のN−βLGあるいはR−βLGが500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。また、追加免疫は、3週間の間隔で2回行った。免疫には、不完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のN−βLGあるいはR−βLGが500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。なお、最終免疫にはそれぞれN−βLGあるいはR−βLGを用いた。
【0109】
3)血中抗体価の測定
初回あるいは追加免疫でN−βLGあるいはR−βLGを注射した1週間後に、各BALB/cマウスの尾部静脈より採血を行った。採血した血液は室温に2時間放置後、遠心分離を行い、血清を得た。これらの血清の10倍希釈段を作製し、非競合法ELISAによりマウス血中の抗N−βLGあるいはR−βLG抗体価を調べた。なお、二次抗体にはアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を用いた。
【0110】
4)ハイブリドーマの作製
ハイブリドーマの作製は、ケラーとミルシュタインの方法(1975)に従った。すなわち、十分に抗体価が上がったことを確認後、N−βLG免疫マウスには0.1%N−βLG溶液100μlを、またR−βLG免疫マウスには0.1%R−βLG溶液100μl尾部静脈より注射した。静脈注射から4日後、マウスより脾臓を無菌的に摘出した。脾臓を細切後、RPMI1640で洗浄して、滅菌ナイロンメッシュ(Cell Strainer, 70 mm, Becton Dickinson)を通し、脾臓細胞懸濁液を得た。1,000rpm×10分の遠心分離により脾臓細胞を集め、再度RPMI1640で再懸濁し細胞数をカウントした。この脾臓細胞懸濁液とマウスミエローマ細胞(P3X63Ag8.653)懸濁液を細胞数が10:1になるように混合し、再度1,000rpm×10分の遠心分離を行い、ペレットを得た。このペレットに平均分子量3,350の45%ポリエチレングリコールを滴下し細胞融合を行った。細胞溶液にRPMI1640を加え希釈後、遠心分離でペレットにした。このペレットに、ハイブリドーマ用培地(10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地)に100μMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、16μMのチミジンを含むHAT選択培地を加え、5×10cells/wellとなるように24ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に分注し、5%CO下37℃で培養した。
【0111】
5)限界希釈法によるクローニング
細胞培養用プレートの各ウェルの培養上清について、ELISAの一次抗体として供試し、抗N−βLGあるいはR−βLG抗体を産生しているハイブリドーマの存在を調べた。ELISAによりN−βLGあるいはR−βLGに対して陽性を示したウェルのハイブリドーマについて、0.9 cell/wellとなるように96ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に移し、限界希釈法によるクローニングを行った。なお、フィーダー細胞として、4週齢BALB/cマウス胸腺細胞を5×10cells/wellとなるように96ウェル細胞培養用プレートの各ウェルに加えた。クローニングされたハイブリドーマの培養には、10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地を用いた。
【0112】
6)抗体のスクリーニング
モノクローナル抗体のスクリーニングは、N−βLGあるいはR−βLGに対する反応性の違いを調べることで特異性の異なるクローンを得ることとした。培養上清のN−βLGあるいはR−βLGに対する反応性を非競合法ELISAにより調べた。
【0113】
7)腹水の採取及びMAbの精製
Jonesら(1990)に従い、まず、BALB/cマウスに不完全フロイントアジュバントを0.2ml腹腔内に注射した。1週間後、1尾当たり5×10cellsのクローニングされたハイブリドーマを接種した。腹水貯留後、シリンジにより腹水を採取した。採取した腹水をProtein G カラム(アマシャム ファルマシア)により精製した。
【0114】
8)MAbの特性とMAbのクラス、サブクラス及びタイプ
MAbのクラス及びサブクラスについては、Monoclonal mouse immunoglobulin isotyping kit(Pharmingen)により、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgA、IgL(κ)及びIgL(γ)を決定した。
【0115】
9)MAbのビオチン化
精製したMAbについて、サンドイッチELISAに供試するため、それぞれビオチン化処理を行った。50mMの炭酸緩衝液(pH8.5)を用いて20mg/mlとなるよう調製し、DMSOに3mg/100μlで溶解したNHS−ビオチン溶液を10μl加え、撹拌後、氷冷しながら2時間静置した。その後、20mg/mlとなるようにPBSで置換した。
【0116】
2.結果
1)抗N−βLGおよびR−βLGの特性とクラス、サブクラス
N−βLGおよびR−βLGに対する特異性を持つMAb37種類を得た。それぞれ固相とした抗原に対する特異性を表12に示した。
【0117】
【表12】

【0118】
2)組合せ条件
MAbの組合せは、サンドイッチELISAにおける検出感度の点から選出した。抗原には、N−βLG(NLG)、SDSと2−メルカプトエタノールで処理したSDS−βLG(SDSLG)を使用した。その結果を表13に示した。この組み合わせの中から、NLG、SDSLGをはさむことのできる組合せを選択した。
【0119】
【表13】

【実施例11】
【0120】
[イムノクロマトによるMAbのスクリーニング]
1.材料及び方法
1)金コロイド標識及びコンジュゲートパッドの作製
実施例10で選択されたMAbについて、2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を625μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。ガラスウール製コンジュゲートパッド(Schleicher & Schuell社製)に68μl/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。
【0121】
2)抗体固定化メンブレンの作製
実施例10で選択されたMAbについて、PBSで4mg/mlとなるようにMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%BSA、0.1%Tween20を含むPBSで37℃、2時間ブロッキング後、PBSで洗浄し乾燥させた。
【0122】
3)イムノクロマトストリップの組立
上記で作製したコンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。
【0123】
4)検出用サンプルの調製
食品中のホエータンパク質を検出するために、食肉にホエーたんぱく質を加え、下記のサンプルの評価を実施した。
[1]豚赤肉に200ppmのホエータンパク質を加え混合したものを1g量り取り、そこにPBSTを19ml加え撹拌し、PBSTで10倍に希釈した。ホエータンパク質を加えないものを対照とした。
[2]豚赤肉に200ppmのホエータンパク質を加え混合したものを1g量り取り、そこに0.5%SDSおよび1%2−メルカプトエタノールを含むPBSTを19ml加え撹拌し、沸騰水中で1時間加熱後した。冷却遠心後、上清をイムノクロマトキットに供試した。ホエータンパク質を加えないものを対照とした。
【0124】
2.結果
表13に示された結果から、NLGを検出できる組合せとして、781A9(PβLG1:FERM P−20780)と758C5(PβLG2:FERM P−20781)を、また、SDSLGを検出できる組合せとして、761G9(PβLG3:FERM P−20782)と3(PβLG4:FERM P−20783)を選択した。
【実施例12】
【0125】
[イムノクロマトによるNLGおよびSDSLGの検出]
1.材料及び方法
1)金コロイド標識及びコンジュゲートパッドの作製
[1]NLG検出用(PLG2)
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPLG2のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を625μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。ガラスウール製コンジュゲートパッド(Schleicher & Schuell社製)に68μl/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。
[2]SDSLG(PLG4)
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPLG4のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を625μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。ガラスウール製コンジュゲートパッド(Schleicher & Schuell社製)に68μl/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。
[3]組み合わせ(PLG2+PLG4)
[1]および[2]で調整したPLG2とPLG4の金コロイド溶液を等量で混合し、ガラスウール製コンジュゲートパッド(Schleicher & Schuell社製)に68μl/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。
【0126】
2)抗体固定化メンブレンの作製
[1]NLG検出用(PLG1)
PBSで4mg/mlとなるようにPLG1のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%BSA、0.1%Tween20を含むPBSで37℃、2時間ブロッキング後、PBSで洗浄し乾燥させた。
[2]SDSLG検出用(PLG3)
PBSで4mg/mlとなるようにPLG3のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%BSA、0.1%Tween20を含むPBSで37℃、2時間ブロッキング後、PBSで洗浄し乾燥させた。
[3]組み合わせ(PLG1+PLG3)
PBSで8mg/mlとなるように調製したPLG1およびPLG3のMAb溶液を等量で混合し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%BSA、0.1%Tween20を含むPBSで37℃、2時間ブロッキング後、PBSで洗浄し乾燥させた。
【0127】
3)イムノクロマトストリップの組立
上記で作製したコンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。検出用サンプルには、以下のモデル食肉製品を供試した。
[1]乳たんぱく質の調製
穐山ら(特定原材料(牛乳)測定の厚生労働省通知ELISA法の複数機関による評価研究.食品衛生学雑誌, 45, 2004, 120-127)に従い、ホルスタイン種の新鮮乳より乳たんぱく質を調製した。
[2]モデル食肉製品
定量試験のためのモデル食品として食肉製品を選択し、表14に示す配合にて各濃度の乳たんぱく質を含むモデル食肉製品を作製した。豚赤肉は、豚ロース肉より脂、スジを除去し、5mmで挽肉にしたものを使用した。
【0128】
【表14】

【0129】
各配合に従い添加物を計量し、フードプロセッサーにて混合後、塩ビチューブに充填を行った。
[1]加熱温度
未加熱のサンプルと、加熱サンプルを用意し、加熱サンプルについては加熱温度を75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で行った。
[2]サンプルの前処理及び評価
各加熱温度で処理後、フードプロセッサーにて均一としたものを検出用サンプルとした。未加熱サンプルを1g量り取り、それにPBSTを19ml加え撹拌し、冷却遠心後、上清をイムノクロマトキットに供試した。一方、加熱サンプルを1g量り取り、それに0.5%SDS及び1%2−メルカプトエタノールを含むPBSを19ml加え撹拌し、沸騰水中で1時間加熱し、冷却遠心後、上清をイムノクロマトキットに供試した。
【0130】
2.結果
[1]N−βLG検出用(PLG1、PLG2の組み合わせ)
PLG1及び金コロイド標識PLG2の組み合わせにより、2ppmまで検出することができた。
[2]SDSLG検出用(PLG3、PLG4の組み合わせ)
PLG3及び金コロイド標識PLG4の組み合わせにより、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で加熱したモデル食肉製品全てで、2ppmまで検出することができた。
[3]組み合わせ
PLG1とPLG3の混合メンブレンと、PLG2とPLG4の混合金コロイド溶液の組み合わせにより、未加熱のサンプルを2ppmまで、一方、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で加熱したモデル食肉製品全てで、2ppmまで検出することができた。
【実施例13】
【0131】
1.材料及び方法
1)Ara h1の調製
市販生落花生に5倍量の20mMbis-tris-propane buffer(pH7.2)を加え、室温で2時間攪拌後3000×gで遠心分離を行い、沈殿および油分を除去した。得られた水溶性画分を再度10000×gで遠心分離を行い、上清を得た。上清をさらにSource Q(GEヘルスケア バイオサイエンス)を用いて、20mM bis-tris-propane buffer(pH7.2)、NaClのリニアグラジエント(0から1M)により精製を行った。精製したAra h1画分を蒸留水による透析後、凍結乾燥を行い、未変性Ara h1(以下NAh1という)とした。また、上清をプレップセル960(BioRad)を用いて精製を行い、得られたAra h1画分を蒸留水により透析した後、凍結乾燥したものを未変性prep Ara h1(以下「NPAh1」という)とした。尿素処理Ara h1(以下DAh1という)はNAh1を10mg量り、6g 尿素、0.2 ml 2−メルカプトエタノール(以下2−MEという)、1ml 50 mM Tris−HCl緩衝液(pH 8.6)、1.5 ml 蒸留水を加え、アルミフォイルで蓋をした後、100℃で1時間オイルバスで加熱し、処理を行った。その後、蒸留水による透析を行い、凍結乾燥したものとした。還元カルボキシメチル化処理Ara h1(以下「RCMAh1」という)は、NAh1を10mg量り、1.4Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.6)1ml、5%のEDTA100μl、1.2gの尿素、33μlの2−MEを加え2.5mlに定容した後、窒素ガス置換を行い、37℃、1時間の還元処理を行った。さらに、1MのNaOH300μlに溶解した89mgのモノヨード酢酸を加え窒素ガス置換した後、室温で1時間のカルボキシメチル化を行った。その後、蒸留水による透析を行い、凍結乾燥したものをRCMAh1とした。
【0132】
2)免疫
供試動物として、6週齢のBALB/cマウス(日本クレア社製)4尾を用いた。初回免疫は、完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のNAh1、DAh1、RCMAh1およびNPAh1溶液がそれぞれ500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。また、追加免疫は、3週間の間隔で2回行った。免疫には、不完全フロイントアジュバント(Difco)を0.1%のNAh1、DAh1、RCMAh1およびNPAh1溶液がそれぞれ500μl入ったエッペンドルフチューブに等量加え、ボルテックスミキサーにて攪拌して作製したエマルジョンを供試した。このエマルジョンを1尾当たり150μl腹腔内に注射した。
【0133】
3)血中抗体価の測定
初回あるいは追加免疫でNAh1、DAh1、RCMAh1およびNPAh1溶液を注射した1週間後に、各BALB/cマウスの尾部静脈より採血を行った。採血した血液は室温に2時間放置後、遠心分離を行い、血清を得た。これらの血清の10倍希釈段を作製し、非競合法ELISAによりマウス血中の抗NAh1、DAh1の抗体価を調べた。なお、二次抗体にはアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を用いた。
【0134】
4)ハイブリドーマの作製
ハイブリドーマの作製は、ケラーとミルシュタインの方法(1975)に従った。すなわち、十分に抗体価が上がったマウスに、0.1%のNAh1、DAh1、RCMAh1およびNPAh1溶液100μlを尾部静脈より注射した。静脈注射から4日後、マウスより脾臓を無菌的に摘出した。脾臓を細切後、RPMI1640で洗浄して、滅菌ナイロンメッシュ(Cell Strainer, 70 mm, Becton Dickinson)を通し、脾臓細胞懸濁液を得た。1,000rpm×10分の遠心分離により脾臓細胞を集め、再度RPMI1640で再懸濁し細胞数をカウントした。この脾臓細胞懸濁液とマウスミエローマ細胞(P3X63Ag8.653)懸濁液を細胞数が10:1になるように混合し、再度1,000rpm×10分の遠心分離を行い、ペレットを得た。このペレットに平均分子量3,350の45%ポリエチレングリコールを滴下し細胞融合を行った。細胞溶液にRPMI1640を加え希釈後、遠心分離でペレットにした。このペレットに、ハイブリドーマ用培地(10%牛胎児血清、40mMの2−ME、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地)に100μMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、16μMのチミジンを含むHAT選択培地を加え、5×10cells/wellとなるように24ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に分注し、5%CO下37℃で培養した。
【0135】
5)限界希釈法によるクローニング
細胞培養用プレートの各ウェルの培養上清について、ELISAの一次抗体として供試し、抗NAh1、DAh1、RCMAh1抗体を産生しているハイブリドーマの存在を調べた。ELISAによりNAh1、DAh1、RCMAh1陽性を示したウェルのハイブリドーマについて、0.9 cell/wellとなるように96ウェルの細胞培養用プレート(Becton Dickinson)に移し、限界希釈法によるクローニングを行った。なお、フィーダー細胞として、4週齢BALB/cマウス胸腺細胞を5×10cells/wellとなるように96ウェル細胞培養用プレートの各ウェルに加えた。クローニングされたハイブリドーマの培養には、10%牛胎児血清、40mMの2−メルカプトエタノール、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地を用いた。
【0136】
6)抗体のスクリーニング
モノクローナル抗体のスクリーニングは、落花生の粗タンパク質の未変性(以下NP−eという)、尿素処理(以下DP−eという)あるいは還元カルボキシメチル処理(以下RCMP−eという)に対する反応性の違いを調べることで特異性の異なるクローンを得ることとした。なお、P−eは落花生に5倍量の20mM bis-tris-propane buffer(pH7.2)を加え、室温で2時間攪拌後遠心分離を二回行い得られた上清を透析した後、凍結乾燥したものとした。培養上清のNP−e、DP−eあるいはRCMP−eに対する反応性を非競合法ELISAにより調べた。
【0137】
7)腹水の採取及びMAbの精製
Jonesら(1990)に従い、まず、BALB/cマウスに不完全フロイントアジュバントを0.2ml腹腔内に注射した。1週間後、1尾当たり5×10cellsのクローニングされたハイブリドーマを接種した。腹水貯留後、シリンジにより腹水を採取した。採取した腹水をProtein G カラム(GEヘルスケア バイオサイエンス)により精製した。
【0138】
8)MAbの特性とMAbのクラス、サブクラス及びタイプ
MAbの特性を決定するために、固相法と液相法を用いた。固相法として、NAh1又はRCMAh1をあらかじめ細胞培養用プレートのウェル内に固定し、この固定化された抗原(NAh1又はRCMAh1)に抗未変性/変性アレルゲンMAbを作用させる方法を用い、また、液相法として、ウサギ抗アレルゲンポリクロナール抗体をあらかじめ細胞培養用プレートのウェル内に固定し、このポリクロナール抗体にNAh1(液相NAh1)又はRCMAh1(液相RCMAh1)を結合させた状態で、抗未変性/変性アレルゲンMAbを作用させる方法を用いた。また、MAbのクラス及びサブクラスについては、Monoclonal mouse immunoglobulin isotyping kit(Pharmingen)により、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgA、IgL(κ)及びIgL(γ)を決定した。
【0139】
2.結果
1)抗Ara h1MAbの特性とクラス、サブクラス
落花生に対する特異性を持つMAb22種類を得た。それぞれ液相あるいは固相の抗原に対する特異性を表15, 16, 17, 18に示した。
【0140】
【表15】

【0141】
【表16】

【0142】
【表17】

【0143】
【表18】

【実施例14】
【0144】
[イムノクロマトによる変性落花生タンパク質の検出]
1.材料及び方法
1)金コロイド標識及びコンジュゲートパッドの作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにそれぞれのMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を625μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。ガラスウール製コンジュゲートパッド(Schleicher & Schuell社製)に68μl/cmとなるよう塗布し、乾燥させた。
【0145】
2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるようにそれぞれのMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%BSA、0.1%Tween20を含むPBSで37℃、2時間ブロッキング後、PBSで洗浄し乾燥させた。
【0146】
3)イムノクロマトストリップの組立
上記で作製したコンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。検出用サンプルには、以下の方法で調製した落花生タンパク質を供試した。
【0147】
1.落花生タンパク質の調製
穐山ら(特定原材料(落花生)測定の厚生労働省通知ELISA法の複数機関による評価研究.食品衛生学雑誌, 45, 2004, 325-331)に従い、市販落花生より落花生タンパク質を調製した。
【0148】
2.落花生タンパク質の検出
定性試験のため上記の方法で調整した落花生タンパク質を1g量り取り、それに0.5%SDS及び0.5%2−MEを含むPBSを19ml加え撹拌し、沸騰水中で1時間加熱し、冷却遠心後、上清をイムノクロマトキットに供試した。
【0149】
3.モデル食肉製品の作製
定性試験のためのモデル食品として食肉製品を選択し、表19に示す配合にて各濃度の落花生たんぱく質を含むモデル食肉製品を作製した。豚赤肉は、豚ロース肉より脂、スジを除去し、5mmで挽肉にしたものを使用した。
【0150】
【表19】

【0151】
各配合に従い添加物を計量し、フードプロセッサーにて混合後、塩ビチューブに充填を行った。
【0152】
1.加熱温度
加熱温度は、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で行った。
【0153】
2.サンプルの前処理及び評価
各加熱温度で処理後、フードプロセッサーにて均一としたものを検出用サンプルとした。検出用サンプル1gを量り取り、それに0.5%SDS及び0.5%2−MEを含むPBSを19ml加え撹拌し、沸騰水中で1時間加熱し、冷却遠心後、上清をイムノクロマトキットに供試した。
【0154】
2.結果
表5にイムノクロマトによる定性試験の結果を示した。その結果、SDS処理した落花生タンパク質を検出には、金コロイド標識のPAh1−4(FERM P−20967)とメンブレン塗布のPAh1−5(FERM P−20968)の組合せが最も適していると考えられた。また、この組み合わせで、食肉製品からの添加回収試験では、75℃・30分、100℃・1時間、121℃・20分で加熱したモデル食肉製品全てで、2ppmまで検出することができた。また、この組み合わせで、未変性の落花生タンパク質も同様に検出可能なことがわかった。このことから、PAh1−4とPAh1−5を組み合わせることで、未変性及び変性の落花生タンパク質を検出可能なことから、対象食品の特性にあわせ、タンパク変性剤を選択して落花生を抽出し、イムノクロマトキットにより迅速に検出することが可能となった。
【0155】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミン、SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼイン、SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジン、SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)、SDS未変性及びSDS変性のAra h1、又はSDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する各2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体を用いるアレルゲンの検出方法であって、アレルゲン含有又は未含有試料に、SDSと2−メルカプトエタノールを用いた抽出液を、前記各2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体を利用した免疫反応に供することを特徴とするアレルゲンの検出方法。
【請求項2】
SDSと2−メルカプトエタノールを用いた抽出液が、0.5%SDS及び0.5%2−メルカプトエタノールを含む緩衝液を加えて、少なくとも80℃で5分間以上加熱抽出し、冷却遠心後の上清であることを特徴とする請求項1記載のアレルゲンの検出方法。
【請求項3】
SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミンを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20656)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA3及びハイブリドーマ(FERM P−20657)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA4であることを特徴とする請求項1又は2記載のアレルゲンの検出方法。
【請求項4】
SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼインを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10263)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN1及びハイブリドーマ(FERM BP−10264)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN2であることを特徴とする請求項1又は2記載のアレルゲンの検出方法。
【請求項5】
SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジンを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10267)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL1及びハイブリドーマ(FERM BP−10268)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL2であることを特徴とする請求項1又は2記載のアレルゲンの検出方法。
【請求項6】
SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)を認識する2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10272)が産生する抗24kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW1、ハイブリドーマ(FERM BP−10273)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW2及びハイブリドーマ(FERM BP−10274)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW3であることを特徴とする請求項1又は2記載のアレルゲンの検出方法。
【請求項7】
SDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20780)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG1、ハイブリドーマ(FERM P−20781)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG2、ハイブリドーマ(FERM P−20782)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG3、及びハイブリドーマ(FERM P−20783)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG4であることを特徴とする請求項1又は2記載のアレルゲンの検出方法。
【請求項8】
SDS未変性及びSDS変性の落花生アレルゲンAra h1を認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20967)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−4及びハイブリドーマ(FERM P−20968)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5であることを特徴とする請求項1又は2記載のアレルゲンの検出方法。
【請求項9】
SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミン、SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼイン、SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジン、SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)、SDS未変性及びSDS変性のAra h1、又はSDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する各2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体を備えたことを特徴とするアレルゲンの検出用キット。
【請求項10】
2種類又はそれ以上のモノクローナル抗体の少なくとも一つが、イムノクロマト用に用いられる金コロイドで標識されたモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項9記載のアレルゲンの検出用キット。
【請求項11】
SDS未変性及びSDS変性のオボアルブミンを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20656)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA3及びハイブリドーマ(FERM P−20657)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA4であることを特徴とする請求項9又は10記載のアレルゲンの検出用キット。
【請求項12】
SDS未変性及びSDS変性のαs1カゼインを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10263)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN1及びハイブリドーマ(FERM BP−10264)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN2であることを特徴とする請求項9又は10記載のアレルゲンの検出用キット。
【請求項13】
SDS未変性及びSDS変性の小麦グリアジンを認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10267)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL1及びハイブリドーマ(FERM BP−10268)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL2であることを特徴とする請求項9又は10記載のアレルゲンの検出用キット。
【請求項14】
SDS未変性及びSDS変性のそばアレルゲン(分子量24kDaと76kDaのタンパク質)を認識する2種類以上のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM BP−10272)が産生する抗24kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW1、ハイブリドーマ(FERM BP−10273)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW2及びハイブリドーマ(FERM BP−10274)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW3であることを特徴とする請求項9又は10記載のアレルゲンの検出用キット。
【請求項15】
SDS未変性及びSDS変性のβ−ラクトグロブリンを認識する2種類以上のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20780)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG1、ハイブリドーマ(FERM P−20781)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG2、ハイブリドーマ(FERM P−20782)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG3、及びハイブリドーマ(FERM P−20783)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG4であることを特徴とする請求項9又は10記載のアレルゲンの検出用キット。
【請求項16】
SDS未変性及びSDS変性の落花生アレルゲンAra h1を認識する2種類のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ(FERM P−20967)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−4及びハイブリドーマ(FERM P−20968)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5であることを特徴とする請求項9又は10記載のアレルゲンの検出用キット。
【請求項17】
ハイブリドーマ(FERM P−20656)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA3。
【請求項18】
ハイブリドーマ(FERM P−20657)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA4。
【請求項19】
ハイブリドーマ(FERM P−20780)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG1。
【請求項20】
ハイブリドーマ(FERM P−20781)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG2。
【請求項21】
ハイブリドーマ(FERM P−20782)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG3。
【請求項22】
ハイブリドーマ(FERM P−20783)が産生する抗β−ラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG4。
【請求項23】
ハイブリドーマ(FERM P−20967)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−4。
【請求項24】
ハイブリドーマ(FERM P−20968)が産生する抗Ara h1モノクローナル抗体PAh1−5。

【公開番号】特開2007−108169(P2007−108169A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250113(P2006−250113)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年8月25日 社団法人日本畜産学会発行の「2005年度(平成17年) 日本畜産学会第105回大会 講演要旨」に発表
【出願人】(000113067)プリマハム株式会社 (72)
【Fターム(参考)】